潰れるのコアイメージ

1.変形自動詞中級★★
表記潰れる
立体的なものが、力を加えられて、平らな形に変わる。
文型
<立体物>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
軽く踏んだだけで、マッチ箱は潰れてしまう。
最近のペットボトルは、簡単に潰れる素材でできている。
大雨のせいで道端のがけが崩れて、落ちてきた大きな石で車が潰れている。
潰れたニキビを放っておくと、跡が残るよ。
うちの飼い猫についているノミを潰そうとしても、なかなか潰れないので大変だ。
靴のかかとが潰れていると、すぐに脱げそうで履き心地が悪い。
コロケーション
<立体物>が
卵、豆、錠剤、ご飯粒、じゃがいも、トマト、缶
<結果状態>に
ぺちゃんこに、平らに、粉々に、ぐじゃぐじゃに
<様態>
簡単に、容易に、すぐ[に]、無残に、完全に、ぐしゃっと、一気に、あっという間に
解説
立体的なものに力が加わって、元の厚さや高さがなくなり、平面状の形に変わる。潰れた結果、軟らかい粘土のように平らに延びて広がる場合もあれば、固い豆のように粉々に砕けた破片が広がる場合もある。結果の状態は、動詞「潰れる」そのものの意味では規定されず、付加詞によって「ぺちゃんこに」「粉々に」のように表される。元の形が失われると同時に、本来備えていた機能や価値が損なわれてしまう。破壊的、暴力的なニュアンスを伴うことも多い。容器状のもの(例:ニキビ、[卵の]黄身、[手足にできる]マメ、[火傷の]水ぶくれ)が潰れると、中身が飛び出すこともある。
類義語・反義語
類義語ひしゃげる、壊れる、破れる
反義語


2.機能不全自動詞上級
表記潰す
人や動物が機能や価値を失う。
文型
<人・動物>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ケガでエースが潰れてしまっては、うちのチームにもう勝ち目はないだろう。
才能に恵まれているのに、プレッシャーに弱くてすぐに潰れる若手が後を絶たない。
対抗馬がスキャンダルで勝手に潰れてくれたので、次の選挙は楽勝だ。
アルコールに弱いので、ビールを一口飲んだだけで潰れてしまう。
その馬がいくら丈夫な道産子だからといって、あまり酷使しすぎると、いまに潰れるぞ。
厳しい調教に耐えかねて、今までに3頭もの馬が潰れている。
コロケーション
<人>が
エース、選手、敵、ライバル、新入り
<動物>が
馬、道産子、馬車馬、農耕馬、牛
解説
物理的な力や社会的な圧力が加えられ、その人は活動を継続できなくなる。また、過度の負荷や負担を強いることにより、馬車馬などの動物が働けなくなる。いずれの場合も、本来の役割を果たせなくなくなったり、役に立たなくなったりする。
類義語・反義語
類義語倒れる、壊れる、故障する、いかれる
反義語直る、治る


3.組織崩壊自動詞上級
表記潰れる
組織が活動できなくなる。
文型
<組織>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
社員が運転資金を使いこんだので、会社が潰れてしまった。
親会社の圧力により、子会社の労働組合が潰れてしまった。
彼は政界のドンと呼ばれる人物です。彼の意に添わなかった内閣が、少なくとも3つは潰れているという噂だ。
去年潰れた老舗旅館が、外資のリゾート会社によってリニューアルオープンした。
急激な円安の影響で、体力のない中小企業が潰れないかどうか心配だ。
この商店街にはたくさん食堂があったのに、今でも潰れていない店は1軒だけだ。
stairsあ、あそこ潰れちゃったらしいよ。
コロケーション
<組織>が
会社、レストラン、企業、組合、内閣、レストラン、デパート
解説
組織や団体が社会的・経済的に圧迫されて、活動が継続できなくなる。組織や団体は本来の機能を果たせなくなり、立ち行かなくなったり、消滅したりする。特に企業や店舗の場合は、倒産することを意味する。
類義語・反義語
類義語倒産する、倒れる、壊れる、解散する
反義語開店する、起業する


