捕らえる・捉えるのコアイメージ

1.動物を押さえて逃げないようにする他動詞中級★★
表記とらえる、捕らえる   ※「捕える」と書く場合もある
人や動物が他の動物を押さえて逃げないようにする
文型
〈人・動物〉が〈動物〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私たちは山でイノシシをとらえて、調理して食べた。
トラは逃げる獲物をついにとらえた
ネコはもともと動物をとらえて食べる動物だ。
鵜飼は、水にもぐって魚をとらえる鵜の習性を利用している。
蝉の地上での生活が信じられないほど短いことを知り、それから蝉をとらえるのをやめた。
東京の業者がシカの肉を缶詰にして儲けようと目論見、シカを大量にとらえたため、エゾオオカミは食べるものがなくなり絶滅してしまった。
コロケーション
〈人〉が
我々、漁師、業者、猟師、子ども
〈動物〉が
トラ、ネコ、鵜、ライオン、鳥
〈動物〉を
魚、動物、獲物、シカ、イノシシ、セミ、ネズミ
〈様態〉とらえる
すぐ、たちまち、ついに、いっきに、必ず
非共起例
〈人〉が〈動物〉をとらえる
 おりの中をそうじするため、飼育員は逃げるペンギンをとらえて別のおりに入れた。
 おりの中をそうじするため、飼育員は逃げるペンギンをつかまえて別のおりに入れた。
「とらえる」は人が動物を押さえて逃げないようにした後、その動物を自分のものにするという意味を表す。そのため、誤用例のように、別のおりに入れるために動物を押さえて逃げないようにする場合には「とらえる」ではなく、「つかまえる」などを使う。
解説
人や動物が、ある動物を押さえて逃げないようにすることを表す。この語義1が最も基本的な意味である。
誤用解説
 ライオンは寝ているシマウマをとらえた
 ライオンは寝ているシマウマをおそった
語義1は、逃げる動物を押さえて逃げないようにすることを表す。よって、誤用例のように、逃げずにじっとしている動物については「とらえる」を使うことができない。その場合には「おそう」などを使う。
類義語・反義語
類義語つかまえる、おそう、捕獲する
反義語


2.人を押さえて逃げないようにする他動詞中級★★
表記とらえる、捕らえる   ※「捕える」と書く場合もある。
人が他の人を押さえて逃げないようにする
文型
〈人〉が〈人〉をおさえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
警察が犯人をとらえた
彼はクーデターの首謀者としてとらえられた
下手人はとらえられ、刑に処された。
王が軍兵を出動させ、二人はたちまちとらえられた
彼は捕虜としてとらえられ、国外に送られた。
首長は我々に、脱走者をただちにとらえよと命じた。
コロケーション
〈人〉が
警察官、軍兵、兵士、追っ手、敵
〈人〉を
犯人、逃亡者、下手人、【人名】、首謀者、脱走者
〈様態〉とらえる
必ず、すぐ、ただちに、たちまち、簡単に、ふたたび、ようやく
非共起例
〈人〉が〈人〉をとらえる
 祖父は強盗をとらえた
 警察官は強盗をとらえた
「〈人〉が」には祖父のような一般人ではなく、警察官のように、犯罪者をとらえることが任務として課されている人がくる。
解説
語義2は、人が他の人を押さえて逃げないようにすることを表す。語義1と語義2は人がある対象を押さえて逃げないようにするという意味は共通しているが、語義1はある対象が動物であるのに対し、語義2は人である点が異なっている。語義2は語義1から意味が拡張して生じたものである。
誤用解説
 警察官はあばれる容疑者をとらえた
 警察官はあばれる容疑者を取り押さえた
「とらえる」は逃げる人を押さえて逃げないようにすることを表す。よって、誤用例のように、逃げようとしていない容疑者については「とらえる」ではなく、押さえて動けないようにするという意味を表す「取り押さえる」などを用いる。
類義語・反義語
類義語つかまえる、取り押さえる
反義語


