1.話者への移動1初級★★★
表記てくる、て来る
人・動物・ものが話者のいる(または、注目する)方向・場所に向かって移動する。
文型
<人・動物・もの>が「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
妹が部屋から出てきた
山の斜面から石が落ちてきた
今日は早く帰ってきてね。
男女合わせて約50人が集まってきた
「ノー」という返事しか返ってこなかった
友達が「相談がある」と言って、いきなり訪ねてきた
コロケーション
<もの>が
石:落ちる、椅子:倒れる、エレベーター:降りる、エスカレーター:あがる、返事:返る
<場所・方向>から
部屋:出る、大学:帰る、右の方:寄る、遠く:訪ねる、後ろ:入る
<乗り物>で
車:戻る、電車:訪ねる、バス:訪れる、船:渡る、飛行機:帰る
<時期>
明日:降りる、もうすぐ:入る、来週:訪ねる、来月:戻る、来年:帰る
<様態>
わざわざ:訪ねる、突然:入る、いきなり:出る、ゆっくり:落ちる、どんと:押し寄せる
誤用解説
「母が台所から私の部屋にやってくる」などとは言いにくい。「やってくる」は移動距離が短い場合や単に移動の到着点に注目する場合は用いられにくい。つまり、「移動のプロセス(過程)」に注目できる状況で用いられるということである。文脈によっては「苦労して、困難を乗り越えて、はるばる遠くから」というようなニュアンスが現れることがあるが、それは「移動のプロセス(過程)」に注目する表現だからであると考えられる。
一方で、「来る」は到着点に注目する場合に用いられるため、移動距離が短い場合などにも使われる。
 母が台所から私の部屋にやってきた。
 母が台所から私の部屋に来た。
 少年たちがブラジルからやってきた[来た]。
 春がやってきた[来た]。
類義語・反義語
類義語近づく
反義語~ていく


2.話者への移動2初級★★★
表記てくる、て来る
人・動物・ものがある動作・状態を維持しながら、話者のいる(または、注目する)方向・場所に向かって移動する。
文型
<人・動物・もの>が「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎がビールを持ってきた
後ろから犬が走ってくる
散歩がてら、大学まで歩いてきた
飛んでくるボールに注意してください。
北海道から飛行機に乗ってきた
20キロもある重い荷物を、一人でここまで背負ってきた
コロケーション
<もの>が
矢:飛ぶ、ボール:運ばれる、石:転がる、銃弾:飛ぶ、花粉:風に乗る
<場所・方向>から
北海道:持つ、海外:携える、右の方:歩く、遠く:乗せる、後ろ:飛ぶ
<時期>
昨日:走る、3日前:歩く、先週:乗せる、先月:飛ぶ、去年:持つ
<様態>
わざわざ:持つ、突然:転がる、いきなり:飛ぶ、ゆっくり:歩く、素早く:走る
誤用解説
「歌いながらくる」という意味を表すのに、「歌ってくる」とは言えない。
 大学まで歌ってきた
 大学まで歌いながらきた
 大学まで歩いてきた
類義語・反義語
類義語
反義語~ていく


3.話者への移動3初級★★★
表記てくる、て来る
人がある動作をすませて、話者のいる(または、注目する)場所に移動する
文型
<人>が<もの>を「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎がタバコを買ってきた
友達と映画を見てくる
レンタル店でDVDを借りてきてもらった。
留学先で、新たな自分を見つけてきてほしい。
外で食べてきたから、夕飯はいらない。
お正月に実家に帰ったとき、中学の同級生に会ってきた
stairsあ~! 電車に傘、忘れてきちゃった
コロケーション
<もの>を
食事:する、映画:見る、料金:出す、本:借りる、財布:さがす
<人>に(<もの>を)
先生:会う、友達:言う、太郎:(話を)聞く、彼:(電話を)する、社長:説明する
<時期>
昨日:買う、3日前:見る、明日:聞く、来週:食べる、来月:借りる
<様態>
わざわざ:買う、突然:借りる、ちゃんと:説明する、ゆっくり:食べる、早く:聞く
誤用解説
「帰る」「戻る」「訪ねる」などの語は「~てくる」が接続した場合、この3の意味にはならなず、「意味1」となる。
 家に帰ってくる。(意味1の解釈なら○)
 家に帰ってから来る。
 会社に戻ってくる。(意味1の解釈なら○)
 会社に戻ってから来る。
 大学を訪ねてきた。(意味1の解釈なら○)
 大学を訪ねてから来る。
類義語・反義語
類義語
反義語~ていく


