返るのコアイメージ

1.対象物の反転自動詞初級★★★
表記かえる、返る、反る
あるものの向き・位置が反対になる。
文型
<もの>が返る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
お餅が網にくっついて、上手く返らない
この浴衣は、裾が返っても色柄が同じなので気になりません。
先日買ったワンピースは、素材の問題なのか、すぐ袖が返ってしまう。
このジャケットは、襟が返った状態でも綺麗に見えるように工夫してある。
両力士が仕切り線に手をつくと、行司の軍配が返った
(柔道で)映像を見ると、相手の体が返って背中が畳に完全についています。
コロケーション
<もの(の側面)>が
襟、裾、袖、軍配、体、手首
<方向>に(へ)
表、後ろ、裏側、内側、外側
<様態>
ゆっくり、くるり(と)、簡単に、完全に、すぐ、なかなか
解説
語義1は、上(向き)であったものが下(向き)になったり、表であったものが裏になったりして、向きや位置が反対になることを表す。
誤用解説
基本的に、上下・表裏が反対になる場合に使われる。前後など単に向きが反対なる場合は使いにくい。
 いすの背もたれがこっち側に返っている
 いすの背もたれがこっち側に向いている
類義語・反義語
類義語ひっくり返る、反転する
反義語


2.もとの状態への回帰自動詞初級★★★
表記かえる、返る、還る
ある事柄(の状態)がもとの状態になる。
文型
<人[組織・動物]・もの>が<場所・状態>に返る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
葉は枯れて、やがて自然に還る
この風船は自然に還る素材でできている。
政府は、この法案については原点に返って再考する必要がある。
どんなに偉大な人でも、いつかは死んで土に還る
地元の夏祭りに行くと、童心に返ったような気分になる。
うまくいかないときは、もう一度基本に返って今の自分に何が足りないのかを考えてみる。
stairs久々に童心にかえったよ。
コロケーション
<組織>が
国、政府、委員会、協議会、与党
<もの>が
木、葉、灰、遺骨、ゴミ
<場所>に
土、海、山、自然、大地、森
<状態>に
童心、原点、正気、初心、基本、(本来の)姿、無
<様態>
いつか、やがて、いずれ、一度、即座に、絶対、完全に、永遠に
非共起例
<状態>に返る
 元の体重に返る
 元の体重に戻る
 あの二人は、元の仲の良い夫婦に返った
 あの二人は、元の仲の良い夫婦に戻った
「返る」は「本来の(あるべき)状態になる」ということを表すため、単に以前の状態になる場合は使いにくい。
解説
語義1は、「ある対象物の向きや位置が反対になる」ということを表しているが、この「返る」は、「ある対象物がもとの状態になる」ということを表している。ただし、いずれも「ある対象物が対極に位置する(変化する前後の状態が対極的である)」という点で共通している。
類義語・反義語
類義語戻る
反義語


3.持ち主への返還自動詞初級★★★
表記かえる、返る
あるものがもとの持ち主のところに移動する。
文型
<もの>が<人・組織>に返る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
年末調整で払いすぎた税金が返ってきた。
盗まれた絵画が美術館に無事返ってきた。
電車で落とした財布が返ってきたときは、本当に嬉しかった。
会社が倒産してしまい、投資したお金が返ってこない。
出資法の改正により、過去に払いすぎた利息が返ってくることがある。
(図書館で)お探しの本は今貸出中ですので、返ってきましたらご連絡します。
stairsこれは、払い過ぎた医療費や税金が返ってくるとウソをつき、逆に犯人の口座にお金を振り込ませるものです。
コロケーション
<もの>が
お金、過払い金、税金、敷金、土地、資産、手紙、紛失物
<人・組織>に
持ち主、本人、投資家、地主、国民、市、美術館
<人・組織>から
依頼者、契約者、警察、取引先、税務署
<様態>
確実に、迅速に、無事、ようやく、ちゃんと、簡単に、全然、全く
非共起例
<もの>が返る
 買い物をして、実際の金額と違う領収書が返ってきた
 買い物をして、実際の金額と違う領収書が発行された
 買い物をして、実際の金額と違う領収書を渡された
貸したり預けたりしたものでない場合は使いにくい。
解説
語義2は、「ある対象物がもとの状態になる」ということを表しているが、この「返る」は、「ある対象物がもとの持ち主のところに移動する」ということを表している。ただし、いずれも「ある対象物が本来存在すべきところに位置する」という点で共通している。
類義語・反義語
類義語戻る、返却される
反義語


