うかがう・窺うのコアイメージ

1.状況の探索他動詞上級
表記うかがう、窺う   ※「うかがう」が使われることが多い
ある場所の状況を知るためにそっと見る
文型
<人・動物>が<状況>をうかがう
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
犯人は、戸の隙間からそっと外の様子をうかがった
その日、カーテン越しに家の中をうかがっている白い野良猫を見つけた。
その国はスパイを送って敵対する隣国の情勢を密かにうかがおうとしたが、その試みは成功しなかった。
「ちょっと、これ見て。面白いものを見つけたの」と言って、友人は辺りをうかがいながら、小さな箱を取り出した。
ドアをたたいて人を呼んでも応答がないので、窓越しに中の気配をうかがってみた
その時店の中で数人の客が言い争いをしており、他の客たちは固唾(かたず)をのんで成り行きをうかがっていた
コロケーション
<状況>を
① 状況:様子、状況、気配、動静、動向、形勢、情勢、成り行き
② 場所:周囲、辺り、〜の方、中、内部、外
<場所>から
〜の陰、〜の隙間、〜の間、窓、外、中
<もの>に
窓越し、マジックミラー越し、肩越し
<様態>
そっと、密かに、慎重に、それとなく
解説
この語義はある場所の状況を知るためにそっと見ることを表すが、対象を直接、堂々と見るのではなく、何らかの理由から、何かを通して間接的に、あるいはさりげなく見て、状況を知ろうとすることを表す。
類義語・反義語
類義語探る
反義語


2.気持ちの察知他動詞上級
表記うかがう、窺う   ※「うかがう」が使われることが多い
相手の様子を見て、気持ちや状況を読み取ろうとする
文型
<人・動物>が<人の様子>をうかがう
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
いたずらをした子供が「ごめんなさい」と言って、母親の表情をじっとうかがった
その会議では上司の顔色をうかがって、上司の意向に合わせた結論になることが常であった。
A:「山田さんはいつも周りの人の機嫌をうかがっているね」B:「うん、いい人なんだけど気を遣いすぎて疲れそうだね」
彼女の横顔をうかがおうと目を向けたとき、ちょうど目が合ってしまった。
トークライブでは客席の反応をうかがいながら話を進める人も多い。
隣に眠っている夫の寝息をそっとうかがい、花子はベッドを抜け出した。
コロケーション
<人の様子>を
① 表情:顔色、顔、表情、横顔、目、鼻息、寝息
② 様子:反応、機嫌、変化
<様態>
そっと、ちらっと、じっと、さりげなく
解説
この語義は、相手の様子を見て、気持ちや状況を読み取ろうとすることを表すが、「顔色」「機嫌」と共起する際には、いくつかのニュアンスが伴う場合がある。1つは「相手を怒らせないようにすること」を目的にしていること、もう1つはその行為に対して「気を遣いすぎている(そこまで気を遣う必要がないにも関わらず)」という比較的マイナスの評価が含まれることである。
例えば下の例1では、上司を怒らせないようにするため、自分の素直な意見が言いにくい状況であるというニュアンスが伴う。例2では、山田さんが周りの人の機嫌を損ねないように過度に気を遣いすぎているというニュアンスがある。
例1)その会議では上司の顔色をうかがって、上司の意向に合わせた結論になることが常であった。
例2)A「山田さんはいつも周りの人の機嫌をうかがっているね」
B「うん、いい人なんだけど気を遣いすぎて疲れそうだね」
そのため「上司の顔色や機嫌をうかがう」は、時に「上司に媚びる」ことを暗に示すこともある。
類義語・反義語
類義語探る
反義語


