締める・閉める・絞めるのコアイメージ

1.加圧・固定他動詞中級★★
表記締める   ※「首を絞める」のように「絞める」が使われることもある。
ものに力を加え、ゆるみをなくす。固定する。
文型
<人>が<もの>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
スーツを着てネクタイを締めると心まで引き締まる。
安全のため、後部座席でもシートベルトをきちんと締めましょう
柔道や空手には強さを表す段位や級位があり、初段になると黒帯を締めることができる
ねじを早く楽に締めるため、電動ドライバーを買った。
遺体の首にはロープで絞められたような痕があった。
「三角絞め」は柔道の絞め技の一つで、両足を使って相手の首と腕を同時に絞める技です。
コロケーション
<もの>を
① 締めつけるもの:ねじ、ボルト、ナット、ひも、ネクタイ、鉢巻き、帯、ベルト、まわし、綱、ふんどし、シートベルト、ボタン
② 身体の一部:首、喉、頭
<様態>
しっかり、きちんと、きっちり、キュッと、ゆっくり、きつく、強く、軽く、固く
<道具>で
ドライバー、ねじ、ボルト、ナット、スパナ、ひも、ロープ
<身体の全体・一部>に
体、頭、首、腰
解説
語義1は、あるものに外から力を加えることによってゆるんだところをなくし、固定することを表す。その際、ひも状・帯状のもの(ひも、ネクタイ、帯、ベルトなど)で周囲から内側へ力を加え固定する場合と、ねじやボルトのようにひねって固定する場合がある。例文5、6のように身体の一部の圧迫にも使われる。
誤用解説
帯状のものでもマフラーやストールは何かを固定するためのものではなく、力の加え方も弱い。そのため、「締める」ではなく「巻く」を使う。
 首にマフラーを締めて外に出た。
 首にマフラーを巻いて外に出た。
また、時計や指輪の着用には「はめる」「つける」「する」などを使う。
 彼はいつも高価な時計[指輪]を締めている
 彼はいつも高価な時計[指輪]をはめている[つけている、している]
釘はねじと形状が似ているが、金槌で叩いて固定するため「打つ」を使う。
 壁に釘を締めた
 壁に釘を打った
類義語・反義語
類義語結ぶ、固定する
反義語ゆるめる、ほどく


2.収縮・高密度他動詞中級★★
表記締める   ※「鯖を酢で〆る」のように「〆る」が使われることもある。
身体の全体または一部のたるみをなくす。
文型
<人>が<身体の全体・一部>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
サウナで汗をかいた後、水風呂で体を締める
このエクササイズは体をひねるので、脇腹を締めることができます
ストレッチで固い筋肉を緩め、トレーニングで緩んだ筋肉を締める
冷蔵庫に30分ほど入れて肉を締める
(〆サバの作り方)三枚におろしたサバをまず塩でしめ、次に酢でしめます
ゆであがったうどんを冷水や氷水で締めるとコシが出て一段とおいしくなる。
stairsこのパンツを履くためにウエストを締めるわ!!
コロケーション
<身体の全体・一部>を
① 身体:身、体、肉、筋肉、ウエスト、お腹、骨盤
② 肉・魚:身、肉、魚、サバ、アジ、コハダ
③ 麺類:麺、うどん、そば、そうめん
<手段>で
① 運動:エクササイズ、トレーニング、体操
② 調味料:塩、酢
③ 水・氷:水風呂、水シャワー、冷水、氷水
解説
語義2は身体の全体・一部のたるみをなくすことを表す。人間のほか、例文4~6のように肉や魚、麺類にも使われる。なお、人間の身体の場合は「締める」よりも「引き締める」のほうがよく使われる。
 お腹周りを引き締めたい
 酸性の温泉には肌を引き締める効果がある。
類義語・反義語
類義語引き締める
反義語ゆるめる


