着るのコアイメージ

1.上半身あるいは全身を覆う衣類の着用他動詞初級★★★
表記着る
人が上半身あるいは全身を覆う衣類を身につける
文型
<人>が<上半身あるいは全身を覆う衣類>を着る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「あれ、社長の奥さんだ」「コンビニなのに、毛皮を着るところがすごいな」
「うそ!あれ、課長じゃない?」「え!あのジャージーの上下を着ている人?信じられない。会社だとあんなにおしゃれなのに…」
「田中さんの結婚式、何を着ようかな」「この間買ったジャケットを着たらどう?」
「先輩のジャケット、いいですね。どこのブランドを着られているんですか?」「あ、これ、オーダーメイドなんだよ」
「どうしたの?何か機嫌悪くない?」「今日着るつもりだったお気に入りのワンピースを妹に着られたから腹が立ってるの」
「子どもは元気ですね。冬でも半袖ですよ」「私も子供の頃、親に半袖を着させられましたよ」
stairs昨日の創立記念パーティーで係長がタキシード着てたの見た?
コロケーション
<上半身あるいは全身を覆う衣類>を
① 衣類:シャツ、ジャケット、スーツ、着物、コート
② 衣類のデザイン:長袖、振袖、タートルネック、最新のデザイン、ダブル
③ 衣類の材質・材料:カシミア、ダウン、毛皮、ニット、ジーンズ
④ 衣類の色や柄:無地、チェック、豹柄、赤、明るい色
⑤ 衣類の価値:安物、ブランド、古着、ヴィンテージ、ぼろ
⑥ 衣類のサイズ:Mサイズ、9号、きつめ、大きめ
⑦ 装いのスタイル:トレンド、お揃い、夏物、私服、制服   
⑧ 衣類の特徴:大島(紬)、手作り、絣
⑨ 覆うものをつける場所:上、上下
<場面>で
入学式、パーティー、ビジネスシーン、デート、本番
<覆う場所>に[へ]
(Tシャツの)上、(コートの)中、(セーターの)下
<体の一部を覆う衣類>に
Tシャツ、ワンピース、ジーンズ、ジャケット、キャミソール
解説
・この語義は「羽織る」「まとう」などと異なり、衣類などを腕を通して身につけることを意味する。
ジャケットを着る: ジャケットの袖に腕を通して着る
ジャケットを羽織る: ジャケットを肩に載せる(袖を通さない)
白い服を着る: 白い服の袖に腕を通して着る
白い服をまとう: 白い服を布をまきつけるようにして身につける
・基本的に衣類あるいは衣類に準ずるものを身につける場合に使用する。帽子やマフラーなど、衣類以外のものを身につける場合は使用しないのが普通である。しかし本来衣類ではないものを衣類として身につける場合は使用が可能になることもある。
最近着る毛布が人気だ: 袖をつけるなどしてガウンのように成形した毛布を指す
・西日本では「布団を着る」のように「布団を掛ける」という意味で「着る」が使われる。
・何かの上(下の例の場合はワイシャツの上)に別のもの(下の例の場合はジャケット)を着ることは表せるが、何かの下(ジャケットの下)に別のもの(ワイシャツ)を着る場合は、「ジャケットに」と言うだけでは不十分で、「ジャケットの下に」と言う必要がある。
 とっておきのワイシャツにジャケットを着てデートに臨む。
 ジャケットにとっておきのワイシャツを着てデートに臨む。
 ジャケットの下にとっておきのワイシャツを着てデートに臨む。
類義語・反義語
類義語着用する、身につける
反義語脱ぐ


2.下半身を覆う衣類の着用他動詞中級★★
表記着る
人が下半身を覆う衣類を身につける
文型
<人>が<下半身を覆う衣類>を着る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「ねえ、最近は股引きを着る若い人が増えているんだって」「ああ、おしゃれなのが増えてきたからね。僕も愛用しているよ」
最近の若者は着物や袴を着たことがない人が多い。
「あ、これ、沖縄に行った時の写真?」「ああ。11月なのに半袖や短パンを着ている人ばかりだろ?すごく暖かかったよ」
「お前、いつもそのジーパンを着ていない?」「いや、他のパンツを着ようとするんだけどさ、合わせる上がないんだよな」
新しく買ったジーンズを弟に先に着られたので落ち込んでいる。
「もう、うちの母親ってば寒いからって、こんな厚手のタイツを着させるんだもん。恥ずかしい!」「妊婦なんだもん。暖かくしなくちゃ」
コロケーション
<下半身を覆う衣類>を
ズボン、パンツ、タイツ、ジーパン、袴
<場面>で
入学式、パーティー、ビジネスシーン、デート、本番
<覆う場所>に[へ]
(Tシャツの)上、(コートの)中、(セーターの)下
<体の一部を覆う衣類>に
Tシャツ、ジャケット、キャミソール、セーター、半袖
非共起例
<下半身を覆う衣類>を
 靴下[(下着の)パンツ、おむつ]を着る
 靴下[(下着の)パンツ、おむつ]を履く
下半身を覆う衣類の中でも、下着の上から着用する衣類で、なおかつ足を通して着用するものに対して「着る」を使用する。
解説
この語義では「長袖・長ズボンを着る」「Tシャツとズボンを着る」「ジャケットやズボンを着る」のように、基本的に上半身に着るものと組み合わせて使用する。この場合、「はく」を使用することはできない。
 長袖・長ズボンを着る
 長袖・長ズボンをはく
上半身と組み合わせることなく「ズボンを着る」という形で使用することはほとんどなく、下半身を覆う衣類に対しては原則として「はく」を使用する。
類義語・反義語
類義語はく、着用する、身につける
反義語脱ぐ


