留まる・止まるのコアイメージ

1.停留・滞在自動詞初級★★★
表記留まる・止まる・とどまる   ※「停まる」を使うこともある。
人、動物が一定期間、他のところに移動せず、あるところに存在し続ける。
文型
<人・動物>が<場所>にとどまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山田さんは、しばらく新潟市内に留まった
その組織のメンバー5名は、戦闘激化の最中も現地にとどまり、人命救助の活動を続けました。
感染症の影響で日本への入国が困難になったために、帰省したまま母国に止まることを余儀なくされた留学生も複数いる。
「その作家は、各地を転々とした後、下関に10年間留まって創作活動を続けたんだって」「そうなんだ。知らなかった」
念のため、ワクチン接種後は15分から30分程度、医療機関や接種会場に留まっていただきます。
冬、繁殖地付近に留まる鳥もいれば、留まらずに南下する鳥もいる。
コロケーション
<場所>にとどまる
現地、国内、市内、会場、一箇所
<人・動物>がとどまる
メンバー、隊員、留学生、鳥、渡り鳥
<様態>とどまる
しばらく、ずっと、そのまま、未だ、数年間
非共起例
<人>がとどまる
 手がとどまる
 手が動かない
「とどまる」の語義1では、ガ格は<人>を表す名詞に限定される。身体部位が、移動せず特定の位置に存在し続ける場合には、「とどまる」ではなく「動かない」等を用いる。
<様態>とどまる
 隊員は、一瞬現地にとどまった。
 隊員は、しばらく現地にとどまった。
語義1では、「とどまる」と共起する時間を表す副詞は、通常、一定期間の経過に関わる語である。極めて短時間であることを表す副詞とは共起しにくい。
解説
語義1は、「とどまる」の最も基本的な意味である。通常、一人または複数の人、あるいは動物が、(数日以上をはじめとする)一定期間、他のところに移動せず、ある特定の場所に存在し続けることを表す。なお、「とどまる」は、<特定の場所に存在し続けること>が最も焦点化される。一方、<移動の停止>が焦点化される場合には、「とどまる」ではなく「とまる」を用いるが、漢字を用いた表記は、「とどまる」も「とまる」も、「止まる」、「留まる」、「停まる」である。
誤用解説
<移動の停止>が焦点化される場合には、「とどまる」ではなく「とまる」を用いる。
 前を歩いていた人が、突然とどまって、後ろを振り返った。
 前を歩いていた人が、突然とまって、後ろを振り返った。
また、他の同様の立場の人々が特定の場所を去った後も、何らかの理由により特定の人(々)が一定時間その場所に存在し続ける場合には、通常、「残る」を用いる。
 伝えたいことがあるので、伊藤さんと鈴木さんは、教室にとどまりなさい
 伝えたいことがあるので、伊藤さんと鈴木さんは、教室に残りなさい
 その日の晩は、会社にとどまって残業をした。
 その日の晩は、会社に残って残業をした。
類義語・反義語
類義語とまる、残る、動かない
反義語移る、移動する、離れる


2.停止自動詞中級★★
表記留まる・止まる・とどまる   ※「停まる」を使うこともある。
ものが、ある期間、移動せずあるところに存在し続ける。
文型
<もの>が<場所>にとどまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
コレステロールは、血管に留まります
食後に吸収されて血管内に入った糖が利用されずに、血管内に留まり、その値が正常な範囲ではなくなることを、耐糖能障害と呼ぶそうだ。
「水はけが悪く、同じ場所に水がとどまれば、次第にその水は汚れてしまうでしょう」「水はけを改善する具体的な方策を、早急に検討しなければなりませんね」
この洗顔石鹸には、洗い流しても肌に止まる独自の美容成分が配合されています。
その植物は今、子葉が地中に留まっている。
大気中にとどまる CO2の割合が増え、地球温暖化がさらに加速することが懸念されています。
コロケーション
<もの>がとどまる
水、成分、コレステロール、CO2、子葉
<場所>にとどまる
室内、場所、肌、血管、大気中
<様態>とどまる
しばらく、ずっと、そのまま、未だ、数年間
解説
語義2は語義1と、(通常、ガ格名詞によって表される)ある存在が、ある期間、移動せずあるところに存在し続けるという点で共通している。但し、その<ある存在>が、語義1では<人・動物>(生物)であるのに対して、語義2では<もの>(無生物)である。
誤用解説
物が、何らかの障害物の影響でそれ以上(先に)動かないことが焦点化される場合には、通常、「つかえる」を用いる。
 餅が喉にとどまって、呼吸ができなくなってしまった。
 餅が喉につかえて、呼吸ができなくなってしまった。
 トンネルを通過するときに、トラックのルーフが天井にとどまってしまった。
 トンネルを通過するときに、トラックのルーフが天井につかえてしまった。
類義語・反義語
類義語とまる、つかえる、つまる
反義語動く、移る、移動する、流れる(ガ格名詞が<液体>か<気体>の場合)


