過ぎるのコアイメージ

1.基準の通過自動詞初級★★★
表記過ぎる
基準となる位置や場所を通ってさらに先へ行く。
文型
<移動物>が<基準位置>を過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は歩いて郵便局の前を過ぎ、学校まで行った。
新幹線が新大阪駅を今過ぎたところだ。
その車はあっという間に私の目の前を過ぎて行った。
閉じた歯の隙間を空気が勢い良く過ぎるときに発する音が、子音[s]の発音です。
各地に被害をもたらした台風が過ぎてしまうと、一気に涼しくなった。
国道は小さな村をいくつか過ぎて、やがて海岸線に出た。
コロケーション
<移動物>が
人、船、急行、新幹線、車、嵐
<基準位置>を
駅、折り返し点、町、橋、林
非共起例
<基準位置>を
 郵便局の前を過ぎる。
 郵便局の前を越える。
「過ぎる」は目的語があらわす基準をとにかく通過することのみを意味するが、「越える」では、「目的語である対象の上方を乗り越えて[踏み越えて]行く」意味を表すので、「森」以外にも、「山」「谷」「海」「フェンス」等を越えることは可能だが、「郵便局の前」のように、基準となる地点(参照点)を横目に見ながら通過する場合は「越える」ではなく「過ぎる」が適切である。
類義語・反義語
類義語通過する、抜ける、通る、通り越す
反義語


2.基準からの経過自動詞初級★★★
表記過ぎる
基準となる時刻をこえて時間が経過する。
文型
<基準時刻>を過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
〆切を過ぎてからレポートを提出した。
「もう7時を過ぎたよ。そろそろ会議も終わりにしよう」
「閉店時間はもうずいぶん過ぎていますので、商品はお売りできません」
この家はもう耐用年数を大幅に過ぎている
このUSBメモリ内のデータは、一定時間を過ぎると自動的に消去される。
有効期限を過ぎたカードは使用できません。
コロケーション
<基準時間>を
二十歳、4時、予定日、半ば、正午
<様態>
すでに、もう、少し、ちょっと、とうに
解説
<基準時刻>とは瞬間的な時刻を表している。一定の長さがある期間を想定してはいない。
また、空間的な基準越えだけでなく、時間的な基準を越える場合にも、「過ぎる」の語義2と「越える」は言い換えが可能な場合がある。例えば「越える」には、目的語の対象や基準をさらに上方に乗り越え[踏み越え]て行く、上回る」という意味があるので、80歳という長生きで価値ある基準のさらに上を行くということを意味する場合には許容される。
 齢80を過ぎ、なおかくしゃくとしておられる。
 齢80をこえ、なおかくしゃくとしておられる。
類義語・反義語
類義語こえる
反義語


3.期間の終了自動詞初級★★★
表記過ぎる
期間・段階が終わる。
文型
<期間>が過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
冬が過ぎて春になるのが待ち遠しい。
大学の4年間はあっという間に過ぎた
青春はもう過ぎてしまった
安静にするべき時期が過ぎたので、次は少しずつでも体を動かす期間が必要だ。
練習が楽しくて仕方がないという段階はとっくに過ぎてしまった
就職して20年が過ぎた
コロケーション
<期間>が
時間、夏、20年間、7週間、時代
<様態>
いつもまにか、ゆっくりと、のろのろと、どんどん、たちまち
解説
 
誤用解説
語義2の「<時刻>を過ぎる」は瞬間的な基準時刻をこえる意味で、語義3の「<期間>が過ぎる」は、幅のある一定の期間、例えば「10年間」が終了したという意味を表すので、前者は期間を表す時間表現とは共起できず、後者は瞬間を表す時間表現とは共起できない。例えば、
 7時が過ぎる。
 7時を過ぎる。
 10年が過ぎる。
 10年を過ぎる。
一方、期限(終了時点)を持つ一定の期間、例えば「耐用年数」のような表現なら、どちらも共起できる。例えば、
 10年の耐用年数を過ぎる。
は期限の10年目をこえたという意味、
 10年の耐用年数が過ぎる。
は10年間が終了した、という意味でどちらも適切な用例となる。
類義語・反義語
類義語終わる、終了する
反義語


