収まる・納まる・治まるのコアイメージ

1.収納自動詞初級★★★
表記収まる・納まる
ものが、(そのものが存在するのにふさわしい)あるところにきちんと入る。
文型
<もの>が<場所・もの>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
本が書棚に収まりました
全ての製品が、なんとか倉庫に納まったようです。
「山田さん、どの程度のお金があの金庫に収まっているのですか」「詳しくはお伝えできませんが、相当な大金であることは間違いありません」
昨日山田さんから、美しい桐箱に収まった極上のカステラをいただきました。
決して広くはないこのスペースには、あれだけの家財は収まらないのではないだろうか。
当然ながら、刀の反りと鞘の反りが合っていないと、刀は鞘に納まりません
コロケーション
<もの>がおさまる
本、製品、金、刀、物
<場所・もの>におさまる
棚、倉庫、箱、鞘、(~の)中
<様態>おさまる
すっぽり、なんとか、ぴったり、ようやく、すぐ
非共起例
<もの>がおさまる
 犬が小屋に納まる
 犬が小屋に入る
 コップに水が収まっている
 コップに水が入っている
 タイヤに空気が納まった
 タイヤに空気が入った
ガ格名詞の<もの>は通常、無生物で、かつ固体である。
解説
語義1は、「おさまる」の最も基本的な意味である。語義1では、「棚」や「倉庫」などの場所や、「箱」、「鞘」、「容器」など一定の空間的拡がりを有する物体を表すニ格名詞(句)が必須項となる。そして、これらのニ格名詞(句)によって表される空間領域は通常、ガ格名詞(句)によって表される<もの>(必須項)が存在するのにふさわしい領域である。
誤用解説
ものがある空間領域にきちんと入っているという状態を生じさせた人を明示する際には、通常、「おさまる」ではなく「おさめられる」が用いられる。
 その荷物は、社員たちによって全て倉庫に納まった
 その荷物は、社員たちによって全て倉庫に納められた
類義語・反義語
類義語入る
反義語出る


2.収録自動詞中級★★
表記収まる・納まる
作品や情報が、ある媒体に取り入れられる。
文型
<もの>が<もの>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
詩集に、山田氏の詩が収まっています
「来月、秘蔵映像がかなりたくさん収まったライブDVDが発売されるらしいですよ」「そうなんだ。じゃあ、絶対に買わなきゃね」
このデータは、容量1GBのUSBメモリにはとても収まらない
記者は、多くの機密情報が収まっていたディスクを紛失したことが原因で失職した人物への取材を試みた。
こちらは、鈴木氏の処女作が納まっている文芸誌です。
父の勤務している新聞社が公開しているオンラインデータベースには、創刊から現在に至るまでの全ての紙面が納まっているそうです。
コロケーション
<もの>がおさまる
作品、論文、映像、データ、情報
<もの>におさまる
本、作品集、論集、ディスク、データベース
<様態>おさまる
なんとか、きちんと、ちょうど、しっかり、ほぼ
非共起例
<もの>が<もの>におさまる
 新聞に広告が収まる
 新聞に広告が載る
 名前が名簿に収まる
 名前が名簿に載る
新聞、雑誌、名簿など(紙媒体)に文字情報が書き記される場合には、「おさまる」ではなく「載る」を用いる。
解説
語義2は語義1と、ある<もの>が何らかの領域に入るという点では共通している。但し、語義1では<もの>が具体物であるのに対し、語義2では作品や情報(文字情報、音声情報、視覚情報)である。また、語義1では<もの>が入る領域が空間領域(場所)であるのに対し、語義2では本、論集、データベースをはじめとした(情報)媒体である。なお、語義2ではガ格名詞(句)で表される作品や情報は、ニ格名詞(句)で表される媒体の構成要素である。
類義語・反義語
類義語入る、載る
反義語


