潰すのコアイメージ

1.変形他動詞中級★★
表記潰す
人や動物やものが立体的なものに力を加えて、平らな形に変える。
文型
<人・動物・もの>が<立体物>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
マッチ箱なんて、子供でも潰すのは簡単だ。
ゴミの回収に出す前に、ペットボトルは潰しておかなければならない。
大雨のせいで道端のがけが崩れて、落ちてきた大きな石で車が潰されている。
子供がワイン作りを手伝いたいと言うので、ブドウの実を足で踏んで潰させてみたら、上手に潰してくれた。今も裏庭で潰しているところだ。
ニキビを潰そうとしたら、「跡が残るから止めたほうがいいよ」と姉にとめられた。
うちの猫はノミだらけだ。もう100匹は潰していると思うのに、まだまだノミがいる。
コロケーション
<立体物>を
卵、豆、錠剤、ご飯粒、じゃがいも、トマト、缶、[靴の]かかと
<結果状態>に
ぺちゃんこに、平らに、粉々に、ペースト状に、ぐじゃぐじゃに
<様態>
簡単に、強引に、無残に、完全に、ぐしゃっと、上手に、無理やり、無理[に]
解説
立体的なものに強い力を加えて、無理に元の厚さや高さをなくし、平面状の形に変える。通常、何らかの目的のために、元の形を変える。潰した結果、軟らかい粘土のように平らに伸びて広がる場合もあれば、固い豆のように粉々に砕けた破片が広がる場合もある。結果の状態は、動詞「潰す」そのものの意味では規定されず、付加詞によって「ペースト状に」「バラバラに」のように表される。容器状のもの(例:ブドウの実、ニキビ、[卵の]黄身、[手足にできる]マメ、[火傷の]水ぶくれ、ノミの体)を潰すと、中身が飛び出すこともある。
類義語・反義語
類義語壊す、破壊する
反義語


2.土地他動詞中級★★
表記潰す
人が土地などを新しい用途に用いるために、何もない状態(更地)に変える。
文型
<人>が<土地>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
道路に面した花壇を潰して新しい駐車場を作った。
高速道路を作るために、たくさんの農地が潰された
新しい神社の社殿を作るのは賛成だが、鎮守の森を潰さないですむ方法を見つける必要がある。
来年から息子夫婦が同居することになっているので、自宅を増築する必要がある。家の裏の畑を潰そう潰すまいか悩んでいるところだ。
米の輸入自由化は、多くの農家に田んぼを潰させ、農業を衰退させる結果となった。
ダム工事のために既に3ヘクタールもの森林を潰しているので、今さら工事を中止してもらっては困る。
stairs昨日、息子がやってきてさあ、うちの庭を潰して二世帯住宅に建て直したいって言うんだよ。
コロケーション
<土地>を
田んぼ、畑、植込み、花壇、林
解説
従来の使い道ではなく、新しい用途のために、土地に力を加えて、いったん平面状で何もない状態に変える。主に、新しい建物などを建てる準備として、田畑などとして使ってきた土地を、何もない更地に変える場合に「潰す」を用いる。地面や地表だけではなく、そこに生えている植物も含めた「花壇」「森」「森林」なども「潰す」対象に含まれる。従来の形や状態が失われると共に、元の機能や役割も失われる。失われた価値に対して残念で惜しいという気持ちやもったいないという感情を帯びることもある。
誤用解説
(1)
 廃屋を潰す
 廃屋を壊す
(2)
 田畑を潰す
 田畑を壊す
破壊行為の結果として更地が作り出される点に注目するのではなく、建物の破壊行為のみに焦点を当てる場合には「潰す」は用いられず、「壊す」などを使う。
類義語・反義語
類義語壊す、破壊する、造成する
反義語復元する


3.溶解他動詞上級
表記潰す
人が金属を溶かして、新しい用途の材料に変える。
文型
<人>が<金属>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
良質の古い銅貨を潰して、質の悪い新硬貨を作り出した。
資源の少ない日本では、戦時中にたくさんのお寺の鐘が潰されて再利用されたという話だ。
贅沢な銀の食器を鍛冶屋に潰させたところ、100キロもの地金になった。
収容所では、捕虜たちの金歯を潰して作った金塊が見つかった。
アルミニウムの空き缶を潰した素材では、強度が足りないそうだ。
溶鉱炉が壊れているのでは、リサイクルのために集めた屑鉄を潰そうにも潰せない
コロケーション
<金属>を
金[の~]、銀[の~]、銅[の~]、金属製品、梵鐘
解説
新しい用途や目的のために、金属製品を溶かして、何も加工されていないまっさらな状態の材料にする。この「材料」にはいわゆる「地金」と呼ばれる加工材としての金属塊も含まれる。できた材料に手を加えることによって、新たな金属製品が作り出される。
他の目的のために再利用できるという意味の「潰しが効く」という慣用句も、金属の溶解に関わる本語義から生まれたものである。
なお、金属の例ではないが、「米を潰して酒を造る」と言う場合も、米を溶かして(正確には発酵・分解させて)酒造りのための「材料」にするという意味が生きている。
類義語・反義語
類義語溶かす
反義語