3.緊張他動詞中級★★
表記締める
人の気持ちやその場の空気のゆるみやたるみをなくす。
文型
<人>が<気持ち・空気>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「この作業は危険が伴うから気を締めてかかってくれ」
(交通安全標語)「ドア閉めて ベルトを締めて 気を締めて
調子のいい時こそ気を締めなければならない
相手は強敵だが、気持ちを締めて臨みたい。
(スポーツの試合における掛け声)「最後までしめていこう!」
和気あいあいと仕事をするのは良いことだが、時には職場の雰囲気を締めることも必要だ。
コロケーション
<気持ち・空気>を
気、気持ち、心、空気、雰囲気
解説
語義3は、ゆるみやたるみをなくす対象が人の気持ちや場の空気といった抽象物で、「緊張」や「引き締め」を表す。「締める」で表される緊張は「あがる」(語義16)で表される緊張(<平静を保てなくなる> 例:大勢の人の前でスピーチをしてあがってしまった)とは異なり、「気をゆるめない」「気を抜かない」という意味の緊張である。
類義語・反義語
類義語引き締める
反義語ゆるめる


4.まとめ他動詞中級★★
表記締める
ものごとのゆるみやたるみをなくす。まとめる。
文型
<人>が<もの・こと>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
文章を締めるには単に読み返すだけでなく、声に出して読むとよい。
ベテラン俳優の存在感のある演技が奇想天外なストーリーのドラマを締めている
この映画では若手新人俳優が主役を務めているが、個性豊かな脇役が作品を締めている
バランスの良い着こなしをするにはブラックやネイビーなどの濃い色で全体を締めましょう
上位陣が立て続けに負ける波乱の土俵を横綱がしっかり締めた
(剣道や柔道などの団体戦)先鋒(せんぽう)が勝って次鋒(じほう)が負け、中堅(ちゅうけん)、副将(ふくしょう)が引き分けたが、最後は大将(たいしょう)が白星を挙げ、試合をきっちり締めた
コロケーション
<もの・こと>を
作品、試合、全体
<様態>
しっかり、きっちり
解説
語義4は「ものごとのゆるみやたるみをなくし、まとめる」ことを意味する。この「締める」は「引き締める」で言い換えが可能である。
類義語・反義語
類義語引き締める、まとめる
反義語


5.ものごとの終了他動詞中級★★
表記締める   ※「ラーメンで〆る」のように「〆る」が使われることもある。
ものごとを終える。
文型
<人>が<もの・こと>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
社長は社員への感謝の言葉であいさつを締めた
文章を締める言葉を「結び言葉」と呼ぶ。
(フィギュアスケート)竹内選手は華麗なスピンで演技を締めた
寿司を食べる時、最後は甘い玉子焼きかさっぱりしたカッパ巻きで締める人が多いようだ。
お酒を飲んだあと、ラーメンで〆るのがやめられない。
(式典や宴会の終わり)「それでは一本締めで締めたいと思います。お手を拝借。よ~お!(パパパン、パパパン、パパパンパン)」
stairsやっぱり飲んだ後はラーメンで締めないとな!!
コロケーション
<もの・こと>を
① 話や文章:話、物語、講演、会見、文章、記事、社説、コラム
② イベント:会、会議
③ その他:最後、ラスト、1年、~年
<もの・こと>で
① 食べ物:デザート、ラーメン
② その他:言葉、引用、一本締め
解説
語義5は「ものごとの終了」を表す。例文5、6のように対象である<もの・こと>が明示されないこともある。例文6は式典や宴会が無事に終わったことを祝って全員で打つ手拍子で、「手締め」あるいは「手打ち」という。
類義語・反義語
類義語終える、締めくくる
反義語始める


6.会計の区切り他動詞中級★★
表記締める   ※「帳簿を〆る」のように「〆る」が使われることもある。
会計の区切りをつける。
文型
<人>が<もの・こと>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
営業時間終了後にその日の売り上げを締める
利用月の末日に料金を締め、翌月10日にお客様に請求書を送付します。
1ヶ月ごとに帳簿を締め、月次決算を行う。
個人事業主の場合、12月末に決算を締めることになっている。
レジを締めたところ、5000円足りなかった。
(営業マンと経理担当者)「西田さん、交通費の精算お願いします」「あ~、今月はもう締めちゃったから来月にまわしますね」
コロケーション
<もの>を
会計、料金、売り上げ、勘定、帳簿、決算
<時間>に
月末、~日、~時
解説
語義6は「会計の区切り」、すなわちある時点で収支の計算をして数字を確定することを表す。例文5の「レジを締める」は簡略的・慣用的な言い方で、レジの売り上げデータと釣り銭を照合することである。例文6のように締める対象を明示しないこともある。
類義語・反義語
類義語まとめる、計算する
反義語


