置くのコアイメージ

1.物を位置づける他動詞初級★★★
表記置く
物をある場所に存在させる。
文型
<人>が<物>を<場所>に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は大金を投じて手に入れた壷を床の間にうやうやしくそっと置いた
点字ブロックの上には絶対に何も置くな
パソコンのデスクトップに今作成したファイルを置きましょう
(試験の時の注意)机の上には受験票と筆記用具以外の持ち物を置いてはいけません
実験室の真ん中に大きな段ボール箱がどーんと置かれているではないか。
「すみません。ここにしばらく荷物を置かせていただけませんか?」「かまいませんよ」
コロケーション
<物>を
手、グラス、荷物、カップ、箱、車、本
<場所>に
机の上、床、デスクトップ
誤用解説
置かれるものは<物>であるのが普通である。
 子供はぬいぐるみをベッドに置いた。
しかし、<人>や、特にペットのような<生物>等を「置く」という表現は生き物を物扱いしているようで不自然に感じられる。
 看護士は赤ん坊をベッドに置いた
 看護士は赤ん坊をベッドに載せた[寝かせた]
 太郎は飼い犬を毛布の上に置いた
 太郎は飼い犬を毛布の上に載せた[横たえた]
また、「置く」は平らな場所にものを存在させる時に使う。ポケットや靴箱のような容器のような場所の場合には使いづらい。
 財布をポケットに置く
 財布をポケットに入れる
 靴を靴箱に置く
 靴を靴箱に入れる
類義語・反義語
類義語位置づける、据える、載せる
反義語


2.施設を設置他動詞中級★★
表記置く
施設や設備を機能を果たす場所に設ける。
文型
<人>が<場所>に<施設や設備>を置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「当デパートは各階に喫煙室を置いておりますので、ご利用ください」
女性社員が多い大企業でさえ主要営業所に保育所を置いていない所が少なくない。
「彼は京都に本拠地を置く大企業に就職できたそうだよ」「それはよかったね」
この大学にも広報室を置けばいいと思う。
部長は海外にも支社を置くべきだと主張した。
この学校には夜間課程が置かれていたが、経済的理由で廃止されてしまった。
コロケーション
<施設や設備>を
本部、事務所、本社、本拠地、拠点、機関
類義語・反義語
類義語設置する、設ける、開設する
反義語廃止する


3.人材を配置他動詞中級★★
表記置く
人を役割を果たすことができる場所に配置する。
文型
<人>が<人>を<場所>に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
全ての派出所(はしゅつじょ)に警官を置く必要がある。
「各校に1名ずつカウンセラーを置きたいのですが」「それは予算上無理だよ、君」
職員が全員出払う場合、事務所に1人は留守番を置かないと不安だ。
学生寮には必ず寮監(りょうかん)を置かなくてはならない決まりだ。
この規模のビルなら、夜間でも警備員を複数名置くべきだ。
貴社の社長は秘書を5人も置いていらっしゃるとうかがいました。
コロケーション
解説
<人>が<人>を<機能>に置く。という文型でも同じ意味を表す事が出来る。例えば、
 その政治家は次男を秘書に置いた。
 社長はたくさんの資格を持つ有能な社員を秘書に置いた。
誤用解説
<人>を任意の具体的な<場所>に「置く」ことができないことは語義1でも見た。しかし役割を果たすべき仕事場であると解釈できる<場所>、例えば「派出所」に、そこに位置づけられる事によって役割や仕事を持つ<人>「警官」を位置づける場合は文が成立し、その<人>が職務を果たすという意味として正しく理解される。警官ではない人や、警官でも仕事をしない非番の警官では正しい文にはならない。
 派出所に男を置く。
 派出所に非番の警官を置く。(警官は非番)
 各派出所に2名の警官を置く。(警官は職務中)
類義語・反義語
類義語配置する
反義語


