刺す・挿す・指す・差すのコアイメージ

1.突き立て他動詞初級★★★
表記刺す
人、動物が、ものの鋭く尖った先端部を、力を加えて人、動物、ものの内部に入れる。
文型
<人・動物>が<もの>で<人・動物・もの・身体の一部>を刺す
<人・動物>が<もの・身体の一部>に<もの>を刺す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
男は、ナイフで被害者の背中を刺した
医学生は、患者の腕に注射針を刺そうと試みましたが、一度ではうまく刺さりませんでした。
飼い犬が、蜂に何度も刺された
「この部屋の壁に、勝手にピンや画鋲を刺さないでくださいね」「はい、分かりました」
串打ちとは、鰻や鶏肉に串を刺すことです。
父親は、苺にフォークを刺し、娘の口に運んだ。
コロケーション
<もの>で
ナイフ、針、包丁、串、フォーク
<人・動物・もの・身体の一部>を
人、犬、肉、胸、背中
<もの・身体の一部>に
鶏肉、壁、胸、腕、血管
<もの>を
針、串、ピン、ナイフ、フォーク
<様態>
いきなり、次々、突然、一気に、まっすぐ
非共起例
<もの>で刺す、<もの>を刺す
 で皮膚を刺す。
 で皮膚を刺す。
 壁に丸太を刺す。
 壁にピンを刺す。
「XがYでZを刺す」という文型の「Y」、あるいは「XがZにYを刺す」という文型の「Y」は、鋭く尖った先端部を有するもので、かつ、「Z」の内部に入ることが可能なものに限定される。
<様態>刺す
 くねくねと刺す。
 まっすぐ刺す。
「XがYでZを刺す」という文型の「Y」、あるいは「XがZにYを刺す」という文型の「Y」は、「Z」に向かって直線的に移動し、その内部に入る。したがって、直線的ではない動きを表す副詞(的表現)は共起しない。
解説
語義1は主に、2つの文型において用いられる。「XがYでZを刺す」という文型では、「X」(人・動物)が「Y」(鋭く尖った先端部を有するもの)によって「Z」(人・動物・もの・身体の一部)にどのような働きかけをするかに焦点が当てられる。一方、「XがZにYを刺す」という文型では、「X」(人・動物)が「Y」(鋭く尖った先端部を有するもの)を「Z」(もの・身体の一部)にどのように移動させるかに焦点が当てられる。いずれの文型においても、抵抗力を有する「Z」の内部(「Y」と「Z」の接触部分)の構造(構成)は、「X」によって力を加えて押し入れられる「Y」によって、変化が生じる。(具体的には、「Z」に穴が空いたり、傷が付いたりする。)また、いずれの文型においても、「Y」は、その先端部のみが「Z」の内部に入る場合もあれば、その大部分(あるいは全体)が入る場合もある。
誤用解説
ものの先端部を、あるものの一点に強く押し当てるが、その内部には入らないような場合には、「刺す」ではなく「突く」を用いる。
 鐘を刺す
 鐘を突く
類義語・反義語
類義語突く、通す
反義語抜く


2.貫通他動詞初級★★★
表記刺す
人が、ものを、鋭く尖った先端部を有する(細長い)ものに通す。
文型
<人>が<もの>を<もの>に刺す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山内さんは、魚を串に刺した
細いミミズを釣り針に刺すと、餌持ちが悪いそうです。
「この海老は、どうすればいいですか?」「それは、竹串に刺して焼いてください」
日本には節分に、鰯の頭を柊の小枝に刺し、戸口に立てて、邪気を追い払う風習がある。
子どものころ母は、花びらを針に刺して首飾りを作ってくれました。
屋台で、1本まるごと浅漬けにした冷たいキュウリが、割箸に刺された状態で売っていた。
コロケーション
<もの>を
魚、海老、ミミズ、キュウリ、桃
<もの>に
串、竹串、針、枝、割箸
<様態>
いきなり、しっかり、きちんと、そのまま、まっすぐ
非共起例
<もの>を刺す
 を針に刺す。
 ミミズを針に刺す。
 花びらを針に刺す。
通常、語義2のヲ格成分は、人やその他の動物が食べるもの、あるいは、何らかの製品(生産物)の素材となるものに限定される。
<もの>に刺す
 魚を包丁に刺す。
 魚をに刺す。
語義2のニ格成分は主に、細長い(棒状の)ものである。
解説
語義1で「XがYにZを刺す」という文型が用いられる場合、「X」(人・動物)が「Z」(鋭く尖った先端部を有するもの)を「Y」(もの・身体の一部)に入れることに焦点が当てられる。これに対し、語義2で「XがYにZを刺す」という文型が用いられる場合、「X」(人)が「Z」(もの)を「Y」(鋭く尖った先端部を有する、主に細長いもの)に通す(貫く)ことに焦点が当てられる。つまり、語義1では動作主が、鋭く尖った先端部を有するものに対してどのような働きかけをするかが注目される。これに対して語義2では、動作主が、鋭く尖った先端部を有するもの(道具)を用いて、あるものにどのような働きかけをするか(どのような生産物を完成させるか)が注目される。
類義語・反義語
類義語通す
反義語抜く


