焼くのコアイメージ

1.燃焼他動詞初級★★★
表記焼く
人が、ものに火の作用を加え、その状態を変化させる。
文型
<人>が<もの>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
トースターで食パンをこんがり焼く
焼いた鯛を乗せた御飯に出汁を掛けて食べる。
火葬とは、遺体を焼いて灰にする葬法である。
戦争で家を焼かれ、住むところを無くした。
「この部位のお肉はさっと炙るだけで食べたほうが良いよ」「肉ぐらい好きに焼かせてよ」
うちの店では熱が均一にいきわたった鉄板で生地を焼いているから、おいしいどら焼きができるのです。
コロケーション
<もの>を
① 食料:パン、肉、魚、餅、卵、生地
② 建物・場所:家、村、城、町、山、森
③ その他:遺体、石、ごみ、粘土
④ ものの箇所:全て、一部、両面、表面、皮目、部分、大半
<手段>で
① 火:火、炭火、炎、強火、弱火、中火、直火、焚火
② 加熱器:オーブン、トースター、グリル、バーナー、コンロ、囲炉裏、七厘
③ 火の熱が作用する道具:フライパン、鉄板、網
④ その他:焼夷弾
<出来事>で
火事、空襲、戦争、戦火、戦災、兵火
<場所>で
家、店、外、自宅、家庭、庭、店先
<調味料>で
バター、たれ、塩コショウ、醤油
<様態>
① 調理:こんがり、香ばしく、カリッと、かりかりに、キツネ色に
② 全般:軽く、よく、そのまま、じっくり、しっかり、丁寧に、上手に、豪快に、丹念に
解説
この意味の「やく」は、火の熱の作用により、対象であるものの状態を変化させることを表す。この、火の熱の作用については、対象であるものに直接火をつける場合だけでなく、対象を乗せた鉄板などを火で熱し、その熱を対象に作用させる場合もある。なお、状態の変化としては、形、色、温度、硬軟などの変化が生じる。
誤用解説
「やく」は、「森を焼く」など、熱の作用による状態変化の結果として、ものの一部または全体の焼失も表しうるが、以下のように、初めから灰にすることを目的としている場合には使えない。
 いらない書類を燃やした
 いらない書類を焼いた
また、この意味の「やく」は、固体のみが対象となる。「もやす」は<炎をあげる>ことを表すため、気体や液体に対して、「ガスを燃やす」、「アルコールを燃やす」、また以下の「火を燃やす」のように言えるが、「やく」は言えない。
 薪をくべて火を燃やす
 薪をくべて火を焼く
類義語・反義語
類義語燃やす
反義語


2.燃焼による加工他動詞初級★★★
表記焼く
人が、ものに火の作用を加えて状態を変化させ、別のものを作る。
文型
<人>が<生産物>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
週末になると、姉はお菓子を焼く
炊飯器でケーキを焼くことができるらしい。
「今日のお勧めは何ですか」「炭火で焼いたTボーンステーキです」
昔ながらの炭焼窯で、炭を焼いてみよう。
弥生式土器は縄文式土器よりも高温で焼かれたそうだ。
あのお店では、毎日、上等の小麦粉でふかふかのパンを焼いています
コロケーション
<生産物>を
① 食品:クッキー、ケーキ、ピザ、ステーキ、せんべい、お好み焼き、たこ焼き、お菓子
② 作品:炭、器、瓦、陶器、焼き物、作品、土器、煉瓦、埴輪
<様態>
おいしく、香ばしく、薄く、丸く、うまく
<道具>で
① 火:火、炭火、直火
② 加熱器:窯、オーブン、トースター、ホットプレート
③ 火の熱が作用する道具:フライパン、鉄板
<場所>で
家、店、外、自宅、家庭、庭、店先
解説
この意味の「やく」は、火の熱を加えてあるものの状態を変化させ(つまり加工して)、それによって別のものを生じさせることを表しており、これは語義1から派生した意味である。語義1は対象であるものに火の熱を作用させ、その性質を変化させることを表すが、語義2はその結果として別のものを生じさせることを表している。これに関連して、語義1のヲ格には熱の作用を加える対象としての<もの>がくるが、語義2のヲ格には、そのものの状態が変化した結果生じる<生産物>がくる。
 ケーキの生地を焼く。(語義1、プロセス)
 ケーキを焼く。(語義2、結果)
 粘土を焼く。(語義1、プロセス)
 を焼く。(語義2、結果)
これは特に、料理のプロセスを表す他の動詞にもみられる。
 を炊く。(プロセス)
 炊き込みご飯を炊く。(結果)
 海老を揚げる。(プロセス)
 天ぷらを揚げる。(結果)
誤用解説
この意味の「やく」は熱の作用によって<生産物>を仕上げることを表すが、火の熱またはそれと同じ働きをする熱源によって加工品を仕上げる場合に限られる。したがって、日光の熱が当たっていても、主として乾燥によって加工品を仕上げる場合などには「やく」は用いられない。
 庭で梅干を焼く
 庭で梅干を干す
類義語・反義語
類義語作る
反義語