4.盛りの終了自動詞初級★★★
表記
物事の盛りが終わり衰え始める。
文型
<物事の盛り>を(が)過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
桜が満開を過ぎてあとはむなしく散るのみである。
彼は既にアスリートとしてのピークを過ぎていたが、オリンピックに挑戦するという。
バブル絶頂期を過ぎた後、経済が上向くことはなかった。
流行を過ぎてしまった服や靴を、あなたはどうしていますか。
野菜や魚は旬を過ぎたら、とたんに味が落ちるように思う。
花の盛りが過ぎなければ良いのに。
stairs梅の季節が過ぎると、桜の季節がやってきます。桜の楽しみ方はいろいろです。桜は南から咲き始めますが、日本は南北に長いので、九州で満開を過ぎても、東北ではまだ咲いていないこともあります。また、ピークを過ぎて散る桜を楽しむ人もいます。
コロケーション
<物事の盛り>を
満開、ピーク、頂点、ブーム
類義語・反義語
類義語終わる、終える
反義語続く


5.時間の経過自動詞初級★★★
表記過ぎる
時間が流れて経過する。
文型
<時間>が過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
気の会う友達といると、時間が過ぎるのがいつもより早く感じる。
日々は平穏に過ぎていった
今日はいつもより夜がゆっくり過ぎていくように感じる。
時の過ぎるのは早いものです。
本を読み始めると、いつの間にか時の過ぎるのも忘れて夢中になっていた。
花子は年月が過ぎるのも忘れて、研究に没頭した。
stairs竜宮城で楽しい日々を過ごした後、地上に戻ってみると、何百年もの時間が過ぎていました
コロケーション
<時間>が
時間、日々、時、月日、刻
<様態>
のろのろ、どんどん、おもしろおかしく
類義語・反義語
類義語経つ、経過する、流れる
反義語


6.限度の超過自動詞初級★★★
表記
行いが許容される限度をこえる。
文型
<行いの限度>が過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
悪ふざけが過ぎるから、先生が本気で怒ってしまった。
「お言葉が過ぎておられます」「すまなかった」
冗談が過ぎてしまうと笑えない。
「そんなこというなんて、ちょっと口が過ぎますよ」
子供達のいたずらの度が過ぎないように見張っていよう。
大言壮語が過ぎると、まず人には信用されない。
コロケーション
<行いの限度>が
度、言葉、口、悪ふざけ、肩入れ


7.状態の強調自動詞上級
表記
物事の状況が適正な程度を越えている。
文型
<人・物事>が<状態>に過ぎる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
花子は、今から思えば楽観的に過ぎたようだ。
今回の講義は専門的に過ぎる
私たちの議論は、やや一面的に過ぎると批判を受けるかも知れない。
その経営者の主張は、あまりに一方的に過ぎる
太郎の話はいつも教訓的に過ぎるので、聞いていて疲れます。
彼らの計画は性急に過ぎると思われます。
stairs作家の大江健三郎は、文章が読みづらく、作品は難解に過ぎるという批判を受けてきました。
コロケーション
<物事>が
議論、表現、思想、演奏、空想
<状態>(に)
楽観的、専門的、教訓的、技術的、難解


8.良すぎる自動詞上級
表記過ぎた
人にふさわしい程度以上である。
文型
<人・こと>は<人>には過ぎた<役割・こと>だ
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私には花子が過ぎた女房だということは皆知っている。
花子はあいつには過ぎた彼女だよ。
海外で暮らしたいなんて、僕には過ぎた望みだという事は承知している。
コロケーション
過ぎた<役割・こと>
① 役割:女房、夫、妻
② こと:望み、希望


9.しかない自動詞上級
表記過ぎない
この程度のことである。
文型
<人・こと>は<役割・こと・値>に過ぎない
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ドラえもんはロボットに過ぎない
合格者がいるといっても、学生全体の3%に過ぎない
太郎はえらそうに言っているが、所詮一介の学生に過ぎない
テレビではよくこのファッションを取り上げているが、一過性のブームに過ぎないと思うよ。
コロケーション
<こと>は
ファッション
<役割・こと・値>に過ぎない
① 役割:学生、ロボット
② こと:仕事、憶測、手段
③ 値:一例、些末、5%程度
類義語・反義語
類義語しかない
反義語