3.挿入他動詞初級★★★
表記挿す   ※「差す」を使うこともある。
人が、細長いものを、もの、身体の一部の内部に入れる。
文型
<人>が<もの・身体の一部>に<もの>を挿す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
井上さんは、花瓶に一輪の花を挿した
髪がまとまりにくい時には、ピンを数本差せば良いと思います。
娘は、コップに挿そうとしたストローを床に落としてしまった。
USBメモリーをパソコンのUSBポートに挿すだけで、書類や音楽、ビデオ、写真など、 様々なデータを容易に保存できる。
イヤホンを耳に挿しても、何も聞こえてこなかった。
「プラグは、コンセントにしっかり挿してありますか?」「あ、外れてしまっていました」
コロケーション
<もの・身体の一部>に
花瓶、コップ、コンセント、髪、耳
<もの>を
花、ストロー、かんざし、イヤホン、プラグ
<様態>
しっかり、きちんと、ちゃんと、そっと、ずっと
非共起例
<もの>を挿す
 コップにを挿す。
 コップにを挿す。
 コップにストローを挿す。
 コップにを挿す。
語義3のヲ格成分は、細長いもの(細長い部位を有するもの)に限定される。
解説
語義1も語義3も、「XがYにZをさす」という文型で用いられる。但し語義1では「さす」が、「X」(動作主)が「Z」(もの)を、抵抗力を有する「Y」(もの)の内部に力を加えて入れ、「Z」と「Y」の接触部分の状態を変化させる(穴を開けたり、傷を付けたりする)ことを表す。これに対して語義3では「さす」が、(装飾や器材の使用などの目的で)「X」(動作主)が「Z」(もの)を「Y」(もの)の内部に入れることを表す。この際、「Y」には(強い)抵抗力はなく、また、「Z」を「Y」に入れる際に、「X」が一定以上の強い力を加える必要もない。(「Y」はいわば、容器としての役割を果たす。)
誤用解説
細長くない形状のものを、あるものの内部に移す場合には、「挿す」ではなく「入れる」を用いる。
 鉢に金魚を挿す
 鉢に金魚を入れる
 コップに氷を挿した
 コップに氷を入れた
類義語・反義語
類義語入れる
反義語抜く、取る、外す


4.照射自動詞中級★★
表記差す   ※「射す」を使うこともある。
(主に太陽の)光線の先端部が、ある場所を照らす。
文型
<もの>が差す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
窓から光が差した
「少し、日が差してきたようですね」「そうですね。このまま、雨が降らないといいんですけど」
昨日は、薄日が差す程度の天気だった。
日中は、気温はそれほど上がらなかったものの、風もなく、柔らかな日差しが差し、過ごしやすい一日でした。
車内に西日が射して、とても眩しい。
明るい朝日が、部屋の中に差しています
stairs午後からは柔らかな日が差し、気温も上がり過ごしやすい1日となるでしょう。
コロケーション
<もの>が
光、日、日差し、西日、朝日、木漏れ日
<様態>
少し、時折、ようやく、ちょっと、徐々に
<場所>に
部屋、車内、(部屋の)中、境内、辺り
<場所>から
窓、隙間、雲間、(雲の)切れ間、空
非共起例
<もの>が差す
 部屋の中にが差す。
 部屋の中に花びらが差す。
 部屋の中にが差す。
語義4のガ格成分は、(主に太陽の)光を表す名詞(句)に限定される。
<場所>に差す
 に光が差す。
 石像に光が差す。
 部屋に光が差す。
 辺りに光が差す。
語義4のニ格成分は通常、空間的な拡がりを有する場所を表す名詞(句)に限定される。
解説
語義4は語義1と、あるものの先端部がある領域の内部に入り、両者の接触部分(及びその周辺)に状態変化が生じるという点で共通している。但し、語義1は(ヲ格成分が必須項となる)他動詞的用法における意味であるのに対し、語義4は(ガ格成分のみが必須項となる)自動詞的用法における意味である。また、語義1では「あるもの」が鋭く尖った先端部を有する固体であるのに対し、語義4では(主に太陽の)光線である。さらに、語義1の「状態変化」は接触部分の構造(構成)が(物理的に)変化することであるのに対し、語義4では接触部分(及びその周辺)が光に照らされること(それに伴い、接触部分とその周辺の色調が変化すること)である。
誤用解説
語義1や語義3などと異なり、語義4は「XがYにZをさす」という他動詞的用法で用いることはできない。(語義4は通常、「差す」が、自然現象として、ある場所が光に照らされる状況を表す。)
 父が部屋の中に光を差した
 父が部屋の中に光を当てた
類義語・反義語
類義語入る、当たる
反義語


