詰まるのコアイメージ

1.隙間なく入る自動詞初級★★★
表記詰まる
ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る。
文型
<容器>に<もの>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ビニール袋いっぱいに、古い衣類が詰まっている
子供の上着ポケットには、お菓子がいっぱい詰まっていたようです。洗濯をしようとすると、ばらばらと床の上に落ちました。
拾った段ボールを開けてみると、中には、札束がぎっしりと詰まっていた
あの店のまんじゅうには、あんこがたくさん詰まっている
あの子はいつも、おかずがぎっしり詰まった重そうなお弁当を持ってきていました。
このみかん、実がぎっしり詰まっていておいしい。
コロケーション
<容器>に
袋、お弁当箱、箱、本棚、シュークリーム
<もの>が
お菓子、ご飯、札束、本、クリーム
<様態>
ぎゅうぎゅうに、ぱんぱんに、ぐちゃぐちゃに、きれいに、ぎっしり、いっぱいに、大量に
非共起例
<もの>が
 箱にはショートケーキが6個詰まっていた
 箱にはショートケーキが6個入っていた
「詰まる」は「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。箱にショートケーキが入っている場合、隙間が確保されているのが通常であるため、「ショートケーキが詰まる」は不自然である。
<もの>が
 通勤電車には人が詰まっていた
 通勤電車には人がたくさん乗っていた
人について「詰まる」を用いると、比喩的な表現であるという印象が強くなり、一般的な表現としては不自然である。
解説
「語義1」は、「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。「語義1」の類義語に「入る」がある。「詰まる」は、ただ「入る」だけではなく「容器の限度いっぱいに入る」ことを表す。つまり、容器に対しては過剰な量のものが「入る」ことになる。
誤用解説
 薄いクリアファイルに紙が1枚、詰まっている
 薄いクリアファイルに紙が1枚、入っている
「詰まる」は、「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。つまり「容器」に対して過剰なほどのものが「入る」ことを意味する。「クリアファイル」に紙が1枚入れば、たしかに「隙間」はなくなるかもしれないが、「詰める」と表現するのは不適切である。
 無理すればこの箱に全部詰まるんじゃないかな。入れてみて。
 無理すればこの箱に全部入るんじゃないかな。入れてみて。
この「語義1」は通常、テイルの形で用いられる。
類義語・反義語
類義語入る、満ちる
反義語


2.隙間に入る自動詞中級★★
表記詰まる
ものが隙間の限度いっぱいに入る。
文型
<もの>が<隙間>に詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
あれ、歯に何か詰まったみたい。気持ち悪い。
歯と歯の間に何か詰まっているなら、爪楊枝を使うのではなく、歯磨きをするのがおすすめです。
耳が詰まった感じで聞こえにくい。
この洗顔材を使えば、毛穴に詰まっている皮脂もきれいにとれますよ。
ふだんから皮脂で毛穴を詰まらせないように、お手入れをしておくことが大切。
のこぎりの目に木のくずを詰まらせると、取り除くのが大変です。
コロケーション
<もの>が
カス、くず、~のかけら、ほこり、皮脂、耳あか
<隙間>に[が]
① 身体:歯(の間)、鼻(の穴)、耳、毛穴、爪(の隙間)
② もの:のこぎりの目(の間)、キーボード(の隙間)
(<隙間>が)<もの>で
(<毛穴>が)皮脂で、(<耳>が)耳あかで、(<隙間>が)ほこりで、<歯>が食べもののカスで
非共起例
<もの>が
 コンセントにプラグが詰まっている
 コンセントにプラグが差してある
 シンクと冷蔵庫の隙間に、細い家具が詰まっている
 シンクと冷蔵庫の隙間に、細い家具が置いてある
「詰まる」は「ものが隙間の限度いっぱいに入る」ことを表す。隙間に入るものは、隙間をいっぱいに埋めることができるものでなければならない。「プラグ」や「家具」は形が変わらず、密着して隙間を埋めることは難しいので、「プラグが詰まる」「家具が詰まる」と言うことはできない。
解説
「語義1」が「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表すのに対し、この「語義2」は「容器」ではなく、「隙間」に限度いっぱい入ることを表す。隙間に入るものは、くずやカスなど、不要なものであることが多い。したがって、「語義2」の「詰まる」は多くの場合、困った状態になることを表すことが多い。ただし、歯医者で虫歯の治療を受け、詰め物の詰め方に不安を感じ、
「詰め物がなんだかふわふわしているように感じるんですが。・・・」
「きれいに詰まっていますので、大丈夫ですよ」
という場合のように、必ず「困った状態」を表すとは限らない。
また、この「語義2」のさらに特殊な用法として、碁の世界で使われる「駄目が詰まる」という用法があり、敵味方どちらの地でもない無駄な場所が埋まる(無駄な場所に石が打たれる)ことを表す。この場合、心理的には目(隙間)がいっぱいになるわけだが、物理的にまったく隙間がなくなるというわけではない。
誤用解説
 満員電車のドアが閉まって、隙間に服の裾が詰まった
 満員電車のドアが閉まって、隙間に服の裾がはさまった
「詰まる」は、もともとある「隙間」にものが入ることを表すのであって、ものが動いて「隙間」ができることによって、固定されることを表すのではない。
類義語・反義語
類義語入る、挟まる
反義語出る、取れる


