崩すのコアイメージ

1.構造の瓦解他動詞初級★★★
表記崩す
塊の一部分を壊して、塊が構造の支えを失って下に落ちるようにする。
文型
<人・動物・自然現象>が<もの>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
押し寄せた波が子どもの作った砂山を崩した
立体的に盛られたサラダを崩そうとしたが、写真を撮るまで待つように言われた。
途中で崩さないようにトランプタワーを完成させるには、かなりの集中力が必要だ。
先日の豪雨によって崩された堤防を再建する工事が進んでいる。
この動物は天敵が見えると、自分で巣穴を崩して敵の侵入を防ぐ。
台風が接近しているので、工事現場の足場を崩させた
コロケーション
<塊>を
山、崖、砂山、枯れ木
<建造物>を
ビル、トンネル、塀、足場、巣
<立体的な構造物>を
サラダ、豆腐、かき氷、トランプタワー、書類の山
<手段>で
フォーク、ダイナマイト、足、スコップ、重機
<位置>から
端、下、手前、周り
解説
塊全体の形を圧力で一瞬にして変えるなら「(山を)潰す」、全体の構造に影響しない程度に塊の表面だけ壊すなら「(山を)削る」。
誤用解説
「崩す」は、地上にあるものが構造の一部を壊されることで重力によって全体の構造が下に落ちる場合に使う。そのため、「飛行機が雲を崩す」のように重力の影響を受けにくいものには「崩す」は使いにくい。
類義語・反義語
類義語壊す、潰す、削る
反義語建てる、積み上げる


2.変形他動詞初級★★★
表記崩す
整っている形を変える
文型
<人>が<ものの形>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
仮名は漢字を崩して作られた。
娘は初めておりがみで折った鶴の形を崩さないように、大事そうに手に乗せて帰ってきた。
あえて髪型を崩すことで、自然な装いに見えるようになった。
遠足に行くときは列を作って歩いていた小学生も、帰りには疲れて列を崩して歩いている。
満員電車に乗ってせっかく買ったケーキを崩されるぐらいなら、タクシーで移動する。
「どうぞ足を崩されて、楽にしてください」「ありがとうございます」
コロケーション
<整った形>を
形、髪型、ケーキ、字、列
<姿勢>を
姿勢、足、膝、体勢、構え、正座
解説
語義1との違いは、語義1は全体の構造が変わり、塊自体が崩壊して姿を失うが、語義2は形が変わるだけで、塊がなくなるわけではない。
また、「姿勢を崩す」の「姿勢」が人の姿を表す場合は語義2であるが、「ふざけた姿勢を崩さない」のような「態度」を表す場合は、語義4となる。
類義語・反義語
類義語壊す、潰す、変える
反義語整える、直す


3.状態の変化他動詞中級★★
表記崩す
正常な状態を変える。
文型
<人>が<体調・状態>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先週から急に寒くなって、体調を崩している
駅のホームで人に押されて、バランスを崩しそうになった。
休みが続いても生活のリズムを崩さないようにしないと、朝起きられなくなりますよ。
隣で泳いでいる選手のペースが速すぎて、自分のペースが崩されてしまった。
(ゴルフ)8番ホールでスコアを崩してからは、再び調子が上がることはなかった。
コロケーション
<体調>を
体調、お腹の調子、体、身、コンディション
<状態>を
バランス、ペース、リズム、スコア、スタイル
解説
それまで継続していた整った状態が変化するため、悪い方向へ状態が変わることを意味する。
類義語・反義語
類義語壊す
反義語整える


4.前提の喪失他動詞中級★★
表記崩す
これまで積み上げて作った前提や実績をなくす
文型
<人>が<前提・実績>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
育児は女性がするものという前提を崩そうと思って、政治家になりました。
話し合いの最後まで彼女はかたくなな態度を崩さなかった
たった一度のミスで苦労して築いた取引先との関係を崩してしまった。
彼はこれまでの清廉なイメージを崩すべく、新作映画では泥臭い役柄に挑戦した。
新たな証言によって、被告のアリバイは崩された
再開発が叫ばれるなか、下町の風情を崩すまいと、今も古い町並みを守る自治体がある。
コロケーション
<前提>
前提、アリバイ
<考え>
信念、夢、イメージ、固定観念
<関係性>
関係、立場、仲
<態度>
態度、構え、姿勢
<環境>
風情、景観、景色、眺め
解説
山のように積み上げて作ったものや、塊のように強固なもの、バランスがとれて安定しているものが分解するイメージ。「関係」や「態度」など抽象的な概念を山や塊のような物理的なものに見立てている。
類義語・反義語
類義語覆す、変える
反義語守る、保つ


