直る・治るのコアイメージ

1.復元自動詞初級★★★
表記直る
ものの位置・形状が乱れのない状態に戻る。
文型
<ものの位置・形状>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
逆立ちでは逆子は直らない
早く家を出なきゃいけないのに、全然寝癖が直らない
整体を受けて体のゆがみが直った気がする。
1週間のエクササイズで、体のゆがみがだいぶ直っているのを実感した。
「前へならえ。直れ
マッサージで背骨のずれが直ったら、体が軽くなった。
コロケーション
<ものの位置>が
向き、位置、傾き、ずれ
<ものの形状>が
ゆがみ、寝癖
<様態>
なかなか(~ない)、全然(~ない)、簡単に、すぐ、だいぶ
解説
この意味の「なおる」は、ものの位置や形状が、乱れた状態から元の整った状態に戻ることを表す。
誤用解説
主体の形状が完全に元の状態に戻らない場合には、用いることはできない。
 破れた紙が直る
 破れた紙がくっつく
 切れた紐が直る
 切れた紐がつながる


2.修復自動詞初級★★★
表記直る
もの(の不具合)が機能する状態に戻る。
文型
<もの(の不具合)>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ディーラーから、車が直ったと連絡があった。
機械が直れば一気に作業が進むだろう。
「ずいぶん機嫌が良いね」「壊れて修理に出していたカメラがようやく直ったんです」
排水口を掃除しても詰まりが直らない時は、プロに任せる。
震災後、壊れた実家はまだ直っていない
ソフトウェアアップデートでこの不具合が直ってくれると期待している。
コロケーション
<もの>が
家、車、屋根、機械、道路、橋、眼鏡、パソコン、時計、自転車
<ものの不具合>が
不具合、雨漏り、故障、パンク、詰まり、バグ
<様態>
すぐ、ちゃんと、あっという間に、簡単に、すでに、なかなか(~ない)
<時間>に[には]
夕方まで、明日まで、1週間以内、今月中、月末、週明け
解説
この意味の「なおる」は、ものが元の状態に戻るという意味では語義1と同様である。一方で、語義1はものの位置や形状が、乱れた状態から元の整った状態に戻ることを表すが、語義2は、ものが破損や故障によって機能しない状態から、元の機能する状態に戻ることを表すという点で異なる。
なお、語義2は「車が直る」のように、主体には不具合が生じたものがくるが、「車の故障が直る」のように、機能しない状態を引き起こした不具合に焦点を当て、それを表す表現を主体に取ることもできる。
 が直る。
 車の故障が直る。(不具合に焦点)
誤用解説
この意味で「直る」が用いられるためには、ものの形だけでなく、機能が復元しなければならない。例えば、携帯電話の液晶画面が割れた際に、接着剤でつなぎ合わせて画面の形が復元しても、それがものを映す機能を果たさなければ、「携帯電話の画面が直った」とは言えない。
類義語・反義語
類義語
反義語壊れる


3.治癒自動詞初級★★★
表記治る
人・動物(の病気・怪我)が健康な状態に戻る。
文型
<人・動物(の病気・怪我)>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この病気は、80%の人が手術で治ります
「自分は必ず治る」と希望を持つことが治療の第一歩です。
発病してから1年後の時点では、6割の患者さんがほぼ完全に治っています
外用薬でニキビがきれいに治った
風邪はもうすっかり治っている
犬の皮膚炎は、皮膚を清潔に保てば薬なしで治る場合もある。
stairsこないだのアメリカ出張の時差ボケがなかなか治らなくてね……。
コロケーション
<人>が
患者、人
<動物>が
犬、猫
<人・動物の病気・怪我>が
病気、歯並び、にきび、病、傷、怪我、症状、風邪、アトピー
<様態>
早く、完全に、すっかり、ちゃんと、いつか、なかなか(~ない)、徐々に、きれいに
<手段>で
薬、手術、治療、自然治癒力、自力、民間療法、食事、漢方、気合い
非共起例
<人・動物の病気・怪我>が
 くしゃみ[鼻水]が治る。
 くしゃみ[鼻水]が治まる[止まる]。
 風邪が治る。
「風邪が治る」とは言えるが、「くしゃみ」、「鼻水」、「せき」、「熱」などの風邪の諸症状について用いることはできない。ただし、「痛み」について用いることはできるため、「頭痛が治る」は可能である。
解説
この意味の「なおる」は、主体が元の機能する状態に戻るという意味では語義2と類似しているが、語義2の主体はものである一方で、この意味の「なおる」の主体は人・動物である。また、語義2では、ものが破損や故障によって機能しない状態にあり、それが機能する状態に戻ることを表すが、語義3において人・動物が機能しない状態というのは、病気や怪我によって身体の機能が損なわれている場合であり、そこから正常な状態に戻ることを表す際に「なおる」が用いられる。
なお語義3は、「患者が治る」のように、病気や怪我などの不具合が生じた人が主体になるが、「患者の病気が治る」のように、不具合である病気や怪我に焦点を当て、それを表す表現を主体にすることもでき、この点も語義2と同様である。
 患者が治る。
 患者の病気が治る。(不具合に焦点)


