起こすのコアイメージ

1.人・ものを立てる他動詞初級★★★
表記起こす
人・ものを倒れたり、傾いた状態から立てる。
文型
<人>が<人・もの>を起こす、<人>が<自分の身体>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
友達が転んだので、すぐに起こした
私の父は怪我をしたのだが、とても重いので一人では起こせなかった
運動会の競技で伏せている状態から素早く身体を起こしてゴールに走る、というものがあった。
ベッドから身体を起こして窓を開けると冷たい空気が流れ込んできた。
毎朝、妻に私を起こさせるのも悪いので、たまには自分で早起きしようと頑張ってはいるのだが...
こぶ斜面を滑っているときは、上体を起こしていないといけません。
コロケーション
<人・もの>を
こども、旗、コップ、本棚
<自分の身体>を
上体、身体、腕、顔
<様態>
ゆっくり、おそるおそる、きちんと、真っすぐに
非共起例
<人・もの>を
 サイコロを起こす。
 いすを起こす。
「起こす」は「倒れてたり、傾いているものを立てる」という意味で、典型的には倒れることができる、一辺が他の辺よりも際立って長い形状のものに対して用いる。サイコロは上下左右対称で、正しい向きがないため、「起こす」を用いることができない。この一方で、いすも一辺が他の辺よりも際立って長いと言えない場合もあるが、人が座れるか否かという点で、正しい向きがある。このため、「サイコロを起こす」と「いすを起こす」の間に容認度の違いが見られる。
解説
「誤ったコロケーション」でも触れたように、「起こす」は「倒れてたり、傾いているものを立てる」という意味で、典型的には倒れることができる、一辺が他の辺よりも際立って長い形状のものに対して用いる。この一方で、「机」や「いす」、「車」は一辺が他の辺よりも際立って長いと言えない場合も多いが、そのものの機能を果たすための正しい向きがある。
 机を起こす。
 いすを起こす。
 竜巻で倒れてしまった車をみんなで起こした。
類義語・反義語
類義語立てる
反義語倒す、傾ける


2.他者を覚醒させる他動詞初級★★★
表記起こす
人を寝ている状態から覚醒した状態にする。
文型
<人>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
(子どもが夜中まで受験勉強をしていたので)昼頃になってようやく起こした
日曜なので、ゆっくり寝ようと思っていたが、早朝にかかってきた一本の電話によって起こされた
せっかく友人と旅行をしているので、早くホテルから出発したいと思い、数分前から友人を起こしているのだが、友人は一向に目を覚まさない。
(友人グループでの待ち合わせ場所に、待ち合わせ時間を過ぎても友人の一人が来ないという状況で)「僕はあいつを電話でとっくの昔に起こしてるんだけど、二度寝しちゃったのかな」
(寝ている人に電話をして、起こしてしまったことを知って)「起こしてしまってごめんなさい。でも、どうしても急な用事があったので...」
生まれたばかりの赤ちゃんが夜中に泣くので、二時間おきに起こされています。
stairs今日は朝練があるから、6時半に起こしてって言ったじゃない!
コロケーション
<人>を
こども、友人、両親
<道具・手段>で
電話で、大きな音を立てて、身体を揺すって
<時間>に
朝7時に、30分おきに、早朝に、かなり前に
解説
語義2は語義1から意味拡張されたものである。ほとんどの場合、人は起き上がったときは目を覚ましている。このことから、寝転んでいる人の姿勢を立てる行為と、眠っている人を目覚めさせる行為の間に連続性があることが語義2の基盤になっている。
相手を覚醒させる動作は、基本的には、意識的に行う動作であるが、例文5のように、意図せず他の人を起こしてしまった場合にも「起こす」を用いることができる。このように、非意識的に望まないことをしてしまった場合、日本語では動詞に「てしまう」を付けることが多い。
 (ジャングルを探検中に、巨大な虎が目の前で寝ているのを発見し、静かに歩いていたが、途中で転んでしまった場合)寝ていた虎を起こしてしまった。
 (ジャングルを探検中に、巨大な虎が目の前で寝ているのを発見し、静かに歩いていたが、途中で転んでしまった場合)寝ていた虎を起こした。
この一方で、例文5の場合では「てしまう」がなくても容認することが可能である。
 (寝ている人に電話をして、起こしてしまったことを知って)「起こしてしまって[起こして]ごめんなさい。でも、どうしても急な用事があったので...」
誤用解説
<時間>から起こす
 今日はいつもより家を早くでないといけないので、6時からこどもを起こしました。
この用法は、「こどもが6時に目を覚ました」ことを表さず、「起こそうとする動作を6時から行った」ことを意味する。もし、「こどもが6時に目を覚ます」ように働きかけた状況を表したい場合は、以下のように表現する。
 今日はいつもより家を早くでないといけないので、6時にこどもを起こしました。
「起きる」には、
 頭が起きている。
で「頭が覚醒状態で働ける状態にある」という用法がある。この一方で、「起こす」で、
 頭を起こしている。
には、「頭を覚醒状態にして働ける状態にする」という用法はない。
類義語・反義語
類義語(目を)覚まさせる、覚醒させる
反義語寝かす、寝かしつける