3.体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、人が離れないようにする他動詞中級★★
表記とらえる、捕らえる、捉える   ※「捕える」と書く場合もある。
人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人が離れないようにする
文型
〈人〉が〈人の体の一部〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
男は逃げる女の肩先をとらえた
街中で腕をだれかにとらえられ、強く引き寄せられた。
私の横をすり抜けようとした彼の肩をとらえた
はっと顔をあげたのは、手をぐっととらえられたからである。
私は彼女の手をしっかりとらえて、岩陰へ連れて行った。
敵の腕をとらえようとした瞬間、するりと逃げられてしまった。
コロケーション
〈人〉が
私、【人名】、彼、男、誰か
〈人の体の一部〉を
腕、手、肩、肩先、足
〈様態〉とらえる
強く、しっかり、いきなり、素早く、ついに、ぐっと
非共起例
〈人〉が〈人の体の一部〉をとらえる
 激しいけんかを繰り広げる二人は、互いの髪の毛をとらえた
 激しいけんかを繰り広げる二人は、互いの髪の毛をつかんだ
「とらえる」は、人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人が離れないようにすることである。よって、誤用例のように、単にある人の体の一部を手で持つ場合には「とらえる」ではなく、「つかむ」などを用いる。
解説
語義3は、人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人が離れないようにすることを表す。語義2と語義3は、他の人が離れないようにするという点は共通しているが、語義2はある人の体全体を押さえるのに対し、語義3は体の一部を押さえるという違いがある。押さえる場所が体全体から体の一部へと移り、語義2から語義3が生じたと考えられる。
誤用解説
 子どもは母親の手をとらえて歩いた。
 子どもは母親の手をにぎって/つかんで歩いた。
「とらえる」は、人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人が離れないようにすることを表す。よって、誤用例のように、離れようとしていない母親の手を持つ場合には「とらえる」ではなく、「にぎる」や「つかむ」などを使う。
類義語・反義語
類義語つかむ、にぎる
反義語


4.映像や音などを受信する他動詞上級
表記とらえる、捉える
装置が一般的には見られない映像や聞き取りにくい音などを受信する
文型
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
レーダーが台風をとらえた
高速度カメラがとらえた粒子の形が面白い。
警告が鳴り、レーダーのモニターが何かをとらえたことを知らせた。
盗聴器がとらえた音は、シャワーの音と、かすかに聞こえるやや甲高い感じの鼻声だけであった。
わが家のちっぽけな受像機が、遥か海のかなたのニューヨークからの映像をリアルタイムでとらえた
スカパー用のアンテナは水平と垂直の両方向の電波をとらえるようになっている。
コロケーション
〈もの〉が
レーダー、高速度カメラ、盗聴器、受像機、受信機、アンテナ
〈もの〉を
音、映像、台風、粒子、電波
〈様態〉とらえる
ただちに、しっかり、よく、同時に、偶然
非共起例
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
 玄関先の防犯カメラが妻の姿をとらえた
 玄関先の防犯カメラが泥棒の姿をとらえた
 玄関先の防犯カメラが妻の姿を映した
「とらえる」は、装置が一般的には見られない映像や聞き取りにくい音などを受信することを表す。よって、防犯カメラにいつも家を出入りする妻の姿が残っていても、「防犯カメラが妻の姿をとらえた」とは言わない。その場合には「映す」などを用いる。
解説
語義4は、装置が一般的に見られないような映像や聞き取りにくい音などを受信することを表す。語義3と語義4の関係について考えると、語義3は人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人が離れないようにすることであった。一方、語義4の装置が映像や音などを受信するというのは、装置が映像や音などを逃さないように取り込むことである。このように語義3と語義4は、ある対象が、他の対象が離れないようにすることを表す点で共通している。しかし、語義3はある対象が人の手であるのに対し、語義4は機器であるという点で異なっており、語義4は語義3が拡張して生じたものであると考えられる。
誤用解説
 レーダーが敵機をとらえたが、詳しいことは分からなかった。
 レーダーが敵機を感知したが、詳しいことは分からなかった。
「レーダーが敵機をとらえた」は、レーダーが敵機の映像を受信し、それを確認できたということを表す。そのため誤用例のようには表現できず、その場合には「とらえる」ではなく、「感知する」などを用いる。
類義語・反義語
類義語感知する
反義語


