定めるのコアイメージ

1.到達経路を不動に他動詞中級★★
表記定める
人が、放とうとするものの目標地点への到達経路を、動かなくする。
文型
<人>が<到達経路>を定める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
的にねらいを定めて矢を放った。
殺し屋は銃をかまえて、運転席の男にぴたりと狙いを定めた
その騎士は逃げる馬の脚にねらいを定めようと、弓を引き絞った。
銃口のねらいを定めて引き金を引いた。
猟師さんは、水面から飛び立つ鳥に狙いを定めて猟銃を撃ちました。
久々に猟に出たので、素早く動く獲物にねらいが定まらず、なかなか引き金がひけない。
コロケーション
<到達経路>を
ねらい、照準
<的>に
的、標的、獲物
<様態>
しっかり(と)、ぴたり(と)、ぴったり(と)
非共起例
<到達経路>を
 的に矢を定めた
 的にねらいを定めた
「矢」のように、到達経路を移動するものは、<到達経路>には含まれない。
解説
「語義1」は、「放とうとしているものの目標地点への到達経路を動かなくする」ことを表す。「動かなくする」前には「動きやすい状態」があり「動かなくした」後には、その状態が保たれるという含みが出る。「定める」の類義語に「決める」があるが、「語義1」の「定める」は「決める」に言い換えにくい。すなわち、「的にねらいを決めた」は不自然で、「的にねらいを定めた」のほうが自然である。
誤用解説
 鳩舎のある九州にねらいを定めて伝書鳩を放った。
 鳩舎のある九州に向けて伝書鳩を放った。
「定める」は、「人」が「もの」を放つ際、「もの」に何らかの力をかける場合にしか使えない。すなわち「鳩」のように自らの動きで移動するものについて「定める」は使えない。
類義語・反義語
類義語決める
反義語


2.不変に他動詞中級★★
表記定める
人や組織が、長く皆の共通認識となるような重要な物事を決める。
文型
<人・組織>が<物事>を定める。
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
戦いに勝利した王は、都を定めて国造りにとりかかりました。
王は、面積・体積などの単位を定めました
国民感情に配慮して定められた判決なのではないかと思われる。
災害にそなえ、家族で相談をして集合場所を定めておくべきだと思います。
話し合いをして、年会費を定めることにしました。
私は山間の小さな川沿いの地を、永住の地と定めました
コロケーション
<人・組織>が
① 人:王、大臣、知事、社長、家長
② 組織:国、幕府、議会、市
<物事>を
都、会費、謝金、集合場所、永住の地
<(物事を)特定の物事>に
都を京都に、単位をセンチメートルに、集合場所を近所の小学校に、年会費を一万円に
非共起例
<物事>を
 クリスマスパーティーの参加費を一万円に定めました
 クリスマスパーティーの参加費を一万円に決めました
「語義2」の「定める」は、「長く皆の共通認識となるような重要な物事を決める」場合に使われるのであって、パーティーの参加費のように、事情によっては比較的容易に変更し得る内容を決める場合には使えない。
解説
「語義1」とこの「語義2」との間には、「動くものを動かなくする」という共通点がある。ただし、「語義1」の場合に「動かなくする」のは、「放とうとしているものの目標地点への到達経路」であるのに対し、この「語義2」の場合は、「物事」である。
誤用解説
 会員は、会長の罷免を定めました
 会員は、会長の罷免を決定しました
 王さまは、建国100周年記念式典の開催を定めました
 王さまは、建国100周年記念式典の開催を決め/決定しました
「定める」は、「長く皆の共通認識となるような重要な物事」を「決める」場合に用いられるのであって、1回限りの出来事について「決める」場合には使えない。
類義語・反義語
類義語決める、決定する
反義語