4.屠殺他動詞上級
表記潰す
人が食用肉にするために、家畜を殺す。
文型
<人>が<家畜>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
庭で飼っていた鶏を潰して焼き鳥にした。
飢饉で食べ物がなくなったら、まずはうちの牛を潰そうか。
もう3頭も羊を潰しているのに、まだ肉が足りないので、もう1頭潰さないといけない。
学校で生徒たちがかわいがって育てたヤギだから、勝手に潰させるわけにはいかない。
この地方では、秋になったら、豚を1頭潰して家族総出でソーセージを作る習慣があった。
人間が生きていくために、毎年、数百万頭の家畜が潰されているそうだ。
コロケーション
<家畜>を
牛、豚、ヤギ、羊、鶏
非共起例
<家畜>を
 七面鳥を潰す。
 カナリヤ/雀を潰す。
潰す対象となるのは、食用肉にするための家畜に限られるため、ペットや野生動物は含まれない。したがって、「七面鳥を潰す」は問題なく使えるが、カナリヤを家畜として飼い、食用とする場合を除き、「カナリヤを潰す」は不適切である。また、飼育しているのではない野生の雀を食べるために殺しても、「雀を潰す」は使えない。
解説
飼っている家畜を、食べるために殺す。生きていた家畜を単に殺すだけではなく、食用肉の状態に変える。元々食用にするために飼っている家畜を殺す場合にのみ「潰す」と言えるのであって、家畜ではない愛玩動物や、食用以外の目的で殺す場合には「潰す」とは言えない。
誤用解説
 誤ってトラクターで子牛をはねて、殺してしまった[死なせてしまった]。
 誤ってトラクターで子牛をはねて、潰してしまった。
食べるために屠殺するのではなく、それ以外の目的で家畜を殺したり、事故で家畜の命を奪ってしまったりする場合には「潰す」は使えない。
類義語・反義語
類義語絞める、ばらす
反義語生かす


5.破壊他動詞中級★★
表記潰す
人や動物が立体物に力を加えて形を変え、機能や価値を損なう。
文型
<人・動物>が<立体物>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
せっかく作ったケーキだったが、運んでいるときに落として潰してしまった。
豆腐を潰さないようにきれいに切るのは、なかなか難しい。
奴隷たちは逃げることができないように、片目を潰されていたそうだ。
完熟の桃はとてもデリケートで、潰そうとは思っていなくても、手に取っただけで簡単に潰れてしまいます。
尻もちをついたときに腰の骨を潰してしまい、立つのが困難になる老人が多い。
もういくつもピンポン球を潰しているので、全力でスマッシュするのはやめておこう。
コロケーション
<立体物>を
目、骨、手、指、ケーキ、ボール、桃
<様態>
簡単に、強引に、無残に、完全に、ぐしゃっと、無理やり、無理[に]
解説
立体的なものに力を加えて無理に元の厚さや高さをなくし、本来備わっていた機能や価値を奪う。平面的な形状への変形よりも、機能や価値が損なわれることに関心がある点が、語義1との違いである。破壊的、暴力的なニュアンスを伴うことも多い。
類義語・反義語
類義語壊す、破壊する、崩す
反義語


6.機能不全他動詞上級
表記潰す
人が人や動物の役目・機能・価値を失わせる。
文型
<人>が<人・動物>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
相手チームの中心選手にハードなタックルをして潰すなんて、スポーツマンシップに反する行為だ。
試合開始早々エースが潰されてしまっては、うちのチームにもう勝ち目はないだろう。
先日のアメフトの試合では、ラインの山田選手に相手のクォーターバックを潰させる作戦が功を奏した。
敵の主力に襲い掛かる前に、まずは雑魚をひとりひとり潰そう
将来、ライバルになりそうな若手は、今のうちに潰しておこう。
あの人の調教は厳しすぎて、今までに将来有望な馬を三頭も潰している。
コロケーション
<人・動物>を
相手、主力選手、エース、若手、新人、ライバル、[選挙の]対抗馬、馬
解説
試合・競争で敵対する相手や対峙する相手に、物理的な力ないし社会的な圧力を加え、活動が継続できなくする。したがって、相手は本来の実力を発揮できなくなったり、役に立たなくなったりする。人だけではなく、馬などの動物が敵対したり対峙したりする「相手」となり得る。暴力的で乱暴なニュアンスを伴うことも多い。
類義語・反義語
類義語倒す
反義語伸ばす、活かす