5.注入他動詞中級★★
表記差す   ※「注す」を使うこともある。
人が、少量の液体を、筋状にもの、身体の内部に入れる。
文型
<人>が<もの・身体の一部>に<もの>を差す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山田さんが、鍋の煮物に醤油を差しました
自転車のメンテナンスに関して重要なことの1つは、チェーンのオイルをこまめに差すことです。
「沸騰したら、鍋に水を差してね」「うん、分かった」
整備工は、モーターに慎重に油を差した
7歳の娘は、自分で目に目薬を差そうとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。
コーヒーの粉を30gから40g程度、漉し袋の中に入れたら、80℃くらいのお湯を差しましょう
コロケーション
<もの・身体の一部>に
鍋、モーター、エンジン、自転車、目
<もの>を
水、醤油、油、目薬、湯
<様態>
ゆっくり、こまめに、少し(ずつ)、ちょっと、そっと
非共起例
<様態>差す
 鍋にたくさん水を差す。
 鍋に少し水を差す。
語義5において「注す」は通常、もの・身体の内部に少量の液体を入れることを表す。(少量でない場合には、「注ぐ」や「入れる」などを用いる。)
解説
語義1と語義5はいずれも、「XがYにZをさす」という文型が用いられる。このうち、「Y」はいずれの語義においても、もの・身体の一部である。但し、「Z」は、語義1では鋭く尖った先端部を有する固体であるのに対し、語義5では液体である。また、語義1では「Y」と「Z」の接触部分の構造(構成)が変化する(穴が空いたり傷が付いたりする)のに対し、語義5では「Y」がいわば容器としての役割を果たす。なお、語義5では「Z」(液体)は、少量が筋状に「Y」に入れられる。その際の液体の形状は、語義1における「Z」(固体)の(主に)細長い形状と類似している。
類義語・反義語
類義語注ぐ、入れる
反義語


6.彩色他動詞中級★★
表記差す
人が、もの、身体の一部に色を付ける。
文型
<人>が<もの・身体の一部>に<もの>を差す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
舞妓さんが唇にそっと紅を差した
「次は、何をすればいいですか?」「そこにある筆を使って、器に絵の具を差してください
祖母はその時、慣れた手つきで頬に紅を差していた
彼女の口紅を差している姿が、何故かとても愛おしかった。
「差し色って、どういう意味ですか?」「ファッションやインテリアで、変化を付けるために、淡い地色に、濃い目の赤や青なんかを差すことがありますよね。基本となる色に対して、そのような、ポイントを配するための色のことを差し色と呼ぶんです」
服装を同系色でまとめる時は、どこかに色を差せばコーディネートが華やぎます。
コロケーション
<もの・身体の一部>に
器、地色、生地、表面、唇、頬
<もの>を
紅、口紅、絵の具、赤、色
<もの>で
口紅、筆、指
<様態>
そっと、少し、ちょっと、まず、さらに
非共起例
<もの>で差す
 器に刷毛で絵の具を差す。
 器にで絵の具を差す。
もの・身体の一部に色を付ける際に道具を用いる場合、その道具は通常、筆、口紅、指など、細長い形状のものである。
解説
語義6では、「(口)紅を差す」、「絵の具を差す」のように、何らかの染料を用いて色を付けるケースと、「地色に赤を差す」、「足元に赤を差す」のようにファッションやインテリアなどにおいてポイントとなる(明るい、あるいは濃い)色を配するケースがある。いずれの場合も、ものや身体のある部分を、特定の色で際立たせている。なお、語義6は語義1と同様、「XがYにZをさす」という文型が用いられる。このうち、「Y」はいずれの語義においても、もの・身体の一部である。但し、「Z」は、語義1では鋭く尖った先端部を有する固体であるのに対し、語義6では色である。また、語義1でも語義6でも、「X」(動作主)は「Z」に何らかの状態変化をもたらすが、それが語義1では穴をあけたり傷を付けたりすることであるのに対して、語義6では彩色である。なお、語義6では道具を用いてもの・身体の一部に色を付ける場合があるが、その際の道具は、筆、口紅、指など、通常細長い形状を有するものである。この形状は、語義1での「Z」(鋭い先端部を有する固体)と類似している。
類義語・反義語
類義語付ける、塗る
反義語


7.変色自動詞上級
表記差す
身体、ものの一部が、(わずかな)色が付いた状態になる。
文型
<身体・ものの一部>に<もの>が差す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
娘の頬に、赤みが差す
近藤さんはそのとき、頬に僅かに赤みが差していました
「鈴木君、顔に血の気が差したてきたんじゃないかな?」「そうだね、安心したよ」
しばらくすると、息子の、青白く透き通ったような顔と唇に、ポッと紅が差しました
実が大きく、紅が差して美しい色をした梅を買った。
その映像は、青みが差したような色調だった。
stairsほら、頬に少し血の気が差してるでしょう。
コロケーション
<身体・ものの一部>に
頬、顔、唇、実、映像
<もの>が
赤み、青み、紅、赤、血の気
<様態>
わずかに、ほんのり、少し(だけ)、ようやく、ちょっと
非共起例
<もの>が差す
 娘の頬に真っ赤な色が差した。
 娘の頬に赤みが差した。
語義7は、「差す」がもの・身体の一部のわずかな色の変化(薄い色調の変化)を表す。したがって通常、はっきりとした色が生じるような変化においては「差す」は用いられない。
解説
語義6は「差す」が、人がもの・身体の一部の色の変化をもたらすことを表すのに対し、語義7はもの・身体の一部の色の(わずかな)変化が(自ずと)生じた結果の状態を表す。このことに関連し、語義6は「差す」が他動詞的用法において用いられるのに対し、語義7は自動詞的用法において用いられる。
類義語・反義語
類義語出る、付く
反義語消える、引く


