壊すのコアイメージ

1.物の破壊他動詞初級★★★
表記壊す、こわす
人などが、硬い物に力を加えて、その形を変形させたり、バラバラにする。
文型
<人など>が<もの>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「お母さん、おもちゃが壊れちゃった」「壊れたじゃなくて壊したんでしょ!」
友人に車を貸したら、電柱にぶつけて壊された
男は手下に命じてドアの鍵を壊させた
「研究室のドアを壊したの、誰だ!」「しっ!先生が壊されたんだ」
道をふさぐ巨大な岩をダイナマイトで壊そうとしたが、壊せなかった
今、重機で家の隣の建物を壊しているので、うるさくてかなわない。
stairs当て逃げされて、サイドミラーを壊されちゃったんだよ。
コロケーション
<もの>を
ブロック、岩、ガラス、コンクリート、氷
<人工物>を
箱、人形、家具、鏡、鍵、ドア、建物、家、ビル、橋、ダム、道路
<道具>で
ハンマー、金づち、爆弾、ブルトーザー、重機、素手
<結果の様態>に
めちゃくちゃ、粉々、めちゃめちゃ、ぐちゃぐちゃ、木っ端みじん、見事、派手
<動作の様態>
簡単に、慎重に、たやすく、がんがん、すぐ、一気に、あっという間に、徐々に、どんどん、次々(に)
<程度>
少し、ほとんど、完全に、ことごとく、何もかも、根こそぎ、徹底的に、跡形もなく
<部分>から
内側、土台、~部分、外側、端、基礎、片端(片っ端)
非共起例
<もの>を壊す
 注射器の針を壊す
 紐を壊す
 注射器の針を折る
 紐を切る
線状のものには「壊す」は使えない。硬い物は「折る」、やわらかい物は「切る」が使われる。
<もの>を壊す
 紙を壊す
 紙を破る[裂く]
 ガラス板を壊す[割る]
面状で硬くないものには「壊す」は使えない。面状であっても硬い物であれば使える。
<もの>を壊す
 スポンジを壊す
 豆腐をつぶす[崩す]
 豆腐を壊す
立体状であっても、形が崩れないもの、柔らかい物には使いにくい。
解説
語義1「力を加えて、物の形を崩したりバラバラにする」という意味が「壊す」の基本的な意味である。人工物(製作物・建物・建造物)が対象物になることが多い。天然の「岩」や「氷」でも使われるが、岩が道をふさいで通行を妨げるなど何らかの「機能」を持っており、それを除去する場合などに主に使用され(例文4)、障害物を破壊して進むことで得点を稼いでいくゲームなどでよく使用される。また形状としては、かたいもの、立体的なものが対象物となりやすい。動作主体となるのは、人間以外に、動物や植物(例:木の根が長い年月をかけて岩を壊す)、ブルドーザーなどの重機、台風や竜巻、地震などの自然現象なども可能である。
類義語・反義語
類義語破壊する、崩す、割る、つぶす、砕く
反義語つくる


2.土地空間の破壊他動詞中級★★
表記壊す、こわす
一定の土地空間にあるものをすべてなくしてしまう。
文型
<人・重機・災害など>が<土地空間>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
津波によって町全体が壊された
ブルドーザーで山を一気に壊して宅地が造成された。
貴重な野生動物の住む森を壊しているのは人間だ。
私たちは先祖伝来の土地を壊そうとする者を許さない。
洪水は谷沿いの村々を一気に壊していった
震災によって壊された土地の復興は容易ではない。
コロケーション
<重機>が
ブルドーザー、重機
<災害>が
地震、津波、洪水、震災
<土地空間>を
町(街)、場所、土地、森
解説
ここでの「壊す」とは、町の建造物すべて、森の木々すべて、山の形すべてのように、土地空間に存在する物理的な物すべてを無くしてしまうこと・形を変えてしまうことである。「町を壊す」には、町に住む人々のつながりや行政など、社会的組織・機能としての「町」を壊すという意味もあり、語義12として提示している。
類義語・反義語
類義語破壊する
反義語