4.住み込む他動詞中級★★
表記置く
自分の家に人を住まわせる。
文型
<人>が<人>を<自宅>に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
部屋が空いているので、下宿人を置こうと思っている。
その昔、師匠は弟子を10人も家に置いておられたそうだ。
彼は来月から自宅の離れに弟一家を置くらしい。
「すみませんが、短期間で良いので、ここに置いていただけませんか?」
「しばらくの間だったら、家に置いてやっても良いよ」「ありがとうございます」
昔の商家では、丁稚(でっち)が独り立ちできるようになるまで、長年家に置いていた
コロケーション
解説
主語である「置く人」と目的語である「置かれる人」の間に明らかな上下関係があり、主語は目的語の人をコントロールできる権限がある必要がある。
例文4の「ここに置いていただけませんか?」は「(私を)ここに置いていただけませんか?」という意味であり、例文5の「家に置いてやっても良いよ」は「(あなたを)家に置いてやっても良いよ」という意味であるが、日本語では話し手である「私」、聞き手である「あなた」は文脈からわかるのでしばしば省略される。
また、例文4で人の代わりに物を置く許可を求める場合、「ここに置いていただけませんか?」ではなく、「ここに置かせていただけませんか?」となる。例文5のように許可を与える場合、物であれば「置いてやっても良いよ」または「置かせてやっても良いよ」となるが、人の場合は「置いてやっても良いよ」としか言えない。
誤用解説
「置かれる人」が受益者であることから、「置かれる人」が主語の場合は普通の受け身の形ではなく、「〜してもらう、〜していただく」などの表現の方が自然に感じられる。
 弟子が師匠の家に置かれる
 弟子が師匠の家に置いてもらう[いただく]
類義語・反義語
類義語住まわせる、預かる
反義語


5.他者を支配他動詞中級★★
表記置く
人が他者をその強い影響を受けるようにさせる。
文型
<人>が<人や組織>を<支配領域>下に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
社長は太郎の所属する課を新しい課長の下に置いた
「あの商社が傘下に置く関連企業の数は1000を下らないんだって」「すごいね」
社長は新設した部署を全て自分の直下に置かせた
かつてこの男は近隣の領主をすべて支配下に置いていた
大国は弱小国をその影響下に置いているものだ。
感染地域からの帰国者はいったん強制的に隔離され、一定期間、国の監視下に置かれる
コロケーション
<支配領域>下に
直(下)、傘(下)、支配、影響、監視、コントロール
解説
この場合の場所は、主語が支配する領域のことを指し、通常「支配」関係は支配者を頂点とするピラミッド型として認識される事から、支配の及ぶ位置は「下」であると考えられ「傘下」や「支配下」等「下」が使われる。目的語の「人」は主語の「人」がコントロールできる対象である必要がある。
類義語・反義語
類義語支配する
反義語


6.境遇に配置他動詞中級★★
表記置く
人が人をある境遇や立場に立たせる。
文型
<人>が<人>をある<境遇>に置く。
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎は涙をのんで、自分の息子をさらに厳しい環境に置いた
「君は自分の子供をあえて厳しい環境に置けますか?」「できないかも」
自ら進んで劣悪な環境に身を置かなくても良いと思う。
太郎は非常に過酷な境遇に置かれている
たまには厳しい状況に身を置いてみるのも良いかもしれない。
さくらさんは10年前、この大学の文学部に籍を置いていたらしい。
コロケーション
<境遇>に
状態、状況、組織、立場、渦中、只中
解説
「場所」としての<境遇>は、抽象的な場、「境遇や立場」等である必要がある。
その立場に「置く人」は「置かれる人」をコントロールする権限を持っている必要がある。
 厳しい父は息子をあえて厳しい環境に置いた。
 息子は父をあえて厳しい環境に置いた。
さらに「置く人」と「置かれる人」が一致している場合、「(置かれる)人」は「身」「自ら」「籍」等の形でモノ化した表現が可能である。つまり、<人>が<人>をある<境遇>に置く、の文型のなかで、「<人>を」の部分を「自分[身、自ら、席、籍]を」に置き換えることが可能である。例えば、
 太郎はあえて、自分[自ら、その身]を厳しい環境に置いた。
この文型は「身の置き所がない」という慣用表現に関係がある。
類義語・反義語
類義語立たせる
反義語


