通すのコアイメージ

1.通過他動詞初級★★★
表記通す
人が、人や物などを場所・空間に沿って一方向に移動させる。
文型
<人>が<人・乗り物・物>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
後ろから緊急車両が近づいていたので、道路わきに車を停めて先に通させた
この暖房システムは、パイプ内に温水を通して、部屋を暖めます。
コイルに電気を通すと熱で赤くなる。
感染予防のため、定期的に窓を開け、部屋に風を通すことを心がけてください。
大雨で危険なので、緊急車両を除き、一般の車はこの道を通すことはできません。
コロケーション
<人・乗り物>を
人、車、船、バス、列車
<液体・気体・エネルギー>を
水、血液、風、空気、ガス、電気、電流、熱
<物>を
荷物、物、ビーズ、リング
<経路>を[に]
道、橋、通路、回路
<管・線>を[に]
線、管(かん)、パイプ、樋、電線
<液体>を[に]
熱湯、湯、水
<位置>を[に]
上、下、~内
解説
人が、人や物などを経路・通路のような空間に沿って一方向に移動させたり、液体・固体などの物やエネルギーなどを、空間や他の物の中に入れて、その空間や物の中にいきわたるようにすることを表す。(食材・料理に)「火を(に)通す」、「湯を(に)通す」、「熱を通す」は加熱を意味する慣用句となっている(「魚の切り身は、さっと熱湯を通すと、生臭さが取れて食べやすくなる」)。「目を通す」は 書いてあるものをすばやく、さっと読むという慣用句になっている。
誤用解説
「を」を二重に使うことは文法的にできないという日本語の制約があるので、移動させる物と経路を一緒に言い表すことはできない。
 バスを道を通した。
代わりに「に」が使われる。
 バスを道に通した。
このためか、実際の用例では、「道を通す」「橋を通す」などの経路や「線を通す」「パイプを通す」などの通過する管・線を「を」で表す用例はあまりなく、それらは語義12の貫通、語義13の開通の意味で用いられることがほとんどである。二重の「を」が使いにくいという制約は「通す」の他の語義でも同じであり、通過点が「に」で表されることが多い。
類義語・反義語
類義語
反義語遮る


2.案内他動詞上級
表記通す
人が来客などを離れた特定の場所へ行かせる。
文型
<人>が<人>を<場所>に通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「さっきお見えになった田中さんは?」「応接室にお通ししています」
「予約のお客様がいらっしゃいました」「萩の間にお通しして
豪華な部屋に通されて、緊張してしまった。
父は面会謝絶だが、何回も見舞いに来るので、とうとうその男を病室に通した
押しかけて来た記者をひとまず会議室に通させておいて、幹部で対応を考えた。
隣人が怒った様子でやってきた。玄関で済まそうか、奥に通そうか迷った。
コロケーション
<人>を
客、訪問者、見舞客、先生
<場所>に
部屋、間(ま)、席、座敷、居間、奥、応接間、客間、別室、待合室
解説
来客などを、入口から空間を経由し、その向こうにある特定の場所へ案内することを表す。
誤用解説
①自分の住居や勤務している建物などで客を案内する場合に用いられる。その人に属さない場所については用いられにくい。×友人を旅館の部屋に通した。
②この語義では、場所は経由地ではなく着点なのでニ格を取る。
 客を特別室を通す。
 客を特別室に通す
類義語・反義語
類義語案内する、誘導する
反義語


3.内容・指示の伝達他動詞上級
表記通す
人が、話や指示を他の人に伝え、了解させる。
文型
<人>が<話・要望・指示>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「山田、例の件、先方に話を通しておいたからな」「ありがとうございます」
「山田君、先ほどのお客様のオーダー、厨房に通した?」「あ、すみません。忘れていました」
彼女は、相手にかまわず何が何でも自分の意見を通そうとするところがある。
そんな勝手な理屈を通されては、会議をする意味がない。
「こちらの要求を通すことばかり考えていてはだめだよ。あっちの話もちゃんと聞いてやらないとね」「まあ、そうですけどね」
コロケーション
<話>を
意見、主張、言い分、考え、理屈、話
<要望・指示>を
要求、希望、注文、オーダー
<人>に
上の人、先方、部長
解説
ここでは、通す(移動させる)ものが物ではなく「話」や「注文」などに拡張されている。話や注文の内容を、相手に伝え、了解されることを意味する。
誤用解説
単に情報を伝えるという意味では用いられない。
 私から彼に噂を通す。
 私から彼に話を通す。
類義語・反義語
類義語伝える、伝達する
反義語


