定まるのコアイメージ

1.到達経路が不動に自動詞中級★★
表記定まる
放とうとするものの目標地点への到達経路が、体勢を作ることによって動かなくなる。
文型
<到達経路>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
的にねらいが定まった
銃を持つ手が震え、獲物にねらいが定まらない
群れから逃げ遅れた小鹿に狙いを定めた
緊張して手が震え、的にねらいが定まらない
投げ込んでいくうちに、球筋が定まってくる。
大事な試合を前に、制球が定まらずあせっている。
コロケーション
<到達経路>が
ねらい、照準、制球、コントロール、球筋
<目標地点>に
的、標的、獲物
<様態>
ようやく、やっと、ついに、なんとか、どうにか
解説
「語義1」は、「放たれたものの目標地点への到達経路が、体勢を作ることによって動かなくなる(ずれなくなる)」ことを表す。「定まる」前には、「動きやすい(ずれやすい)」状態があり、「定まった」後には「動かない(ずれない)状態が続く」という含みがある。
「定まる」の類義語に「決まる」があるが、この「語義1」の「定まる」は「決まる」に言い換えにくい。すなわち「的にねらいが決まった」と言うより「的にねらいが定まった」と言うほうが自然である。
誤用解説
 弾丸が獲物に定まった
 銃のねらいが獲物に定まった
「弾丸」のように到達までの経路を移動するものは、<到達経路>に含まれない。
類義語・反義語
類義語決まる、安定する
反義語乱れる、動く、ゆれる、ぶれる


2.不変に自動詞中級★★
表記定まる
物事が変動しなくなる。
文型
<(変動し得る)物事>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
住居が定まらないと、生活保護を受けるにも苦労することになる。
学校を出てからしばらくは、定まった収入がありませんでした。
誘いを断ってばかりいると、付き合いの悪い人という評価が定まっていくことになる。
あれこれ迷ってしまって考えが定まらない
あの人は罪を犯し、すでに裁きを受けることも定まっています
ネットの情報には、真偽が定まる前の単なるうわさ話のレベルのものも多い。
コロケーション
<(変動し得る)物事>が
① 所在:居場所、屋敷、住所、国境
② 妥当性判断:考え、評価、真偽
③ 臨時の役割:役、分担
④ 連続的に変化する状態:病状、天気、気候、気温、株価
<様態>
ようやく、やっと、ついに
非共起例
<(変動し得る)物事>が
 この前の選挙で、町議会議員が定まった
 この前の選挙で、町議会議員が決まった
「語義2」は、「変動している状態から変動しない状態へ変化する」ことを表す。「町議会選挙」の前、町議会議員は「変動している状態」だったのではなく「存在していなかった」のであるから、この場合、「定まる」は不適切である。
解説
「語義1」とこの「語義2」との間には、「動かなくなる」という共通点がある。ただし、「語義1」の場合に「動かなくなる」のは「放るものの目標地点への経路」であるのに対し、「語義2」の場合には「(変動する)物事の状態」である。
誤用解説
「語義2」は、「変動しなくなる」ことを表す。つまり「定まる」前には「変動していた」という含みを持つ。したがって、「名前をつけた」ことを言う場合に、
 先日生まれた子の名前が定まりました
と言うのは不自然である。通常「名前を付ける」前に仮の名が付けられていたり、候補として複数の名が明確に決められていたりしているわけではない。
しかし、次のように、複数の名前の候補があることが明確に示されている場合には「定める」も使える。
 皇子のお名前には二つの候補がありましたが、高僧の意見により最初にあげられたお名に定まりました
類義語・反義語
類義語決まる、決定する、確定する、安定する
反義語乱れる、ゆれる、動く、ぶれる


3.規則ができる自動詞中級★★
表記定まる
規則や法ができる。
文型
<規則>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この法律が定まったのは、70年も前のことである。
先日の会議でようやく、出張費に関する内規が定まりました
相続の順位は、民法で定まっている
補助金の申請方法は、規定に定められていますのでそちらをご覧ください。
役職によって手当は定まっています。それ以上は出せません。
健康体操コースはいろいろありますが、受講できるコースは、運動能力によって定まっていますので、その中から選択してください。
コロケーション
<規則>が
協定、憲法、法律、就業規則、掟
<内容が規則>で
国境が協定で、戦争放棄が憲法で、手続きが法で、書式が規則で、大きさは仕様書で
<様態>
厳密に、細かく、大きく、大まかに
<基準>によって
役職、人、身分、能力、支払金額
解説
「語義2」が、「物事が変動しなくなる」ことを表すのに対し、この「語義3」は、規則として制度化することによって「変動しなくなる」ことを表す。
誤用解説
「語義3」の「定まる」における「規則」は社会的に広く認められるものでなければならない。次例のように、クラス内に規則ができることを表すにはふさわしくない。
 学級会でクラスの日直当番のルールが定まりました
 学級会でクラスの日直当番のルールが決まりました
類義語・反義語
類義語決まる、決定する、確定する
反義語