7.間隔を設定他動詞中級★★
表記置く、おく
空間を隔てる。
文型
<空間>を置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
一軒置いて隣の家に幼なじみが住んでいる。
その後、彼らはどちらからともなく、お互いに距離を置いた
太郎は先頭車両から一つ置いて次の車両に乗り込んだ。
子供達は、人1人が立てるだけの空間を置いて整列した。
その子は、ケーキに一列に飾り付けられたイチゴを、ひとつおきにつまみ食いした。
「配られた紙の1辺に、3cmおきに鉛筆で印を入れて下さい」
stairsイチゴが少ないなーって思って、よく見たら、一つおきになくなってるの。
コロケーション
<空間>を
距離、間、間隔、隔て、一軒
解説
間接受け身表現が可能である。例えば、
 花子に距離を置かれているように感じる。
例文1の「一軒」や例文3の「一つ」のように助数詞の表現の場合は「一軒置いて」「一つ置いて」となり、「を」は入らない。
類義語・反義語
類義語空ける
反義語


8.期間を設定他動詞中級★★
表記置く、おく
時間を隔てる。
文型
<時間>を置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「少し冷却期間を置いた方がいいんじゃない?」
「回線が込み合っております。しばらく時間をおいてからおかけ直し下さい」
印象的なスピーチをしたいなら、重要な言葉の直前にポーズを置いてみましょう。
彼は全く間を置かずに矢継ぎ早に話した。
「この料理は1日置いてから食べる方がおいしいよ」
太郎はひと呼吸おいてから作業に取りかかった。
stairs一日おいてから食べると、肉にも野菜にも味が染みておいしいもん。
コロケーション
<時間>を
時間、日、2週間、ポーズ、期間
解説
例文5の「1日」や例文6の「ひと呼吸」のように助数詞の表現の場合は「1日置いて」「ひと呼吸おいて」となり、「を」は入らない。
類義語・反義語
類義語空ける
反義語


9.基準を設定他動詞中級★★
表記置く
基準や目標等をある(広義の)場所に一致させる。
文型
<人>が<基準・目標>を<場所>に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
採用に当たっては、選考基準をどこに置くべきか考える必要がある。
私たちは目標をもっと高い所に置こう
川崎先生の主張は山中先生の理論に基礎を置いている
「じゃ、写真を撮りますよ。目線をカメラの下あたりに置いてください」
コロケーション
<基準・目標>を
目標、視点、基盤、基礎、基準、前提
類義語・反義語
類義語目指す、設定する
反義語


10.数値を操作他動詞上級
表記おく、置く
数値等の抽象的概念をある場所に役割を与えて存在させる。
文型
<場所>に<値>を<役割>とおく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
計算機に値を100と置いた
変数をX と置いて計算する。
まず、そろばんに100と置く
全体を100とおいた時の一部分の占める割合をパーセントという。
1次式の傾きをaとおく
コロケーション
<値>を
値、傾き、数
<役割>と
変数、X
解説
数学分野で主に使われる表現である。
類義語・反義語
類義語仮定する、する
反義語


11.重点を設定他動詞中級★★
表記置く
あるところを重要視する。
文型
<場所>に<重点>を置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼はユーモアの効用に力点を置いて、プレゼンの方法について話し始めた。
使用者の利便性よりも見た目に重点を置いているような建物が多くなった。
彼はいつも、何よりも友人との関係に重きを置くべきだと考えている。
評価については、試験結果より授業中の演習にウェート[ウェイト]が置かれると考えて下さい。
太郎はお金にはあまり価値を置いていない。
コロケーション
<重点>を
重き、力点、主眼、ウェート[ウェイト]、ポイント、価値、アクセント、重み
類義語・反義語
類義語強調する
反義語


12.心にかける他動詞中級★★
表記置く
意識して心にかける
文型
<人>が<事>を<頭>に置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎に教えてもらった言葉をいつも心の片隅に置いている
厳しいルールがある事を常に頭に置いて仕事をしてほしいものだ。
日本ではいつ地震が起ても不思議ではないということを、常に頭に置くようにして下さい。
「実験をする時は、安全第一を念頭におきなさい
コロケーション
<頭>に
念頭、頭、心(の片隅)
誤用解説
「頭に置く」と「念頭に置く」は同じ記憶しておくという意味の表現だが、「頭に」は「置く」も「入れる」も使用できるが、「念頭に」には「置く」だけが共起でき、「入れる」は共起できない。
 彼のアドバイスをいつも頭においておけ。
 彼のアドバイスをいつも頭に入れておけ。
 彼のアドバイスをいつも念頭においておけ。
 彼のアドバイスをいつも念頭に入れておけ。
類義語・反義語
類義語とどめる
反義語