3.撮影・録音自動詞中級★★
表記収まる・納まる
もの、生物、景色、出来事などが、ある機器によって撮影あるいは録音される。
文型
<もの・人・動物・こと>が<もの>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
美しい桜が、写真に収まった
「あの展望台からは、富士山は逆光でほとんどカメラに収まりませんよ」「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
運動会での息子の活躍が、ビデオに収まっています
ネイチャーフォト撮影では、その場で被写体がフィルムに納まらなければ、二度と同じ被写体には巡り合えないと言っても過言ではない。
青木先生の努力で、2年生全員が何とかフレームに収まった
会議の一部始終が、このICレコーダーに収まっています
stairs旅行の写真、ぜんぶ収まってたんで…。
コロケーション
<もの・人・動物・こと>がおさまる
植物、風景、被写体、活躍、様子
<もの>におさまる
写真、カメラ、ビデオ、フィルム、ICレコーダー
<様態>おさまる
なんとか、きちんと、ちょうど、しっかり、ちゃんと
解説
語義3は語義1と、ある存在がある領域に入る(存在するようになる)という点では共通している。但し、語義1ではある存在が具体物であるのに対し、語義3では具体物、生物、景色、出来事など様々である。また、語義1ではある存在の位置変化が生じることを表すのに対し、語義2では位置変化ではなく、撮影あるいは録音を表す。(つまり、ある事物がデータとして撮影・録音機器の内部に存在するようになるという、対象の状態変化である。)
誤用解説
対応する他動詞である「おさめる」に関しては、ある機器が、撮影あるいは録音といった行為において必要となる道具であるという側面が焦点化されると、「絶景をカメラで収める」のようにデ格名詞(句)で表される。一方、「おさまる」の語義3では、ニ格名詞(句)をデ格名詞(句)に置き換えることはできない。
 息子たちが、写真収まっている。
 息子たちが、写真収まっている。
類義語・反義語
類義語写る
反義語


4.遺体・遺骨・遺品の処理自動詞中級★★
表記収まる・納まる
人や動物の遺体、遺骨、遺品が、墓所や土中などにきちんと入る。
文型
<人・動物・もの>が<場所>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
王の亡骸と遺品が、棺に収まりました
土葬とは、棺に収まった遺体を、地中に埋葬することです。
かつて、この石棺にツタンカーメンのミイラが納まっていたらしい。
「遺骨は、遺族での骨上げの後、すぐに墓所に納まるということでしょうか」「いいえ、一度自宅に持ち帰るケースもあります」
足の方から頭の方へと順に拾われたお骨が、この骨壺に収まります
こちらは、戦没者の遺骨が納まっている慰霊塔です。
コロケーション
<人・動物・もの>がおさまる
遺体、亡骸、故人、遺骨、遺品
<場所>におさまる
棺、石棺、木棺、墓(所)、骨壺
<様態>おさまる
きちんと、なんとか、すでに、ちゃんと、ようやく
解説
語義1は、あるもの(具体物)が好ましい(望ましい)場所に入ることを表すが、語義4はその一種である。語義1はあるものが無生物であるのに対し、語義4は人や動物の遺体、遺骨、遺品に限定される。また、語義1ではあるものがある場所に入る理由が、保管(管理)や貯蔵であるのに対し、語義4ではより限定的に、(埋葬をはじめとした)遺体、遺骨、遺品の適切な処理である。
誤用解説
遺体、遺骨、遺品をある場所に入れる人を明示する場合には、「おさまる」を用いることはできず、通常、「おさめる」の受身形を用いる。
 王の亡骸は、家臣たちによって棺に納まった
 王の亡骸は、家臣たちによって棺に納められた