3.燃焼による刻印他動詞上級
表記焼く
人が、ものに熱の作用を加えて状態を変化させ、情報を記す。
文型
<人>が<もの>に<情報>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
まな板の側面部分に、樹種名が焼かれている。
酒蔵を訪ねた記念に、蔵元のブランド名が焼かれたお猪口を買った。
この店では、表に店名が焼かれた卵焼きが特に人気です。
「記念品はどんなものがいいかな」「木製コースターに名前を焼こう
子供が一番喜んだのは、消しゴムにレーザー光線で自分の名前を焼いてもらえるコーナーでした。
「彼は今何をしているの」「竹のネックレスに、自分の名前を焼いているところ」
コロケーション
<もの>に
① もの:卵焼き、せんべい、木製品
② ものの部分:表、側面、裏
<情報>を
名前、店名、文字、ロゴ
<道具>で
バーナー、焼き印、レーザー
解説
この意味の「やく」は、あるものに熱を加えてそのものの状態を変化させることを表すという点で、語義1と関連している。ただし、語義1は「魚を焼く」のように、ヲ格には状態を変化させる対象として、<もの>をとる一方で、語義3の「やく」のヲ格には、あるものの状態が熱により変化したことによって、その表面に生じる部分(「名前」など)をとる。
誤用解説
熱の作用により情報をものの表面に記す場合には「やく」を用い、圧力の作用により情報をものの表面に記す場合には「押す」を用いる。
 金型で名前を焼く。(加熱による刻印)
 金型で名前を押す。(プレスによる刻印)
類義語・反義語
類義語入れる(名前[ロゴ]を入れる)
反義語