4.体面自動詞上級
表記潰れる
社会的な評価が損なわれる。
文型
<対面>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私の不用意な一言により、友人の体面が潰れることになるなんて予想だにしていなかった。
自分の面子が潰れそうになると、過剰に反発する人もいる。
一度潰れたメンツは、二度と取り戻せないだろう。
相手の面目が潰れないように、もっと慎重に行動すべきだった。
結婚話が破談になり、仲人だった社長の顔が潰れた
お前のせいで、俺の面が潰れちまったじゃねえか、どうしてくれるんだ。
コロケーション
<対面>が
面子、メンツ、面目、面、ツラ、顔
解説
良好な社会的な評価が損なわれたり、失われたりする。それまで努力して築きあげてきた評価が傷つく。社会的な価値が失墜するため、怒りを覚えることもある。「顔」や「面」のように、比喩的に「体面」を表す語と用いられることが多い。
類義語・反義語
類義語傷つく、汚れる、壊れる
反義語立つ


5.可能性他動詞上級
表記潰れる
可能性が失われる。
文型
<可能性>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
相手チームのファインプレーで、せっかくの得点チャンスが潰れてしまった。
商売敵の横やりにより、わが社が販路を広げる絶好の機会が潰れた
国民の多くは、与党の提出した法案が潰れるように願っている。
クーデターの計画が潰れた原因は、軍部の内部分裂らしい。
うちの娘が気まぐれなせいで、縁談がいくつも潰れている。
A社とB社の合併話は、もう一歩のところで潰れてしまった。
コロケーション
<可能性>が
機会、計画、将来性、結婚話、陰謀
解説
有望な計画や機会が持つ将来的な可能性が事前に損なわれる。これから発展・成功するであろう将来性が、早い段階で失われる。肯定的な可能性を持つ「チャンス」などだけではなく、否定的なニュアンスを伴う「たくらみ」などにおいても、その後の展開可能性がなくなるという意味で「潰れる」を使うことができる。
類義語・反義語
類義語壊れる、ぽしゃる
反義語


6.時間自動詞上級
表記潰す
時間が無駄に使われる。
文型
<時間>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
部屋の片づけをしていたら、丸一日が潰れてしまった。
この作業はけっこう大変だから、あと1週間は潰れるだろうな。
スマホをいじっているだけで、毎日、何時間も潰れているなんて、実にもったいない。
今月は学校の行事が多かったので、10時間も授業[の時間]が潰れた
せっかくの休みが潰れるのは申し訳ないが、うちの引っ越しの手伝いをしてくれないか。
毎日、塾に通っている間に、もう夏休みの半分が潰れていることに気付いた。
stairs昨日はバイトで一日潰れちゃって、何もできなかったの。
コロケーション
<時間>が
時間、[丸]一日、午後[いっぱい]、午前中、休日、休暇
<様態>
丸々
解説
必要性・必然性の低いことのために、大切な時間が浪費される。何かを終えるのに手間取って、いつも以上に時間が費やされてしまう。貴重な時間なのに、本来なら必要のない目的のために失ってしまうという話し手の不本意な気持ちを表す。
類義語・反義語
類義語かかる、経つ
反義語


7.摩耗自動詞上級
表記潰れる
尖った部分が、力を加えられて、丸くなる。
文型
<尖った部分>が潰れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
だんだん刃が潰れてきたせいか、切れ味が鈍ってきた。
ネジ山が潰れているので、ネジを回すことができない。
表紙の角が潰れている本は、売り物にならない。
金属製の歯車の歯が潰れたのは、やっぱり使い過ぎなんだろう。
ヤスリの目がこんなに潰れてしまっては、もう役に立たない。
安物のノコギリは、すぐに歯[目]が潰れる
stairsこれはねじ山が潰れちゃってるね。新しいねじに交換しないと。
コロケーション
<尖った部分>が
刃、[歯車の]歯、[刃物の]歯、[刃物や工具の]目、角
解説
尖った部分が擦り減って丸くなり、角が取れる。その結果として、本来の機能が奪われる。主に工具などを継続的・反復的に使用することにより、摩擦によって角ばった部分の鋭い形が少しずつ失われ、本来の機能である刃の切れ味や歯車の噛み合わせが損なわれる。
類義語・反義語
類義語丸まる、摩耗する、擦り減る、ちびる
反義語立つ


