聞こえるのコアイメージ

1.聴覚による音の認識(非意図的)自動詞初級★★★
表記聞こえる
聴覚によって音や声が(自然に)感知される
文型
<人>に<音・声>が聞こえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
遠くで雷の音が聞こえる
(先生が生徒に)「みんなに聞こえるように、大きい声で発表してください」
会場が騒がしくて、アナウンスが全く聞こえなかった
大学の廊下を歩いていると、教室で行なわれている講義が聞こえてきた
静かに音楽を聞いていたつもりだったが、どうやら周りにも音が聞こえていたらしい。
赤ちゃんは母親のお腹の中にいる時から外の音が聞こえている
stairs除夜の鐘の音が聞こえてくると、新しい一年が始まったと感じる人も多いようです。
コロケーション
<人>に
人、私、相手、皆、周囲、出席者
<音・声>が
① 物音:音、足音、物音、雷鳴、拍手
② 動物・人間の声:鳴き声、さえずり、笑い声、叫び声、声援
③ 音楽:音楽、メロディー、曲、演奏
④ 発話:会話、話、つぶやき、放送、ニュース
<様態>に
遠く、クリア、不意、かすか
解説
この語義では、音や声が自然に感知されることを表し、例4の講義や例5の音楽などは環境としてそれらの音や声が感知できる状況であることを示す。また、その内容が聞いて分かるというよりは、「講義をしている声」や「音楽の音」を感知したことを意味する。


2.聴力自動詞中級★★
表記聞こえる
聴覚器官が音や声を感知できる
文型
<聴覚器官>が聞こえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼女は生まれつき耳が聞こえない
ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる難聴になってしまった。
この検査で耳が聞こえているかどうかを調べることができる。
昔は問題なく聞こえていたが、数年前から少しずつ聞こえなくなってきた
コロケーション
<聴覚器官>が
耳、左耳、片耳、両耳
<原因>で
病気、難聴、老化


3.情報内容・感覚の受け取り自動詞中級★★
表記聞こえる
(音によらない)情報内容や感覚が人々に伝わる
文型
<情報内容・感覚>が聞こえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
(手紙)お元気ですか。こちらでは少しずつ暖かい日が多くなり、春の足音が聞こえてきました
テレビやインターネットを通して政治家の不正献金問題に対する国民の怒りの声が聞こえてきた
地方にいる有能な若手経営者の噂は東京まで聞こえてきている
商品に対するユーザーの意見が作り手の方まで聞こえてこないのが問題だ。
その力強い絵を見ていると、描かれた人々の息づかいがこちらまで聞こえてきそうだった。
その手紙からは心の叫びが聞こえてくるような気がした。
コロケーション
<情報・感覚>が
① 情報:噂、意見、反論、メッセージ
② 感覚(音・声による比喩):息づかい(=リアルな存在感)、ため息(=落胆した気持ち)、叫び(=差し迫った訴え)、ささやき(=誘惑)、足音(=何かが接近している気配)
<到達点>まで
① 場所:東京、こちら
② 人:私、○○さん
解説
(1)例文2「国民の怒りの声」のように「声」が共起しても、そのメッセージ内容が伝わることを意味し、その「声」は語義1のような音を伴う声ではない。
(2)情報や感覚は不特定多数の人々に対して伝わるものであり、特定の人に対して情報が発せられているわけではない。
(3)「〜てくる」を伴って「〜が聞こえてくる」で用いられることが多い。
誤用解説
 噂が私に聞こえてきた
 噂が私にも聞こえてきた
語義解説(2)で述べたように、情報内容や感覚が不特定多数の人に伝わることを意味するので、「私」や「○○さん」のように特定の人に伝わるときには「<人>にも」のように「も」で他の人にも伝わっていることを示す必要がある。
類義語・反義語
類義語伝わる
反義語