3.通路に留まる自動詞中級★★
表記詰まる
ものが通路に留まり、通路が通れなくなる。
文型
<もの>が<通路>に詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私は、風邪をひくといつも鼻が詰まる
脳の血管が詰まって手術をした。大変だった。
あまりにも突然の申し出だったので驚きのあまり、のどの奥で声が詰まり、すぐには反応することができなかった。
排水管に髪の毛が詰まって水が流れなくなりました。
餅をのどに詰まらせると大変なので、気を付けて食べてください。
コピー機に紙が詰まった。誰かなおして。
コロケーション
<もの>が
食べ物、声、食べかす、血のかたまり、ごみ、ほこり、落ち葉、紙
<通路>に
のど、歯の隙間、血管、排水管、家具の隙間、側溝、コピー機
<通路>が
① 身体:のど、鼻、歯の隙間、血管、動脈、気管、気道
② もの:排水管、下水管、溝、配管、トイレ(の排水管)、プリンター、フィルター(の目)、スプレー
<様態>
完全に
(<通路>が)<もの>で
(歯の隙間が)食べかすで、(排水管が)ゴミで、(フィルターが)汚れで、(側溝が)落ち葉で、(パイプが)髪の毛で
非共起例
<もの>が
 エントランスホールに人がたくさん詰まって外に出られない。
 エントランスホールに人がたくさんいて、外に出られない。
「詰まる」は、ものについて言うのが通常である。「人が詰まる」と言うと、比喩的な表現であるという印象が強くなり、一般的な表現としては不自然である。
解説
「語義1」が「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表すのに対し、この「語義3」は、ものが「容器」ではなく「通路」の通り道をふさぐほどいっぱいに留まり、通路が通れなくなることを表す。
誤用解説
 エレベーターが2階と3階の間で詰まった
 エレベーターが2階と3階の間で止まった
この「語義3」は、大量にある、勢いがない、などの理由で「ものが通路に留まる」ことを表すのであって、単に通路の途中にものが止まっている場合には使えない。
 国道は、工事による通行止めで、車は詰まっている
 国道は、工事による通行止めで、車は通れない
この「語義3」は、大量にある、勢いがない、などの理由で「ものが通路に留まる」ことを表すのであって、もの以外の力で止められることによって通れなくなることを表すのではない。
したがって、渋滞で車が進めない場合には使える。つまり、「渋滞で前が詰まっている」「詰まっているのだから交差点に車を突っ込んでくるな」などと言うことはできる。
類義語・反義語
類義語ふさがる、つかえる
反義語通る