4.気分の回復自動詞中級★★
表記直る
人の気分が通常の状態に戻る。
文型
<気分>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
うちの子は膝に乗せてやるとすぐに機嫌が直る
ぐずっていた娘だったが、夫が帰宅するとたちまち機嫌が直った
父の不機嫌はなかなか直らない
落ち込みがひどく、なかなか気分が直らない場合はカウンセリングを受けてみましょう。
途中でアイスを買ってやったら、家に着くころにはすっかり機嫌が直っていた
丸一日経っても妻の機嫌が直っていない時は、ケーキを買って帰ることにしている。
stairs赤ちゃんってこんなことでも機嫌が直るのか……。
コロケーション
<気分>が
機嫌、気分、不機嫌
<様態>
すぐ、すっかり、なかなか(~ない)、簡単に、たちまち、徐々に
非共起例
<気分>が
 怒り[悲しみ]が直る。
 機嫌[気分]が直る。
マイナスの精神状態であっても、特定の感情と共起することはできない。
解説
この意味の「なおる」は、主体である人のマイナスの状態が元の良い状態に戻るという点で、語義3と同様である。ただし、語義3では「風邪」、「アレルギー」、「うつ病」など、心身において見られ、薬や手術などの医学的処置を要するものが解消し、元の健康な状態に戻ることを表す一方で、語義4のマイナスの状態は精神状態に限られ、また語義3と比較して一時的なものであり、さらにその状態から回復するのに特別な医学的処置を要するものでもないという点が異なる。


5.修正自動詞中級★★
表記直る
情報(の誤り)が適切な状態に変わる。
文型
<情報(の誤り)>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
古い機械だと、まだ表記が直っていないものもあるようです。
いつまでたってもホームページの記載が直らない
次の校正では間違いが直っているか確認しなければならない。
誤植が直って返ってきた。
初校でチェックしたところがきちんと直っているのかを確認する。
おかしな日本語訳が直っていたので安心した。
コロケーション
<情報>が
文章、表現、原稿、日本語、文字
<情報の誤り>が
誤り、間違い、ミス
<様態>
ちゃんと、きちんと、すぐに
解説
この意味の「なおる」は、文字や文字によって構成された文章の間違いが適切な状態に変わることを表しており、<元の状態に戻る>ことは含意しないため、語義1から語義4とは異なる。一方、語義1が表す<ものが乱れのない状態に戻る>ということは、望ましくない現状から望ましい状態になるということであり、語義5が表す<情報が適切な状態に変わる>ということも、本来こうあるべきと考えられる望ましい状態になることである。したがって、語義1と語義5は<望ましい状態になる>という点で共通している。
なお、語義5は「文章が直る」のように、誤った情報が主体になるが、「文章の間違いが直る」のように、誤り自体に焦点を当て、それを表す表現を主体に取ることもでき、この点も語義1と同様である。
 文章が直る。
 文章の間違いが直る。(不具合に焦点)
誤用解説
この意味の「なおる」は、情報の誤りが正されて望ましい状態になることを表すが、文法的な誤りやデータの誤り等だけでなく、文法的には正しくても状況にそぐわない表現等に対しても用いられる。例えば、丁寧な文章は一般的に望ましいとされるが、友人にあてた手紙には、丁寧な表現よりも率直な表現が適していると思われる。したがってこのような場合には、丁寧な文章が率直な文章に変わることに対して「なおる」を用いることができるが、その場合、以下のように、望ましい状態に変わることを示すような表現が用いられる。
 友達への手紙を添削してもらったら、丁寧な文章が遠慮のない言葉に直って返ってきた。
 友達への手紙を添削してもらったら、堅苦しい文章が率直な言葉に直って返ってきた。