5.他のものにねらい通りの位置で接触する他動詞上級
表記とらえる、捉える
あるものが他のものにねらい通りの位置で接触する
文型
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
矢が的をとらえた
ラケットが球を確実にとらえた
バットがボールを芯でとらえた
挑戦者のするどいパンチがチャンピオンのあごをとらえた
彼女の投げた石が男の頭をとらえ、男は転倒した。
ラケットが球を上からとらえることで、低くて速い球を打ち返すことができる。
stairsボールをとらえる練習です。
コロケーション
〈もの〉が
バット、ラケット、パンチ、矢、石
〈もの〉を
的、ボール、球、あご、鼻、頭
〈様態〉とらえる
確実に、正確に、まっすぐ、一瞬で、すぐに
非共起例
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
 彼女の手が彼のほほをとらえた
 彼女は彼のほほをたたいた
 彼女のパンチが彼のほほをとらえた
「とらえる」は、離れたところにある対象に向けて放たれたものが、ねらい通りの位置で対象に接触することを表す。そのため誤用例のように、「彼女の手」と「彼のほほ」との距離が非常に近い場合には「とらえる」を用いることができない。その場合には「たたく」などを用いる。
解説
語義5は、あるものが他のものにねらい通りの位置で接触することを表す。語義3と語義5の関係について考えると、語義3の「人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりする」というのは、人が他の人に近づいて、体の一部に触れるということである。このように語義3と語義5は、ある対象が別の対象が存在するところに移動し、ねらい通りの位置で接触するという点は共通しているが、語義3は人の動きを表すのに対し、語義5はものの動きを表す点で異なっている。よって、語義5は語義3から意味が拡張して生じたものであると言える。
誤用解説
 テニスラケットがボールをとらえたが、打ち返せなかった。
 テニスラケットがボールをとらえ、うまく打ち返した。
「とらえる」は、テニスラケットがねらい通りの位置でボールに接触した結果、うまく打ち返したというような良い結果が生じることを含意している。そのため、誤用例のようには普通言わない。
類義語・反義語
類義語命中する、当たる
反義語


6.適切に理解する他動詞中級★★
表記とらえる、捉える
人が物事を適切に理解する
文型
〈人〉が〈こと〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
長文を読むときは、各段落の要旨をとらえることが重要だ。
学者は現在の状況を大局的にとらえている
彼の話はあちこちとんで、とらえどころがない。
プラス発想の人は物事を前向きにとらえ、課題を解決していく。
私は多角的に物事をとらえる視野の広さを、留学を通して身につけた。
ソーシャルワーカーには高齢者のニーズをとらえる力が必要となる。
コロケーション
〈人〉が
私(たち)、人々、子ども、生徒、学者、ソーシャルワーカー
〈こと〉を
要旨、大意、状況、物事、ニーズ、特徴
〈様態〉とらえる
正確に、正しく、端的に、しっかり、一瞬で、うまく
非共起例
〈人〉が〈こと〉をとらえる
 警察が事件を解決する手がかりをとらえた
 警察が事件を解決する手がかりをつかんだ
 警察が事件の核心をとらえた
「手がかり」は事件を解決するためのきっかけであり、事件自体の理解には関わらない。このように、事件自体の理解に関係のない事柄については「とらえる」と表現することはできず、その場合は「つかむ」などを用いる。「事件の核心をとらえる」は事件の重要な部分を適切に理解することを表すため、正しい表現である。
解説
語義6は、人がある物事を適切に理解することを表す。語義4と語義6の関係を考えると、語義4は装置が一般的には見られない映像や聞き取りにくい音などを受信することであった。一方、語義6の「理解する」とは、人が物事の内容や意味などを適切に受け取ることである。両者は、ある対象が物事を受け取るという点は共通しているが、語義4は装置の動きであるのに対し、語義6は人の行為である点が異なる。よって、語義4から語義6へ意味が拡張していると言える。
誤用解説
 私は彼の性格が良いことをとらえた
 私は彼の性格が良いことを知った
「とらえる」は、分かりにくいことや、すぐに把握するのが難しいことを適切に理解する場合に用いる。そのため、「彼の性格が良いこと」のように把握が難しくないことについては、「知る」などを用いる。
類義語・反義語
類義語把握する、つかむ
反義語