過ぎるの全体解説 「ある基準を越えている」という意味を表している。その基準が空間的か、時間的か、また一定の状態や限度を表しているのかなどによって語義はいくつかに区別される。
語義1は、空間的な基準を通り越えることを意味している。
以降の語義は、基準位置を越えるという意味が、空間から、時間や状態など、より抽象的な意味へと拡張している。
語義2及び語義3は時間的な基準に関する意味で、語義2は「7時」のような瞬間的な「期限」を越えるという意味であり、語義3は「冬」などのように、「一定の長さを持つ期間」をすべて経験して越えるという意味である。従って、ある機械の「耐用年数」のように、期限(終了時点)をもつ一定の長さの期間を表す表現なら語義2も3もどちらの文も容認される。
 10年の耐用年数を過ぎる。
 10年の耐用年数が過ぎる。
時間に関わるこれらの語義について、語義2では、機械が時間軸を未来方向に移動して、10年目の期限を越えるイメージである。語義3では、機械に対して10年間という時間が流れて通り過ぎたというイメージに基づく。
語義4は、瞬間的時刻の積み重ねとしての時間が、まるで水が観察者の目の前を流れて移動してしまってもう戻らないかのように通って去る、という意味を持つ。この場合基準点は出来事の観察者/経験者にとっての現在の時点であり、そこを時間が通り越えて行くことを意味する。
 楽しい時間はあっという間に過ぎた。
語義5以降は、越えるべき「基準」が時間以外のものに拡大している。順に、語義5は物事の盛りを、語義6は行為の許容限度を、語義7は物事の許容限度をこえるという意味である。物事の盛りや許容限度をこえるような意味を表す場合には、せっかくの盛りを越えてしまったのは残念だ、許容できる限度や限界をこえている状態は悪い、許せない、などという否定的な意味を表現する傾向が表れる。
 桜が満開を過ぎてしまった。
 いたずらの度が過ぎる。
語義8の「過ぎた女房」のような表現は自分にふさわしい程度、またあるべきレベルを良い意味で上回っている事を表している。これは語義5、6、7の、物事の盛りや許容限度をこえるような意味を表す場合には、許容できる限度や限界をこえているのは残念だ、悪い、許せない、などという否定的な意味を表現する傾向にあるのとは対照的である。
語義9も語義8と関係があり、「〜ない」という否定辞と常に共起し、構文として「あるべきレベルを上回らない」という意味を表しており、よって「ただそれだけのこと、たいしたことではない」という意味として理解される。
 いくら仕事ができたって、これはロボットに過ぎない。
一方、「過ぎる」が補助動詞として使用される場合も「基準点越え」の意味を表す。前項に「過ぎ」が来る場合は、「過ぎ去る」や「過ぎ行く」など、「移動物が空間[時間]上の基準点を越える」意味を表す。一方、後項に「過ぎる」が来る場合は、前項の品詞が何であれ、「あるべき基準、許容される程度を越えている」意味になる。前項としては、動詞に限らず、名詞や形容詞なども共起できる。例えば、「言い過ぎる」(動詞の連用形)、「細か過ぎる」(形容詞の語幹)、「いい人すぎる」(名詞)などである。
