4.変色(人が主体)他動詞初級★★★
表記焼く
人が、身体(の部分)に太陽光の作用を加え、変色させる。
文型
<人>が<身体(の部分)>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
日焼けサロンで全身を小麦色に焼いた
肌を健康的に焼こう
休暇後、真っ黒に焼いた身体で出社すると、案の定みんなに「どこに行ったんだ」と聞かれた。
顔を焼いてしまうとくすみの原因になるので、日焼け止めをしっかり塗ろう。
日焼けマシーンで焼くと、どうしてもムラになってしまう。
久しぶりに会った弟は、全身を真っ黒に焼いていた
stairs日焼けサロンで肌をやいて、金髪にして濃いメイクするのがね。
コロケーション
<身体(の部分)>を
肌、体、顔、全身、身体
<様態>
小麦色に、こんがり、黒く
<場所>で
海、ベランダ、屋上、日焼けサロン
解説
この意味の「やく」は、人が、太陽光の熱をあるものに作用させることによって、そのものの表面を変色させることを表している。これは、人があるものに熱の作用を加えそのものの性質や状態を変化させるという点で語義1と同様である。ただし、語義1の熱は火の熱であるが、この意味の熱は太陽光が発する熱という点で異なる。また、語義1においてものに生じる変化は、形、色、温度、硬軟などの変化であるが、この意味における変化は色の変化に限られ、またその変化が生じる部分も、ものの表面に限定される。なお、語義1では、主体である<人>が<火>または火と同様の働きをする何らかの<熱源>に対して、火の大きさや向きを変えるなどの操作を行うことができるが、この意味の「やく」では、主体である<人>は、直接太陽光の向きを変えるなどの操作を行うことはできない。太陽光の熱をあるものに作用させるということは、肌や背中など、主体の身体に関わるものが対象となる場合、主体自身が太陽光のある場所に移動することで、主体の一部に太陽光を当て、熱の作用を受けることになる。それゆえこの意味の「やく」は、「海で」「ベランダで」などのように、太陽光の作用を受ける場所を表す表現を伴うことが多い。
 なお、本来は自然界の太陽光によってものの表面を変色させることを表すが、例文中にもあるように、「日焼けマシーン」で人工的に肌を変色させる場合にもこの意味の「やく」が用いられる。
誤用解説
この意味の「やく」は、以下のように、「肌」をヲ格に取ることができるが、同様の身体部位を指すと思われる「皮膚」に対して用いることはできない。
 海で皮膚を焼いた。
 海でを焼いた。
「皮膚」は人や動物の身体の表面を覆い保護している皮である。一方「肌」は、特に人間の表皮を表し、人間の肉体を内部に持つ表面部分、つまり本体の表面に焦点が当たっている点で「皮膚」とは異なる。それゆえ、以下のように本体からの分離を表す場合には、「肌」を用いることはできない。
 ケミカルピーリングは、皮膚をはがす治療法です。
 ケミカルピーリングは、をはがす治療法です。
この例からわかるように、「皮膚」は皮そのものを表す一方で、「肌」は肉体の表面部分を指すため、「はがす」ことはできない。したがって、対象であるものの表面の変色を表す語義4の「やく」は、単に皮そのものを表す「皮膚」に対して用いることはできず、本体の表面部分を表す「肌」にのみ用いることが可能である。


5.変色(太陽光が主体)他動詞初級★★★
表記焼く
太陽光が、ものを熱し、変色させる。
文型
<太陽光>が<もの>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
港の船は陽に焼かれてすっかり色あせてしまっている。
自転車の塗装は長年陽に焼かれたことでだいぶ変色している。
太陽が照りつけ、僕の肌を焼く
真夏の日差しがじりじりと砂浜を焼く
夏の太陽が焼いた肌をそのまま放置しておくと、シミやシワの原因になります。
照りつける日差しがシャッターを焼いている
コロケーション
<太陽光>が
太陽、日差し、紫外線、日光、日の光
<もの>を
① 身体:肌、体、顔、全身、身体、背中
② その他:自転車、車、カーテン、塗装
<様態>
小麦色に、こんがり、黒く、じりじり、容赦なく
非共起例
<もの>を
 真夏の太陽が僕の皮膚を焼いた。
 真夏の太陽が僕のを焼いた。
語義4の誤用解説で述べた通り、「皮膚」は皮そのもの(他のものからは独立して存在することができるもの)を表すことができる一方で、「肌」は肉体の表面部分(物の表面部分であり、本体から独立させることはできない部分)を指すため、対象であるものの表面の変色を表す語義5の「やく」も、語義4と同様、単に皮そのものを表す「皮膚」に対して用いることはできず、本体の表面部分を表す「肌」にのみ用いられる(語義4の誤用解説も参照)。
解説
この意味の「やく」は、火の熱ではなく太陽光がものを熱し、その表面を変色させることを表しており、太陽光による加熱およびそれによるものの表面の変色を表すという点で、語義4と同様である。ただし、語義4の主体は<人>であり、その主体が、太陽光が当たる場所に移動するなどして太陽光の熱をものに作用させ変色させることを表す一方で、この意味の「やく」の主体は、意志を持たず、ものに直接作用し変色させる<太陽光>であるという点で異なる。
類義語・反義語
類義語照りつける
反義語