4.型ができる自動詞上級
表記定まる
物事の変動の幅が減り、型ができる。
文型
<型>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
江戸期になると、徐々に証文の書式が定まってくる。
試行錯誤を重ねる中で、ようやく新しいシステムの骨格が定まった
会を重ねるごとに、進行のパタンが定まり、おかげでばたばたしなくてすむようになりました。
発声が繰り返される中で音声の形が定まって記号として作用するようになり、ことばが生まれたのではないかと考えられる。
生まれたばかりの子供は、まだ骨格が定まっていないので、顔の形が大きく変わることがある。
犬にも個性があるが、生まれた個体の性質が定まるにはしばらく時間がかかる。
コロケーション
<型>が
① 形式:形式、形、書式
② 行動の型:投球フォーム、性質
③ ものを作る基礎となる形:骨格、枠組
<様態>
徐々に、だんだん(と)、はっきり(と)
非共起例
<型>が
 体が弱かった太郎も、運動をはじめてから体が定まってきた。
 体が弱かった太郎も、運動をはじめてから体ができてきた。
骨格のように「ものを作る基礎となる形」であれば、<型>の範囲に入るが、「体」は、<型>の範囲には入らない。
解説
「語義2」が、「変動しなくなる」ことを表すのに対し、この「語義4」は、「変動の幅が狭くなる」という過程を経て「変動しなくなり」、何らかの型ができることを表す。
誤用解説
 隣の空き地に建設中の家がついに昨日定まった
 隣の空き地に建設中の家がついに昨日できた/完成した
「家」は「変動の幅が狭くなって型ができる」ものではないため、「定まる」は使えない。
類義語・反義語
類義語決まる、決定する、確定する、できる、安定する
反義語


5.方向性が決まる自動詞中級★★
表記定まる
一連の物事が向かう方向が決まる。
文型
<方向>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
目標は定まった。後は実行のみだ。
議論の焦点すら定まらないまま話し合いは終わった。
教える単元のねらいが定まっていなければ、授業のデザインもできません。
年末の大会に照準が定まることで、チームの結束力が高まったのだと考えられます。
台風の進路が定まらない
方針が定まらないと、何か問題が起こるたびにもう一度初めから考えなおさなければならない。
stairs今のうちから、きちんと目標が定まっていてすばらしいと思うな。
コロケーション
<方向>が
① 方向:方向性、方針、進路、運命、将来
② 方向の先:論点、争点、焦点、目的、ねらい、照準
③ 方向を決める立ち位置:視点、軸足、スタンス
④ 方向への進み方:方法、計画
<様態>
はっきり(と)、明確に、きちんと
解説
「語義1」とこの「語義5」との間には、「動かなくなる」という共通点がある。ただし、「語義1」の場合に「動かなくなる」のは「放ろうとするものの目標地点への経路」であるのに対し、「語義5」の場合には「一連の物事が向かう方向」である。
類義語・反義語
類義語決まる、決定する、確定する、安定する、わかる
反義語


6.心が決まる自動詞上級
表記定まる
心が変わらなくなる。
文型
<心>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今休んでいる時は、決して無駄ではありません。心から迷いが消え、気持ちが定まるために必要な時間なのです。
手を動かして書くことで考えが定まることも多い。
店を続けて行く覚悟が定まったのは、開店後、数年を経た後のことである。
自分が責任を引き受ける覚悟が定まらず、かえって問題をこじらせてしまったとしか考えられない。
長年修行を続け、やっと仏に帰依する心が定まった
出家した者のうち、信心が定まっていると見えるのは、次郎ただ一人である。
コロケーション
<心>が
覚悟、心、気持ち、信心
<様態>
固く、強く
非共起例
<心>が
 決心が定まった
 決心した。
「決心」は「心が変わらなくなる」という意味を含んでいるので、「決心が定まる」は冗長である。
解説
「語義5」は「目標が定まる」のように、「一連の物事が向かう方向」が「動かなくなる」ことを表す。その時には、その方向へ進む「心を決める(決心をする)」ことになる。これがこの「語義6」である。
誤用解説
 昨日太郎君とけんかしちゃったけど、私から謝ろうと心が定まったよ。
 昨日太郎君とけんかしちゃったけど、私から謝ることにしたよ。
「語義6」は、長い間、気持ちが決まらなかったものが、決まることを表す。昨日から今日にかけてすぐに結論が出るような、軽い内容について述べるには不適切である。
類義語・反義語
類義語決まる、決定する、確定する
反義語