4.膜・機器を通過他動詞中級★★
表記通す
人が、ものを、膜や装置を通過させて向こう側に行かせる
文型
<人>が<もの>を<膜状の物・装置>に通す||<人>が<膜状の物・装置>を[に]通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
助手に依頼して、不純物を取り除くために水をフィルターに通させた
元は川の水ですが,特殊なフィルターを通しているので安心して飲むことができます。
大型の凸レンズを通すことで光を屈折させ、集光し、その熱を発電に利用する。
空港の検査場では、係員が客の荷物を次々にX線検査機に通していた
切符を改札機に通そうとしたが通らなかった。
マイクを通さない生の歌声が聞けて、感動した。
コロケーション
<物>を
カード、パス、券、切符、荷物
<物質>を
水、空気
<フィルター>を[に]
フィルター、レンズ、膜、プリズム、ガラス
<機器>を[に]
浄水器、改札機、印刷機、X線検査装置、機械
<装置>を[に]
システム、アンプ、マイク、電話、カメラ、スピーカー、テレビ
解説
通過する経路が、長さのある経路や管などではなく、膜など薄いものや装置である。
類義語・反義語
類義語介する、ろ過する、経る
反義語


5.透過他動詞中級★★
表記通す,透す   ※「透す」は常用外漢字
素材が物質を透過する性質を持つ。
文型
<素材>が<物質>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「このカーテンは遮光性が高いので、光を通しません
鉄は電気をよく通す
窓ガラスにシールドを貼ると、紫外線を通しにくくなります。
あの白い防護服ですら、ある程度の放射線を通しています。
「この服に使用されている素材は湿気をよく通すので、長時間着ていても内側が蒸れません」
コロケーション
<素材>が
フィルター、膜、ガラス、レンズ、素材、鉄、水
<物質>を
光、水、空気、紫外線、湿気、水分、蒸気、水蒸気、イオン、ガス、酸素、物質
解説
素材が光や放射線、電気などを透過・伝導する性質を持っていることを表す。
類義語・反義語
類義語透過する、伝導する
反義語遮る


6.移動を遮る境界を通過他動詞中級★★
表記通す
人が、人・物・乗り物などが移動を遮る境界を通過するようにさせる。
文型
<人>が<人・物・乗り物>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
イベント会場の入り口で、入場券を持たない友人をこっそり通そうとした会場整備員が逮捕された。
この国では、人道的観点に立ち、次々に押し寄せる移民をほとんど検査なしで国境を通している
パスカードを持っていない車は、門を通さないでください。
多くの観客が押し寄せたため、開演時間を待たずにゲートを通した
男の容疑が晴れたため、税関を通した
万引き防止のため、レジを通さない商品のトイレへの持ち込みはご遠慮ください。
コロケーション
<人>が
門番、係官、検査官
<人・乗り物・物>を
人、客、容疑者、車、水、液体、気体
<境界>を
ゲート、入り口、検問、税関、レジ
解説
通過させる経路が国境、ゲートなど「境界」となるものであり、境界を通過させて通過を遮り、妨げている境界を許可を得たりして通過させて、一方側から他方側へ移動させることを表す。語義4「膜・機器を通過」との違いは、語義6の通過点には自由に通過することを妨げる境界の意味があるが、語義4の通過点には通過を妨げる意味はない。語義6の例文のレジでは、商品を無断で外に持ち出しさせないための境界であるレジを、支払いを済ませて通過させるという意味がある。
類義語・反義語
類義語
反義語遮る、阻む


7.媒介他動詞中級★★
表記通す
人が、物などを介して、行為をしたり、知覚したりする。
文型
<人・物>が<物>を通してVする
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
アパートの壁が薄いので、壁を通して隣人が話す声が聞こえてくる。
窓ガラスを通して見た空は、どんより曇っていた。
彼はSNSを通して、世界中の人々に反戦を呼びかけた。
どこにいてもインターネットを通して世界中の図書館の本を探すことができる。
五感を通して感じたことをそのまま言葉で表現している。
どんなことでも、画面を通してみるのと実際に見るのとではぜんぜん違う。
コロケーション
<フィルター>を
フィルター、レンズ、プリズム、ガラス、窓、眼鏡
<機器>を[に]
システム、アンプ、マイク、電話、カメラ、スピーカー、テレビ
<通信>を
インターネット、言葉、サイト、画面、媒体、ネット
<人体>を
身体、五感、感覚、皮膚
解説
「~を通して~」の形で、Nを介してする行為を表す。伝える、話すなどの伝える動詞 、聞く、見る、感じる、知るなど知覚(行為)動詞が来る場合が多い。
類義語・反義語
類義語通じて、介して、経由して
反義語


