戻るのコアイメージ

1.起点への移動自動詞初級★★★
表記戻る
人・動物・乗り物が、ある場所から、元々存在していた場所まで移動する。
文型
<人・動物・乗り物>が<場所>に[へ・まで]もどる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山田さんが、自分の席に戻る
忘れ物をしてしまったので、一度家に戻らなければいけません。
「昨日の懇親会、ずいぶん遅くまで続いたみたいだね」「そうなんです。会場からホテルに戻ったのは、深夜1時過ぎでしたよ」
もうすぐ授業が始まるから、すぐ教室に戻りなさい。
買い物を終えて車に戻ろうとしていると、知らない男性に話しかけられた。
「帰巣性って、どういう意味ですか?」「動物が、一定の住処や巣などから離れても、再びそこまで戻ってくる性質のことですよ」
コロケーション
<乗り物>が戻る
車、電車、新幹線、船、飛行機
<場所>に[へ・まで]戻る
家、部屋、ホテル、車、席
<場所>から戻る
学校、病院、外出先、島、トイレ
<様態>戻る
再び、すぐ、もう、いったん、やっと
非共起例
<様態>戻る
 伊藤さんは、だいたい席に戻った。
 伊藤さんは、完全に席に戻った。
 伊藤さんは、席に戻った。
語義1では「戻る」は、通常、状態変化の程度を表す副詞とは共起できない。(ただし、「(休憩時間のあと)参加者はだいたい席に戻ったようだ」のように、主体が複数の人の場合は共起可能である。)
解説
語義1は、「戻る」の最も基本的な意味である。この語義では、人、その他の動物、乗り物が、ある場所をいったん離れて別の場所に到達したことを前提として、その場所から元々存在していた場所まで(自らの意志で、あるいは乗り物の運転手の意志で)移動することが焦点化される。
誤用解説
「戻る」の語義1と類義的な動詞として、「帰る」が挙げられる。「帰る」の場合には、通常ニ格名詞(句)によって表される<場所>は、人やその他の動物が本来存在すべき領域に限定される。
 家に戻る
 家に帰る
 一度通り過ぎた交差点まで戻る
 一度通り過ぎた交差点まで帰る
類義語・反義語
類義語帰る
反義語行く、出る


2.逆行自動詞初級★★★
表記戻る
人・動物・乗り物が、それまでの進行方向とは逆の方向に移動する。
文型
<人・動物・乗り物>が<場所>をもどる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生が、急ぎ足で廊下を戻った
その男は、今来た道を戻っていった。
「バスはこれから、往路をそのまま戻るんですか?」「いえ、来た道とは違うルートを進みます」
「今からバスに乗るんですが、お店まではどうやって行けばいいですか?」「3つ目のバス停で降りたら、進行方向と逆に100メートルほど戻れば、店の大きな看板が見えますよ」
境内を出て少し戻ると、山側にその武将の墓地があります。
案内人が道を間違えたので、ずいぶん戻らなければならなかった。
コロケーション
<乗り物>が戻る
車、電車、バス、船、ゴンドラ
<場所>を戻る
道、廊下、往路、トンネル、街道
<数量詞>戻る
100メートル、2キロ、約100メートル、2キロほど
<様態>戻る
少し、ちょっと、だいぶ、かなり、そのまま
<場所>から戻る
ここ、そこ、バス停、駅、停留所
解説
語義1は、それまでの進行方向とは逆方向の移動と、起点までの到達が、いずれも焦点化される。これに対して語義2では、それまでの進行方向とは逆方向の移動のみが焦点化される。つまり、語義2では「戻る」が、移動の主体が通常、それまで通ってきた道(経路)をほぼそのまま引き返すという移動のありようを表し、その際、到達点は(ニ格名詞などによって)言語化されない。
誤用解説
「戻る」と類義的な動詞として、「引き返す」が挙げられる。「引き返す」は通常、予測しなかった出来事が生じ、予定していた行動が取れないために、それまでの進行方向とは逆方向に移動することを表す。なお「引き返す」の場合、移動の主体は通常、人間か乗り物に限定される。
 その猪は、来た道を引き返していった
 その猪は、来た道を戻っていった
 田中さんは、来た道を引き返していった
また、「引き返す」は、連用形名詞「引き返し」にすることができるが、「戻る」は連用形名詞「戻り」という形では使用しない。
 飛行機は、戻りを決定した。
 飛行機は、引き返しを決定した。
類義語・反義語
類義語引き返す
反義語進む