4.動作の継続中級★★
表記てくる
ある動作が現在に至るまで続く
文型
<人>が<人・こと>(を)「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ずっと両親と一緒に暮らしてきた
一人娘を女手ひとつで育ててきた
長年、留学生に日本語を教えてきた
母は夢に向かって頑張る子供たちを陰ながら応援してきた
子供たちに「命の大切さを忘れてはいけない」と言い続けてきた
これまで中国の歴史について研究してきたが、これからは日本の歴史について研究していきたいと考えている。
stairs四季折々の美しい姿は昔から人々に愛され、多くの画家によって描かれてきました
コロケーション
<人・こと>を
子供:育てる、友達:応援する、先生:慕う、歴史:研究する、英語:勉強する
<期間>
ずっと:暮らす、今まで:勉強する、これまで:研究する、5年間:育てる、長年:応援する
誤用解説
「生きてくる」に対して、「住んでくる」は言いにくい。
 若いころから人に頼らず生きてきた
 ずっと名古屋に住んできた
 ずっと名古屋に住んでいる
類義語・反義語
類義語
反義語~ていく


5.事態の進行中級★★
表記てくる
ある事態が進行し、ある段階に至る
文型
<事態・状態>が「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
最近、食べ過ぎて太ってきた
3連覇への期待が高まってくる
朝晩はめっきり冷えてきた
昔に比べて、共働きの家庭が増えてきている
年をとると、体力もどんどん落ちてくる
子供が大きくなってくると、だんだん親の言うことを聞かなくなる。
stairs近年、ハロウィンは日本でも年中行事として次第に定着してきました
コロケーション
<事態・状態>が
天気:暖かくなる、体重:増える、体力:衰える、身長:伸びる、給料:減る
<様態>
どんどん:伸びる、だんだん:増える、急に:大きくなる、めっきり:暖かくなる、次第に:減少する
誤用解説
「(操業を)停止してくる」などとは言いにくい。
 不景気の煽りで、多くの工場が操業を停止してきた
 不景気の煽りで、操業を停止する工場が多くなってきた
類義語・反義語
類義語
反義語~ていく


6.話者への働きかけ中級★★
表記てくる
相手があるやり方で話者側に働きかける
文型
<人>が<人>に(<こと>を)「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼女が「別れたい」と言ってきた
突然、隣の人が話しかけてきた
授業中、とんでもない質問をしてきた学生がいた。
妻が理不尽な怒りをぶつけてくる
5歳になる娘が急に「サンタクロースって本当にいるの?」って聞いてきた
昨夜遅く、友人が泣きながら電話をかけてきた
コロケーション
<こと>を
別れ:言う、電話:かける、質問:する、疑問:投げかける、変なこと:聞く
<様態>
突然:言う、急に:聞く、堂々と:話しかける、泣きながら:電話する、何食わぬ顔で:嘘をつく
誤用解説
「手伝う」などの話者側に好ましい、相手からの働きかけの場合は、「~てくる」とは言えない。
 花子さんが、作業を手伝ってきた
 花子さんが、余計な手出しをしてきた
 花子さんが、作業を手伝ってくれた
相手(他人)から話者側に働きかける場合は、「~てくる」を用いないと不自然な表現となるが、話者側から相手(他人)に働きかける場合は、そのような制限はない。「~てくれる」なども同様である。
 花子が私に電話をかけた。
 花子が私に電話をかけてきた
 私が花子に電話をかけた。
 太郎が私を助けた。
 太郎が私を助けてくれた
 私が太郎を助けた。
 私が太郎を助けてあげた