7.空間の閉鎖他動詞初級★★★
表記閉める
開(ひら)いていた空間を閉じる。
文型
<人>が<出入り口・空間の仕切り>を閉める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
雨が降ってきたので急いで窓を閉めた
「ドアを開けたら閉めなさいって、いつも言ってるでしょ!」
エレベーターに乗ろうとしたのに目の前でドアを閉められ頭にきた。
普段は面倒なので雨戸(あまど)を閉めないが、台風の時だけはきちんと閉める
向かいの家はカーテンをまったく閉めないので、部屋の中が丸見えだ。
うちの大学では毎晩9時になると守衛がすべての門を閉めて回る。
コロケーション
<出入り口・空間の仕切り>を
ドア、扉、門、窓、襖(ふすま)、障子、シャッター、カーテン、幕
<様態>
しっかり、そっと、ぴしゃりと、すぐに、バタンと、きちんと、きっちり、ちゃんと、ゆっくり
解説
語義7は「しめる」の中でもっとも頻繁に使われる意味である。閉鎖の方向は左右(引き戸タイプ)、前後(開き戸タイプ)に加え、シャッターや幕のように上下の場合もある。
類義語・反義語
類義語閉じる
反義語あける、ひらく


8.業務の終了他動詞中級★★
表記閉める
業務を終える。
文型
<人>が<業務を行う場所>を閉める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
毎日10時に店を開け、8時に閉める
昨日はお客さんが多くて、店を閉めるのが遅くなった。
「今日はお客さんも来ないし、ちょっと早いけどもう閉めようか
「昨日の夜、このへんで不審な人を見かけませんでしたか?」「ええ、見ました。店を閉めるところだったから、10時ごろだと思います」
毎月第3木曜日は早めに事務所を閉めて、商工会の会合に参加している。
「12:00~13:00の間は窓口を閉めさせていただきます
コロケーション
<業務を行う場所>を
店、事務所、窓口
<時間>に
~時
<様態>
そろそろ、もうすぐ、もう、まもなく、いったん
解説
語義8は「業務の終了」を表す。これは店の営業時間や役所の受付時間が終了すると入り口を閉めることから、語義7「空間の閉鎖」から派生した意味と考えられる。この語義では「閉める」対象はほとんどの場合、「店」である。例文3のように対象を明示しないこともある。例文6は文脈から業務の終了ではなく中断である。
誤用解説
この語義で「店を閉める」とは言うが、「会社を閉める」とは言わない。
 今日は会社を閉めたあと、みんなで飲みに行こう。
 今日は店を閉めたあと、みんなで飲みに行こう。
類義語・反義語
類義語終える
反義語開ける、始める


9.職場の閉鎖・廃業他動詞上級
表記閉める
職場を閉鎖する。仕事を辞める。
文型
<人>が<業務を行う場所>を閉める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
経営会議で不採算店舗の半分を閉めることが決まった。
都内の一等地に法律事務所を開いたものの、経営がうまくいかず、わずか2年で閉めることになった。
S社は国内の工場をすべて閉め、インドネシアに新工場を新設した。
村の診療所が突然閉められ、通院していた人々は2時間に一本しかないバスで遠くの病院まで行かなければならなくなった。
「これ以上続けても赤字が増えるだけだ。今月いっぱいで店を閉めよう
「最近はそろばんを習う子がめっきり少なくなり、30年続けてきた教室を昨年ついに閉めました
コロケーション
<業務を行う場所>を
店、店舗、事務所、会社、工場、診療所、病院
<時間>(に)
~月、去年、来年、今年中
<時間>で
~月、今年いっぱい
<様態>
突然、ついに、すっぱり、やむなく、やむを得ず
<数量>
~か所、~つ、半分、全部、すべて
解説
語義9は「職場の閉鎖・廃業」を表す。語義8の「業務の終了」は翌日や翌週などに業務が再開するのに対し、語義9は再開しないのが大きな違いである。この語義でも「閉める」対象は「店」であることが多いが、「会社、工場、病院」などについても使われる。当該の語義が8か9かは文脈から判断する必要があるが、語義9では「突然、ついに」などの<様態>や「~か所、すべて」などの<数量>の言葉が付くことがあり、語義8とは異なる。
習慣的な場合や<時間>が「~時」のように短い単位の場合→語義8(業務の終了)
例:毎日10時に店を開け、8時に閉める。
1回きりの場合や<時間>が「~か月」「~年」のように長い単位の場合→語義9(職場の閉鎖・廃業)
例:昨年12月、彼はついにすべての店を閉めた。
誤用解説
この語義の対象は「店」などの場所であり、「仕事」ではない。
 坂上さんは体を壊し、やむなく仕事を閉めた。(「仕事を辞めた」はOK)
 坂上さんは体を壊し、やむなく店を閉めた。
類義語・反義語
類義語畳む、辞める
反義語ひらく、始める