8.仲介他動詞中級★★
表記通す
人が、ある行為をするのに人や組織を介する
文型
<人>が<人・組織>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
旅行は、代理店を通さず、自分で手配するほうが安い。
社長の息子なので直接採用したかったが、形式上、人事部を通させた
事故の今後の交渉については、保険会社を通されたほうがいいですよ。
「勝手にインタビューされては困るなあ」「ちゃんと事務所を通していますよ」
彼女とは共通の友人を通して知り合った。
通訳を通して話をしていると、時間がかかってもどかしくなる。
コロケーション
<人>を
担当者、弁護士、人、エージェント、通訳、上司、仲介
<組織>を
メディア、会社、業者、代理店、裁判所、市場、政府、事務所、窓口
解説
人や会社などの組織を介して行為することを表す。「~を通して」の形で用いられることも多い。
類義語・反義語
類義語介する、経由する、通じて
反義語


9.体験・活動・関係を介した学習他動詞中級★★
表記通す
人が、活動や行動を介して理解したり、学んだり、知ったりする。
文型
<人>が<活動・行動>を通してVする
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
スポーツを通して体だけでなく心も成長することができた。
体験を通して初めて理解できることは多い。
「わが社は介護用品の開発を通して社会に貢献したいと考えております」
彼の作品を通して平和の尊さを知りました。
3段階の治験を通して、ワクチンの有効性と安全性が確認された。
彼とはあるイベントを通して仲良くなった。
stairs部活動を通して学べることがたくさんあるということです。
コロケーション
<経験・活動・行動>を
活動、経験、遊び、仕事、イベント、参加、サービス、行為、開発、販売、利用、効率化
<作品>を
作品、本、映像、映画、写真、論文、物語、展示、音楽
<教育・調査研究>を
学習、授業、教育、研修、指導、訓練、練習、調査、研究、分析、実験、検討、観察
<コミュニケーション・関係>を
対話、交流、コミュニケーション、触れ合い、関わり、人間関係、連携、出会い
<場>を
~の場、機会、環境、学校、事例、出来事
解説
活動、行動、学習や調査、人とのコミュニケーション、作品鑑賞など、「こと」を介して何かを知ったり、理解したり、学んだり、成長したりすることを表す。「~を通して~」の形で用いられ、「通じて」に置き換えることが可能である。
類義語・反義語
類義語介する
反義語


10.法案の成立他動詞中級★★
表記通す
議会で法案や予算案を通過させる。
文型
<人>が<法案>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
新たな法案を通そうとする与党と通させまいとする野党の攻防が続いた。
傍聴席から見ていると、議員たちは大した審議もせず、次々に議案を通しているだけのように見える。
長い間議論が続けられたが、ついに衆議院は予算案を通した
僕が出した企画書を部長は通してくれそうもない。
コロケーション
<法案>を
法案、法律、予算、企画、案、政策、企画書、稟議書、請願書、報告書、提案、決議、申請、議案
<議会>を[で]
国会、裁判、議会、会議
<審査>を[で]
稟議、審議
解説
「境界を通過させる」という意味が拡張し、議会などでの審議を突破し、法案や提案を可決させることを表す。
類義語・反義語
類義語承認する、認可する、承諾する、採択する
反義語却下する、拒否する、拒絶する


11.合格他動詞中級★★
表記通す
審査で人を合格させる。
文型
<審査機関>が<審査>で<人>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
委員会は試験で彼を通した
あんなに成績の悪い彼は通しているのに、なぜ私はダメだったのか、選考会のやり方は全くわからない。
スティーブがメディカル・チェックを受けた時、ドクターは彼を通すか迷っていた。
一人の役員が強引に自分の息子を採用試験に通そうとした。あり得ないことだ。
彼を通すかどうか、審査員の間でもめた。
コロケーション
<人>を
<審査>を[で]
審査、検査、試験
解説
「境界を通過させる」という意味が、試験を「合格させる」という意味に拡張している。
誤用解説
「人が合格する」場合は、自動詞の「通る」を用いる。
 はなこが試験を通した。
 はなこが試験に通った。
類義語・反義語
類義語採る、採用する
反義語落とす


