伸びる・延びるのコアイメージ

1.対象物の延長自動詞初級★★★
表記のびる、伸びる
あるものが引っ張られたり継ぎ足されたりして、長くなる。
文型
<もの>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
紐が伸びすぎて、切れそうになる。
この機械で作った餅はよく伸びる
先日、3メートルまで伸びる枝切りはさみを購入した。
室内ではアンテナが伸びていても衛星電話が使えない場合があるらしい。
この散水ホースは5メートルも伸びるからともて便利だ。
この犬用のリードは犬が進むと伸びて、近づくと巻き取られる仕組みになっている。
コロケーション
<もの>が
ゴム、餅、糸、紐、先端、アンテナ、ロープ、ホース、チューブ、リード
<方向>に(へ)
下向き、前向き、左、右、上、斜め、上下
<様態>
まっすぐ、どんどん、なかなか(~ない)、まだまだ、かなり、一気に
非共起例
<もの>が伸びる
 教科書が伸びる
 教科書の販売部数が伸びる。(語義6)
(長さが)長くなることが想定できない(しにくい)場合は用いられない。
解説
語義1は、ゴムやスプリングなどが引っ張られたり、釣り竿などが継ぎ足されたりして、(その長さが)長くなるということを表す。
類義語・反義語
類義語
反義語縮む


2.対象物の直線化自動詞初級★★★
表記のびる、伸びる
曲がったり縮んだりしていたもの・身体部分がまっすぐになる。
文型
<もの・身体部分>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
筋肉痛で腕が伸びない
この針金は60度の加熱で、まっすぐに伸びる
背筋がピンと伸びて、とても姿勢が良い。
服にアイロンをかけると、どうしてシワが伸びるのでしょうか。
この骨盤ベルトをつけたら、嘘のように腰が伸びてとても歩きやすくなりました。
自転車のサドルが低すぎると、ペダルを漕ぐとき足がしっかり伸びない
コロケーション
<もの>が
針金、釘、紙のシワ、アーム、コンベアベルト
<身体部分>が
腰、シワ、背筋、背中、腕、膝、手、足、両手、両足、体、ひじ
<様態>
まっすぐに、びしっと、ぴんと、徐々に、すーっと、全然(~ない)、すっかり
解説
語義1は「あるものが引っ張られたり、継ぎ足されたりして、長くなる」ということを表すが、この「のびる」は「曲がったり縮んだりしていたものや身体部分に何らかの力が加わってまっすぐになる」ということを表す。一般的に、ゴムや紐などが引っ張られるなどして長くなると、それと同時にまっすぐになる場合が多いと考えられる。逆に、曲がった釘や背筋に何らかの力が加わってまっすぐになると、それと同時に長くなる(長くなったように見える)場合が多いと考えられる。つまり、語義1と語義2は、時間的に隣接して(同時に)生じるという関係にあると考えられる。
誤用解説
まっすぐになることが想定できない(しにくい)場合は用いられない。
 目が伸びる
 背筋が伸びる
 視力が伸びる。(語義6)
 鉛筆が伸びる
 曲がったワイヤがまっすぐに伸びる
類義語・反義語
類義語
反義語曲がる


3.対象物への到達自動詞中級★★
表記のびる、伸びる
身体部分・道具がまっすぐになり、ある対象に近づく。
文型
<身体部分・道具>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
甘いものについ手が伸びてしまう。
久しぶりのすき焼きに、次々と箸が伸びます
夜道を歩いていたら、いきなり背後から手が伸びてきて口を塞がれた。
マンションの15階まで伸びる消防車のはしごがあるか聞いてみた。
店先に焼き立てのパンが並ぶと、次々と手が伸びてあっという間に完売してしまった。
今日は3階まで伸びるはしごに上っての作業となるので、しっかり安全帯を着用してください。
stairsついつい冷たいものに手が伸びてしまうよね。
コロケーション
<身体部分・道具>が
手、箸、はしご、(クレーンの)アーム、釣り糸
<位置・地点>まで
ここ、2階、先端、天井、上部、頂上
<様態>
つい、ついつい、簡単に、すぐ、一気に、ゆっくり
非共起例
<身体部分>が伸びる
 画面に顔が伸びる
 画面に顔が近づく
 画面に手が伸びる
「手」は「曲がる」「伸びる」ということがあるが、「顔」についてはそのようなことは考えられない。
解説
語義2は「曲がったり縮んだりしていたものや身体部分に何らかの力が加わってまっすぐになる」ということを表しているが、この「のびる」はさらに進んで「(身体部分や道具がまっすぐになることによって)手などの身体部分や道具の先端があるものに届くようになる」ということを表している。つまり、語義2と語義3は原因と結果の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語近づく、届く
反義語


