借りるのコアイメージ

1.ものの一時的取得他動詞初級★★★
表記借りる
借り手にとって必要なものを、後で貸し手に返すという約束のもとで、一時的に取得する。
文型
<借り手>が<貸し手>に[から]<品物>を借りる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ベンチャー企業が銀行から立ち上げ資金を借りた
ちょっと辞書を借りていい?
いま、TSUTAYAで「スター・ウォーズ」を借りている。
人から借りた物は、必ず返すものだ。
友人に消しゴムを借りた
姉にスマートフォンを借りて家に電話をかけた。
コロケーション
<借り手>が
(人名)、会社、ベンチャー、企業、国、事務所
<貸し手>に[から]
(人名)、銀行、サラ金、公庫、会社、IMF、外国
<品物>を
金、資金、ローン、車、レンタカー、本、ビデオ、鍵、電話、トイレ
<条件>[で]
低金利、レンタル、ローン、無料、〜万、〜%の金利、〜名義、個人、安く
<担保>に[として]
担保
<場所>で
(店名)、図書館、レンタルショップ、金融機関
<態度>
内緒で、承知で、無断で、直接
非共起例
<貸し手>に
 図書館に本を借りた。
 図書館から本を借りた。
 図書館で本を借りた。
<貸し手>が機関・場所の場合は「に」格が取りにくい。
解説
物品が部分的に消費される場合(消しゴム、ライター、化粧品・医薬品など)にも使われる。
借りる側に自由がないことが多く、表す感情には限りがある。そのため、「貸す」と違って情動的な付加詞(喜んで、いやいや)の共起が少ない。
「貸す」の文化的情報も参照。
誤用解説
他人の日焼け止めクリームを一時的に使わせてもらう場合、「日焼け止めクリームを借りる」と言える。しかし、他人のアイスクリームを一時的に食べさせてもらう場合は、「×アイスクリームを借りる」とは言えず、「○アイスクリームを少しもらう」と言うことになる。貸し借りは、「使う」ことを目的とする場合にしか成り立たないのである。
類義語・反義語
類義語借用する
反義語貸す


2.空間の一時的取得他動詞初級★★★
表記借りる
借り手にとって必要な空間を、後で貸し手に返すという約束のもとで、一時的に取得する。
文型
<借り手>が<貸し手>に<空間>を借りる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
転勤が多いので、行く先々でマンションを借りている。
商店街に店舗を借りてリサイクルショップを開くことにした。
駅前にアパートを借りた
そのレストランは田中さんに駐車場を借りている。
友人に部屋を借りて住んでいる。
ビルの1階は接骨院が借りている。
コロケーション
<借り手>が
(人名)、会社、店
<貸し手>に
(人名)、地主
<空間>を
部屋、アパート、マンション、土地、場所、宿、事務所、店舗、別荘
<場所>に
近所、JR沿線、田舎
<用途>として
事務所、店舗、軍用地
非共起例
<貸し手>に<場所>に
 そのレストランは田中さんに駅前に駐車場を借りている。
 そのレストランは田中さんに駐車場を借りている。
 そのレストランは駅前に駐車場を借りている。
1つの文が2つ以上の「に」格を持つことは好まれないため。
解説
借りるものが場所なので、使用目的は居住・営業などであるのが普通である。
また、物品ではないため、借りることはできても、返すことは必ずしもできない。そのため、「?借りていた部屋を返した」という表現はやや不自然となる。「借りていた部屋を明け渡す」などと言うことができる。同じ理由で、「?部屋を大家に返した」という表現もやや不自然となる。
誤用解説
スーパーの駐車場に駐車する際は、一時的に空間を所有することになるが「駐車場を借りる」とは言えない。借り手が空間を使用しているものの、時間が短すぎるため、所有者はなおもスーパーであると見なされるためである。
類義語・反義語
類義語借用する
反義語貸す


3.助力他動詞中級★★
表記借りる
借り手にとって必要な無形の資源を、貸し手から得る。
文型
<受益者>が<助力者>の[に]<助力>を借りる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ここは一つ君に力をかりたい
コンピュータの助けを借りて膨大なデータを解析しよう。
政府はマスコミの手を借りて世論を誘導した。
あいつは酒の力をかりないと言いたいことも言えない男だ。
困ったとき、知恵を借りられる人がいるのはありがたい。
誰かの力をかりようと思うなら、自分も全力を尽くさないとだめだ。
コロケーション
<助力>を
力、助け、手、知恵、知識、肩
<受益者>が
(人名)、(国名)
<助力者>の[に]
(人名)、(国名)、(団体名)、酒
非共起例
<助力者>から
 兄から力を借りて課題を終わらせた。
 兄に力を借りて課題を終わらせた。
 兄の力を借りて課題を終わらせた。
助力が抽象的で実体を持たないものであり、起点からの移動を想定できないため「から」は使いにくい。
解説
物理的に「手を取ってもらう」という意味で用いられている場合は、「<人>に<手>を借りる」という表現が現れやすい。「灰色の髪をしている小男に手を借り、五十センチほど跳んでクルーザーに移った」(柘植久慶著 『海底の煌き』, 1993, 9 文学)
誤用解説
慣用句では「<助力者>に」が不自然となることがある。
 猫に手を借りる。
 猫の手を借りる。
類義語・反義語
類義語
反義語貸す