3.機能の損傷他動詞初級★★★
表記壊す、こわす
機械、機器などの機能を正常に働かない、使えない状態にする。
文型
<人など>が<人工物>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
うっかりコーヒーをこぼして、パソコンを壊してしまった
子どもに大切なラジコンを壊された
「誰?コピー機、壊したの」「実は先生が壊されたんだ」
「また携帯、壊しちゃたの?」「壊そうと思って壊しているわけじゃないよ」
男は手下に命じて監視装置を壊させた
この機械は大変デリケートですから、壊さないように丁寧に扱ってください。
stairsポケットに携帯を入れたまま洗濯して、壊しちゃったんだよね。
コロケーション
<人工物>を
機械、装置、カメラ、洗濯機、テレビ、パソコン、コピー機、ATM
<原因>で
~こと、~すぎ、不注意、~な扱い、~な使い方
解説
機能を持った物(器具、機器、機械など)の機能が正常に働かなくなることを意味する。この語義3では対象物は複雑な構造と機能を持つ機械や機器などになる。例えば椅子のようにその形が壊れて、機能が損なわれるのは語義1であるが、パソコンのように複雑な機器の場合、パソコンを落としてバラバラになった場合には「パソコンを壊した」は語義1の意味であり、外見は異常がないが電源を入れても起動しなかったり、正常に作動しない場合には語義3の意味となる。なお、対となる自動詞「壊れる」では、様々なコンピューター関連用語について「コンピューターに関連する用語+壊れる」と言う表現(例:ファイルが壊れる。データが壊れる)がよく使用されるため別語義(「壊れる」語義3)としてまとめているが、他動詞「壊す」では結びつきがさほど多くないため別立てにしていない。


4.身体機能の低下・喪失他動詞中級★★
表記壊す、こわす
自分の身体や身体部位の機能を低下・喪失させる。
文型
<人など>が<身体・身体部位>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「そんなに働きづめじゃ、いつか体を壊すよ」「わかってるよ。でも休めないんだ」
山田先生は今、お身体を壊されて休んでいらっしゃいます。
「カラオケに行こうよ!」「今、喉を壊していて歌えないんだ」
今日の試合では、肩を壊している山田君に代わって、鈴木君がピッチャーを務める。
海外では胃腸を壊しやすいので気を付けてください。
走り過ぎで膝を壊してしまった
コロケーション
<身体・身体部位>を
体(身体)、お腹(腹)、肩、喉、胃、膝、内臓、関節
<原因>で
ストレス、過労、スポーツ、暴飲暴食、薬、副作用、酒、牛乳
<原因>から
ストレス、プレッシャー、減量、生活、過労
<頻度>
よく、しばしば、しょっちゅう、たびたび、たまに
非共起例
<身体部位>を壊す
 足を壊す
 足を折る
指、足、腕、腕の骨など線状・細長い場合は「折る」が用いられる。
<身体部位>を壊す
 目を壊す
 脳を壊す
 頭を壊す
「身体部位+壊す」という表現は慣用句的な表現であり、どの身体部位でも使えるわけではない。腹など特定の部位と結びついた慣用句的表現となっているものが多い。また、脳(頭)のように自分の行動ではコントロールしにくい部位には使いにくい。
<身体部位>を壊す
 体調を壊す
 体調を崩す
 体を壊す
「体調」は身体部位ではなく、「壊す」ことはできず、誤用とされる。「体調を崩す」が正しいコロケーションであるが、「体を壊す」という用例も見られる。
解説
語義3「物を正常に機能できない状態にする」という意味の拡張として、話者(動作主)自身の身体や身体部位を機械・装置と見なし、自らの行為や飲食物、外的なストレスなどでそれらが正常に機能しない状態にすることを意味する。
誤用解説
 田中さんは、佐藤さんにたくさん食べさせて、(佐藤さんの)腹を壊した。
 佐藤さんは、田中さんにたくさん食べさせられて、腹を壊した。
この語義の文では、対象物は動作主自身の身体部位であって、動作主以外の身体部位には使えない。
類義語・反義語
類義語痛める
反義語


5.精神の異常他動詞上級
表記壊す、こわす
人の精神が正常に機能しない、異常な状態にする。
文型
<人・もの・こと>が<人・人の精神機能>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
極度の過保護は子どもを壊してしまう
戦争は人間を壊す
子どもの自我を壊すような教育が行われている。
今の自分を壊して、新しい自分を創っていきたい。
彼女は今までの自分を壊そうともがいていた。
過酷な環境に彼の人格は次第に壊されていった
コロケーション
<人>を
自分、人、人間、子ども
<人の精神機能>を
人格、自我、精神
解説
外的な要因・力によって、人間の精神機能をつかさどる部位が正常に機能しない状態にすること、また人間としての精神的統一性・調和を失わせ、言動が異常な状態にすることを意味する。ただし、自分の意思で自分を「壊す」場合は、新しい自分の再構築のための一過程として、むしろ成長を意味する。
類義語・反義語
類義語破壊する
反義語統合する(人格、自我)


