渡るのコアイメージ

1.横断自動詞初級★★★
表記渡る
人や乗り物が、間を隔てている幅のある場所を通って、反対側に移動する。
文型
<人・動物・乗り物>が<場所>を渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
両親と一緒に、フェリーで海峡を渡った
この辺りは車が多いので、簡単には大通りを渡れないよ。
踏切のないところで子供たちに線路を渡らせるなんて、危ないし、教育上よくない。
カエサル将軍は馬に乗ったまま、ルビコン川をローマ側へお渡りになった
毎年、冬になると、多くの渡り鳥がシベリアから日本海を渡ってくる。
ロープを使うことによって、どうにか深い谷を向こう側に渡ることができた。
stairs信号が青だからといって安全確認をせずに道路を渡ってはいけません。左右をよく見て、車が来ていないのを確かめてから渡るようにしましょう。歩道橋があるところでは、面倒でも必ず歩道橋を渡りましょう
コロケーション
<場所>を
川、川の流れ、沢、海、海峡、道路、線路、谷
<手段>で
船、渡し船、フェリー、飛行機、橋
<起点>から
ここ、こっち、こちら側
<着点>に[へ]
向こう、あっち、あちら側、対岸
<様態>
なんとか、どうにか、やっと、ようやく、ついに、さっさと
非共起例
<場所>を渡る
 川を進む
 川を渡る
「川を進む」の場合は、川に浮かんだ船が流れに沿って、上流から下流へ下ったり、下流から上流へ上ったりする移動を表す。川を横切って対岸へ行く場合は、「渡る」を用いる。
<場所>を渡る
 国境を渡る。
 国境を越える。
<場所>は、道などの細長いところが多いが、ある程度の幅を備えていなければならない。国境(線)や境界(線)といった幅を持たない場合は、「渡る」ではなく「越える」を用いる。
解説
間を隔てているところを横切ったり越えたりして、一方から他方へ移動する。隔てているところとしては、川や道路といった細長い線状の空間が多いが、四方に広がりを持つ海や湖なども可能である。いずれ場合でも、ある程度の幅を持ち、他方へ移動する際に障害となり得るもので、移動に一定程度の困難を伴う。例えば、幅が1メートルほどの「小道」を「渡る」とは言えないが、1メート程度の幅を持つ二本の線路で挟まれたところを指して「線路を渡る」とは言える。線路は歩いて横切る際に歩きづらいからである。なお、隔てているところに直接接触しながら横切る場合(例:泳いで川を渡る)だけではなく、隔てているところの上を越える場合(例:飛行機でドーバー海峡を渡る)もある。
類義語・反義語
類義語横切る、横断する、越える、飛び越える
反義語戻る


2.目的地への移動自動詞中級★★
表記渡る
人や動物が、間を隔てている場所の反対側にある目的地に移動する。
文型
<人・動物>が<目的地>に[へ]渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
多くのプロテスタントたちは、宗教の自由を求めて命がけでイギリスからアメリカへ渡った
台風で橋が壊れてしまったので、しばらくは対岸へ渡れないだろう。
若いころ、社長は単身でフランスに渡られたそうだ
泳ぐのは大変だから、ボートであの島に渡ろう
毎年、冬になると、シベリアから北海道へ渡る白鳥がカムチャッカ半島に立ち寄る。
中国では、日本から大陸に渡った人たちの子孫がたくさん確認されている。
stairsアルバイトで貯めたお金でアフリカに渡り、1年間現地の人と生活しながら撮影したんだって。
コロケーション
<目的地>に[へ]
国、地域、海外、大陸、島、対岸
<起点>から
国、異国、地域、大陸、島、港
<手段>で
船、渡し船、フェリー、飛行機、橋、歩道橋
<様態>
単身(で)、命がけで、はるばる
解説
隔てられている目的地に移動する。移動にはある程度の困難を伴う。例えば、海によって隔てられている島や外国を目的地として移動する。
類義語・反義語
類義語渡航する、渡米する、渡来する、伝来する
反義語戻る、帰る