7.組織他動詞上級
表記潰す
人が組織の活動を止めたり、存在をなくしたりする。
文型
<人>が<組織>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
運転資金を使いこんで、会社を潰してしまった。
国際社会に働きかけて、軍事政権を潰そうと企んだ。
親会社の意向により、子会社の労働組合が潰されてしまった。
彼は政界のドンと呼ばれる人物です。その影響力は絶大で、少なくとも3つの内閣を潰しているという噂だ。
経営効率がよくないからといって、安易に学食を潰させないように、大学経営陣に訴えかけていく必要がある。
どんなに弾圧を受けても、民主化運動が潰されることはない。
コロケーション
<組織>
会社、店、レストラン、学校、内閣、政府、自治会、組合
解説
組織や団体に社会的・経済的な圧力を加えて、活動を継続できなくする。組織や団体は本来の機能を果たせなくなり、立ち行かなくなったり、消滅したりする。特に企業や店舗の場合は、倒産することを意味する。暴力的で乱暴なニュアンスを伴うことも多い。
類義語・反義語
類義語倒す、壊す
反義語立ち上げる、作る


8.体面他動詞上級
表記潰す
人が他の人や組織の社会的な評価を損なう。
文型
<人>が<体面>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
不用意なことを言って、相手の体面を潰すようなことがあってはならない。
面子を潰されることに過剰に反発する人も少なくない。
自分の行為が相手の面目を潰していることに、彼は気づいていない。
ライバルの面を潰そうと、悪い噂を広めてやった。
いい人ぶっているあいつの顔を潰してやりたい。
大勢の見ている前でメンツを潰された恨みは決して忘れない。
stairs例えば、多くの社員の前で叱られると「メンツ(面子)を潰された」と怒る人もいます。
コロケーション
<体面>を
面子、メンツ、面目、面、ツラ、顔
解説
相手が持っている良好な社会的評価を損なう。相手の自尊心を傷つけたり、親切な気持ちを裏切ったりする。相手の社会的な価値を失墜させることになるため、相手はは怒りを覚えることもある。「顔」や「面」のように、比喩的に「体面」を表す語と用いられることが多い。
類義語・反義語
類義語傷つける、汚す、けがす、損なう、壊す
反義語立てる


9.摩耗他動詞中級★★
表記潰す
人が力を加えて、尖った部分を丸くする。
文型
<人>が<尖った部分>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
一本の包丁の刃を潰すまで使っても、料理人としての修業はまだまだ終わらない。
錆びたネジを力づくで回そうとしたものだから、ネジ山を潰してしまった。
本を落として表紙の角を潰してしまったら、もう売り物にはならない。
精密な機械なので、無理をして中の歯車を潰さないよう気をつけてください。
このヤスリは丈夫な金属製なので、目を潰そうと思っても、そうそう潰せるものではない。
彼は大工道具の使い方が荒い。今までにいくつもノコギリの歯[目]を潰している。
コロケーション
<尖った部分>を
刃、[歯車の]歯、[刃物の]歯、[刃物や工具の]目、角
解説
尖った部分を丸い形に変える。結果として、本来の価値を奪う。主に工具などを継続的・反復的に使用することにより、摩擦によって角ばった部分の鋭い形が少しずつ損なわれ、本来の機能である刃の切れ味や歯車の噛み合わせが失われる。
類義語・反義語
類義語丸める
反義語立てる、研ぐ