4.対象物が薄く広がる自動詞中級★★
表記のびる、伸びる、延びる
厚みのあるものが薄く広がる。
文型
<もの>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
夏場は塗料がよく伸びる
この絵の具はよく伸びるので、描きやすい。
この前買ったファンデーションは、すっと伸びてきれいに仕上がる。
この麺棒を使うと、パン生地が均等に伸びる
友達にすっと伸びるボディクリームを紹介してもらった。
室内が寒いせいか、なかなかワックスが{伸びない)。
コロケーション
<もの>が
絵の具、塗料、粘土、(パンの)生地、糊、ワックス、クリーム、ファンデーション
<様態>
どんどん、かなり、よく、だんだん、すぐ、なかなか(~ない)
非共起例
<もの>が伸びる
 岩が伸びる
 岩が砕ける
基本的に、溶けたり柔らかくなったりして、薄く広がるものの場合に用いられる。
解説
語義1は「あるものが引っ張られたり、継ぎ足されたりして、長くなる」ということを表すが、この「のびる」は「厚みのあるもの(塊状のもの)が薄く広がる」ということを表す。一般的に、厚みのあるものが前後左右の方向に引っ張られるなどして長くなると、結果的に薄く広がる場合が多いと考えられる。つまり、語義1と語義4は原因と結果の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語広がる
反義語


5.身体部分・植物の成長自動詞初級★★★
表記のびる、伸びる
身体部分・植物(の一部)が成長し、長くなったり高くなったりする。
文型
<身体部分・植物(の一部)>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
身長が1年で6センチも伸びた
夏になると、どんどん枝が伸びてくる。
しばらく見ない間に髪が20センチ以上伸びていました。
空き地の雑草が伸びてきて困っています。
「リップクリームを塗るとまつげが伸びる」という噂を聞いたことがある。
「玉露」とは新芽が伸び始めた頃に茶園に覆いをかけ、直射日光をカットして作ったお茶のことである。
コロケーション
<身体部分>が
背、身長、髪、爪、毛、歯、ひげ、まつ毛
<植物(の一部)>が
枝、つる、雑草、芽、根、茎、新芽、幹、花、草木
<位置・地点>まで
ここ、この辺、どこ、屋上、屋根、てっぺん
<様態>
どんどん、ぐんぐん、さらに、まっすぐ、かなり、まだまだ、すぐ、一気に、なかなか(~ない)、すくすく、あっという間に
解説
語義5は、語義1と異なり、問題となる対象物(毛や爪などの身体部分、植物)が引っ張られたり、継ぎ足されたりするというわけではなく、「成長する」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物(の長さ)が長くなる」という点では共通している。なお、「ヒヨコの羽根がだいぶ伸びてきた」のように、動物の成長にも用いられる場合がある。
誤用解説
一般的に「食べ過ぎ」が原因で「太る」ことはよくあるが、「(背が)伸びる[高くなる]」ことはあまりない。
 食べ過ぎて、伸びてしまった。
 食べ過ぎて、太ってしまった。
類義語・反義語
類義語成長する
反義語縮む