3.立場の保持自動詞中級★★
表記留まる・止まる・とどまる
人が、それまでの何らかの立場(組織の構成員、役職、地位)を、その後の一定期間、保ち続ける。
文型
<人>が<立場>にとどまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
佐藤氏が、現職に留まる
「首相は、閣僚の何人かを同じポストにとどまらせたいというお考えだそうですよ」「幹事長としては、これ以上とどまられるわけにはいかないというのが本音じゃないかな」
伊藤さんには、これまでと異なる役割を与えられたとしてもチームに留まりたいのか、一度、きちんと聞いておかなければなりません。
国内には、従業員が長くその組織に留まることを前提に人材マネジメントを行っている企業が少なからず存在している。
彼はこれまで何年間も、当該問題に対して実際に行動を起こさず、傍観者として論評する立場に留まっていました。
あの力士は、残念ながら幕内にとどまれなかった
コロケーション
<立場>にとどまる
役職、ポスト、チーム、幕内、首位
<人>がとどまる
閣僚、従業員、社長、選手、力士
<様態>とどまる
しばらく、未だ(に)、ずっと、いつまでも、何とか
非共起例
<立場>にとどまる
 上田さんは、今の会社の一員に留まることにした。
 鈴木選手は、この先も数年間は、このチームのメンバーに留まるつもりだ。
 上田さんは、今の会社に留まることにした。
 鈴木選手は、この先も数年間は、このチームに留まるつもりだ。
人が、同一の組織の構成員という立場を保持する場合、「とどまる」は通常、<組織>そのものを表すニ格名詞と共起し、<人>(構成員)を表す名詞とは共起しない。
解説
語義3は語義1と、人が何らかの状態を維持するという点で共通している。また、いずれも、[XがYにとどまる]という文型で用いられるという点でも共通している。但し、語義1は<状態の維持>が<ある場所に(他の場所に移動せず)存在し続けること>であるのに対し、語義3は<ある立場の保持>であるという違いがある。
誤用解説
人が、選考過程において脱落することなく、選考対象であり続ける場合には、通常、「留まる」ではなく「残る」を用いる。同じく、競争、勝負において(負けることなく)その対象であり続ける場合にも、通常、「留まる」ではなく「残る」を用いる。
 川口さんは、最終選考に留まったらしい。
 川口さんは、最終選考に残ったらしい。
 私たちのチームは、決勝戦に留まれた
 私たちのチームは、決勝戦に残れた
類義語・反義語
類義語残る、残留する
反義語やめる、離れる


4.未到達自動詞中級★★
表記留まる・止まる・とどまる
ある行為や出来事が、(自己あるいは他者によって)予測あるいは期待される段階、程度に到達しない状態で終わる。
文型
<こと>が<こと>にとどまる・<人・組織>が<こと>にとどまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
被害が、最小限に留まる
今回の調査では、電子商取引での決済時にクレジットカード情報を入力することに不安がない人は、全体の1割に留まりました
従来の研究の多くは、当該の問題を指摘するにとどまるものであった。
コンテストの結果は、やはり6位という微妙な順位にとどまった
「応援しているチームは、直近5試合で勝ち点はわずか5に留まったんだよね」「それは残念だったね。ここから、本来の実力を大いに発揮してほしいところだね」
記者から様々な質問がぶつけられたが、社長はあくまで「第三者委員会の調査結果を尊重したい」と言うに留まった
stairs前回、行われた選挙では、こちらの通り投票率は52%という結果に留まりました
コロケーション
<こと>がとどまる
被害、影響、結果、研究、調査
<こと>にとどまる
最小限、(微妙な)順位、(その)程度、1割、6位
<様態>とどまる
単に、あくまで、やはり、結局、なぜか
非共起例
<こと>にとどまる
 チームは、順位に留まった。
 提示された結論は、程度に留まった。
 チームは、微妙な順位に留まった。
 提示された結論は、その程度に留まった。
ニ格名詞は、「最小限」のように<程度>を意味特徴として含む普通名詞や、「一割」のように数量詞であれば、修飾要素は不要である。一方、「順位」のように<程度>を意味特徴として含まない語の場合には、「微妙な」、「平凡な」のような修飾要素を名詞の前に付加する必要がある。
解説
語義4は語義3と、人(や組織)を取り巻く何らかの状況が、大きく2つの選択肢のうち、どちらか一方の状況として実現するという点で共通している。但し語義3は、人の<立場>が、<変わる>か<変わらない>かという選択肢のうち、<変わらない>という状況として実現するというものである。一方語義4は、<行為や出来事>が、<予測あるいは期待される段階、程度>に<到達する>か<到達しない>かという選択肢のうち、<到達しない>という状況として実現するというものである。
類義語・反義語
類義語とどめる
反義語超える


