締まる・閉まる・絞まるのコアイメージ

1.加圧・固定自動詞中級★★
表記締まる   ※「首が絞まる」のように「絞まる」が使われることもある。
ものに力が加えられ、ゆるみがなくなる。固定される。
文型
<もの>が締まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ネクタイを結んだ後、太いほうを引っ張ると結び目が締まります
ボートをつないでいたロープが固く締まりすぎてほどけなくなってしまった。
ねじの頭の溝が潰れてしまい、ドライバーで締めようとしても締まらない
「ボルトがしっかり締まっているか、よく確認してください」
最近太ってしまい、ジャケットのボタンが締まらなくなってしまった
ネクタイをすると、首が絞まって息苦しい。
コロケーション
<もの>が
① 締めつけるもの:ねじ、ボルト、ひも、ロープ、ネクタイ、帯、ベルト、シートベルト、ボタン
② 身体の一部:首、手首
<様態>
しっかり、きちんと、固く、キュッと
解説
語義1は、あるものに外から力が加えられることによってゆるんだところがなくなり、固定されることを表す。その際、ひも状・帯状のもの(ひも、ネクタイ、帯、ベルトなど)が周囲から内側へ力が加わり固定される場合と、ねじやボルトのようにひねって固定される場合がある。例文5のボタンはひも状のものではないが、衣服を固定する機能を持っており「締まる」が使われる。また、例文6の「首が絞まる」のように身体の一部の圧迫にも使われる。
誤用解説
釘はねじと形状が似ているが、「締まる」は使わず、「留まる」「刺さる」などを使う。
 釘がしっかり締まっている
 釘がしっかり留まっている[刺さっている]
類義語・反義語
類義語固定される
反義語ゆるむ、ほどける


2.収縮・高密度自動詞中級★★
表記締まる   ※「身が緊まる」のように「緊まる」が使われることもある。
身体の全体または一部のたるみがなくなる。
文型
<身体の全体・一部>が締まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
冬の魚は身が締まり、脂がのっていておいしい。
出るところは出て、締まるところは締まった体になりたい。
雑誌に載っていた美容マッサージを続けたら、だんだん顔が締まってきた
キリッと締まった口元は良い印象を与える。
信越地方や関西でよく作られている丸なすは果肉が締まっており、揚げ物や煮物に適している。
「雨降って地(じ)固まる」とは「悪いことが起こったあと、前よりも事態が良くなる」という意味で、雨が降ったあと土が固く締まり、よい状態になることから来ている。
コロケーション
<身体の全体・一部>が
① 身体:身、体、肉、筋肉、顔、口元、ウエスト、お腹、骨盤
② 野菜・果物:果肉、実、葉
③ 自然物:雪、土、砂
<様態>
キュッと、キリッと、よく、だんだん、一瞬で
解説
語義2は身体の全体・一部にたるんだところがなくなることを表す。人間のほか、例文1のように魚や肉、例文5のように野菜や果物の密度が高いことに使われる。例文6はその他(自然物)の例で、密度が高く固いことを表す。
類義語・反義語
類義語引き締まる、収縮する、詰まる
反義語たるむ


3.緊張自動詞中級★★
表記締まる   ※「気持ちが緊まる」のように「緊まる」が使われることもある。
人の気持ちやその場の空気にゆるみやたるみがなくなる。
文型
<気持ち・空気>が締まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
スーツを着てネクタイを締めると気持ちも締まる
お寺で座禅の体験をして心が締まった
重要なプロジェクトのリーダーを任され、身が締まる思いです。
(スポーツの試合における選手の掛け声)「しまっていこう!」
会長が入ってくると、会議室の空気が一瞬で締まった
監督の厳しい叱声にチームの雰囲気が締まり、全員の目の色が変わった。
コロケーション
<気持ち・空気>が
気持ち、気、心、身、空気、雰囲気
<様態>
一瞬で、ピリッと
解説
語義3は、ゆるみやたるみがなくなる主体が人の気持ちやその場の空気といった抽象物で、「緊張」や「引き締まり」を表す。例文3の「身が締まる」は物理的な身体の収縮(語義2)ではなく、心理的な意味を表している。なお、「締まる」で表される緊張は「あがる」(語義16)で表される緊張(<平静を保てなくなる> 例:大勢の人の前でスピーチをしてあがってしまった)とは異なり、良い意味での緊張感、前向きな気持ちである。
誤用解説
「締まろう」(意向形)や「締まれ」(命令形)という形では使えないが、後ろに「ていく」を付けると使うことができる。
 締まろう。
 締まっていこう。(選手同士の掛け声)
 締まれ。
 締まっていけ。(監督から選手への掛け声)
類義語・反義語
類義語引き締まる、緊張する、張り詰める
反義語ゆるむ、たるむ


