やるのコアイメージ

1.行為他動詞初級★★★
表記やる
人や動物などが自分の意志で(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)ある行為を行う。
文型
<人・動物・組織>が<こと>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
次男はいつも、家に帰ったらすぐに宿題をやる
先生は、何度実験をやってもうまくいかないとおっしゃっていました。
「太郎、ゲームばかりやらずにちゃんと勉強しなさい」「もうちょっとしたら、ゲームやめるよ」
幼い頃、両親は私に何でも好きなようにやらせてくれた。
ツバメが我が家の軒下で、熱心に巣作りをやっています
あの事務所では、あらゆる建物の設計をやってくれるそうだ。
コロケーション
<こと>をやる
宿題、ゲーム、実験、仕事、設計
<様態>やる
しっかり、きちんと、しばらく、少し、まず
非共起例
<こと>をやる
 父はいつも大きなくしゃみをやる
 父はいつも大きなくしゃみをする
 彼女はこれまでの実験で、何度も失敗をやっている
 彼女はこれまでの実験で、何度も失敗をしている
人や動物などの、自分の意志に関わらない行為については「やる」を用いることはできず、通常、「する」を用いる。
<こと>をやる
 私は大学に入ったら言語学をしたい
 私は大学に入ったら言語学をやりたい
「勉強」や「研究」という名詞は「する」、「やる」いずれのヲ格名詞にもなり、類義的な関係にある。しかし、「言語学」、「理科」、「中国語」など、勉強や研究に関する具体的な分野や領域を表す名詞は、「する」ではなく「やる」のヲ格名詞として用いる方が自然である。
解説
語義1は、「やる」の最も典型的な意味である。「やる」という動詞自体は、人や動物などによる何らかの意志的な行為の遂行という(抽象度の高い)意味を表し、その行為の実質的な意味内容は通常、ヲ格名詞(句)が表す。このヲ格名詞は、行為(動作)を表す名詞である場合が多いが、「ピアノをやる」のように、もの(ピアノ)を表す名詞によって、そのものを用いた行為(ピアノの演奏)を表す場合もある。ところで、語義1においては「する」の典型的意味と類義的な関係にある。ただし、「する」が話し言葉においても書き言葉においても用いられるのに対し、「やる」は主に話し言葉で用いられ新聞記事や公文書などの硬い文体の文章ではほとんど用いられないという違いがある。加えて、「する」のヲ格名詞は極めて多岐に渡るのに対し、「やる」のヲ格名詞は主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い行為を表すものに限定されるという違いもある。(例えば、「努力」、「判断」、「無理」、「我慢」、「失敗」などは「やる」のヲ格名詞になり得ない。)なお、語義1の周辺例として、何らかの行為を実現(達成)したときに発する「やった!」という用法や、ある行為が自己や他者に何らかの不利益を生じさせることを分かりつつも結果的にその行為を行い、そのことを後悔する際に発する「(また)やってしまった」「(また)やっちゃった」という用法もある。(いずれも、ガ格名詞やヲ格名詞を伴わない用法である。)
誤用解説
通常、「やる」(単一の述部)と複数のヲ格名詞(句)とは共起しない。
 兄は今、美術館を設計をやっている。
 兄は今、美術館の設計をやっている。
類義語・反義語
類義語する、行う
反義語やめる