3.所有者への物の移動自動詞中級★★
表記戻る
ものが、それを元々所有していた人・組織・場所に移動する。
文型
<もの>が<人・組織・場所>にもどる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
財布が、ようやく持ち主に戻った
何者かによって盗まれたその名画は、無事に美術館に戻りました
「納め過ぎた税金は、戻ってきますか?」「はい、所定の手続きをお取りくだされば、還付されます」
修理に出していた車が、2週間経ってようやく戻ってきた。
盗品は、もうあなたの元には戻らないかもしれません。
先日、「受け取り拒否」で、送った荷物が自宅に戻ってきてしまった。
コロケーション
<もの>が戻る
財布、税金、車、盗品、荷物
<人>に戻る
本人、持ち主、送り主、こちら、(本人の)元
<組織・場所>に戻る
会社、美術館、自宅、こちら、ここ
<様態>戻る
すぐ(に)、やっと、ようやく、きっと、無事(に)
非共起例
<様態>戻る
 盗品は一生懸命戻った
 盗品は急いで戻った
 盗品は無事に戻った
 盗品はようやく戻った
語義1・2と異なり、語義3は物の移動である。したがって、主体(人)の意志のありようを表す副詞は共起しない。
<もの>が戻る
 店員から領収書が戻る
 店員から領収書を受け取る
 店員から領収書をもらう
語義3での<もの>は、人や組織などが元々所有していた物に限定される。
解説
語義1が人・動物・乗り物の、(人の意志に基づく)起点となる場所への移動であるのに対し、語義3は物の、元の所有者への移動である。すなわち語義3は「戻る」が、ある物が、何らかの理由で所有者の元を離れ、一定時間・一定期間が過ぎた後に、再びその所有者の元に移ることを表す。なお、ここでの「何らかの理由」は、他者から盗まれるケース(「盗品が戻る」)もあれば、本人の意志で手元から放すケース(「修理に出していた車が戻る」)もある。
誤用解説
他者からの返却が焦点化される場合には、「返る」が用いられやすい。
 テスト(の結果)が戻ってきた
 テスト(の結果)が返ってきた
また、他者に対する働きかけへの反応に関しては、「返る」が用いられる。
 相手から厳しい質問が戻ってきた
 相手から厳しい質問が返ってきた
類義語・反義語
類義語返る、返却される、返還される
反義語


4.元の状態への変化自動詞中級★★
表記戻る
変動や変化が生じた物事が、元々の状態になる。
文型
<こと>がもどる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
姉の意識が戻った
この村にも、何とか平和が戻りました
あの川の汚れが、再び元に戻ることはあるのだろうか。
「子どもたちにも、ようやく笑顔が戻ってきましたよ」「そうでしたか、安心しました」
何日経っても平熱に戻らないので、心配は募るばかりだ。
日中は日差しが強く、最高気温は34度前後まで上がる所があり、残暑が戻る見込みです。
stairsマウスピース矯正なら、目立たないし、元に戻りにくいって書いてあるよ。
コロケーション
<こと>が戻る
意識、平和、笑顔、体重、日常
<こと>に戻る
元、平熱、姿、平常、(元の)状態
<様態>戻る
再び、すぐ、やがて、やっと、必ず
非共起例
<こと>が戻る
 疲労が戻る
 疲労が回復する
 ダイヤの乱れが戻る
 ダイヤの乱れが元に戻る
 ダイヤの乱れが回復する
ガ格名詞が、「疲労」、「乱れ」など、マイナス評価を表す語であり、かつ、そこから安定した元の状態に変化することを表す場合には、「戻る」ではなく、「回復する」、あるいは「元に戻る」が用いられる。
解説
語義1が、位置変化であるのに対して、語義4は、人を取り巻く様々な状態の変化である。ただし、語義1と語義4は、主体が、変動を経て元の領域に変化するという点では共通している。なお、語義4では、「平和が戻る」のようにプラスの状態への回帰のケースもあれば、「残暑が戻る」、「(繊維に)汚れが戻る」(<繊維が再び汚くなる>というケース)のようにマイナスの状態への回帰のケースもある。
類義語・反義語
類義語回復する
反義語失われる