6.物質の破壊他動詞上級
表記壊す、こわす
結合体を分解・分裂させ、元の性質や機能を変化・喪失させる。
文型
<物質など>が<物質・組織>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
放射線は体内を通過するとき細胞を壊してしまう
放射線を照射して癌細胞を壊す治療を続けている。
血小板が壊されると、血が止まらなくなる。
熱を通すことによって野菜の線維組織を壊し、吸収されやすくします。
ES細胞は受精卵の胚を壊してつくられるので、倫理的な問題が指摘されている。
新薬によってがん細胞が壊されていく様子が観察された。
コロケーション
<物質など>が
~物質、薬、酵素、放射線、酸、細胞、太陽光、ウイルス
<物質・組織>を
酵素、細胞、白血球、赤血球、遺伝子、膜、線維、分子、結晶、原子核、受精卵、色素
<原因>によって壊される
照射、放射線、酸、細胞、太陽光、ウイルス
解説
語義1「物の形をバラバラにする」行為の対象物が物質の組織や細胞などの生体組織の場合の用法である。より微小な物質の結合体である細胞や組織をバラバラに分解する。結果として性質が変わったり、異なるものになったり、本来の機能を失わせることになる。
類義語・反義語
類義語破壊する
反義語作成する、つくる


7.成分の分解・変質他動詞上級
表記壊す、こわす
栄養などの成分を分解して元の性質を変え、有用性を失わせる。
文型
<人・物質など>が<成分>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
長時間加熱すると、ビタミンCが壊されてしまいます
太陽光によって製品の成分が壊されることがあるので暗所に保管してください。
電子レンジを使うことで、調理過程で壊されるビタミンCの量を減らすことができる。
パパイヤに含まれている酵素が肉のタンパク質を壊して、肉をやわらかくします。
素材が持っている栄養成分をできるだけ壊さないように調理しましょう。
「どうして短時間で調理するのですか?」「調理によってせっかく素材が持っている栄養を壊したらもったいないでしょう?
コロケーション
<物質など>が
酵素、熱、酸、太陽光
<成分>を
成分、ビタミン、タンパク質、酵素、栄養素
解説
栄養などの成分組成を崩すことによって、元の性質を失わせる。栄養など、人間にとって有用な性質を損なわせることを意味する場合が多い。
類義語・反義語
類義語分解する、損なう
反義語生成する


8.味の変質他動詞上級
表記壊す、こわす
下手な調理などによって料理の味などを損なう。
文型
<人など>が<味>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
調味料の味が素材の味を壊している
素材そのものの持つ味と香りを壊さず調理するのが日本料理の特徴です。
沸騰させると昆布のうま味が壊されて、味が悪くなります。
「どうして弱火で調理するのですか?」「味噌の風味を壊さないようにするためです」
素材の持ち味を壊さないように、短時間で調理してください。
過剰な演出のせいで俳優の持ち味が壊されてしまっている。
コロケーション
<味>を
味、風味、香り、うま味、持ち味
解説
語義7では栄養などの成分を分解することを意味したが、ここでは味に限定した用法で、下手な調理や素材の扱い方によって、元は良かった料理・食べ物の味などを悪くする、損なうことを意味する用法である。「持ち味」は人の特性にも使われる。
類義語・反義語
類義語損なう、悪くする
反義語生かす


9.環境の破壊他動詞中級★★
表記壊す、こわす
自然・環境の調和を乱し、悪い状態にする。
文型
<人・もの・こと>が<環境>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
人類は長い年月にわたって自然環境を壊してきた
一度壊してしまった生態系を元に戻すのは難しい。
二酸化炭素の排出によってオゾン層が壊され、地球の温暖化が進行している。
自然を壊しているのは人間だ。
市街地への野生動物の出没は、乱開発によって森が壊されていることが原因だ。
国の環境政策は、逆に環境を壊そうとするものだ。
stairs野生動物の住みかも壊されていると思います。
コロケーション
<人・もの・こと>が
乱開発、放射能、二酸化炭素、~行為、活動、業者
<環境>を
自然、環境、地球、オゾン層、森、大自然、生態系
<原因>によって壊される
自然破壊、乱開発、放射能
解説
自然や環境は、本来、それ自体が調和した、人間にとって価値ある存在である。それを人間による乱開発や大量消費社会を背景にした環境汚染などによって悪い状態にすること、調和を失わせることを意味する。自然や環境をまとまりのあるもの、あるいは機能を持つ機械のようなシステムとして捉える比喩から生まれた表現。
類義語・反義語
類義語破壊する、荒らす、乱す
反義語回復する