2.他者に対する行為他動詞初級★★★
表記やる
人や動物などが自分の意志で、他の人や動物やものに対する働きかけとしての(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)ある行為を行う。
文型
<人・動物・組織>が<人・動物・組織・もの>に[に対して・に向かって・に対する・への]<こと>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
父は来月、短期留学で来日するイギリスの大学生に空手の指導をやる
先生は生徒たちに、卒業前の最後の授業をやりました
今日は、素焼きした器への色付けをやりましょう
「このレストラン、誕生日のお客さんに色んなサービスをやってくれるみたいだよ」「じゃあ、妹の誕生日にまた来ようかな」
昨年祖父は、大学病院の口腔外科で最新のインプラント治療をやってもらいました
町長はこれまで、町民に対して様々な裏切り行為を平然とやってきた
コロケーション
<人・動物・組織・もの>にやる
学生、客、市民、会社、国
<こと>をやる
指導、授業、サービス、治療、サポート
<様態>やる
しっかり、きちんと、絶対に、よく、これから
解説
語義1が人や動物などによる自らの意志に基づく(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)行為一般を表すのに対し、語義2は限定的に、他者(他の人、動物、組織、もの)に対する働きかけとしての行為を表す。したがって、語義1と異なり、語義2では、ガ格名詞(句)とヲ格名詞(句)に加えて、働きかけの対象を表すニ格名詞(句)も必須項となる。ただし、「今日は、素焼きした器への色付けをやりましょう」という文では、ニ格名詞(句)はなく、「素焼きした器への色付け」全体がヲ格名詞句である。
誤用解説
移動の到達点を表す際は助詞の「に」と「へ」を置き換えることが可能な場合があるが、語義2のように、行為の向かう対象(他の人、動物、組織、もの)を表す際は「に」を「へ」に置き換えにくく、「に」の方が自然である。
 父が留学生空手の指導をやる。
 父が留学生空手の指導をやる。
 猿が大勢のお客さん見事な芸をたくさんやってみせた。
 猿が大勢のお客さん見事な芸をたくさんやってみせた。
類義語・反義語
類義語する、行う
反義語やめる


3.放送・放映・上映・公演他動詞中級★★
表記やる
(通常、複数の)人や組織が、他の人々に対して、(番組、映画、演劇、演奏などの)放送、放映、上映、公演を行う。
文型
(<人・組織>が)<こと>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ラジオで5時から、語学番組をやっています
今日から8チャンネルで、新しいニュースをやるそうだ。
いつかこの局で、誰もが驚くような斬新なバラエティ番組をやりたい
「5月に、新しくできた劇場で『レ・ミゼラブル』のミュージカルをやるらしいよ」「そうなの?じゃあ、一緒に見に行こうよ」
プロデューサーは、ヒットしたドラマの続編を、テレビでやらずに映画でやろうと考えているらしい。
県内の民放3局が合同で番組をやったことは、これまでに一度もない。
コロケーション
<人・組織>がやる
テレビ局、ラジオ局、私たち、彼ら、劇団員
<こと>をやる
番組、ニュース、ドラマ、映画、演劇
<手段(媒体)>でやる
テレビ、ラジオ、映画、8チャンネル
<場所>でやる
テレビ局、ラジオ局、劇場、ホール、映画館
<様態>やる
色々、よく、ずっと、これから、もうすぐ
解説
語義2が、他者に対する働きかけとしての行為一般を表すのに対し、語義3はその一種である、放送、放映、上映、公演を表す。なお、放送、放映、上映のケースでは、通常、これらの行為の主体は言語化されず、「テレビで」、「ラジオで」、「8チャンネルで」など、放送、放映、上映の手段(としての媒体)をデ格成分によって言語化することが多い。また、働きかけの対象(視聴者や観客など)も通常、言語化されない。
誤用解説
「やる」と「する」は類義的な関係にあるケースが多いが、語義3では「やる」を「する」に置き換えることはできない。
 ラジオで5時から、語学番組をする
 ラジオで5時から、語学番組をやる
類義語・反義語
類義語放送する、放映する、上映する、公演する
反義語


4.殺傷・苦痛他動詞上級
表記やる
人が他の人や動物に対して、殺傷や身体的、精神的な苦痛を与える。
文型
<人>が<人・動物・身体の一部>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「あいつらをやってしまえ」「許してください、俺にはそんなことはできません」
これ以上苦しむくらいなら、一思いにやってほしい。
飼っていた全ての鶏が、犯人にやられた
罪のない多くの市民が、敵兵にやられてしまいました
よくもやりやがったな。
正体不明の男に、肩と腕をやられました
stairs嘘つけ、おまえが先にやったんだろ
コロケーション
<人・動物>をやる
あいつ、お前、やつら、敵、鶏
<身体の一部>をやる
心臓、肺、頭蓋骨、肩、腕
<様態>やる
すぐ、必ず、とにかく、一気に、突然
解説
語義2が、人の、他者に対する働きかけとしての行為一般を表すのに対し、語義4はその一種としての、他者に殺傷や苦痛を与える行為を表す。(極めて卑俗な表現である。)語義4は、「やる」という動詞自体が、他者に殺傷や苦痛を与えるという具体的な行為を婉曲的に表し、必須項のヲ格名詞(句)は、その行為の対象となる相手、あるいは、対象となる身体部位を表す。
誤用解説
「やる」と「する」は類義的な関係にあるケースが多いが、語義4では「やる」を「する」に置き換えることができない。
 あいつをしろ
 あいつをやれ
類義語・反義語
類義語殺す、痛めつける、犯す
反義語