5.範囲内自動詞中級★★
表記収まる・納まる
あるものや物事の数量が、一定の範囲内になる。
文型
<もの・こと>が<数量>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ハンドアウトが、A4用紙1枚に収まった
山野先生のご助言によって、原稿の枚数がなんとか規定内に収まりました
今月の食費は、さすがに5万円には納まらなかった
「暮らしを圧迫しないためには、家賃が月収の25%以内に収まるといいらしいよ」「へえ、そうなんだ。アパート選びの参考にするね」
シフト自由のパートなら、勤務先と相談して勤務時間を調整し、年間の収入額も自分の希望の範囲に収まりやすい場合が多い。
ローンを組むとしても、返済期間が5年程度に収まるならば、リスクもそれほど高いものではありません。
コロケーション
<もの・こと>がおさまる
原稿、枚数、食費、家賃、返済期間
<数量>におさまる
1枚、5年程度、10万円以内、規定内、範囲(内)
<様態>おさまる
なんとか、きちんと、しっかり、たぶん、どうにか
非共起例
<数量>におさまる
 ハンドアウトの枚数が範囲に収まった。
 ハンドアウトの枚数が規定の範囲に収まった。
 ハンドアウトの枚数が適切な範囲に収まった。
必須項のニ格名詞が「範囲」である場合、それ単独で用いることはできず、「規定の範囲」、「適切な範囲」など、どのような範囲なのかを示す「名詞+の」、あるいはナ形容詞といった要素を「範囲」という名詞の前に付加する必要がある。
解説
語義5は語義1と、ある存在が一定の範囲内に存在するようになるという点では共通している。但し、語義1ではその存在が具体物であるのに対し、語義5は「原稿」、「食費」、「返済期間」をはじめとした、数値化できる事物である。また、語義1では、一定の範囲は空間領域(場所)であるのに対し、語義5では数量(的範囲)である。なお、語義5における数量(的範囲)に関して、「数量詞+に」のような形式で表すケース、「数量詞+程度に」、「数量詞+以内に」のような形式で表すケース、「規定内に」、「数量詞+の範囲(内)に」のような形式で表すケースが一般的である。また、「3ページから5ページ(の範囲)に」のように、カラ格とニ格を用いて表す場合もある。
類義語・反義語
類義語
反義語超える


6.納入自動詞中級★★
表記納まる
(義務によって、一定の期限内に、一定の分量の)金銭やものが、ある組織、地域(国や地方自治体)、人に渡される。
文型
<もの>が<組織・地域・人>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
そのお金は、国庫に納まる
県税事務所から、「名義変更をなさった年の自動車税が納まっていないようです」という電話があった。
この神社には、大きな神輿が納まっているそうです。
質の高い製品が、期限内にお客様に納まり、社員一同ほっと胸をなでおろした。
期限が過ぎても使用料が納まっていない 場合は、利用団体に連絡を入れ、速やかに納めるよう指導してください。
例えば消費者が小売店で何かを購入すると、消費税は事業者を介して税務署に納まることになります。
コロケーション
<もの>が納まる
保険料、税金、会費、製品、神輿
<組織・地域・人>に納まる
国庫、税務署、自治体、神社、お客様
<様態>納まる
きちんと、しっかり、すぐに、きっちり、すでに
非共起例
<もの>が納まる
 プレゼントが友達に納まる
 プレゼントが友達に渡る
 顧客にサービスが納まる
 顧客にサービスが提供される
語義6では、必須項となるガ格名詞(句)は、通常、義務として一定の期限内に受け取る側に渡すべきである、一定の分量の金銭やもの(具体物)を表す名詞(句)に限定される。
解説
語義6は語義1と、あるものが、それが存在するのにふさわしい(適切な)領域に存在するようになるという点では共通している。但し、語義1では保管(管理)や貯蔵を目的としたものの移送を表すのに対し、語義6では金品の(主に義務的な)納入を表す。また、移送先の領域が、語義1では空間領域(場所)であるのに対して、語義6では組織(企業、寺社など)、地域(国、地方自治体など)、人(顧客など)であるという違いもある。