10.景観の破壊他動詞上級
表記壊す、こわす
景観の調和を崩し、その結果、悪くする。
文型
<もの・こと>が<景観>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
新しくできた高層ビルが古都の景観を壊している。
美しい里山の風景が開発によって壊されていく。
古い街並みを壊す看板の撤去作業が進められている。
彼女の設計した新しいビルは、街の景観を壊すことなく溶け込んでいる。
景観を壊さない開発のあり方が模索されている。
この故郷の風景が永遠に壊されることがないよう願っている。
コロケーション
<もの・こと>が
開発、建物
<景観>を
景観、風景、外観、街並み
解説
美しい景観、風景とは、調和がとれ、まとまりを感じさせるものである。その調和・まとまりを崩し、見た目の悪いものにしてしまうことを意味する。
類義語・反義語
類義語損なう、台無しにする
反義語


11.雰囲気の変化他動詞上級
表記壊す、こわす
その場の雰囲気を一気に変える。
文型
<人・もの・こと>が<雰囲気>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「あ、おならが…」「もう!ムードを壊さないでよ!」
安っぽい音楽が店のムードを壊している
せっかく二人でいい雰囲気だったのに、突然入ってきた山田君にぶち壊された
日本人はどんな時でも、その場を壊さないように気を配る傾向がある。
彼女は会議の沈滞したムードを壊そうと、あえて過激な発言をした。
彼のジョークが、かたかった会場の雰囲気を壊して和やかなものにしてくれた。
コロケーション
<雰囲気>を
雰囲気、状態、場、調和、ムード、空気、平和
解説
場や人間同士の間には、特有の雰囲気やムードがある。それが、他の人の出現や言動、ものや出来事によって、ちょうど作られた物が壊されるように「壊され」、なくなってしまうことを意味する。ふつう、いい雰囲気やムードが消えてしまうときに使われる場合が多く、形容詞を付けず「雰囲気/ムードを壊す」だけならば「いい雰囲気/ムードを壊す」を意味する。しかし「かたい雰囲気/ムード/空気を壊す」のようによくない雰囲気をなくす場合にも使える。
類義語・反義語
類義語変える、消す
反義語つくる、生む、生み出す、醸し出す


12.社会組織の破壊他動詞上級
表記壊す、こわす
社会組織のまとまりを失わせ、機能を低下・喪失させる。
文型
<人・もの・こと>が<組織>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
震災は、多くの人の命を奪い、建物を壊しただけでなく、地域社会をも壊した
私を不幸にした彼の家庭を壊してやりたい
内乱によって国が壊され、多くの人々が国外に逃れた。
古い組織を壊すのは難しい。
若者たちは、政府を壊そうと運動を起こしたが、失敗した。
政府のやり方は、地方を壊そうとしているとしか思えない。
コロケーション
<もの・こと>が
戦争、震災、事故、政権
<組織>を
家庭、組織、世界、社会、国、コミュニティー、政府、地域
解説
物をバラバラにするという語義1の意味拡張で、社会組織のまとまり・つながりを喪失させバラバラにすることで、結果的に組織自体が消失したり、組織が組織としてうまく機能できなくすることを意味する。
類義語・反義語
類義語崩す
反義語創る(つくる)、築く、まとめる


13.社会・文化の破壊他動詞上級
表記壊れる、こわれる
社会・文化システムや制度を機能しない状態にし、破綻させる。
文型
<人・もの・こと>が<社会・文化>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
革命によって古い体制が壊された
国の補助金制度が日本の農業を壊した
伝統文化を壊さないよう、国が保護している。
効率主義がこの国の教育を壊しているのではないだろうか。
政治家と大企業だけが潤う今の経済システムを壊して、新たなシステムを構築しよう。
若者たちの行動は、古い社会秩序を壊そうとするものだ。
stairs日本の食文化が少しずつ壊されているのかもしれないわね。
コロケーション
<もの・こと>が
戦争、災害、~主義、力、権力
<社会・文化>を
経済、医療、農業、教育、文化、伝統、体制、制度、秩序、ルール、システム、仕組み
解説
語義3「機械をうまく機能しない状態にする」の意味拡張で、それまでうまく機能していた社会制度やシステムをうまく機能しない状態にすることを意味する。また、人工物の形を崩し、バラバラにし、元の形とともに機能・価値を失わせるように(語義1)、長い年月をかけて築かれた社会・文化や伝統を崩壊させ、機能しない状態にし、その価値を失わせてしまうことを意味する。
類義語・反義語
類義語破壊する、崩す、荒らす
反義語創る(つくる)、築く、立ち上げる