6.能力・業績の伸張自動詞中級★★
表記のびる、伸びる
能力・業績・記録などが高まる・向上する。
文型
<能力・業績・記録>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
会社の売り上げがなかなか伸びない
近年、外国産牛肉の需要が急激に伸びてきた。
子供の英語力が高校に入ってぐんぐん伸びてきました。
連勝記録がどこまで伸びるか、楽しみで仕方がない。
円安の影響で、輸出がどんどん伸びている。
ここ数年、日本を訪れる外国人観光客数が飛躍的に伸びている。
stairsその結果、利用者数は大きく伸びて、今までの2倍となりました。
コロケーション
<能力・業績・記録>が
売上、成績、需要、数、力、学力、輸出、業績、消費、能力、量、記録、販売、生産、利益、収入、所得、得点、経済、実績、台数、事業、数字、税収、GDP、技術
<時点・時期>
昨年より、3年前から、前回より、来年から、これから、90年代に比べて
<理由・原因>で
様々な理由、円高の影響、値下げの効果、何らかの原因、きっかけ、生活様式の変化
<様態>
どんどん、さらに、ぐんぐん、かなり、しっかり、あっという間に、徐々に、年々、急激に、めきめき、確実に、飛躍的に
解説
語義5は「毛や爪などの身体部分、植物(具体物)が成長する」ということを表すが、この「のびる」は「能力・業績・勢力(抽象物)などが高まる・向上する」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物(の規模)が大きくなる」という点では共通している。つまり、語義6は語義5との抽象的な類似性に基づいて意味が成り立っていると考えられる。
誤用解説
好ましくない事柄の場合は使われにくい。
 赤字(幅)が伸びた
 赤字(幅)が増えた
 黒字(幅)が伸びた
 損失が伸びた
 損失が増えた
類義語・反義語
類義語高まる、向上する
反義語


7.道路・路線の延長自動詞中級★★
表記のびる、伸びる、延びる
道路・路線などの距離が長くなる。
文型
<道路・路線>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
来年には、生活道がここまで伸びてくる予定である。
近い将来、沖縄まで新幹線が伸びることってあるんでしょうか。
昨年の秋に、家の近くまで国道が伸びたおかげで車通勤が便利になった。
札幌まで新幹線が伸びたら、ぜひ一度乗ってみたい。
地下鉄の桜通線が徳重まで伸びたおかげで、このあたりもすっかり変わりました。
山頂付近まで舗装道路が伸びたことで、車でも登れるようになった。
コロケーション
<道路・路線>が
道、道路、線路、路線、鉄道、国道、高速道路、地下鉄、4号線、新幹線、舗装道路
<位置・場所>まで
ここ、北海道、函館、九州、日本橋駅、本土、北陸地方、郊外、山頂付近
<様態>
少し、かなり、ずいぶん、確かに、いつのまにか、相当
解説
語義7は、語義1と異なり、問題となる対象物(道路や路線など)に対して、直接力が加わって、引っ張られたり継ぎ足されたりするというわけではなく、「工事などにより道路・路線などの距離が長くなる」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物に何らかの力が加わって(その長さが)長くなる」という点では共通している。
誤用解説
主に道路・路線などの距離が長くなる場合に用いられる。
 川が伸びた
 川が東の方に伸びている。(語義8)


8.対象物が長く続く自動詞中級★★
表記のびる、伸びる、延びる
(主に道路・路線など)線状のものが長く続く。
文型
<もの>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
小道が山裾に沿って、うねうねと伸びている。
現在、日本の南海上には梅雨前線が長く伸びています。
線路を越えると、すぐ左に登山道が伸びている。
金運線とは、薬指から縦に伸びる線のことである。
雲の切れ間から伸びる光は、まるでカーテンのようだった。
名古屋で一番おすすめのケーキ屋さんは、ここから北口へ延びるエスカレーターを上がったところにある。
コロケーション
<もの>が
登山道、海岸線、道路、参道、廊下、線路、通路、通学路、階段、小道、林道、街道、梅雨前線、光、ケーブル、金運線
<方向>に(へ)
上、下、上方、下方、南北、東西、左右、水平、外、奥、前、後ろ、前方、後方
<様態>
延々と、ずっと、果てしなく、細長く、細く、力強く、勢いよく
非共起例
<もの>が伸びる
 玄関が伸びている。
 玄関が広い
基本的に、線状のものに限られる。
解説
語義7は「工事などにより道路や路線などの距離が長くなる」ということを表しているが、この「のびる」は(基本的に「のびている」の形で)さらに進んで「(距離が長くなった結果)道路や線路などが長く続く」ということを表している。つまり、語義7と語義8は原因と結果の関係にあると考えられる。