10.可能性他動詞上級
表記潰す
人が他の人や組織の可能性を奪う。
文型
<人>が<可能性>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
せっかくの得点チャンスだったのに、相手チームのファインプレーで潰されてしまった。
わが社が生き残るために、商売敵が販路を広げる機会を潰してやろう。
野党の国会議員たちは、与党が提出した法案を潰そうと躍起になっている。
うちの会社の社長は独裁的で、社員が企画を出す度にあれこれ文句をつけて潰している。
大統領は、公安に命じて政府転覆の陰謀を潰させたらしい。
お役所の岩盤規制によって潰されたビジネス計画は数知れない。
コロケーション
<可能性>を
機会、好機、企て、計画、将来性、才能、結婚話
解説
有望な計画や機会が持つ将来的な可能性を事前に壊す。これから発展・成功するであろう将来性を、早い段階で損なう。肯定的な可能性を持つ「チャンス」などだけではなく、否定的なニュアンスを伴う「陰謀」「たくらみ」などにおいても、その後の展開可能性を失わせるという意味で「潰す」ことができる。
「可能性の芽を摘む」という意味で「芽を潰す」という言い方も観察される。
類義語・反義語
類義語失う、壊す
反義語


11.空き空間他動詞上級
表記潰す
人が不要な空間をなくす。
文型
<人>が<空き空間>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
マラソンコースにできている小さな穴や窪みを潰しておかないと、選手がケガをするかもしれない。
昨日の地震のせいで壁にできた隙間を潰すには、どうしたらいいんだろう。
もっとたくさん文字を書けるように、原稿用紙の余白を潰そう
上司:来月から来る新入社員のデスク、どこに置こうか?||部下:もう置く場所はありませんよ。潰せるスペースがあったら、とっくに潰してます。どんどん社員が増えているんですから、早く広いオフィスに引っ越しましょう。
子供が落ちると危ないから、もう使われなくなった溝は潰してしまおう。
古い窓を潰して壁にしたら、部屋の中がしけるようになった。
コロケーション
<空き空間>を
穴、隙間、空白、余白、ブランク、マージン
解説
必要のない空間をなくす。使われないで空いている場所を利用したり、活用されないで無駄になっていた空間を有効に使ったりする。比喩的に「欠陥」「問題点」を表す「穴」「セキュリティーホール」を含んだ用法「[計画の]穴を潰す」「セキュリティーホールを潰す」もあるが、これらは「不要なものを取り除く」という意味なので、語義12に属する。「空地を潰す」という言い方は、「新しい用途に使うために、空地を更地にする」という語義2と「使われていない場所を有効活用する」語義11にまたがる用法である。
類義語・反義語
類義語埋める
反義語空ける、開ける、掘る


12.不要物他動詞上級
表記潰す
人が不要なものをなくす。
文型
<ひと>が<不要物>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
失敗の原因をひとつひとつ潰すことで、次の成功につながる。
このビジネスプランの弱点を潰そうと、みんなで知恵を絞っているところだ。
コンピュータ・プログラムのバグというものは、事前に潰そうと思っても完全に潰すことはできないものだ。
今までに見つかった欠陥は既に全部潰しているものの、これ以上問題が出てくると手に負えなくなりそうだ。
警察署長が刑事たちに命じて、犯人が潜んでいそうな隠れ家を、ひとつひとつ潰させた。
まずは、目の前の課題を潰すべきだ。
コロケーション
<不要物>を
リスク、原因、危険性、欠陥、欠点
解説
問題点などの不要なものを取り除く。存在しない方が望ましい欠陥や障害などをなくすことにより、事態を好転させようとする。不要物が複数ある場合には、まとめて取り除くのではなく、ひとつひとつ順番に除去して解決していく。不要物をなくすことは好ましいことであるため、迷惑的なニュアンスを帯びやすい受身形「潰される」を本語義で用いることは少ない。
類義語・反義語
類義語解決する、解消する、なくす、除去する、取り除く
反義語生む


13.空き時間他動詞上級
表記潰す
人が持て余している時間を使いきる。
文型
<人>が<空き時間>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
退職して急に暇になっても、どうやって暇を潰したらいいのか分からない人が多いそうだ。
最近の駅のホームでは、スマホをいじって時間を潰す人たちの姿が目立つ。
急に打ち合わせがキャンセルになったので、ぶらぶらウィンドーショッピングをして、空き時間を潰しているところだ。
レストランの予約時間までまだかなり余裕があるから、映画でも観て時間を潰そうか。
病院では診察までかなり待たされるので、いつも待ち時間を潰すのに苦労する。
学生の頃は、授業もアルバイトもない休日を潰すために、友だちの家に行って一日中おしゃべりをしていたものだ。
stairs待ち時間や移動時間などを、近年ではケータイ(携帯電話)をいじったり、スマホ(スマートフォン)を見たりしてつぶす人がとても多くなりました。
コロケーション
<空き時間>を
暇、[暇な]時間、[暇な]半日、空き時間、待ち時間
解説
必要性の低いことにわざわざ取り組んで、持て余している暇な時間を費やす。大した目的もないまま何かをして、暇な時間をやり過ごす。予定の入っていない空白の時間を、無為に埋める。
類義語・反義語
類義語浪費する
反義語空ける