12.貫通他動詞中級★★
表記通す
人が線状の物を穴や物、空間などを突き抜けて、向こう側に出して延ばす。
文型
<人>が<線状の物・物>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「針に糸を通したいんだけど、なかなか…」「おばあちゃん、僕が通してあげるよ」
板の端に針金を通すための穴をドリルであける。
ビーズに通していた糸が切れて、ビーズが床に散らばった。
バーベキューの準備で、コーンに串を通そうとしたら、串が折れてしまった。
4月1日、真新しいスーツに袖を通すと、気持ちがシャキッとした。
コロケーション
<線・棒・菅>を
糸、ひも、針金、チェーン、コード、チューブ、ケーブル、針、串
<身体部位>を
腕、手、頭、首
<物>を
ボール、玉
<穴>に
穴、針、針穴、輪、リング
<衣服>に
袖、服、着物、ユニフォーム
<身体部位>に
鼻、胃、耳、皮下
<位置>に[から・まで]
上、下、外、穴、内側、後ろ、裏、つけね
解説
糸やパイプなどの線状のものや棒状の物を、穴や物・空間を貫通させ、向こう側に延ばすことを表す。 「管にケーブルを通す」では、ケーブルを管の中に入れてそこにとどめることを意味するが、ケーブルの先端は管の向こう側まで延びている。慣用表現「袖を通す」は「ジャケットに手を通す」「着替えに腕を通す」などと同様に、「服を着る」という意味で用いられる。 特に、その服を初めて着るという意味を持つ。


13.開通他動詞中級★★
表記通す
交通路線や電気・水道などのライフラインを開通させる。
文型
<人>が<ライフライン>を通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「100年前、氏はこの町に鉄道を通そうと、それはそれは努力なさったのです」
「あの工事は何ですか?」「ああ、高速道路を通しているんですよ」
村に電気を通し、農業用水路や道路も整備する。
山奥の一軒家とはいえ、ふもとの村から水道も通しているので快適ですよ。
このトンネルを通すためにどれだけの犠牲が払われたことか。
この県に新幹線を通されたのはT氏に他ならない。そのことを忘れてはいけない。
コロケーション
<交通路線>を
道路、道、鉄道、線路、トンネル、ルート、水路、新幹線
<ライフライン>を
電気、ガス、水道、水路
<場所>に
地域、町、住居、市内、村
<場所>から<場所>まで
解説
線上のものが延びていくことからの意味の拡張で、それまで通じていなかった道や交通路線、水道・電気などのライフラインを新たに開通させることを表す。
類義語・反義語
類義語引く、敷設する、開く
反義語


14.態度の貫徹他動詞中級★★
表記通す
人が自分の主張や態度を最後まで貫く。
文型
<人>が<態度・立場>を[で]通す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ムンクは何人かの女性と交際したが、生涯独身を通した
「いいですか?警察で何を聞かれても、知らぬ存ぜぬを通されたほうがよろしいですよ」
彼は、最後まで武士としての意地を通した人である。
生涯自分の信念を貫き通せる人は少ない。
外国語が分からないので、海外旅行中、ずっと日本語だけで通した
彼女はデビューからずっと、本名で通している
stairsどんな目に遭っても生涯自分の主張を通すってすごいよね。
コロケーション
<態度>を
主張、意地、意志、信念、姿勢、沈黙、立場、ふり
<立場>を
私、自分、我、~者、独身、一番
<言語>を
英語、~弁、無言
<立場>で
自分、独身、キャラ、~者、ふり、調子、まじめ、やり方、スタイル、表情、~派
<名称>で
~名(日本名)、名前、実名、旧姓、本名、肩書
<言語>で
英語、日本語、無言、~弁
<服装>で
着物、半袖、裸
解説
線上のものがずっと延びていくように、長期間にわたって態度や立場や主義をずっと変えないで継続させるという意味を表す。
誤用解説
ある状態を継続し続けることを表すため、状態を表す名詞と共に用いられる。
 生涯結婚を通した
 生涯独身を通した
類義語・反義語
類義語貫く、続ける、継続する、貫徹する
反義語挫ける、辞める、あきらめる、変える、変節する