5.表情の変化他動詞上級
表記崩す
緊張が解けて、こわばっていた顔が柔らかい表情になる。
文型
<人>が<顔・表情>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
授業中はとても厳しい先生だが、猫を見ると、とたんに相好を崩す
ファーストフードの店員に「スマイルひとつください」と注文すると、笑顔を崩さず対応してくれる。
医師によって手術の成功が告げられると、父親はようやく表情を崩した
読経する坊さんの頭にハエが止まったが、みんな神妙な面持ちを崩さず、その様子を見守った。
その男は娘を見たとたん、怖そうな顔をくしゃくしゃに崩した
コロケーション
<顔・表情>を
顔、表情、相好、面持ち、笑顔
類義語・反義語
類義語変える
反義語保つ


6.突破他動詞中級★★
表記崩す
敵の守りを突破する。
文型
<人>が<敵の守り>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山手から敵を崩そうとしたが、敵に計画を知られて失敗に終わった。
いくら軍勢が大きくなったとはいえ、敵の牙城を崩すほどではなかった。
(ボクシング)相手のガードを崩すために、チャンピオンはボディを打ちまくった。
憧れのAさんのガードを崩すには、趣味の話題で近づいて、少しずつ仲良くなるしかない。
(バスケットボール)敵のディフェンスラインを崩そうにも、全ての選手の戻りが早くて、つけいる隙がない。
(サッカー)相手のカウンターによって右サイドを崩された日本は、あっという間に同点に追いつかれた。
コロケーション
<相手>を
敵、相手
<要となる場所>
城、牙城、敵陣、要塞
<守りの体勢>を
守備、サイド、ディフェンスライン、ガード
解説
相手を強固な塊と見立て、語義1のようにそれを構造的に崩壊させられるように、相手の一部分から壊そうとする様子。
類義語・反義語
類義語破る、突破する
反義語守る


7.両替他動詞上級
表記崩す
小額の単位のお金に替える。
文型
<人>が<お金>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
駐車場の料金を払おうと思ったら小銭しか受け付けない機械だったので、近くの自動販売機で千円札を崩した
海外では高額紙幣を受け取ってくれない商店もあるので、あらかじめ崩したお金を持っておいたほうがいい。
崩したらすぐになくなってしまう気がするので、一万円札はできるだけ崩さないようにしている。
銀行の窓口でお金を崩そうとすると、手数料を取られる。
(ゲームセンターで)「早く100円を持ってきて」「今、崩してるところ」
コロケーション
<お金>を
一万円札、紙幣、大きいお金
<小額のお金>に
千円札、小銭、小さいお金
類義語・反義語
類義語両替する
反義語


8.お金の使用他動詞上級
表記崩す
貯めていたお金を使う。
文型
<人>が<お金>を崩す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
仕事を辞めたあとは、少しずつ貯金を崩して生活するつもりだ。
長年積み立てた生命保険を、私が入院しているうちに勝手に息子に崩された
大好きなゲームソフトを買うまでお年玉を崩さずに、貯金しておく。
急な出費があっても資産を崩さず乗り切れるように、予備費を備えておこう。
stairs貯金を崩して生活するっていうのもなあ……。
コロケーション
<まとまったお金>
貯金、財産、年金、資産、お年玉、保険
解説
お金が積み上がって山のようになった様子に見立てた使い方。
類義語・反義語
類義語使う
反義語


崩すの全体解説 外から力を加えることによって、山や建造物などの塊、もしくはそれに見立てたものの構造を壊したり、変形させたりすることが、各語義に共通するイメージとして挙げられる。中心義は、山や建造物など塊状のものを崩落させて壊すために、構造の一部(重力による上部からの崩落を期待するため、主に塊の下部)を壊したり、削り取ったりする。塊が崩落する性質のものではない場合は語義2の「変形」となる。語義6は相手や敵を、語義7や8はお金や貯金を強固な塊や山に見立てた使い方。
