3.土壌を耕す他動詞上級
表記
地面などを平らな状態から、耕した状態にする。
文型
<地面など>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
畑を耕す時には、まず土を起こします
4月に入って一週間、ずっと畑を起こしています。
良い作物を作りたいのであれば、丁寧に畝を起こしてください
昨日までは手つかずだった畑が、たった一日できれいに起こされている
種まきの予定日が迫っているので、彼は素早く土壌を起こそうとしている。
耕作地を頑張って起こしてはみたものの、気候が不安定だったので結局不作に終わってしまった。
コロケーション
<地面など>
土、地面、畝、畑、土壌
<様態>
じっくり、丁寧に、素早く、ゆっくりと
解説
語義3は語義1から拡張されたものである。畑などは最初はほぼ平らな状態であるが、土を掘り返し、持ち上げることで、畑として使うことが出来る状態になる。この、掘り返し、持ち上げる動作と、人やものを倒れたり、傾いた状態から立てる動作が類似していることから語義3の使用が動機付けられていると考えられる。
また、近年では徐々に使用されなくなってきているが、「カルタ等の札をめくること」を「札を起こす」と表現することがある。この用法でも、(札が)平らな状態から、札を持ち上げ、逆さまにするという一連の状況と、ものが倒れたり傾いた状態から立てるという状況との類似性がある。
誤用解説
 畑を起こす
 田を起こす
「田を起こす」も間違いではなく、用例も存在する。しかし、田んぼを起こす場合には、「田起こし」という名詞形を用いる方が多い。
類義語・反義語
類義語耕す、掘り返す、掘り起こす
反義語


4.物理現象を発生させる他動詞中級★★
表記起こす、熾す   ※火を熾す
動作を行うことで、物理的な現象を生じさせる。
文型
<物理現象>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
キャンプで飯ごう炊さんをするために火を起こした
大昔の戦いでは、隠れている敵をいぶり出すために、火を使って煙を起こしていたようだ。
非常に暑かったので、王様は手下に扇子で風を起こさせていた
その先生は学生達の授業態度があまりにも悪いと、たまに黒板を叩いて大きな音を起こしては、学生を叱りつけるということで、学生達からは評判が悪い。
自分の子どもに「震度3ってどれくらい?」と聞かれたので、大きな揺れを起こすために飛び跳ねてみたものの、地面はさっぱり揺れなかった。
大火事の原因になったたき火は、昨夜未明、とある少年グループによって起こされたとのことです。
コロケーション
<物理現象>を
火、風、揺れ、振動、電気
<道具>で
手、うちわ、火打石
<手段>で
あおいで、叩いて、飛び降りて
非共起例
<道具>で
 コンロ[ガスバーナー]で火を起こした。
 扇風機で風を起こした。
「起こす」を用いるためには、一定の労力をかけて物理的な動作を行う必要があると考えられる。ただし、「全然火が起きなかったので、扇風機で風を起こして、炭火を起こした」のように文脈を補うことで、容認度が上がる場合もある。
解説
語義4は、語義1から意味が拡張されたものである。語義1は、「倒れてたり、傾いているものを立てる」ことによって、ものの角度を変化させることを意味している。あるものの角度を変化させるということは、広い意味であるものの状態を変化させることである。語義4は、この状態の変化に注目し、周囲の環境に「物理的な動作」を行うことで、環境の状態を変化させることを意味するものである。
表記欄の「熾す」は常用漢字ではないが、小説などでしばしば用いられる。この漢字が用いられるのは、「炎」や「炭火」など「火」を発生させる場合のみである。
類義語・反義語
類義語立てる(波、風)
反義語消す(火)