7.現象・事態の発生中級★★
表記てくる
ある現象・事態が起こる
文型
<現象・事態>が「~てくる」
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
なぜか涙が出てきた
虫の声が聞こえてくる
富士山が雲の中から現れてきた
良いアイデアが浮かんでこない
この曲を聴くと何だか泣けてくる
赤ちゃんが無事に生まれてくるように祈る。
コロケーション
<現象・事態>が
涙:出る、声:聞こえる、笑い:こぼれる、頂上:見える、アイデア:浮かぶ
<様態>
急に:出る、突然:現れる、かすかに:見える、何だか:泣ける、ちゃんと:聞こえる
誤用解説
「事態・現象が消滅する」場合は、使いにくい。
 突然笑いが止まってきた
 突然笑いが止まった。
 突然笑いが出てくる
また、「突然扇風機が回ってきた」とは言わない。
 突然扇風機が回ってきた
 突然扇風機が回り始めた。


て-くるの全体解説 「来る」という動詞は、他の動詞の「て形」に後続した形で用いられることがある。いわゆる「補助動詞」と呼ばれる用法である。次のように大きく2つの用法に分けられる。
1~3のように、「来る」本来の意味を保持しながら(薄まってはいるが、消え去ることなく)全体の意味に何らかの形で貢献している用法。
4~7のように、実質的な意味はほとんどなく、形式化した用法。ただし、いずれも時間的・心理的に話者のいる(注目する)ところに向かって近づくという共通点があることから、「来る」本来の意味が完全に消え去ってはいない。
























▶全例文を聞く
<もの>が~てくる
小粒の雨が落ちてきた
(ジョイス作;結城英雄訳 『ダブリンの市民』, 2004, 933)
コーヒーをわかす、いい匂いがしてきた
(宮部みゆき著 『心とろかすような』, 1997, 913)
すると、意外な返事が返ってきた
(松原惇子著 『OL定年物語』, 1994, 366)
<もの>が~てくる
同伴プレーヤーが落としたボールがコロコロ転がってきた
(今井汎著 『わかりやすいゴルフのルール』, 2003, 783)
<もの>を~てくる
おみやげ買ってきたわよ。
(安西篤子著 『花ある季節』, 1993, 913)
1・2巻を借りてきて読みました。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<人>に(<もの>を)~てくる
池袋で友達に会ってきました
(Yahoo!ブログ, 2008, 日本)
<人・こと>を~てくる
それ以来、男手一つでその娘を育ててきたらしいわ
(ジェシカ・ハート作;高田恵子訳 『秘書の憂鬱』, 2004, 933)
あなたは何のために、今まで勉強してきたの?
(海原純子著 『素敵な自分に気づく本』, 1993, 159)
<事態・状態>が~てくる
いつもと同じ食事をして、自然と体重が落ちてきたのです。
(壮快, 2002, 医学)
午前中の雨も上がり天気が落ち着いてきた
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<こと>を~てくる
だがある日、突然、電話がかかってきた
(大沢在昌著 『夢の島』, 2001, 913)
<現象・事態>が~てくる
悔しくて涙がでてきた
(吉田珠姫著 『獣夏』, 2002, 913)
曲は弾きこなすものだと思っていたのに、曲のイメージが自然にわいてくる
(山崎玲子作;狩野富貴子絵 『もうひとつのピアノ』, 2002, )






























あ~! 電車に傘、忘れてきちゃった
四季折々の美しい姿は昔から人々に愛され、多くの画家によって描かれてきました
近年、ハロウィンは日本でも年中行事として次第に定着してきました
て-くる(3グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形て-くる
ない形て-こない
~なかったて-こなかった
ます形て-きます
~ませんて-きません
~ましたて-きました
~ませんでしたて-きませんでした
~ときて-くるとき
ば形て-くれば
意向形て-こよう
て形て-きて
た形て-きた
可能形て-こられる(て-これる)
受身形てーこられる
使役形て-こさせる
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