潰れるの全体解説 「力が加わって変形する」という語義1の意味を、様々な形で各語義が受け継いでいる。物理的な力から発展して心理的プレッシャーや社会的圧力・影響などに変わることによって語義が拡張していく。語義2では過度の負荷などが原因で人や動物の持っていた機能が失われる。その結果、役に立たなくなる。語義3では、組織や団体が無力化され、活動を停止したり滅んだりしている。語義4では、築きあげてきた社会的評価が傷つき、評判が損なわれている。語義2から語義4においては、いずれも「本来の価値が損なわれる」という意味が共通している。語義5では、機会や計画の発展可能性が奪われ、失敗に終わっている。語義6では、大切な時間を費やしたにもかかわらず、十分に有効な使い方とは呼べない「無駄遣い」に終わっている。語義7は、バリエーションが少ないものの、尖っている部分の鋭利さが損なわれ、使えなくなるという意味を持っている。語義2から語義4ほど明確ではないものの、語義5から語義7においても、「本来の価値が損なわれる」という意味合いを汲み取ることができる。
























▶全例文を聞く
<立体物>が
じゃがいもがつぶれるくらいまで煮たら、牛乳を入れ、塩・こしょうで味をととのえ、一煮立ちしたら火を止める。
(浜北区版広報はままつ, 2008, 静岡県)
<結果状態>に
昨日まで美しく磨き上げられていたエスコートは土埃と血痕で汚れ、側面は傷だらけ、ボンネットはぐしゃぐしゃに潰れて煙を吐き出していた。
(ジェイムズ・ガン脚本;入間眞編訳 『死者の夜明け』, 2004, 913)
<組織>が
多くの会社がつぶれ、いくつかの銀行が店を閉め、倒産しました。
(ハンス・ヴィルヘルム作;ロニー・アレキサンダー,岩倉務共訳;中野孝次,永井一正監修 『トラップ一家物語』, 2002, )
投資信託を買った銀行がつぶれても、投資信託は別の信託銀行で管理されているので大丈夫です。
(海江田万里著 『いちばんわかりやすいペイオフ100問100答』, 2002, 338)
<対面>が
新総裁の出身母体が倒産しようものなら、日銀のメンツが潰れる。
(現代, 2004, 一般)
<可能性>が
滋子の原稿がどこまでも手嶋編集長の意に添わず、連載の企画がつぶれたらうんと気が楽になるだろうけれど、それだって、とにかく第一回の原稿を書かない限りはつぶれようがない。
(宮部みゆき著 『模倣犯』, 2001, 913)
<時間>が
昨日は午前中が心電図の再検査で丸一日潰れましたし、今日は今日で一日中雨で出る気が失せるしで、正直散々な土日だったかと思います。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<尖った部分>が
ハードカバーの場合は、が潰れないように、厚紙で補強したりします。
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!オークション)






























あ、あそこ潰れちゃったらしいよ。
昨日はバイトで一日潰れちゃって、何もできなかったの。
これはねじ山が潰れちゃってるね。新しいねじに交換しないと。
胸が潰れる

意味
悲しみや心配のため、胸が痛くなるくらい苦しむ
用例
難民となった子供の姿を見ると、胸が潰れるようだ
コーパスからの用例
年老いた両親のことを思うと、この胸が潰れんばかりに悲しくなるのです。(日本推理作家協会編 『日本ベストミステリー選集』, 1993, 913)
肝が潰れる

意味
非常に驚いて、ひどく動揺する。
用例
死んだはずの友人がひょっこり現れた時には、肝が潰れるくらい驚いた。
コーパスからの用例
なにせ、総費用七十万石というのだから、胆がつぶれる話ではないか。(杉本苑子著 『月宮の人』, 1992, 913)
文字が潰れる

意味
文字の輪郭がにじんだようになり、判別しにくくなる。
用例
コピーした書類をまたコピーすると、だんだん文字が潰れて読みにくくなる。
コーパスからの用例
このため、2倍4倍と拡大すると文字が荒くなり、奇数倍や非整数倍したりすると文字が潰れてしまいます。 (C&R研究所監修;藤広哲也著 『その時、パソコンはどう動いているのか』, 2003, 548)
複合動詞 V1

酔い潰れる、飲み潰れる
潰れる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形つぶれる
ない形つぶれない
~なかったつぶれかった
ます形つぶれ
~ませんつぶれま
~ましたつぶれした
~ませんでしたつぶれまんでした
~ときつぶれるとき つぶれる
ば形つぶれ
意向形つぶれ
て形つぶれて
た形つぶれた
可能形
受身形
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