5.再開自動詞中級★★
表記戻る
人が、一度中断していた物事を再開させる。
文型
<人>が<こと・組織>にもどる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
健康を取り戻した弟が、仕事に戻った
いつかまた、元の生活に戻れるだろうか。
本人がチームに戻りたいと思っても、その願いは容易に叶えられるものではありません。
「来月、また、本社に戻ることになりました」「そうだったんですか。喜ばしいことですが、個人的にはとても寂しくなります」
小児がんは、治る見込みがなく死ぬ病気という認識を持っている人も未だ多いが、最近ではほとんどの子どもが治療を終え、学校に戻ることができる。
「そんなところで油を売ってないで、早く作業に戻りなさい」「あ、分かりました。ごめんなさい」
コロケーション
<こと>に戻る
仕事、生活、作業、業務
<組織>に戻る
学校、大学、チーム、本社、(元の)部署
<様態>戻る
再び、また、ようやく、やっと、すぐ(に)
解説
語義1と語義5は、人が自らの意志で元の領域に身を置くという点で共通している。ただし<元の領域に身を置くこと>が、語義1では<ある場所から移動して起点に到達すること>であるのに対し、語義5は<物事を再開すること>である。また、語義1の主体は人以外の動物や(人がコントロールする)乗り物でも可能だが、語義5は人に限定される。なお、語義5における<物事の再開>には、「仕事に戻る」、「作業に戻る」のように<行為の再開>というケース、及び、「本社に戻る」、「学校に戻る」、「元の部署に戻る」のように<所属の再開>というケースがある。
誤用解説
通常、物事の中断の理由・事情、そして、再開という出来事自体が重大な場合に、「戻る」と「復帰する」を置き換えられる。
 15分の休憩後、作業に復帰した
 15分の休憩後、作業に戻った
 難病を克服し、チームに復帰した
 難病を克服し、チームに戻った
 1年の自宅療養の末に、無事に職場に復帰した
 1年の自宅療養の末に、無事に職場に戻った
また、<行為の再開>の場合には「再開する」に置き換え可能だが、<所属の再開>の場合には置き換えられない。
 チームに再開する
 チームに戻る
 作業を再開する
 作業に戻る
類義語・反義語
類義語復帰する、再開する
反義語やめる、離れる、中止する、中断する


戻るの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<乗り物>が戻る
駐車場にが戻ったのも、いつ頃のことなのか警察は特定できていない。
(小野不由美著 『黒祠の島』, 2001, 913)
<場所>に[へ・まで]戻る
部屋に戻って三十分もしないうちに晴子がやって来た。
(日本推理作家協会編 『ザ・ベストミステリーズ』, 2000, 913)
たとえ友人と飲みに行っても、飲み屋から再び会社に戻って仕事をする。
(渡辺淳一著 『男というもの』, 1998, 914)
<場所>から戻る
三時を少し過ぎた頃、奈緒美が学校から戻って来た。
(岩橋昌美著 『空を失くした日』, 1996, 913)
病院から家にもどったのは午前三時だった。
(S.クーンツ著;高野裕美子訳 『大包囲網』, 1992, 933)
<様態>戻る
運転手は外に出て、すぐに戻って来た。
(黒川博行著 『絵が殺した』, 2004, 913)
<場所>を戻る
彼は助手としゃべりながら、通路をこちらへ戻ってくる。
(ベティ・ニールズ作;塚田由美子訳 『愛を演じて』, 2002, 933)
医者と別れてから、沖は、長い廊下を急ぎ足で戻った。
(城山三郎著 『毎日が日曜日』, 1976, 913)
<数量詞>戻る
7つ目のバス停で降りて、例の海岸沿いの道を5分ほど戻ると、おじさんの家だ。
(有本信雄著 『この宇宙に地球と似た星はあるのだろうか』, 2002, )
<様態>戻る
いましがたやってきた道を少し戻ることになる。
(佐々木譲著 『新宿のありふれた夜』, 1997, 913)
<場所>から戻る
そうでもなければ、品川から三里の夜道をもどってくるはずがない。
(杉本章子著 『水雷屯』, 2004, 913)
<もの>が戻る
無知で申し訳ないのですが、確定申告ってするとお金が戻ってくるんですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 保険、税金、年金)
昨年の暮れ出した一枚の年賀状が私のもとに戻ってきました。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<人>に戻る
(たしか郵便局での保管期間は1週間ぐらいだったと思うので送り主に戻ってしまいますよね。)
(Yahoo!知恵袋, 2005, 公共施設、役所)
<組織・場所>に戻る
打ったボールはまたバウンドしてこちらに戻ってくるのですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
<様態>戻る
「宝石はきっと戻ってきますよ。
(シドニィ・シェルダン著;天馬龍行訳;中山和郎訳 『明日があるなら』, 1988, )
<こと>が戻る
もし失なわれた記憶がもどったとしたら、その瞬間に彼女の精神は破壊されてしまうだろうよ」
(高橋義夫著 『北緯50度に消ゆ』, 1990, 913)
多少時間が掛かったがしだいに妻の顔にもやっと笑顔が戻りだした。
(木下寿孝著 『負の迷路』, 2004, 913)
<こと>に戻る
ウォーキングの効能はあらたかで、体重がに戻り、心配していたズボンの問題も解決した。
(津屋英樹著 『新・肥前の町から』, 2003, 291)
<様態>戻る
どのくらいの時間がたったのだろう、唐突に意識が戻った。
(森青花著 『さよなら』, 2003, 913)
<こと>に戻る
「入院中はよくなったけど、退院して日常生活に戻ったらまた悪化した」
(江部康二著 『Dr.江部のアトピー学校』, 2001, 494)
今はできるだけ安静を保つことで、元気になり、また仕事に戻ればいい。
(砂川啓介著 『カミさんはドラえもん』, 2001, 779)
<組織>に戻る
航海を経験してきた生徒たちは、人として一回りも二回りも成長して学校に戻ってきます。
(土佐広報, 2008, 高知県)
長男の秀樹が札幌の勤務を終え、東京の本社に戻って来た。
(阿刀田高著 『空想列車』, 1992, 913)
<様態>戻る
少しの時間でいいから、なんとか研究室に戻りたい」
(星野孝著 『がんはやっぱりストレスが原因だった』, 1994, 491)






