▶全例文を聞く
<移動物>が
通りの外を、が過ぎる。
(玉岡かおる著 『ラスト・ラヴ』, 1997, 913)
台風は来ているし、秋空は望めそうにないが、この台風が過ぎれば本格的に秋になるのだろう。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<基準位置>を
茨城県側最北端のJR水郡線下野宮駅前を過ぎ久慈川を渡る。
(アルペン・ペンクラブ編著 『阿武隈・奥久慈・八溝の山87』, 2001, 291)
小さな漁港を過ぎたあと、車は内陸部に進路を変えた。
(日本冒険作家クラブ編;香納諒一ほか著 『孤狼の絆』, 1999, 913)
二十キロ地点を過ぎてもペースは上がらず、私は、本当に大丈夫だろうか?
(高橋尚子著 『夢はかなう』, 2004, 782)
<基準時間>を
有効期限を過ぎていないかどうか、念のため確認する。
(パワートレーディング編 『中国投資・会社設立ガイドブック』, 2004, 338)
申請期間を過ぎると祝金の支給はできませんので、必ず期間内に申請してください。
(ちば市政だより若葉区版, 2008, 千葉県)
<期間>が
そうこうするうちにがすぎ、秋風がたちはじめた。
(田中文雄著 『髑髏皇帝』, 1995, 913)
芥川と佐藤は文語文の時代がすぎても、なお強く執着して捨てなかった。
(山本夏彦著 『完本文語文』, 2003, 816)
<様態>
すでに在任期間は4年を過ぎ、任期満了は来年秋に迫った。
(週刊新潮, 2005, 一般)
<物事の盛り>が
雑誌カウンターは書店の中でも最も混雑するところなのですが、その時はピークが過ぎ、順番を待つお客さまはいない状態でした。
(渡辺満著 『なぜ人はジュンク堂書店に集まるのか』, 2002, 024)
今年はかなり大きな株になりましたが、時が経ちすっかり盛りが過ぎたガザニアです。
(Yahoo!ブログ, 2008, 季節)
<人>は<物事の盛り>を
日曜日に撮影したのですが、すでにサクランボの花は盛りを過ぎてしまってました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 趣味)
このようにして、突然起きた痛風の激痛(関節痛)は、ピークを過ぎると、薄紙をはがすように消えていきます。
(巖琢也著 『痛風』, 2005, 493)
<時間>が
それから長い時間が過ぎた。
(五木寛之著 『戒厳令の夜』, 1976, 913)
早いもので母が亡くなってから8ヶ月が過ぎました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 季節)
<様態>
しかしいつのまにか年が過ぎ、そなた達も皆頭は白くなったのを見て、ますます昔が偲ばれる。
(小島眞爾著 『四面楚歌』, 2004, 913)
<限度>が過ぎる
言葉がすぎるぞ、矢沢」
(原田治著 『特殊潜水航空母艦「神龍」』, 2004, 913)
いや私は詳しいことは知らぬのでついが過ぎました。
(別所真紀子著 『残る蛍』, 2004, 913)
<物事>が
ジュリアン・テンプルが監督したこのビデオは暴力的すぎるとして、BBCで放送禁止になった。
( 『ザ・ローリング・ストーンズ』, 2003, )
<状態>(に)
こうした意見は一方的すぎるだろうか。
(二宮周平著 『事実婚を考える』, 1991, 324)
<役割・こと・値>に過ぎない
高級車市場でのシェアは一%にすぎない。
(週刊ダイヤモンド, 2005, 経済/経営)
精神世界よりも物質世界が勝るという考え方は、幻想にすぎません。
(ドリーン・バーチュー著;宇佐和通訳 『チャクラ・クリアリング』, 2005, 147)






























梅の季節が過ぎると、桜の季節がやってきます。桜の楽しみ方はいろいろです。桜は南から咲き始めますが、日本は南北に長いので、九州で満開を過ぎても、東北ではまだ咲いていないこともあります。また、ピークを過ぎて散る桜を楽しむ人もいます。
竜宮城で楽しい日々を過ごした後、地上に戻ってみると、何百年もの時間が過ぎていました
作家の大江健三郎は、文章が読みづらく、作品は難解に過ぎるという批判を受けてきました。
過ぎたるは(猶)及ばざるが如し

意味
度を過ぎてしまったものは程度に値しないものと同じで、どちらも正しい中庸の道ではない。
用例
体にいいからって10種類も薬を飲むなんて、過ぎたるは及ばざるが如しだよ。
コーパスからの用例
ところが過ぎたるは及ばざるが如し、あまりにインスリンが高い状態が続くと、脳がそれに反応しなくなります。 (岩田健太郎著 『悪魔の味方』, 2003, 498)
のど元過ぎれば熱さを忘れる

意味
苦しかった事も、過ぎ去れば全く忘れてしまう。
用例
喉元過ぎれば熱さを忘れるで、彼はまたあんな苦労を背負い込んだ。
意味
苦しい時には人を頼むが苦労が去れば、その恩を忘れる。
用例
あんなに助けてやったのに、あいつは全く喉元過ぎれば熱さを忘れるだ。
複合動詞 V1

過ぎ去る、過ぎ行く
複合動詞 V2

(形容詞+過ぎる)細かすぎる、うるさすぎる、多すぎる、早すぎる、細かすぎる、うるさすぎる、多すぎる、小さすぎる、早すぎる、かわいそ(う)過ぎる、なさ過ぎる、真面目すぎる

(動詞+過ぎる)暖めすぎる、言い過ぎる、行き過ぎる、うがちすぎる、打ちすぎる、買いすぎる、考えすぎる、似すぎる、煮過ぎる、寝すぎる、飲み過ぎる、走り過ぎる、払いすぎる、引きすぎる、見すぎる、焼きすぎる、やりすぎる

(名詞+過ぎる)いい人過ぎる、優等生過ぎる、気分屋過ぎる、友達感覚過ぎる、日当り良好すぎる、定番過ぎる、いい話過ぎる
複合名詞

行き過ぎ、買い過ぎ、飲み過ぎ、食べ過ぎ、太り過ぎ、口過ぎ、使い過ぎ
過ぎる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
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