14.関係の破綻他動詞上級
表記壊す、こわす
人間関係や社会的なつながりを断ち切り、関係を悪化させる
文型
<人・もの・こと>が<関係>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私は軽率な行動で顧客との信頼関係を壊してしまった
「もう一度、やり直そう」「私たちの関係を壊したのはあなたでしょう?」
相手の信頼を壊すような行動は慎むべきだ。
あと10年は、両国の安定した関係が壊されることはないでしょう。
私は裕子に花子との友情を壊された
太郎に頼んで、次郎と花子の仲を壊させた
コロケーション
<もの・こと>が
行為、行動、言葉
<関係>を
関係、関係性、信頼、仲、友情、結束
非共起例
<関係>を壊す
 つながり/きずな/結び付きを壊す
 つながり/きずな/結び付きを切る/断つ/断ち切る)
「つながり」や「結びつき」のようには単純な線状のイメージのものは、動詞は「切る」(または「断つ」「断ち切る」)が自然で、「壊す」は不自然であるが、つながりが複線化・複雑化したり、強固なものになるに従がって、「壊す」も自然となる。
解説
語義1「物の形をバラバラにする」ように、構築されていた人間関係や信頼関係を断ち切り、バラバラにすることで、関係を失わせたり、うまくいっていた関係をうまくいかなくすることを意味する。
類義語・反義語
類義語断つ、断ち切る、切る、崩す
反義語結ぶ、築く、つくる、構築する


15.社会意識の変革他動詞上級
表記壊れる、こわれる
社会や人の障害となっているものを一気に取り除き、社会や人の意識を変える。
文型
<人など>が<隔てるもの>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
自分の心の中の壁を自分で壊さない限り、人間関係は築けない。
「若者みんなで力を合わせて、格差社会の壁を壊そう!」
シャイな日本人にとって、言葉の壁を壊すのは難しい。
文化と文化の間の障壁を壊していくような仕事がしたい。
マンデラ氏は人種差別の壁を壊し、平等な社会を実現しようとした。
社会における男女の壁を壊そうとする動きは年ごとに高まっている。
コロケーション
<隔てるもの>を壊す
壁、障壁、(殻、垣根)
非共起例
<隔てるもの>を壊す
 殻を壊す
 殻を破る
慣用句は「殻を破る」である。しかし、コーパスにも「殻を壊す」の用例が出現する。卵やさなぎなどを覆う「殻」は薄く平面的な形状であり、破壊動詞では「破る」がもっともあてはまるが、ある程度の硬さを持つことから、「壊す」の語義範疇に含まれる(語義1参照)。
解説
人と人、組織と組織の間、あるいは人の心の中にあって、人や社会の新しいあり方や関係構築の障害となっているものを一気に取り除き、新たな社会・人のあり方や関係をつくる。「壁を壊す」は慣用句となっている。
類義語・反義語
類義語崩す、なくす
反義語つくる(造る)


16.性質の喪失他動詞上級
表記壊す、こわす
人などが持っている優れた性質を失わせる。
文型
<人など>が<性質>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
現在の学校教育は子どもの個性を壊している
教師は生徒の持っている良さを壊さないよう、引き出していかなければならない。
あなたの良さを壊そうとするものとは断固戦いなさい。
この作品は素材の特性を壊さず生かしているのが特徴だ。
この映画では、脚本の稚拙さによって原作の良さが壊されてしまっている
プリザーブドフラワーは、特殊な技術によって生花を乾燥させ、その美しさを壊さず、長期間鑑賞できるようにしたものです。
コロケーション
<性質>を壊す
良さ、美しさ、特性、個性
解説
人やものなどが持っている優れた性質を、外的な力を作用させることによって失わせてしまうことを意味する。


17.思想の破綻他動詞上級
表記壊す、こわす
持っていた・信じていた考え方を否定し、変える。
文型
<人・もの・こと>が<思想>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
海外で出会った人々が私の外国に対する固定観念を壊してくれた
A社から新しく発表された車はこれまでのA社のイメージを壊すものだった。
子どもの夢を壊すようなことを言わないでください。
せっかくいい旅館に泊まっても、従業員の態度で気分が壊されてしまうことがある。
社会の古い価値観を壊し、新しい社会をつくっていきたい。
既成概念をぶち壊そう
コロケーション
<思想>を
イメージ、世界観、価値観、概念、観念、思い込み、思い、夢、気分、希望
解説
ある出来事などが、その人がそれまで堅く信じていた・抱いていたものの見方・考え方を否定し、変えることを意味する。「かたい物」をバラバラにして形を失なわせるという語義1の「壊れる」のイメージからの比喩的表現。
類義語・反義語
類義語損なう、崩す、否定する
反義語つくる、植え付ける、つくりあげる