マウスピース矯正なら、目立たないし、元に戻りにくいって書いてあるよ。
白紙に戻る

意味
ある物事が、それまでの経緯をなかったことにして、当初の状態になる。
用例
紆余曲折あったが、最終的にダムの建設計画は白紙に戻った
コーパスからの用例
結婚が白紙に戻るところまではいかなくても、結婚式を延期できれば、そのあいだに事態が変わるかもしれない。(宮部みゆき著 『誰か』, 2003, 913)
振り出しに戻る

意味
ある物事が、変動・変化の末に、最初の状態になる。
用例
議論が停滞し、結果、ダムの建設計画は振り出しに戻った
コーパスからの用例
しかし,もし間違っていれば,研究は振り出しに戻ります.(塩谷泰広,谷口義明共著 『銀河もウルトラをめざす』, 2002, 443)
よりが戻る

意味
恋愛関係にある二人の関係が、一度は解消されたが、元通りになる。
用例
あの二人のよりが戻ることは、もう絶対にないだろう。
コーパスからの用例
だから、別れても時間が経つと頭が冷えて縒りが戻る、などということはあり得ない。 (藤原眞莉著 『姫神さまに願いを』, 2000, 913)
行きつ戻りつ

意味
人が、同じ道を何度も進んだり引き返したりする。
用例
彼女の家を訪れる決心がつかず、元の道を行きつ戻りつし、時間を無駄にしてしまった。
コーパスからの用例
波打ち際に舞い降りたミヤコドリが、陸地と海の境界線をいかにももったいぶった様子で行きつ戻りつしている。(ノーラ・ロバーツ著;芹澤恵訳 『盗まれた恋心』, 2004, 933)
意味
ある物事が、なかなか定まらず、同じ(ような)状態を何度も繰り返す。
用例
その日はどうしても、思考が行きつ戻りつしてしまった。
コーパスからの用例
この心理的な段階的変化は必ずしも順序立って移り行くようなものではないが、死に直面した人々がこうした心理状態を行きつ戻りつして闘いつづけていることは事実にちがいない。 (安藤治著 『福祉心理学のこころみ』, 2003, 369)
複合動詞 V1

戻り始める、戻り続ける、戻りかける
複合動詞 V2

駆け戻る、舞い戻る、立ち戻る、出戻る、馳せ戻る
複合名詞

後戻り、逆戻り、小戻り、素戻り、出戻り、戻り足、戻り売り、戻り掛け、戻り鰹、戻り船、戻り道
戻る(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形もどない
~なかったもどなかった
ます形もどり
~ませんもどりま
~ましたもどりした
~ませんでしたもどれまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形もど
て形って
た形った
可能形もど
受身形もどら
使役形もどら
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