6.電磁波による損傷他動詞中級★★
表記焼く
人が、ものに電磁波の作用を加え、損傷させる。
文型
<人>が<電磁波>で<もの>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
医療用レーザーを患部に照射して、組織を焼く
一般的な脱毛法では、黒色に反応するレーザーや光で毛を焼いて、毛根を破壊する。
「あれ?目の下のほくろどうしたの?」「電気メスで焼いてもらったんだよ」
最近は、筋腫を超音波で焼くことで、筋腫を縮めるという方法があります。
しょっちゅう鼻血が出るので耳鼻科に行ったら、炭酸ガスレーザーで鼻の粘膜を焼かれた。
ラジオ波で病巣を焼いていき、小さくした。
コロケーション
<もの>を
粘膜、毛、網膜、目、組織、毛根、癌、患部
<電磁波>で
レーザー、電気、放射線、電気メス、レーザー光線、超音波
<様態>
すぐに、少しずつ、しっかり、完全に
解説
この意味の「やく」は、人が、電磁波をあるものに作用させることによって、そのものを損傷させることを表す。これは、電磁波の熱をあるものに作用させることによって、そのものの状態を変化させるという点で語義4と類似している。ただし、語義4では、人がものに作用させるのは太陽光であるが、語義6でものに作用させるのは、太陽光(可視光線、紫外線)だけでなく、放射線や高周波電流を含むより広い<電磁波>である。また、語義4における変化はものの表面の変色であるが、語義6における変化は、変色だけでなく形状等の変化も伴う<損傷>という状態変化を表すという点でも異なる。
 紫外線などの有害光線が子どもの目を焼いていきます。
この例における主体の「紫外線」は、太陽光の一部であり、「海辺で肌を焼く」と同様に語義5であると思われるかもしれないが、これは語義6の「やく」の例である。語義5は表面の<変色>を表す一方で、語義6は<損傷>を表しており、上記の例は<目を傷つける>ことを表しているため後者であるといえる。
 なお、損傷といってもマイナスとは限らず、病巣などの対象の場合にはその部分を損傷させることで病気を治すことになるため、全体としてはプラスの意味になることもある。
誤用解説
電磁波を照射させる場合でも、あるものの損傷を目的としない場合には、この意味での「やく」は用いられない。例えば以下の例は、電磁波の一種であるエックス線を目的の物質に照射することにより、物質の状態を画像として可視化することを表し、物質を損傷させることを表すのではない。したがって、「やく」を用いることはできない。
 エックス線で肺を焼く
 エックス線で肺を撮影する
類義語・反義語
類義語取る(イボを取る)、なくす(病巣をなくす)
反義語


7.刺激性の液体による損傷(人が主体)他動詞上級
表記焼く
人が、ものに刺激性の液体の作用を加え、損傷させる。
文型
<人>が<もの>を<刺激性の液体>でやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その死体の顔は、身元特定が困難になるようにと、酸で焼かれていた。
鼻血が止まらない時は硝酸銀で粘膜を焼いたりガーゼを詰めたりする。
これまで何度もイボができ、そのたびに液体窒素で焼いてもらっている。
嘔吐が止まらず、胃液で喉を焼いてしまった。
あの店のラーメンはスープにとろみがあってなかなか冷めないので、注意しないと舌を焼いてしまう。
逆流性食道炎は、胃酸が食道のほうに逆流し、自分の胃酸で自分の食道を焼いてしまう病気です。
コロケーション
<もの>を
イボ、喉、鼻、粘膜
<刺激性の液体>で
① 薬品:薬、液体窒素、酸
② 分泌物:胃酸、胃液
<様態>
しっかり、徐々に、少しずつ、うっかり
解説
この意味の「やく」は、人が、何らかのものの作用によって、ものを損傷させることを表すという点で、電磁波の熱をあるものに作用させることによってそのものを損傷させることを表す語義6と類似している。ただし、語義6でものに作用させるのは、<電磁波>である一方で、語義7でものに作用させるのは<刺激性の液体>であるという点が異なる。なお、<刺激性の液体>には、液性(酸性・アルカリ性)が極端に強く、対象にとって刺激になる場合と、温度が極端に高いか極端に低くて刺激になる場合が考えられる。
誤用解説
刺激性の液体によって物が損傷する事態であっても、その程度によっては「やく」を用いることができない場合もある。
 強い酸で肌を焼いてしまった。
 で肌を焼いてしまった。
「漆」は樹液を加工した塗料であり、これにより肌がかぶれてしまうことがあるが、「やく」は酸での損傷など、その程度が大きい場合に用いられる。なおこの理由から、「液体窒素でイボを焼く」のように、イボを徹底的に損傷し、破壊することまでを表すこともできる。
類義語・反義語
類義語傷付ける(喉を傷付ける)
反義語