10.密閉他動詞初級★★★
表記閉める
容器のふたや口を隙間なくぴったり閉じた状態にする。
文型
<人>が<容器(のふた・口)>を閉める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
荷物でパンパンのスーツケースを力づくで閉め、鍵をかけた。
リモコンの電池を交換し、フタを閉める
(カップ麺の作り方)カップの内側の線まで熱湯を注いでフタを閉め、3分待てばできあがりです。
お菓子の袋の口を輪ゴムなどでしっかり閉めてもすぐに湿気ってしまう。
開封後はキャップをしっかり閉めて、お早めにお召し上がりください。
引き出しに物をたくさん入れて閉めたら、開かなくなってしまった。
コロケーション
<容器(のふた・口)>を
① 容器:スーツケース、かばん、箱、引き出し
② 容器の部分:ふた、口、キャップ
<様態>
しっかり、きちんと、ちゃんと、ぴったり(と)、完全に
解説
語義10は語義7「空間の閉鎖」に似ているが、閉める対象が容器であり、ぴったり閉じた状態にすることに重点が置かれている。
類義語・反義語
類義語閉じる
反義語あける、ひらく


11.施錠(せじょう)他動詞初級★★★
表記閉める   ※「鍵を締める」のように「締める」が使われることもある。
施錠する。
文型
<人>が<道具>を閉める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
最初に出社した人が鍵を開け、最後に退社する人が鍵を閉める
アパートの部屋が2階以上でも安全のために窓の鍵を必ず締めましょう
田舎では家の鍵を閉めないところも多い。
家を出るときカギをちゃんと締めたか不安になって引き返した。
坂本さんが住んでいる寮には門限があり、それを過ぎると玄関の鍵が閉められ、中に入れないそうだ。
初めての海外旅行の時、南京錠(なんきんじょう)の鍵をスーツケースの中に入れたまま錠を閉めてしまい、とても困った。
stairs私の実家の方は、夜でもみんな鍵を閉めないんだ。
コロケーション
<道具>を閉める
鍵、錠、錠前(じょうまえ)、閂(かんぬき)
<様態>
きちんと、ちゃんと、必ず、常に
解説
語義11は扉などの錠(lock)や持ち運びができる南京錠(なんきんじょう)(padlock)をかけることを表す。「錠」は扉などに取り付けてあかないようにするための道具、「鍵(かぎ)」(key)は「錠(じょう)」を開閉するための道具で、「鍵で錠を閉める」と言うのが本来の正しい言い方であるが、日常用語では「錠」のことも「鍵」と言い、「鍵を閉める」という言い方がよく使われる。「錠」の場合、「閉める」より「かける」「おろす」のほうがよく使われる。なお、「錠前(じょうまえ)」とは「錠」と「鍵」のセットのことであり、「閂」(かんぬき)とは左右の扉あるいは扉と枠をまたがるように通す棒状の道具のことである。
類義語・反義語
類義語かける、施錠(せじょう)する
反義語あける、外す


12.倹約(けんやく)他動詞上級
表記締める
お金の無駄遣いをなくす。
文型
<人・組織>が<出費>を締める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
収入はこれ以上増えないので支出を締めるしかない。
「無駄遣いを減らすにはどうすればいいですか」「家計簿をつけると何にお金を使っているかが把握でき、支出を締められるようになりますよ」
家計を締めなければいけないのに、テレビの通販番組を見るとつい注文してしまう。
年末年始はだいぶお金を使ってしまったので、これからしっかり締めていこうと思う。
財政を締め過ぎると景気が低迷する。
多くの中小企業が銀行から融資を締められ倒産した。
コロケーション
<出費>を
支出、家計、財政、金融、融資、経費
<様態>
きっちり、しっかり、厳しく
解説
語義12は「倹約(けんやく)」を表す。現在でも「財布の紐(ひも)が堅い」という表現が使われるが、財布(の紐・口)をしめるとお金が出ないことから、「お金の無駄遣いをなくす」という意味が生まれたと考えられる。
類義語・反義語
類義語倹約(けんやく)する、節約する、切り詰める
反義語ゆるめる