8.雨・日除け他動詞初級★★★
表記差す
人が、雨に濡れたり日光に照らされたりするのを防ぐために、傘を頭の上に広げて持つ。
文型
<人>が<もの>を差す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山内さんが、傘を差した
「雨、ひどくなってきたし、傘を差そうよ」「うん、その方が良さそうだね」
どれだけ雨が降ってきても、傘は差さずに自転車を運転しなければならない。
最近は、日傘を差す男性が増えているそうです。
日頃使い慣れていないので、差した折りたたみ傘を綺麗にたたむのに苦戦してしまった。
その時、和傘を差して歩いている一人の女性が目に入ってきた。
コロケーション
<もの>を
傘、雨傘、日傘、折りたたみ傘、和傘、置き傘
<様態>
ようやく、必ず、すぐ、既に、きちんと
非共起例
<もの>を差す
 を差す。
 を差す。
「傘」と同音異義語である「笠」は、「さす」ものではなく「かぶる」ものである。
解説
語義8は語義1と、人が尖った先端部を有するものをある領域に向けて移動させるという点では共通している。但し、語義1では「ある領域」が主にものや身体の一部であるのに対し、語義8では頭上である。このことに関連して、語義1では「もの」と「ある領域」との接触部分に穴が開いたり傷が付いたりするが、語義8ではそのような変化は生じない。また、語義1では「ある領域」がニ格成分として言語化されるが、語義8ではニ格成分を取らない。(「傘を頭上に差す」、「傘を空に差す」などは、誤用である。)
誤用解説
雨や、日光の照射を避けるために傘を使用する場合には、原則として「差す」という動詞を用いる。
 を持つ
 をかざす
 で覆う
 を差す


9.人による場所の指示他動詞初級★★★
表記指す   ※「差す」を使うこともある。
人が、もの、身体の一部の先端部によって、人、ものが存在する場所、方向、方角を示す。
文型
<人>が<人・もの・場所・方向・方角>を指す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生が、黒板に書かれた文字を指した
山本さんは、ペンでホワイトボードに書かれた数式を指しています
父は、黙って出口の方を指しました
その男は、近くにいた女性を指しながら、意味不明の奇声を上げていた。
「日本人の友達に、指し箸をしてはいけないと言われたんですが、指し箸というのは何のことですか?」「食事中に、箸で人や物を指すことですよ」
山本君は今日、何故か授業中に何度も、西川先生に指された
コロケーション
<人・もの・場所・方向・方角>を
生徒、女性、文字、建物、出口、(~の)方
<もの・身体の一部>で
ペン、棒、レーザーポインター、指、手
<様態>
まず、突然、いつも、何度も、なぜか
解説
語義9は語義1と、人がもの・身体の一部に対して何らかの働きかけをするという点では共通している。但し、語義1ではその働きかけが、鋭く尖った先端部を有するもの(線的な延長を有するもの)を、人やものなどの内部に入れ、その接触部分に穴を開けたり傷を付けたりすることである。これに対し、語義9は、指や棒状のもの(線的な延長を有するもの)によって、ある場所・方向・方角を示すことである。なお、「<人1>が<人2>を指す」という文型で用いられる場合、「指す」は、<人1>が自身の指(や手全体)を<人2>の方向に向けることを表すだけでなく、質問をしたり何らかの指示を与えたりするなどの目的で、<人1>が<人2>を指名することを表す場合もある。
誤用解説
人が自身の指を他者や何らかのもの・場所・方向・方角に向けるという意味で、「指を指す(指を差す)」という形を使う場合がある。このときには、語義9の通常の用法と異なり、示される場所は「~を」ではなく「~に(向かって・対して)」という形で表される。
 兄が妹を指を指した
 兄が妹に(向かって・対して)指を指した
 兄が妹を指さした
類義語・反義語
類義語向ける
反義語


