立てるのコアイメージ

1.水平から垂直への位置変化他動詞初級★★★
表記立てる
横になっているものや寝ている状態のものをまっすぐな状態にする、垂直にする。
文型
<人・動物>が<もの>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
応援団は旗を立ててから、それぞれの立ち位置についた。
警察は「進入禁止」の看板を立て、現場検証を始めた。
冷たい風が吹き付ける中、コートの襟を立てて駅へと急いだ。
クラクションに反応し、犬が耳をピンと立てた
「お姉ちゃん、この屏風どうするの?」「夕方に大事なお客様がいらっしゃるから、客間に(屏風を)立てておいて」
コロケーション
<もの>を
旗、ポール、看板、襟、ろうそく
<身体部位>を
膝、耳
<様態>
まっすぐ、しっかり、ピンと
共起語
解説
次の例のように自力で立てない人間は事実上<もの>のように垂直状態にされるが、「立てる」とは言えず、「立たせる」を使う。
 車椅子に座っている人の両脇を支えて立てた
 車椅子に座っている人の両脇を支えて立たせた
 お母さんは赤ちゃんの両脇を支えて立てた
 お母さんは赤ちゃんの両脇を支えて立たせた
類義語・反義語
類義語
反義語たおす


2.建築物の構築他動詞初級★★★
表記建てる、立てる
建物・建造物を構築する。
文型
<人>が<建物・建造物>をたてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
河野さんは家を建てようと、貯金に励んでいる。
役員会議で、大阪市に新社屋を建てる計画が発表された。
戦国武将の銅像が城の跡地に立てられた
学校の創立100周年に際して、記念碑が立てられる予定だ。
信長は短期間で城を建てさせた
「ここにテントを立てるのはどうかな?」「いいね」
stairs日本では家やビルを建てる前に地鎮祭というお祭りをします。
コロケーション
<建物・建造物>を
小屋、別荘、住宅、ビル、工場、病院、仮設住宅、ブロンズ像、胸像
<場所>に、で
市内、郊外、避暑地、被災地、構内
<時間>に、まで(に)
来年、生誕100周年
解説
寺などを建てる場合には「建立(こんりゅう)する」という動詞がよく使われる。
誤用解説
雪まつりなどで建造物を模した雪像については「建てる・立てる」ではなく「作る、制作する」を使う。
 今回の雪まつりでは200基の雪像が建てられた
 今回の雪まつりでは200基の雪像が作られた


3.細いもの・とがったものを突き刺す他動詞初級★★★
表記立てる
細いものや先がとがったものを突き刺さった状態にする、またはとがった状態をつくる。
文型
<人>が<とがったもの・細長いもの>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「可愛い子猫ですね」「しょっちゅうふすまに爪を立てるものだから、困ったものだよ」
お仏壇にお線香を立て、手を合わせた。
「花子、お茶碗にお箸を立てるのは、お行儀が悪いですよ」「はい」
職人はピンクッションに針を立てて、作業の手を止めた。
(料理の実習場面)「しっかりと卵白にツノを立ててから、お砂糖と混ぜてくださいね」「わかりました」
コロケーション
<細長いもの・とがったもの>を
線香、箸、針、爪
<様態>
まっすぐ、ピンと、しっかり
<場所>に(語義2よりも狭い、小さいエリア)
茶碗、仏壇
解説
日本では人が亡くなったとき、ご飯を盛った茶碗に箸を立て、死人の枕元に供える習慣がある。そのため、例文3のように、普段の食事の時に、ご飯に箸を立てることは縁起が悪いのでしてはいけないとされている。
類義語・反義語
類義語刺す(看護師は患者の腕に注射針を{刺した})
反義語抜く(医者は注射針を{抜いた}後、止血用のばんそうこうを貼った)


4.現象を発生させる他動詞初級★★★
表記立てる
知覚可能な現象を発生させる。
文型
<人・もの>が<音・風・波・煙・水蒸気など>を<場所・起点>から立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
列車は大きな音と煙を立てて、古い橋を渡っていった。
「カレーが湯気を立て始めた。煮えたようだね」「じゃあ、僕は食卓の準備をするよ」
モーターボートは勢いよく波を立てて水面を走っている。
赤ちゃんはスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
「山田さん、そんなにホコリを立てないで掃除してちょうだいね」「すみません」
stairs日本では、音を立てて食事をするのはマナーに反することですが、
コロケーション
<知覚可能な現象>を
音、寝息、湯気、笑い声、地響き
<様態>
スヤスヤと、モクモクと、もうもうと
類義語・反義語
類義語出す(汽車が大きな音を出して走っている)
反義語消す(「車内ではマナーモードにして音を消すのが常識だよね」)


