切るのコアイメージ

1.道具で分断他動詞初級★★★
表記切る
人が一続きのものを鋭利な道具で分断する。
文型
<人>が<道具>で<もの>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は布の端まで縫い終わると、ハサミで糸をチョキンと切った
ケーキを等分に切ろうとしたが、大きさがバラバラになってしまった。
「カッターで紙を切られるときは、下に何か敷いておかないと机に傷がついてしまいますよ」
夜遅くに裁縫をして、歯で糸を切っている母をときどき思い出す。
「ずいぶん短く前髪を切ったんだね」「お母さんに切られたの」
初めて子どもに包丁でリンゴを切らせたが、見ていてハラハラした。
stairs洗ってよく水けを切ったキャベツをざく切りに切ります
コロケーション
<もの(線状)>を
糸、テープ、鎖、~線、ケーブル、針金、ライン
<もの(棒状)>を
木、枝、棒、幹、パイプ、配管
<もの(平面状)>を
紙、板、布、ガラス、膜
<もの(一般)>を
野菜、肉、果物、材料、粘土
<もの(身体)>を
髪、爪、ヒゲ
<刃物>で
ハサミ、包丁、のこぎり、カッターナイフ、爪切り、斧
<道具>で
歯、糸、爪、黒曜石、レーザー、箸
<サイズ>に
大きさ、長さ、~幅、~cm、~角、厚め、半分、等分、~分の~、一口大
<形状>に
斜め、縦、横、水平、十字、三角形、短冊、さいの目、ジグザグ、ズタズタ、バラバラ
<様態>
ズバッと、バサッと、バッサリ、チョキチョキ、ザクザク
非共起例
<手>で
 手で木の枝を切る
 手で木の枝を折る
 手で紙を切る
 手で紙を裂く[破る、ちぎる]
「切る」は刃物を使って分断する。手の場合は、棒状のものは「折る」、平面状のものの場合は「裂く」「破る」「ちぎる」が使われる。
解説
一続きの物を鋭利な道具、特に刃物で分断する行為。糸などの場合、刃物などを用いずに分断する場合にも使われることもあるが、これは語義2で扱う。「豆腐を一口大に箸で切って食べる」のように柔らかくて切れやすく、鋭利な道具ではない場合もここに含める。棒状のものや平面状のものの場合には、手で分断する場合はそれぞれ「折る」、「裂く」(または「破る」「ちぎる」)が使われる。
行為の目的によって、「大根を2センチ幅に切る」「B5の紙を短冊状に切る」のようにもの全体を分かれた状態にすることに意味の焦点がある場合もあれば、「爪を切る」「髪を切る」「スカート丈を3センチ切る」のようにものの本体部分の長さを短くすることに意味の焦点がある場合もある。
類義語・反義語
類義語断つ、裁つ、刻む、カットする、裂く、分割する
反義語つなぐ


2.力で分断他動詞初級★★★
表記切る
人・動物が一続きのものに力を加えて分断する。
文型
<人・動物>が<もの(線状)>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
犬が繋がれていた鎖を切って逃げた。
「あんまり強く引っ張ると、テープ切れちゃうから気を付けてね。…あーあ、切っちゃった」「どうしよう…」
けんか凧では、相手の凧に糸を切られたら負けになる。
魚はテグスを切ろうとして、岩の下に潜り込んだ。
逃げようとする大物と、釣り糸を切らせまいとする釣り人の長い闘いが続いた。
カナヘビは敵に襲われたとき、自ら尻尾を切って逃げていきます。
コロケーション
<もの(線状)>を
糸、テープ、尻尾、鎖、首輪、釣り糸、テグス
<様態>
ぷつんと、ブチっと
解説
道具を用いずに切る場合。道具を用いるのは人に限られるが、道具を用いない語義2では動物も主体になる。
類義語・反義語
類義語噛み切る、引きちぎる、
反義語


3.決壊他動詞上級
表記切る
水や土砂が土手や堰の一部を崩し、水や土砂が流れ出る状態にする。
文型
<水・土>が<堰>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
台風による大雨で、川の水が土手を切って市街地に流れ込んだ。
雨の中、土嚢を積んで補強したが、大量の土砂にあっという間に堰が切られてしまった。
一度堰が切られると、あっという間に流域の街は流されてしまった。
津波で堤防が切られて被害が出たことから、より高くより厚い堤防の建造が計画された。
多くの箇所で土手が切られているので、修復工事が追いつかない状況だ。
このままではたまった土砂で堰が切られて一気に流れ出る恐れがあったので、堰の一部を切らせた
コロケーション
<水・土>が
大水、津波、土砂、洪水
<堰>を
堰、堤防、堤、土手
解説
大量の水や土砂が、土手や堰を、水や土砂が流れ出る状態にまで崩す、壊す。例文のように「川の水が土手を切る」「土砂に堰が切られる」「津波で堤防が切られる」と言えるが、いずれも自動詞で「川の水で土手が切れる」「土砂で堰が切れる」「津波で堤防が切れる」方が自然。ただし、慣用句の場合は「堰を切ったように」の方が「堰が切れたように」より自然。
類義語・反義語
類義語壊す、崩す
反義語


4.開封他動詞中級★★
表記切る
人が閉じているものを開ける。
文型
<人>が<閉じているもの>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私がその手紙を見つけたときにはすでに封が切られていた
「缶を切っているときは、切り口で指を切らないように気を付けてください」
取っておいた高級ブランデーの封を切ろうとも思ったが、思いとどまった。
「まだ封を切っていないタバコがひと箱あるんだけど、いる?」「欲しい!」
「一度封を切った商品は返品できません」
医者はいったんメスで患者の腹を切ったが、すでに癌が手の施しようがないほど広がっているのを見てそのまま閉じた。
コロケーション
<閉じているもの>を
封、缶、缶詰、腹、~の口、シャッター
解説
袋や容器、また袋や容器を閉じている紙やひもを切り、その結果、袋や容器状のものを開いた状態にする。初めて開けるときに使用される。「封を切る」からできた語「封切り」は映画などの初上映の意味。対になる自動詞は「切れる」だが(「買ったときにはもう封が切れていた」)、あまり使用される場面がないため「切れる」では語義を立てていない。「シャッターを切る」は閉じているシャッターを「開く」ことから。
類義語・反義語
類義語開ける、開く、開封する
反義語


