過ごすのコアイメージ

1.時間を送る他動詞初級★★★
表記過ごす、すごす
人が何らかの様態で、一定の時間が経過するにまかせる。
文型
<人>が<様態>(または<場所>で)<時間>を過ごす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この仕事が一段落したら、しばらくはゆっくり過ごす予定だ。
彼は別荘で、ひたすら本を読んで、ひと冬を過ごそうと思っている。
「この週末は何をしてお過ごしになられますか?」
彼は湖畔の景色をぼんやりと見つめたままで、もう半日も過ごしている
楽しみにしていたライブが中止になり、彼女はその日空しく時を過ごすしかなかった
学生達に夏休みを有意義に過ごさせるにはどうしたら良いのか悩む。
stairs連休中は旅行や帰省、ショッピングなど、さまざまな過ごし方がありますが、調査によると、自宅でゆっくり過ごす人が最も多いそうです。皆さんだったら何をして過ごしますか
コロケーション
<様態>
のんびり、ゆっくり、楽しく、気持ちよく、忙しく
<時間>を
時間、ひと時、日、日々、休暇
誤用解説
この語義は、人が何らかの様態で一定の時間が経過するにまかせる事を表す。何らかの<様態>とは、具体的に何かをしながら(またはなにもしないで)、ある状態(ゆっくりや急い)で、またはある場所に居ながら、などを含む。<様態>と<時間>は必須項目と考えられる。従って次のように<時間>だけで<様態>が明示されない例文は不適切である。
 この週末を有意義に過ごす。
 この週末を過ごす。
また「いかがお過ごしですか」や「元気に過ごしています」のように、<様態>のみで<時間>が明示されなければ、この語義1の意味ではなく「暮らす、生活する」という語義2の意味に解釈される傾向にある。
類義語・反義語
類義語やり過ごす、(時を)送る
反義語


2.暮らし他動詞初級★★★
表記過ごす、すごす
生活をして暮らす。
文型
<人>が過ごす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大変ご無沙汰いたしております。いかがお過ごしでしょうか?
お陰さまで何事もなく過ごしております
今こうやって大過なく過ごしていられるのはひとえに彼のお陰だと思っています。
彼女は幸福な人生を過ごす事ができたのだと思う。
苦労を重ねた祖父母には、安心で健やかな余生を過ごさせてやりたいものだ。
コロケーション
<時>を
人生、老後、余生、生涯、晩年
<様態>
のんびり、ゆっくり、ゆったり、いかに、生き生き
解説
語義1とは異なり、<時間>は必須項目ではない。次の例は適切である。
 お陰さまで元気に過ごしています。
 Cf.お陰さまで毎日[最近]元気に過ごしています。
<様態>についても、必須項目ではないが、何らかの形で表現されている方が容認度が高まる。
 お陰さまで過ごしています。
 太郎は余生を過ごしている。
 太郎は健やかな余生を過ごしている。
 太郎は健やかに余生を過ごしている。
類義語・反義語
類義語生活する、暮らす、(時を)送る
反義語


3.飲みすぎ他動詞上級
表記過ごす
酒をのむ限度を過ぎる。
文型
(酒を)過ごす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「時間も遅いのであまりお過ごしになられませんように」「一杯だけだよ」
コロケーション
類義語・反義語
類義語飲み過ぎる
反義語