4.まとまり自動詞中級★★
表記締まる
ものごとにゆるみやたるみがなくなる。まとまる。
文型
<もの・こと>が締まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
松尾君が入るとチームが締まる
「やっぱり横綱がいると土俵が締まるね」
今期の国会は何とも締まらない形で終わった。
今回の舞台はベテランの役者がいないためか安定感がなく、どうも締まらない
インテリアの色をそろえると部屋が締まります
先生に作文を添削してもらったら、無駄な部分がなくなり文章がグッと締まった
stairsやっぱり先輩がいると空気が締まるな。
コロケーション
<もの・こと>が
① 組織:チーム、部
② 場:場、部屋
③ その他:文章、絵、画面、話、味、全体
<様態>
グッと、何とも(~ない)、どうも(~ない)、どうにも(~ない)
解説
語義4の主体はものごとで、「まとまり」や「調和」を表す。
類義語・反義語
類義語まとまる、整う、調和する
反義語ゆるむ、だれる


5.空間の閉鎖自動詞初級★★★
表記閉まる
開(ひら)いていた空間が閉ざされる。
文型
<出入り口・空間の仕切り>が閉まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
(駅のアナウンス)「4番線、ドアが閉まります。ご注意ください」
自動改札機の扉が急に閉まってびっくりした。
「この時間は正門が閉まっているから裏門から帰ろう」
「この下矢印のボタンを押すと、シャッターが閉まります
向かいの家はもう1週間もカーテンが閉まったままだ。
観客は幕が閉まるまで拍手を続けた。
コロケーション
<出入り口・空間の仕切り>が
ドア、扉、門、窓、襖(ふすま)、障子、シャッター、カーテン、幕
<様態>
急に、ゆっくり、静かに、完全に
解説
語義5は「しまる」の中でもっとも頻繁に使われる意味である。閉鎖の方向は左右(引き戸タイプ)、前後(開き戸タイプ)に加え、シャッターや幕のように上下の場合もある。
類義語・反義語
類義語閉じる
反義語あく、ひらく


6.業務の終了自動詞中級★★
表記閉まる
業務が終わる。
文型
<業務が行われている場所>が閉まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
早く行かないとお店が閉まっちゃう
銀行は3時に閉まるが、その後、伝票整理や現金の照合など、さまざまな事務処理が行われる。
婚姻届は役所が閉まっている時間や曜日でも夜間窓口で受け付けてくれるところが多い。
(図書館の利用案内)図書館が閉まっているときは返却ポストに入れてください。
金沢の台所、近江町市場(おうみちょういちば)は夕方5時ごろ閉まります
ネット証券を利用すれば、株式市場(しじょう)が閉まっている時間帯でも売買の注文が出せる。
コロケーション
<業務が行われている場所>が
店、銀行、役所、窓口、図書館、市場
<時間>に
~時、~曜日
解説
語義6は「業務の終了」を表す。これは店の営業時間や役所の受付時間が終了すると入り口が閉まって入れなくなるためであり、語義5「空間の閉鎖」から派生した意味と考えられる。
類義語・反義語
類義語終わる
反義語あく、始まる