10.ものによる場所の指示他動詞初級★★★
表記指す
ものの先端部が、ある場所、方向、方角を示す。
文型
<もの>が<場所・方向・方角・数値>を指す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
磁石が西を指す
時計の針は、今、16時15分を指しています
「その矢印、どこを指してたっけ?」「確か、南だったと思うよ」
方位磁針のN極が、北を指そうと揺れている。
スピードメーターが時速100キロを指しても、姉は決して減速しようとしなかった。
温度計が、きっかりマイナス5度を指した
コロケーション
<もの>が
磁石、方位磁針、針、メーター、矢印
<場所・方向・方角>を
北、西、右、東京、(~の)方
<数値>を
16時、5度、100キロ
<様態>
ちょうど、きっかり、ついに、常に、概ね
非共起例
<数値>を指す
 時計の針が5分間を指した。
 時計の針が5分を指した。
<数値>が時に関するものである場合、「指す」対象は(時間の幅ではなく)ある時点(時刻)である。
解説
語義10は語義9と、あるものの先端部によってある領域を示すという点では共通している。但し、語義9は人があるもの・身体の一部(指や手)の先端部を用いてある領域を示すのに対し、語義10では物(人工物)の先端部がある領域を示す。したがって、語義9は人の意志的な行為であるのに対して、語義10は非意志的な出来事である。なお、語義10のヲ格成分が<数値>である場合、「指す」は厳密には、あるものの先端部が、その数値を表す場所を示すことを表す。
誤用解説
通常、ガ格成分(<もの>)は、針や矢印をはじめ、尖った先端部を有する細長い形状のものである。
 その銅像は、西を指している
 その銅像は、西を向いている
類義語・反義語
類義語示す
反義語


11.言語や記号による指示他動詞初級★★★
表記指す
言語(文字、単語、文章、談話など)、記号が、もの、物事、人を示す。
文型
<もの・こと>が<もの・人・こと>を指す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
文章中では、代名詞は通常、直近の既出の事柄を指します
「未病」とは、病気の手前の状態を指す語だそうだ。
「初老っていう言葉は、何歳ぐらいの人のことを指すの?」「元々は、40歳ぐらいの人のことを指してたみたいだよ」
この書類の中にある「36」という数字は、労働基準法の第36条のことを指しています
下線部の「それ」は、何を指しているでしょうか。
免許を取るのであれば、どの道路標識が何を指すのか、全てしっかり覚えなければいけない。
stairs「初老」はもともと40歳ぐらいの人のことを指す言葉だよ。
コロケーション
<もの・こと>が
代名詞、言葉、数字、アルファベット、標識
<もの・こと・人>を
事物、状態、(~の)こと、事柄、主人公
<様態>
きっと、恐らく、たぶん、主に、特に、普通(は)
非共起例
<もの・こと>が指す
 黄色い薔薇が、嫉妬の感情を指している。
 彼の表情が、嫉妬の感情を指している。
 文章中の「その気持ち」という表現が、嫉妬の感情を指している。
語義11のガ格成分は、(事物そのものではなく)何らかの言語(文字、単語、文章、談話など)あるいは記号に限定される。
解説
語義11は語義10と、主に「XがYを指す」という文型で用いられ、ある事物がある対象を示す(指示する)という点で共通している。但し、語義10では「X」が(通常、鋭い)先端部を有するものであるのに対し、語義11では言語(文字、単語、文章、談話など)あるいは記号(数字、アルファベット、標識など)である。また、語義10では「Y」がある空間領域であるのに対し、語義11では事物(一般)である。
誤用解説
語義11は通常、「指す」を「表す」に置き換えることが可能である。「指す」と「表す」はいずれも、ある事物によって異なる事物を指示するという点で共通している。但し、「XがYを表す」と「XがYを指す」を比較すると、「表す」における「X」の方が、使用範囲が広い。(「指す」の場合、「X」は言語あるいは記号に限定される。)例えばある思考内容や感情を、何らかの言語表現、表情、絵などで示す際には「表す」が用いられる。また、ある事物(そのもの)がある意味内容を示す際にも「表す」が用いられる。
 喜びを、顔に指す
 喜びを、顔に表す
 この感情を言葉で指すのは、とても難しい。
 この感情を言葉で表すのは、とても難しい。
 花言葉で、黄色い薔薇は「嫉妬」を指す
 花言葉で、黄色い薔薇は「嫉妬」を表す
類義語・反義語
類義語表す
反義語


12.縫合他動詞上級
表記刺す
人が、針を使ってものを縫い合わせる。
文型
<人>が<もの>を刺す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
母が刺繍を刺す
「お姉ちゃん、これから何するの?」「学校に持って行く雑巾を刺そうと思ってたところ」
職人たちは今、長い針で畳を刺しています
こちらは、一針一針心をこめて丁寧に刺したふきんだ。
その本を読めば、北欧柄やボタニカル柄など、素敵な刺繍が簡単に刺せるようになるはずです。
今回は、私たちが針1本で刺した絨毯、タペストリー、小物等を展示します。
コロケーション
<もの>を
刺繍、雑巾、畳、ふきん、絨毯
<もの>で
針、縫い針、刺繍針、クロスステッチ針、ニードル
<様態>
ちくちく、さらに、まず、初めて、一度
非共起例
<もの>を刺す
 傷口を刺す
 刺繍を刺す
語義12では、縫い合わせる対象は布製品や畳などである。
解説
語義1では「刺す」が、人(やその他の動物)が鋭い先端部を有するものを対象(ものや身体の一部など)の内部に入れて両者の接触部分に穴を開けたり傷を付けたりすることを表す。これに対して語義12では、その過程を複数回続け、その結果として複数のものを縫い合わせ、刺繍、布製品、畳などを完成させることを表す。
誤用解説
外科手術などで、身体の一部を縫い合わせる場合には、「刺す」ではなく「縫う」や「縫合する」を用いる。
 医師が患者の傷口を刺した
 医師が患者の傷口を縫った
 医師が患者の傷口を縫合した
類義語・反義語
類義語縫う
反義語