3.状況・存在の推定他動詞上級
表記うかがう、窺う   ※「うかがう」が使われることが多い
(ある根拠から)あるものの存在や様子を推測する
文型
<人>が<存在・様子>をうかがう
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その講演会では定員300名の会場がいっぱいになり、このテーマへの関心の高さがうかがわれた
青年の前向きな発言が、充実した生活ぶりをうかがわせた
この建物に使われた建築材から、建築者の財力の一端がうかがえる
無表情の写真からは、その人物の人間性をうかがうことは難しかった。
この遺跡では多くの石器や石の破片が見つかった。この場所で石器を作っていたことをうかがわせる発見であった。
出土した土器の形態や文様などを分析することによって、その土地と他地域との交流の実態をうかがうことができる
stairs実際に行ってみて三成様の気持ちをうかがい知ることができました。
コロケーション
<存在・様子>を
① 存在:高さ、〜さ、可能性、一端、片鱗、存在
② 様子:性格、〜ぶり、実態、生活、主張
<根拠>から
資料、記述、事実、言葉、発言、作品、写真
解説
この語義では、受け身形を使った「(根拠から[に])〜がうかがわれる」や使役形を使った「(根拠が)〜をうかがわせる」の文型が使われることが多い。
類義語・反義語
類義語推測する、推定する
反義語


4.好機の待ち構え他動詞上級
表記うかがう、窺う   ※「うかがう」が使われることが多い
いいタイミングが来るのを狙って待つ
文型
<人>が<タイミング>をうかがう
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
パーティーであこがれの先生と話をする機会をうかがったが、結局話すことができなかった。
捕まった犯人は、警官が少し目を離した隙をうかがって、逃げてしまった。
彼は商売に一度失敗したが、諦めずに何年も復活のチャンスをうかがっていた
軍は谷に侵入し、敵陣への突入の機をうかがうことにした。
好機をうかがうだけではなく、実際に行動に出なければ成功はできない。
彼女は国を追放されていたが、密かに戻る時機をうかがっていた
コロケーション
<タイミング>を
機会、チャンス、隙、機、好機、時機
<様態>
密かに、虎視眈々(こしたんたん)と
類義語・反義語
類義語待つ、狙う、探る、待ち構える
反義語


5.獲得の企図他動詞上級
表記うかがう、窺う   ※「うかがう」が使われることが多い
あるものを手に入れようとして近い位置から狙う
文型
<人>が<もの>をうかがう
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ナポレオン率いるフランス軍は1798年にエジプトに遠征し、そこからさらにインドをうかがっていた
次期社長の座をうかがう役員たちが、熾烈(しれつ)な争いを繰り広げていた。
その野球チームはシーズン前半は首位をうかがう勢いだったが、後半に失速し、結局5位に終わった。
その野球選手はヒットを打つと、一塁を蹴り、二塁をうかがう走りを見せた。
古代ローマにおいてカエサルは王位をうかがう者と見なされ、暗殺されることになった。
その競馬レースでは、私が買った馬が一端先頭をうかがったものの、脚が鈍って後退してしまった。
stairs小森選手は、今大会での優勝だけでなく、ギネス世界記録の更新もうかがっていたんですね。
コロケーション
<もの>を
① 相手:(国)、(地域)
② 立場:〜の座、王位、〜の位
③ (スポーツ等における)好位置:首位、上位、先頭、二塁
類義語・反義語
類義語狙う
反義語