9.時間の延長自動詞中級★★
表記のびる、延びる、伸びる   ※時間の延長を表す場合は「延」を用いることが多い。例:寿命が延びる
時間・期間などが長くなる。
文型
<時間・期間>が延びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
定年が65歳まで延びた
旅行先で、滞在期間が延びてしまった。
医療の進歩により、人間の寿命がどんどん延びている。
予定よりも工期が延びてしまったため、引越しは来月以降になりそうだ。
毎月の返済額を少なくし過ぎると、今度は返済期間が延びてしまいます。
空港でのセキュリティーチェックの強化で、搭乗までの待ち時間が年々延びているように感じる。
コロケーション
<時間・期間>が
返済期間、滞在期間、寿命、工期、期限、定年、待ち時間、周期
<時期>まで
5月、10月中旬、12月末、来年、2020年、65歳
<理由・原因>で
大雪の影響、会社側の都合、経済的な理由、家庭の事情、震災の関係、病気、何らかの原因、不景気
<様態>
かなり、さらに、少し、多少、ずいぶん、やや、結構
非共起例
<時間>が延びる
 一日の時間が延びた
 一日の労働時間が延びた
 一日の時間が長く感じる
一日24時間、一年365日などのように、すでに決まっている時間については用いられない。
解説
語義1は「ゴムやスプリング、紐(具体物)などが長くなる」ということを表すが、この「のびる」は「時間や期間(抽象物)などが長くなる」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物が長くなる」という点では共通している。つまり、語義9は語義1との抽象的な類似性に基づいて意味が成り立っていると考えられる。
類義語・反義語
類義語延長される
反義語縮まる


10.時間の延期自動詞中級★★
表記のびる、延びる、伸びる   ※時間の延期を表す場合は「延」を用いる場合が多い。例:出発が延びる
時間・日時などが決められていた時より遅れる。
文型
<時間・日時>が延びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
予定より出発が延びてしまった。
雨天で試合の開始時間が延びている。
台風の影響で、日本への帰国が延びてしまった。
総裁選挙のため、臨時国会の開会が延びている。
「同棲をすると結婚が延びる」という話をよく聞く。
震災もあって発売時期が延びましたが、今月20日にやっと発売の運びとなりました。
コロケーション
<時間・日時>が
出発、結婚、開会、発送日、開始時間、発売時期、入居時期、帰国、帰還、締切
<理由・原因>で
何らかの理由、やむを得ない事情、渋滞、地震の影響、強風、台風、交通事故
<様態>
だいぶ、かなり、ちょっとだけ、やや、相当、さらに、少々、多少、ずいぶん、2時間、2週間も
解説
語義9は「時間や期間などが長くなる」ということを表すが、この「のびる」は「時間や日時などが遅れる」ということを表す。一般的に、ある出来事の開始までの時間が長くなる(延長される)と、必然的に(その開始時間が)遅くなると考えられる。つまり、語義9と語義10は原因と結果の関係にあると考えられる。
誤用解説
この「延びる」は、時間[日時]そのものの開始が遅れる場合に用いられる。
 寝坊して授業が延びた
 寝坊して授業に遅れた[遅刻した]
類義語・反義語
類義語遅れる
反義語


11.対象物が勢いよく進む自動詞中級★★
表記のびる、伸びる
(主にスポーツで)球が勢いよく進む。
文型
<球>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
伸びる球を投げる方法を教えてください。
あの選手の左足のキックはよく伸びる
まっすぐ伸びた打球はそのままバックスクリーンに突き刺さった。
(テニスで)フォアは問題ないが 、バックハンドの球が伸びない
あのピッチャは手元でグーンと伸びる球を投げてくるから、本当に打ちにくい。
最近のゴルフボールはどんどん進化して、アマチュアでも高弾道で伸びる球が打てるようになった。
コロケーション
<球>が
ボール、球、直球、球筋、打球、ストレート
<様態>
よく、ぐんぐん、どんどん、勢いよく、もっと、力強く、ぐーんと、なかなか(~ない)
解説
語義11は、語義1と異なり、のびる対象となるのは「球(の移動の様子)」である。また、球が引っ張られたり継ぎ足されたりするというわけではなく、「勢いよく前に進む」ということを表す。一般的に、ボールを投げたり打ったりすると、弾道を描くように、遠くへ勢いよく進む場合が多いと考えられる。つまり、語義1と語義11の間には「ある対象物に何らかの力が加わって、(その長さが)長くなる」という類似性が認められる。なお、語義11は「あの選手の変化球は伸びがある」のように、「伸びがある[ない]」という形でもよく用いられる。
誤用解説
基本的に、球が勢いよく進む場合に用いられる。
 (野球で)あの選手のバントはよく伸びる
 (野球で)あの選手の打球はよく伸びる