8.刺激性の液体による損傷(刺激性の液体が主体)他動詞上級
表記焼く
刺激性の液体が、ものに作用し、損傷させる。
文型
<刺激性の液体>が<もの>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
麺に絡んだ熱々のスープが舌を焼く
度数の高い酒が喉を焼く感覚があった。
胃酸が食道を焼くことで、癌になることがあると聞いた。
糖尿病の検査でのブドウ糖一気飲みで、喉が焼かれてしまった。
瓶からこぼれた酸が、肌の露出した部分を焼いていく。
吐こうとしても出てくるのは胃液ばかりで、酸が喉を焼いているのがわかる。
コロケーション
<刺激性の液体>が
① 分泌物:胃酸、胃液
② 酒:酒、アルコール、焼酎、ラム酒
③ 薬剤:薬、液体窒素、酸
<もの>を
喉、胃、粘膜
<様態>
しっかり、徐々に、少しずつ、完全に
解説
この意味の「やく」は、刺激性の液体の作用によりあるものを損傷させることを表すという点で、語義7と同様である。ただし、語義7の主体は<人>であり、刺激性の液体を操作して対象であるものの損傷に間接的に関与する一方で、この意味の「やく」の主体は、対象であるものに直接作用し損傷を引き起こす<刺激性の液体>である。したがって、語義7は損傷に間接的に関与する<人>に焦点が当たっている一方で、語義8は直接ものに働きかける<刺激性の液体>に焦点が当たっているという点で異なる。なお、語義7と同様、<刺激性の液体>には、液性(酸性・アルカリ性)が極端に強く、対象にとって刺激になる場合と、温度が極端に高いか極端に低くて刺激になる場合が考えられる。
誤用解説
語義7と同様、刺激性の液体によってものが損傷する事態であっても、その程度によっては「やく」を用いることができない場合もある。
 強い酸が肌を焼く。
 が肌を焼く。
「漆」は樹液を加工した塗料であり、これにより肌がかぶれてしまうことがあるが、「やく」は酸での損傷など、その程度が大きい場合に用いられる。なおこの理由から、「液体窒素がイボを焼く」のように、イボを徹底的に損傷し、破壊することまでを表すこともできる。
類義語・反義語
類義語傷付ける(喉を傷付ける)
反義語


9.現像他動詞上級
表記焼く
人が、印画紙に強い光の作用を加え、状態を変化させて写真にする。
文型
<人>が<写真>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
写真部の部室には暗室があり、自分で撮った写真を焼くこともできます。
フィルムをダメにしてしまい、写真を焼くことができなくなってしまった。
日常のスナップをL判で焼くだけなら、そこまでカメラの画素数にこだわらなくてもよい。
今度の休みには、暗室にこもって気に入った写真を焼こうと思う。
フィルム現像機や写真プリンターのメンテナンスを怠ると、良い写真を焼けない
私が子どものころ、父は自宅の簡易暗室で白黒写真を焼いていた
コロケーション
<もの>を
写真、スナップ
<様態>
丁寧に、さっそく
解説
この意味の「やく」は、強い光の作用によって印画紙の表面を変化させ、写真にすることを表す。これは、太陽光の熱をあるものに作用させることによって、そのものの表面を変色させることを表す語義4と、光の作用によって物の表面の状態を変化させるという点で同様である。一方で、語義4の「やく」では、対象である人間の「顔」や「背中」を変色させることを表すのに対し、語義9の「やく」は、光の作用によって変色させた結果「写真」を完成させることを表しているという点で両者は異なる。なお、ヲ格には直接光の作用を加える対象となる「印画紙」ではなく、それによって生じる<生産物>の「写真」などがくる。
誤用解説
画像を紙面に現す場合であっても、パソコンからプリントアウトするなどの場合には、「やく」を用いることはできない。
 パソコンに保存していた写真を焼く
 パソコンに保存していた写真を印刷する
類義語・反義語
類義語現像する
反義語