5.事態を生じさせる他動詞中級★★
表記起こす
人、組織がある事態を生じさせる。
文型
<人・組織・状況>が<事態>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
幸い、ワールドカップの試合を見て暴動を起こす市民はいなかったようだ。
いつまで議論をしていても計画は進まない。今は行動を起こすときだ。
1789年、市民によってフランス革命が起こされた
警察の調べによると、どうやら大物ギャングたちは手下たちに事件を頻繁に起こさせることで、自分たちへの捜査を攪乱しようとしているらしい。
二つの国の対立が痛ましい飛行機事故を起こしたのだ。
応援している野球チームが劣勢なとき、多くの人が応援するのをやめて、テレビを消してしまうだろう。でも、奇跡を起こして欲しいと願い、応援を続けるのが本当のファンなのではないか。
コロケーション
<事態>を
革命、暴動、ブーム、流行、奇跡、行動、裁判
<頻度>
また、頻繁に、たまに、しばしば
解説
語義5は、語義4からの拡張であると考えられる。語義4は、物理的な動作を行うことで、「火」や「風」などの自然現象を発生させる(つまり、環境の状態を変化させる)ものであった。語義5は、ある事態を生じさせるという意味で、ともに自分の周りの環境を変化させるという意味で類似しているといえる。
語義5では、意思がある有生物だけでなく、意思のない無生物も主語になり得る。
 市民達は最終的に革命を起こした。
 重税や貧困といった生活の苦しさが革命を起こした。
しかし、「議論」を目的語に取る例では、有生物を主語に取ることが出来ないので注意が必要である。
 彼の中性子に関する理論が新たな議論を起こした。
 彼は新たな議論を起こした。
誤用解説
裁判に関係する「出来事」を生じさせる場合にも「起こす」を用いることができる。
 裁判を起こす。
 訴訟を起こす。
 議論を起こす。
ただし、似た状況を生じさせる場合であっても、以下の場合は「起こす」を用いることが出来ない。
 会議(相談)を起こす。
 動議を起こす。
さらに注意が必要なこととして、「問題を起こす」は「問題を発生させる」という意味で用いることが出来る一方で、「問題を提起する」という意味で用いることは出来ない。
 問題を起こす(「問題を発生させる」の意味で)
 問題を起こす(「問題を提起する」の意味で)
類義語・反義語
類義語もたらす、提起する、誘発する、生み出す
反義語鎮める(暴動、争い、革命)


6.物事を始める他動詞上級
表記興す、起こす
組織や物事を新しく始める。
文型
<人>が<組織・物事>を興す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
裸一貫から会社を興しました
(とある国の大臣が自国の将来を憂えて)陛下がこの国を興されてからおよそ20年。周辺国の度重なる攻撃と天災によってこの国の国力はすっかり衰えてしまった。
彼は学生時代はどうしようもない奴でしたが、社会人になってから心機一転、リサイクル業を起こした男です。
旧家を離れ、新しい家を興す
オクタウィアヌスによって紀元前27年にローマ帝国が興されたと歴史の授業で習った。
これまでに多くの事業が彼によって興されている
stairsホンダは第二次大戦直後に、本田宗一郎が少数の社員と興した会社です。
コロケーション
<組織>を
会社、国、家、宗教、王朝、学校
<物事>を
事業、産業、ビジネス、文明、軍
<時間>に
紀元前27年、前、後、時代、間
<場所>に
東京、地(この地、九州の地)、地方、地元
解説
語義6は語義4から派生した用法である。人が<組織・物事>を新しく始める前には、様々な計画を練り、活動を行う。日本語母語話者は、こうした状況と、周囲の環境に「物理的な動作」を行うことで、環境の状態を変化させることを意味する語義4との間に類似性を見いだし、「起こす」という同じ単語で表現するに至ったのである。
誤用解説
コロケーション、必須項パターンのパターン2「物事」において、「軍」を挙げた。
 軍[兵、水軍]を興す
この文は通常、「(新しく)軍隊を設立する」という意味ではなく、「派遣する」という意味を表す。ただし、「興す」が「派遣する」を意味する例は非常に限られている。
 警察[社員・医師グループ・信者たち]を興した。
例文2で、以下の文を挙げた。
 ...陛下がこの国を興されてからおよそ20年。
この文は「陛下がこの国を建国した」という意味である。しかし、「建国・地域社会の設立」という意味で用いられるのは、「国・帝国」に限られる。
 町[地域・村]を起こす。(町[地域・村]を設立するという意味で)
これらの例は「町[地域・村]を設立する」という意味ではなく、「(廃れている)町[地域・村]を復興する」という異なる意味を表す(語義7も参照)。
類義語・反義語
類義語作る、建てる(国)、建国する(国)、始める(ビジネス・事業)
反義語やめる、つぶす、崩壊させる、取りつぶす(家)、解体する(組織)