4.ことばが出なくなる自動詞上級
表記詰まる
ことばや考えなどが出なくなる。
文型
<人>が<ことば・考え>に詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
採用試験の最終面接では、緊張のあまり、自己アピールの途中でことばに詰まってしまった。
昨日の公開のインタビューでは、想定外の質問が飛び出したので答えに詰まり、しばらく黙りこんでしまった。
「それ、うそでしょ」と鋭いことを言われ、一瞬、返答に詰まった
シナリオライターの仕事をはじめたばかりの頃は、ネタに詰まり悩むことが多かったが、今ではそんなことはなくなった。
アイデアに詰まったら、企画書の提出直前でも一度、仕事から離れて、遊びに行くことにしている。
おわびの手紙を書こうと思ったが、書きだしに詰まり、どうにも書くことができなかった。
stairsつまってないで、なんか言えよ。
コロケーション
<ことば・考え>に
① ことば:ことば、答え、返答、回答、返事
② 考え:ネタ、アイデア、研究
<様態>
一瞬、つかの間、ぐっと
<原因>で
涙、笑い、喜び、驚き、痛み
非共起例
<ことば・考え>に
 今日の晩御飯を何にしたらよいか、考えに詰まった
 今日の晩御飯を何にしたらよいか、思いつかない。
この「語義4」は、「通路が通れなくなる」ことを表す「語義3」とイメージを共有している。通路が通れなくなれば、ものは通路から「出なくなる」。この「語義4」は、通路の中を流れるように連続して出ることが期待されることばやアイデアなどが「出なくなる」ことを表す。その日の晩御飯のメニューを考える場合、通常は、一つメニューが思い浮かべばよいのであって、次々と連続してアイデアが出ることへの期待はない。よって「詰まる」を用いると不自然である。メニューを考えるという点では同じであっても、たとえば、レストランのコースメニューを考えるような場合であれば、「詰まる」も使える。次のような例である。
 レストランで提供するメニューを前菜から次々考えていった。はじめは順調だったが、デザートのところで考えに詰まった
解説
「語義3」は「ものが通路に留まり、通路が通れなくなる」ことを表す。「隙間なく入る」と、ものは通路から「出なくなる」。この「語義4」は、「もの」ではなく「ことばや考え」が「出なくなる」ことを表す。
この「語義4」が使役形で使われることはまれだが、「ことばを詰まらせる」はよく使われる。
誤用解説
 久々に会った友人は、最近出かけた海外旅行の話をしている途中、突然ことばに詰まり、「実はね」と言い出した。
 久々に会った友人は、最近出かけた海外旅行の話をしている途中、突然、黙り込み「実はね」と言い出した。
「詰まる」は、話そうとしても話せなくなることを表すのであって、自分の意志で話をやめる場合に使うと不自然である。
類義語・反義語
類義語
反義語出る


5.予定が隙間なく入る自動詞中級★★
表記詰まる
予定が特定の期間の限度いっぱいに、隙間なく入る。
文型
<期間>は<予定>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
来週は予定が詰まっていて、どうしても時間が作れないんだ。ごめん。
近いうちに社長にアポイントを取りたいのだが、予定が詰まっているようで、うまくいかない。
前期は日程が詰まっていて、これ以上、行事を入れることはできません。
冬休みは、友だちと遊ぶ約束がびっしり詰まっている。家にいる時間はなさそうだ。
来週は、取引先とのアポが詰まっていてかなり忙しい。
卒業が危ないので単位を取るのに必死だ。月曜から金曜の1限から4限まで授業が詰まっている
コロケーション
<期間>は
明日、来週、週末、今年、夏休み
<予定>が
予定、スケジュール、時間割、授業、会議
<様態>
びっしり、ぎっしり、ぱんぱんに、いっぱいに
非共起例
<期間>は<予定>が
 今年は、春と夏に海外旅行をする。旅行の予定が詰まっている
 今年は、春と夏に海外旅行をする。旅行の予定がたくさんある
この「語義5」は、一定の期間にこれ以上、時間の余裕がないと感じるほど限度いっぱいに予定が入ることを表す。「春と秋」に旅行をするだけでは、その一年の中で、他のことができる時間の余裕があると感じられるので、「詰まる」を用いるのは不自然である。
解説
「語義1」が「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表すのに対し、この「語義5」は、予定が特定の期間の限度いっぱいに、隙間なく入ることを表す。
誤用解説
 水曜日はよく臨時の会議が詰まりますので、打ちあわせの予定は今のうちに入れてしまいましょう。
 水曜日はよく臨時の会議が入りますので、打ちあわせの予定は今のうちに入れてしまいましょう。
この「語義5」は通常、テイルの形で用いられる。
類義語・反義語
類義語いっぱいだ
反義語空く