7.入手自動詞上級
表記収まる・納まる
あるもの、物事、場所、組織などが、人や組織によって手に入れられる。
文型
<もの・こと・場所・組織>が<領域>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ついに四国も、秀吉の手中に収まった
巨大な富が、ほんの一握りの人間の手中に納まっている、というのが現実です
「どうも、関連会社20社が我が社の傘下に収まるかもしれないということです」「やはりあの新社長、只者ではないですね」
一度掌中に収まった地位や権力を、人はなかなか手放そうとはしないものだ。
事務所の所属アーティストの活躍によって生まれた利益のほとんどが、あの悪徳マネージャーの懐に収まっているのではないだろうか。
王には、どうしても支配下に収まろうとはしない部族に対しては、一族皆殺しの見せしめをなす徹底さがあった。
stairs望むものはほとんど手中に収まったって、自慢話をいっぱい聞かされたよ。
コロケーション
<もの・こと>がおさまる
富、資金、利益、地位、権力、利益
<場所・組織>がおさまる
世界、一帯、(関連)企業、(関連)会社、部族
<領域>におさまる
手中、傘下、掌中、懐、支配下
<様態>おさまる
なんとか、ようやく、すぐ、徐々に、ほぼ
解説
語義7は語義1と、ある存在が、行為主体によってある領域に存在させられるという点で共通している。但し、語義1では行為主体は通常、人であるが、語義7では人あるいは組織(企業、軍、国家など)である。また、語義1ではある存在は具体物に限定されるが、語義7では具体物(金品や資源など)に加え、物事(権利、権力、利益など)、場所(領土など)、組織(企業など)の場合がある。さらに、語義1ではある領域が空間領域(場所)であるのに対し、語義7では行為主体自身である。すなわち、語義7では、行為主体によって、ある事物が、自身の所有物として入手される(あるいは支配下に置かれる)ことを表す。
誤用解説
対応する他動詞「おさめる」語義7には、「(どうぞ)納めください」という周辺的用法がある。これは、ガ格名詞(句)やニ格名詞(句)を伴わず、人が相手に、金品を受け取ることを丁寧に勧める際の定型表現である。この用法に対応する用法は、「おさまる」には存在しない。


8.定着自動詞中級★★
表記収まる・納まる
人が、ある立場を受け入れ、その状況が継続する。
文型
<人>が<立場>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
栗本さんが社長に収まった
「山本さんは、まさか自分が理事に収まろうとは思っていないんじゃないかな」「いや、あの人なら、そう思いかねないんじゃないかな」
かつての日本には、女性社員に対して、長年勤務して会社の重要なポジションにいずれは収まってほしい、そしていっしょに会社の屋台骨を支えてほしい、と思うような経営者がほとんどいなかったのではないだろうか。
中小企業はもちろん、大企業でも、創業家の子息が社長の座に収まることが多い。
彼女は、政略結婚によって第一王妃の地位に収まってはいるものの、良い評判は聞かない。
通常は、当選回数を重ね、大臣や党の要職ポストを歴任した者が首相に収まるわけです。
コロケーション
<立場>におさまる
社長、理事、首相、ポジション、座
<様態>おさまる
なんとか、ようやく、ついに、のうのうと、ずっと
解説
語義8は語義1と、ある存在が、(望ましい)領域に存在するようになるという点では共通している。但し、語義1ではその存在が具体物であるのに対して、語義8では人である。また、語義1ではその領域が空間領域(場所)であるのに対して、語義8では立場(身分)である。なお、「<立場>に」という必須項に関して、「社長に」、「首相に」のように、ある立場を表す名詞に「に」が後続するケースがある一方、「社長の座に」、「首相の地位に」のように、ある立場の総称としての名詞(座、地位、ポジションなど)が用いられるケースもある。
誤用解説
語義8には、対応する他動詞「おさめる」の語義は存在しない。
 理事長が、鈴木氏を社長におさめた
 理事長が、鈴木氏を社長にした