3.譲渡自動詞中級★★
表記渡る
所有権がある人から他の人へ移る。
文型
<もの>が<人>に[へ]渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先祖代々守ってきた田畑が人の手に渡るなんて、どうしてもがまんできない。
思い出の詰まった我が家が、人手に渡らずに、家族のもとに残っただけでもありがたい。
子供の親権をめぐる裁判の結果、親権が父親から母親へ渡ってしまった
欠陥が残ったままの危険な商品が、多くの消費者の手に渡ってしまった
リレーのバトンが最終走者へ渡った
発売前の新商品に関する情報がライバル企業に渡ってしまった経緯を調査している。
コロケーション
<人>に[へ]
~手(人の手、人手、他人の手)、他人、第三者、希望者、買い手、相手
解説
ある人の所有物が譲渡され、他の人の所有物になる。価値のあるものなど、譲渡に、一定の手続やある程度の困難が伴うことが多い。例えば紙切れ一枚が「渡る」とは言わないが、その紙に重要なことが書かれていたら、言えるようになる。元の所有者の意思に反して、所有権が移ってしまうこともある。
類義語・反義語
類義語移る、落ちる
反義語


4.配布・分配自動詞上級
表記渡る
ものなどがすべての人・組織に行き届く。
文型
<もの>が<人>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ハンドアウトが、参加者全員に渡った
みんなに渡るだけのお弁当が買ってあるはずだ。
試験の問題用紙が足らなくて、クラスの全員には渡らなかった
当日になって見学者が増えたので、配布用のパンフレットが全ての人に渡らないかも知れない。
全出席者に渡るには、何部くらいの資料が必要だろうか。
すでに全ての会員にアンケート用紙が渡っているはずだ。
コロケーション
<人>に
全員、みんな、全ての人、全出席者、全参加者
解説
あるものが特定の範囲の人たち全員にくまなく行き届く。例えば、ある配布物がすべての人に漏れなく配られる。この「全員にくまなく」という意味合いは、語義5の持つ「ある空間の全体にくまなく」という意味からの拡張(空間から人へ)である。なお、「<人>に」は自然だが、「<人>へ」は不自然になり、使われない。
類義語・反義語
類義語届く、行き届く、行き渡る
反義語


5.拡大1自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
物事が、ある空間の全体に広がる。
文型
<もの>が<空間>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
日本を襲った大型台風は、広範囲に渡る被害をもたらした。
今年の夏は、北海道から沖縄まで全国に渡って猛暑に苦しめられた。
雪による電車の遅れは、東北本線全線に渡っている
この国の上下水道は、十数年前に整備が始まったばかりだが、今や全土に渡って普及している。
チンギス・ハンの領土は、東アジアから中央アジアまで、広大な地域に渡る
部屋の壁をすみずみに渡って赤く塗った。
コロケーション
<空間>に
全域、広域、全体、全土、~一帯、~一円
解説
ある空間の全体にくまなく広がる。この場合の空間は、2次元的な面(例:壁)だけではなく、3次元的な立体(例:部屋)などでもよい。さらに、線状的な場合(例:東北本線)も可能である。
類義語・反義語
類義語広がる、及ぶ
反義語


6.拡大2自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
物事が、ある範囲の全体に広がる。
文型
<もの>が<範囲>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ガンを引き起こす原因は多岐に渡る
期末試験では、広範囲に渡って出題されるので、準備がとても大変だ。
あの学者の研究領域は広く、多分野に渡る知識を備えている。
警察では、事故の原因を細部に渡って調べている。
対戦チームに関するデータを、全てに渡って集めることは不可能だ。
戦国時代の武士は、武芸百般に渡って習得することが求められたそうだ。
stairs試験科目は文字・語彙・文法・読解・聴解と多岐にわたります。受験者は大学生、留学希望者のほか、近年では小学生から社会人まで年齢層も広範囲にわたっています
コロケーション
<範囲>に
多岐、広範囲、複数の分野、多方面、細部、全般、全て、すみずみ
非共起例
<範囲>に
 不景気の影響は生活の一部に渡る
 不景気の影響は生活の全般に渡る
<範囲>の全て、つまりこの場合は「生活」の全体に影響が及ぶ場合にのみ「渡る」を用いることができる。
解説
周辺部分や細かい部分も含めて、ある範囲の全体にくまなく及ぶ。
類義語・反義語
類義語及ぶ、広がる、届く、行き届く、行き渡る
反義語