7.視覚が制御される自動詞上級
表記定まる
対象の認識ができるように、視覚の制御が可能になる。
文型
<目の働き>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
高熱のせいか、目がうつろで焦点が定まらない
ベンチに座った男が、焦点の定まらない目でこちらを見ている。
もらった薬を飲むと、視界がゆがんで視点が定まらなくなってきた。
不安に押しつぶされそうになりながら、視点が定まらないまま町をさまよった。
警察に駆け込んできたその子は、大きなショックを受けているらしく、視線が定まっていなかった
視力が落ちたせいか、ボールを追う目線がしっかりと定まらず、動きが遅くなってしまう。
コロケーション
<目の働き>が
① 視線:目線、視線
② 視線の向かう先:視点、焦点
③ 目の動き方:目つき
④ 視覚機能を担う部分:瞳
非共起例
<目の働き>が
 目が定まらない
 瞳が定まらない
<目の働き>は「視覚機能を担う部分」であってもよいが、それはものを見るときに、対象に向かって焦点をあわせる「瞳」でなければならない。
解説
「語義1」とこの「語義7」との間には、「(何かが)目標地点に到達する経路が変動しなくなる」と言う共通点がある。ただし「語義1」の場合には到達するのが「矢」などの「もの」であるのに対し、この「語義7」の場合に到達するのは、ものを見るための目の力である。
誤用解説
 いつも視線が定まっている
 いつも視線が定まっていない
「視線が定まる」のは通常の状態である。したがって「いつも視線が定まっている」とあえて言うのは不自然である。
次のように言うのは、視覚制御ができない異常な状態から制御できる状態になったという、かなり特殊な場合である。
 太郎は焦点が定まった目でこちらを見ている。
類義語・反義語
類義語安定する
反義語乱れる、動く、ゆれる、ぶれる


8.体勢が制御される自動詞上級
表記定まる
身体を支える体勢が、制御可能になる。
文型
<身体を支える体勢>が定まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大きな荷物を持っていたので足元が定まらず、よろけて転んだ。
酔っ払っているせいか、足元が定まらないのが自分でもわかる。
腰が定まらないと、物を持ち上げるにも力が入りませんよ。
身体の軸が定まらないと転びやすい。
体の重心が定まらず、ぐらぐらしているときれいに歩けない。
歯のかみ合わせをよくすると、身体の重心が定まってきて、疲れにくくなります。
stairs足元も定まっていないじゃない。
コロケーション
<身体を支える体勢>が
足元、腰、姿勢、重心、身体の軸
<様態>
しっかり(と)
非共起例
<身体を支える体勢>が
 足が定まらない
 足元が定まらない
<身体を支える体勢>として「足」を使うことはできない。これに対し「足元」は、身体を支える上で望ましい位置があり、そこからずれることがあり得るため、使うことができる。
解説
「語義7」とこの「語義8」との間には、「体勢ができる」という共通点がある。ただし「語義7」の場合は「視覚認知」の体勢ができることを表すのに対し、この「語義8」の場合には、「身体を支える」体勢ができることを表す。
誤用解説
 彼はいつも足元が定まっている
 彼はいつも足元が定まっていない
「足元が定まる」のは、通常の状態である。したがって、「いつも足元が定まっている」とあえて言うのは自然ではない。
類義語・反義語
類義語安定する
反義語乱れる、動く、ゆれる、ぶれる