14.時間の浪費他動詞上級
表記潰す
人が大切な時間を無駄に使う。
文型
<人>が<時間>を潰す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この作業に手間どってしまい、休日を丸々潰してしまった。
授業[の時間]を潰してでも、生徒たちに見せる価値のある演劇だと思うよ。
いくら僕が仕事熱心だからって、仕事で夏休みを潰そうだなんて、考えてもいない。
せっかく旅行に出かけたのに、渋滞に巻き込まれて何時間も潰すなんて、もったいないよ。
家の祖父は町医者でしたが、よく休診日を潰してでも往診に出かけていましたよ。
せっかくの日曜日なのに、自分の失敗を補うために会社に来て一日を潰しているなんて、自分自身のことが腹立たしい。
コロケーション
<時間>を
[貴重な]時間、[丸]一日、半日、午後[いっぱい]、日曜日
<様態>
丸々
解説
大切な時間を無駄に使う。貴重な時間なのに、本来なら必要のない目的のために失ってしまうという話し手の不本意な気持ちを表す。語義13では、暇で持て余している時間が「潰す」対象であるが、本語義における対象としての時間は、貴重で価値の高いものとして扱われている。
類義語・反義語
類義語浪費する、費やす、無駄遣いする、失う
反義語稼ぐ


潰すの全体解説 「力を加えて形を変え、元の形を損なう」という語義1の意味が、様々なかたちで各語義に継承されている。語義2と語義3では土地や金属製品を「まっさら」な「地」の状態に変え、語義4では家畜を食用肉という形に変える。いずれも、「本来とは異なる新しい用途のために準備するという」意味合いを持つ。
語義5では、「元の価値を損ねる」という意味も加わる。同様に、語義6と7では、人や動物、組織の機能や力を削いで、無力化したり滅ぼしたりする。語義8では社会的評価を失墜させる。語義9は、刃物の鋭利な刃などが、摩耗によりその鋭さを失うという意味である。ここでもやはり、形が変わるのに伴って本来の価値が損なわれている。語義10では、機会や計画の将来的な可能性を奪う。本来の価値が失われるという点で、語義5に接近している。
語義11の「不要な空間をなくす」という意味から、語義12の「不要なものをなくす」という意味に拡張する。語義12には、具体物だけではなく、抽象的なもの(原因など)も含まれる。語義11の「空間」は「時間」にも拡張し、語義13では持て余している時間をなくす。語義14では、語義13と同じく時間をなくすのだが、不要な時間ではなく、貴重な時間を無駄に失うという意味に転じている。
全体的に「潰す」には、「無理やり」「力ずくで」といった暴力的・破壊的なニュアンスが伴う。この乱暴なイメージのため、相手を高める尊敬形「潰される」や「お潰しになる」は落ち着きが悪い。
