6.本質が凝縮する自動詞上級
表記詰まる
特定のものに、物事の本質が凝縮する。
文型
<特定のもの>に<物事>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
このアルバムには子供のころの思い出が詰まっている。捨てる気にはなれない。
故事成語には生きていくための知恵が詰まっている
この野菜には、太陽の恵みが詰まっています
この時期の魚には、魚本来のうま味がぎゅっと詰まっている
我が社は、来月、最先端の技術のすべてが詰まった工作機器の販売を開始する。
この美術館には、浮世絵の魅力のすべてが詰まっています。ぜひ足をお運びください。
コロケーション
<特定のもの>に
この本、このアルバム、アインシュタインのことば、この食べ物、この機械
<物事>が
① 過去:学生時代の思い出、暗い過去、戦いの歴史
② 本質:哲学のエッセンス、日本画のすべて、大人の知恵、起業のノウハウ、都会の魅力、魚のうま味、栄養素
③ 感情:故郷への思い、大切なものを失った悲しみ、家族を思う気持ち、子供への愛情、都会へのあこがれ
<様態>
ぎゅっと、びっしり、ぎっしり、いっぱい
非共起例
<物事>が
 この花には美が詰まっている
 この花はとても美しい。
 この寺には歴史が詰まっている
 この寺には長い歴史がある/この寺は歴史が長い。
<物事>は、それが<特定のもの>の中に隙間なくいっぱいに入っているというイメージで捉えられるような、具体性を持ったものでなければならない。したがって、抽象的にすぎる「美」や「歴史」に限定を加え、特定の「美」や特定の「歴史」についてならば、「詰まる」と言うことができる。
 この花には、自然の美が詰まっている
 この寺には、時の権力者との戦いの歴史が詰まっている
解説
「語義1」は「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。その結果、ものは、密度の高い状態で一つにまとまることになる。この「語義6」は、ものではなく、物事の本質が、密度の高い状態で一つにまとまる(特定のものに凝縮される)ことを表す。
誤用解説
 根菜類を天日に干すと、うまみが詰まります
 根菜類を天日に干すと、うまみが凝縮されます
この「語義6」は通常、テイルの形で使われる。
類義語・反義語
類義語凝縮する
反義語


7.隙間が狭くなる自動詞中級★★
表記詰まる
ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる。
文型
<内部の隙間・間隔>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
カバンを作る布を買うなら、目が詰まった固い布を選んだほうがよい。
セーターを家で洗ったら、編み目が詰まって固くなってしまった。もう着られない。
年輪の詰まった木材は固くて強く、高く売れるのですが、成長が遅いので、出荷できるまでには時間がかかります。
この木は、木目が詰まっていないので、柔らかくて柱として使うには適さない。
竹細工の材料とするには、節の詰まっていない竹がよい。
この木は、すぐに枝が詰まるので、ときどきすいてやる必要がある。
stairsまあ、トウモロコシはびっしり実がつまってたほうが、食べ応えがあっていいわよね。
コロケーション
<内部の隙間・間隔>が
ざる(の目)、布の目、編み目、年輪、木目、竹の節、行間
非共起例
<内部の隙間・間隔>が
 このチェックの布は線が詰まっているので、遠くから見ると無地に見える。
 このチェックの布は柄が細かいので、遠くから見ると無地に見える。
この「語義7」は、「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる」ことを表す。このとき当然のことながら、隙間や間隔を構成する構成物が相互に近づくことになるが、「詰める」を用いるときに注目しているのは、あくまでも「隙間や間隔が狭くなる」ことであって、構成物が近づくことはない。たとえば、布の目が詰まっているという場合であれば、目(隙間)が狭いことに注意が向けられているのであって、糸と糸とが近づくこと注意を向けているわけではない。ところが、チェックという柄にとって重要なのは、柄の構成物である線と、その間の隙間を含む全体であると考えられる。よって、「詰まる」を用いると不自然である。
解説
「語義1」は「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。隙間なく入れば、容器の中にあるものとものとの隙間は狭くなる。この「語義7」は、「容器の中のものともの」との隙間ではなく、「ものを構成する内部」の隙間や間隔が狭くなることを表す。
誤用解説
 ざるの目が詰まっている。(「語義7」として)
 ざるの目が詰まっている。(「語義3」として)
「ざるの目が詰まっている」と言う場合、文脈がなければ「語義3」、つまり、ざるの目にゴミなどが入っていることを表すと解釈されやすい。目の細かく作られた「ざる」であること(「語義7」)を表したければ、「今日ざるを買ってきた。今度のは目が詰まっているので、細かなゴミまで取り除ける」などと文脈を示す必要がある。
類義語・反義語
類義語狭まる
反義語空く、広がる