7.両面自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
物事が一方だけではなく他方にまで、範囲が広がる。
文型
<もの>が<両方>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生には公私に渡ってお世話になりっぱなしだ。
国の内外に渡る市場で手広く株を取引している。
彼から受けた支援は、物心両面に渡る
話が私事に渡って恐縮ですが、去年、父が他界したんです。
歴史のことなら何でも好きなので、古今東西に渡る歴史の本を読んできた。
新しいチームに移ってからも、攻守に渡って活躍している。
stairsこうしたニーズに応えるため、多くの大学が昼夜にわたって授業を開いています。
コロケーション
<両方>に
公私、両面、古今東西、攻守、内外、昼夜
解説
「<人>に」は自然だが、「<人>へ」は不自然になり、使われない。意味的に対になるものの一方に留まらず、他方にまで及ぶ。結果として、全体にくまなく広がるという意味を持つ。語義2の「空間の反対側」への移動という意味が、語義7では、「抽象的で対になったもの」へ特殊化している。また、語義2では移動主体が反対側に移動することにより出発点から離れ、出発した側にはとどまらないが、語義7では、対となる両者に及んでいる。
類義語・反義語
類義語及ぶ
反義語


8.数量自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
ものの数量が、相対的に大きな分量に達する。
文型
<もの>が<数量>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼の新しい著書では、100ページにも渡って持論を展開している。
便箋10枚に渡るお詫びの手紙を書いた。
2か月前に出版された日本語の教科書では、全7章に渡って敬語の体系が説明されている。
今までに検査してきた内容は、すでに100種類にも渡っている
過去の洪水で押し流されてきた土砂が、何層にも渡って堆積している。
今回の裁判の資料は大部に渡るものですので、時間をかけて読む必要がある。
コロケーション
<数量>に
~ページ、~枚、複数枚、~項目、大部
非共起例
<数量>に
 1ページに渡る報告書。
 5ページに渡る報告書。
 1000ページに渡る報告書。
この場合の<数量>は、通常よりも相対的に大きい場合である。例えば、5ページはあまり大きくないが、通常の報告書が1、2ページしかない場合であれば、相対的に長い報告書であると見な し得るので、「5ページに渡る報告書」という言い方も可能である。しかし、<数量>が1である場合、「渡る」は使えない。
解説
通常よりも相対的に大きな数値に及ぶ。しばしば驚きをもって表現される。「~にもわたる」の形では驚きの意味が強くなる。
類義語・反義語
類義語及ぶ、広がる
反義語


9.継続自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
物事が絶え間なく続いて、期間が長くなる。
文型
<もの>が<期間>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
我が社では長年に渡って新しい薬の開発に取り組んできた。
40年に渡る会社生活にピリオドを打つ時が来たようだ。
この国の風習では、1週間に渡って結婚パーティーを続けるのだそうだ。
両家の争いは非常に長く、何世紀にも渡っている
若くして目の病気を患ってから、生涯に渡って苦しみ続けた。
この記録は、将来に渡って保存されることになっている。
stairsそれから15代265年もの長きにわたって徳川家の将軍が日本を治めました。この期間を江戸時代といいます。
コロケーション
<期間>に
長期(間)、長年、何時間、生涯、将来、未来永劫、子々孫々
非共起例
<期間>に
 短期間に渡って検討する。
 長期間に渡って検討する。
この場合の<期間>は、通常よりも長い時間的幅を持つものでなければならない。
解説
ある程度の長い期間、絶え間なく継続する。通常よりも長い時間に及び、しばしば驚きをもって表現される。「も」を伴う「~にもわたる」の形では驚きの意味が強くなる。
類義語・反義語
類義語及ぶ、広がる
反義語


10.反復自動詞上級
表記渡る、亘る   ※まれに「亘る」を用いることもある。
物事が繰り返し続いて、回数が増える。
文型
<もの>が<回数>に渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
容疑者への取材は10回に渡った
警察官は、3度に渡って警告をしたが、犯人は聞く耳を持たなかった。
テレビのニュースで再三に渡って放送していた。
隣の家は、お婆さん、お母さん、娘さんと三代に渡って料理上手だ。
何世代にも渡り受け継がれてきた古い家がまだ残っている。
コロケーション
<回数>に
再三、再三再四、~回、~度、~代、代々、~世代
解説
同じことを何回も繰り返したり、世代を積み重ねたりすることによって継続する。通常よりも長い時間的幅に及び、しばしば驚きをもって表現される。「も」を伴う「~にもわたる」の形では驚きの意味が強くなる。