5.けが1他動詞初級★★★
表記切る
人が刃物状のものでけがをする。
文型
<人>が<刃物状のもの・原因>で<身体部位>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私は昨日、割れたガラスで頬を切って、3針縫った。
「どうしたの?」「転んだ拍子に口の中を切ったみたい。血の味がする」
花子が事故で額を切ったのは、まだ小学生の時だった。
「貝がらなどで手を切ったら、まずきれいな水で傷口を洗い流しましょう」
「リンゴ、ぼくが切る!」「包丁で手を切らないように気を付けてね」
田中先生は、海岸を歩いているとき、ガラスの破片で足の裏を切られたそうだ。
コロケーション
<身体部位>を
指、腕、頭、舌、顔、唇、あご、頬
<刃物状のもの>で
カッター、包丁、ナイフ、ガラス、破片、紙、葉
<原因>で
事故、試合,ミス
解説
人が、頭、額、手足などに刃物や刃物状のもので表皮やその下の肉が切れる・裂けるけがをするという意味で,その部位が分断されるという意味ではない。例えば「私はガラスで手を切った」は手が切り離されたという意味ではなく、手の表皮やさらにその下の肉が切れるけがをしたという意味。
この語義では、ガ格で表される人はヲ格の身体部位の持ち主であって「切る」行為の主体ではない場合が多い(「花子が事故で額を切った」)。「料理中、私は包丁で指を切った」では「切る」行為をしたのは「私」だが、意識的な行為ではない。
自動詞「切れる」を使って「私はガラスで手が切れた」とも言える。
類義語・反義語
類義語けが(を)する
反義語


6.けが2他動詞中級★★
表記切る
自分の身体の腱など線状の部位を事故などで分断する。
文型
<人>が<身体部位(線状)>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「足の靭帯を切るとどうなるのですか?」「ほとんどの場合、普通に歩けなくなります」
私は昨日、作業中に指の腱を切って手術する羽目になってしまった。
サッカーやバスケットボールなどの競技では靭帯を切りやすいので特に中高年は気を付けなければなりません。
私が試合でアキレス腱を切る大けがをしたとき,彼が背負って病院まで連れて行ってくれた。
先月の親善サッカー大会で、部長は無理な体勢でボールを蹴ろうとなさって膝の靭帯をお切りになった
小指の腱を切っただけでも完全にくっつくのに1週間はかかる。
コロケーション
<身体部位(線状)>を
アキレス腱、靭帯、神経、腱
<原因・場面>で
事故、試合、スポーツ、作業
解説
人が激しい運動や作業、事故などで腱など線状の身体部位を分断する。同じケガでも、語義5の場合は指や手や頬などの表皮が刃物や刃物状のものによって裂けるケガであったが、この語義6は分断した状態になることを意味する。
この語義では、語義5と同様に、ガ格で表される人はヲ格の身体部位の持ち主であって「切る」行為の主体ではない場合が多い。
自動詞「切れる」を使って「アキレス腱が切れた」とも言える。
類義語・反義語
類義語切断する
反義語


7.殺す他動詞中級★★
表記切る、斬る
人が人を殺すことを意図して刃物を振る。
文型
<人>が<人>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
武士の時代であっても、実際には日常的に人が斬られていたわけではない。
「親の仇!覚悟しろ!」「ふっふっふっ。お前に私が斬れるかな」
手下に命じて敵を斬らせた
戦場で人を斬ろうとしたが、どうしてもできなかった。
その侍は一人で10人の敵を斬ったことで有名だ。
あいつは何人も人を斬っている
コロケーション
<様態>
バッタバッタ(と)、バッサリ、ズバッと、一刀両断に
解説
刀などを振るって人を殺すこと。激しく人を切りつけ、結果として死なせることを意図している行為なので、「切る」ことが「殺す」ことを意味することにもなる。
類義語・反義語
類義語殺す
反義語


8.批判他動詞上級
表記切る、斬る
人が社会的な物事を鋭く、厳しく批判する。
文型
<人>が<社会>を斬る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
コメンテーターは厳しい言葉で政策を切った
週刊誌の今月号に掲載されたA氏の記事は現代社会を鋭く斬っている
「世相を斬る」と題した番組の中には出演者の独善的な意見の披露にすぎないものも見かけられる。
この腐った時代を切るような論客の登場が待たれる。
課長は私の提案を一刀両断に切って捨てた。
増税問題に鋭く切り込んだ論評が出てこないのは残念だ。
コロケーション
<社会>を
世相、問題、世界、世の中、時代、業界
<様態>
バッサリ、スパッと、一刀両断に
解説
鋭い刃物や刀で切ってものの内部をさらけ出すように、鋭い分析と言葉で社会の隠された問題点や暗部を明らかにし厳しく糾弾すること。
類義語・反義語
類義語暴く、批判する、糾弾する
反義語


9.患部の切除他動詞中級★★
表記切る
医師が手術でメスなどを使って患部を取り除く。
文型
<人>が<患部>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
たかが盲腸だからといって研修医に切らせるのはやめてほしい。
叔父は胃を3分の1以上切っているので一度にたくさん食べられない。
「腫瘍がこれ以上大きくなるようだったら、切ろうか?」「でも手術はこわいんです…」
ヤブ医者に悪くない部分まで切られた
癌は癌化した部分を切ってしまえばそれで安心というわけにはいかない。
「大変なケガでしたが,処置が早かったので脚を切らないですんだんです」「不幸中の幸いでしたね」
コロケーション
<患部>を
胃、盲腸、脚、癌、腫瘍
解説
手術で、メスなどを用いて患部を取り除く治療行為。
類義語・反義語
類義語切除する、切断する
反義語


10.罷免他動詞上級
表記切る
人や組織が、人や組織の一部を組織からはずす。やめさせる。
文型
<人・組織>が<人・組織>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
本校の入学者選抜では、第一段階で試験の得点が700点以下の者を切り、残りの受験者に対して第二次選抜を行う。
事業再建のために、不採算部門をどんどん切っていく必要がある。
リストラで切られて会社を去った山田君のことを考えると気が重い。
委員長は採決の前に反対派を切ろうとしたが、法的に無理だった。
社長は自分ではパートを直接お切りにならないで、支店長の私に切らせる
最近監督は成績不振の選手を次々に切っているが、チームの弱体化につながるのではないかと心配だ。
コロケーション
解説
物からその不要な部分を切って取り去るように、組織からそこに属している邪魔な人や不要な組織の部分を除いてしまうこと、つまり組織員を辞めさせたり、部門を閉鎖する・やめることを意味する。
類義語・反義語
類義語免職する、解雇する、除名する、罷免する、首にする、廃止する、打ち切る
反義語