8.間隔が狭くなる自動詞上級
表記詰まる
ものとものとの間隔が狭くなる。
文型
<間隔>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ゴールが近づき、全力で走ったが、すぐ後ろを走る選手との距離はどんどん詰まってきた。
どろぼうを追いかけた。すぐにでも追いつけそうな気がしたのに、不思議と距離は詰まらなかった
追いかけてくるパトカーとの距離は、じわじわ詰まってきた。
相手チームの後半の追い上げで点差はあっという間に詰まり、結局、負けてしまった。
がんばって練習をしているのだが、彼との技術の差は詰まるどころか広がる一方だ。
想像を絶する企業努力をしていますので、商品価格の競合他社との金額差は、かなり詰まってきているはずです。
コロケーション
<間隔>が
① 空間的間隔:パトカーとの距離、後続車との間隔
② 抽象的間隔:差、点差、ポイント、金額の差、能力の差
<様態>
急速に、あっという間に、徐々に、だんだん、じわじわ
非共起例
<間隔>が
 何度か親しく話す機会があって、その人との距離が詰まった
 何度か親しく話す機会があって、その人との距離が縮まった
人と人との心理的距離が狭くなることを表すのに「詰まる」を用いると不自然である。
解説
「語義7」が「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる」ことを表すのに対し、この「語義8」は、「ものと別のものとの間隔が狭くなる」ことを表す。
誤用解説
 ミルクをたくさん飲んでほしいからといって、赤ちゃんがミルクを飲む間隔を大人が詰めることはできません。
 ミルクをたくさん飲んでほしいからといって、赤ちゃんがミルクを飲む間隔を大人が短くすることはできません。
この「語義8」は、時間の間隔について用いると、不自然である。
類義語・反義語
類義語縮まる、狭まる
反義語広がる


9.短くなる自動詞上級
表記詰まる
語形が短くなる。
文型
<短い語形>は<長い語形>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「うたげ(宴)」は「うちあげ」が詰まって出来た言葉という説があります。
この本によれば、「ふがいない」は「いうかいない」が詰まってできた語である。
辞典の「もしもし」の項目を見ると、「もしもし」は、「申し申し」の詰まった形だと書いてあった。
現在では、シカトと詰まった言い方をするが、もともとは「シカトウ」と言われていたと辞典に書いてあった。
「ちん(狆)」という犬の名前は、「ちいさい犬」が詰まった言い方を由来とすると聞いたことがあります。
「オライ」とは、この地域の方言で、「俺の家」が詰まった言い方だそうです。
コロケーション
<短い語形>は<長い語形>が
「もしもし」は「申し申し」が、「かっこいい」は「格好がいい」が、「シカト」は「シカトウ」が、「オライ」は「俺の家」が、「うたげ(宴)」は「うちあげ」が
<様態>
いつの間にか、自然に、徐々に
非共起例
<短い語形>は<長い語形>が
 「don’t」は、「do not」 が詰まった形です。
 「don’t」は、「do not」 が縮まった形です。
短縮形について言う場合に、「詰まる」を用いると不自然である。
解説
「語義7」は「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる」ことを表す。内部の隙間や間隔が狭くなれば、全体の長さは短くなる。この「語義9」は、語の長さが、短くなることを表す。
誤用解説
 EUはEuropean Unionが詰まった形です。
 EUはEuropean Unionが略された形です。
意図的に略して頭文字語が作られたような場合に「詰まる」を用いると不自然である。「詰まる」は、言語使用の中で、徐々に語形が短くなっていく場合に使われる。
類義語・反義語
類義語縮まる、略す
反義語