11.通過自動詞初級★★★
表記渡る
人や乗り物が、間を隔てている経路を通って反対側に移動する。
文型
<人・動物・乗り物>が<経路>を渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ちゃんと横断歩道を渡って、道路の向こう側にあるスーパーに行く。
ちょうど新幹線が鉄橋を渡っているときに地震が起きた。
もう夜中なので電車は走ってないと思いますが、安全のために必ず踏切を渡りましょう
こちら側から向こう岸へ渡るには、古くて危険な吊り橋を使うしか方法がない。
ここは信号がなくて危ないので、子供たちにはきちんと歩道橋を渡らせることになった。
カエサル将軍は馬に乗ったまま、石橋をローマ側にお渡りになった
コロケーション
<経路>を
橋、歩道橋、鉄橋、踏切、横断歩道
<起点>から
こちら側、こっち、ここ
<着点>に[へ]
あちら側、あっち、向こう側、対岸
<様態>
ちゃんと、きちんと
解説
出発地点と目的地点の間を隔てている幅のあるところを横切るように経路が出発地点から反対側の目的地につながっている。その経路を通って、反対側の場所に移動する。経路に焦点を当てた用法。
類義語・反義語
類義語通る、通過する、通り過ぎる
反義語戻る


12.社会生活自動詞上級
表記渡る
人が、社会的な問題にうまく対応しながら生きていく。
文型
<人>が<社会>を渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
夫婦二人で助け合いながら、何とか世の中を渡っていくつもりです。
この腕一本で、料理の世界を渡っている
若いころから、たった一人の力で巧みに競争社会を渡ってきた
理屈と規則だけでは、そうそう世の中を渡れない
いつも笑顔でいることが、うまく世を渡るコツだ。
コロケーション
<社会>を
世の中、世間、世、世界、社会
<様態>
うまく、巧みに、上手に、難なく、すいすい(と)、腕一本で
解説
語義1で間を隔てている場所が移動の「障害」となっているように、「社会」を生きていくための障害となるものに見立てている。困難を伴うが、継続的に工夫を凝らしたり努力を積み重ねたりしながら社会的な障害を乗り越えていく。
類義語・反義語
類義語世渡りする、生きる、生き抜く
反義語


13.あちこち移動する自動詞上級
表記渡る
人が、次から次へと新しい組織に移る。
文型
<人>が<組織>を渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
あのシェフは、料理の腕を磨くために、あちこちの店を渡ってきたらしい。
今のところに落ち着くまでには、実にたくさんの出版社を転々と渡ってきた
数多くのアトリエを渡ってきた画家だけが、一流の技術を身につける。
あの剣道の先生が今までに渡ってきた道場の数はとても多くて、教え子も数えきれないほどたくさんいるそうだ。
コロケーション
<人>が
料理人、職人、技術者、大工、デザイナー、陶芸家
<組織>を
店、料亭、レストラン、工房、アトリエ
<様態>
あちこち(と)、次から次へ(と)、方々、転々と、いろいろ(と)
解説
所属先としての組織を次から次に移っていくという経歴や履歴を表す。まったく異なる種類の組織に移るのではなく、同じ種類の中で替える。一般に短期間のうちに、何度も繰り返し移動することを意味し、落ち着かない、ネガティブな感じがする。しかし、下の「修行」の例のように期間が相当長く、ネガティブな含意を持たない場合もある。「渡り歩く」が最も自然な言い方であり、「渡ってくる」が使われる場合もある。「渡る」が用いられることはほとんどない。
例)修行のために一流レストランを○渡り歩いた。/△渡ってきた。/?渡った。
例)医者の言うことが信用できずに、次から次と病院を○渡り歩く/?渡ってくる/?渡る人がいる。
類義語・反義語
類義語移る、渡り歩く、転々とする
反義語


14.風が吹く自動詞上級
表記渡る
風がある場所を通り抜けて吹く。
文型
<風>が<場所>を渡る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
湖の水面を渡る風は爽やかで気持ちがいい。
木々の間を風が渡り、かすかな音を立てている。
この辺りでは、太平洋を渡ってくる偏西風を利用して風力発電をしている。
秋風が白樺の梢を渡る季節になってきた。
さっきまで庭を渡っていたそよ風が、ぴたりと止んでしまった。
涼風が林を渡って吹いてくる。
コロケーション
<風>が
風、秋風、そよ風、海風、涼風、微風
<場所>を
水面、湖、海、梢、木々(の間)、林
非共起例
<風>が
 木々の間を突風が渡る。
 木々の間をそよ風が渡る。
この語義における風は、強風ではなく、微風である場合が多い。強風の場合は、「渡る」ではなく、「吹き抜ける」などを用いる。
解説
風が吹いて、ある場所を通り抜ける。あまり強い風ではなく、心地よさを伴うゆったりとした風である場合が多い。
類義語・反義語
類義語吹く、そよぐ
反義語