過ごすの全体解説 「過ごす」は、ある<様態>で、つまり人が何かをしながら、あるいは何もしないで、またはある場所に存在したままで、一定の長さの<時間>を経験するという意味である。
語義1では、時間は、一定の長さがあるはっきり区切られた時間、例えば「夏」「週末」「平日「その日」などが表れる傾向にある。そしてその区切られた<時間>に加えて、さらにどのような<様態>であるのかを「ゆっくり」「本を読んで」「別荘(にいる状態)で」などの表現で明示する。この時間や様態は必須の項目であるので、
 花子は過ごした。(様態なし、時間無し)
 花子は一日を過ごした。(様態なし)
 ?花子は寝て過ごした。(時間無し)
等は許容されないが、次のように様態も時間も表現される文は容認される。
 花子はその日1日寝て過ごした。
語義2では、この<時間>が区切られておらず、人生全体を指示する場合は「生活する」「暮らす」という意味になる。この語義において、<時間>は付加詞的だが、様態は省略できない。様態は副詞句/節以外でも、何らかの形で表現される方が容認度は高まる。
 花子は毎日を[いつも]元気に過ごしています。
 花子は元気に過ごしています。(時間なし)
 花子は毎日を過ごしている。 (様態なし)
 ?花子は余生を過ごした。(様態なし)
 花子は健やかに余生を過ごした。
 花子は健やかな余生を過ごす。
「過ごす」には、語義3に見るように、時間ではなく、行動の限度を超えるという意味もある。特に「酒を飲み過ぎる」という意味につかわれるので、使用頻度はあまり高くない。
 「つい過ごしてしまった」(=つい酒を飲み過ぎた。)
この語義3の行動の限度を超える意味は「動詞の連用形+過ごす」の形から作られた物かも知れない。
「動詞の連用形+過ごす」という決まった形をとり、補助動詞として使用される場合には、「動詞の行動が想定している基準をこえて行く」という意味を表しているが、詳しく見れば3つの意味を区別することができる。
まず一つ目の語義は、この「基準」が現在自分のいる空間的位置であるので、その位置をこえて具体的な移動物が通って行く事を容認することを意味する。例えば、次の例文のように「動詞の連用形+過ごす」は、「通過させる」「見送る」「通らせる」「行かせる」などと同様の意味を持つ。
 太郎はラッシュアワーの混雑する電車をあえて数台やり過ごすことにした。
 追い越して行く車をやり過ごして、左車線をゆっくり走行した。
2つ目の語義は、一つ目と異なり、基準である現在時自分のいる位置が具体的な空間上の位置ではなく、抽象的な現在自分の存在している社会的立ち位置の意味であり、移動するのも「いたずら」や「嫌み」のような抽象物であることに注意が必要である。イメージとしては、自分がいる立ち位置のあたりを抽象的な存在物が通って行くが、あえてそれを通って行くままにし、対処せず、それに関わったりしないし取り合わない、という意味である。例えば、「回避する」「かわす」「よける」「いなす」「無視する」「スルーする」「取り合わない」等と類似の意味である。
 上司の嫌みは適当にやり過ごすのが肝要です。
この例文では、あるイメージが浮かんでくる。上司から嫌みの言葉がボールのように飛んでくるが、それに触れたり受け取ったりすることなしに、自分の目の前を通り過ぎて行ってしまうのを冷静に待っている姿である。他にも、次のような例も見られる。
 彼のいたずらをこれ以上見過ごすわけにはいかない。
 今までの失敗がすべて見過ごされたからって、これからもそうだとは限らない。
3つ目の語義では、この基準は、動詞が表す行動の予定されている終了点であり、行為を止めるべき限度をこえて行為を続けてしまうという意味である。例えば「寝過ごす」なら「寝る行動の終了点=起きる時間」をこえて寝続ける事であり、「乗り過ごす」は本来「電車に乗る行動の終了点=降りる駅」をこえて乗り続けることを意味する。
 前日に飲み過ぎたせいで、彼は寝過ごしてしまった。
 「お客様、お降りになる駅を乗り過ごしてしまわれたのですか 
 電車で彼に次から次へと話しかけすぎて、つい一駅乗り過ごさせてしまった。
 彼は心配性で、いろいろ思い過ごしては落ち込んでいる。
























▶全例文を聞く
<様態>
でも今日は久々にゆっくりと休日らしい休日を過ごしました。
(Yahoo!ブログ, 2008, ペット、動物)
長い夏休み有意義に過ごしたいのですが,皆さんはどうやって過ごされますか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 子育て、出産)
<一定の時間>を
ふたりは残りの時間をおしゃべりですごした。
(ケヴィン・J.アンダースン,ダグ・ビースン著;内田昌之訳 『終末のプロメテウス』, 1998, 933)
1872年夏、ヘルフォイルトの両親のもとで休暇を過ごす。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<時>を
翌年の秋、東京へ戻るまで極貧の生活を浦安で過ごした。
(鈴木和明著 『行徳歴史街道』, 2004, 213)
まあもうそろそろ隠居して、古本屋でものんびりやりながら老後を過ごそうかと思うての。
(松浦寿輝文;米田民穂絵 『ウサギの本』, 1996, )
<様態>
これまでの人生を順風満帆で過ごしてきた人にとっては、失業は人生最大の汚点のように思えるかもしれない。
(池田武史著;小道迷子画 『(適)失業生活サポート応援BOOK』, 2001, 366)






























連休中は旅行や帰省、ショッピングなど、さまざまな過ごし方がありますが、調査によると、自宅でゆっくり過ごす人が最も多いそうです。皆さんだったら何をして過ごしますか
複合動詞 V1

やり過ごす、見過ごす、乗り過ごす、寝過ごす、思い過ごす
複合名詞

やり過ごし、見過ごし、乗り過ごし、寝過ごし、思い過ごし
過ごす(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏
辞書形
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~なかったすごなかった
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~ませんすごしま
~ましたすごしした
~ませんでしたすごしまんでした
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ば形せば
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