10.手元で打つ自動詞上級
表記詰まる
打点がバットの芯よりも手元に近くなる。
文型
<打球>が詰まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
打球が詰まるとは、バットの芯より手元にボールが当たることを言います。
打球は詰まりながらライトに転がっていった。
詰まった当たりだったが、ヒットになった。
上達したいと思うなら、打球が詰まる原因を、自分で分析しなければならない。
軟式野球の場合、芯で打つよりも、少し詰まらせて打つほうが飛ぶ、と言う選手が多い。
先日のテニスの試合では、タイブレークで思いっきりスマッシュを打ったが、詰まった相手の返球にうまく反応できず、負けてしまった。
コロケーション
<打球>が
球、フライ、ボール、当たり、ボレー
非共起例
<打球>が
 打点が詰まる
 打球が詰まる
 詰まった打点
 詰まった打球
「打点」について、「詰まる」とは言わない。
解説
「語義7」が「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる」ことを表すのに対し、この「語義10」は、バットやラケットなど、特定のものの内部の間隔が狭くなることを表す。つまり、「バットなどを握る手の部分」と「ボールの当たる部分」との間隔が、「バットなどの芯の部分」との間隔よりも狭くなることを表す。


詰まるの全体解説 「詰まる」は、「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る(例:お菓子が袋に詰まっている)」(語義1)を基本的な意味とする。
「容器」ではなく、「隙間」に「限度いっぱい(隙間なく)入る」ことを表すのが「ものが隙間に、限度いっぱいに入る」(例:歯に何か詰まっている)」(語義2)である。また「容器」ではなく「通路」に「限度いっぱいに入る」ことを表すのが「ものが通路に留まり、通路が通れなくなる(例:排水溝に髪の毛が詰まる)」(語義3)である。通路が通れなくなれば、ものは外に出なくなる。この出なくなるという点に注目し、「もの」ではなく、「ことばや考え」について述べるのが、「ことばや考えなどが出なくなる(例:ことばに詰まる)」(語義4)である。
また、「語義1」からは、「語義5」「語義6」へ、抽象的に意味が広がる。「語義1」は、「ものが容器の限度いっぱいに、隙間なく入る」ことを表す。「容器に隙間なくものが入る」と、中の隙間はなくなり、たくさんのものが容器の中で一つにまとまり、内部の密度は高くなる。このうち、中の隙間がなくなり、内部の密度が高くなる点にとくに注目した用法が「語義5」である。このうち「語義5」は、ものではなく、予定が限度いっぱいに入ること、すなわち「予定が特定の期間の限度いっぱいに入る(例:予定が詰まる)」ことを表す。空いた時間がなくなり、予定は密になる。これに対し、容器の中で一つにまとまることと、内部の密度が高くなることにとくに注目した用法が、「特定のものに物事の本質が凝縮する(例:この料理には魚のうま味が詰まっている)」(語義6)である。
また、容器の中の隙間がなくなる点に、とくに注目した用法に「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる(例:この木は年輪が詰まっている)」(語義7)がある。「語義7」からは、さらに、「語義8」「語義9」「語義10」へと意味が広がる。「語義8」は、「ものとものとの間隔が狭くなる(例:距離が詰まる)」ことを表す。「語義7」が、「ものを構成する内部の隙間や間隔が狭くなる」ことを表すのに対し、この「語義8」は、ものの内部ではなく、ものと別のものとの間隔が狭くなることを表している。また、「隙間や間隔が狭くなる」(語義7)と、全体の長さが短くなる。この点に注目したのが、「語義9」である。「語義9」は、ものではなく語形について、その長さが短くなること、すなわち「語形が短くなる(例:オライという方言は「俺の家」が詰まってできたとされる)」ことを表す。また、特定の間隔、すなわち、バットを持つ手と打点との距離が狭くなることを表すのが、「打点がバットの芯よりも手元に近くなる(例:詰まった打球)」(語義10)である。
























