解ける・溶けるのコアイメージ

1.対象物の分解自動詞初級★★★
表記とける、解ける
結ばれていたものや縛られていたもの、もつれていたものがゆるんで、もとの離れた状態になる。
文型
<もの>が解ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
帯が解けないようにしっかり結んでください。
水を吸った縄はきつく締まり、結び目が解けなくなる。
新しく靴を買ったけど、ちょっと歩くだけですぐ紐が解けてしまう。
娘の髪飾りのリボンが解けていたので、結びなおしてあげた。
縁起が悪いことに、お守りの紐が解けてしまった。
風の衝撃でロープが解けないように、しっかりと固定します。
コロケーション
<もの>が
紐、糸、縄、包帯、帯、結び目、リボン、ロープ
<様態>
突然、すぐ、あっさり、完全に、するする(と)、間単に、なかなか(~ない)
非共起例
<もの>が解ける
 散らかったイス[紙]が解ける
 散らかったイス[紙]が片付く
基本的に、結んだり、縛ったりすることができるひも状のものに使われる。
解説
語義1は、結んであるものや縛ってあるもの、もつれているもの、つまり糸や縄など、ひも状のものがゆるんで、もとの離れた状態になるということを表す。なお、現代日本語においては、この語義1とほぼ同じ意味を表す「ほどける(解ける)」がよく用いられる。
類義語・反義語
類義語解ける(ほどける)
反義語結ばれる、縛られる


2.負の心情の解除自動詞中級★★
表記とける、解ける
心の中にわだかまる不快な心情がやわらぎ、平穏な状態になる。
文型
<心情>が解ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先輩のアドバイスで、一つ悩みが解けました
このままでは、市民の怒りは解けないだろう。
お互いの誤解が完全に解けるまで、とことん話し合う。
国民の怒りが解けるまでは、しばらく時間がかかりそうだ。
昨日の面接ですが、途中から緊張も解けて、うまくできたと思います。
上映中ずっと気になっていた疑問が解けないまま、映画は終わってしまった。
コロケーション
<心情>が
誤解、緊張、疑問、怒り、気持ち、不信、悩み
<手段・方法>で
様々な方法、いろいろなやり方、ランニングマシーン、ヨーガ、呼吸法
<様態>
一瞬で、数分で、完全に、すっかり、次第に、絶対
非共起例
<心情>が解ける
 勇気[期待]が解ける
 勇気[期待]が消える
 不安[怒り]が解ける[消える]
基本的に、負の心情に対して用いられる。
解説
語義1は、「結んであるものや、もつれているもの(つまり、具体物)がゆるんで、もとの離れた状態になる」ということを表すが、この「解ける」は「怒りや緊張、不安など(つまり、抽象物)がやわらぎ、もとの平穏な状態になる」ということを表す。ただし、いずれも「(複雑に)絡まっているある対象物がもとの状態になる」という点では共通している。
類義語・反義語
類義語和らぐ
反義語


3.物事の解答自動詞初級★★★
表記とける、解ける
不明・未知のことに対して、答が出る。
文型
<こと>が解ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ついに、あの名画に隠された秘密が解けた
魔女の呪いが解けるまで、お姫様はこの森から出られません。
ふとしたことがきっかけで連続殺人事件の謎が解けた
この2語の意味の違いが分かった時は、まるでパズルが解けたような快感を覚えた。
科学の進展に伴い、様々な暗号が簡単に解けるようになった。
この問題が全部解けるようになったら、次は模擬試験にチャレンジしてみよう。
stairs謎が解けました
コロケーション
<こと>が
問題、謎、魔法、方程式、呪縛、問い、難問、パズル、暗号、秘密、呪文
<手段・方法>で
自分、理屈、方法、方程式、レベル、暗記、テクニック、計算、数式、考え方、論理、コンピューター、公式、原理、手法、要領、プログラム
<様態>
すぐ、すらすら、絶対に、ちゃんと、簡単に、容易に、完全に、自然に、完璧に、あっという間に、瞬時に、正確に
非共起例
<こと>が解ける
 ボールの蹴り方が解けた
 ボールの蹴り方が分かった
単に知識などを得る場合は使いにくい。
解説
語義1は、「結んであるものや、もつれているもの(つまり、具体物)がゆるんで、もとの離れた状態になる」ということを表すが、この「解ける」は「ある対象物(抽象物)が抱えている問題や謎、魔法などについて、(本来の姿とも言うべき)答え・真相が明らかになる」ということを表す。ただし、いずれも「(複雑に)絡まっているある対象物がもとの状態になる」という点では共通している。
類義語・反義語
類義語解決される、解明される、説き明かされる
反義語