▶全例文を聞く
<塊>を
毎日数百発の砲弾がこの岩崎谷付近に落下して、樹木の枝を吹っとばしたり,を崩したりした。
(司馬遼太郎著 『翔ぶが如く』, 1976, 913)
<建造物>を
あの土手を崩せば、水はまっすぐ、あの穴へ流れ込んでいくにちがいない。
(トマス・ハーディ著;はやしたかし訳 『水源の秘密』, 2003, 933)
<立体的な構造物>を
豆腐をくずし、野菜やひじきなどを加えて揚げたがんもどきなら料理の幅が広がります
(あんしんネット21編著 『安心キッチンクッキングノート』, 1998, 596)
<手段>で
道の幅を広げるためには、まず道になる部分の斜面をダイナマイトで崩して、ブルドーザーでその土砂を除く。
(野性時代, 2005, 文学/芸術)
<整った形>を
万が一味方が敗れて引き退くならば、敵兵は逃るる者を追おうとして,陣型を崩すでしょう。
(野中信二著 『西国城主』, 2000, 913)
<姿勢>を
それどころか流れてきた液体に軸足がすべり、ナオは体勢を崩した。
(狭山京輔著 『イレギュラー』, 2005, 913)
<体調>を
どちらかというと虚弱で、栄養・休息が足りないと体調を崩す。
(大沢剛監修 『からだ・メンテナンス』, 2003, 498)
<状態>を
今季は怪我でリズムを崩しましたが、また復調してきました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 乗り物)
<前提>
このアリバイを崩さない限り、犯人を追いつめることはできません。
(Yahoo!ブログ, 2008, 趣味)
<考え>
彼は、「客が泊まって、寝る」というホテルの旧来の概念を崩し、“ネバー睡眠”のホテルをつくろうと考えていたのである。
(中内功述;大塚英樹編著 『中内功200時間語り下ろし・好奇心に勝るものなし』, 1996, 335)
<関係性>
信頼関係を崩さないようにするのは大変ですが頑張ってね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
<態度>
キャリンは一瞬ひるんだものの、毅然とした態度をくずさない。
(サンドラ・マートン作;漆原麗訳 『彼の名は言えない』, 2002, 933)
<顔・表情>を
それでもオールデン氏は裁判官のような、おごそかなをくずしませんでした。
(ガートルード・ウォーナー著;中村妙子訳 『雪あらしのなぞ』, 1999, )
<相手>を
またキャプテンのベッカムは「相手を崩すには、あのゴールが必要だった」と先制点を評価した。
(週刊サッカーダイジェスト, 2005, スポーツ)
<要となる場所>
吉本がライバル松竹芸能の牙城を崩していくのは70年代になる。
(ダカーポ, 2003, 一般)
<守りの体勢>を
しかし,左サイドを崩されてシュートを許し、とうとう守備が決壊。
(Yahoo!ブログ, 2008, スポーツ)
<お金>を
普通自分の持っている5千円札をくずせばいいのに私の一万円札をよこせと言ってきました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, マナー)
<まとまったお金>
費用は二人の分とも,貯金を崩して私が出しました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, メンタルヘルス)






























貯金を崩して生活するっていうのもなあ……。
姿勢、膝、足を崩す

意味
姿勢を楽にする。
用例
両親に挨拶に来た恋人は、足も崩さずにずっと静かに座っていた。
コーパスからの用例
一色は姿勢を少しも崩さず答えた。(梓林太郎著 『尾瀬ヶ原殺人事件』, 2005, 913)
身を崩す、持ち崩す

意味
堕落する。
コーパスからの用例
二十歳そこそこで、ドラッグと売春に身を崩した者の持つ独特の退廃を漂わせている。(ジェイムズ・ガン脚本;入間眞編訳 『死者の夜明け』, 2004, 913)
意味
財産を使い果たす。
用例
身を崩す前にギャンブルはやめたほうがいい。
相場を崩す

意味
株式や為替の上昇傾向が変わる。
用例
円高に対する政府の為替介入が示唆されたが、相場を崩すほどのインパクトはなかった。
複合動詞 V2

切り崩す、取り崩す、突き崩す、着崩す、打ち崩す
崩す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形くずない
~なかったくずなかった
ます形くずし
~ませんくずしま
~ましたくずしした
~ませんでしたくずしまんでした
~ときすとき
ば形せば
意向形くず
て形して
た形した
可能形くず
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