13.動作を終了他動詞上級
表記置く、擱く
道具を用いて行っていた作業を止める。
文型
<道具>を擱く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は鮨を半人前ほど食べたところで、箸を置いたらしい。
ここら辺でもうペンを擱こうと思う。
これまでお世話になった方々への感謝を表しつつ、彼女は筆を擱いた
その作家は長年心血を注いだ長編小説の筆を擱いたのだった。
コロケーション
非共起例
<物>を<場所>に擱く
 彼は長編小説の筆を机の上に擱いた。
 彼は長編小説の筆を擱いた。
「擱く」は拡張した意味で「直前の行動の終了」を意味している。
解説
ある作業に欠かせない道具を手から離してどこかに置く事で、その直前に行っていた動作をやめるという意味を表す。例えば、「(試験終了のベル)時間です。筆記用具を置いて下さい」は、筆記用具を手から離して机の上に置くこと、つまり語義1の意味を指示しており、そうしてもらう事によって間接的に、試験の解答記入を終了するように促す表現である。一方「作家は長期間執筆していた小説の筆を擱いた」では、作家がこの小説を書き上げて作品が完成し執筆が終了した事を表している。従って、「彼は朝食を半分食べた所で箸を擱いた」では、休憩や不意の用事で一時食事を中断したのではなく、体調不良や満腹などからその朝食をとる事自体を終了した意味を表す。
また作家が普段文字を書いていた道具がボールペンである場合、実際に筆記用具を手から離して置くことを意味する語義1の場合には、
 ボールペンを置く
 筆を置く
となるが、作家が文筆活動を終了する語義13を表すとき、たとえこの作家がいつもボールペンしか使っていなかったとしても、「筆を擱く」ということができる。
なお間接受け身は可能である。
 一生懸命腕を振るったけれど、半分も食べないうちに夫に箸を擱かれてしまって、悲しい気持ちになった。
類義語・反義語
類義語止める、終わる、終了する、完成する
反義語始める、(筆・箸を)取る


14.放置他動詞上級
表記置く
考慮の対象から外して放置する。
文型
<人や物>を(<場所>に)置く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この話はちょっと脇に措くことにする。
綾乃のような有能な人物をこのままではおかない
「まずは日程の調整が先だ。費用のことはひとまず措こう
「好き嫌いは措いといて、誰が当選すると思う?」「うーん、誰だろうなあ」
結論がなかなか出ないので、この件は一旦措いて、次の議題に移ろう。
美咲のためなら健司は何を措いても一番に駆けつけるだろう。
コロケーション
<場所>に
脇に
<様態>
一旦、しばらく、一時、ちょっと
解説
この用法は、<人や物や事>を措いて(他に)(<人や物や事>は)ない、の形で表現される事がある。例えば、
 会社の発展を図るには,今を措いて(機会は)ない。
 この仕事には彼を措いてほかに適任者はいない。
 本研究の成果をあげられる研究者は、彼女を措いて他にない。
 会社の倒産を防ぐには、この商品の開発を措いて他にないのだ。
類義語・反義語
類義語放置する、触れない、関与しない
反義語


15.物を残す他動詞中級★★
表記置く
物や人を残したままそこを離れる。
文型
<人>が<物>を<場所>に置いて<移動する>
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「荷物を一旦ホテルに置いてまた戻ってくるよ」
妻子を東京に置いてロンドンに単身赴任することになった。
彼女はそこに荷物を全部置いて突然走り出した。
「神社までの階段の一段一段に1円玉を置いていくとご利益(りやく)があるそうだよ」
「あり金全部置いて行け」
彼はおいしそうなおむすびをどっさり置いて帰った。
stairsでも、子どもが受験生だから、奥さんと子どもを置いて単身赴任することにしたって言ってた。
コロケーション
置いて<移動する>
行く、来る、戻る、赴任する、走る、帰る、入る、出る
類義語・反義語
類義語残す
反義語