刺す・挿す・指す・差すの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>で
「なんだよ、傷口っていったってで刺したくらいなもんだぜ。
(ディーン・R.クーンツ著;柴田都志子訳 『闇の囁き』, 1990, 933)
<人・動物・もの・身体の一部>を
逆上した橋田は、台所に飛び込み、刃渡り二〇センチの刺身包丁を持ってきて、妻のを刺した。
(福田洋著;石川保昌編 『図説現代殺人事件史』, 1999, 368)
<もの・身体の一部>に
墓に祈りを唱え、二本の流木で作った十字架を地面に刺した。
(ジェームズ・クラベル著;宮川一郎訳 『将軍』, 1980, 933)
<もの>を
野菜にナイフを刺してすっと通るやわらかさになるまで煮込む。
(ル・コルドン・ブルー東京校編 『フランス料理基本の基本』, 2003, 596)
<様態>
運転していた男が車を降り、持っていたサバイバルナイフで歩行者らを次々に刺した。
(Yahoo!ブログ, 2008, 日本)
<もの>を
ボクも所在なかったが、試しに彼の竿を手に取って生きエビのエサを針に刺して20mの海底に沈めた。
(盛川宏著 『モリさんの釣果でごちそう』, 2002, 787)
<もの>に
日本のおでんとほぼ同じだが、ネタは魚のすり身をに刺したものだけ。
( 『韓国ドラマの不思議に迫る』, 2004, )
妻はみかんを半分に切ったのを庭の木のに刺しておいたら、メジロ二羽で来て、よろこんで食べる。
(庄野潤三著 『鳥の水浴び』, 2000, 913)
<様態>
そのまま竹串に刺し、台所のコンロの周りに手際よく立てかけた。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<もの・身体の一部>に
コップに1輪だけ花を挿すのは難しいもの。
(花時間, 2002, レジャー/趣味)
にその羽根を挿してダンスを踊り花火を見れば、記憶がよみがえるかもしれない」
(ミランダ・ジャレット作;永幡みちこ訳 『黄金の誓い』, 2005, 933)
<もの>を
ペンスタンドは筆記時以外に万年筆を挿して待機させる休憩処である。
( 『趣味の文具箱』, 2005, )
USBメモリを挿したら、マウスの矢印が動かなくなってしまいました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
<様態>
一番素敵に見える位置を見つけ、そのまま器に挿します。
(並木容子著 『日々のくらし、日々のはな』, 2004, 793)
<もの>が
今日は1日曇りの予報だが 10時頃雨が上がり今薄日が射すようになった。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<様態>
ようやく射してきた朝の光が、うっすらと街を染めようとしている。
(ジョン・ダニング著;宮脇孝雄訳 『幻の特装本』, 1997, 933)
<場所>に
景気のせいか、空気がきれいになった気がして、そして太陽光線が前よりも強く部屋に差す気がします。
(Yahoo!ブログ, 2008, ペット、動物)
<場所>から
雲間から差した月光の反射で、ジェイは何が起きているのかを理解した。
(葛西伸哉著 『パメラパムラの不思議な一座』, 2004, 913)
<もの・身体の一部>に
番頭らしいのが入ってきたが、こちらが眠ったふりをしていると、黙って静かに行燈に油を差して出て行った。
(安岡章太郎著 『果てもない道中記』, 2002, 913)
<もの>を
沸騰して水が少なくなってきたら、を差しながら小豆がやわらかくなるまで煮ていきます。
(ごちそうの手帖(暮しの手帖別冊), 2001, 家庭/生活)
目薬を差してからコンタクトレンズを外してみるとあっさりと外れますよ。
(Yahoo!知恵袋, 2005, コスメ、美容)
<様態>
とろ火でゆっくり水煮し、煮立ったらたびたび水を差して、十分にやわらかくなったらOKです。
(あんしんネット21編著 『安心キッチンクッキングノート』, 1998, 596)