18.人生の破壊他動詞上級
表記壊す、こわす
順調な生活・人生を維持できなくさせる。
文型
<人・もの・こと>が<人生>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大不況が人々の生活を壊した
私は彼に人生を壊された
大人たちの身勝手によって、子どもたちの未来を壊してはいけない
「どうしてこんなことをしたんだ」「せっかくつかんだ幸せを壊したくなかったんです」
人々の暮らしを壊すような政治には反対しなければならい。
平和な暮らしを壊そうとする輩から人々を守るのが警察官の使命だ。
コロケーション
<人生>を
生活、人生、日常、暮らし、将来、未来、幸せ、夢
<様態>に
めちゃくちゃ、ズタズタ、ぼろぼろ
解説
良い生活状況や順調な人生をだめにする、維持できなくすることを意味する。また悪い行いや出来事によって、良い将来・未来を期待できなくさせることを意味する。
類義語・反義語
類義語破壊する、台無しにする、崩す
反義語築く


19.計画の破棄他動詞上級
表記壊す、こわす
まとまっていた話や計画、約束を破棄させ、実現できなくする。
文型
<人など>が<計画>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
銀行の再建計画は政府の横やりにより壊されてしまった
「原発建設計画をぶち壊そう!」との掛け声のもとに、日本中から活動家たちが集まった。
A君は話を壊す名人だから、営業には向いていない。
儲かる話だっていうから乗ったのに、今さら話を壊されては困る。
助手によると、その共同研究の話は先生自ら壊されたらしい。
「花子のところに縁談が来ているらしいよ」「そんな縁談、壊してやる!」
コロケーション
<計画>を壊す
計画、縁談、話
解説
一度はまとまっていた、決まっていた、あるいは決まりかけていたことを一方的に取り消して白紙に戻すこと。「まとまっている物」を壊して「バラバラにして元の形を失わせる」意味(語義1)からの比喩表現。「話を壊す」「縁談を壊す」は慣用的な表現。
類義語・反義語
類義語取り消す、取りやめる、キャンセルする、破棄する、白紙に戻す
反義語まとめる、決める


20.両替他動詞上級
表記壊す、こわす
高額貨幣を少額貨幣に変える。
文型
<人など>が<貨幣>を壊す
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「あ、小さいのがない!ねえ、千円を百円に壊せない?」「壊せるよ」
「すみません。1万円札、壊してもらえませんか?」「あそこの両替機、使ってください」
千円を壊してもらったら、百円玉ばかりで財布が重くなった。
「ゲームしようよ!」「ちょっと待ってて。小さいのがないから、両替機で壊してくる」
「誰か、1万円札を千円札10枚に壊せる人、いませんか?」「私が壊そうか?」
コロケーション
<貨幣>を
<一万円、千円、一万円札、千円札、百円>
<貨幣>に
千円、千円札、百円、百円玉
解説
1万円紙幣を千円紙幣10枚に、千円紙幣えお百円硬貨10枚になど、高額貨幣を少額貨幣にすることを意味。「両替する」の慣用的な言い方。「壊す」の「大きなものをバラバラにする」意味の拡張で、一枚(一個)の高額貨幣を両替によって多くの少額貨幣にすること。対応する自動詞「壊れる」についても「1万円が壊れる」という言い方ができないわけではないが、使用がまれであるため、自動詞「壊れる」では慣用表現として扱っている。
類義語・反義語
類義語崩す、両替する
反義語