置くの全体解説 語義1のように、最も基本的な意味は「<人>が<物>を<場所>に位置づける」ということである。<人>は<物>を手に持っていて、それをあるべき、またはあってほしい場所に存在させるということになる。
 太郎が箱を部屋の真ん中に置く。
3つの要素、①行為の主体である<人>、②行為の対象である<物>、そして、③その物が最終的に位置づけられる<場所>の種類と組み合わせによって多様な語義が生まれる。「置く」行為の主体である<人>は背景化される傾向にあり、<物>や<場所>は空間的な意味から、次第に抽象的な意味に拡張される傾向にある。まずは<物>に注目して観察してみる。
語義2は、なんらかの目的や機能を持つ<施設・設備>を、その機能を果たすべき<場所>に設置するという意味がある。ある場所で機能を果たすという条件があれば、<物>が手に持てる可動物でなくてもかまわない。
 すべての店舗に喫煙室を置く。
<物>が抽象化すると次のような語義が現れる。
語義9では、<物>は「基準や目標」で、「基準を設定」の意味を表す。
語義10では、<物>が「数値」で、「数値を操作」の意味を表す。
語義11の場合、<物>が「重点」のような心理的存在物であれば「重点を設定」の意味になる。
語義7や8のように、<物>が「間隔」や「ポーズ」のような空間的または時間的に「空白」の対象を表すなら、それぞれ「間隔を設定」と「期間を設定」の意味を表すようになる。
さて「置く」の意味では、通常人が<物>を位置づける行動が基本であり、<人>や<生物>を「置く」とは言いにくい。
 太郎は花子[犬]を公園に置いた。
<人>や<生物>をある<場所>に置くことができるようになる為には、一定の条件が必要である。つまり「置く」人は「置かれる」人をコントロールする力や権限を持っていなければならない。従って、
語義3では、目的語である置かれた<人>は、語義2で見たように、その<場所>においてなんらかの役割や機能を果たすことになるのだが、さらに主語の<人>は、目的語の<人>をコントロールすることができる人に限られる。
 社長は秘書を2人置いている。(社長は秘書の雇い主)
 社員の1人は社長の為に秘書を1人置いた。
語義4では、例えば、家に住まわせる「家主」は、「住人」に対して家に住む許可を与える存在で、両者にははっきりと上下関係があり、主語の<人>は目的語の<人>をコントロールする事ができる関係がある。
 師匠は独り立ちできるまで弟子を家に置いた。
 弟子が師匠を家に置く。
語義5でも、明らかにコントロールできる<人>がコントロールされる<人>をある境遇に置くという意味を表わしている。例えば親が子供を、人が自分自身(の身体)を「置く」必要がある。
 花子は自分の息子をあえて厳しい環境に置いた。
 花子は友達の太郎を厳しい環境に置いた。
コントロールできる自分自身を「身を置く」のように、一旦「身」「自分」「自ら」等と<モノ>化して表現する方法もある。
 花子は厳しい環境に自分[自ら]を置いた。
次のような文では「身」は、必ず「花子自身」を指示すると解釈される。
 花子は厳しい環境に身を置いた。
最も基本的な語義1では、<物>であればどこに置こうと自由で制限がないが、拡張した語義の場合には、語義2、語義3で見たように「置かれる物や人」と「置かれる場所」の間に機能を果たす関係が必要であったり、次の語義6で見るように、置く場所が何かの「下」であるという関係が必要である。
語義6のように、<場所>が、「下(下位)」なら主語の目的語に対するコントロールや支配の意味が表れる。このような意味は、階層という概念が通常上下の位置関係として理解されるという事から理解できる。
 あの会社は100以上の関連会社をその傘下に置く。
語義14のように、「本来あるべき場所」ではなく「別の、本来あるべきでない場所」に何かを置くなら、「放置」の意味が表れる。
さらに語義9〜12では、<場所>が抽象的であることに注意が必要である。
ところで、語義1から語義12までの例は、<置く物><置かれる物><置く場所>の要素の抽象度や、互いの関係によって説明されたが、語義13〜15については、「置く」という行動の出来事構造から説明されるべきである。「置く」には、「①物を手に取る+②物を持っている+③物を場所に存在させる+④物から手を離す」というような一連の行動から構成される出来事構造のうち、特に③〜④の部分を表していると考えられる。語義13では、この<物>はペンのような道具である。従って、「道具を持っている」②の過程では「その道具を使用している」という解釈が成り立っている。そしてこの構造のうち、物を位置づけて手を離すという最後の部分の④の行動が、それに先行する行動②の終焉を意味することになる。
語義14では「ひとまず」のような副詞が共起して、③で目的語の物や人を考慮の対象にならない場所、例えば「脇」のような場所に一時位置づけた上で、④手を離して顧みず活用の対象としないで除外する、という意味が表れる。
語義15では、「置いて+移動動詞」の形をとっていることから、出来事の構造から見ると、「③物を場所に存在させる+④物から手を離す」直後に、置いたまま移動してその場を離れることから、その<物>が顧みられないまま残されるという意味が現れる。
