留まる・止まるの全体解説 各語義の解説を参照。
























▶全例文を聞く
<場所>にとどまる
でも彼はそんなに長くはニューヨークにとどまっていられなかった。
(マルセル・デュシャン,ピエール・カバンヌ著;岩佐鉄男,小林康夫訳 『デュシャンは語る』, 1999, 723)
これ以上、病院にとどまることはできそうにもなかった。
(安東能明著 『15秒』, 2002, 913)
<人・動物>がとどまる
このため,外国人労働者数は,その後減少に転じたが,88年では,なお約162万人の外国人労働者が西ドイツ国内にとどまっている。
(警察白書, 1990, )
そのために、あなた方を守るために、国連保護軍の兵士が、ここにとどまります」
(シェリ・フィンク著;中谷和男訳 『手術の前に死んでくれたら』, 2004, 239)
<様態>とどまる
いずれにしても、このまま二人が、日本に留まっているとは考えられないわね」
(龍一京著 『壊滅!臓器密売ルート』, 2001, 913)
ダラードは、道をゆずりたくなさそうにしばらくその場にとどまった。
(ジョナサン・ケラーマン著;北澤和彦訳 『モンスター』, 2005, 933)
<もの>がとどまる
便秘というのは、食べかすが腸内にとどまって排出されない状態のことです。
(根本幸夫著 『おいしい漢方食』, 1999, 498)
<場所>にとどまる
煙は薄くなり、目に見えなくなるけれど空気中にとどまって、太陽の熱を閉じこめるの。
(ロバート・シーゲル著;中村融訳 『氷海のクジラ』, 2000, 933)
<様態>とどまる
汚れたものが体内にいつまでもとどまっていると、それを吸収した血液も汚れてきます。
(根本幸夫著 『おいしい漢方食』, 1999, 498)
<立場>にとどまる
事実、グループに最初からとどまっているメンバーはひとりもいなかった。
(キャサリン・チャールトン著;佐藤実訳 『ロック・ミュージックの歴史』, 1996, 764)
「五年も同じポストに留まってるようでは、もう出世頭じゃないさ」
(南英男著 『非情連鎖』, 2004, 913)
<こと>がとどまる
これに対し、UAEの油田の大半が集中するアブダビはドバイに比べて景気後退の影響が軽微にとどまっている。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
一方、「災害に対する安全性の確保」や「治安の良さ」は、その割合が50%前後にとどまった。
(首都圏白書, 2005, )
<こと>にとどまる
このため原料であるニッケル鉱石の輸入は,前年に比べ微増にとどまった。
(通商白書, 1977, )
一方で再生利用率は食品廃棄物全体で約1割にとどまっています。
(循環型社会白書, 2001, )
<様態>とどまる
府と県は単に名称の違いにとどまり、権能等に差異はない。
(河内隆,佐々木浩,米田順彦著 『地方自治の構造』, 2002, 318)






























前回、行われた選挙では、こちらの通り投票率は52%という結果に留まりました
とどまるところを知らない

意味
ある事柄(変化)が、いつ止まるのか予測することができない状況である。
用例
あのコンビは当時、止まるところを知らないほどの人気を誇っていた。
コーパスからの用例
不穏な内攻エネルギーの素地のうえにおきた爆発であったから、騒ぎはとどまるところを知らなかった。(森村誠一著 『鍵のかかる棺』, 2001, 913)
複合動詞 V1

とどまり続ける、とどまり始める、とどまり過ぎる
複合動詞 V2

押しとどまる、思いとどまる、降りとどまる、踏みとどまる
留まる・止まる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏
辞書形とど
ない形とどまない
~なかったとどまなかった
ます形とどまり
~ませんとどまりま
~ましたとどまりした
~ませんでしたとどまりまんでした
~ときとどるとき
ば形とどれば
意向形とどま
て形とどって
た形とどった
可能形とどま
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