うかがう・窺うの全体解説 各語義の説明をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<状況>を
扉に耳をつけ、ティラは中の気配をうかがっていた。
(あかほりさとる著 『爆れつハンターspecial』, 1996, 913)
数人の兵士たちが白灯油のランプを下げて、しきりにを窺っている。
(小説すばる, 2002, 文学/芸術)
<場所>から
主税助は、垣根の隙間からその様子を窺った。
(千野隆司著 『天狗斬り』, 2005, 913)
信介と女はしばらく、物陰からその少女の様子をうかがっていた。
(五木寛之著 『青春の門』, 1977, 913)
<もの>に
陽太郎は廊下に出て、窓越しに下の様子をうかがっていた。
(山崎洋子著 『花園の迷宮』, 1986, 913)
<様態>
電柱の陰でそれとなくパトカーの様子を窺っていると、玄関から初老の女と二人の警官が現れた。
(青沼静也著 『チェーンレター』, 2001, 913)
忍は洗面所を出て、そっと廊下をうかがった。
(林葉直子著 『恋の証拠を捜しだせ!』, 1990, 913)
<人の様子>を
彼はしばらく、僕の顔色をうかがっていた。
(藤原伊織著 『ひまわりの祝祭』, 2000, 913)
主人の不興を気配で感じ取ったらしく、ナヴァースはさりげなく、彼の機嫌を窺っている。
(ひかわ玲子著 『水晶の谷を越えて』, 1995, 913)
<様態>
娘は母の蔭から、ちらちらとさよの顔をうかがっていた。
(原田康子著 『海霧』, 2002, 913)
<存在・様子>を
全長約三五〇メートル(日本第四位)の巨大な前方後円墳である造山〈つくりやま〉古墳があり、強大な権力の存在をうかがわせる。
(NHK取材班編 『堂々日本史』, 1998, 210)
挿絵を担当した画文集や手紙、手帳なども展示され、当時の様子をうかがうこともできた。
(広報とよた, 2008, 愛知県)
<根拠>から
忠度の発言からうかがわれる決意と願望を整理してみよう。
(高等学校 古典 古文編, 2006, 高)
全員やつれた様子をしているが、その理由は一同の会話からうかがうことができる。
(クライスティア・フリーランド著;角田安正,松代助,吉弘健二訳 『世紀の売却』, 2005, 332)
<タイミング>を
この二カ月ほどずっと撮影のチャンスをうかがっていて、ついに長雨になってしまった。
(月刊天文ガイド, 2005, 自然科学)
遊ぶ金に困った彼は、家族のを窺い、蔵の中から金になる物を盗み出しては金に換え、遊興費に使うようになってしまった。
(川崎龍太郎著 『人情深川恋物語』, 2002, 913)
<様態>
全神経を二人の会話に集中させて、飛びだしていくタイミングをじっと窺っていた。
(吉永みち子著 『気がつけば騎手の女房』, 1989, 289)
Bはこれを逆恨みし、虎視眈々とこの機を窺っていたのだ。
(三木崇行著;内村靖隆漫画 『孫子に学ぶプロジェクト管理』, 2005, 007)
<もの>を
しかし彼は、数年を経ずして総裁のを窺うようになって以後、豹変というもおろかなほど巧妙に自らの立場をすり替えた。
(中西輝政著 『日本の「覚悟」』, 2005, 310)






























実際に行ってみて三成様の気持ちをうかがい知ることができました。
小森選手は、今大会での優勝だけでなく、ギネス世界記録の更新もうかがっていたんですね。
顔色をうかがう

意味
表情から感情を推測して、相手が不機嫌にならないようにしたり、相手を喜ばせようとしたりする。
用例
以前の会社の上司はとても怖い人だったので、いつも上司の顔色をうかがって仕事をしていた。
コーパスからの用例
スコットは父親の顔色を窺いながら、迷惑がかからないように、また期待を裏切らないように、父親に言われたことを忠実に守っていくしかなかったに違いない。(漆田公一『サンダーバードで少々生き方を学んだ』1999,778)
寝息をうかがう

意味
眠っているかどうかを確かめる。また、眠っている間に悪事を働こうとする。
用例
男は酔っ払いの寝息をうかがいながら、ポケットから財布を抜き取った。
コーパスからの用例
彼は妻が夫を殺そうとして、寝息をうかがっていたような気がした。(森村誠一『マリッジ』,2005,913)
鼻息をうかがう

意味
相手の機嫌や意向を推測する。
用例
上司の鼻息をうかがいながら仕事をするのはもううんざりだ。
コーパスからの用例
後宮の諸女官は、なにかにつけて、張貴人の鼻息をうかがっていた。(陳舜臣『小説十八史略』,2000,913)
複合動詞 V1

うかがい知る
うかがう・窺う(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形うかがう
ない形うかがわない
~なかったうかがわかった
ます形うかがい
~ませんうかがいま
~ましたうかがいした
~ませんでしたうかがいまんでした
~ときうかがうとき うかがう
ば形うかが
意向形うかが
て形うかがって
た形うかがった
可能形うかがえる
受身形うかがわれる
使役形うかがわせる
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