11.無駄の削減他動詞上級
表記切る
人が無駄な経費などをなくす。
文型
<人>が<無駄>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
経営再建のために努力しているというが、私に言わせれば無駄を切る努力がまだまだ足りない。
原発を作る前に無駄な電力消費を切ることを考えるべきだ。
「買い物リスト、見て。どうしても予算オーバーになるのよね」「いらない物はどんどん切ろうよ」
新しい経理部長は経費の無駄を容赦なく切らせた
「こうも予算を切られては、事業が立ち行かない」
ずいぶん無駄な出費を切っているつもりだが、家計は楽にならない。
コロケーション
<無駄>を
無駄、予算、消費、出費
解説
これまで続けていた不要・無駄な出費や消費をやめる。
類義語・反義語
類義語削る、削減する
反義語


12.水分の除去他動詞中級★★
表記切る
人がものから不要な水分を取り去る。
文型
<人>が<ものの水分>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「おいしいサラダを作るコツは何ですか?」「野菜の水をよく切ることです」
「ダイエットのためにも、揚げ物の油は紙の上でよく切ろう
「豆腐をクッキングペーパーに包んで水分を切っている間に、合わせ調味料を作ります」
「和え物がいつも水っぽくなってしまうんです」「和える前に材料の汁気をしっかりお切りになっていますか?
車のワイパーが古いので、フロントガラスの水がきれいに切れない
ハンカチを持っていなかったので手を振って水を切った
stairsお湯をしっかり切らないとスープが水っぽくなってしまいます。
コロケーション
<ものの水分>を
水、水気、水分、油、汁、お湯、汁気
<程度>
よく、しっかり、軽く、ちょっと
解説
物に付着しているあるいは含まれている不要な水分・油分を、振ったり、ザルを使用するなどして取り去ること。料理でよく使用される。
類義語・反義語
類義語除く、取る
反義語


13.発行他動詞上級
表記切る
人が領収書や小切手などの書類を発行する。
文型
<人>が<書類>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「領収書、切ってもらえますか?」「わかりました」
「またスピード違反で切符切られちゃった」「これで何度目?」
父の会社は取引先に多額の空手形を切られて倒産した。
会長自らが小切手を切られて、手渡された。
「そんなに信用できないならこの場で手形を切ろうか?」
私の店では、トラブルを避けるために従業員には必ず領収書を切らせるようにしている。
stairsこの間ちょっと車で急いでたら、スピード違反で切符切られちゃって
コロケーション
<書類>を
切符、小切手、手形、伝票、領収書、駐禁、赤切符、空手形
解説
小切手や領収書などの書類を発行するとき、複数枚が綴じられた冊子状のものから一枚を切って渡す。このことから「切る」が「発行する」の意味を持つようになった。
類義語・反義語
類義語発行する、出す、渡す
反義語


14.成形他動詞上級
表記切る
人が刃物のような道具で削って段・溝・穴などを作る。
文型
<人>が<段・溝・穴>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
山道は急だったが、段々が切ってあったので登りやすかった。
「作業員に道の両側に溝を切らせれば、道路に水がたまりにくくなるはずだ」「じゃあそうしましょう」
工場でネジを切る機械を購入した。
その古民家では部屋の真ん中に炉が切ってあって、煮炊きができるようになっている。
「この部品の溝、もう少し深く切ろうか」「いや、そのくらいでいいよ」
スリットが切られた鉄板を組み合わせた彫刻が公園に置かれている。
コロケーション
<段・溝・穴>を
ネジ、ネジ山、炉、ステップ、穴、段
解説
刃物などで切るような行為をくり返すことで削り、段や溝、穴を形作る。
類義語・反義語
類義語削る、穿つ、掘る
反義語


15.分断の手真似他動詞上級
表記切る
ものを切るように手を動かして、手の軌跡で形を作る。
文型
<人>が<形など>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「相撲で勝った力士が賞金を受け取る前に手で何かしているよね。あれは?」「手刀を切っているんだよ。相撲はもともと神事だからね」
日本人は、人の前を通るとき手刀を切って「すみません」という気持ちを表す。
彼は礼拝堂に入ると跪いて十字を切り、祈り始めた。
彼女は十字架の前で十字を切ろうとしたが、教会見物の観光客の波に押されてできなかった。
コロケーション
<形など>を
手刀、十字、九字
解説
宗教的儀礼などで、手を使って定められた形と順序で空(くう)を切るようなジェスチャーをすること。それぞれに固有の意味を持つ。「手刀を切る」は手のひらを横に向けて刀のような形にし、それを上下させるジェスチャーで、相撲で勝利力士が行う儀礼的・宗教的なものと、一般社会で人の前や人と人の間を通るときにする「すみません」を意味するものがある。「十字を切る」は胸の前で十の字を書くように手を動かすことで、十字架の形を作る。


16.進行他動詞上級
表記切る
人・乗り物・物が空気や水を分断するようにして進む。
文型
<人・乗り物・もの>が<空気・水>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大海原を船は波を切って進んでいく。
ランナーたちは風を切るようにして駆け抜けていった。
鏡のように静まり返った水面を切って白いボートが一艘、沖へ出て行った。
弾丸が空気を切って飛んでいく音が耳元で聞こえた。
引き絞られた弓から放たれた矢は空を切って飛んで行った。
彼は10年前までは肩で風を切って歩いていたものだ。
コロケーション
<もの>が
弾、矢、バット、刀、拳
<空気・水>を
風、空気、波、水面、流れ、空
解説
空間・空気や広がる水面、水の流れを1枚の布のように捉え、刃物がそれを裂いていくように、人や乗り物や弾丸などがそこをまっすぐに進んでいく様子。「肩で風を切る」は世間に対して威張った態度を取ることを表す慣用句となっている。「(刀、拳が)空を切る」は、振り下ろした刀や拳が標的に当たらず空振りに終わることを意味する慣用句としても使われる。


17.遮断他動詞初級★★★
表記切る
人が電流など流れているものを止める。
文型
<人>が<エネルギー>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
危ないですから、電流を切ってから作業に取り掛かってください。
会場を閉鎖するにあたって、全ての電源を切った
「コンロの火を切ったらしばらく鍋をそのままにしておきます」「火を切っても余熱で材料に火が通るんですね」
電気料金を滞納して電気を切られた
コロケーション
<エネルギー>を
電気、電流、電圧、火
解説
電流やガスなど、流れ続けているものを止める。対応する自動詞は「切れる」だがあまり使用されないため、「装置・機器の作動を止める」に対応する語義に含めた。
類義語・反義語
類義語止める、消す、閉める
反義語開ける、つける