15.期間・範囲全体他動詞中級★★
表記通す
ある期間・範囲にわたって、ある行為・状態が継続している。
文型
<期間・範囲>を通してVする
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
作業員は昼夜を通して復旧工事を行った。
この地域は年間を通して降水量が少ない。
教育学部では、4年間を通して教師になるために必要なスキルを学びます。
彼は生涯を通して、人々に平和の大切さを訴え続けた。
映画全体を通して、監督の人間に対する深い愛情が感じられた。
全巻を通して読むことで、作品に込められた辛辣な体制批判が分かってくる。
コロケーション
<期間>を
昼夜、一日、一年、年間、期間、四季、シーズン、時代、時間、歴史
<人生>を
生涯、人生、一生、ライフサイクル
<過程>を
過程、プロセス、流れ
<範囲>を
すべて、全編
解説
ある期間や範囲にわたって、ずっと継続あるいは連続して何らかの事態や動作が起こっていることを表す。「通して」の形で、副詞句として用いられる。
誤用解説
「通して」の形でしか使われない。
 降水量の少なさは、年間を通します。
 この地域は年間を通して降水量が少ない。
類義語・反義語
類義語通じて、通算して
反義語


通すの全体解説 「通す」は、「通る」の他動詞で、人が、人や物などを場所・空間に沿って一方向に移動させる動きを表す(語義1)。移動・通過の経路が膜や機器の場合、単なる移動ではなく、ものを通過させて向こう側に行かせるという意味が強くなる(語義4)。通過させるのが「国境」などの境界の場合には、境界の通過を許可するという意味が含まれてくる(語義6)。この「境界を超えさせる」ことの比喩から、「法案の成立」(語義10)、「合格」(語義11)という意味が生まれる。また、一方向に通過させることが、線状のものが穴や物や空間を突き抜けて向こう側にいく「貫通」(語義12)という意味につながる。この語義から、インフラや交通機関が開通する(語義13)、さらに態度や意志を貫徹するという語義(語義14)へと拡張している。この語義で、「やり通す」「読み通す」「歩き通す」「守り通す」「隠し通す」など、前節動詞の行為を最後までやり遂げることを意味する複合動詞の形で使われることも多い。
「通す」は「~を通して」の形で、後接する行為の媒体・仲介(語義7、8、9)を示す表現としてよく使用される。また、「通して」は期間・範囲全体にわたる継続を示す意味でも使用される(語義15)。
「通す」がとる助詞について、「を」を二重に使うことは文法的にできないという日本語の制約があるので、移動させる物と経路・通過点を一緒に言い表すことはできない( バスを道を通した。 糸を針を通した)。このため、代わりに「に」が使われる( バスを道に通した。 針に糸を通した)。このためか、実際の用例では、「道を通す」「橋を通す」などの経路や「線を通す」「パイプを通す」などの通過する管・線を「を」で表す用例はあまりなく、それらは語義12の貫通、語義13の開通の意味で用いられることがほとんどである。ただし、文において「移動させる物」と「経路・通過点」の間に語が入って離れている場合では、ヲ格の二重使用も容認されやすくなる( 次々に押し寄せる移民を人道的見地からほとんど検査なしで国境を通した)。
