4.利用他動詞中級★★
表記借りる
主に無形の資源を、本来とは別の目的のために一時的に利用する。
文型
<主体>が<資源・名>を借りる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この場を借りて御礼申し上げます。
政府は改革の名を借りて大幅な増税を狙っている。
留学の形を借りた不法就労が社会問題となりつつある。
偉人の言葉を借りて言えば、「天は人の上に人を作らず」です。
その物語は、人の姿を借りてこの世に現れた神様の話だ。
少し時間をお借りしてこの企画について説明させていただきます。
stairs今日この場をお借りして、改めてお礼を伝えたいと思います。
コロケーション
<主体>が
(人名)、政権、メディア
<資源>を
場、時間、席、機会、言葉、表現、形、名、姿
非共起例
<所有者>に
 偉人に言葉を借りて言えば
 偉人の言葉を借りて言えば
借り手が一方的に借りるのであり、所有者は貸し手ではないため、「に」格で標示できない。
解説
借りる行為は背景化され、借りたものを返す必要がない。従って、「貸す」と対応しない。同じ理由で、「時間を借りて話す」と「時間をもらって話す」は、表す意味に大きな違いがない。
連体用法(名詞修飾用法)が「形」や「名」では多く見られる(「留学の形を借りた不法就労」、「恩赦に名をかりた国民の人気取り政策」)。
誤用解説
「〜を借りて〜する」や「〜を借りれば〜だ」のように、通常「借りる」の後に何かが続く。そのため、「借りる」を主動詞として文を終えると、不自然になることが多い。
 御礼申し上げるために、この場をお借りします。
 この場を借りて御礼申し上げます。


借りるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<借り手>が
だから、子供が図書館から借りてきたこの本をいっしょに読みながら、どうなるかはらはらした。
(樋口健夫,樋口容視子著 『住んでみたサウジアラビア』, 1986, 302)
<貸し手>に[から]
昔、とあるゲームを知り合いから借りたんですけど、そのゲームの名前を忘れてしまいました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, ゲーム)
<品物>を
自転車が大好きで、シゲちゃんの店の三十分五円の貸自転車を毎日借りて、町内をさっそうと走っていた。
(峰岸達著 『私の昭和町』, 2002, 726)
<条件>[で]
幼児向けの本から一般書(趣味の本、ベストセラー等)まで幅広い蔵書をそろえ、どなたでも無料で借りることができます。
(広報さっぽろ+ていね区民のページ, 2008, 北海道)
<担保>に[として]
小佐野は、翌三十三年二月、このビルと土地を担保に、一億円を三和銀行から借りている。
(大下英治著 『梟商』, 1993, 913)
<場所>で
つぎの朝パクストンは、ホテルでレンタカーを借り、グレートネックに向かって車を走らせた。
(ダニエル・スティール著;天馬龍行訳 『最後の特派員』, 2001, 933)
<態度>
万造たちは河岸につないである川舟を無断で借りることにした。
(津本陽著 『海商岩橋万造の生涯』, 1987, 913)
<借り手>が
その頃尾崎さんが借りていた下落合のマンションへ、その人はたびたびきていました」
(梓林太郎著 『八ケ岳石の血痕』, 2001, 913)
<貸し手>に
また昨年から、地域の人に畑を借りて、サツマイモやたまねぎなども作っています。
(市政だより天草, 2008, 熊本県)
<空間>を
彼女は親の暮らす家からあまり離れていないところに部屋を借りていた。
(すばる, 2001, 文学/芸術)
<場所>に
あたしは社交界とは縁のない絵描きで、それも下手くそなんだけど、絵を描いてるおかげで、にアトリエを借りて、そこで寝泊りできるようになってるの
(クレイグ・ライス著;山本やよい訳 『マローン御難』, 2003, 933)
<用途>として
家主は丞の馴染みの客で、自分の仕事場として借りることにして、権利、敷金、前家賃などを払ったが、合い鍵は萌子に渡さなかった。
(田久保英夫著 『仮装』, 2001, 913)
<助力>を
環境とヒトを傷つけない技術を求めていくと、どうしても生きものたちの知恵を借りるしかないところに行きつくようです。
(赤池学,永野裕紀乃,金谷年展著 『"正しい"エネルギー』, 1999, 501)
<受益者>が
お年寄りが誰かの手を借りながら自分の家で暮らしたい、と願った時に、介護の担い手をどうするのかはいちばん大きな問題です。
(宮子あずさ著 『老親の看かた、私の老い方』, 1998, 367)
<助力者>の[に]
マイケルが書いたのはごくわずかで、それも何人かのゴーストライターに力を借りていた。
(J.ランディ・タラボレッリ著;岡山徹訳 『マイケル・ジャクソンの真実』, 1993, 767)
<主体>が
関西大学は昭和五十年度から、新入生からの学費改訂を決めたのだが、例によってそれを口実とする学生騒動屋連中が、反対闘争に名を借りて破壊活動を始めた。
(谷沢永一著 『時代の手帖』, 1987, 304)
<資源>を
今回の地震で被災された皆さんに私はまず心からこのをおかりしてお見舞いを申し上げておきたいと思います。
(国会会議録, 1993, 特別委員会)






