▶全例文を聞く
<容器>に
かついでいたリュックには携帯用ゲーム機と子ども向けキャラクター、ポケットモンスターのカードがぎっしり詰まっていた。
(吉岡忍著 『M/世界の、憂鬱な先端』, 2003, 368)
「台所は片付いていなかったし、洗濯機にも、汚れ物が一杯詰まっていた。
(太田蘭三著 『被害者の刻印』, 1994, 913)
<もの>が
細い小さなグラスに、ミントがぎっしりと詰まって、香りがいい。
(山崎久代著 『シュクラン!』, 2001, 294)
実際、ふたりのポケットには真鍮のナックルからドイツ製の自動拳銃まで、あらゆる武器が詰まっていた。
(ロバート・ウォーカー著;瓜生知寿子訳 『魔王のささやき』, 2002, 933)
<様態>
しかもその大部屋には、なんと四、五百人もの人間がぎっしりとつまっていた。
(エミール・ゾラ作;清水正和訳 『制作』, 1999, 953)
見た目ただの丸いパンですが中にたっぷり具が詰まってます。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<もの>が
なるほど、石鹼のが毛穴に詰まるということは、軀全体にペンキを塗られたようなものだ。
(花村萬月著 『惜春』, 2003, 913)
<隙間>に[が]
食事をすることで唾液がたくさん出るので、食後はに詰まった食べカスだけ洗い流しましょう。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
キーボードに埃が詰まっていたり、飲み物をこぼしてべたついていたりすると、キーを押したままと同じことになりかねないそうだ。
(岸本葉子著 『家もいいけど旅も好き』, 2002, 290)
(<隙間>が)<もの>で
活性炭の細孔(細かい穴 活性炭はここに汚れや有害金属を取り込んで水を奇麗にします)がでつまってしまうかもしれません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 動物、植物、ペット)
<もの>が
3年ほど前に、中学生が給食の時間に早食い競争をしていて、パンが喉に詰まり死亡するという事件が起きたからです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, テレビ、ラジオ)
<通路>に
封筒に印刷したのですが、封筒がプリンタに詰まります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
町の男の人たちは、切り通しにつまった雪と土を西へ向かって掘り進んでいた。
(ローラ・インガルス・ワイルダー作;谷口由美子訳 『長い冬』, 2000, )
<通路>が
がつまると苦しそうですが、赤ちゃんは口からも呼吸していますから、おとなからみるほど苦しくはないものです。
( 『わくわく育児ハンドブック』, 1994, 599)
<様態>
また狭くなった箇所が完全に詰まってしまうと、酸欠状態が続き、血液が流れなくなった細胞や組織は呼吸困難を起こし、死んでしまいます。
(中島俊郎監修 『フランス医薬品フラバンジェノールで高血圧が引き起こす難病が治った』, 2002, 493)
(<通路>が)<もの>で
この血栓で動脈が詰まり、腎臓が機能しなくなっていたのだ。
(木村良一著 『移植医療を築いた二人の男』, 2002, 490)
<ことば・考え>に
浩輔に尋ねられて、燁子は「ウーン」と言ったきり返事に詰まった。
(中島みち著 『がんと闘う・がんから学ぶ・がんと生きる』, 2003, 916)
互いにしらけて会話に詰まった頃、突然後ろから俺を呼ぶ声がした。
(山田深夜著 『横須賀Dブルース』, 2005, 913)
<様態>
「…解らん」一瞬答えに詰まった後で、彼は吐き捨てるように言った。
(二階堂黎人著 『バラ迷宮』, 2000, 913)
森田に問い返されて、竜太はグッと詰まった。
(本所次郎著 『極道相場』, 1995, 913)
<原因>で
怒りで言葉に詰まる花とは対照的に、実々は瑞穂に無邪気な笑顔を向けた。
(梅田みか脚本;蒔田陽平ノベライズ 『あした天気になあれ。』, 2003, 913)
<期間>は
そして「いや、その日は日程が詰まっているから」とか言って断るのである。
(小川智久著 『バブル崩壊と日本経済』, 2003, 332)
<予定>が
まだ仕事が詰まってて、時間が作れませんって、断ったんです。
(室伏彩生著 『志織のめざめ』, 2005, 913)
午後六時までは、総理も私も、スケジュールがびっしりと詰まっているんだ」
(門田泰明著 『黒豹ダブルダウン』, 1993, 913)
<様態>
手帳に予定がびっしりつまっているのは、あまり重要な仕事をやっていない時期である証拠だ。
(野口悠紀雄著 『続「超」整理法・時間編』, 1995, 002)
<特定のもの>に
図書館には未来と過去がつまっているんだ」と、兄はいっていた。
(井上尚登著 『C.h.e.』, 2002, 913)
<物事>が
「ええ、特にこの部屋には思い出が詰まっているんですよ」アデレードが言った。
(エッシー・サマーズ作;田村たつ子訳 『アップルパイの歌』, 2002, 933)
演歌という枠だけには収まらない、ジャズやマンボやブギや浪曲などあらゆる音楽のエッセンスが詰まっていた。
(横井久美子著 『ゆるゆるふっくり』, 2002, 049)
<様態>
近々、時間ができたら想い出がぎっしりつまっている横須賀を訪ねてみようと思う。
(田原俊彦著 『君だけマイラブ』, 1981, 767)
<内部の隙間・間隔>が
しっとり感を重視した、が詰まった高密度の生地。
( 『ベーカリーパティスリーブック』, 2004, )
<間隔>が
少しずつ距離が詰まってきてゴールの1kmぐらい手前で追い越した。
(Yahoo!ブログ, 2008, スポーツ)
<様態>
両者の間合いが一気に詰まった。
(井沢元彦著 『一千年の陰謀』, 2002, 913)
<短い語形>は<長い語形>が
「ブス」は江戸時代の盗賊言葉で、醜い顔、醜い女というようにつかわれていた、不助(ぶすけ)のつまった形。
(日本語倶楽部著 『<字源>の謎にこだわる本』, 1993, 821)
<打球>が
芯を外れてもバットの先端で打った打球がつまったとは言いません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, スポーツ)






