5.複数人での行為他動詞初級★★★
表記やる
複数の人や動物などが(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)ある行為を行う。
文型
<人・動物・組織>が<こと>をやる
<人・動物・組織>と<人・動物・組織>が<こと>をやる
<人・動物・組織>が<人・動物・組織>と<こと>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私たちはこれからグラウンドで野球をやります
母の働いているデパートは来年の4月に、開店50周年を記念した盛大なイベントをやるそうです。
私たちはあのチームと、これまで一度もサッカーの試合をやったことがない。
「和義君、一緒にバンドをやらない?」「少し考えさせてもらってもいいかな?」
選挙制度改革については、党派を越えた徹底的な議論をやるべきだ。
浅野君以外の人と漫才をやりたいと思ったことは、これまで一度もありません。
コロケーション
<こと>をやる
野球、イベント、試合、議論、バンド
<様態>やる
しっかり、ずっと、これから、絶対(に)、よく
<数量詞(集団)>でする
10人、2匹、3社、全員、みんな
非共起例
<人・動物・組織>が<こと>をやる <人・動物・組織>と<人・動物・組織>が<こと>をやる <人・動物・組織>が<人・動物・組織>と<こと>をやる
 部下たちはいつも無駄話をやっている
 部下たちはいつも無駄話をしている
 近藤さんが長谷川さんと結婚をやることになった。
 近藤さんが長谷川さんと結婚をすることになった。
 二度とお互いを責め合わないと、約束をやろう
 二度とお互いを責め合わないと、約束をしよう
「(無駄)話」、「結婚」、「約束」をはじめとして、動作性、意志性、具体性、継続性(のいずれか、あるいは全て)の低い相互行為は語義5のヲ格名詞とはなりにくく、通常、「する」のヲ格名詞となる。
解説
語義1と語義5は、人、動物、組織の、自らの意志に基づく(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)行為を表すという点では共通している。しかし、語義1が単一の主体のみで実現可能な行為であるのに対し、語義5は複数の主体が存在することで実現可能な行為(相互行為)である、という違いがある。ところで、「彼らが野球をやる」のように、「XがYをやる」という文型で用いられる場合、Xは複数の主体を表す名詞(句)である。「伊藤さんと上田さんが漫才をやる」のように、「XとZがYをやる」という文型で用いられる場合、XとZはそれぞれ単一の主体を表す名詞(句)である。また、「伊藤さんが上田さんと漫才をやる」のように、「XがZとYをやる」という文型で用いられる場合も、XとZはそれぞれ単一の主体を表す名詞(句)である。(「XとZがYをやる」という文型で用いられる場合、XとZは相互行為の主体として同等程度に焦点化される。一方、「XがZとYをやる」という文型で用いられる場合、第一にXが焦点化され、その次に、相互行為の相手であるZが焦点化される。)
類義語・反義語
類義語する、行う、実施する
反義語やめる