18.作動停止他動詞初級★★★
表記切る
人が、電流を遮断することで作動していた装置・機器やその機能を停止させる。
文型
<人>が<電源・装置・機器・機能>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「危険ですから、必ず電源を切ってから作業に取り掛かってください」
「最後に部屋を出られる方はエアコンをお切りください
佐藤氏がカメラもマイクも切らせたのは、決して漏れてはいけない話だからだ。
誤作動でうるさいからとアラームを切っていたため、火事に気付くのが遅れたらしい。
「勉強しなさい!」と母にテレビを切られた
「冷房、切ろうか?」「暑いから切らないで
stairsまず、テレビを見ていなかったら、スイッチを切ります
コロケーション
<電源・装置>を
電源、スイッチ、コンセント
<装置・機器(空調)>を
エアコン、ヒーター、暖房、空調、冷房
<装置・機器(照明)>を
電気、照明
<装置・機器(通信・音響・その他)>を
テレビ、インターホン、通信機、カメラ、パソコン、マイク、装置、アラーム、エンジン、ラジオ、クラッチ
<機能>を
仕掛け、~機能、保温、~モード
解説
電流の流れを切ることで、装置や機器あるいはその一つの機能を停止させる。ふつう装置や機器は人間が止めないかぎりずっと作動し続けることが予想される。ちょうど一続きの物を「切る」ように、その継続を「切る」と、「停止させる」という意味になる。
類義語・反義語
類義語止める、停止する
反義語入れる、動かす


19.通信の遮断他動詞中級★★
表記切る
人が通信のための接続を遮断する。
文型
<人>が<通信・接続>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「インターネット電話の接続を切るにはどうしたらいいですか?」
海外にいても母国との連絡を切らないようにしている。
「昨日からいくら電話しても出ないんだ」「電話回線を切ってるんじゃない?」
彼女に一方的に電話を切られた
「迷惑電話はすぐに切ろう
24時間つなぎっぱなしだったインターネットを切ったら、何だかすっきりした。
コロケーション
<通信>を
電話、通話、通信、連絡
<接続>を
接続、回線、インターネット、ネット
解説
接続されていた電話やインターネットを接続していない状態にする。また、電話やインターネットでの会話や通信を終了する。
類義語・反義語
類義語止める、遮断する
反義語つなぐ、接続する


20.言語活動の中断他動詞上級
表記切る
人が話したり書いたりするのをやめる。
文型
<人>が<言語活動>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
どんな事情だろうと一方的に話を切られたら腹が立つ。
先生はそこで言葉をお切りになると、ハンカチで目を押さえられた。
これ以上しゃべらせるとマズいことになりそうだったので慌てて話を切らせた
Aさんは子どもたちを前に一語一語切るようにして話した。
「今日は一旦ここで話を切ろう」「そうですね。続きは明日ということで」
「デート、どうだった?」「会話を切らないようにって考えてたら、それだけで疲れたよ」
コロケーション
<言語活動>を
語、言葉、話、会話、文、文章
<様態>
プツンと、プツッと、ガチャンと、いきなり
解説
まだ先に続くことが期待されている話しや会話を中断したり、やめたりする。「一続きのもの」を分断する「切る」のイメージから、続いている話しや会話の流れが中断されることを「切る」というイメージでとらえている。
類義語・反義語
類義語中断する、やめる、止める、終える
反義語続ける


21.契約破棄他動詞上級
表記切る
人や組織がそれまで結んでいた契約や継続していた支援などをやめる。
文型
<人・組織>が<契約・支援>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
もし今、奨学金を切られたら、大学を辞めるしかない。
いきなり生活保護を切られたらたちまち路頭に迷うしかない人や家族も多いのではないか。
芸術団体への助成をすべて切ろうと言う意見もあったが、結局、継続されることになった。
うちも経営が苦しいので下請けの仕事を切らざるを得ない。
雇用を切るのは、労使の話し合いが決着した後のことだ。
「そちらが一方的に契約を切られるつもりなら、法的な手段に訴えますよ」
コロケーション
<契約>を
仕事、保険、雇用、契約
<支援>を
奨学金、補助金、助成金、生活保護、予算
<日付>に[で]
~月、~年、~日、~以内、月末、~末、今年、来月、末日
<期間>で
~月、~日、~年
解説
契約や制度は本来的には継続されていくことが期待されている。そうした「続いているもの」をやめてしまうことは、「一続きの物」を分断するという「切る」のイメージとつながる。このことから、結んでいた契約や続けられていた支援を途中で解約することを指す(例えば、「契約を切る」「契約を切られる」)。なお、対応する自動詞文「契約が切れる」はその有効期限が来て失効する(満期解約)を意味する。
類義語・反義語
類義語打ち切る、やめる、破棄する、解約する、解除する
反義語結ぶ、締結する


22.人間関係の断絶他動詞中級★★
表記切る
人が人と人とのつながりを断つ。
文型
<人>が<人・組織>と<つながり>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「最近Aとは会ってるの?」「会わないわよ。Aとはもうずっと前に関係を切っているの」
私たちの絆は、たとえ誰かが力ずくで切ろうとしても切れないくらい固いのです。
「あいつは父親なんかじゃない!30年前、親子の縁を切ったんだ」「切っても切れないのが親子の縁というものだよ」
暴力団とのつながりを切りたくても、簡単には切らせてくれない。
「太郎と別れたんだって?」「一方的に関係を切られても、私は納得がいかないわ」
「ああいう組織とのつきあいは早めに切られたほうがいいですよ」
コロケーション
<つながり>を
縁、関係、つながり、絆、因縁
<人・組織>と
家族
解説
人と人の間のつながりを線のように捉え、それを「切る」ことでつながりをなくすことを意味する。
類義語・反義語
類義語断つ、解消する、終える
反義語つなぐ、結ぶ、続ける、築く


23.精神・気持ちの変化他動詞上級
表記切る
人が維持していた気持ちや精神力をなくす。
文型
<人>が<精神・気持ち>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
せっかく集中して制作に取り組んでいたのに、玄関のチャイムの音で集中を切られた
彼女への気持ちを切ろうとしたけど、どうしても切れなかった
親に依存しようとする気持ちを切らないと、自立できない。
彼への未練を切って、別の人生を歩いて行きたい。
先生は若いとき、恋人への思いをお切りになって、研究の道に進まれたそうだ。
コロケーション
<精神・気持ち>を
集中、集中力、依存性、感情、気持ち、未練
解説
ずっと抱いていた気持ち・感情を抱き続けることをやめる。また、それまで維持していた集中した精神状態を一気に失う。
類義語・反義語
類義語断ち切る、なくす
反義語