5.人や世間に知らしめる他動詞中級★★
表記立てる
人や世間に知らしめる。
文型
<人>が<噂・手柄>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ありもしない噂を立てられて、本当に困っている。
無責任な同僚は、いつも勝手な噂を立てるばかりで、肝心の仕事はほったらかしだ。
真田幸村は大阪冬の陣で手柄を立て、大いに名を上げた。
「彼の最近の活躍ぶりからは、目が離せないね」「ええ、新人賞受賞で名を立ててから、一層勢いづいたわね」
山本選手は昨シーズン、ホームランの新記録を立てた
コロケーション
<場所>に[で]
近所、街中、社内、職場、学校、仲間内
類義語・反義語
類義語広める(「あいつが社内に噂を広めてしまい、困ったことになった」)
反義語


6.感情の高揚他動詞初級★★★
表記立てる
感情(特に怒り、憤り)が高ぶる、興奮する。
文型
<人>が<腹・気>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
リクエストとは違う髪の仕上がりに、彼女は非常に腹を立てている。
うちの弟は一旦腹を立てると、なかなかおさまらない性格だ。
「そんなに腹を立てないで、穏やかに話し合おうよ」「そっちこそ、そんなに大きな声を出さないでよ」
「お客様が急に腹を立てられて、大変だったわね」「想定外のことで、本当にビックリしたよ」
どうしてあの人は小さいことでいちいち気を立てるのだろうか。
コロケーション
<程度>
猛烈に、非常に、とても
<対象>に
人(彼女、弟)、物事(騒音、割り込み、追い越し、~こと)
<頻度>
しょっちゅう、いつも
非共起例
<腹以外の体の部位>を立てる
 店員の態度に頭を立てた。
 店員の態度に腹を立てた。
感情が起こるのは頭(頭に来る、頭から湯気を出す[立てる]など)や胸(胸がいっぱいになる、胸が詰まるなど)であると捉えられることが多いが、怒りの意味では「腹を立てる」が慣用句として頻繁に使用される。
類義語・反義語
類義語
反義語頭を冷やす(怒りや憤りを落ち着かせるという意味の慣用句:ちょっと外へ出て頭を冷やして来い)


7.決意・決心他動詞中級★★
表記立てる
決心する、堅く守る。
文型
<人>が<決意・決心>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
(選挙運動のスピーチ)「大学時代に政治家としての志を立てて以来、長年にわたって地元住民の福祉に取り組んでまいりました」
一旦堅い誓いを立てたなら、簡単に覆してはいけない。
「元旦に「禁煙」の誓いを立ててから、ずっと頑張っているんだ」「それは立派だね。僕も頑張ろうかな」
コロケーション


8.考えの提示他動詞中級★★
表記立てる
考えを整理して提示する。
文型
<人>が<思考の産物>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
学生寮の規則を立てるために、会議で検討した。
小田教授は新しい仮説を立てて、実証のための実験に打ち込んでいる。
「仕事に精が出るね」「ああ、今回は計画の見通しをしっかり立ててから、重役会議にかけるつもりだよ」
ゴールデンウイークに一週間ほど海外に行く予定を立てています。
「君の話はあちこち飛ぶのでよくわからない。もっと筋道を立てて話してくれ」
stairsきっちり計画を立てて出発したのですが、
コロケーション
<思考の産物>を
計画、予定、見通し、予算、学説、規則


9.役割につかせる他動詞上級
表記立てる
役割につかせる。
文型
<人・組織>が<人>を<役割>に立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「○○党は満場一致で、佐藤氏を市議選に立てることに決めたらしい」「それならば我々は中村氏を対抗馬に立てよう
当人同士の話し合いでは決着がつかず、互いに代理人を立てて協議することになった。
コロケーション
<役割>に[を]
証人、使者、代理、候補者
誤用解説
証人、使者、代理、候補者など比較的短期の役割には「立てる」を使えるが、そうでない場合には使えない。
  田中氏を部長に立てた
  田中氏を部長につけた[した]


10.生活を成り立たせる他動詞上級
表記立てる
生活を成り立たせる。
文型
<人>が<生計・身>を立てる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「故郷のご両親はいかがお過ごしですか?」「おかげさまで小さな書店でほそぼそと生計を立てています」
直木賞受賞をきっかけに、文筆業で身を立てられるようになりました。
コロケーション
<暮らし・生活>を
生計、身
<様態>
ほそぼそと、何とか、どうにか、どうにかこうにか


立てるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>を
まず竪穴を掘って四本のを立てます。
(芳賀町生涯学習課編 『芳賀町の歴史読本』, 2004, 213)
空き缶を利用したろうそく立てに、ジラフがろうそくを立てた。
(天童荒太著 『永遠の仔』, 1999, 913)
<身体部位>を
あお向けの状態で、を立てる。
(木戸泰子監修 『1分間簡単健康法88』, 2001, 498)
<建物・建造物>を
実際にを建てたのは土地購入から2年ほど経過した後です。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
日本人が現地に工場を建てようという場合には、はなはだしい教育ギャップに直面することになる。
(大前研一著 『世界が見える/日本が見える』, 1986, 335)
<細長いもの・とがったもの>を
深雪も線香を立てて、同じように手を合わせる。
志村一矢著 『月と貴女に花束を』, 1999, 913)
<知覚可能な現象>を
稲がさらさらを立てています。
(山中和子著;養老孟司解説 『昭和二十一年八月の絵日記』, 2001, )
もう寝入っているのか、すやすやと寝息を立てている。
(キム・ウンスク,カン・ウンジョン脚本;ユ・ホヨン著;長谷川由起子訳 『パリの恋人』, 2005, 929)
<対象>に
青年に対する家内のそっけない態度に、かんかんに腹を立てていた。
(藤沢周平著 『竹光始末』, 2002, 913)
<思考の産物>を
学習計画を立てると成績はかならず伸びる
(小宮山博仁著 『わが子を算数大好きに変える本』, 1995, 375)
こうして早めに来週の予定を立ててしまえば、金曜日中に準備しておかなければならないことが見つかるかもしれない。
(ライフ・エキスパート編 『仕事ができる人のちょっとしたコツ400』, 2004, 336)
<役割>に[を]
それぞれの生活に戻れば近しく言葉を交わす機会もなく、足しげく使いを立てるにも距離が遠すぎる。
(毛利志生子著 『外法師冥路の月』, 2002, 913)
<暮らし・生活>を
住民の大部分が漁業で生計を立てている。
(カール・マルクス著;今村仁司,三島憲一監修 『マルクス・コレクション』, 2005, 309)
言いかえれば、人それぞれ世の中に出てを立てている。
(福田定良著 『現代かたぎ考』, 1990, 104)






























日本では家やビルを建てる前に地鎮祭というお祭りをします。
日本では、音を立てて食事をするのはマナーに反することですが、
きっちり計画を立てて出発したのですが、
役(に)立てる

意味
有効に使用する
用例
寄付金を病院建設に役立ててください(寄付金を病院建設の役に立ててください)
コーパスからの用例
皆様の夢の実現に少しでもお役に立てれば幸いです。(曽根田憲三,ブルース・パーキンス共著 『海外から商品を買うときの英語表現集』, 2003, 670)
あちらを立てればこちらが立たず

意味
色々な人の立場や面子(メンツ)を守るのが大変である
用例
「今日の会議、結論出たの?」「あちらを立てればこちらが立たず、で結局まとまらなかった」
コーパスからの用例
神棚と仏壇は向かい合ってはならないとか、トイレは玄関から見えない位置にしたほうがいいなど、細かくこだわっていくときりがない。 まさにあちらを立てればこちらが立たずで、ベストな間取りはなかなか決まらなかった。(まついねね著 『天職浪人』, 2001, 049)
波風を立てる

意味
混乱・もめごとを起こす
用例
「いつも町内会のお世話をしてくださって、本当にありがとうございます」「ねぎらいのお言葉ありがとうございます。いろんな方がおられるので、波風を立てないように気をつけています」
コーパスからの用例
波風を立てるのは得策ではない、私はそのように答えた。(浅川博忠,小泉取材班著 『われは非情か』, 2001, 289)
顔[面子(メンツ)]を立てる

意味
物事がうまく成り立つようにする
用例
森口さんは、いつも先輩の顔を立てようと協力してくれる貴重な存在だ。人にものをお願いする時は相手の面子を立てなければ、話が前に進まない。
コーパスからの用例
どうか、私の顔を立てると思ってお受け取りください。(火浦功著 『ハードボイルドで行こう』, 1987, 913) 自分のやったことを完遂するためには、相手に対する同情とか譲歩とか相手の面子を立てる配慮など、ビタ一文示さなかった。(谷沢永一著 『人間通と世間通』, 1996, 019)
聞き耳を立てる

意味
関心のあることに注意を向けて聞く
用例
最近引っ越したアパートでは隣の住人に聞き耳を立てられているようで嫌な感じがする。
コーパスからの用例
部屋に入る振りをして、廊下にいて聞き耳を立てる。(新人物往来社編 『歴史ショートショート劇場』, 1991, 913)
複合動詞 V1

立て続ける、立て直す、立て始める、立て替える、立てこもる、建て増す
複合動詞 V2

打ち立てる、かき立てる、かり立てる、引き立てる、盛り立てる、書き立てる、騒ぎ立てる、はやし立てる
複合名詞

立て替え、立て続け、立て役者、立て看(板)、立て膝、建物、建て売り、建て替え、建て前、建て付け、建て坪、建て増し、二階建て、一戸建て、ドル建て
立てる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
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ない形ない
~なかったなかった
ます形たて
~ませんたてま
~ましたたてした
~ませんでしたたてまんでした
~ときるとき
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