9.視覚による把握自動詞中級★★
表記収まる・納まる
あるもの、人、景色、場所(範囲)が、ある人の視覚によってきちんと把握される。
文型
<もの・人・場所>が<領域>におさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
一面の海が、彼女の視野に収まった
あの国は、隣国が射程に収まった短距離弾道ミサイルを多数保有しているらしい。
オペラグラスを使えば、舞台上の俳優の姿もしっかり視界に納まるはずです。
橋の上からは、雄大な富士山、駿河湾、伊豆の山並みなど、目に収まりきらないほどの大自然のパノラマが堪能できます。
あの丘に登ると、のどかな田園風景が眼下に収まる
網膜は眼球の奥全体に広がっているので、一点を見つめていても、上下左右の広い範囲が同時に視野に収まるのだそうです。
コロケーション
<もの・人・場所>がおさまる
姿、隣国、光景、風景、絶景
<領域>におさまる
視野、視界、目、眼下、射程
<様態>おさまる
なんとか、しっかり、全て、初めて、たぶん
非共起例
<領域>におさまる
 村一帯からは、頂上が眼下に収まる。
 頂上からは、村一帯が眼下に収まる。
「眼下におさまる」という形式は、上方に存在する人の視覚によって下方(一帯)が捉えられることを表す。したがって、下方に存在する人の視覚によって上方が捉えられる際には用いることができない。
解説
語義9は語義1と、あるものがある領域にきちんと存在するようになることを表すという点では共通している。但し、語義1では具体物がある空間領域(場所)に存在するようになるのに対し、語義9では具体物、人、場所などが人の視覚によって捉えられる(人の視覚の範囲内に存在するようになる)ことを表す。なお、「視野におさまる」、「視界におさまる」、「目におさまる」、「眼下におさまる」という場合には、視覚によって直接的にある存在が捉えられることを表す。一方、語義9の周辺的な用法である「射程におさまる」という場合には、銃砲、大砲、ミサイルなどの、発射の起点と着弾点との水平距離が、視覚によって把握される(視覚に基づいて規定される)ことを表す。


10.統治自動詞中級★★
表記治まる
土地(領土)や人々が、(ある人によって)秩序ある安定した状態になる。
文型
<場所・人>が治まる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
40年間、その国は平穏に治まっていた
「やがて、この戦乱の世も治まることとなろう」「根拠がおありなのでしょうか」
奈良時代から平安時代にかけては、中央から国司が送られたことによって地方がしっかり治まったと言えます。
約2000年前、この一帯がしっかり治まっていたのは、その首長の存在によるところが大きいと思われる。
ダムがあることで、水は穏やかに治まるのです。
一国の在り方を考える前に、まずは、自身の家庭がどうすれば治まるのか考えなければならない。
stairsまさにスポーツのお蔭で学校が治まっているのね。
コロケーション
<場所・人>が治まる
国(家)、世(の中)、水、家(庭)、人(民)
<様態>治まる
よく、かつて、なんとか、再び、平穏に
非共起例
<人>が治まる
 一人の男が治まる。
 息子が治まる。
 人民が治まる。
 家(庭)が治まる。
必須項となるガ格名詞(句)は、必ず、複数の人を表す名詞(句)である。
解説
語義10は語義1と、ある存在が望ましい(安定的な)状態になるという点で共通している。但し、語義1では具体物がある場所にきちんと入ることを表すのに対し、語義10ではある場所(領土)やその場所に生きる人々が、秩序ある安定した状態になることを表す。なお、語義10では、例えば「国が治まる」場合、為政者がある国の争いや混乱を鎮めて安定した状態にし、それが維持される場合もあれば、そもそも最初から争いや混乱が生じない状態が維持される場合もある。