壊すの全体解説 「壊す」は、「割る」「破る」「崩す」などの動詞とともに「破壊動詞」に分類される。
破壊動詞群の中で、「壊す」の動作対象物(具体物)の形態上の特徴として、「かたいもの」「立体的なもの」という特徴があげられる。これらの対象物に強い力を加えて、その形を崩したり、バラバラにしたりして元の形を変えてしまう、失わせてしまうことが、「壊す」の第一義である(語義1)。
また、「壊す」の動作対象物(具体物)は、「人間によって製作された物(人工物)」(容器、家具、楽器、器具、機械など)である場合が多い。「人工物」は人間が作ったものであるから、製作意図、すなわち人間にとっての何らかの役割・機能・存在価値を持っている。したがって、「壊す」には「ものの機能・価値を損なわせる」意味も生まれる(語義3)。語義3は語義1から意味が拡張されたものとして説明されるが、実際の使用では、このような意味拡張と捉えるより、「壊す」に「物の形を損なわせる」意味(語義1)と「物の機能を損なわせる」意味(語義3)の大きく二つの意味があると捉えると便利である。
一方、対象物が抽象的なものである用法では、具体的な対象物(具体物)の形態上の特徴であった「かたいもの」「立体的なもの」、すなわち「かたい塊」というイメージが拡張されている場合が多い。「かたい塊」=「しっかりとまとまったもの」である。したがって、その対象物(抽象)としては、「本来しっかりとまとっている」性質を持つ自然環境、人間、社会組織などが受容されやすい。このため、「地球(環境)を壊す」「人格を壊す」のように、まとまりを持った本来のあるべき状態をバラバラの状態にするというマイナスの変化の意味のものが多い。しかし、凝り固まった悪いもの・古いものを壊すという意味の「古い体制を壊す」「既成概念を壊す」「壁を壊す」のようにプラスの意味の用例も多くある。
また、「しっかりとまとまっている」ということは、その塊を構成する要素間の「関係性がうまく機能している」「調和がとれている」というイメージにもつながる。このイメージから、それらが「壊された」結果、具体物の場合と同様に、生態系や社会的システムの機能・価値が失われる意味につながる。
具体物、抽象物ともに人間にとって機能・価値あるものを機能・価値のないものにするというマイナスの意味を持つ用例が多いことから、被害意識を表す「壊される」という受け身表現でよく使用される。
「壊す」には「お腹を壊す」「壁を壊す」のような慣用句的な表現もあるが、かなり自由に多種多様な語が対象語として用いられ、新しい比喩的表現が作り出されている。
