<もの・身体の一部>に
女はせっせと化粧をしているところで、に紅をさしている様子がはっきりと見えた。
(ラフカディオ・ハーン作;脇明子訳;ラフカディオ・ハーン作;脇明子訳 『雪女;夏の日の夢』, 2003, 933)
<もの>を
小さいがぽってりとした唇は、肌の白さゆえにそう見えるのか、を差したように赤い。
(天樹征丸作 『金田一少年の事件簿』, 1998, 913)
<もの>で
服はベージュ系で小物で色をさす場合のテクあれこれが分かる!
(non・no(ノンノ), 2001, 一般)
<様態>
小柄な身体を質素な着物に包み、唇には薄く紅を差している。
(三田誠著 『烙印よ、虚ろを満たせ。』, 2005, 913)
<身体・ものの一部>に
良平さんの話をうなずきながら聞いていたケン坊のには、うっすらと紅がさし、にっこりと笑いながら、
( 『栗良平作品集』, 1988, 913)
<もの>が
彼女の美貌に、血の気がさしてくるのが本城にも見てとれた。
(和久峻三著 『ロシアンルーレットの女』, 1994, 913)
<様態>
見ると律の顔は、暑さのせいばかりでなく、うっすらと赤みが差している。
(日生水貴著 『あなたのすべてがいとしくて』, 2002, 913)
<もの>を
真新しいを差して店を出ると、私は再び歩き始めました。
(蓮見圭一著 『水曜の朝、午前三時』, 2005, 913)
日傘代わりに黒い雨傘をさした瘦せた男が立っていた。
(又吉栄喜著 『陸蟹たちの行進』, 2000, 913)
<様態>
日焼けを防ぐため日傘をまっすぐにさしていた姿が忘れられない。
(盛田昭夫ほか著;下村満子訳 『メイド・イン・ジャパン』, 1987, 549)
<人・もの・場所・方向・方角>を
「あの男に命令してください」と大佐は顎でカウンターの方を指して言った。
(トマス・エロイ・マルティネス著;旦敬介訳 『サンタ・エビータ』, 1997, 963)
<もの・身体の一部>で
ホステスはで自分を指し大口を開いて笑った。
(森詠著 『青龍、哭く』, 2005, 913)
<様態>
沖田が右掌の人差し指で、ぴたりと忠助の顔をさした。
(広瀬仁紀著 『新選組風雲録』, 2004, 913)
<もの>が
秒針が12時を指した瞬間にシャッターを押した。
(YOMIURI PC, 2005, 電気機/電子)
<場所・方向・方角>を
東京付近では方位磁石は真北から7°西にずれた方向を指す。
(高等学校地学Ⅰ, 2005, 高)
<数値>を
テレビの上に置いてある時計は午後九時を指している。
(水無月さらら著 『少年アリスの憂鬱』, 2001, 913)
<様態>
また、測量の生命ともいうべき磁石が、地球の真北を正しく指さぬことに気付いた忠敬は、思い悩んだ末に北極星を観測する方法を思いつく。
(加来耕三著 『日本創始者列伝』, 2002, 281)
最後に、投げ終わった時の親指が投げた方向をしっかり指しているかどうか確認します。
( 『ディスク&ドッグ』, 2003, )
<もの・こと>が
本書でアメラジアンという言葉が指す対象は、アジア国籍を持つ親とアメリカ国籍を持つ親との間に生まれたすべての人だ。
(S.マーフィ重松著;坂井純子訳 『アメラジアンの子供たち』, 2002, 369)
<もの・こと・人>を
鹿児島では、「酒」と言えば「焼酎」のことを指すのは有名。
(Yahoo!ブログ, 2008, 文学)
<様態>
十王とは地獄にいて亡くなった人の罪を裁く10人の判官のことで、特に閻魔王のことを指します。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<もの>を
例えば、着物の解き糸は雑巾を刺すのに使い、手紙の反故は竹軸に巻いておいて櫛拭きなどの用に立て、密柑の皮はよく干してから蚊やりに、風呂の焚き物は畑の生りものを引上げたあとの、茎や葉を枯らしたものまで利用する。
(宮尾登美子著 『一絃の琴』, 1978, 913)






