13.屠殺(とさつ)他動詞上級
表記絞める   ※「魚を締める」のように「締める」が使われることもある。
家畜や魚などを殺す。
文型
<人>が<動物>を絞める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
自分で鳥を絞め、さばいて食べる体験プログラムに参加した。
駅前の焼き鳥屋はその日の朝に締めた鶏だけを出すことで有名だ。
祖父が子どもの頃は、家で飼っている鶏を絞めて食べることが普通に行われていたそうだ。
ホームステイ先では鶏を絞めてごちそうしてくれたが、さっきまで生きていたと思うとのどを通らなかった。
沖縄にはお祝い事のときに豚を絞めて食べる習慣がある。
釣った魚をすぐにナイフで締めて血抜きをした。
コロケーション
<動物>を
鳥(鶏)、豚、牛、ヤギ、魚
<様態>
ぎゅっと、一気に、手早く、すぐに
<道具>で
ナイフ、包丁、手、氷、氷水
<場所>で
その場、養鶏場、養豚場、船の上
解説
語義13は家畜(鶏、豚、牛など)や魚などを殺すことを表す。家畜の場合は首をひねったり切ったりし、魚の場合は頭部にナイフを入れたり氷水に入れて即死させる。これらは語義1「加圧・固定」のうち、首の圧迫が死につながることから派生した意味と考えられる。例文2のように朝に処理した新鮮な鶏は「朝締め[絞め]鶏」あるいは「朝引き鶏」(「引く」語義14)と呼ばれる。なお、家畜の屠殺は「絞める」のほかに「潰す」(語義4)が使われる。
類義語・反義語
類義語殺す、潰す
反義語


14.制裁他動詞上級
表記シメる
懲らしめる。痛い目に遭わせる。
文型
<人>が<人>をシメる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
生意気な1年生を呼び出してトイレでシメた
妹をからかった奴をシメてやった
あいつは上下関係がわかってない。一度シメたほうがいい
「お前、調子に乗ってんじゃねえぞ。シメるぞ!」
武史は「あの野郎、シメてやる!」と意気込んで出ていったが、逆にこてんぱんにやられて帰ってきた。
昔、不良グループに入っていた時、「年下のくせに態度がでかい」と先輩にシメられたことがある。
コロケーション
<様態>
一度、今度、いつか、絶対
解説
語義14は「制裁」を表す。この意味は「首を絞める」(語義1)や「殺す」(語義13)との関連で派生した意味と考えられる。この「シメる」は主に不良やヤクザなどが使う語感の荒い言い方であるが、日常用語では「懲らしめる」「厳しく叱る」という意味で使われ、必ずしも暴力を伴わない。
類義語・反義語
類義語懲らしめる、とっちめる、締め上げる
反義語


締める・閉める・絞めるの全体解説 「締める」と「引き締める」:
「引き締める」は「ゆるみやたるみをなくす」という意味の複合動詞だが、「締める」と言い換えができる場合とできない場合がある。「引き締める」で言い換えが可能なのは以下の語義である。
語義2「収縮・高密度」
 ぬるま湯で顔を洗った後、化粧水で毛穴を引き締める
語義3「緊張」
 「いよいよ決勝戦だ。気を引き締めていこう!」
語義4「まとめ」
 一面だけ濃いブルーの壁が部屋全体を引き締めている
語義12「倹約」
 最近は富裕層も支出を引き締め、割安な商品を求めるようになってきている。
「しまる」と「しめる」の対応関係:
自動詞「しまる」と他動詞「しめる」の語義には対応関係が見られるが、「しめる」には「しまる」との対応関係がない語義がいくつかある。それは以下の5つである。
語義5「ものごとの終了」(例:お酒を飲んだあとはいつもラーメンで〆る
語義6「会計の区切り」(例:営業時間終了後にその日の売り上げを締める
語義9「職場の閉鎖・廃業」(例:赤字経営が続き、やむなく店を閉めた
語義13「屠殺」(例:昔の田舎では各家庭で鶏を飼い、卵を産まなくなると絞めて食べたそうだ)
語義14「制裁」(例:あいつは上下関係がわかってない。一度シメたほうがいい
