3.衣服以外の衣類の着用他動詞初級★★★
表記着る
人が衣服以外の衣類を上半身もしくは全身に身につける
文型
<人>が<衣服以外の衣類>を着る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
体操選手は普段の練習からレオタードを着ている人が多い。
「救命胴衣は着ないとだめなの?ださいから嫌なんだけど」「でも、もしもの時のために着たほうがいいよ」
「ねえ、まだ?」「今着ているところ。競泳用の水着ってきついから着るのに時間がかかるんだもん」
「え、先生もハッピを着られるんですか?」「そうだよ。だって学園祭だろ?盛り上げなくちゃ」
母にお気に入りのエプロンを着られてしまったので、調理実習でださいエプロンを着るしかなかった。
「あ、雨が降り出した」「じゃ、子どもたちに合羽を着させないと
コロケーション
<衣服以外の衣類>を
エプロン、水着、ハッピ、合羽、救命胴衣
<覆う場所>に[へ]
(Tシャツの)上、(コートの)中、(セーターの)下
<体の一部を覆う衣類>に
Tシャツ、ワンピース、ジーンズ、ジャケット、キャミソール
解説
<衣服以外の衣類>は、衣服の上から身につけるものが多い。
類義語・反義語
類義語着用する、身につける
反義語脱ぐ


4.集団・職業への帰属他動詞中級★★
表記着る
人が集団のメンバーになったり特定の職業に就いたりする
文型
<人>が<集団や職業を象徴する衣類など>を着る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
やっとプロの世界に入り、憧れのユニホームを着ることになった。
体が弱かったので、軍服を着ないですんだ。
「おじいちゃん、高校生になるの!?」「ああ、昔はお金がなくて行けなかったからね。ずっと学生服を着たいと思っていたんだよ」
法服を着ているからには、裁判官として常に公平でなければならない。
「合格おめでとう!」「ありがとう。ああ、ついにあの高校の制服が着られるのね!」
「あんた、どういうつもりで白衣を着ようと思ったわけ?」「いや、医者になれば金が稼げるかと思って…」
コロケーション
<集団や職業を象徴する衣類など>を
白衣、ユニホーム、制服、軍服、コスチューム
解説
この語義は、集団(会社やスポーツチーム)や職業を象徴する衣類などを身につけることを述べることによって、集団や職業に就くことを意味する。
誤用解説
アルバイトなど一時的な仕事に就く場合には使用できない。
  お歳暮のシーズンだけ百貨店の制服を着ることになった。
  大学を卒業し、百貨店の制服を着ることになった。
類義語・反義語
類義語
反義語脱ぐ


5.不利益を引き受ける他動詞上級
表記着る
人や組織が本来は引き受けなくてもよい不利益を引き受ける
文型
<人・組織>が<不利益>を着る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「どうして無実の罪を着るような真似をしたんだよ」「他に方法がなかったんだよ」
「お前の罪は俺が着るから心配するな」「どうしてそこまでしてくれるの?」
「冤罪を着たことがある人は警察が信じられなくなるんだろうな」「そうだね」
彼女は黙って、泥棒の汚名を着ている
他人の罪を着ようとする奴がどこにいるんだよ。
子会社に汚名を着させることで、親会社はダメージを最小限にとどめるつもりだろう。
stairsええっ、じゃあ佐藤は汚名を着せられたってことかよ。
コロケーション
<不利益>を
罪、汚名、冤罪
解説
・この語義は、人や組織が本来は引き受けなくてもよい不利益を、本人の意思に関わらず引き受けることを意味する。そのため「無実の罪」「他人の罪」等、自分が罪を犯していないことを表す名詞とともに用いられる。
・他人に不利益を引き受けさせる場合、使役形の「汚名を着させる」「罪を着させる」を使用することが可能であるが、「汚名を着せる」のような他動詞のほうがよく使われる。
類義語・反義語
類義語かぶる、負う、引き受ける
反義語脱ぐ


着るの全体解説 1 「着る」は、主語(が表わすもの)が自身の上半身、全身あるいは下半身に衣類を身につけることが本義である。
2 「着る」は、主語(が表わすもの)が自身の身に衣類をつける場合にだけ用いられ、他の人の身(の一部)に付ける場合は、使役の形の「着させる」か、他動詞の「着せる」を用いる。
私はドレスを着た
私は人形にドレスを着せた[着させた]。
3 他動詞「着せる」と「着る」の使役形「着させる」には基本的に以下のような意味・用法の違いがある。
子どもに寝間着を着せた: 親が手伝って子どもに着せる(親と子どもが協力して動作を行う)、あるいは子どもは何もしないで親が一人で着せる(親が動作を行う)
子どもに寝間着を着させた: 親は指示をするが実際に手助けはせずに子どもが自力で寝間着を着た(子どもが動作を行う)
