7.適切に表現する他動詞上級
表記とらえる、捉える
作品が物事の重要な部分を適切に表現する
文型
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
子どもが書いた似顔絵は、父親の顔の特徴をよくとらえている
壁にかけられている肖像画は父の雰囲気をまったくとらえていない
彼のデッサンは、複雑な建物の形状をうまくとらえている
新聞に掲載されていた写真は、事件の真相をとらえていた
先生が授業で取りあげた歴史書は、昔の人々の姿を正しくとらえている
近代の科学的医療の特徴を見事にとらえた小説が出版された。
コロケーション
〈もの〉が
似顔絵、肖像画、デッサン、写真、歴史書、小説
〈もの〉を
特徴、雰囲気、形状、真相、姿
〈様態〉とらえる
よく、正しく、まったく(~ない)、うまく、みごとに
非共起例
〈もの〉が〈もの〉をとらえる
 工芸品は地域の伝統をとらえている
 工芸品は地域の伝統を受け継いでいる
「とらえる」は、作品が特定の物事の重要な部分を適切に表現していることを表す。そのため、「伝統」のように、特定の物事の重要な部分とは言えないものについては「とらえる」は用いることができない。この場合には「受け継ぐ」などを用いる。
解説
語義7は、作品が物事の重要な部分を適切に表現することを表す。語義6と語義7の関係を考えると、人が作品を生み出す際、物事の重要な部分を理解し(語義6)、作品に反映させた結果、作品が物事の重要な部分を適切に表現する(語義7)ことになると言える。よって、語義6と語義7は因果関係にあり、語義7は語義6から意味が拡張している。
誤用解説
 その絵画は町の全貌をとらえている
 その絵画は町の全貌を写実している
 その絵画は町の特徴をとらえている
「とらえる」は作品が物事の重要な部分を適切に表現していることを表し、物事の全体を忠実に再現していることを表すのではない。よって、物事の全体を忠実に表す場合には「写実する」などを用いる。
類義語・反義語
類義語表現する、描写する
反義語


8.適切な機会を自分(たち)のものにする他動詞上級
表記とらえる、捉える
人や組織がある物事をするのに適切な機会を自分(たち)のものにする
文型
〈人・組織〉が〈もの〉を{とらえる}
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼はチャンスをとらえて、レギュラーのポジションを獲得した。
厳しい情勢の中で新たな商機をとらえるため、企業は努力をしている。
各地域での交通安全運動の機会をとらえて、機会があるごとにちらし類の配布、現地指導等を実施した。
彼は彼女に割引をしたりお土産を渡したりと、機会をとらえては好意を表そうとする。
私は反撃のチャンスをとらえられず、得点を入れることができなかった。
各国の駐日大使はあらゆる機会をとらえ、日本の国際化と世界への貢献を訴えた。
コロケーション
〈人〉が
私(たち)、選手、担当者、彼、彼女、大使
〈組織〉が
国、【国名】、【会社名】、会社、企業
〈もの〉を
チャンス、好機、機会、商機、勝機、戦機
〈様態〉とらえる
しっかり、確実に、いつまでも(~ない)、すぐに、いつか
非共起例
〈人〉が〈もの〉を{とらえる}
 私は幸運/幸せをとらえた
 私は幸運/幸せをつかんだ
 私はチャンスをとらえて、レギュラーのポジションを獲得した。
「とらえる」は、ある物事をするのに良い機会を得ることを表す。よって、「幸運/幸せ」を得ることを表す場合には「とらえる」ではなく、「つかまえる」などを使う。
解説
語義8は、人や組織がある物事をするのに適切な機会を自分(たち)のものにすることを表す。語義2と語義8の関係を考えると、語義2は人が他の人を押さえて逃げないようにすることであった。一方、語義8の「適切な機会を自分(たち)のものにする」とは、人や組織が機会を自分(たち)のものにし、逃げないようにすることである。両者はともに、人がある対象が逃げないようにするという共通の意味を有しているが、語義2は対象が人であるのに対し、語義8は機会という抽象物であるという違いがある。よって、語義2から語義8へ意味が拡張していると言える。
誤用解説
 監督が与えてくれたチャンスをとらえることができた。
 監督が与えてくれたチャンスをいかすことができた。
「とらえる」は、ある物事をするのに適切な機会を見つけ出し、自分(たち)のものにすることを表す。そのため誤用例のように、チャンスが誰かから与えられた場合には「とらえる」ではなく、「いかす」などを用いる。
類義語・反義語
類義語つかまえる、つかむ
反義語