渡るの全体解説 障害となり得る場所によって間を隔てられている一方の側からもう一方の側へ移動するという基本義から、所有権の移動、配布物の配布・分配といった語義につながっている。また、空間における全体的な広がりを表す意味を出発点にし、抽象的な範囲や数量、期間、回数などの語義が広がっている。さらに、移動の経路に焦点を当てた語義や、間を隔てている場所を社会的困難さに見立てている語義、移動するものを風に限定した語義などもある。
























▶全例文を聞く
<場所>を渡る
あの洗い熊は川を渡ったに違いない。
(ウィルソン・ロールズ著;和田穹男訳 『ダンとアン』, 2002, 933)
こんな犯罪者らがいまだ『黄金の国』日本を目指し続々と海を渡ろうとしてる。
(田村建雄著 『ドキュメント外国人犯罪』, 2004, 368)
<手段>で渡る
金の使者は遼東半島から舟で海を渡って、山東半島に上陸した。
田中芳樹編訳 『岳飛伝』, 2001, 913)
<起点>から渡る
ここから対岸へフネで渡るのです。
(Yahoo!ブログ, 2008, レジャー)
<様態>渡る
その頃、袁紹の救いがようやく河を渡って来た。
(吉川英治著 『三国志』, 1989, 913)
<目的地>に[へ]渡る
夏休みに,学生と共に通いなれた島に渡ってみた。
(西川芳昭著 『地域文化開発論』, 2002, 601)
彼は、フジエ・ジェイムズが海外に渡った経緯や現地の活動の様子を聞いていった。
(池田大作著 『新・人間革命』, 2001, 913)
<起点>から渡る
ジャワからバリ島へ渡るのに二つの道がある。
(明石哲三絵と文 『南方絵筆紀行』, 2002, 292)
<手段>で渡る
宇品からフェリーで江田島へ渡ったが、その途中、戦艦「榛名」の沈没地点を遠望した。
(トーマス・C.カートライト著;森重昭訳 『爆撃機ロンサムレディー号』, 2004, 936)
<人>に[へ]渡る
だが、如水館はすでに債権者の手に渡っていた。
(泡坂妻夫,五木寛之著 『遠い彼方の愛』, 2001, 913)
<人>に渡る
さらに付け加えるならば、発案者だけでなく、発案者と育て親と、そして手伝ってくれた人すべてに渡るように等分して分けるのが妥当であるのかもしれない。
(西堀榮三郎著 『ものづくり道』, 2004, 507)
<空間>に渡る
その結果、出力の谷をなくし、全域に渡ってトルクフルな走りを実感することができるという。
( 『カワサキニンジャファイルカスタムスペシャル』, 2004, 537)
<範囲>に渡る
就職先は金融、製造、情報通信、公務員と各学部とも多岐にわたる。
(AERA(アエラ), 2005, 一般)
児童福祉の関連分野の機関は,司法,教育,労働その他,児童の生活に関わるあらゆる分野にわたっている。
(福祉士養成講座編集委員会編 『社会福祉士養成講座』, 2005, 369)
皇后さまのご趣味は多種にわたる。
(塚田義明責任編集 『天皇の昭和史』, 1988, 288)
<両方>に渡る
振り返りますれば、社長は私たちにとって公私にわたる大きな大きな柱でありました。
( 『お葬式・供養・お墓の基礎常識』, 1995, 385)
<数量>に渡る
代表作の『百々世草(ももよぐさ)』が何ページにもわたって紹介されていたのです。
(ミセス, 2003, 一般)
<期間>に渡る
研修は長期にわたるが,彼らは継続して参加しているという。
(山下晃一著 『学校評議会制度における政策決定』, 2002, 373)
長年に亘って蓄積してきた映画作りの技術と知識がある。
(熊本大学・映画文化史講座編集執筆 『映画この百年』, 1995, 778)
<回数>に渡る
朋子と緒形は三回に亘って、公判で証言に立った。
(江川紹子著 『冤罪の構図』, 2004, 327)
家康からは援軍をもとめる使者が、数度にわたってきているが、信長は応じなかった。
(津本陽著 『下天は夢か』, 1989, 913)
<経路>を渡る
池にかかる橋を二人は渡る。
(大石静著 『ヴァンサンカン・結婚』, 1991, 913)
踏切を渡ると、国道十八号線であった。
(笹沢左保著 『悪魔岬』, 1991, 913)
<社会>を渡る
どれほどの権能を有する人にしても、決して自分の思うままに世を渡った者はない。
(新渡戸稲造著;竹内均解説 『自分をもっと深く掘れ!』, 1990, 159)
<風>が渡る
広い庭は陰が多く、涼しい風が渡ってくる。
(多岐川恭著 『練塀小路の悪党ども』, 1992, 913)
<場所>を渡る
大型連休を控え、さわやかな風が川面を渡り、行楽には最高の季節となりました。
(広報とりで, 2008, 茨城県)






