7.密閉自動詞初級★★★
表記閉まる
容器のふたや口が隙間なくぴったり閉じた状態になる。
文型
<容器(のふた・口)>が閉まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
荷物を入れすぎて、スーツケースが閉まらなくなってしまった
かばんを買う時は口が完全に閉まるものを選ぶようにしている。
うちの近所の弁当屋は入れ物のふたが閉まらないほどのボリュームで大人気だ。
フタが閉まった空き瓶の中にコインを入れる手品を見た。
奥のほうで何か挟まっているのか、引き出しがきちんと閉まらない
新しい小銭入れを買ったが、ファスナーが固くてなかなか閉まらない
stairsスーツケースが全然閉まらないの。
コロケーション
<容器(のふた・口)>が
① 容器:スーツケース、かばん、箱、引き出し
② 容器の部分:ふた、口、キャップ
<様態>
きちんと、完全に、なかなか(~ない)
解説
語義7は語義5「空間の閉鎖」に似ているが、主体が容器であり、ぴったり閉じた状態になることに重点が置かれている。
類義語・反義語
類義語閉じる
反義語あく、ひらく


8.施錠(せじょう)自動詞初級★★★
表記閉まる   ※「鍵が締まる」「戸締まり」など「締まる」が使われることもある。
施錠された状態になる。
文型
<道具>が閉まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
玄関のドアの鍵が閉まらなくなってしまった
キャビネットの鍵が閉まっていて中の書類を取り出せない。
鍵を入れて左に回すと(錠(じょう)が)閉まります
トイレなどに使われる表示錠(ひょうじじょう)では、鍵が閉まっている時は赤、あいている時は緑が表示される。
オートロックとは、ドアが閉まると自動的に鍵が締まるシステムのことを言う。
セキュリティのため、女子寮の玄関は常に錠が閉まっており、暗証番号を押して入るようになっている。
コロケーション
<道具>が閉まる
鍵、錠、錠前(じょうまえ)、閂(かんぬき)
<様態>
きちんと、ちゃんと、いつも、常に、自動的に
解説
語義8は扉などの錠(lock)や持ち運びができる南京錠(なんきんじょう)(padlock)がかかっている状態を表す。「錠」は扉などに取り付けてあかないようにするための道具、「鍵」(key)は「錠」を開閉するための道具で、「錠が閉まる」と言うのが本来の正しい言い方であるが、日常用語では「錠」のことも「鍵」と言い、「鍵が閉まる」という言い方がよく使われる。なお、「錠前」(じょうまえ)とは「錠」と「鍵」のセットのことであり、「閂」(かんぬき)とは左右の扉あるいは扉と枠をまたがるように通す棒状の道具のことである。
類義語・反義語
類義語かかる
反義語あく、外れる


9.倹約(けんやく)自動詞上級
表記締まる
お金の無駄遣いをしなくなる。
文型
<人・家計・組織>が締まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私の兄は金遣いに関してとても締まっている
山崎君は羽振(はぶ)りがいいが、締まるところは締まっている
結婚相手は堅実で締まっている人のほうがいい。
家計簿を付けるようになってから家計が締まってきた
最近は銀行が締まってきており、なかなか融資が受けられない。
バブル経済の時と違って今の会社は締まっていて、接待や飲食に使えるお金はほとんどない。
コロケーション
<組織>が
銀行、会社、金融機関
解説
語義9は「倹約(けんやく)」を表す。現在でも「財布の紐(ひも)が堅い」という表現が使われるが、財布(の紐・口)がしまっているとお金が出ないことから、「お金を使わない、無駄遣いをしない」という意味が生まれたと考えられる。複合名詞の「締まり屋」は倹約家(けんやくか)、ケチな人という意味である。
類義語・反義語
類義語
反義語ゆるむ


締まる・閉まる・絞まるの全体解説 「締まる」と「引き締まる」:
「引き締まる」は「ゆるみやたるみがなくなる」という意味の複合動詞だが、「締まる」と言い換えができる場合とできない場合がある。「引き締まる」で言い換えが可能なのは以下の語義である。
語義2「収縮・高密度」
 スポーツで鍛えた彼の体は見事なまでに引き締まっている
語義3「緊張」
 入社式で社長の訓示を聞き、気持ちが引き締まった
語義4「まとまり」
 黒をうまく使うと絵が引き締まる
語義9「倹約」(主体が「家計」の場合)
 家計簿を付けるようになってから家計が引き締まってきた
