▶全例文を聞く
<上半身あるいは全身を覆う衣類>を
その朝、筈見は上品な薄茶のスーツを着ていた。
(大沢在昌著 『標的はひとり』, 1987, 913)
その秋初めての長袖を着ようと、簞笥から絹のブラウスを取りだした。
松本侑子著 『花の寝床』, 1999, 913)
大神林はトレーニングウェアの上下を着ていた。
(荻原浩著 『なかよし小鳩組』, 2003, 913)
<場面>で
私は成人式に出る予定がなかったので、お正月に晴れ着を着て、神社にお参りにいって、写真館で写真撮りました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, ファッション)
<覆う場所>に[へ]
ヒロ子はセーターの上にちゃんちゃんこを着て出てきた。
(高橋三千綱著 『九月の空』, 1978, 913)
<体の一部を覆う衣類>に
そのジーンズにそんなトップを着たら、おへそが見えるからだめだ。
(ウィリアム・J.ドハティ,バーバラ・Z.カールソン著;笹野洋子訳 『家族の時間』, 2005, 367)
<下半身を覆う衣類>を
ヒナナは、紺色の半そでトレーナーに、ひざたけのジーンズを着ていました。
(くぼしまりお作;佐竹美保絵 『ブンダバー』, 2004, 913)
<場面>で
卒業式で袴を着るのですが、髪飾りを生花にしようかな、って思います。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 冠婚葬祭)
<衣服以外の衣類>を
新聞配達をしていますが、雨の日など合羽を着て配達します。
(Yahoo!知恵袋, 2005, アウトドア)
大人は水着を着なくても子どもを遊ばせることができるが、ぬれてもいい服装で行こう。
(子育てサークルwe・net著 『子どもとでかける栃木あそび場ガイド』, 2005, 291)
<集団や職業を象徴する衣類など>を
やはり白衣を着ているその老人は、ここの院長だろう。
(吉行淳之介著 『吉行淳之介全集』, 1998, 918)
レセプションには制服を着たボーイがいた。
(橋田信介著 『戦場特派員』, 2001, 916)
<不利益>を
「暴徒」の汚名を着て生きて行くのは自分一人で十分であった。
(岡田和裕著 『囚人部隊』, 1998, 913)






























昨日の創立記念パーティーで係長がタキシード着てたの見た?
ええっ、じゃあ佐藤は汚名を着せられたってことかよ。
(権力、権威、権限、立場、職権、地位、威光、社会の倫理など)を笠に着る

意味
権勢のある後援者などを頼みにしたり、自分に保証されている地位を利用したりしていばる。また、自分の施した恩徳をいいことにして勝手なことをする。
用例
「あの人、いつも偉そうだよね」「親の威光を笠に着てね。自分一人では何もできないのに」
コーパスからの用例
自分を弱者の立場に置くことで、社会の倫理を笠に着る。ずるいが、うまいやり方かもしれません。(『子どもの心を鍛える学校』,2002)
恩に着る

意味
受けた恩をありがたく思う。
用例
例文
コーパスからの用例
コーパス用例
着の身着のまま

意味
今身につけている衣類以外は何も身につけていない。
用例
夜寝ていたら非常ベルが鳴ったので、着の身着のままでアパートの部屋を飛び出した。
コーパスからの用例
難民といえば、すぐに思い浮かぶのは戦火や紛争から着の身着のまま逃れてくる人たちだろう。(百瀬和元著『婦人之友』第96巻第4号、2002)
ボロを着ていても心は錦

意味
粗末な衣服を着ていても心は豊かで気高い。「ぼろ」とひらがなで書くこともある。
用例
「お母さん、お下がりの制服やだ。私だけなんだよ」「そんなこと言わないの。ボロを着ていても心は錦って言ってね、人間は心が一番大切なんだよ」
コーパスからの用例
ボロは着てても心は錦ィ…♪ 昔、ある歌手が、キンキラキンの着物きて、威勢よく歌っていたけれど、この唄本当かしらね?そんな人、居たとしても、ごく僅かだと思う。ボロを着てれば心もボロになるのがオチだ。心が錦だったら、外面も自然と錦になるものだ。(八木葉生著『西オーストラリア花物語』、2001)
複合動詞 V1

着替える、着飾る、着こなす、着慣れする、着膨れする、着やせする、着付ける、着込む、着流す、着崩す
複合名詞

重ね着、着替え、着付け、着ぐるみ、着膨れ、着やせ、下着、水着、運動着、部屋着、野良着、割烹着、厚着、薄着、晴れ着
着る(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形きる
ない形きない
~なかったかった
ます形
~ませんきま
~ましたした
~ませんでしたきまんでした
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て形きて
た形きた
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