3.規則を作る他動詞中級★★
表記定める
人や組織が、規則や法を作る。
文型
<人・組織>が<規則>を定める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
新政府は新しい憲法を定めた
新しい学校を作ったら、新しい校則を定めなければならない。
多くの県が自然保護を条例に定めている
憲法には戦争放棄が定められている
会則は、会長の再選が認められないことを定めている
法が定めるところにより処罰をする。
stairs学校が定めたことは守らないといけないよな。
コロケーション
<人・組織>が
① 人:王、大臣、知事、社長、家長
② 組織:国、幕府、議会、市
<規則>を/に/が
憲法、法律、条約、協定、労働契約
<内容>を
戦争放棄、自然保護、労働時間、暦、罰則規定
<様態>
厳密に、細かく、詳しく、大まかに
解説
「語義2」とこの「語義3」との間には、「長く皆の共通認識になる物事を決める」という共通点がある。ただし、「語義2」の場合の共通認識は、名称が持つかどうかが問題にされていないのに対し、この「語義3」の場合は、規則や法として名称を持つ。
誤用解説
 子供たちは、学級会で日直の制度を定めました
 子供たちは、学級会で日直の制度を決めました
「定める」は、規則や法など、重要性の高い事柄を決める場合に用いられる。子供が規則を決めるような場合には適さない。
類義語・反義語
類義語決める、決定する、制定する、策定する
反義語廃止する


4.方向性を決める他動詞中級★★
表記定める
人・組織・出来事が、物事の向かう方向を決める。
文型
<人・組織・出来事>が<方向>を決める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
何をするにも、まず目標を定める必要がある。
私は、ある古代国家の成立過程の解明に課題を定め、研究をスタートした。
論点を定めずに議論をしても仕方がない
退職金を手にし、まとまった資金を持っている退職者に照準を定め、無駄なく営業活動を進めてほしい。
会長を辞任する前に、会社のこれからについて方向性を定めておきたい。
親に定められた人生を生きるのは嫌だ。
コロケーション
<組織・出来事>が
① 組織:国、幕府、議会、市、会社、学校
② 出来事:先生との出会い、会社の倒産、子供の誕生、友人の死
<方向>を
① 方向:方向、方針、運命、人生
② 方向の向かう先:ねらい、課題、論点、議論の焦点、争点
<様態>
はっきり(と)、しっかり(と)
非共起例
<人>が
 神が運命を定めたとしか思えない。
 神に運命が定められているとしか思えない。
通常、人が他者の「運命」や「人生」を制御し、決定することはできない。したがって「×太郎が私の運命を定めた」という表現は不自然である。人知を超えた存在としての「神」ならば、「運命」や「人生」を「定める」ことができるが、その場合も、「神」が意志を持って決定したことを前面に押し出して表現し、「神が運命を定めている」と言うよりも、受身で表現し「運命が神に定められている」と言うほうが自然である。
解説
「語義1」とこの「語義4」との間には、「目標地点への経路を動かなくする」という共通点がある。ただし、「語義1」の経路が「放とうとするものの経路」であるのに対し、この「語義4」の経路は「物事が向かう方向への経路」である。
誤用解説
 (小さい子供に)夏休みの目標を定めましょうね。
 (小さい子供に)夏休みの目標をたてましょうね。
「語義4」はやや固い印象のある表現で、小さい子供に向けて言うのはふさわしくない。
類義語・反義語
類義語決める、立てる
反義語


5.心を決める他動詞上級
表記定める
人が、特定の方向に向かって進んでいくことを決心する。
文型
<心>を定める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
リーダーには、覚悟を定めて問題に立ち向かう姿勢が求められる。
心を定めて事に当たれ。
王は、戦いに負ければ死ぬと覚悟を定めていた
本当の意味で信心を定めた人は、強いものです。
どんな困難があろうとも、捕虜となった臣下を救い出すのだ、と王さまは思いを定めました
コロケーション
<心>を
覚悟、思い、心、信心
非共起例
<心>を
 決心を定める
 決心する。
「決心」は「心を決める」という意味であるので、「決心を定める」とすると冗長である。
解説
「語義4」は「目標を定める」のように「物事が向かう方向を決める」ことを表す。その際、その方向に向けて進むという意志を固めることになる。これがこの「語義5」である。
誤用解説
 昨日太郎君とけんかしちゃったけど、私から謝ろうと心を定めたよ。
 昨日太郎君とけんかしちゃったけど、私から謝ることにしたよ。
昨日から今日にかけて一日で結論が出るような軽い内容について述べる場合に「定める」を用いるのは不自然である。
類義語・反義語
類義語決める
反義語