4.制約・制限の解除自動詞中級★★
表記とける、解ける
制約・制限されているものが取りのぞかれ、もとの通常の状態になる。
文型
<こと>が解ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
3月31日付けで、山田教授の謹慎が解けた
公式戦5試合の出場停止が解け、次の試合からスタメンに復帰する。
農産物の輸入制限が解け、国内の野菜の値段が一気に下がった。
営業停止が解けたのは嬉しいが、店が再開できるかどうか分からない。
連続テロ事件で発令されていた厳戒令が半年ぶりに解けた
3年間続いた原発地域への立ち入り禁止が解け、住民たちはやっと家に帰ることができた。
コロケーション
<こと>が
禁止令、鎖国、禁止、謹慎、閉鎖、営業停止、凍結、規制、制限、制約
<人・組織>に対して(対する)
犯罪者、外国人、市民、日本語学校 企業、教育機関
<時期>
2年前に、夏に、年内に、春先までに、5年後に
<様態>
すぐ、ついに、とうとう、完全に、無事、予定通り
非共起例
<こと>が解ける
 推薦による大学への入学が解けた
 推薦による大学への入学が認められた
基本的に、制約・制限の意味を持つ語に限られる。
解説
「解ける」は、語義1のように本来「紐や糸などの結んであるものや、もつれているもの、つまり具体物」に対して、「それがゆるんで、もとの離れた状態になる」ということを表すが、語義4は「ある事柄(抽象物)」に対して、「制約や制限が緩和し取り除かれ、もとの通常の状態になる」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物の制限がゆるんで(緩和して)、もとの状態になる」という点では共通している。つまり、語義1と語義4は抽象的な類似性に基づいて意味が成り立っていると考えられる。
類義語・反義語
類義語解除される
反義語


5.任務・職務の解除自動詞上級
表記とける、解ける
人や組織がある任務・職務から離れる。
文型
<任務・職務>が解ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今月をもって、田中氏の図書館長の任が解ける
顧問の任が解けたら、故郷に帰って、ゆっくり余生を送りたい。
来年3月で、息子の2年間の兵役が解ける
常任理事の職務が解けるまでは、なかなか身動きがとれません。
先月の理事会で、長年続いた福田氏の会長の任が解けた
息子は自衛隊員で現在海外派遣中ですが、いつ任務が解けて日本に帰国できるか分かりません。
コロケーション
<任務・職務>が
任、職、任務、役職、職務、委嘱
<人・役職>の(任務・職務)
佐々木氏、監督者、北方警備、会長、委員、役員、顧問、海外駐在
<時期>
昨年の夏に、2ヶ月前に、今月付けで、来月をもって、60歳で
<様態>
突然、前触れなしに、やっと、ようやく、予定通り、そろそろ
解説
語義4は、「ある人(組織)に対してかけられていた制約や制限が取り除かれ、もとの通常の状態になる」ということを表しているが、この「解ける」は「ある人(組織)が任務・職務から離れる」ということを表している。ただし、いずれも「(ある人を取り巻く)何らかの状況が取り除かれ、もとの状態になる」という点では共通している。さらに、この「解ける」は、「単に何らかの状況が取り除かれ、もとの状態になる」ということだけではなく、「(ある人を取り巻く状況が取り除かれることによって)当該の人が(役職などから)辞めさせられるということまで表しており、語義4と原因と結果の関係にもあると考えられる。
誤用解説
家族・親族関係、師弟関係など、元々決まっている間柄の場合には使えない。
 父[叔父・師匠・先輩]の役が解ける
 父[叔父・師匠・先輩]と決別する
類義語・反義語
類義語解任される
反義語


6.物質の溶解自動詞中級★★
表記とける、溶ける
(主に)固形・粉末状の物質が液体の中にまじって、均質な液状になる。
文型
<物質>が溶ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
油は水に溶けない
熱いお湯を注いだら、砂糖がすぐに溶けた
この物質はどんな溶液にも溶ける
小麦粉が完全に溶けるまで、よくかき混ぜてください。
この洗濯石鹸は古いせいか、なかなか溶けない
湿度とは、空気中に溶けている水蒸気の割合のことである。
コロケーション
<物質>が
砂糖、薬、塩、肥料、粉末、石鹸、カルシウム、洗剤、油、アルコール
<手段・方法・道具>で
胃酸、雨、水、唾液、溶剤、アルカリ、洗剤、ぬるま湯
<液体・気体>に
水、油、海水、血液、溶剤、酸、液体、唾液、空気、水素
<場所>で
体内、腸、密閉空間、口の中、地下、室内
<様態>
一週間で、一日で、完全に、自然に、きれいに、急速に、ゆっくり、すぐ、なかなか(~ない)、次第に
解説
「とける」は、語義1のように本来「紐や糸などの結んであるものや、もつれているものに対して、それがゆるんで、もとの離れた状態になる」ということを表すが、語義6は「固形・粉末状の物質」に対して、「液体が加わって、(物質の組織が分解されることによって)均質な液状になる」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物の結集された状態がゆるんで、(本来の姿とも言うべき)もとの離れた状態になる」という点では共通している。
誤用解説
基本的に、物質の組織が(液体によって)分解されるものに限られる。
 机が水に溶けた
 石鹸が水に溶けた
類義語・反義語
類義語溶解する
反義語