11.事柄の安定化自動詞中級★★
表記治まる・収まる・納まる
好ましくない状態にある事柄が、穏やかな安定した状態になる。
文型
<こと>がおさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
暴動がようやく治まった
私は、市販の薬では肌荒れの症状は治まりませんでした。
大統領は、社会的混乱が収まらなかった責任を取って、辞職した。
「ステロイドには、皮膚の炎症が一時的に治まる効果はあります」「一時的に、ということは、ステロイドは根本的な解決には繋がらないということでしょうか」
クレーム対応は、ただその場が納まれば良いというものではありません。
大洪水は、村人たちの尽力によって何とか治まりました
コロケーション
<こと>がおさまる
暴動、混乱、症状、場、洪水
<様態>おさまる
なんとか、無事(に)、ようやく、遂に、やがて
非共起例
<こと>がおさまる
 が治まる。
 が治まった。
 肌荒れ(の症状)が治まる。
 体の痛みが治まった。
語義11が肉体的な安定化に関して用いられる場合、必須項となるガ格名詞(句)は「肌」、「体」など身体(部位)そのものを表す名詞(句)ではなく、身体の好ましくない状態を表す名詞(句)である。
解説
語義11は語義10と、ある存在の安定化を表すという点では共通している。但し、語義10ではその存在が土地(領土)や人々の状態であるのに対し、語義11では何らかの事柄(出来事、肉体的な症状など)である。また、語義10では安定に至るまでの変動は必ずしも必要ないのに対し、語義11では「おさまる」が、何らかの不安定な状態を経た上での安定化を表すという違いもある。なお、語義11では必須項となるガ格名詞は、「暴動」、「混乱」、「洪水」、「痛み」など、不安定な状態を表す名詞であるケースがある一方、「事態」、「場」のように、それ自体には不安定な状態であるという意味特徴が含まれない名詞であるケースもある。(その場合にも、特にマイナスの意味特徴を含む要素を付加せず「事態がおさまる」、「場がおさまる」という形式のみによって、不安定な状態の安定化を表せる。)
類義語・反義語
類義語鎮まる
反義語荒れる


12.精神の安定化自動詞中級★★
表記収まる・治まる・納まる
ある人(他者あるいは自身)の好ましくない状態、あるいは正常ではない状態にある精神が、落ち着いた状態になる。
文型
<精神>がおさまる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
息子への怒りがようやく収まった
澤田さんは、取り乱した気持ちが収まらなかったようです。
「しばらくして、何とか怒りも治まったんです」「よく、堪えられましたね」
あなたが話しかければ、あの人の苛立ちも収まるかもしれません。
兄は、どうにも機嫌が収まらなかったようです。
相手に罵詈雑言を浴びせることで、自身の腹立ちが収まるとしても、それは望ましい在り方とは言えない。
コロケーション
<精神>がおさまる
怒り、苛立ち、腹立ち、気持ち、感情
<様態>おさまる
なんとか、どうにか、きっと、ようやく、いずれ
解説
語義12は語義11と、人がある状態を安定化させることを表すという点では共通している。但し、語義11では好ましくない状態にある事柄が、五感によって知覚可能な事柄(主に出来事や肉体的症状)である。これに対して、語義12では自身あるいは他者の精神(感情)であるという違いがある。なお、語義12では、「怒りが収まる」、「苛立ちが収まる」のように、好ましくない精神状態(負の感情)の安定化を表すケースがある一方、例えば「気持ちの高まりが収まった」、「喜びが収まらない」のように、正常(通常)の落ち着いた状態ではない精神の安定化を表すケースもある。
誤用解説
語義12に対応する他動詞「おさめる」の語義12では、安定化の対象は好ましくない精神状態に限定される。
 彼は、湧き上がる喜びを収めた
 彼は、湧き上がる喜びを抑えた
類義語・反義語
類義語鎮まる
反義語