24.時間・数量の限定他動詞上級
表記切る
人や組織が、期間や数量を限定する。
文型
<人・組織>が<数量>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「こちらの商品は販売期間を切っての限定販売となります。お早めにお買い求めください」
ご入館は先着70名様で切らせていただいております。
1日の入場者数を500名までとした今回の措置は参加人数を切ることで会場の混乱を避ける狙いがある。
「一応、返済期限を今月末ということで切っておりますが、ご無理であればご相談ください」
「この講座、人気があると思うから、募集期間をもう少し短めに切ろう
一部の職員のみ任期が5年で切られているのは法律上問題があるのではないだろうか。
stairs本日より3日間と期間を切っての特別価格になっております。
コロケーション
<期間・数量>を
期限、期間、年限、日、人数
<数・時>(まで)で
~日、~人、~歳、~末
<単位>で
時間、年齢、人数
解説
本来無限に続く時間や数を区切って期限・限度を設ける。「一続きのもの」を分断するという「切る」の中心義のイメージから。
類義語・反義語
類義語限る、限定する、打ち切る
反義語


25.進行方向の変更他動詞上級
表記切る
人が乗り物の操舵装置を勢いよく動かし、進行方向を変えて進む。
文型
<人>が<操舵装置>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「急にハンドルを切ると危ないよ」
「うわー!ぶつかる!」「ハンドル、左に切って!」
私は必死でハンドルを切ろうとしたが、ハンドルが動かなかった。
他の船の目撃情報から、航海士が規則に反してかじを左に切っていたことが分かった。
機長は副操縦士に命じて操縦桿を左に切らせたが、機体が言うことを聞かなかった。
コロケーション
<操舵装置>を
ハンドル、かじ、ステアリング、操縦桿
<方向>に[へ]
右、左、~方向、反対
解説
自動車、船舶、航空機などの操舵装置を進行方向変更のために一方向に勢いよく動かし、結果として進行方向が変わる。
類義語・反義語
類義語回す、動かす
反義語


26.進行方向の変化他動詞上級
表記切る
乗り物や道がその進む方向・伸びる方向を大きく変える。
文型
<乗り物・道>が<コース>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
若者たちの乗った車はジグザグを切りながらものすごいスピードで走り続けた。
その真っ赤な車は猛スピードでカーブを切ると壁に激突した。
国道はそこから右に大きくカーブを切っている
道はこの先でジグザグを切って、山頂の方向へ向かう。
コロケーション
<コース>を
カーブ、ジグザグ、曲線
<方向>に[へ]
右、左、~方向、反対、左右
解説
乗り物がガ格になり、その進行方向が直線から逸れて大きく曲がって進むこと、また実際には移動しないが人や乗り物がその上を移動する「道」がガ格になり、そのコースが曲がっている、蛇行していることを表す。後者の場合、「ている」の形が多い。(「道がそこから右に大きくカーブを切っている」)。


27.カード他動詞上級
表記切る
人が、トランプなどのカードの重なりがランダムになるようにする。
文型
<人>が<カード>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「ゲームを始める前に、同じカードが重ならないようにカードをよく切ります
「あいつにトランプを切らせるときは、時々ズルをするからよく見ておいた方がいいよ」
マジシャンはトランプをよく切ってから観客に一枚引かせ、そのマークと数を言い当ててみせた。
マジシャンがトランプを切っているとき目を離さないようにしていたが、トリックは見抜けなかった。
「早くゲーム、始めようよ!」「今、カードを切ってるんだから待てよ」
「番号札を引いて順番を決めよう」「あー!私が1番?札をよく切ってなかったんじゃない?」「しっ!先生が切られたんだよ」
コロケーション
<カード>を
カード、トランプ、札
解説
トランプやカードの重なり順がランダムになるようにする行為。片手でトランプやカードの束をまとめて持ち、もう一方の手で束から複数枚のカードをまとめて抜き出し、再びそれを束に差し込む行為が、刃物で束を「切る」ように見える。(対応する自動詞に「切れる」があるが、あまり使われないため掲載していない。)


28.減少他動詞上級
表記切る
値が期待値・基準値より少なくなる。
文型
<値・日数>が<数値・基準>を切る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
オリンピックの100メートル走では、アメリカの選手が10秒を切るタイムで優勝した。
「日本語能力試験まで残り1か月を切りました。皆さん、がんばりましょう」
所持金が千円を切ってしまった。もう野宿するしかない。
日本の食料自給率は2010年以降40%を切っている
日本の平均寿命は男女ともに80歳を超えているが、世界には60歳を切っている国もまだ多くある。
「来週のマラソン大会、4時間の大台を切りたいと思っているんだ」「私からすれば、完走できるだけですごいと思うけど」
stairsインターハイまで、1週間を切ったな。
コロケーション
<値>が
~率、~数、人口、気温、価格、~値、~量、タイム、割合、体重
<日数>が
期間、期限、任期、日数
<数値>を
~円、~%、~分、~ヵ月、~キロ、~名、半数、半年
<基準>を
最安値、平均、大台
解説
数値の変化は連続したものだが、数値が減少を続け、ある数値(例えば100、10、0などの切りのいい数値や、それより低くなることが重要な意味を持つ数値)より低くなることを意味する。線グラフをイメージしたとき、右肩下がりの線グラフが横軸のその値の目盛り線(ライン)を突っ切って下に伸びていく様子が、線を分断する「切る」のイメージと重なる。
誤用解説
 A国では人口が1億人を切って増え続けている。
 A国では人口が1億人を超えて増え続けている。
「切る」は減少のみ。
類義語・反義語
類義語割る
反義語超える


切るの全体解説 「切る」の中心義は、ハサミや刀などの刃物を使って一続きの物を離れた状態にすることである。
「切る」対象となる物は「一続き」という特徴があり、これを満たしていれば、形状は糸やひもや針金、木や管のような「線状・棒状の物」でも、紙や布のような「平面状の物」でも、リンゴやパン、石のような「塊状の物」でもよく、また硬軟を問わない。このような対象の特徴から、「切る」は、目に見えないものや抽象的なものでも人が「一続きだ」「続いている」「ひとかたまり」と認知する様々なもの(例えば、水の流れ、大気、電流、通信接続、話、数の変化、人と人のつながりなど)を対象として使用され、結果として多くの語義を持つことにつながっている。また、「切る」行為の意図・目的によっても、切って「短くする」(例えば、「爪を切る」場合や「髪を切る」場合、指先に残ったほうの爪や頭にくっついているほうの髪に視点があり、切り離された不要な爪や髪は注目されないため、「短くする」という意味になる)、切って不要な部分を「取り去る・捨てる」(手術、リストラなど)、切ることで連続性を「断絶する」「中断する」(電流や音の遮断、機器の作動停止、通信の接続や人間関係の断絶など)などへと意味が拡張している。
また、「切る」行為の特徴として、刀やナイフを振り下ろすような、瞬間的で勢いのある動きがイメージされる。このため、この「切る」行為に似ているとして、車のハンドルを急に切ったり、カードを素早くさばくような意味につながっている。
(参考文献:森山新(2012)「認知意味論的観点からの「切る」の意味構造分析」『同日語文研究』第27輯, 1-14. 遠藤裕子(2008)「「割る」と「切る」の意味拡張―数値・数量を表す用法―」『拓殖大学語学研究』第117号, 57-80.)
「切る」の対となる自動詞は「切れる」であるが、語義的に対応しないものや意味のずれの大きいものもある。また「切れる」にはもう一つの他動詞「切らす」の対となる語義もある。
