4.主観的評価を伴う認識自動詞中級★★
表記聞こえる
音や情報がある主観的な評価を伴って捉えられる
文型
<人>に<音・情報>が<評価の結果>に聞こえる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
上司が笑いながら言った「同じようなミスをしたら辞めてもらうよ」という言葉が、私には冗談に聞こえなかった
(英語教師の会話)「彼ってディクテーションをするといつも間違うね」「たぶんLとRが同じ音に聞こえているんだよ」
「なんで昨日、来なかったの?」「言い訳に聞こえるかもしれないけれど、本当に具合が悪かったんだ」
「社会を変える」というと大げさに聞こえるかもしれないが、実際にそのような気持ちで仕事をしている。
10件目でやっとホテルの予約が取れた時は、ホテルマンの声が天使の声に聞こえた
ダイエット中の「ちょっとなら食べてもいいんじゃない?」という友達の言葉は、悪魔のささやきにしか聞こえない
コロケーション
<評価の結果>に
① 音:同じ音、違う音
② 言語行動:言い訳、冗談、文句、褒め言葉
③ 感じ方:魅力的、大げさ、奇妙、きれい事
④ 比喩:天使の声、悪魔のささやき
<人>に
私、彼、彼女、○○さん
解説
「<評価の結果>に」は、「に」の代わりに「と」が使われることがまれにある。特に否定文において「<評価の結果>とは聞こえない」の形式で使われる。
 例)彼の言葉は冗談とは聞こえなかった


聞こえるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<人>に
にはモーターバイクの音しか聞こえないわ。
(エッシー・サマーズ作;田村たつ子訳 『アップルパイの歌』, 2002, 933)
暗いせいか、正吉にははっきりと声が聞こえる。
(岡本恵徳,高橋敏夫編 『沖縄文学選』, 2003, 918)
<音・声>が
廊下を走る足音が聞こえた。
(井内秀治著 『虎王伝』, 1992, 913)
外はまだ暗いが、小鳥の鳴き声が聞こえる。
(秋山芳弘著 『世界鉄道探検記』, 2004, 290)
どこからか、クリスマスの音楽が聞えている。
(岡靖則著 『ザホームレス!大逆転』, 2002, 913)
廊下で女達の話し声が聞えていたが、私はいつものことで気に止めなかった。
(萩原葉子著 『木馬館』, 1991, 913)
<様態>に
かなたから微かに砲声が聞こえてきた。
(榊涼介著 『ガンパレード・マーチ5121小隊九州撤退戦』, 2004, 913)
遠くに汽車の音が聞えるが、なかなか姿を見せない。
(小沼丹著 『福壽草』, 1998, 914)
<聴覚器官>が
ベートーヴェンはが聴こえず、しかも貧窮の青春時代を送った音楽家だった。
(宮本憲一ほか編 『人間の歴史を考える』, 1992, 208)
<情報・感覚>が
しばらくすると誰もが彼女の相手は臼井さんだと見なすようになり、二人に関する様々なが聞こえてきました。
(蓮見圭一著 『水曜の朝、午前三時』, 2005, 913)
夏の足音が聞こえてくる。
(柳沢小実著 『12ヶ月のスクラップブック』, 2005, 590)
<到達点>まで
この話は国外まできこえて、かえって臧孫の名が高まったことは、魯の有識者では知らぬ者はいない。
(邱永漢他著 『中国歴史人物傑作集』, 1996, 913)
<評価の結果>に
自分を正当化するための言い訳にしか聞こえない。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
あれだけふざけた物言いだと逆に冗談に聞こえますが、真面目で一途な北條さんは嬉々として信じるみたいです。
(Yahoo!ブログ, 2008, テレビ)
こんなふうに言うときれいごとに聞こえるでしょうが、掛け値なしにそうなんです
(荒木源著 『骨ん中』, 2003, 913)






























除夜の鐘の音が聞こえてくると、新しい一年が始まったと感じる人も多いようです。
世に聞こえる

意味
慣用句
用例
この人物はその博識で世に聞こえた人物であった。
コーパスからの用例
「父・兼家が、当時英才として世に聞こえていた藤原公任を賞賛して(略)(藤原氏の摂関政治:2)」
音に聞こえる

意味
話が広く知れ渡る
用例
この峠は音に聞こえた難所だ。
コーパスからの用例
「作並といえば、音に聞こえた岩松旅館の天然岩風呂である」(みなみらんぼう著;秋元満夫写真『らんぼうの温泉浪漫』,1999,689)
複合名詞

丸聞こえ
聞こえる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形きこえる
ない形きこえない
~なかったきこえかった
ます形きこえ
~ませんきこえま
~ましたきこえした
~ませんでしたきこえまんでした
~とききこえるとき きこえる
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意向形きこえ
て形きこえて
た形きこえた
可能形
受身形(きこえられる)
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