9.人の心の中に存在し続ける他動詞上級
表記とらえる、捉える
ある事物が人の心の中に存在し続ける
文型
〈もの〉が〈人〉を{とらえる}
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
地震への恐怖心が彼女をとらえた
一つの思いが強烈に私をとらえている
ある種の、強い熱情、感動のようなものが、今、この男の身をとらえているらしかった。
彼女の平和への思いは聴衆をとらえた
役者の名演技は観客の心をとらえた
彼女の歌声が人々の心を強くとらえた
stairsそうだけど、一瞬で人の心を捉えるのが、双子のパンダなんだよ!
コロケーション
〈もの〉が
思い、情熱、恐怖心、猜疑心、名演技、歌声
〈人〉を
私(の心)、彼女(の心)、彼(の心)、聴衆(の心)、観客(の心)、人々(の心)
〈様態〉とらえる
強く、強烈に、一身に、ずっと、じっと
非共起例
〈もの〉が〈人〉をとらえる
 役者の演技は観客の目をとらえた
 役者の演技は観客の心をとらえた
 役者の演技は観客の目をうばった
「とらえる」は人の心、さらには人自体に影響を与えることを表す。そのため、「人の目」や「人の耳」といった体の一部とは共起しない。それに対して、「うばう」は「観客の目」など体の一部と共起することができる。
解説
語義9は、ある事物が人の心の中に存在し続けることを表す。語義3と語義9の関係について考えると、語義3は人が他の人の体の一部を手で押さえたり持ったりすることで、他の人の体の一部がある人の手の中に存在し続けることを表す。よって、語義3と語義9は、ある対象が人の体の一部の中に存在し続けることを表す点は共通しているが、語義3はある対象が人の体の一部であるのに対し、語義9は抽象的な事物であるという違いがある。よって、語義9は語義3から拡張して生じたものであると言える。
誤用解説
 先入観が彼女をとらえた
 ある種の思いが彼女をとらえた
「もの」には人の感情・感覚、あるいは五感で感じるものがくる。よって、「先入観」のような考えや意識については「とらえる」を用いない。
類義語・反義語
類義語魅了する、惑わす
反義語