定めるの全体解説 「定める」は、「放とうとするものの目標地点への到達経路を動かなくする(例:ねらいを定める)」(語義1)を基本的意味とする。類義語に「決める」がある。「決める」が可能性を限定するという広い意味を持つ語であるのに対し、「定める」は、「基準からずれて動く目標地点への到達経路」を「基準に合うように体勢によって動かなくする(ずれなくする)」という形で、可能性を限定することを表す。すなわち、「動くものを動かなくする」「目標地点への経路や体勢」という二つの特徴を持つ。
この二つの特徴のうち「動くものを動かなくする」という特徴から意味が広がったのが「皆の共通認識となる重要な物事を決める(例:都を定める)」(語義2)である。そこからさらに「物事を決める」ための手段に目を転じたのが「制度を作る(例:憲法を定める)」(語義3)である。
一方、「目標地点への経路と体勢」という特徴から意味が広がったのが「物事が向かう方向を決める(例:目標を定める)」(語義4)と「決心する(例:覚悟を定めた)」(語義5)である。「語義4」には「物事が向かう」経路が関係している。「語義5」はその経路を作る体勢(心のあり方)に注目した表現である。
























▶全例文を聞く
<到達経路>を
和虎は唇を舌なめずりしながら銃を構え、狙いを定めた。
(辻仁成著 『ニュートンの林檎』, 1999, 913)
ぼくは素早く銃を構えて、敵の方へ照準を定めた。
(北山猛邦著 『『瑠璃城』殺人事件』, 2002, 913)
<様態>
肩に担いだカービン銃を外して、鎮南浦のひとはぴたりと照準を定めた。
(李浩哲著;姜尚求訳 『南のひと北のひと』, 2000, 929)
<物事>を
明治初頭に来日した宣教師たちはこの居留地内に本拠を定め、本来の布教ばかりではなく教育・医療・社会事業など多方面で活躍した。
(川崎衿子著 『蒔かれた「西洋の種」』, 2002, 198)
<規則>を/に/が
日本国憲法は第九条にはっきりと「戦争の放棄」「戦力の不保持」を定めている。
岩井忠正,岩井忠熊著 『特攻』, 2002, 210)
人間はあるがままでよいが、しかし教会はいくつかの道徳上の規定を定め、罪に等級をつけ、悔悛を命じた
(ジャン=ロベール・ピット著;千石玲子訳 『美食のフランス』, 1996, 383)
<内容>を
ただし、加盟国は、特許若しくは効果的な特別の制度又はこれらの組合せによって植物の品種の保護を定める。
(紋谷暢男著 『無体財産権法概論』, 1996, 507)
<様態>
運営方法を明確に定めた規約があれば管理組合は一つの預金者として認められます。
(日本経済新聞社編 『何がどうなるペイオフのすべて』, 2002, 338)
<方向>を
農地の保全や景観を整備する方針を定め、農業振興や観光振興を図ります。
(広報きりしま, 2008, 鹿児島県)
周囲に流されることなく、しっかりと信念を持ち、目標を定めたら、どんな障害があろうとも黙々と前向きに取り組み続けます。
(with, 2001, 一般)
<様態>
その際,目標をしっかりと定め,仮説あるいはモデルをつくって推論し,実験方法を決めて測定し,計算によって結果を求め,それを分析・解釈し考察する。
(高等学校 物理Ⅱ, 2006, 高)
<心>を
このとき護良は金峯山寺の本堂である蔵王堂にいたが、もはや逃れぬところと覚悟を定めた。
(森村誠一著 『太平記』, 2002, 913)
麻沙子が日本にいなかった五年のあいだ、私はもう二十数年間もひたすら考えつづけてきたことを、じっくりと考え直し、結論を出してを定めてしまいました。
( 『宮本輝全集』, 1992, 918)






























学校が定めたことは守らないといけないよな。
複合動詞 V1

思い定める、見定める
複合動詞 V2

品定め、定め事、定書
定める(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
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