10.記載他動詞上級
表記焼く
人が、音声・文書・画像などのデータを、CD・DVD・ブルーレイディスクなどに記載する。
文型
<人>が<情報>を<もの>にやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
このソフトを使えば、イメージをトラック分けして焼くことができます。
映画をDVD-Rに焼いて無断複製し、販売した場合、懲罰対象となる。
CD-Rに焼いたMP3ファイルを、音楽CDプレーヤで再生する。
レコーダーに録画した番組をDVDに焼いて楽しむ。
サウンドトラック盤をCDに焼いたので、ドライブ中に楽しめる。
パソコンでCDやDVDにデータを焼いている間は、他の作業はしない方が良い。
stairsよかったら、俺のおすすめの曲CDにやいて持ってこようか。
コロケーション
<情報>を
データ、ファイル、イメージ、動画、画像、音楽、曲、番組
<もの>に
CD、メディア、ディスク、DVD
<様態>
さっそく、少しずつ、大量に、一気に
<手段>で
パソコン
解説
この意味の「やく」は、強力なレーザーによって、別の媒体に音声、文書、画像などのデータ(情報)を書き込むことを表す。これは、情報を別のものに現すという点で、フィルム内の情報を強い光を当てることによって印画紙に移すことを表す語義9と類似している。
誤用解説
HDD(ハードディスクドライブ)は、情報を記録し読み出す補助記憶装置のことであり、通常はパソコンやテレビなどの本体に内蔵されている。この意味の「やく」は、本体にある情報を別の場所にコピーすることを表すため、通常、CDやUSBなどから本体のHDDに情報を移す場合には「やく」とは言えない。ただし、「外付けHDD」は、本体とは別のものであり、本体から情報を移すために用いられるため、「やく」も可能になる。
 データをHDD焼く
 データをHDD移す
 データを外付けHDD焼く
類義語・反義語
類義語移す、コピーする
反義語


11.嫉妬他動詞上級
表記妬く
人が、人・ことに嫉妬する。
文型
<人>が<こと>をやく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
下の子と遊んでいると、上の子がすぐに妬く
人気者の田中君と話をしたら、クラスのみんなに妬かれた
「私の彼、他の女の子のことばかり褒めるの」「あなたに妬かせたいんじゃない?」
出産後、ペットが赤ちゃんに妬かないようにかなり気をつかった。
「君は友達といる時の方が楽しそうだね」「まさか、友達との関係を妬いてるの?」
自分より先に昇進した同僚に、少し妬いている
コロケーション
<こと>を
こと、仲、関係、昇進、間柄
<人>に
彼、彼女、相手、ヒロイン、主人公、娘、次男
<様態>
少し、わざと、すぐ
解説
強い感情は<炎>にたとえられることがある(「やる気に燃える」、「怒りの炎を燃やす」、「愛が燃え上がる」など)。嫉妬もこれと同様強い感情であり、以下のように、「火が付く」、「煽る」、「メラメラと燃やす」など、炎に関する一連の表現が<嫉妬>に関する様々な側面を表すのに用いられる。
 嫉妬心に火が付く
 嫉妬心を煽る
 嫉妬の炎をメラメラと燃やす
怒りや嫉妬などの強い感情を抱き、興奮状態になると、実際に顔や身体が熱くなり、赤みを帯びることがある。このような経験に基づき、強い感情と熱が結びつけられる。さらに、ある感情を抱き、それが強くなるプロセスと、火が付き、炎が大きくなるプロセスは類似している。嫉妬することを「やく」を用いて表すのはこのような捉え方に基づいている。
なお、嫉妬することを「焼き餅を焼く」のように述べることもある。
 会社の飲み会であっても、妻はすぐに妬く
 会社の飲み会であっても、妻はすぐに焼き餅を焼く
これは、この意味の「妬く」を「焼く」とし、それに「餅」を添えて同様の意味を表すものである。
誤用解説
ヲ格には嫉妬の対象である出来事が、ニ格には嫉妬の対象である出来事に関与する人物(主体が嫉妬心を向ける人物)が来る。
 妬いている。
 妬いている。
 彼との仲妬いている。
 彼との仲妬いている。
類義語・反義語
類義語嫉妬する、ねたむ
反義語