6.病気の経験他動詞中級★★
表記やる
人や動物が、ある病気や、身体部位に関する苦痛を経験する。
文型
<人・動物>が<こと・身体の一部>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
祖父は昨年、大病をやった
息子はまだおたふく風邪をやっていません
「昨年末に結核をやって、大変な思いをしました」「はい、存じ上げています。今はすっかり回復なさったようで、安心致しました」
次男は、4歳のときに水疱瘡をやりました
杉本選手は先月、ひどく肩をやってしまい、今季の試合への出場は絶望的なものとなった。
積み重なったストレスが原因で胃をやった父は、激しい痛みを抱えつつ何とか日々を過ごしているようだ。
stairsうも、喉をやられちゃったみたいだ。
コロケーション
<こと>をやる
大病、おたふく風邪、水疱瘡、はしか、結核
<身体の一部>をやる
目、肩、腰、胃、足
<様態>やる
もう、既に、かつて、いつか、ひどく
非共起例
<こと>をやる
 弟が下痢をやる
 弟が下痢をする
 祖父が病気をやった
 祖父が病気をした
 姉はこれまでに何度か骨折をやっている
 姉はこれまでに何度か骨折をしている
語義6の「<こと>を」という必須項において、「<こと>」には、幼い頃に多くの人が経験するような伝染性のある病気を表す名詞や、「大病」という名詞など、繰り返し起こることがほとんどない一回性のある(非日常的な)病気が当てはまる。
解説
語義6は語義1と、人や動物がある出来事を経験するという点で共通している。しかし、語義1は自分の意志に基づく(主に動作性、意志性、具体性、継続性の高い)経験(行為)であるのに対し、語義6が自分の意志に関わらない経験(病気や苦痛)でるという違いがある。ところで、語義6のヲ格名詞(句)は、「<こと>を」という形をとる場合と、「<身体の一部>を」という形をとる場合がある。まず、「<こと>を」という場合、「<こと>」には、幼い頃に多くの人が経験するような伝染性のある病気を表す名詞や、「大病」という名詞など、繰り返し起こることがほとんどない一回性のある(非日常的な)病気が当てはまる。したがって、繰り返される(日常的な)病気や怪我に関しては「<こと>」には当てはまらない。加えて、「癌」、「白血病」、「エイズ」など、場合によっては死に繋がる危険のあるような重い病気や不治の病の具体的な病名も「<こと>」には当てはまらない。次に、「<身体の一部>を」という場合、目、腰、胃などの身体の一部に何らかの苦痛が生じることを表す。なお、語義6と類義的な関係にある動詞として「する」が挙げられる。「する」は人や動物に何らかの病気が生じるという側面が焦点化されるのに対し、「やる」は(場合によっては病気などが生じ、その後、治癒するまでの過程を含めて)人や動物が何らかの病気を経験するという側面が焦点化されるという違いがある。
誤用解説
「する」と「やる」は類義的だが、「<身体の一部>」がヲ格名詞となる用法は「やる」のみにあり、「する」にはない。
 父が胃をする
 父が胃をやる
また、「怪我」という名詞は「する」のヲ格名詞にはなるが、「やる」のヲ格名詞にはならない。
 彼女が怪我をやった
 彼女が怪我をした
類義語・反義語
類義語する、かかる、患う
反義語治す、治る