▶全例文を聞く
<人工物>を
「そうすると、サンルーム横南側の高窓のを壊して、被害者の屋内に侵入したということだな」
(清水一行著 『惨劇』, 1997, 913)
<道具>で
電動カッターでシャッターとドアの鍵が壊されて、什器やロゴ・マーク入りの備品がすべて持ち去られてしまったの
(南英男著 『罠道』, 2004, 913)
<結果の様態>に
黒いビニール袋の日除けは引きちぎられ、竹ひごは折られ、発泡スチロールの箱は粉々に壊され、辺りにはもやしの残骸が飛び散っています。
(村上政彦著 『ニュースキャスターはこのように語った』, 1997, 913)
<動作の様態>
家のドアは古くてくさっているから簡単にこわされてしまうよ!
(クリスティーネ・ネストリンガー作;松島富美代訳;荒井良二絵 『象さんの素敵な生活』, 1997, )
<部分>から
木でできているなら内側から壊して脱出できるかもしれない。
(沢井鯨著 『P.I.P.』, 2000, 913)
<重機>が
ショベルカーが五メートルほどの至近距離で、Xホテルの建物の一部を壊していたのだ。
(牛場靖彦著 『モンダイは君のその喋り方と態度だ!』, 2002, 361)
<人工物>を
対応してないメモリを買っても、メモリとパソコンを壊すだけです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
<原因>で
PCパーツや家電製品など、使用者の過失で壊してしまったり、単なる相性による不具合の場合もあるので返金後の返品という方法を、了承してもらうのは難しいでしょうね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!オークション)
<身体・身体部位>を
こんなに食べたらお腹をこわすんじゃないかと心配したほどです。
(石森禮子病気監修 『オカメインコの本』, 2005, 646)
ただ、無理をしてをこわさないといいんだけど
(笠原のり子著 『ザ・ミルキー・ウェイ』, 2002, 913)
私の友達に、3年間毎日飲み続け、肝臓を壊し入院した人がいます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
<原因>で
その時の同僚が愚痴を聞いてくれなかったら、ストレスで体を壊していたと思います。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
<物質など>が
生物の誕生は三五億年ほど前だが、そのあとじつに三〇億年以上、陸上には棲めなかった。強烈な紫外線が遺伝子のDNA分子をこわすからだな。
(日本化学会編 『化学・意表を突かれる身近な疑問』, 2001, 430)
ビタミンCには細胞間の強化という効果があり風邪のウイルスが細胞間の壁を壊して体内に浸透しようとする働きを防ぐ。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<物質・組織>を
放射性ヨードは、甲状腺細胞を部分的に壊し、甲状腺ホルモンを作り出す力を弱めるため、バセドウ病を治すことができます。
(たかおか 市民と市政, 2008, 富山県)
<味>を
「素材本来のうまみを壊さないように」というシェフの心遣いが息づく繊細な味は、感動モノのおいしさだ。
(COSMOPOLITAN 日本版, 2003, 一般)
<環境>を
自然を徹底的には壊さないこと、自然とともに生きることが大前提であったからだ。
(藤島弘純著 『日本人はなぜ「科学」ではなく「理科」を選んだのか』, 2003, 375)
残される環境とは、美しいものであり、美しさを感じることのできない環境を、人間は壊してしまう。
(松岡浩正,中野博著 『環境のことを考えた私たちの家造り』, 2001, 527)
<景観>を
一部の人のモラルの欠けた行動が自然環境やまちの美しい景観を壊しています。
(広報きりしま, 2008, 鹿児島県)
人が理想を求めて新しい社会を構築するためとはいえ、いたずらに、それまで永い時間をかけて神と人が築いてきた風景を壊してはならない。
(田窪恭治著 『表現の現場』, 2003, 704)
<雰囲気>を
せっかくいいムードになっているのに、この雰囲気を壊すのは惜しい。
(渡辺淳一著 『愛のごとく』, 1984, 913)
<組織>を
とやかくいっても、家庭をこわす気まではなさそうである。
(渡辺淳一著 『うたかた』, 1990, 913)
<社会・文化>を
それは家族制度を壊したのも法律であることからも明らかである。
(文藝春秋編 『日本の論点』, 1997, 304)
第二の問題は、加工食品時代が日本の食文化を壊しつつあることである。
(河井智康著 『魚』, 1986, 661)
<関係>を
社会生活をしていくうえで、人間関係を壊さない程度に、どうやってお金を使わない工夫をするか、それがたいせつなのです。
(邱永漢著 『お金の原則』, 2001, 338)
<隔てるもの>を壊す
しかし、壁をつくるのも人間なら、をこわすことができるのも人間。
(橋本勝絵と文 『Peace』, 2004, 319)
<性質>を壊す
そのために、子どもの持つ個性を壊さず、伸ばすことを基本方針にするとき、子どもの個性に合った学校を選択することが、ベストと言えるでしょう。
(穂坂邦夫著 『どの子も一番になれる』, 2004, 370)
<思想>を
私に対する彼女のイメージを壊すんじゃないかと、恐くて妻に話せませんでした。
(ペッパー・シュワルツ著;豊川輝,けい悦子,豊川典子訳 『結婚の新しいかたち』, 2003, 367)
鉄斎はちょっと気分を壊していった。
(童門冬二著 『夜明け前の女たち』, 1997, 913)
<人生>を
私に男の人の将来を壊す勇気はありません。
(ジェーン・コンドン著;石井清子訳 『半歩さがって』, 1986, 367)
保護されてきたとはいえ、彼らの生き方を我々が一度壊してしまってますから
(原子禅文;亀畑清隆写真 『旭山動物園のつくり方』, 2005, 480)






























当て逃げされて、サイドミラーを壊されちゃったんだよ。
ポケットに携帯を入れたまま洗濯して、壊しちゃったんだよね。
野生動物の住みかも壊されていると思います。
日本の食文化が少しずつ壊されているのかもしれないわね。
身体(体、からだ)を壊す

意味
体の調子が悪くなる。病気になる。体調を崩す。
用例
いくら稼がなければならないといっても、働きすぎで身体を壊してしまっては、元も子もない。
お腹(腹)を壊す

意味
下痢をしている。下痢気味である。腹の具合が悪い。
用例
「さっきから何度もトイレに行ってるけど、どうしたの?」「ちょっとお腹壊しちゃって…」
壁を壊す

意味
人と人、組織と組織の間、あるいは人の心の中にあって、人や社会の新しいあり方や関係構築の障害となっているものを一気に取り除き、新たな社会・人のあり方や関係をつくる。
用例
一人一人の心の中の壁を壊せば、社会から差別はなくせる。
複合動詞 V1

打ち壊す、叩き壊す、取り壊す、踏み壊す、ぶち壊す、ぶっ壊す
複合動詞 V2

壊し屋
壊す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形こわない
~なかったこわなかった
ます形こわし
~ませんこわしま
~ましたこわしした
~ませんでしたこわしまんでした
~ときすとき
ば形せば
意向形こわ
て形して
た形した
可能形こわ
受身形こわさ
使役形こわさ
閉じる