▶全例文を聞く
<もの(線状)>を
メテラーが手首のを切ってくれたので、どうにか岸に泳ぎ着くことができた、とな
(田中芳樹著 『バルト海の復讐』, 2001, 913)
<もの(棒状)>を
村人達は全員で長者にを切らないように頼みました。
(広報あいづみさと, 2008, 福島県)
ダニやアブラムシの被害のあるを切るとよい。
(趣味の園芸(NHKテレビ放送テキスト), 2005, レジャー/趣味)
<もの(平面状)>を
197ページのを切って合同な正三角形を作り,上の立体を実際に作ってみましょう。
(新しい数学 1, 2005, 中)
1mm厚のアクリル板を幅1cmに切る。
(季刊「炎芸術」編集部企画・編集 『ろくろがいらない陶芸』, 2005, )
<もの(一般)>を
まず、ナイフを右手にフォークを左手に持ってを切る。
(リチャード・ルイス著;阿部珠理訳 『文化が衝突するとき』, 2004, 361)
上手に野菜を切ってサラダを作り、味噌汁の実も刻んでくれた。
(広土明子著 『初夏の光』, 1997, 913)
<もの(身体)>を
長いをもうじきバッサリ切ってしまうらしい。
(大江千里著 『レッドモンキー・モノローグ』, 1992, 767)
を切ったあと、ヤスリ使っていますか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, ファッション)
<刃物>で
昆布は5cm角くらいにはさみで切ったら、ざっと水洗いする。
(小林カツ代著 『小林カツ代のやっぱりアッという間のおかず』, 1996, 596)
包丁でチーズを切るときに、くっついて上手く切れません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<道具>で
魚はで一口に切っていただきます。
(千宗室著 『なんて美しい女性だろう!』, 1981, 159)
<サイズ>に
長ねぎは3cm長さに切る。
( 『簡単!おいしい!煮もの上手』, 2005, 596)
生ハムは半分に切る。
(オレンジページ, 2003, 一般)
<形状>に
ごぼうはななめに切って、水にさらす。
(an・an, 2002, 一般)
<様態>
今からはダメですが、来年4月ごろ茎の根元からばっさり切って幹だけにしてみてください。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
<もの(線状)>を
庭で飼っていた犬が、を切って、いつの間にかいなくなってしまった
(NHK「クローズアップ現代」制作班編 『クローズアップ現代』, 2001, 302)
<水・土>が
まるで洪水が堰を切って流れ出すように、黒のたっつけ筒袖に韮山笠をかぶり、如何にも身軽るな若い人達がゲウエール銃を肩に、一糸乱れず駆足で出て来る。
(子母澤寛著 『おとこ鷹』, 2005, 913)
<閉じているもの>を
和尚はその場でを切って、手紙を読みはじめた。
(陳舜臣著 『風よ雲よ』, 1999, 913)
<身体部位>を
父はその破片を片づけようとして、を切ったのよ。
(小池真理子著 『夜ごとの闇の奥底で』, 1996, 913)
たとえ顔面を切るような危険を冒してでも、チームのために体を張る。
(岩永修幸編 『蹴球神髄』, 2005, 783)
<刃物状のもの>で
ガラスで手を切った兄貴の方はもっとすごい怪我をしているかと思ったが、大したことはなかった。
(銀河摩音著 『癌借金妙な狂詩曲』, 2004, 916)
<身体部位(線状)>を
関節や筋肉をフルに動かすことから、プレー前後のウォーミングアップ、クールダウンを入念に行わなければ、アキレス腱を切ったり、肉離れを起こしたりといった思わぬケガにつながることになります。
(日本スカッシュ協会編;足立美由紀,潮木仁著 『スカッシュ上達講座』, 2001, 783)
<原因・場面>で
事故で左前足の神経をずたずたに切ってしまったときも、なき声ひとつあげなかったサーブでした。
(手島悠介著 『天国へいったサーブ』, 1988, )
<様態>
よく時代劇で人をばったばったと斬っていますが、あんなばかなことは普通ありません。
(司馬遼太郎著 『司馬遼太郎全講演』, 2003, 914)
<社会>を
だから、政治家は、将来の予測という点について、自分自身の考え方の原点を示すとともに、その考え方で今の世の中を切っていった場合に、何年後にはこうなる、何年後にはこういうことが必ず到来する、と明確に示さないといけない。
(長谷川慶太郎著 『大分水嶺』, 1995, 304)
<様態>
きけば裁判長はキリスト教信者だというが、その心情で一刀両断に日本の文化を斬るのは、やはり心情的な判決だといいたくなる。
(秦野章著 『何が権力か』, 1984, 304)
<患部>を
H2ブロッカーの潰瘍治癒率は八〇%と高率で、潰瘍でを切る人が激減したことは確かです。
(赤尾周一著 『これで安心胃と十二指腸の病気』, 2003, 493)
<無駄>を
冷戦が終わり、米国では国防予算をばんばん切って政策の優先順位を変えているのに、日本では従来通り、漁港の予算が空港建設の予算より大きいという状態が続くのである。
(リチャード・クー著 『良い円高悪い円高』, 1994, 332)
<ものの水分>を
厚揚げは豆腐の水気を切って油で揚げたもの。
(永島トヨ著 『「台所おばあちゃん」の料理秘伝』, 1994, 596)
寿司飯を作ってから、汁気を切った具を混ぜ入れます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<程度>
水をしっかり切って、ごま油・塩・砂糖・めんつゆ・ゴマ・豆板醤を入れて、水菜と牛肉を和えます
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<書類>を
先日、スピード違反でキップを切られました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 自動車)
一方、光次郎はあっちこっちに手形を切り、借金の総額が三千万ぐらいになっているらしいこともわかった。
(佐野洋著 『巡査失踪』, 1989, 913)
<段・溝・穴>を
丸棒は40mmでネジを切る長さは10mmにしている。
(ドゥーパ!, 2005, レジャー/趣味)
<形など>を
バスに乗っていても、教会の前を通ると人々は十字を切る。
(野田知佑著;藤門弘写真 『世界の川を旅する』, 2001, 290)
たいして有難そうもない顔で、手刀を切って賞金袋を受けとると、細井はにやりと笑って片眼をつぶる。
(山口洋子著 『演歌の虫』, 1985, 913)
<もの>が
聞こえてくるのは、機体が風を切る音だけであった。