▶全例文を聞く
<人・乗り物>を
事故を起こすからを通さなくするというのでは、なんのために交差点をつくったのか分からない。
(栗栖浩司著 『熊と向き合う』, 2001, 654)
すると、子供たちの列が二人を通すために分かれ、二人が通りすぎてしまうと、ふたたび一つになった。
( 『世界の文学セレクション36』, 1995, 908)
<液体・気体・エネルギー>を
マンションに帰り着き、窓をすべてあけて、きのうほど冷たくはないを部屋に通しながら、聖司は木の桶をタワシで洗った。
(宮本輝著 『にぎやかな天地』, 2005, 913)
<物>を
※ブレスレットの作り方●手首のサイズに合わせて、好みのビーズをゴム糸に通して結んで仕上げる。
(久島優子著 『いま「手作り」が気分です!』, 2002, 594)
<管・線>を[に]
グルミットが鉄のかたまりのついたロープを天井のパイプに通し、もう片端を体に巻きつけて飛び降りました。
(ニック・パーク原作;稲田嵯裕里,早野美智代訳 『ウォレスとグルミット、危機一髪!』, 1997, )
<液体>を[に]
わかめは水で戻してさっと熱湯を通し、水にとって冷やしてからひと口大に切る。
(NHK科学番組部編;並木和子監修 『NHKためしてガッテン血液サラサラ健康レシピ』, 2001, 498)
蓮根は皮をむいて5mm幅に切り、さっとに通して水に取る。
(婦人公論, 2001, 一般)
<位置>を[に]
基本的に「他人や破損のおそれがある人・物のに荷物を通さない」というのは大原則!
(Yahoo!知恵袋, 2005, 子育て、出産)
<人>を
しかし、我が家には客人を通す部屋がなくて、玄関先に掛けてもらい、僕が玄関に降りて行って、お話を聞くだけで、その都度お辞りした。
(芹沢光治良著 『神の微笑』, 2004, 914)
<場所>に
受付の女性の案内で、窓から四谷方面が見渡せる応接室に通された。
(小杉健治著 『それぞれの断崖』, 2001, 913)
いつもどおりばあやさんが出迎えて、奥の部屋に通してくれた。
(内田康夫著 『伊香保殺人事件』, 2003, 913)
<話>を
副編集長の大場からを通してもらった上で、辞表を社長宛にすでに出してあるのだ。
(五木寛之著 『戒厳令の夜』, 1976, 913)
<要望・指示>を
純子はボーイを呼んで,オーダーを通してから、千崎部長の方へ向き直った。
(島田一男著 『城ケ崎心中』, 1996, 913)
(今)子どもの要求をとおすと結果的に子どものためにならないことは、制止しなければいけないよね。
(今泉岳雄,畑山伊佐枝著 『お母さんひとりで悩まないで』, 1995, 599)
<物>を
クレジットカードで限度額を越えてしまう場合、レジでカードを機械に通す際に、指摘されるのですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, ショッピング)
<フィルター>を[に]
市場に出ている浄水器は,活性炭を通した後、プラスチック中空糸又はセラミックフィルターを通す方式で、活性炭量は、その多くは、300  ̄ 500CC程度のもの。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
太陽の光をプリズムに通して見ると、赤色から青紫色までの光の帯ができます。
( 『お父さんが理科をおしえてくれた!』, 1995, 404)
<機器>を[に]
自動改札機に通す切符などには、磁気によって情報が記録されており、この情報をもとに改札の扉を開けるかどうかの判断が行なわれる。
(岩田昭男著 『電子マネー戦争Suica一人勝ちの秘密』, 2005, 338)
<装置>を[に]
電話をとおすと、彼女の声は、涼しい響きが強調される。
(片岡義男著 『メイン・テーマ』, 1984, 913)
<素材>が
液晶テレビは、バックからの光を液晶が通すか遮光するかの性質を利用した透過型になります。
(松原洋平著 『電気がわかる本』, 2001, 540)
<物質>を
卵殻は内部の養分を外に洩らさず、一方で外部の空気を中へ通すようにできています。
(番組制作スタッフ編 『たけしの万物創世紀』, 1998, 404)
<人・乗り物・物>を
フォービー道路が折れるあたりでさらに参加者があり、彼らは立ち止まってキングズマーカムからこちらへくる十数台のを通した。
(ルース・レンデル著;宇佐川晶子訳 『シミソラ』, 2001, 933)
<境界>を
「ふざけるな、さようなことを申す間はを通さぬぞ」
(新田次郎著 『武田信玄』, 1987, 913)
<フィルター>を
階下から音楽と喧騒と煙草の匂いがドアをとおしてつたわってきます。
(なかにし礼著 『夜盗』, 2003, 913)
<機器>を[に]
ピックアップが付いていてアンプをとおして音が出せます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 音楽)
<通信>を
確認はむつかしいが、テレビのお笑い番組などをとおして広まった話なのかもしれない。
(常光徹著 『うわさと俗信』, 1997, 387)
<人体>を
彼女の鼓動が,をとおして伝わってくる。
(豊田有恒著 『ライダーの墓標』, 1994, 913)
<人>を
彼の目から見れば、政府のメッセージを大使を通す代わりにCNNによって迅速に伝えることは利点以外の何ものでもなく、国対国の争いに用いられる戦術兵器がひとつ増えたにすぎない。
(ジョアンナ・ヌーマン著;北山節郎訳 『情報革命という神話』, 1998, 070)
<組織>を
以前、そのホテルは旅行会社を通さずに、利用したことがあり、その時の接客は丁寧で、部屋も綺麗でした。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 国内)
<経験・活動・行動>を