7.職務・任務の遂行他動詞中級★★
表記やる
人や組織が、職業や社会的な立場などにおけるある業務を行う。
文型
<人・組織>が<職務・任務>をやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
姉は5年前から医者をやっている
「西田さん、何年か前にレストランをおやめになったってご存知でした?」「ええ、今は小料理屋をやっていらっしゃるらしいわよ」
これからこの土地でどんな農業をやろうかと、あれこれ考えているところです。
次回の研究会では、井本さんに司会をやってもらおうと思っている。
いつかプロ野球チームの監督をやりたい
来年度から、我が大学がこの学会の事務局をやります
コロケーション
<職務>をやる
医者、教師、料理人、農業、本屋
<任務>をやる
司会、監督、事務局、議長、社長
<様態>やる
いつか、しばらく、なんとか、初めて、ずっと
非共起例
<職務>をやる
 山川さんはすばらしい画家をやっている。
 山川さんは画家をやっている。
 山川さんはすばらしい画家だ
 安村さんは著名な医者をやっている。
 安村さんは医者をやっている。
 安村さんは著名な医者である
職業名を表す名詞に関しては通常、その性質(他者からの評価)を表す形容詞(イ形容詞)あるいは形容動詞(ナ形容詞)を付加した名詞句を、「やる」の必須項として用いることはできない。
<職務>をやる
 河合氏は企業をやっている
 河合氏は企業を経営している
 河合氏は企業で働いている[に勤務している]
 松井氏は百貨店をやっている
 松井氏は百貨店を経営している
 松井氏は百貨店で働いている[に勤務している]
企業や店舗を表す名詞に関しては、具体的な職種を表すケースや、比較的小規模の店舗を表すケースが「やる」の必須項となる。具体性の低い名詞(「企業」など)、大規模の店舗を表す名詞(「百貨店」、「デパート」など)、固有名詞(「髙島屋」など)は「やる」の必須項とはならない。
解説
語義1が、自らの意志に基づく行為一般を表すのに対し、語義7はその一種である、何らかの業務の遂行を表す。語義7の必須項であるヲ格名詞は、「弁護士」、「教師」など職業(名)を表すケース、「本屋」、「塾」など(経営の対象となる)店舗や会社の種類を表すケース、「司会」、「監督」など何らかの任務を表すケースがある。なお、語義7と最も類似した意味を有する動詞として「する」が挙げられる。語義1と同様、「する」が話し言葉においても書き言葉においても用いられるのに対し、「やる」は主に話し言葉で用いられ新聞記事や公文書などの硬い文体の文章ではあまり用いられないという違いがある。加えて、「する」が、ある職務・任務に就き、その役割を担うという側面が焦点化されるのに対し、「やる」はある職務・任務に関する何らかの業務を遂⾏するという(より具体的な⾏為の)側面が焦点化される、という違いが生じる場合もある。例えば「田中氏が監督をする」であれば、「田中氏」が「監督」に就任し、「監督」としてのの役割を担うという側面が、「田中氏が監督をやる」であれば、「監督」という役割において必要な諸々の具体的な業務を「田中氏」が実行するという側面が、それぞれ特に焦点化される。
類義語・反義語
類義語する、務める
反義語やめる


8.嗜好品・薬物の摂取他動詞上級
表記やる
人が(主に自分の意志で)、嗜好品や薬物を体内に取り込む。
文型
<人>が<もの>をやる・<人>が<数量詞>やる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
鈴木さんは近頃、煙草をやるそうだ。
「久々に再会したことだし、どうだ、今夜一杯やろうか?」「ええ、喜んで」
姉は兄と違って、酒も煙草も全くやりません
祖父は若い頃から、一日に4、5回、パイプで一服やることを日課としている。
山田さんは、最初にビールを一杯やり、その後、焼酎を二杯、ウイスキーを二杯やった
麻薬や覚醒剤は、絶対にやってはいけません。
コロケーション
<もの>をやる
酒、煙草、麻薬、覚醒剤、シンナー
<数量詞>やる
一杯、一服
<様態>やる
よく、いつも、ずっと、まず、たぶん
非共起例
<もの>をやる
 父は毎朝、コーヒーをやる
 父は毎朝、コーヒーを飲む
 母はよく紅茶をやっている
 母はよく紅茶を飲んでいる
「<もの>を」という必須項の「<もの>」が嗜好品である場合、煙草かアルコール飲料に限られる。
<もの>をやる
 伊藤さんがワインをやる
 伊藤さんがワインを一杯やる
 伊藤さんがワインを飲む
「<もの>を」という必須項の「<もの>」を、アルコール飲料の総称としての「酒」とすることは可能だが、アルコール飲料の下位分類としての「ビール」、「ワイン」、「焼酎」とすることは不自然である。この場合、これらの名詞と「やる」という動詞の間に「一杯」、「二杯」、「数杯」などの数量詞を置くことで自然な表現となる。
解説
語義1が、人が自分の意志で行う行為一般を表すのに対し、語義8はその一種である嗜好品や薬物の摂取を表す。嗜好品に関しては、アルコール飲料と煙草に限定される。また薬物に関しては具体的に、「麻薬」、「覚醒剤」、「シンナー」、「ドラッグ」などの違法の薬物に限定される。嗜好品、薬物、いずれもにおいても、語義8の必須項における「<もの>」は、「飲む」、あるいは「吸う」という手段で体内に取り込まれるものであり、習慣的(常習的)に摂取される可能性があり、そのことに対して好ましくないという判断がなされる可能性がある、という共通性がある。なお、「一杯やる」、「一服やる」という形で用いられる場合、「一杯」はアルコール飲料を、「一服」は煙草をそれぞれ指す。これらのケースにおいては、「酒を」、「煙草を」といったヲ格成分を言語化する必要はない。(「一杯やる」、「一服やる」はいずれも、婉曲表現の一種であるといえる。)
誤用解説
必須項が「<数量詞>」である場合、「<もの>」と異なり、助詞の「を」は付加しない。
 今夜は部下と一杯をやる。
 今夜は部下と一杯やる。
また、「<数量詞>」の「一服」、「一杯」については、「一」以外の数字を用いることはできない。
 祖父が三服やった
 祖父が(煙草を)三本吸った
 今夜、三杯やりましょう。
 今夜、一杯やりましょう。
類義語・反義語
類義語飲む、吸う
反義語やめる