焼くの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>を
男はもっぱら森や河川で狩猟をし、女がを焼いてコーン、タバコなどを耕作していた。
(大森実著 『ザ・アメリカ勝者の歴史』, 1986, 332)
たとえば,モチを焼くとモチは膨らみます。
(原田稔著 『相対性理論の矛盾を解く』, 2004, 421)
<手段>で
超高層ビルを背にした老人が、東京湾で釣った魚を七輪で焼く。
(青山圭秀著 『最後の奇跡』, 2000, 913)
<出来事>で
神戸の寺で生まれ,戦災でその寺を焼かれ、小学校卒業と同時に高野山に上って修行したと言います。
(中西政山著 『四柱推命教室は本日も大賑わい』, 2002, 148)
<場所>で
国際通りを横切ったところに、八つ目鰻の店があり、小串に刺した肝を店先で焼いていた。
(山田太一著 『異人たちとの夏』, 1991, 913)
<調味料>で
茄子は、5ミリの厚さにスライスして,で焼くのが1番すき!
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
邦男の夕食分に残しておいた肉を、肴になるように醬油で焼いてテーブルに置くところだった。
(林真理子著 『最終便に間に合えば』, 1985, 913)
<様態>
このときお肉の旨味が脂分と一緒に溶け出すのを防ぐには、強火で一気に焼くのがコツ」
(an・an, 2004, 一般)
<生産物>を
息子の友達が遊びに来たので、おやつにクッキーを焼いた。
(Yahoo!ブログ, 2008, 住まい)
その昔、山のあちこちで,を焼く煙が静かにたちのぼっていた。
(鎌田慧著 『日本列島を往く』, 2005, 304)
<様態>
ホットケーキをふっくら焼くコツがあれば教えてください。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<道具>で
今まで お好み焼きも焼きそばもフライパンで焼いてた…
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
実際、私もこのでピザを焼いてみました。
(市報松江, 2008, 島根県)
<場所>で
最近街の片隅にその場で焼いて売るメロンパン屋が増えてきました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!知恵袋)
中庭で、本日のランチのメイン料理、ステーキを焼くのである。
(福島敦子著 『これが「美味しい!」世界のワイン』, 2003, 588)
<身体(の部分)>を
それは真夏のビーチでを焼くのとは全く違う気分だった。
(赤羽建美著 『イヴの贈り物』, 1991, 913)
日焼けサロンでを焼き,パブでアルバイトをするなどして,大学にはほとんど通っていなかった。
(飯森眞喜雄,中村研之編 『絵画療法』, 2004, 146)
<様態>
だがしかし、大学にいくのはレッテルをもらうためで、在学中、勉強もせずに、麻雀にうつつを抜かし、海辺で肌を黒く焼き、女の尻を追いかけ回して、何も知らずに世の中へ出てくる。
(早坂茂三著 『早坂茂三の「田中角栄」回想録』, 1987, 312)
<場所>で
▲休みは徹底的にとる―南フランスのニース海岸で肌を焼き、休暇を楽しむ女性達
(磯村尚徳著 『ちょっとキザですが』, 1975, 699)
<太陽光>が
秋の烈日が頰を焼く。
(石川達三著 『風にそよぐ葦』, 1999, 913)
<もの>を
庭の白砂をじりじりと太陽が灼いている。
(高橋克彦著 『時宗』, 2001, 913)
<様態>
太陽が容赦なく照りつけ、肌をじりじりと焼く。
(ナサニエル・フィルブリック著;相原真理子訳 『復讐する海』, 2003, 557)
<もの>を
自己判断での扁桃あたりの粘膜をレーザーで焼くような手術を受けるのであれば保険適応外になる可能性があります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
<電磁波>で
レーザーで焼くことによって、確かに粘膜は厚く丈夫になります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
<刺激性の液体>で
そして、二度とそんな気をおこさせないため、まわりのものへの見せしめとして、立花の顔は濃硫酸で焼かれた。
(赤城毅著 『帝都探偵物語』, 2001, 913)
<刺激性の液体>が
口に含めばとろりと濃く,酒精が喉をしっとりと灼いた。
(渡瀬草一郎著 『陰陽ノ京』, 2002, 913)
<もの>を
ひとりは毎日のパンにさえこと欠き、アルコールとコーヒーだけでを焼くような生活をしたし、もうひとりの方は「みそと少しの野菜」しか食べなかった。
(伊勢英子著 『ふたりのゴッホ』, 2005, 723)
<もの>を
永瀬は結局、この写真を一枚しか焼かなかった。
(七海花音著 『僕らのロビン・フッド宣言』, 1996, 913)
<情報>を
PCに取り込んだ動画をCDに焼いたんですが家庭にあるDVDプレイヤーで再生ができません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
<もの>に
オーサリングが完成したらDVDディスクに焼きましょう。
(野沢直樹著 『すぐにできる!Mac OS 10』, 2005, )
<手段>で
パソコンでCDに歌を焼いたんですが、CDラジカセで聞けません、どうすれば聞けるようにCDに焼けますか。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
<こと>を
他の男性と仲がいいのを妬いてくれたりとか、接してない時間が長い事を「寂しい」とか言ってすねてくれたりとか、そういう程度の「束縛心」なら、大歓迎♪って感じですね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
<様態>
「ただ少し妬いてはいるけどね。
(高崎ともや著 『この接吻さえもあなたのために』, 2004, 913)






