6.変化(人・動物の習性)自動詞中級★★
表記直る
人・動物の習性が望ましい状態に変わる。
文型
<人・動物の習性>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
スイング時の姿勢が直ったことで、距離が出るようになった。
ボイストレーニングに通ったら、音痴が直るかな。
地元を離れて20年、結局方言が直ることはなかった。
不規則な食習慣が直れば、自然と痩せるはずだ。
息子の乱暴な言葉遣いはいつの間にか直っていた
愛犬の問題行動は、叱るだけでは直らない
コロケーション
<人の習性>が
発音、言葉遣い、訛り
<動物の習性>が
問題行動、噛み癖、吠え癖、鳴き癖
<様態>
なかなか(~ない)、ようやく、簡単に、ちゃんと、徐々に
解説
この意味の「なおる」は、ものが元の状態に戻るのではなく、望ましい状態に変わるという点で、語義5と同様である。ただし、語義5の主体は情報(の誤り)である一方で、語義6の主体は人・動物の習性である点が異なる。
誤用解説
この意味の「なおる」は、問題となる習性に対して、何らかの点においてより望ましい状態に変わる場合にのみ用いられる。
 東京に来て、訛りが直った。(方言が標準語に変わった場合)
 名古屋に来て、訛りが直った。(ある方言から別の方言に変わった場合)
標準語はどの地域においても理解されやすく、この点で特定の方言から標準語に近づくことは望ましいといえるが、ある方言から別の方言に近づくことは、特殊な状況を設定しない限り特に望ましい状態への変化とは捉えられず、このような場合には「なおる」を用いるのは不自然である。


7.変化(人の性質)自動詞中級★★
表記直る
人の性質が好ましい状態に変わる。
文型
<人の性質>がなおる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
野菜チップスのおかげで、子供たちの野菜嫌いが直った
浮気性は簡単には直らない
貧乏性はなかなか直らない
あいつの放浪癖が直る日は来るのだろうか。
あの人のおかげで、誰でも疑ってかかる癖が少し直った気がする。
人見知りはとっくに直っている
コロケーション
<人の性質>が
癖、性格、欠点、短所
<様態>
なかなか(~ない)、簡単に、ちゃんと、いつかは、徐々に、完全に
解説
この意味の「なおる」も<元の良い状態に戻す>ことは含意しないが、<人の性質が好ましい状態に変わる>ことは、本来こうあるべきと考えられる望ましい状態になることであり、この点で語義6と同様である。ただし語義6ではその主体が人・動物の習性であるのに対して、語義7の主体は人の性質であるという点で異なる。
誤用解説
他の語義と同様、「なおる」は<望ましい状態になる>ことを表すため、主体である<人の性質>には良い性質は現れない。ただし、良い性質であっても度が過ぎる場合は<望ましくない性質>として「なおる」の主体となることができる。
 彼は優しいところが直れば完璧なのに。
 彼は優しすぎるところが直れば完璧なのに。
類義語・反義語
類義語変わる(性格が変わる)、なくなる(欠点がなくなる)
反義語


直る・治るの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<ものの形状>が
整体で反対の方に曲げたからゆがみが直ると言うほど、体って簡単ではありませんよ。
(Yahoo!知恵袋, 2005, コスメ、美容)
<もの>が
直也は加奈がコンビニに入るのを見て、エンコしたが直ったように見せかけ、ゆっくりと車を発進させた。
(林葉直子著 『キスだけじゃイヤ』, 1994, 913)
<ものの不具合>が
「それじゃ、僕が君のところに移ったら、君の好意へのお返しとして、町まで僕が送ることにしよう…少なくとも君の車の故障が直るまではね」
(ペニー・ジョーダン作;樋口容視子訳 『たそがれの林檎園』, 2002, 933)
<人・動物の病気・怪我>が
思っていたほど早くは風邪が治らなかった。
(デビー・マッコーマー著;石原まどか訳 『木曜日の朝、いつものカフェで』, 2003, 933)
が治る際に痒みが出るのは普通のことです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
<手段>で
薬は単なる対症療法にすぎず、「風邪薬で風邪が治った」というのは誤解といえます。
(前山和宏著 『どんな手段を使っても病気を治す』, 2004, 490)
<気分>が
めしを食うといくらか機嫌が直った。
(志水辰夫著 『生きいそぎ』, 2003, 913)
<動物の習性>が
私の友人でこの犬種を飼育されている方がいますが、小さい時に他人を咬んだことがあり、その時に厳しく叱り教えなかったために、大きくなっても他人を咬むが直らず、主人以外には外へ連れ出せない犬がいます。
(愛犬の友, 2003, レジャー/趣味)
<人の性質>が
しかし、ドイツで育った者としては、子供のころから買い物する時に「ダンケ」と言うのは当り前の習慣として身についているので、日本で長く暮らしているのに、このが直りません。
(ルドルフ・プロット著 『「星の王子さま」と永遠の喜び』, 2002, 198)
小林の励ましに英世はうなずいたが、それで英世の性格が根本から直るかどうかは、また別の問題であった。
(渡辺淳一著 『遠き落日』, 1979, 913)






























こないだのアメリカ出張の時差ボケがなかなか治らなくてね……。
赤ちゃんってこんなことでも機嫌が直るのか……。
複合動詞 V1

居直る、立ち直る、開き直る
複合動詞 V2

居直り、立ち直り、開き直り
直る・治る(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形なおない
~なかったなおなかった
ます形なおり
~ませんなおりま
~ましたなおりした
~ませんでしたなおりまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形なお
て形なお
た形なお
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