▶全例文を聞く
<物>を
山辺が俺の肩にを置き言った。
(窪依凛著 『エスケープ!』, 2005, 913)
<場所>に
それからグラスをテーブルの上に置く。
(リチャード・ルイス著;阿部珠理訳 『文化が衝突するとき』, 2004, 361)
<施設や設備>を
WHOは,国連の専門機関として1948年に設立された. スイスのジュネーブに本部を置き,世界6地域に地域事務局がある.
(新しい社会 歴史, 2005, 中)
寺島忠男は音楽事務所をサンフランシスコに置いている。
(野本一平著 『箸とフォークの間』, 2002, 361)
<支配領域>下に
広東における貿易は厳重な政府の統制の下に置かれた。
(宮崎市定著 『アジア史概説』, 1987, 220)
ペルーは、戒厳令下に置かれ、何百人もの労働運動家が逮捕された。
(スーザン・ジョージ著;向寿一訳 『債務危機の真実』, 1989, 338)
<境遇>に
私はここを離れられない状況に自分を置いたのです。
(マイク・ティッドウェル著;吉嶺英美訳 『アマゾンの白い酋長』, 1997, 936)
医療の中では、どうしても医師は強く、患者は弱い立場に置かれがちである。
(伊東政彦著 『「殺人」と「尊厳死」の間で』, 1998, 494)
<空間>を
三メートルほどの距離を置いて友介もついていく。
(立松和平著 『月光のさざ波』, 1998, 913)
原型の石膏型をとめておくため、深さ5mmほどの穴を中心から約2cmの間隔を置いて複数作る。
(季刊「炎芸術」編集部企画・編集 『ろくろがいらない陶芸』, 2005, )
<時間>を
迷っているなら少し時間を置いて、冷静に考えてください。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
二重国籍は認めず、国籍取得には一定の猶予期間を置くこととする。
(清水弟著 『フランスの憂鬱』, 1992, 312)
<基準・目標>を
そこで、お尋ねしたい第一点は、円高の目標をどの辺に置いて定着させようとしているのか。
(国会会議録, 1985, 本会議)
従来システムは、学ぶ側に視点を置き、教える側への配慮は二次的であった。
(清見潟大学塾編 『新静岡市発生涯学習20年』, 2004, 379)
<値>を
したがって,式(1.19)の左辺を0と置き,アインシュタインの関係(式(1.22))を用いると,正孔については以下の式が得られる.
(石原宏著 『半導体エレクトロニクス』, 2002, 428)
<重点>を
セダンとしての実用性に重点を置きながらスポーティ感覚も求めている。
(driver, 2004, 機械)
<頭>に
こうした打ち方があるというのも念頭に置いておくべきです。
(囲碁編集部編 『定石の選び方』, 2004, 795)
「赤―緑」「オレンジ―青」「黄―紫」の関係を頭の片隅に置きながら描けば、色彩豊かな絵を描くことができます。
(森田健二郎著 『プロが隠す秘密の画法「トレース水彩画」入門』, 2004, 724)
<場所>に
歩き続けられない歩行は歩行ではないのだから、重力モデルのこの欠陥は致命的に思われるが、この点は後に詳しく考えるとしてに置き、とりあえずは歩行一歩分の運動学を考える。
(長崎浩著 『動作の意味論』, 2004, 491)
<様態>
今起きたことは、いったんわきに置いて忘れ、心を尽くして、魂を尽くして、見送りの相手のことを考えなければなりません。
(フォコラーレ訳;ドリアーナ・ザンボーニ監修 『キアラ・ルービックとフォコラーレの小さき花』, 2003, 198)
置いて<移動する>
それにしても帰国の際、これらの収集品をすべて置いて帰ったというのが、私には不思議に思える。
(島田荘司著 『暗闇坂の人喰いの木』, 1994, 913)
私たちが着いたときにも若い女性数人が堂々と自転車を置いて立ち去りました
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)






