日焼けサロンで肌をやいて、金髪にして濃いメイクするのがね。
よかったら、俺のおすすめの曲CDにやいて持ってこようか。
世話を焼く

意味
進んで他人の面倒を見る
用例
あの子は要領が良くないから、ついつい世話を焼きたくなる。
コーパスからの用例
吉原へこなかった間に彼は心中事件をおこして新聞ダネとなり、師の夏目漱石にさんざん世話を焼かせた。(近藤富枝著 『今は幻吉原のものがたり』, 1986, 913)
手を焼く

意味
対処に困る、てこずる
用例
小学校では、子どもたちの問題行動に手を焼いている教師は少なくない。
コーパスからの用例
幼時から継母に手を焼かせぬよう、駄々もこねず、わがままも云わず、ひたすら周囲の大人の顔色を見て育ってきたわが身を云い当てられたようで、源四郎は苦笑した。 (安西篤子著 『武家女夫録』, 1988, 913)
身を焼く

意味
恋い慕う気持ちや嫉妬など、強い感情によってもだえるほど苦しむ。
用例
彼は叶わぬ恋に身を焼いている
コーパスからの用例
七十六歳の老いた母親ですが、息子の死から一年が過ぎようとするいまも、強い怒りと悲しみに激しく身を焼かれています。 (山崎敏子著 『告発-人工透析死』, 1998, 916)
焼きを入れる

意味
①刀の刃を焼いて強くする
用例
刃先にだけ焼きを入れ、硬くする。
コーパスからの用例
別当真禅寺で沐浴し、裃の装束を着け、前日に作った餅の鍬を担いで拝殿前の餅焼き石で焼きを入れる。 (高橋秀雄,近藤忠造編 『祭礼行事』, 1993, 386)
意味
例文
用例
コーパス用例
焼きが回る

意味
年を取って、能力が落ちる。本来は、刀の刃を焼く際の火が強すぎて、かえって切れ味が悪くなることから。
用例
数年前はプールを何往復もできたが、最近は3往復で疲れてしまう。すっかり焼きが回ってしまった。
コーパスからの用例
だが、自己憐憫のちくりとした痛みをふりはらえないようなら、おれもいよいよ焼きがまわったことになる。 (ジョナサン・レセム著;浅倉久志訳 『銃、ときどき音楽』, 1996, 933)
複合名詞

焼き上がり、焼き網、焼き色、焼きおにぎり、焼き加減、焼き菓子、焼き餃子、焼き具合、焼き魚、焼き団子、焼き肉、焼き増し、焼き目、やきもち、焼き物、焼きりんご
焼く(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形やく
ない形やかない
~なかったやかかった
ます形やき
~ませんやきま
~ましたやきした
~ませんでしたやきまんでした
~ときやくとき やく
ば形
意向形
て形やいて
た形やいた
可能形やける
受身形やかれる
使役形やかせる
閉じる