こうした活動をとおして、学校のなかだけでなく、地域とつながっていくきっかけが生まれます。
(永山友美子作;岩崎美紀イラスト 『みんなでできる子どもオペレッタ』, 2003, 766)
<作品>を
60年代から現代まで様々なタイプの作品をとおして、児童文学がどのように子どもや大人の「期待」に応えてきたか、考え合います。
(広報まちだ, 2008, 東京都)
<教育・調査研究>を
これまで大学は,大学教育をとおして優秀な人材を世に送り出してきたし,すぐれた研究によって,社会および人々を啓蒙し,人類の幸福に資してきた。
(友枝敏雄編 『心と社会をはかる・みる』, 2005, 002)
<コミュニケーション・関係>を
アキラは、言葉を通して理解を深めるカウンセリングの場に、言葉を通さないでわかってもらえることを期待してやって来たのだ。
(香山リカ著;杉本まりこ画 『本当はこわいフツウの人たち』, 2002, 140)
<場>を
本ケースでは,救急処置を要する小児と家族に対する看護の実際について,熱性痙攣を起こした10か月男児と突然の状況に混乱する家族の事例をとおして理解する.
(濱中喜代編 『事例で学ぶ小児看護学』, 2003, 492)
<法案>を
山崎は、公明党、民社党と妥協をはかってでも、なんとか法案を通そうとした。
(大下英治著 『小沢一郎の挑戦』, 1994, 913)
<議会>を[で]
県議会・市議会で予算を通すことがいかに大変か、わかります。
(永六輔著 『職人』, 1996, 750)
<審査>を[で]
クレジットを利用した訪問販売において、クレジットの審査を通すために、販売業者が、クレジット申込書面に年齢、職業、商品名等につき虚偽の記載をさせる場合がある。
(齋藤雅弘,池本誠司,石戸谷豊著 『特定商取引法ハンドブック』, 2001, 673)
<線・棒・菅>を
細い穴に細いを通すのは、目じゃなくて指先なんです。
(永六輔著 『職人』, 1996, 750)
<身体部位>を
夏目は久しぶりにスーツにを通した。
(谷崎泉著 『恋をしよう』, 2002, 913)
<穴>に
彼女はオリオールズの野球帽をかぶり、髪を後ろのに通して垂らしている。
(ノーラ・ロバーツ著;竹生淑子訳 『恋人たちの航路』, 2004, 933)
<衣服>に
娘は寝たままの姿勢で、素直にパジャマのに手を通しはじめた。
(安部公房著 『密会』, 1977, 913)
<身体部位>に
に二本の管が通され、腕にも点滴用の針が取り付けられていて、毛利カナ江は、希美子の知っている姿よりも二廻りほど小さくなっていた。
(宮本輝著 『森のなかの海』, 2004, 913)
<位置>に[から・まで]
レゼーデージーステッチの両側に、糸を下からに通し、全体をおおいます。
(クロティルド・シュヴロー・カンデル著 『刺しゅうのステッチ』, 2003, 594)
糸をボビンの穴に内側から通し,糸巻き軸にボビンをさしこむ。
(新しい技術・家庭 家庭分野, 2005, 中)
<交通路線>を
川尻の農地を市街地にするには、まず幹線道路を通さなければなりません。
(小畑勇二郎顕彰会編 『大いなる秋田を』, 2001, 289)
<ライフライン>を
浜中町内の海岸周辺の集落や鉄道沿いの市街はすでに点灯されていたが、広範囲に点在する酪農家に電気を通すのは容易なことではなく、ランプ生活を強いられていた。
(河合知子著 『北海道酪農の生活問題』, 2005, 641)
<態度>を
命のあるかぎり、私は自分の…信念を通します。
(北海道新聞取材班編 『日本警察と裏金』, 2005, 317)
女が自分の主張を通すというのは、当時としては非常に珍しいことだった。
(盛田昭夫ほか著;下村満子訳 『メイド・イン・ジャパン』, 1987, 549)
<立場>を
一度結婚したが、夫を交通事故で亡くし、それ以来独身を通している。
(二階堂黎人著 『宇宙神の不思議』, 2002, 913)
伯母は時々、少女がを通そうと頑張る時のような、邪気のない強引さを出すことがあった。
(小池真理子著 『無伴奏』, 2005, 913)
<言語>を
小松は無言を通した。
(中川なをみ作;村上豊画 『水底の棺』, 2002, )
<立場>で
男たちは女がどれほどつくしても,知らん顔で通すものですから』
(池田修訳 『アラビアン・ナイト』, 1986, 929)
マリーは殺生が嫌いで、それが高じて大学時代からベジタリアンで通してきた。
(佐保美恵子著 『マリーの選択』, 1994, 316)
<名称>で
私は結婚する前にパスポートを更新したばかりでしたので旧姓で4年位通しました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 海外)
<言語>で
苦手かどうかというより、どこへ行っても英語で通そうとする、とヨーロッパでは思われてます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 言葉、語学)
<服装>で
本多さんの身だしなみはご立派で、質素ながらダンディー、冬でも晩年まで薄着で通されたが、往年のラガー振りを思わせる小柄ながら立派な体格をお持ちであった。
(近江陸奥彦著 『遥けくも来つるものかな越し方ぞ果な知らねそ雲のあなたは』, 2003, 289)
<期間>を
学級では,年間をとおして一人一役の係活動を決めることで、クラスへの所属意識を高めて自主性を養っています。
(市報とおかまち「だんだん」, 2008, 新潟県)
<人生>を
やはり姉崎は,生涯をとおして宗教家であり宗教学者であった。
(磯前順一,深澤英隆編 『近代日本における知識人と宗教』, 2002, 289)
<過程>を
その人なりの自己実現への過程をとおして,自分らしさが形づくられていきます。
(現代保健体育, 2006, 高)






