7.活力を向上させる他動詞上級
表記起こす、おこす、興す
地方自治体などが、自分の地域の衰えた経済力や活力を向上させる。
文型
<人・地域>が<地域>をおこす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
寂れた町を起こそうと数人の男が立ち上がった。
高齢化が進んだ村だが、役所は村を必死におこそうとしてきた。
寂れた地元を起こすという目的もあってか、街コンという街ぐるみの合コンイベントが近年行われている。
多くの地方自治体がアニメを使って地域を起こしてきた
コロケーション
<地域>を
街、村、地元、地域
非共起例
<地域>を
 県[大陸]をおこす。
解説
語義7は語義6と近い意味を持っている。二つの意味の違いは、語義6がそれまで存在していなかった組織を新たに設立することを表すのに対し、語義7はすでに存在している(衰退した)地域や地方自治体を復興させることを示す点である。このように、語義6と語義7は異なる意味を示すが、「おこす」がどのような意味を表すかは目的語毎に決まっている。
 国を興す。(語義6)
 街[地元・地域・村]をおこす[起こす・興す]。(語義7)
これらの例文で、「国を興す」が「没落した国を復興させる」という意味を表すことや、「街をおこす」が「新しい街を設立する」という意味を表すことはない。
語義7の「おこす」は、動詞で用いられるよりも、「街[村]おこし」という名詞形で用いることが多い。
 国[宗教・家・事業]をおこす。
 国[宗教・家・事業]おこし
これらの例が示すように、語義6の意味で用いられる「おこす」は「○○起こし」という形を取らず、この点でも語義7は語義6と異なっている。
類義語・反義語
類義語復興する、再建する、再興する、再生する、立ち直らせる
反義語衰える、衰退する、すたれる、さびれる


8.感情・意欲の発生他動詞中級★★
表記起こす
感情や意欲が生じる。
文型
<感情>を起こす、<意欲>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その作家は、多忙な執筆活動を嫌い連絡が取れなくなっていたが、最近になってようやく執筆する気を起こしたようだ。
彼は良い奴ではあるんだが、気に入らないことがあると癇癪を起こしてしまうのが玉にきずだ。
学生の学習意欲を起こすにはどうしたら良いか、思案の毎日だ。
好奇心を起こしているこどもの気持ちをしずめて、寝かしつけるのは大変だ。
詐欺師は相手に警戒心を起こさせないように気をつけながら、ゆっくり相手の情報を集めていった。
男女の友情はあると思うけど、男性が急に変な気を起こさないとも限らない。
stairsやる気を起こさせるにはどうしたらいいのか、正直、頭が痛いです。
コロケーション
<感情>を
癇癪、警戒心、反抗心、好奇心、冒険心、気持ち
<意欲>を
やる気、意欲
<対象>への
仕事、練習、勉強
非共起例
<感情>
 怒り(喜び、悲しみ、激怒)
 大事なのは、もっと先を読みたいという気持ちを起こさせることです。
「起こす」は「怒り」「喜び」などの感情を表す語を直接目的語に取ることができない。この一方で、「〜心」や「〜という気持ち」という形で、感情の内容を表現することができる。
解説
語義8は、語義1の意味が拡張されたものである。ある人を横たわっている状態から起こすことで、その人がいる(存在する)ことを知覚できるようになる。語義8では、特定の感情が生じることにより、その感情を持っていることが知覚できる状態になることを「起こす」と表現している。
語義8では、<意欲・感情>の主体が<意欲・感情>を抱くのは、主語の意図的な動作によるものではない。この一方で、特に<意欲>を目的語に取る用例で、「主語が意図的に他者の意欲を引き出す」という意味の「起こす」を用いる例が存在する。
 いろいろな人の伝記を読んでいるうちにいつの間にか子どものやる気が起きたようだ。(非意図的)
 いろいろな助言を与えて子どものやる気を起こそうとする。(意図的)
 世界の文化を紹介する番組が、子どもの冒険心を起こしてしまったようだ。(非意図的)
 多くの絵本を読み聞かせることで、子どもの好奇心を起こそうとする。(意図的)
例文が示しているように、「やる気」を目的語に取る場合は、子どものやる気が非意図的に高まる場合にも、「助言を与える主語」が意図的に子どものやる気を高める場合にも、「起こす」を用いることができる。しかし、「好奇心」を目的語に取る場合は、非意図的に子どもの冒険心が高まる場合には「起こす」を用いることができるが、意図的に子どもの好奇心を高める場合に「起こす」を用いると不自然な文になってしまう。
類義語・反義語
類義語喚起する、出す、生み出す(<意欲>)
反義語萎える、なくなる、なくす、失う、喪失する