9.生活他動詞中級★★
表記やる
人が、日々の生活を営む。
文型
<人>がやる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私は、妻と二人何とかやっています
私の稼ぎだけではやっていけないので、妻もパートをしてくれている。
ここまでどうにかやってこれたのも、妻と娘のおかげです。
「子ども4人の家庭は、どれくらいの収入があればやっていけると思いますか?」「ケースバイケースですし、私には何とも言えませんね」
この先も夫と手を取り合って、元気でやっていこうと思っています。
初めての一人暮らし、大変なことも少しはあるけれど、何とかやっているので心配しないでください。
stairs私はこちらで小料理屋を営みながら、何とかやっています
コロケーション
<金銭>でやる
収入、稼ぎ、給料、貯金、10万円
<人>でやる
家族、夫婦、1人、2人
<人>とやる
夫、妻、家族
<様態>やる
何とか、元気で、元気に、無事に、どうにか
解説
語義1が、人が自分の意志で行う行為一般を表すのに対し、語義9はその一種である、人が日々の生活を営むという事柄を表す。なお、語義9における必須項は「<人>が」という要素のみである。また、語義9は通常、「やっている」(発話時点での生活の成立)、「やっていく」(発話時点以降の生活の成立)、「やってくる」(発話時点に至るまでの生活の成立)という形式、及びこれらの意向形(「やっていこう」など)、可能形(「やっていける」など)で用いられる。(終止形「やる」、タ形「やった」などの形で用いることはできない。)
誤用解説
語義9では通常、ヲ格名詞(句)を必要としない。
 私たちは、何とか元気で生活をやっています
 私たちは、何とか元気で暮らしをやっています
 私たちは、何とか元気でやっています
また、「やる」と「する」は類義的な関係にあるケースが多いが、例えば「母は元気にやっている」と「母は元気にしている」を比べると、前者は「母」がどのように日々の生活を営んでいるか、という事柄を表すのに対し、後者は「母」が(健康状態、あるいは精神状態に関する)どのような様相を示しているか、という事柄を表すという違いがある。
類義語・反義語
類義語暮らす、生活する
反義語


やるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<こと>をやる
彼は、ソーシャルワーカーの仕事を七年間やった。
(永倉万治著 『ラスト・ワルツ』, 1991, 913)
先日テレビで1981年以前に建てられた住宅がいかに耐震性が低くて危険かという実験をやってました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
<様態>やる
彼は、クラスでも1、2を争うほど教科の成績が良い。無論宿題もしっかりやっている。
(Yahoo!ブログ, 2008, 文学)
<こと>をやる
私立の学校は、土曜日も授業をやっているので、当然、学力差はでる
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
「民営化すれば、競争原理が働いて、いろんなサービスをやりましょう、ということになるはずです」
(女性セブン, 2005, 一般)
<こと>をやる
テレビでは、なんとかいうゴルフのトーナメントのニュースをやっていた。
(小川勝己著 『彼岸の奴隷』, 2001, 913)
<手段(媒体)>でやる
TBSで太宰治が石坂浩二、山崎富栄が加賀まりこ、太田静子が壇ふみ、、、こんな配役でドラマをやっていました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 芸術、文学、歴史)
<身体の一部>をやる
をぽかりとやられた。
(歌野晶午著 『女王様と私』, 2005, 913)
手榴弾によるもので脚、腹、腕をやられ、ハノイの病院に急送された。
(亀山哲三著 『南洋学院』, 1996, 377)
<こと>をやる
「高校時代にS学園で野球をやってたんです」
重松清著 『口笛吹いて』, 2004, 913)
教会の裏にある映画館では、子ども連れ向けのイベントを何かやっていたようだ。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<数量詞(集団)>でする
店内は長いカウンターとテーブル席が二席。中年のママと手伝いの若い女二人でやっている。
(小川竜生著 『沸点』, 2001, 913)
キャディのバイトも部活の一環として、部員みんなでやっていたのです。
(片山晋呉著 『主役』, 2003, 783)
<こと>をやる
若いころに結核をやったような感じのする人で、青白く、頼りがいがなさそうでした。
(司馬遼太郎著 『司馬遼太郎全講演』, 2003, 914)
私はギックリ腰を3回やりました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, スポーツ)
<職務>をやる
跡取りはいても、農業をやるかどうかとなると、話は別ですよね。
(山下惣一,大野和興著 『百姓が時代を創る』, 2004, 610)
ふだんはブラジル人の学生相手の日本語教師をやって生計をたてている。
(田中光二著 『地の涯幻の湖』, 1987, 913)
<任務>をやる
運営は、会員のなかで講師をしたり、司会を持ち回りでやったりするというやり方をとりいれている。
(在宅ケア研究会編 『ホームヘルパーを知っていますか』, 1999, 369)
<もの>をやる
三百ミリリットルのを父と一本ずつちびりちびりとやりながら見ていたが、四時の閉幕には私の分は空いてしまった。
(大豊昇著 『はっぴぃ・らいふ』, 2003, 289)
<金銭>でやる
結婚しようとおもっているのに、わたし達も少ない給料でやっているので今後が不安です。
<人>でやる
親業も初心者なので、息子にとっても大変だったと思いますが、お互いの両親や周囲にも支えられてなんとか家族でやってこられました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 家庭)
<様態>やる
今は二人で元気にやってますけど、もう年だし、一人になったら主人は長男だから引き取ることになってるの。
(樋口恵子著 『私の老い構え』, 1987, 367)






























嘘つけ、おまえが先にやったんだろ
うも、喉をやられちゃったみたいだ。
私はこちらで小料理屋を営みながら、何とかやっています
やることなすこと

意味
ある人の行為の何から何まで。
用例
課長は、私のやることなすこと全てが気に食わないようで、常に苦言を呈される。
コーパスからの用例
受講生のことを、あまりよく思っていないような口ぶりだったくせして、こうして真夜中まで起きていて、肝試しなどという子供じみた集まりに顔を出す。やることなすこと、矛盾だらけである。(天樹征丸作 『金田一少年の事件簿』, 1997, 913)
やってやれないことはない

意味
人が、十分に努力すれば、ある物事を何とか遂行(実現)することができる(はずである)。
用例
独立して起業したら、この先、大変なことも少なからずあるだろうけれど、どんなに厳しいことでもどんなに辛いことでも、やってやれないことはないだろうし、勇気を持って果敢に挑戦してほしい。
コーパスからの用例
「自分がしなくてはならない」状況に追い込まれたら、いくつになってからでもやってやれないことはないです。(Yahoo!知恵袋, 2005, 子育てと学校/子育て、出産/子育て、出産)
複合動詞 V1

やり合う、やり上げる、やり落とす、やり返す、やりかける、やりっ放す、やり遂げる、やり切る、やり尽くす、やり通す、やり始める、やり続ける、やり終える、やり過ぎる、やり損なう、やり損じる、やり直す
複合名詞

やり合い、やり掛け、やりっ放し、やり甲斐、やり返し、やり方、やり口、やり過ぎ、やり損ない、やり損じ、やりたい放題、やり手、やり直し、やり様
やる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形やる
ない形やらない
~なかったやらかった
ます形やり
~ませんやりま
~ましたやりした
~ませんでしたやりまんでした
~ときやるとき やる
ば形
意向形
て形やって
た形やった
可能形やれる
受身形やられる
使役形やらせる
閉じる