部活動を通して学べることがたくさんあるということです。
どんな目に遭っても生涯自分の主張を通すってすごいよね。
火を(に)通す/熱を通す

意味
食材・料理を加熱する
用例
梅雨時は腐りやすいですから,食べ物にはしっかり火を通してください。
コーパスからの用例
ラップをして電子レンジ(六百W)で2〜3分加熱し、中まで 火を通す。(『血液サラサラ健康事典』時事通信出版局健康医療情報班編、時事通信出版局、時事通信社(発売)2004)
湯(熱湯)に(を)通す

意味
食材をごく短時間,さっと熱湯につける
用例
魚の切り身は、さっと熱湯を通すと、生臭さが取れて食べやすくなります。
コーパスからの用例
新鮮でみずみずしい肉厚のレタスは、ほんの一瞬お湯に通すと、生にはないうまみがぐっと加わる。(河田吉功(著)『河田吉功のキリリとうまい新鮮中華』学習研究社、2001)
目を通す

意味
書いてあるものをすばやく、さっと読む
用例
先生は私のレポートにさっと目を通しただけで,「これじゃ,だめだ」といってつき返された。
コーパスからの用例
ドアの横に置いてある新聞を取り、コーヒーをゆっくり飲みながら記事に目を通すのが彼女の日課である。(小林潔(著)『ガサ!』徳間書店、2004)
無理を通す

意味
道理に合わないことを強引に他人に受け入れさせ,行う。
用例
いくらこの地域の顔役だからとはいえ,住民の意向を無視してまで無理は通せない
コーパスからの用例
自分を偉いと勝手に思ってる奴がもうがむしゃらに無理 を通してしまうってことだろうね。(竹下利明(著)『総領事館』東京図書出版会;星雲社(発売) 2001)
袖を通す

意味
「ジャケットに手を通す」「着替えに腕を通す」などと同様に、「服を着る」という意味で用いられる。 特に、その服を初めて着るという意味を持つ。
用例
成人式まではまだ日があったが,両親に作ってもらった振袖に袖を通してみた。
コーパスからの用例
十二月上旬に買った白のニットジャケットは、新年に袖 を通そうと楽しみに取ってある。(松村由利子(著)/赤堀博美(著)『毎日新聞』毎日新聞社2003)
我を通す/意地を通す

意味
自分の考えを最後まで変えない。
用例
一度やると決めたからには,周りが何と言おうと自分の意地は通したい
コーパスからの用例
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」この名文句で始まる小説は夏目漱石「草枕」です。(大柴 晏清(著)『文学とすし』栄光出版社1991)
複合動詞 V2

押し通す、刺し通す、突き通す、吹き通す、ぶっ通す、見通す、やり通す、隠し通す、守り通す、読み通す
複合名詞

見通し、湯通し、目通し,通し稽古、通し番号、通しナンバー、働き通し、泣き通し
通す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形おす
ない形とおない
~なかったとおなかった
ます形とおし
~ませんとおしま
~ましたとおしした
~ませんでしたとおしまんでした
~ときおすとき
ば形おせば
意向形とお
て形おして
た形おした
可能形とお
受身形とおさ
使役形とおさ
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