収まる・納まる・治まるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>がおさまる
夕方帰ってくるともうがガレージに納まっている。
(Yahoo!ブログ, 2008, 日本)
<場所・もの>におさまる
製図用具ってのは、ケースに納まっているとこを見ると、ほれぼれするほど美しい。
(神吉拓郎著 『たたずまいの研究』, 1989, 914)
<様態>おさまる
大屋根の軒が南に三メートルも張り出し、その下に幅二メートルものバルコニーがすっぽり納まっている。
(宮下正次著 『炭はいのちも救う』, 2005, 652)
<もの>におさまる
このときは、手順9の画面で[1枚のDVDに収める]をクリックすると、1枚のDVDメディアに収まるように画質を自動的に調整して、書き込むことができます。
(小寺信良,できるシリーズ編集部著 『できるCD & DVD作成』, 2004, )
<もの>におさまる
行動の一部始終が、家から持ち出された高感度ビデオに収まっている。
(塚本青史著 『水無月祓』, 1999, 913)
<もの・こと>がおさまる
ヘッダー・フッター領域に文字が収まらなくなった場合は、自動的に本文の領域が狭められてしまいます。
(相澤裕介著 『Wordの掟』, 2004, )
<数量>におさまる
なるほど、末野が示した片道の距離数は、若干の相違はあるけれど、四回とも二五〇キロ〜二八〇キロの範囲に収まっている。
(内田康夫著 『沃野の伝説』, 2005, 913)
<立場>におさまる
民間企業の役員に収まりながらも、戦線を俯瞰しての独創的な見解は、堀ならではのものだと、山本はこころを躍らせた。
(原田治著 『艨艟の覇者』, 2003, 913)
<こと>がおさまる
恐怖の中、彼は目を固く瞑り、一心不乱にこの騒ぎが収まることを祈っていた。
(皆川ゆか著 『《世界》。』, 2004, 913)
しかし戦火が収まったら再びウィーンに戻ろうとして、模様眺めでヨーロッパの他都市に留まった人たちは、そこを制圧したナチスの手で強制収容所に送られる結果となった。
(堀野収著 『ウィーン素描』, 1997, 293)
<精神>がおさまる
それで怒りが収まるわけじゃないけど、話したら、スッとするかなってさ。
(水島忍著 『ガラスの森のキスで目覚めて』, 2005, 913)
母はもう一緒に暮らしたくないと言っていますが、謝罪があれば少しはが収まると私は思っています。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)






























旅行の写真、ぜんぶ収まってたんで…。
望むものはほとんど手中に収まったって、自慢話をいっぱい聞かされたよ。
まさにスポーツのお蔭で学校が治まっているのね。
腹の虫が収まらない

意味
とても腹が立って、我慢できない
用例
チームがあまりにもひどい負け方をしてしまったので、監督はどうしても腹の虫が収まらないようだ。
コーパスからの用例
日本人をそこまで侮辱されては腹の虫が収まらねえ。(北杜夫著 『大日本帝国スーパーマン』, 1987, 913)
元の鞘に収まる

意味
一旦仲違いし、絶交または離縁した2人が、再び元の間柄に戻る。
用例
あれだけ激しい喧嘩をした2人が、元の鞘に収まるとは、到底思えない。
コーパスからの用例
その際両親は、私や第三者も巻き込んで数ヶ月にわたる大喧嘩をしたあげく、最終的にはいろいろとうやむやなままなんとなく元の鞘に収まりました。(女性関係の問題で妻(母)を泣かせる夫(父)。妻(娘)はどうしたらいいのでしょうか? - 夫婦・家族 - 教えて!goo)
複合動詞 V1

収まり切る、収まりかける、収まり始める、収まり過ぎる、収まり出す、収まり続ける、収まり返る
複合動詞 V2

揺れ収まる、しまい収まる、入り収まる、言い収まる、並び収まる
複合名詞

収まり具合、収まり方、収まりどころ、収まりよう
収まる・納まる・治まる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形おさ
ない形おさまない
~なかったおさまなかった
ます形おさまり
~ませんおさまりま
~ましたおさまりした
~ませんでしたおさまりまんでした
~ときおさるとき
ば形おされば
意向形おさま
て形おさって
た形おさった
可能形おさま
受身形おさまら
使役形おさまら
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