(武田信行著 『最強撃墜王』, 2004, 913)
<空気・水>を
突堤につないであったモーターボートに民生を乗せてエンジンをかけ、巧みに操縦しながらを切って沖へ猛スピードで疾走した。
(梁石日著 『族譜の果て』, 1996, 913)
従吾の一撃は虚しくを切った。
(赤城毅著 『帝都最終決戦』, 1998, 913)
<エネルギー>を
「この無線機の場合、もし家の電気を切られたとしても、このプラグを逆転させるだけで電池使用のモードに切り替わるんです」
(ケン・フォレット著;戸田裕之訳 『鴉よ闇へ翔べ』, 2003, 933)
<電源・装置>を
まずブレーカーをオフにして電源を切る。
(昭和大学病院救命救急センター監修 『119 book』, 2000, 492)
こまめにスイッチを切って使うと,長もちする。
(新編 新しい理科 4上, 2006, 小)
<装置・機器(空調)>を
暖房の効いた部屋は、暖かく快適な環境になっていますが、暖房を切ると急激に冷え込みます。
(趣味の園芸(NHKテレビ放送テキスト), 2001, レジャー/趣味)
<装置・機器(照明)>を
私は急いでヘッドライトを切った。
(オグ・マンディーノ著;坂本貢一訳 『十二番目の天使』, 2001, 933)
<装置・機器(通信・音響・その他)を
エンジンを切り、黒いヘルメットを取った。
(ひちわゆか著 『ラブ・ミー・テンダー』, 2001, 913)
インタホンを切ってしまったらしく、もう何回呼べど叫べど、返事はかえって来なかった。
(栗本薫著 『死はやさしく奪う』, 1986, 913)
<機能>を
冬であれば、保温を切ってしまえばある程度ご飯はもちますが、夏の場合それでもなにか熱が加わるらしくだめです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<通信>を
室田は札を言って電話を切った。
(佐野洋著 『巡査失踪』, 1989, 913)
武器・弾薬だけは豊富にありますから、と言って石丸は通信を切った。
(榊涼介著 『ガンパレード・マーチ5121小隊九州撤退戦』, 2004, 913)
<接続>を
しかし、物理的に接続を切ってみたところで、システム内に彼の通信の痕跡は残り、それをたどれば簡単に所在を突き止められてしまう。
(津守時生著 『三千世界の鴉を殺し』, 2001, 913)
<言語活動>を
弘崎はいったん言葉を切った。
(森村誠一著 『レッドライト』, 2003, 913)
クートラ医師は、いったんを切って私に言った。
(W.S.モーム著;大岡玲訳・解説 『月と六ペンス』, 1995, 933)
<様態>
ガチァッと電話を切られた。
(稲川尚子著 『ママと呼んで!由くん』, 2001, 916)
<契約>を
派遣先の企業が暇になると派遣会社の都合で契約期間が残っていても契約を切られることがあります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 派遣、アルバイト、パート)
<支援>を
冷戦が終わり、米国では国防予算をばんばん切って政策の優先順位を変えているのに、日本では従来通り、漁港の予算が空港建設の予算より大きいという状態が続くのである。
(リチャード・クー著 『良い円高悪い円高』, 1994, 332)
<つながり>を
でも彼はもう私たちとはきっぱりとを切る気でいる。
(カレン・ローズ・スミス作;仁嶋いずる訳 『シンデレラになる資格』, 2002, 933)
父は僕に、本気でキャサリンのことを思っているのなら、仕事上の関係を切れと言ったよ。
(レイ・マイケルズ作;脇田馨訳 『この胸の安らぎ』, 2005, 933)
<人・組織>と
「お金を払って、ボランティアをしている感じ」がして、養成校とは縁を切った。
(いきいきフォーラム2010編 『シニアのための国際協力入門』, 2004, 333)
<精神・気持ち>を
感情を切っていれば、いくら叩かれようと痛みは感じないし、噓をつくことに良心の呵責もおぼえない。
(天童荒太著 『永遠の仔』, 1999, 913)
<期間・数量>を
期限を切って再建を急ぐ理由がおれにはわからない。
(高橋義夫著 『武闘の大地』, 2004, 913)
<数・時>(まで)で
高齢化というのは、結局活力のある、頭脳も筋力も衰えない老人がふえていくということですから、このふえていくという情勢、趨勢の中で定年を設けるというこの辺のところが、六十で切るというところが私は余り十分な理由として理解できないところなんですよね。
(国会会議録, 1981, 常任委員会)
<操舵装置>を
フィリップは右に急ハンドルを切ってカーブを曲がった。
(ディーン・デブリン,ローランド・エメリッヒ脚本;スティーヴン・モルスタッドノベライズ;石田享訳 『ゴジラ』, 1998, 933)
彼はぐるっとを切り、西彼杵半島の山影に沿って南下していきます。
(吉岡忍著 『ある漂流者のはなし』, 2005, 557)
<方向>に[へ]
急激に速度を上げながら、に、に、舵を切っているらしい。
(川又千秋著 『極東愚連艦隊』, 1998, 913)
<コース>を
交差点ごとに右へ左へカーブを切るので、わたしは気分が悪くなった。
(ディーン・デブリン,ローランド・エメリッヒ脚本;スティーヴン・モルスタッドノベライズ;石田享訳 『ゴジラ』, 1998, 933)
<方向>に[へ]
仏生山町は高松市域のちょうど中央部で、高松琴平電鉄琴平線が高松からまっすぐ南下してきて、西の方向へ九十度カーブを切る、その付近一帯の町だ。
(内田康夫著 『讃岐路殺人事件』, 1993, 913)
<カード>を
と彼は言いながら、トランプを切ってテーブルに伏せて置き、上から一枚とって、表を見せた。
(山田度著 『多様なる豊かさ』, 1987, 304)
<値>が
都心部のピッキング犯罪はすでに検挙率が十パーセントを切っている。
(別册文藝春秋, 2003, 文学/芸術)
若者は町を捨て、七〇年には人口が五八〇〇人を切り、それまでの四分の三にまで減少した。
(大谷昭宏事務所関電争議取材班著 『関西電力の誤算』, 2002, 366)
結局、睡眠不足と体力の消耗から、体重が45キロを切るほどやせてしまい、母乳も早々に出なくなり、このままでは親子共倒れになりかねないと思い、ついに半年でギブアップ。
(藤原勝子著 『私は「食」の演出家』, 2002, 673)
<数値>を
もう年の瀬まで、二カ月を切ったのである。
(駒村吉重著 『ダッカへ帰る日』, 2003, 334)
大学進学希望者では,高等学校卒業の年に大学へ進学できた者は全体の46.8%で半数を切っている。
(青少年白書, 1981, )






