▶全例文を聞く
<立体物>を
じゃがいもをつぶしてつくるポテトサラダは食べやすいので、かぜの時によい。
(則岡孝子著 『あなたに必要な栄養成分と食べ物』, 2004, 498)
じっくりと火を通してやわらかくなったにんにくをポテトマッシャーでつぶす。
( 『ハーブ&スパイス料理』, 1998, 596)
<様態>
何を思ったのか、彼女、そこで眼を逸らすとビールの空き缶をグシャリと潰した。
(西澤保彦著 『瞬間移動死体』, 2001, 913)
<土地>を
あんなところは要らないから、自分のたんぼをつぶすのばいやだということで強硬に反対をいたしました。
(国会会議録, 1976, 常任委員会)
農地をつぶして道路や駐車場にすることによる社会的損失などが計上しうる。
(上岡直見著 『クルマの不経済学』, 1996, 685)
<金属>を
第三は儒者だが、なかんづく水戸学と言はれる一派は猛烈で、その主張を藩政にまで反映させたため、水戸藩では多くの寺を廃し、露仏(露天に安置されてゐる仏像)やをつぶして大砲を鋳造したりした。
( 『日本の名随筆』, 1988, 914)
<家畜>を
いまでは、そんなことをする人の数は限られているから、をつぶしたら毛皮は捨ててしまう。
(樋口健夫,樋口容視子著 『住んでみたサウジアラビア』, 1986, 302)
<立体物>を
それと卵をたくさんふ化させたいなら、カブトムシをたくさん入れると、生まれたを潰されるということも起こりますよ。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 動物、植物、ペット)
それに気づいたエディプスは罪の意識にさいなまれて自分のをつぶしてしまいます…。
(和田秀樹著 『幸せになる嫉妬不幸になる嫉妬』, 2001, 141)
<人・動物>を
「いいですか、ここまで露骨に駿府が言い掛かりをつけてくるのは、駿府がいかなる道理があっても豊臣を潰す覚悟でいるからですよね」
(鈴木輝一郎著 『片桐且元』, 2000, 913)
<組織>
あるいは会社に多額の融資をしすぎた銀行が、その会社を潰すに潰せないという例もある。
(石原豊昭著 『債権なにがなんでも回収法』, 2001, 324)
日本の企業は現地政府と協力して、こうした非合法の組織を地道につぶす作業をしていく他はない。
(伊藤元重著 『ゼミナール国際経済入門』, 2005, 333)
<体面>を
また、向こうにしても、ほかの人に渡したのにこの人にだけ渡さなければ、をつぶすことになる。
(丸谷才一著 『女ざかり』, 1993, 913)
<尖った部分>を
捕り物のさいには、奉行所に常備された刃引き、すなわち刃先をつぶした刀を使用する決まりになっていた。
(黒崎裕一郎著 『密殺』, 2001, 913)
<可能性>を
彼らは先手を打ってわれわれの計画をつぶそうとして奔走したが、急ぎ過ぎた感があった。
(中野清見著 『回想・わが江刈村の農地解放』, 1989, 611)
私は子どものためを思ってしているつもりでも、本当は子どもの可能性をつぶしているのでは?
(ベビーエイジ, 2002, 家庭/生活)
<不要物>を
もし、相手の反応が予測される場合は、事前に担当者ベースで連絡を取り合い、日米が共同してリスクをつぶしておく努力も必要でしょう。
(賀川洋著 『外国人との仕事に悩んだ時読む本』, 1999, 336)
<空き時間>を
改札を出たあと、構内にある喫茶店で時間をつぶした。
(増田みず子著 『隅田川小景』, 1993, 913)
<時間>を
せっかく休日をつぶして案内してくれている友人の手前、話をかき混ぜるのは失礼なので止めた。
(竹村公太郎著 『土地の文明』, 2005, 291)






























昨日、息子がやってきてさあ、うちの庭を潰して二世帯住宅に建て直したいって言うんだよ。
例えば、多くの社員の前で叱られると「メンツ(面子)を潰された」と怒る人もいます。
待ち時間や移動時間などを、近年ではケータイ(携帯電話)をいじったり、スマホ(スマートフォン)を見たりしてつぶす人がとても多くなりました。
肝を潰す

意味
非常に驚いて、ひどく動揺する。
用例
息子が帰ってこないので心配していたところ、警察から電話がかかってきたので肝を潰した
コーパスからの用例
日本の海へあらわれた外国軍船を一目見ただげで、もう幕府は肝をつぶしてしまった。(細谷正充編 『誠の旗がゆく』, 2003, 913)
喉[声]を潰す

意味
大声を出しすぎて喉を傷め、声を出せなくなる。
用例
一晩中カラオケで歌いまくったせいで、とうとう声を潰してしまった。
コーパスからの用例
野球部の応援団か何か精神錬成のためにやっているべつの集団もあって、なんであんなに声を張り上げ喉をつぶす必要があるんだろうと内心では訝かしかった。(群像, 2005, 文学/芸術)
身上[身代]を潰す

意味
財産を使い果たして破産する。
用例
二代目の主は道楽息子で、仕事に精を出さずに遊んでばかりで、とうとう身上を潰してしまった。
コーパスからの用例
そして、去年の暴落で身上を潰したと愚痴ばかりこぼしていた。(渡辺房男著 『インサイダー』, 2004, 913)
複合動詞 V2

踏み潰す、握り潰す、噛み潰す、叩き潰す、押し潰す、擦り潰す、塗り潰す、食い潰す、鋳潰す、履き潰す
複合名詞

暇潰し、時間潰し、目潰し、穀潰し
潰す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形つぶす
ない形つぶさない
~なかったつぶさかった
ます形つぶし
~ませんつぶしま
~ましたつぶしした
~ませんでしたつぶしまんでした
~ときつぶすとき つぶす
ば形つぶ
意向形つぶ
て形つぶして
た形つぶした
可能形つぶせる
受身形つぶされる
使役形つぶさせる
閉じる