12.弾力性の喪失自動詞上級
表記のびる、伸びる、延びる
あるものが、時間がたったり古くなったりして、弾力性がなくなる。
文型
<もの>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
おそばがすっかり伸びてしまった。
伸びたズボンのゴムを取りかえる。
早く食べないと麺が伸びてしまうよ。
お気に入りのウール100%のセーターが伸びてしまいました。
コンビニのパスタは時間が経っても伸びないように工夫されている。
伸びてしまったセーターやカーディガンの襟や袖を元に戻す方法があるらしい。
stairs仕方がないので、伸びたセーターは部屋着として使っています。
コロケーション
<もの>が
麺、そば、うどん、ラーメン、パスタ、ゴム、袖口、襟、セーター、ニット
<様態>
すっかり、完全に、すぐ、なかなか(~ない)、かなり、ほとんど、ずいぶん
非共起例
<もの>が伸びる
 パソコンが伸びてしまった。
 念珠が伸びてしまった。
 念珠の紐が伸びてしまった。
基本的に、時間がたったり古くなったりして「弾力性がなくなるもの」の場合に用いられる。
解説
語義1は「ゴムなどが引っ張られるなどして長くなる」ということを表しているが、この「のびる」はさらに進んで「(例えは、ゴムが長くなった状態が長時間続くことによって)弾力性がなくなる」ということを表している。つまり、語義12は語義1と原因と結果の関係にあると考えられる。


13.活力の喪失自動詞上級
表記のびる、伸びる、延びる
体が疲労や(相手の)打撃を受けて、動けなくなる。
文型
<人>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
過労で伸びてしまった。
暑さにすっかり伸びています。
左目に一発食らって伸びてしまった。
連日の徹夜で、すっかり伸びてしまった。
相手の強烈なパンチを顔面に食らって、あっさり伸びてしまった。
同僚の鈴木君は、年末の残業続きで完全に伸びてしまいました。
コロケーション
<理由・原因>
暑さに、過労で、徹夜続きで、残業続きで、疲労で、パンチで
<様態>
完全に、すっかり、ぐったり(と)、あっけなく、あっさり、またもや
解説
語義12は「ゴムや麺類などに弾力性がなくなる」ということを表すが、この「のびる」は「体が疲労や(相手の)打撃を受けて動けなくなる」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物に何らかの力が加わって勢いがなくなる」という点では共通している。
誤用解説
基本的に、肉体的な疲労や打撃などの場合に用いられる。
 好きな子に「気持ち悪い」と言われて伸びてしまった。
 好きな子に「気持ち悪い」と言われてショックを受けた
類義語・反義語
類義語ぐったりする
反義語


14.音声の伸張自動詞上級
表記のびる、伸びる、延びる
(主に声楽・音響で)音や声が力強く、よく響く。
文型
<音・声>が伸びる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
音程が安定し、声も伸びるようになった。
このスピーカーは高音がよく伸びるのが特長だ。
先生に「語尾が伸びる話し方はやめなさい」と注意された。
電子キーボードのペダルを踏んでいないのに音が伸びる時がある。
この市民文化センターの大ホールは低音がよく伸びるんですよ。
コンサートが始まると、弦楽器の響きと同時にソプラノ歌手の透き通った歌声が伸びていきます。
コロケーション
<音・声>が
音、声、低音、高音、歌声
<様態>
よく、ちゃんと、スーッと、まだまだ、意外と、なかなか(~ない)、まったく(~ない)、全然(~ない)
非共起例
<音>が伸びる
 工事現場の音が伸びる
 工事現場の音が大きい[うるさい]
 バイオリンの音が伸びる
基本的に、声楽や音響の場合に用いられる。
解説
語義1は「ゴムやスプリング、紐(具体物)などが長くなる」ということを表すが、この「のびる」は「音や声(抽象物)が力強く、よく響く」ということを表す。ただし、いずれも「ある対象物に何らかの力が加わって、(その長さが)長くなる」という点では共通している(抽象的な類似性に基づく)。というのは、一般的に音や声が力強くてよく響くと、遠くまで届く(聞こえる距離が長くなる)と考えられるからである。
類義語・反義語
類義語響く
反義語