洗ってよく水けを切ったキャベツをざく切りに切ります
お湯をしっかり切らないとスープが水っぽくなってしまいます。
この間ちょっと車で急いでたら、スピード違反で切符切られちゃって
まず、テレビを見ていなかったら、スイッチを切ります
本日より3日間と期間を切っての特別価格になっております。
インターハイまで、1週間を切ったな。
スタートを切る

意味
レースなどで走り出す
用例
「さあ、ランナーたちは一斉にスタートを切りました!」
コーパスからの用例
イチローには足という武器がある。2番ギーエンへの3球目にノーサインでスタートを切り、メジャー初の盗塁を決めて見せた。(実著者不明『Ichiroセーフコ・フィールド物語』イチロー担当記者グループ著 ラインブックス2001)(PB17_00188)
意味
新しい活動などを始める
用例
「新しいスーツで新生活のスタートを切ろう!」
コーパスからの用例
成田はこの北見という清々しい北国の町での上々の新生活のスタートを切ったのだった。(大崎善生(著)『将棋の子』講談社2001)( PB19_00126)
しらを切る

意味
知っているのに全く知らないふりをする
用例
「あくまでしらを切るつもりだな」「本当に知らないんです」
コーパスからの用例
真実が暴露されても桑田はシラを切り通した。(中牧昭二(著)『さらば桑田真澄、さらばプロ野球』リム出版1990(OB3X_001959)
堰を切る

意味
川の堰が切れて水が勢いよく溢れ出すように、涙や言葉や感情が溢れ出す様子。「堰を切ったように」(泣く、しゃべる)という形でよく用いられる
用例
その子はじっと泣かないでいたが、母親の顔を見ると堰を切ったように泣き出した。
コーパスからの用例
彼はちょっと言葉を切ったが、すぐ堰をきったように話し出した。(アガサ・クリスティー(著)/中村 能三(訳)『ホロー荘の殺人』早川書房2003)( LBr9_00011)
先頭[先陣]を切る

意味
競争でトップを走る
用例
「400メートルリレーでは、ここまでのところ、アメリカチームが先頭を切っています」
コーパスからの用例
凧がゆっくり空に舞い上がった。北村は「おお、揚がったぞ!」と子どもたちの先頭を切って、冬晴れの淀川堤防を走った。(青木茂夫(著)『若きものに』大阪春秋社2001)(PB10_00043)
意味
最初に始める
用例
ハイブリッド車の開発は日本企業が先頭を切って取り組んだ結果、世界シェアの1位の座を占めている。
コーパスからの用例
先頭を切ったのが佐賀県で、98年7月の開港にあたって着陸料を通常の半額とした。 (杉浦一機著 『空港大改革』, 2002, 687)
自腹[身銭]を切る

意味
本来自分で払う必要のない経費を自分が払う
用例
接待であっても、会社からは食事代は支給されないので、自腹を切るしかない。
コーパスからの用例
阪神・淡路大震災の時、多くの人々や企業が身銭を切ってボランティア活動に駆けつけたのは、地方自治体と国の災害救助、被災者支援などがあまりにもお粗末だったからではないか。(宮島洋(著)『高齢社会へのメッセージ』丸善1997)(LBl3_00027)
見得を切る

意味
歌舞伎の演技の一つ
コーパスからの用例
そびえる三門は、歌舞伎「楼門五十三桐」の山門の場の石川五右衛門が見得を切る場面になったところで、「絶景かな、絶景かな」の言葉どおり、楼上からは眺めがよい。(中田昭(著)『京都古道物語』グラフィック社1989)(LBd2_00018)
意味
相手に自信があると見せるために、自分の能力や経験を大げさに表現する
用例
やりたくもない仕事だが、大見得を切った手前、自分がやるしかなくなってしまった。
コーパスからの用例
「三十代になるまでに絶対に成功して金持ちになってみせる!」と大見得を切って家を飛び出したルーカスだが、その宣言を2年も早く実現することになるとは、当の本人も思ってもみないことだったという。(河原一久, 矢地雄(著)『スター・ウォーズエピソード3快適副読本』双葉社2005)(PB57_00212)
手を切る

意味
悪い関係を断つ
用例
「あの会社とはもう手を切るつもりです」「それがいいよ」
コーパスからの用例
つきあいを続けると自分が損をすると思う相手とは、早い時期に手を切る勇気と決断が大切。(流智明(著)『ズバリ当たる「血液型」+「星占い」』日本文芸社2004)(LBs1_00032)
首を切る

意味
罷免する
用例
会社の金の使い込みがばれて首を切られた
コーパスからの用例
そのときに私と一緒に行動した記者は、私と共同通信に一緒に入社した共同通信の一期生なんですが、その翌年、レッドパージがあったときに首を切られてしまいました。(田英夫(著)『特攻隊だった僕がいま若者に伝えたいこと』リヨン社;二見書房(発売)2002)(PB23_00642)
切っても切れない

意味
関係が、切ろうとしても切れないほど非常に強い
用例
中国と日本は歴史的にも経済的にも切っても切れない関係にあります。
口火を切る

意味
複数の人の中で最初に話し始めたり、他の人に先駆けて事を始めること。
用例
しばらく沈黙が続いた後、口火を切ったのは吉川さんだった。
コーパスからの用例
皆で輪になって、まず一番古株らしき秘書が口火を切った。 (中村シャケ子著 『派遣社員は見た』, 1998, 335)
複合動詞 V1

切り上げる、切り落とす、切り返す、切り替える、切り替わる、切り刻む、切り崩す、切り裂く、切り捨てる、切り倒す、切り立つ、切り付ける、切り詰める、切り取る、切り抜く、切り抜ける、切り離す、切り払う、切り開く、切り回す、切り結ぶ、切り分ける、切りそろえる、
複合動詞 V2

言い切る、打ち切る、押し切る、思い切る、貸し切る、噛み切る、借り切る、仕切る、締め切る、断ち切る、突っ切る、乗り切る、張り切る、見切る、割り切る
複合名詞

切り替え、切り傷、切り口、切り取り、切り盛り、切り通し、打ち切り、貸し切り、締切り、封切り、見切り、割り切り
切る(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形ない
~なかったなかった
ます形きり
~ませんきりま
~ましたきりした
~ませんでしたきりまんでした
~ときるとき
ば形れば
意向形
て形って
た形った
可能形
受身形きら
使役形きら
閉じる