捕らえる・捉えるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
〈人〉が
その隙に、アントニオが猫をとらえ、コールが犬をつかまえる。
(ミンディ・ネフ作;米崎邦子訳 『キスは運命の味』, 2001, 933)
暴風雨のために迷い込んだ鯨をこのあたりの漁師が捕え、大評判になったそうである。
(田中優子著;石山貴美子写真 『江戸を歩く』, 2005, 291)
〈動物〉が
まるでが獲物を捕らえるときのような顔だ。
(六堂葉月著 『ケダモノは甘く招く』, 2004, 913)
〈動物〉を
猫 鼠がよく苗を害するが、猫はを捕らえて苗の害を除去する。
(田中貴子著 『鈴の音が聞こえる』, 2001, 910)
兵糧はわずかに持っただけだが、小動物を捕えたりするのが、張衛は実にうまかった。
(北方謙三著 『三国志』, 1998, 913)
〈様態〉とらえる
一羽の猛禽があらわれ、この小鳥を爪のあいだにしっかりと捕えました。
(ひろさちや著 『釈迦物語』, 2004, 182)
〈人〉が
わたしどもが泥棒を捕えまして、あなたの宝物を取り戻してみせます」
(シドニィ・シェルダン著;天馬龍行訳;中山和郎訳 『明日があるなら』, 1988, )
兵士がイエスを捕らえたのではなく、イエスが自ら捕らえられたのです。
(Yahoo!ブログ, 2008, 文化活動)
〈人〉を
主人公がを捕らえようとしたその瞬間、彼らはするりとその手を逃れてしまう。
(ケン・フォレット著;矢野浩三郎訳 『ハンマー・オブ・エデン』, 2004, 933)
われわれは今後、自由アメリカ軍に寝返った者たちを捕らえたら容赦をしない。
(草薙圭一郎著 『時空戦艦『大和』』, 2001, 913)
〈様態〉とらえる
一刻も早く由紀を殺した犯人を捕えたい。
(西村京太郎著 『みちのく殺意の旅』, 1989, 913)
〈人〉が
だが、ががっしりとその手を捕らえた。
(榛名しおり著 『黒き樹海のメロヴェ』, 2002, 913)
クエンティンがケイトの腕をとらえる。
(エリザベス・ゲイジ著;北条元子訳 『タブー』, 1995, 933)
〈人の体の一部〉を
「だめだ」リチャードは手をのばし、通りすぎざまにジニーの手首をとらえた。
(リズ・フィールディング作;矢部真理訳 『魔女とプレイボーイ』, 2004, 933)
瞬間、気持より先に、秋葉の手が霧子の肩口をとらえた。
(渡辺淳一著 『化身』, 1986, 913)
〈様態〉とらえる
綱島博士は、そういいながら、突然鋼鉄のような手で、しっかりと鱗三の腕をとらえた。
(横溝正史著;日下三蔵編 『横溝正史集』, 2001, 913)
〈もの〉が
盗聴器が捉えた音は、シャワーの音と、かすかに聞こえる、やや甲高い感じの、鼻歌だけである。
(門田泰明著 『帝王コブラ』, 1995, 913)
そこで警告が鳴り、レーダーのモニターが何かを捉えたことを知らせる。
(Yahoo!ブログ, 2008, 文学)
〈もの〉を
ヘルメットをかぶって地下におりていく首相の姿をカメラがとらえるだろう。
(ジョン・ラルストン・ソウル著;鈴木主税訳 『官僚国家の崩壊』, 1997, 309)
電波望遠鏡はかすかな電波をとらえるために大きなパラボラ型をしたものが多い。
(高等学校地学Ⅱ, 2005, 高)
〈様態〉とらえる
空港のカメラが正確に状況を捉えていた。
(Yahoo!ブログ, 2008, 事件・事故)
〈もの〉が
投手の投げたボールを、バットがとらえる。
(板東英二著 『プロ野球知らなきゃ損する』, 1984, 783)
〈もの〉を
また,飛んでくるボールを「点」でとらえようとすると,非常に不安定になる。
(日産F.C.横浜マリノス編著 『サッカー』, 1994, 783)
しかし、短剣はしっかりと標的をとらえ、ドリッズトの肩に突きささった。
(R.A.サルバトーレ著;安田均監修;笠井道子訳 『ダークエルフ物語』, 2003, 933)
〈人〉が
中高年者が現在を肯定的にとらえていることは注目すべきである。
(高橋恵子,波多野誼余夫著 『生涯発達の心理学』, 1990, 143)
〈こと〉を
それは物事を表面的にしか捉えていない軽率な解釈だと思う。
(ベルンハルト・ヤウマン著;小津薫訳 『死を招く料理店』, 2005, 943)
新興国は、このアメリカの状況をどう捉えるのでしょうか。
(Yahoo!ブログ, 2008, 国際情勢)
〈様態〉とらえる
「この問題を、前向きに捉えていこうというのが、われわれの一致した意見です」
(安西篤子著 『花ある季節』, 1993, 913)
〈もの〉が
「記録」としての写真が捉えた、まるで宗教画のような神々しい「瞬間」に出会えるはずだ。
(Weeklyぴあ, 2002, 一般)
〈もの〉を
右の壺は,牛の造形的な特徴をよくとらえ,土の材質を生かした器の造形になっている。
(高等学校 工芸Ⅰ, 2006, 高)
『ピーター・パン』は、新しい世紀の気分をとらえ、老いにたいする若さの勝利という願望充足の物語である。
(ジャッキー・ヴォルシュレガー著;安達まみ訳 『不思議の国をつくる』, 1997, 930)
〈様態〉とらえる
描く地図は,世界の陸地の位置や形を大まかにとらえたものでかまわない。
(高等学校 新地理A 最新版, 2006, 高)
〈もの〉を
わたしはこの機会を捉えて、彼に自分たちのこれまでの考えをぶつけてみた。
(ダンカン・ワッツ著;辻竜平,友知政樹訳 『スモールワールド・ネットワーク』, 2004, 361)
好機を捉えることが出来るか、今年が日本の蘇りの分岐点となる。
(櫻井よしこ著 『迷走日本の原点』, 2001, 304)
〈様態〉とらえる
それが試合の流れのなかで的確に機会をとらえることにもつながると思います。
(月刊剣道日本, 2003, スポーツ)
〈もの〉が
そのひそめたがデントンの関心をとらえた。
(シャロン・サラ著;平江まゆみ訳 『スウィート・ベイビー』, 2001, 933)
どうして人は死ぬのかという漠然とした思いが、大島さんをとらえ始めた。
(女性自身, 2001, 一般)
〈人〉を
でもこのささやかな礼拝堂は、なぜか私たちの心をとらえて放さない。
(伊関武夫文;伊関光代写真 『ドイツ手作り紀行』, 2005, 293)
一七歳による動機不明の殺人が続いていたこともあり、それこそカミュの小説が実践されたかのような驚きが人々を捉えた。
(春日武彦著 『17歳という病』, 2002, 371)
〈様態〉とらえる
彼らの歌は、観客の心を{がっちり}とらえたのです。
(NHK放送研究と調査, 2002, 総記/マスコミ)






