▶全例文を聞く
<もの>が
わたしは、首のロープが締まるのも忘れて、半身を起こした。
(逢坂剛著 『アリゾナ無宿』, 2005, 913)
家元は首に紐をつけたまま屋根裏部屋から飛びおりるように強制され、飛びおりるとが締まって死んだんだわ」
(山村美紗著 『京都茶道家元殺人事件』, 2001, 913)
<様態>
おれの腹の中で絡まり合っている不安の結び目がぎゅっと締まったような気がした。
(ウェイン・D.ダンディー著;佐々田雅子訳 『燃える季節』, 1990, 933)
<身体の全体・一部>が
「相模湾のアジはこぶりだけど、香りもよく,が締まっておいしいですよ」と光代さん。
(玉井恵著 『相模湾のうまいもん』, 2005, 662)
やがて学齢期になって、行動半径も広がり、行動の形態も活発になってくると,からだが締まってきます。
(安藤節子著 『子育てと食事』, 1995, 599)
<様態>
キュッと締まったウエストは、もちろんスカートだってよく似合う。
(COSMOPOLITAN 日本版, 2004, 一般)
<気持ち・空気>が
それで少し、場の空気が締った。
(誉田哲也著 『吉原暗黒譚』, 2004, 913)
<もの・こと>が
あらゆる文章は手を入れて必ずしもよくなるとはいえないが、小説に限っていえば、一度書いたものを、削ったり加筆したりすることで文章が締まってくる。
(百々由紀男著 『芥川賞・直木賞は、とれる!』, 1999, 901)
剪定をすると、一気にが締まる感じで気持ちがいい。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<様態>
その日の試合は、最終的に私たちの勝ちとはなったが、十四対九という何とも締まらない試合だった。
(オグ・マンディーノ著;坂本貢一訳 『十二番目の天使』, 2001, 933)
<出入り口・空間の仕切り>が
ようやく主人が出て行って,玄関が確かに閉まりました。
(長田百合子著 『イジメ・不登校・ひきこもりと親はどう向き合うか』, 2003, 379)
窓のカーテンが閉まったままで、室内は薄ぼんやりと暗い。
(原田宗典著 『どこにもない短編集』, 1993, 913)
<様態>
戸棚の戸がきっちり閉まっていなかったのだ。
(J.K.ローリング作;松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』, 2002, 933)
<業務が行われている場所>が
でも、もう今日は銀行が閉まってますから、明日以降の話になってしまいますね。
(貫井徳郎著 『悪党たちは千里を走る』, 2005, 913)
<時間>に
四時半に教務課が閉まるまでにあと二十分、なんとか間に合いそうだった。
(ロバート・ジェームズ・ウォラー著;村松潔訳 『スローワルツの川』, 1994, 933)
<容器(のふた・口)>が
もうちょっとわかりやすくいうと、千円あったら楽にうちが建つときの月収千五百円で、すごいですよね、おばあちゃん,金庫が閉まらなかったんですって、お金が入りすぎちゃって(笑)。
(NHK「小朝が参りました」班編 『11人の愉快な100歳』, 1995, 367)
食品を保管する容器についてですが、食器洗浄器に入れて洗ってるとが閉まらなくなってしまいました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
<様態>
浴槽の栓がきちんと閉まっているのを確認してから、風呂場の明かりを消して六畳間に戻った。
(江川紹子著 『冤罪の構図』, 2004, 327)
<道具>が閉まる
そう小さな声でつぶやきながら階段を上り、部屋に鍵を差し込むとが閉まっていた。
(三橋一廣著 『愛のひとしずく』, 2004, 913)






























やっぱり先輩がいると空気が締まるな。
スーツケースが全然閉まらないの。
需給(じゅきゅう)が締まる

意味
需要に対して供給が不足し、価格が上昇する。
用例
減産を背景に需給が締まるとの見方から非鉄金属株に買いが入った。
相場が締まる

意味
相場が堅調になり、上昇気味になる。
用例
午後になって一段と相場が締まってきている
複合動詞 V2

取り締まる、引き締まる
複合名詞

締まり屋、戸締まり、取り締まり、取締役
締まる・閉まる・絞まる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形しまない
~なかったしまなかった
ます形しまり
~ませんしまりま
~ましたしまりした
~ませんでしたしまりまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形しま
て形って
た形った
可能形
受身形しまら
使役形しまら
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