7.物質の融解自動詞中級★★
表記とける、溶ける、熔ける、鎔ける   ※解説参照
固形状のものが熱によって、液状になる。
文型
<(固形状の)物質>が溶ける
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
このバターは、手の温度でも溶けるぐらい柔らかい。
昨日は道路のアスファルトが溶けるほどの暑さだった。
溶けたアイスクリームなんておいしくないよ。
車の中に置き忘れたチョコレートが溶けてべとべとになっちゃった。
昨夜降った雪は、日が昇るとあっという間に溶けてしまった。
このレンガは表面に特殊加工が施されているため、高熱でもなかなか溶けない
stairs冬の間じゅう地面の下で春を待っててさ、雪が溶けたところから顔を出すなんて、健気だよなあ。
コロケーション
<物質>が
金属、アイス、チョコレート、蝋、凍土、氷、バター、プラスチック
<手段・方法>で
放電、様々な方法、条件下、電磁波、高圧
<熱>で
熱、体温、温度、常温、低温、高熱、強火、光、エネルギー、太陽熱、炎
<場所>で
温室、体内、炉、溶鉱炉、冷蔵庫、大気圏、空中
<様態>
ゆっくり、簡単に、完全に、自然に、容易に、すっかり、ほとんど、一気に
解説
語義6は「固形・粉末状の物質」に対して、「液体が加わって、(物質の組織が分解されることによって)均質な液状になる」ということを表すが、語義7は「固形状のもの」に対して、「熱が加わって、(物質の組織が分解されることによって)液状になる」ということを表す。ただし、いずれも「ある物質に何らかの(化学的な)力が働き、液状になる」という点では共通している。なお、この語義7に対応する「他動詞」は、現代日本語においては一般的に「溶(熔・鎔)かす」が用いられる。
 鉄[金]が溶ける
 鉄[金]を溶く
 鉄[金]を溶かす
 岩石[雪・チョコレート]が溶ける
 岩石[雪・チョコレート]を溶く
 岩石[雪・チョコレート]を溶かす
表記については、金属類の場合は「熔ける」または「鎔ける」を用いることが多い。
例:鉄が熔(鎔)ける
誤用解説
基本的に、物質の組織が(熱によって分解され)どろどろの液状のものになる場合に限られる。
 山が溶けた
 山が焼けた
類義語・反義語
類義語融解する
反義語


解ける・溶けるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>が
空中で絡んだ透明のがするするとほどけていくのが見えるような感じがした。
(吉元由美著 『天使の樹』, 1995, 913)
そのはずみにビニール袋の結び目がほどけ、中味がごろりと転がり出た。
(草川隆著 『「萩原朔太郎」殺人事件』, 1996, 913)
<心情>が
互いの誤解が解けたゆり子と初音は、親しく話を交わした。
(しずく著 『ゆりが咲くとき』, 2002, 913)
男は緊張が解けたのか、へたへたと雪の中に坐り込んだ。
(澤田ふじ子著 『陸奥甲冑記』, 2004, 913)
<こと>が
あれほど人を悩ませてきた問題がそんなに簡単に解けるはずがない。
(大森荘蔵著 『時間と自我』, 1992, 112)
父の死を実感して、その死についていろいろと考えていくうちにが解けてきました。
(養老孟司著 『死の壁』, 2004, 114)
<手段・方法>で
つまり、ここで親は、子供の自力で解ける問題を準備するわけです。
(ストロング宮迫,タイガー山中著 『「新」勉強の常識』, 2005, 379)
<こと>が
まるで外出禁止令が解けたあとのように、人々はたむろして大通りを流れていた。
(アハロン・アッペルフェルド著;武田尚子訳 『不死身のバートフス』, 1996, 929)
懲戒休職が解けて社会部に復帰した立松に、二度とふたたび、かつてのような活躍の場は与えられなかった。
(本田靖春著 『本田靖春集』, 2002, 081)
<時期>
今日、康介の謹慎処分が解ける。
(若林真紀著 『この愛にできること』, 1995, 913)
<物質>が
砂糖が溶けたら、香料、シナモン、及びレモンのしぼり汁を入れる。
(稲垣美晴著 『サンタクロースの秘密』, 1995, 386)
洗濯物に黒いのりのようなものがつくとのことですが、その原因は、たぶん洗剤がしっかりと溶けきれていないことです。
(おしゃれ工房(NHKテレビ放送テキスト), 2002, 一般)
<液体・気体>に
化学肥料はに溶け,植物に吸収されやすい速効性のものが多い。
(高等学校化学Ⅱ, 2006, 高)
<物質>が
バターが溶けたら小麦粉を入れ、焦がさないように弱火で3〜4分、まぜながら炒める。
(グループパセリ編 『ソース・たれ・ドレッシング』, 2001, 596)
が溶けてチョコレート・ケーキの上に滴り落ち始めた。
(ケニーゼ・ムラト著;白須英子訳 『皇女セルマの遺言』, 2003, 953)






























謎が解けました
冬の間じゅう地面の下で春を待っててさ、雪が溶けたところから顔を出すなんて、健気だよなあ。
複合動詞 V1

解け合う、溶け合う、溶け込む、溶け出す
複合動詞 V2

打ち解ける
複合名詞

解け合い
解ける・溶ける(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形ない
~なかったなかった
ます形とけ
~ませんとけま
~ましたとけした
~ませんでしたとけまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形とけ
て形けて
た形けた
可能形
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