伸びる・延びるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>が
これはまさに落下寸前の水滴の形で、もしゴムがこれ以上伸びないと、突然その形が変わり、ゴムは直ちにちぎれてしまいます。
(ボイズ著;野口広訳 『シャボン玉の科学』, 1987, 423)
<身体部分>が
よけいな肩の力がぬけて、背筋がピシッ伸びて、自然とおなかに力がはいるでしょう。
(村上勝夫監修;山郷美由紀著 『「子宮」がつくる元気の法則』, 2001, 495)
<身体部分・道具>が
そのせいか、甘いものについついが伸びちゃいます。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<もの>が
生地が伸びないと感じた時は、打粉がたりないので、打粉をまめにする。
(北嶋愛著;Kitajima Ai Cooking Salon編 『Mariage』, 2002, 596)
<身体部分>が
まだ高校に入ったばかりだし、一応、これからが伸びるはずだと思うんだけど。
(水島忍著 『過保護なお兄さま』, 2001, 913)
<植物(の一部)>が
樹形が乱れたり、好み以上にが伸びたりすると、適宜刈りこみます。
(丹羽蒼一郎著 『庭木・花木・小果樹の整枝と剪定』, 2003, 629)
<能力・業績・記録>が
ブームなど、何らかのきっかけで急激に商品の売上が伸びることがあります。
(プロジェクトA,日花弘子著;若月光博監修 『仕事に役立つExcelビジネスデータ分析』, 2005, 336)
景気回復のためになすべきことは、GDPの六割を占める個人消費が伸びるようにすることです。
(国会会議録, 2001, 本会議)
<道路・路線>が
まもなく北海道新幹線も建設線に昇格し、10数年後には札幌まで新幹線が伸びる。
(川島令三著 『新線鉄道計画徹底ガイド』, 2002, 686)
<もの>が
駅から真っすぐに伸びるを10分ほど歩くと、右手に小学校があった。
(モー娘。パパラッチ編 『モーニング娘。パパラッチ』, 2001, 767)
その駐車場の前には南北に貫く道路があって,そこを跨いで,公園のある方向へ線路が伸びていたのでしょう。
(鉄道ダイヤ情報, 2003, レジャー/趣味)
<時間・期間>が
戦後すぐの数値と比べると、男性は28.50年、女性は31.56年も平均寿命が延びています。
(市報きよせ, 2008, 東京都)
しかし、東六本木駅を含む再開発事業の遅れや地下埋蔵物の確認作業のために、さらに大きく工期が延びることになった。
(佐藤信之著 『地下鉄の歴史』, 2004, 686)
<時間・日時>が
六月の出荷が台湾側の事情で一週間も延びたんだよ。
(矢作俊彦著 『ロング・グッドバイ』, 2004, 913)
<球>が
ピッチャーの球速が伸び、球種が増え、バッティングの飛距離が伸びるのはそういうことの例証です。
(森部昌広著 『学校スポーツケガをさせずに強くする』, 2003, 780)
<もの>が
お客さんの注文を聞いてからつくるので、つくったラーメンが伸びてまずくなることはない。
(寺岡寛著 『スモールビジネスの経営学』, 2003, 335)






























ついつい冷たいものに手が伸びてしまうよね。
その結果、利用者数は大きく伸びて、今までの2倍となりました。
仕方がないので、伸びたセーターは部屋着として使っています。
手が伸びる

意味
勢力・影響力がある段階・範囲にまで及ぶ。
用例
退職した社員の不正が次々と発覚し、ついに社長にまで捜査の手が伸びた
コーパスからの用例
そして一九四四年六月のマリアナ侵攻作戦をきっかけに、この大動脈を航行する船団にも航空攻撃の魔の手が延びてきた。(大内建二著 『輸送船入門』, 2003, 397)
複合動詞 V1

伸び上がる、伸び悩む
複合動詞 V2

生き延びる、落ち延びる、逃げ延びる
複合名詞

伸び盛り、伸び代、伸び縮み、伸び率、背伸び、間延び
伸びる・延びる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形ない
~なかったなかった
ます形のび
~ませんのびま
~ましたのびした
~ませんでしたのびまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形のび
て形びて
た形びた
可能形
受身形のびら
使役形のびさ
閉じる