信号が青だからといって安全確認をせずに道路を渡ってはいけません。左右をよく見て、車が来ていないのを確かめてから渡るようにしましょう。歩道橋があるところでは、面倒でも必ず歩道橋を渡りましょう
アルバイトで貯めたお金でアフリカに渡り、1年間現地の人と生活しながら撮影したんだって。
試験科目は文字・語彙・文法・読解・聴解と多岐にわたります。受験者は大学生、留学希望者のほか、近年では小学生から社会人まで年齢層も広範囲にわたっています
こうしたニーズに応えるため、多くの大学が昼夜にわたって授業を開いています。
それから15代265年もの長きにわたって徳川家の将軍が日本を治めました。この期間を江戸時代といいます。
海を渡る

意味
海外に進出する。外国で成功する。
用例
寿司とラーメンは海を渡った食べ物の代表だ。
コーパスからの用例
B級グルメは海を渡るのか? (B級グルメは海を渡るのか? - 社会イノベーションの視点!)
意味
海外に進出する。外国で成功する。
用例
寿司とラーメンは海を渡った食べ物の代表だ。
三途の川を渡る

意味
死ぬ。死んで死者の世界に行く。
用例
交通事故に遭って、三途の川を渡りかけた
コーパスからの用例
人は死んで七日目に三途の川を渡る。(鷹俳句会ホームページ/今月の鷹誌から秀句の風景)
渡る世間に鬼はなし

意味
世の中には怖くて思いやりのない人ばかりいるように思えるのだが、実は誰でも思いやりがあって優しい心を持っている。
用例
財布を落として一人で困っていたら、知らない人が切符を買うお金を貸してくれた。まさに、「渡る世間に鬼はなし」だ。
コーパスからの用例
渡る世間に鬼はないという諺は、世間のおそろしさに気をとられがちな人をはげますためのもので、御承知のように、鬼よりこわい人はめずらしくないし、場合によっては、お人よしと言われている人でさえ鬼になることもある。 (福田定良著 『現代かたぎ考』, 1990, 104)
危ない橋を渡る

意味
目的を達成するために、あえて危険なことを行う。
用例
何度も危ない橋を渡ってきたから、今ではどんなことが起こっても動じない。
コーパスからの用例
こちらとしても新人にそんな危ない橋を渡らせたくないのです。(倫理に反するような小説は描くべきではない? 小説作法)
石橋を叩いて渡る

意味
十二分に用心して、安全を確認してから行動する。
用例
うちの社長は石橋を叩いて渡るような用心深い人だから、失敗する危険性のある仕事には決して手を出さない。
コーパスからの用例
間違いがないように、何度かカウンセラーに相談しつつ、新学期が始まる度に石橋をたたいて渡る慎重さで取るクラスの確認をしました。 (留学時代の話)
複合動詞 V1

渡り歩く、渡り切る
複合動詞 V2

行き渡る、晴れ渡る、澄み渡る、響き渡る、知れ渡る、染み渡る
複合名詞

渡り鳥、渡り廊下、綱渡り、世渡り
渡る(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形わたる
ない形わたらない
~なかったわたらかった
ます形わたり
~ませんわたりま
~ましたわたりした
~ませんでしたわたりまんでした
~ときわたるとき わたる
ば形わた
意向形わた
て形わたって
た形わたった
可能形わたれる
受身形わたられる
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