9.反応・事態の発生他動詞中級★★
表記起こす
(ある薬、要因、自然現象が)意図的でない事態や反応を生じさせる。
文型
<原因>が<反応・事態>を起こす、<人>が<反応>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その投手の肩は動かすたびに痛みを起こしている
(心臓に疾患を抱える人が)突然、心臓発作を起こしてしまったらどうしよう。
その薬は副作用を起こす可能性があります。
最近ずっと体調が悪いのです。頭痛を起こしては薬を飲む、ということを繰り返しています。
その薬物は強いアルカリ反応を起こすかもしれないよ。
地震などの災害には常に備えないといけない。富士山が明日噴火を起こさないとも限らないわけだし。
コロケーション
<反応・事態>を
反応、アレルギー、発作、症状、感染、地震
<様態>
徐々に、急速に、ゆっくり、強い
解説
語義9は、何かしらの原因が非意図的に発生した症状や現象が知覚できる状態になることを「起こす」と表現するものである。症状や現象が知覚できる状態になることは、それまで存在しなかった感情や意欲が発生して自覚できる状態になることと平行しており、語義6からの拡張であると言える。
また、語義9は「新たな事態が生じる」という意味で語義5とも近い意味を持つ。両者の違いは、主語が意図的に事態(反応)を引き起こすことができるか否かという違いである。
 その薬は副作用を起こした。(語義9)
 その薬に副作用を起こさせた。(語義9)
 学生は英語にアレルギー反応を起こした。(語義9)
 学生にアレルギー反応を起こさせた。(語義9)
これらの例文が示すように、語義9の「起こす」には、主語がものでも人でも使役の「させる」をつけることができない。
 車で事故を起こした。(語義5)
 部下に車で事故を起こさせた。(語義5)
語義9とは対照的に、語義5では、「起こす」に使役の「させる」をつけることが可能である。
類義語・反義語
類義語出る、生じさせる、発症する
反義語消える


10.文字化・文書化他動詞上級
表記起こす
文字や書類を書く
文型
<文字・書類>を起こす、<音声>を起こす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
録音テープを起こした
会話について文字を起こした
データを基に仕様書を起こしてください。
部下に起案書を起こさせた
研究所で行われた会話実験を文字化する必要があったので、私は来る日も来る日もデータから文字を起こしていた
彼はこれまでに多くの企画書を起こしてきた
コロケーション
<文字・書類>を
請求書、仕様書、設計書
<音声>を
会話、会話データ、テープ
非共起例
<書類>を
 本[辞書、論文]を起こす。
解説
語義10は語義1が拡張されたものである。語義10は、アイディアや音声などの見ることができなかったものを文字化して見えるようにするという意味で、ある人を横たわっている状態から立ち上がらせることで、その人がいる(存在する)ことを知覚しやすくするという側面を持つ語義1と類似性がある。
例文1, 2で挙げたように、語義10は、特に音声を文字化する場合に、元の音声(ファイル)も書かれた文字も目的語に取ることができる点に特色がある。
 録音テープを起こした。(例文2)
 会話について文字を起こした。(例文3)
類義語・反義語
類義語書く(書類)、書き起こす(音声)、作成する(書類)、起草する(書類)
反義語


