よぎるのコアイメージ

1.瞬間の通過自動詞中級★★
表記よぎる
移動物が瞬間的に通り過ぎる。
文型
<移動物>が<場所>をよぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
飛蚊症とは、目の前を小さな黒い影のような物がよぎるように見える症状です。
「何か黒いものがさっとよぎるのを見た」、と彼が言う。
太郎の右側を突然白い光がよぎった
もし目の前を光がよぎったら、知らせて下さい。
コロケーション
<移動物>が
影、姿、風、人影、閃光
<様態>
さっと、突然、すうっと、一瞬
解説
語の語義は、「視野をかすめるように瞬間的に何かが通り過ぎたことを視覚的に認識する」意味を表す。あまりに瞬間的であり、よぎったものがいったいなんであるかを特定できない場合が多い。
類義語・反義語
類義語通り過ぎる
反義語


2.瞬間の想起自動詞中級★★
表記よぎる
感情や思いが瞬間的に浮かぶ。
文型
<感情・感覚・思い>が<頭・胸>を[に]よぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ちらっと嫌な予感が頭をよぎった
憎しみが頂点に達した時、彼の脳裏によからぬ考えがよぎったのだった。
その景色を見ていると、懐かしい思い出が胸をよぎる
彼の真っ青な顔を見たとき、一瞬不安がよぎった
懐かしい学校を見たとたん、なぜかあの頃よく食べたパンの香りがふとよぎった
太郎は一瞬顔に不安をよぎらせた
stairsこの時、楽しかったことや苦しかったことなど、いろいろな思い出が胸をよぎり
コロケーション
<感情・感覚・思い>が
思い、考え、不安、表情、疑問
<頭・胸>を[に]
頭、脳裏、胸、心、顔
<様態>
ちらっと、一瞬、ふと
類義語・反義語
類義語ちらつく、かすめる、思う、感じる、思い浮かぶ、思い出す、想起する
反義語


よぎるの全体解説 語義1は、「視野をかすめるように瞬間的に何かが通り過ぎたことを認識する」という意味である。あまりに瞬間的なので「よぎった」物が本当は何であるか判然としない場合がほとんどである。従ってよぎる移動物が「影」や「白いもの」等は許容されるが、はっきり認識ができている具体物は現れにくい。
 私の右側を、黒い影が[何か]がさっとよぎった。
 ?私の右側を、ボール[太郎]がさっとよぎった。
 私の右側を、ボール[太郎]がさっと通り過ぎた[通った]。
またあくまでも視覚による認識に基づかなければならないので、例えば嗅覚による認識の例は許されない。
 パンの香ばしい香りが一瞬鼻先をよぎった。
 パンの香ばしい香りが一瞬鼻先をかすめた。
 かすかな音が耳元をよぎった。
 かすかな音が耳元をかすめた。
語義2は、実際に視覚によって認識したのではなく、心や頭等に、映像、何らかのイメージ、印象、記憶や思い出として瞬間的に浮かぶという意味である。物事を認識したり思い出したり、また感情がわき起こると考えられる人間の部位は、<頭や胸>であることから、イメージはそれらの場所に「よぎる」。
 いやな予感が頭[胸]をよぎる。
 嫌な予感が体をよぎる。
また感情の発露は<顔>の表情であることから、次のような例もある。
 困惑の表情[苦悶の色、悲しみ、笑み]が顔をよぎる。
また語義2で浮かぶ思い出としてのイメージは記憶の中の様々な知覚体験から作られると考えられる事から、視覚に基づくイメージだけでなく、語義1では認められない嗅覚等の例文も許容されるようになると考えられる。
 懐かしい学校を見たとたん、なぜかあの頃よく怒られた先生の顔がふとよぎった。
 懐かしい学校を見たとたん、なぜかあの頃よく食べたパンの香りがふとよぎった。
























▶全例文を聞く
<移動物>が
二人が歩いて行く視野を幾つもの黒いがよぎって過ぎた。
(三枝和子著 『うそりやま考』, 1995, 913)
男の顔の前を一瞬、鈍いがよぎった。
(川端裕人著 『ニコチアナ』, 2001, 913)
<様態>
その瞬間、彼女の視界に見憶えのある姿が過った。
(森瑶子著 『あなたに電話』, 1989, 913)
<感情・感覚・思い>が
浅川の頭にふとそんな思いがよぎった。
(鈴木光司著 『リング』, 1993, 913)
その方達の仲間に入れてもらえるかなという不安が心をよぎった。
(中原玲子著 『渾河のほとりで』, 2001, 289)
<頭・胸>を[に]
そして、二人の脳裏に同じ考えがよぎりました。
(野田千世著 『黒猫のシムクロティー』, 2004, 913)
それでもカジは、自分の選択が正しく、アルタリアのキャサリンはいい妻になると自分に言い聞かせても、同時にかすかな不安がによぎるのを感じた。
(キャロライン・クロス作;那珂ゆかり訳 『シークとプリンセス』, 2003, 933)






























この時、楽しかったことや苦しかったことなど、いろいろな思い出が胸をよぎり
よぎる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
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~なかったよぎなかった
ます形よぎり
~ませんよぎりま
~ましたよぎりした
~ませんでしたよぎりまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形よぎ
て形って
た形った
可能形
受身形
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