つまってないで、なんか言えよ。
まあ、トウモロコシはびっしり実がつまってたほうが、食べ応えがあっていいわよね。
胸が詰まる

意味
喜びや悲しみなどの強い感情で胸がいっぱいになる。
用例
苦労をともにしたプロジェクトのメンバーに感謝のことばをかけられたときには胸が詰まり、何も言えなくなった。
コーパスからの用例
泣けばおしめを替え、ミルクを飲ませ、だっこする毎日。初めて、スプーン一杯の果汁を自分の手から飲んだ時は、胸が詰まるほど感激した。(小川節子(著)『私の子育て・子離れ』1994)
息が詰まる

意味
呼吸がうまくできなくなる。
用例
嵐のような強い風で砂ぼこりが舞い上がり、息が詰まりそうだ。
コーパスからの用例
赤ちゃんは鼻で呼吸しているため鼻をつままれるのは息が詰まって大変不快なことですのでお乳を噛むたびに鼻をふさがれて息が詰まれば、すぐに噛むことはやめるようになりますよ。(Yahoo!知恵袋2005)
意味
心理的に圧力がかかり、自由にふるまえない。
用例
今度の上司はあれこれ細かなことに口出ししてくるので、息が詰まる
コーパスからの用例
このような計画は、管理し、評価し、指導をしてくれる有能な上司がいて始めて価値があるもので、自己管理において、そこまで堅苦しく行っては息が詰まるだけです。後年、スタッフを大勢雇えるようになったとき、彼らのためにきちんとした目標管理をすればいいでしょう。(斎藤隆浩(著)『「社労士」になって独立・開業』2004)
複合動詞 V1

行き詰まる、煮詰まる、寸詰まる
複合動詞 V2

気詰まり、鼻詰まり、目詰まり、手詰まり、行き詰まり、寸詰まり
詰まる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
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~ませんつまりま
~ましたつまりした
~ませんでしたつまりまんでした
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