起こすの全体解説 人・ものを倒れたり、傾いた状態から立てるという語義1が「起こす」の最も基本的な用法である。また、一般的に、人やものは寝ている状態よりも立っている状態の方が見つけやすいという側面がある。この特徴を基にして、多くの他の語義が派生している。

語義2は、語義1から意味拡張されたものである。ほとんどの場合、人は起き上がったときは目を覚ましている。このことから、寝転んでいる人の姿勢を立てる行為と、眠っている人を目覚めさせる行為の間に連続性があることが語義2の基盤になっている。

語義3も、語義1から拡張されたものである。畑などは最初はほぼ平らな状態であるが、土を掘り返し、持ち上げることで、畑として使うことが出来る状態になる。この、掘り返し、持ち上げる動作と、人やものを倒れたり、傾いた状態から立てる動作が類似していることから語義3の使用が動機づけられていると考えられる。

語義4も、語義1から意味が拡張されたものである。語義1のものの角度を変化させるという、ものの状態を変化させる側面と、語義4の周囲の環境に「物理的な動作」を行うことで環境の状態を変化させるという側面の類似性から語義4が動機づけられている。

語義5は、語義4からの拡張であると考えられる。語義4は、物理的な動作を行うことで、「火」や「風」などの自然現象を発生させる(つまり、環境の状態を変化させる)ものであった。語義5は、ある事態を生じさせるという意味で、ともに自分の周りの環境を変化させるという意味で類似しているといえる。

語義6も、語義4から派生した用法である。人が<組織・物事>を新しく始める前には、様々な計画を練り、活動を行う。こうした状況と、周囲の環境に「物理的な動作」を行うことで、環境の状態を変化させることを意味する語義4との間に類似性が認められ、「起こす」で表現されると考えられる。

語義7は、語義6と近い意味を持っている。二つの意味の違いは、語義6がそれまで存在していなかった組織を新たに設立することを表すのに対し、語義7はすでに存在している(衰退した)地域や地方自治体を復興させることを示す点である。

語義8は、感情や意欲が生じることにより、その感情や意欲を持っていることが知覚できる状態になることを意味しており、語義1の、ある人を横たわっている状態から起こすことで、その人がいる(存在する)ことを知覚できるようになるという特徴を基に意味拡張されたと考えられる。

語義9は、非意図的な原因で発生した症状や現象が知覚できる状態になることを「起こす」と表現するものである。症状や現象が知覚できる状態になることは、それまで存在しなかった感情や意欲が発生して自覚できる状態になることと平行しており、語義8からの拡張であると言える。また、語義9は「新たな事態が生じる」という意味で語義5とも近い意味を持っている。