今日この場をお借りして、改めてお礼を伝えたいと思います。
猫の手も借りたい

意味
非常に忙しくて人手が足りないので、猫の手(=実際には役に立たない)でもよいから労働力がほしい。
用例
大晦日のそば屋は猫の手も借りたいほど忙しい。
コーパスからの用例
税理士にとって税の確定申告の期間は、猫の手も借りたいほどの大繁盛期だ。 (清水英雄著 『「ありがとう」戦略』, 2003, 159)
胸を借りる

意味
上位者、実力のある者に練習の相手をつとめてもらう。
用例
この一年間、先輩の胸を借りて必死に練習してきた。
コーパスからの用例
「列強横綱の胸を借りて、幕下日本もすくすくと育つ」(荒巻義雄著 『猿飛佐助』, 1992, 9 文学)
借りを作る

意味
他者からの助力に対して(長期的な)負い目を持つ。
用例
一人では手に負えない仕事だったため、たくさんの人に借りを作ってしまった。
コーパスからの用例
出版サブコーパス:書籍(PB) 誰に対してであれ、借りをつくるのが嫌なの。 (本格ミステリ作家クラブ編 『透明な貴婦人の謎』, 2005, 913)
借りてきた猫

意味
自分の領域の外で、本性を現さずにおとなしくしている人。
用例
弟は借りてきた猫のように静かに座っていた。
コーパスからの用例
昼間は借りてきた猫みたいにおとなしくまじめな人です。 (岡部義秀著 『野の花ひらき、対話ゆきかうまちで』, 2004, 498)
借りがある

意味
お金や品物を借りている
用例
彼には1万円の借りがある。
コーパスからの用例
私の結婚式には、その友人から頂いてるので、借りがあるようでなんとなくスッキリしません。 (Yahoo!知恵袋, 2005, マナー)
意味
助力者に対し、負い目ないし恩を感じている。
用例
花子には、あの日助けてもらったという借りがある。
コーパスからの用例
彼には返しきれないほどの借りがあるのだから、遺産のすべてを渡してしまうほうが後腐れなくさっぱりするのではないかしら? (スーザン・フォックス作;飯田冊子訳 『結婚と償いと』, 2004, 933)
意味
敵対する相手に対し、仕打ちをする意志がある。
用例
あいつには大敗した借りがあるから、今度こそ勝ちたい。
コーパスからの用例
ドイルには、ミルドレッド殺しの計画をぶち壊された借りがあったからね (ロビン・ハサウェイ著;坂口玲子訳 『フェニモア先生、人形を診る』, 2002, 933)
借りを返す

意味
お金や品物を返す
用例
そろそろ友人に20万円の借りを返したい。
コーパスからの用例
あいつに会いに行くのは、あくまでもクリーニング代とこのあいだの借りを返しにいくだけであって…) (仙道はるか著 『高雅にして感傷的なワルツ』, 1998, 913)
意味
助力者に対し、負い目ないし恩を返す。
用例
鶴は、おじいさんに助けてもらった借りを返しにきた。
コーパスからの用例
いろいろ借りを返したかったし、義理もあったから。 (笠原顕司著 『「住みか」のヒント』, 2005, 527)
意味
敵対する相手に対し、仕打ちをする。
用例
前の試合ではぼろ負けしたので、次の試合では借りを返したいです。
コーパスからの用例
巨人は、ヤクルトに同一カード3連勝で開幕カード3連敗の借りを返した。 (Yahoo!ブログ, 2008, スポーツ)
複合動詞 V1

借り受ける、借り入れる、借り出す、借り尽くす、借り増す、借り集める、借り歩く、借り切る、借り上げる、借りかえる、借り倒す
複合動詞 V2

特になし
複合名詞

貸し借り、前借り、借り入れ(金銭に限定)、借り手、借り主、借り手市場(供給が過多で、借り手が有利な市場)、借り料、借り賃、借り方、借り物(比喩的な用法が多い→慣用表現)
借りる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形かりる
ない形かりない
~なかったかりかった
ます形かり
~ませんかりま
~ましたかりした
~ませんでしたかりまんでした
~ときかりるとき かりる
ば形かり
意向形かり
て形かりて
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