イチゴが少ないなーって思って、よく見たら、一つおきになくなってるの。
一日おいてから食べると、肉にも野菜にも味が染みておいしいもん。
でも、子どもが受験生だから、奥さんと子どもを置いて単身赴任することにしたって言ってた。
何はさておき

意味
他の事は置いて、まずは真っ先に
用例
ホテルについたら、何はさておき、まずは荷物をほどいた。
心置きなく

意味
遠慮や気兼ねをする必要なく安心して
用例
予定通りに仕事も済ませたし、後は心置きなく食事を楽しもう。
一目置く

意味
相手の優れている点を認めて尊重する。
用例
彼はイチローまでが一目置く若手アスリートだ。
風上に置けない

意味
行動や性質が非常に悪く卑劣である。
用例
自分より弱いものをいじめるなんて、人の風上にも置けないやつだ。
眼中に置かない

意味
考慮に入れないし、問題にしない。
用例
太郎は他のクラスメートの事なんて眼中に置いていない
コーパスからの用例
眼中に置かないような態度を装いながら、実は「政談」の記事を恐れて、みんなが読んでいる。 (森村誠一著 『純白の証明』, 2004, 913)
気が置けない

意味
遠慮や気兼ねをする必要がなく心を許すことができる(「気を許せない」という意味ではないことに注意)。
用例
学生時代からの付き合いで、彼女は気が置けない友達です。
下にも置かぬ[ない]

意味
人をとても丁寧に扱ってもてなす。
用例
彼女はいつも、突然の来客にもいやな顔ひとつせず、下にも置かないもてなしをすることで有名だった。
コーパスからの用例
ナリクはじめ村人は、下にも置かぬもてなしでかれを迎えた。 (木村尚三郎著 『歴史を旅する』, 1992, 204)
隅に置けない

意味
人が想像以上に能力・知識・経験などがあって侮れない。
用例
そんな事ができるなんて、彼も隅に置けないなあ。
身の置き所がない

意味
(恥ずかしくて)いたたまれず、その場に居られない。
用例
あんな失敗をしてしまって、本当に身の置き所がない
コーパスからの用例
身の置き所がなくて、涙が出そうだった。 (真壁京子著 『気象予報士になりたい!』, 2002, 451)
信[信頼、信用]を置く

意味
信じる、信頼の気持ちを持つ。
用例
彼は自分の妻に全幅の信頼を置いている
コーパスからの用例
優れた大臣たちに信頼を置き、王権の威光でこれを支援する者のことである」 (ドナルド・キーン著 『明治天皇を語る』, 2003, 288)
複合動詞 V1

置き換える、置き違える、置きっ放す、置き去る、置き忘れる
複合動詞 V2

据え置く、汲み置く、つけ置く、作り置く、とめ置く、さし置く、書き置く
複合名詞

置き引き、置き傘、置き時計、置き物、置き石、置き換え、置き薬、置き去り、置き手紙、置き土産、置き勉(※置き勉とは、学生が教科書やノートなどを家に持ち帰らず、学校に置きっぱなしにすること)、据え置き、作り置き、書き置き,縦置き、横置き、(お)取り置き
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