▶全例文を聞く
<もの>を
ズボンのベルトを締め、ネクタイを結びながら、アダムの心は四方八方に飛んでいた。
(アン・マリー・ウィンストン作;松村和紀子訳 『禁断のときめき』, 2005, 933)
なぜあの未成年は二人の女を殺したのだろう、しかも念入りに二度もを締めて…。
(群像, 2005, 文学/芸術)
<様態>
洗いたての、糊のきいたエプロンをきゅっと締めると、さ、おいしいものを作りましょう、って気持ちになるじゃない。
(田原米子著 『ひかり求めて』, 1992, 289)
<道具>で
権藤と高宮は懸命になって木箱の蓋を閉じ,ドライバーでネジを締めた。
(八木荘司著 『天皇陵伝説』, 2003, 913)
<身体の全体・一部>に
しかも頭部には、風呂上がりのごとく紫の鉢巻を締めている。
(朝松健著 『真田三妖伝』, 2002, 913)
<身体の全体・一部>を
高い服で目くらましして、ひとの視線が三段腹に向かないようにするより、新聞配達でもしてを締めたほうがよほどマシだ。
(伏本和代著 『ラクになる』, 2002, 913)
4 たっぷりの熱湯で讃岐うどんをゆでてざるに上げ、流水で洗ってから氷水につけてを締め、器に盛ってかき揚げをのせる。
(女性セブン, 2004, 一般)
<手段>で
脂っこさを感じないのは供す前に甘酢でさっと締めるからである。
(嵐山光三郎著 『江戸前寿司一の一の店を行く』, 2002, 596)
<気持ち・空気>を
たまにそうして職場の雰囲気を締めたり、意識を向上させることも必要ですがね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 労働問題、働き方)
<もの・こと>を
結果的に上野は、ソロホームランの1失点で試合を締めた。
(Yahoo!ブログ, 2008, 文化活動)
<様態>
それにひきかえ、たけしさんは、そんな事しなくても、存在感ありで無駄口叩かず、要所要所をきちんと締めていますよね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 芸能人、タレント)
<もの・こと>を
本当に素晴らしい思い出の余韻を噛み締めたまま、今回の旅日記を締めさせて頂きます。
(Yahoo!ブログ, 2008, レジャー)
<もの・こと>で
最後はデザートで締めて、お腹いっぱいでお店をあとにしました。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<もの>を
しかも何日も時間をかけるのではなく、決められた期間以内に前月の決算を締めてレポートを提出するというやり方を導入した。
(商事法務編 『再生・再編事例集』, 2004, 325)
<出入り口・空間の仕切り>を
何軒かの商店もシャッターを閉め、もはや昔日の面影はない。
(小杉健治著 『父からの手紙』, 2003, 913)
<様態>
エリザベスは急いでベッドから出て部屋を横切り,窓をピシャリと閉めた。
(シドニィ・シェルダン著;天馬龍行訳;紀泰隆訳 『血族』, 1993, )
<業務を行う場所>を
お父さんとお母さんはを閉めて帰ってくるのが、十二時を過ぎることもあった。
(高部知子著 『告白ハンパしちゃってごめん』, 1984, 916)
<時間>に
5時には図書館を閉める」と大島さんは言う。
(村上春樹著 『海辺のカフカ』, 2005, 913)
<業務を行う場所>を
多くの会社がつぶれ、いくつかの銀行がを閉め、倒産しました。
(ハンス・ヴィルヘルム作;ロニー・アレキサンダー,岩倉務共訳;中野孝次,永井一正監修 『トラップ一家物語』, 2002, )
<様態>
私を案内しながらグツェリエフは,近々このカジノを閉めて、代わりにバーを開店すると打ち明けた。
(クライスティア・フリーランド著;角田安正,松代助,吉弘健二訳 『世紀の売却』, 2005, 332)
<容器(のふた・口)>を
みんな押し黙ってカップをトレローニー先生に返し、教科書をまとめ,カバンを閉めた。
(J.K.ローリング作;松岡佑子訳 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』, 2001, )
脇や手でしっかりバッグのを閉めたり膝に乗せておくなど自己管理が必要です。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 海外)
<様態>
屋外の生ごみは丈夫なプラスチックなどの容器に入れ、しっかりふたを閉める。
(広報ずし, 2008, 神奈川県)
<道具>を閉める
ロッカーのを閉めずに、放って置くのは危険でしょう。
(Yahoo!ブログ, 2008, 家庭)
<出費>を
とりあえず収入はふえないわけですから,支出を締めるしかない。
(邱永漢著 『お金の原則』, 2001, 338)
<動物>を
を絞めてもらって、鶏肉のすき焼きや、親子丼などの御馳走も食べた。
(妹尾河童著 『少年H』, 1997, 913)






