語義10は、アイディアや音声などの見ることができなかったものを文字化することで見えるようにするという意味で、語義1と類似性がある。
























▶全例文を聞く
<人・もの>を
彼女のアパートの方へ駆け戻り、倒れている自転車を起こして跨がる。
(原田宗典著 『どこにもない短編集』, 1993, 913)
<自分の身体>を
わたしは上体を起こし、脚を組んで膝を抱えた。
(D.W.バッファ著;二宮磬訳 『審判』, 2002, 933)
聖は、両脇にひじをつくと、やっとの思いで身体を起こした。
(金蓮花著 『響鳴の森』, 1997, 913)
<様態>
トムはゆっくりと身を起こし、声のしたほうを振り返った。
(ピーター・ストラウブ著;芹沢恵訳 『ミステリー』, 1994, 933)
<人>を
しかも、かなり大きな音なので、やっと昼寝をしてくれた子どもを起こしたくなかったら、そうじ機をかけるのはあきらめなければなりません。
(佐光紀子著 『重曹・酢・石けんでナチュラルおそうじ』, 2004, )
<道具・手段>で
しかし翌朝、再びスーちゃんからの電話で起こされた。
(松杏佐美著 『12ヶ月のお話し』, 2004, 049)
<時間>に
妹の引っ越しの手伝いで3時に起こされた。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<地面など>
今週末は、別のを起こして夏野菜の植えつけ準備をする予定です。
(Yahoo!ブログ, 2008, 住まい)
土曜日に古豆と苦土石灰を撒き、スコップでを起こし昨日の午前中に自家製鶏糞堆肥を撒いて小型の耕運機で畑を耕しました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 住まい)
<物理現象>を
手回し発電機で電気を起こしてみよう
(理科基礎 自然のすがた・科学の見かた, 2006, 高)
<事態>を
試合は翌日に順延となり、この決定に怒った観客が暴動を起こし、スタンドのひとつを焼き払った。
(クリストファー・ヒルトン,イアン・コール著;野間けい子訳 『南米サッカーのすべて』, 2002, 783)
だが実際に裁判を起こすまでには二年近くかかっている。
(石田吉明,小西熱子著 『そして僕らはエイズになった』, 1993, 499)
<組織>を
三〇歳ぐらいのときに自分でデザイン会社を興すまで、デザイナーとして三社ぐらい移った。
(青木雄二著 『激刊!青木雄二『銭』』, 2002, 304)
<物事>を
今度会社を友達と立ち上げるのですが、個人出資者からと企業からの出資を受けて、ITの事業を起こします。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 企業と経営)
佐吉は当初、父伊吉の大工仕事を手伝いながら、やがて自動織機の開発に従事して繊維産業を興した。
(細川幹夫著 『トヨタ成長のカギ』, 2002, 537)
1822年に、ボストンの波止場で小さな香辛料のビジネスを起こしたのが始まりということです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 言葉、語学)
<感情>を
たとえ万が一、人が通りかかって、好奇心を起こして小屋のすぐ近くまでやってきたとしても、気づかれる心配はなかった。
(ジャン・レイ作;榊原晃三訳 『地下の怪寺院』, 1987, )
もうこれからは、わがままな気持を起さぬよう、注意しようと思います。
(住井すゑ著 『わたしの少年少女物語』, 1989, )
<意欲>を
教育の要諦はやる気を起こさせることにある。
(西沢潤一著 『私のロマンと科学』, 1990, 370)
<反応・事態>を
その矢先の十一月二十六日、愛艇の上で心臓発作を起こし、あえなく急死してしまう。
(小林則子著 『ロイアル・ヨットの世界』, 2005, 785)
そのため感染経路を知り,予防的に対処し感染を起こさないことが必要である.
(小西敏郎編著 『輸液管理の新しい知識と方法』, 2001, 492)
花粉なのか,カビなのか,昆虫の糞であったか不明ですが,いずれにしても現代ではいずれもアレルギーを起こす原因となりえます.
(大島充一著 『アレルギー読本』, 2005, 493)






























今日は朝練があるから、6時半に起こしてって言ったじゃない!
ホンダは第二次大戦直後に、本田宗一郎が少数の社員と興した会社です。
やる気を起こさせるにはどうしたらいいのか、正直、頭が痛いです。
身を起こす

意味
出世する。
用例
彼は不幸な境遇の生まれから身を起こし、立派な人物に育った。
コーパスからの用例
戦国時代の斎藤道三は油売りの行商から身を起こして、美濃の国を治めます。(永六輔著 『商人』, 1998, 670)
寝た子を起こす

意味
鎮まっている事柄を取り上げて、面倒な状況にする。
用例
せっかく問題を棚上げにして契約にこぎつけたのに、あえてその問題に触れて寝た子を起こすことはないでしょう。
コーパスからの用例
実際に異議が出てくれば、弁済したり弁済予定額を供託したりして債権者を保護し、会社分割によって債権者に予想外の損害が発生しないように法律は手を打っているわけです。しかし、実務的に考えると、すべての債権者に会社分割についていちいち催告しなければならないというのでは、費用もかかるうえに、寝た子を起こす危険性があります。弁済はまだ先でもよかったのに、催告したばかりに、いま弁済せざるをえないことになりかねません。(後藤孝典 著『債務超過でもできる会社分割』, 2003, 325)
複合動詞 V2

思い起こす、書き起こす、切り起こす、助け起こす、叩き起こす、抱き起こす、引き起こす、奮い起こす、掘り起こす、巻き起こす、揺り起こす、呼び起こす
複合名詞

町おこし、村おこし
起こす(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
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~ませんおこしま
~ましたおこしした
~ませんでしたおこしまんでした
~ときすとき
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意向形おこ
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た形した
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