ボールをとらえる練習です。
そうだけど、一瞬で人の心を捉えるのが、双子のパンダなんだよ!
言葉尻を捉える

意味
相手のささいな言い間違いにつけ込んで攻撃する。
用例
彼は相手の言葉尻をとらえて、わざと人の怒りを買う人だ。
コーパスからの用例
決して言葉尻をとらえるつもりはないのですが、例えば道を今度こそつくってくれるのではないかと我慢していた気持ちがあります。(竹中平蔵『構造改革でどうなる私たちの生活と日本経済』、2001、2社会科学)
心を捉える

意味
人の気持ちをしっかりとつかむ。
用例
大統領の演説は聴衆の心をとらえた
コーパスからの用例
日本で得る収入、日本で得る評価、日本で得る待遇、もろもろのことに心を捉えられ、本来の自分を失う。(篠田節子『女たちのジハード』、1997、9文学)
複合動詞 V2

ひっとらえる
複合名詞

捕えどころ
捕らえる・捉える(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏
辞書形とら
ない形とらない
~なかったとらなかった
ます形とらえ
~ませんとらえま
~ましたとらえした
~ませんでしたとらえまんでした
~ときとらるとき
ば形とられば
意向形とらえ
て形えて
た形えた
可能形とらえら
受身形とらえら
使役形とらえさ
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