定まるの全体解説 「定まる」は、「放たれたものの目標地点への到達経路が、体勢を作ることによって動かなくなる(例:ねらいを定める)」(語義1)ことを基本的な意味とする。類義語に「決まる」がある。「決まる」が可能性の限定されることに注目した広い意味を持つ語であるのに対し、「定まる」は、「基準からずれて動く目標地点へ到達経路」が、「体勢によって動かなくなる(ずれなくなる)」という形で可能性を限定することを表す。すなわち「動くものが動かなくなる」「目標地点への経路と体勢がかかわる」という二つの点が特徴的である。
この二つの特徴のうち、「動くものが動かなくなる」という点で「語義1」と共通点を持つのが「物事が変動しなくなる(例:ようやく住むところが定まった)」(語義2)である。「語義2」からさらに「語義3」「語義4」へ意味が広がる。これは、「変動しなくなる(語義2)」原因や「変動しなくなった(語義2)」結果を表す方向への意味の広がりである。すなわち「語義3」は、「変動しなくなる」際の原因が「制度ができる」こと、すなわち「規則ができる(例:相続の順位は民法で定まっている)」(語義3)ことを表す。一方の「語義4」は、「変動しなくなり」その結果「型ができる(例:生まれたばかりの子供は骨格が定まっていない)」(語義4)ことを表す。
また、「目標地点への経路と体勢」という特徴が主に関与して意味が広がっていくのが「語義5」から「語義7」である。「一連の物事が向かう方向が決まる(例:目標が定まった)」(語義5)ことには、経路の概念が関係している。また、「心が変わらなくなる(例:覚悟が定まる)」(語義6)は、「経路を作る体勢」に注目した表現である。「対象の認知ができるように、視覚の制御が可能になる(例:視線が定まらない)」(語義7)にも、目から認識対象までの経路の概念が関係している。
「身体を支える体勢が制御可能になる(例:荷物が重くて足元が定まらない)」(語義8)については経路の概念がかかわらないが、「基準からずれにないように体勢を作る」という点で「語義7」と共通する特徴を持つ。
























▶全例文を聞く
<到達経路>が
打撃投手のコントロールが定まらず、これじゃ練習にならんわ、といった風情で前田がバットを思いきり投げ捨てたことがあった。
(中田潤ほか執筆 『背番号三桁』, 2004, 783)
<(変動し得る)物事>が
たとえ偽名を使って会社に入ろうとしても、住所が定まらないような者を雇う会社はないだろう。
(龍一京著 『時効捜査官』, 2000, 913)
<型>が
何発か撃ったものの、フォームが定まらず戸惑っている様子だった。
(キム・ウンスク,カン・ウンジョン脚本;ユ・ホヨン著;長谷川由起子訳 『パリの恋人』, 2005, 929)
<方向>が
節子はすでに結婚したことを自覚し、啄木の人生の方向が定まるまで、たとえ形だけでも自立することを考えた。
(沢地久枝著 『石川節子』, 1981, 289)
<心>が
だから、一念、弥陀に帰依して信心が定まるというのは、この摂取の光明にふれた時点をさして、信心が定まるときというのだ。
(笠原一男著 『蓮如』, 1996, 188)
<目の働き>が
視線が一か所に定まらず、狭い貧しいアパートの室内を目でうろうろとさまよった。
(乃南アサ著 『幸福な朝食』, 1988, 913)
しかし、矢崎に向けた房子の眼は虚ろで、焦点が定まっていなかった。
(白樫雅規著 『外科医のメス』, 2003, 913)
<身体を支える体勢>が
肩に美摩子を担いでいるから、足下が定まらない。
(菊地秀行著 『紅蜘蛛男爵』, 2002, 913)
このようにして手足の姿勢が定まると、今度は体をまっすぐに立てます。
(高田明和著 『五〇歳からの元気な脳のつくり方』, 2004, 498)






























今のうちから、きちんと目標が定まっていてすばらしいと思うな。
足元も定まっていないじゃない。
腰が定まらない

意味
態度が決まらない。
用例
不測の事態に対処しなければならない時なのに、組織の長はおろおろするばかりで腰が定まっていない
コーパスからの用例
時には、大臣馬子が実権を握るのではないか、と思ったり、大王の信任は守屋にあると感じたり、腰が定まっていない。(黒岩重吾『磐舟の光芒』)
定まる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形さだ
ない形さだまない
~なかったさだまなかった
ます形さだまり
~ませんさだまりま
~ましたさだまりした
~ませんでしたさだまりまんでした
~ときさだるとき
ば形さだれば
意向形さだま
て形さだって
た形さだった
可能形
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