午後からは柔らかな日が差し、気温も上がり過ごしやすい1日となるでしょう。
ほら、頬に少し血の気が差してるでしょう。
「初老」はもともと40歳ぐらいの人のことを指す言葉だよ。
嫌気が差す

意味
人の心の中に、意図せず、ある事柄を拒否したり、ある事柄を受け入れられない感情が(やや)生じる。
用例
弟は、職場で毎日同じ作業ばかりさせられて、仕事に嫌気が差したようだ。
コーパスからの用例
そんな議論は嫌気がさすほどこなしてきた。(加藤秀幸著 『いつかどこかのおかしな話』, 2003, 913)
噂をすれば影が差す

意味
ある人の噂をしていると、不思議にその当人がそこへやって来る。
用例
「噂をすれば影が差す」とはよく言ったもので、みんなで鈴木君の話をしている最中に突然、鈴木君が部屋に入ってきた。
コーパスからの用例
「噂をすれば影がさす」という諺でもわかるとおり、「鬼」という語を発すれば、その当の鬼が活動を始めるのである。(井沢元彦著 『逆説の日本史』, 1998, 210)
影がさす

意味
ある人の姿や影が、ちらっと見える。
用例
どうも、小川さんの影がさしたような気がした。
コーパスからの用例
同じ食卓を囲むどころか、中庭の端に兄の影がさしただけで身をひるがえした。 (篠田真由美著 『ドラキュラ公』, 1997, 913)
意味
好ましくない(望ましくない)ことが起こりそうな気配がする。
用例
2人の幸せな生活に、いつからか影がさし始めました。
コーパスからの用例
このとき仏教は少数の人のものでなく、大衆のものとなったが、大衆的となった仏教には、同時に堕落の影がさす。 (梅原猛著 『梅原猛、日本仏教をゆく』, 2004, 182)
気が差す

意味
心の中に、うしろめたい気持ちが生じる。
用例
黙って会議を欠席してしまったので、どうしても気が差すのである。
コーパスからの用例
それが終ると藤はフキを振返って、同じところで用を足すように指図をするのだが、これにはフキは最初は仰天したし、二月たった今でも気がさす。(有吉佐和子著 『和宮様御留』, 1978, 913)
釘を刺す

意味
人が他者に、約束違反や言い逃れができないように念を押す。
用例
このことは絶対に他言しないように、あの人にしっかり釘を刺しておいてくださいね。
コーパスからの用例
「酔っていきなり訪ねてきても、絶対起きないからね」と釘を刺しておく。(野沢尚著 『深紅』, 2003, 913)
鹿の角を蜂が刺す

意味
ある事柄に、何の手応えも効果もない。
用例
あの人にそんな注意の仕方をしたところで、鹿の角を蜂が刺すようなもので、全く響かないと思います。
コーパスからの用例
たとえば敵がごく弱いと見ると、「鹿の角を蜂がさす」だの、「釣り鐘に蜂」だのといって笑い、向うがそれを聞いて怒って来ると、「ごまめの歯ぎしり」だの、「蛞蝓(なめくじ)にも角がある」だの、「なぶれば兎もくいつく」だのといいました。(武田勝昭著 『ことわざのレトリック』, 1992, 388)
図星を指す

意味
人が、ある物事(の要点)を推察し、言い当てる。
用例
兄は母にいきなり図星を指されて、狼狽してしまったようだ。
コーパスからの用例
図星を指され、行天は、口籠った。 (山崎豊子著 『沈まぬ太陽』, 1999, 913)
掌を指す

意味
物事が極めて明白で、疑問の余地もない
用例
課長は、複雑な社内の情勢を、掌を指すかの如く理解している。
コーパスからの用例
何だろうと思えば、眼の見えるアズサミコが弓を弾いて、亡き魂の言葉をかたわらにあるかのように口にして、将来のことなど、掌を指すように物語るので、人々は涙をこぼして泣いている。(長部日出雄ほか著 『日本のこころ』, 2001, 281)
止めを刺す

意味
人が、敵とみなしている他人や捕獲した獲物に対して、完全に息の根を止める。
用例
狩人は、捕まえた狼が再び村を襲わないよう、止めを刺した
コーパスからの用例
文四郎はやまかがしを探してとどめを刺した。(国語 3, 2005, 中)
意味
人や組織が、他の人や組織に、元の状態に戻ることが厳しいほどの決定的な影響を与える。
用例
彼の発言は、派閥の長の密室政治に止めを刺すことになった。
コーパスからの用例
徳川時代になってからの鎖国政策、大船建造禁止は、堺市のとどめを刺したということになる。(高木和男著 『食からみた日本史』, 1986, 383)
鼻を刺す

意味
(好ましくない)においが、鼻を強く刺激する。
用例
部屋に入った途端、鼻を刺す悪臭を感じ、その場でうろたえてしまった。
コーパスからの用例
神田小川町の大店の後ろにひろがる裏長屋の木戸門をくぐると、溝の悪臭が顔をしかめさせるほど強く鼻を刺した。(沢田ふじ子著 『閻魔王牒状』, 1994, 913)
複合動詞 V1

差し違える、刺し貫く、刺し通す、刺し殺す、差し合う、差し上げる、差し当たる、差し入る、差し入れる、差し置く、差し押さえる、差し替える、差し掛かる、差し掛ける、差しかざす、差し込む、差し障る、差し迫る、差し立てる、差し出す、差し支える、差し付ける、差し出る、差し止める、差し昇る、差し挟む、差し控える、差し引く、差し響く、差し招く、差し回す、差し向ける、差し戻す、差し渡す、指し示す
複合動詞 V2

突き刺す、言いさす、書きさす、食いさす、読みさす
複合名詞

刺し縫い、鳥刺し、烏賊刺し、畳刺し、目刺し、串刺し、刺し網、刺し傷、刺し子、差し竿、刺し箸、刺し身、馬刺し、差し違え、手差し、名指し、将棋指し、指し刀、指し手、指し値、指し将棋、物差し、抜き差し、眼差し、差し色、差し押さえ、指差し、差し足、差し油、差し歯、差し水、差し湯、日差し、差し込み、差し障り、差し引き、差し控え、差し薬、もろ差し
刺す・挿す・指す・差す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形ない
~なかったなかった
ます形さし
~ませんさしま
~ましたさしした
~ませんでしたさしまんでした
~ときすとき
ば形せば
意向形
て形して
た形した
可能形
受身形ささ
使役形ささ
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