このパンツを履くためにウエストを締めるわ!!
やっぱり飲んだ後はラーメンで締めないとな!!
私の実家の方は、夜でもみんな鍵を閉めないんだ。
勝って兜(かぶと)の緒を締めよ

意味
成功しても気を抜いたり油断してはいけない。
用例
一次面接に合格したぐらいで喜んでちゃいけない。「勝って兜の緒を締めよ」だ。
(自分で)自分の首を絞める

意味
自分の行為が自分を苦しい状況にする。
用例
これ以上仕事を引き受けると、自分で自分の首を絞めることになる。
コーパスからの用例
ものごとの本質を見失うと、時間とエネルギーを浪費したあげく自分の首を絞めてしまう。(杉原正規著 『営業チーム勝利の視点』, 2003, 673)
真綿で首を絞める

意味
じわじわと責めたり苦しめたりする。
用例
真綿で首を絞められるように年々、生活が苦しくなっていく。
コーパスからの用例
家康の泣き所は、豊臣家を滅ぼしたために着せられた「主家殺し」の汚名である。そして上杉勢との合戦が長期戦になれば、その汚名が真綿で首を絞めるが如く、家康を苦しめる。(神尾秀著 『第三の覇者』, 2005, 913)
箍(たが)を締める

意味
(箍(たが)は桶(おけ)や樽(たる)のまわりにはめる竹や金属の輪のこと)人の気持ちや組織のゆるみをなくすこと。
用例
このところ大臣の不祥事や失言が相次いでいる。首相には内閣のゆるんだタガを締め直してもらいたい。
コーパスからの用例
担当の経済企画庁がまた調整官庁で、大した権限がない。公共事業関係省庁に押しまくられ財源面では大蔵省にタガを締められる。やはり政治主導で、最後は主計局のメスに期待するしかないのである。(栗林良光著 『大蔵省の危機』, 1996, 317)
手綱(たづな)を締める

意味
手綱(乗馬の時に使う、馬をコントロールするための綱)を引き、馬が勝手に走らないようにする。
用例
乗馬中は馬が勝手に振る舞わないように手綱を締めてコントロールします。
意味
気をゆるめないように統制する
用例
「2年生は1年生の時のような緊張感がなく、3年生のように受験の心配がないので気分がゆるみがちです。先生がしっかりクラスの手綱を締めてくださいね
財布の紐(ひも)を締める

意味
お金の無駄遣いをなくす(語義12)
用例
消費税が上がり、消費者はいっそう財布の紐を締めた
コーパスからの用例
州はときどき財布のひもを締め、スポットライトを消してわずかばかりの金を節約するが、すぐにまたつけるのだった。(トム・クランシー,スティーヴ・ピチェニック著;熊谷千寿訳 『ネットフォース』, 2000, 933)
複合動詞 V1

締め上げる、締めくくる、締め込む、絞め殺す、締め出す、締めつける、締め切る
複合動詞 V2

噛み締める、食い締める、抱き締める、握り締める、引き締める、踏み締める
複合名詞

(前項)しめ飾り[注連飾り、七五三飾り]、締め切り[締切、〆切]、締め具、締めくくり、締め込み、しめサバ[〆鯖]、締太鼓、締め出し、締め付け、しめ縄[注連縄、七五三縄]、締め日、絞め技(後項)開け閉め、活け締め[活け〆]、一丁締め、一本締め、仮締め、氷締め、三角締め、三本締め、手締め、中締め、羽交い締め、元締め
締める・閉める・絞める(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
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~ませんでしたしめまんでした
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て形めて
た形めた
可能形しめらる しめ
受身形しめら
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