4.本拠地への帰還自動詞初級★★★
表記かえる、帰る、還る
人や組織・動物が本来の居場所に移動する。
文型
<人・組織・動物>が<本拠地>に帰る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
妻が出産のために実家に帰った
名古屋に、再び劇団四季が帰ってくる。
エサを見つけたアリが、巣に帰って仲間に知らせる。
この前地元に帰ったら、高校の同級生がラーメン屋を開いていた。
自衛隊が半年間の任務を終えて本国に帰ってきた。
2時間を過ぎたあたりから、ランナーたちが陸上競技場に次々と帰ってくる。
stairsおかげで魚もだいぶかえってきてるんですよ。
コロケーション
<人・組織・動物>が
生徒、妻、主人、ランナー、同志、軍隊、視察団、渡り鳥、アリ
<本拠地>に(へ)
家、実家、祖国、本社、地元、ホーム(ベース)、森、巣
<活動・場所>から
仕事、買い物、旅行、出張(先)、学校、アメリカ
<手段・方法>で
電車、バス、地下鉄、ひとり、みんな
<時期>
だいぶ前に、ついさっき、金曜日に、春に、夜遅く、昔に、子供の頃に
<様態>
久しぶりに、速やかに、急に、永久に、いったん
解説
語義2は、「ある対象物がもとの状態になる」ということを表しているが、この「帰る」は、「人や動物が本来の居場所に移動する」ということを表している。ただし、いずれも「ある対象物が本来存在すべきところに位置する」という点で共通している。
誤用解説
「帰る」は単に元いた場所に移動する場合は使いにくい。つまり、「(いわゆる)本拠地」としてとらえられる場合でないと使えない。
 先にタクシーに帰って待っています。
 先にタクシーに戻って待っています。
類義語・反義語
類義語帰還する、生還する
反義語


5.相手からの応酬自動詞中級★★
表記かえる、返る
主体(話者)からの行為や働きかけに対して、相手から同等な対応がなされる。
文型
<物事>が<相手>から返る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
誰に聞いても同じ答えしか返ってこない。
山に向かって「ヤッホー」と叫んだら、こだまが返ってきた。
学会の発表で、フロアーから厳しい質問が返ってきた。
先輩看護師に助言を求めたところ、冷たい視線が返ってくるだけであった。
先日行われたワインの試飲会で、審査員から非常に高い評価が返ってきました。
最近は、会社や公共機関などへの問い合わせに対して、その回答がファクスで返ってくることが少なくなりました。
コロケーション
<物事>が
答え、返事、反応、言葉、回答、声、笑顔、反論、視線、質問、挨拶、評価
<相手>から
担当者、受講者、消費者、お客さん、政府、役所、恩師、上司
<手段・方法>で
郵送、メール、英語、ファクス、添付ファイル形式
<様態>
ちゃんと、やっと、きちんと、すぐさま、いきなり、きっちり
解説
語義3は「貸したり、預けたりしたもの(具体物)がもとの持ち主のところに移動する」ということを表すのに対して、この「返る」は、「相手から主体(話者)に対して(具体物ではなく)何らかの行為や働きかけがなされる」ということを表す。ただし、いずれも「何らかのものがもとのところに移動する」という点では共通していると考えられる。というのは、「観客に向かって手をふったら、笑顔が返ってきた」という表現において、「相手に対する「手をふる」という行為が「笑顔」という形で、本来の場所であるの主体(話者)のところに移動する」というようにとらえられるということである。
誤用解説
文中に<物事>が表れる場合、語順は「相手から物事が」のほうが自然である。
 返事が太郎から返ってきた。
 太郎から返事が返ってきた。


6.孵化自動詞中級★★
表記かえる、孵る
(主に鳥類の)卵が雛になる。
文型
<卵>が孵る
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
鶏の雛が卵から孵った
ウミガメの卵はどのくらいの期間で孵るんですか。
孵卵器で孵った卵は親が育てないって本当ですか。
6月に入ると、めだかの卵が次々と孵った
親が何もしないでほっといても孵る鳥がいるらしい。
スーパーで買ったうずらの卵が孵ったというニュースを見たことがある。
コロケーション
<卵・雛>が
卵、雛、ひよこ
<場所>で
体内、水の中、湿ったところ、岩盤の下、屋内
<方法・手段・道具>で
人の手、人間の手、地熱、孵卵器、孵化器
<様態>
もうすぐ、やがて、あっさり、簡単に、一瞬で、次々(と)
解説
語義1は、「ある対象物の向きや位置が反対になる」ということを表しているが、この「孵る」は、「鳥類の卵が孵化する」ということを表している。これは、鳥が(巣の中の)卵を、表と裏が逆になるように動かしながら、均等に温めるというところから来ていると考えられる。つまり、「卵がかえる」ことによって「孵化する」というようにとらえられ、語義1とは原因と結果の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語孵化する
反義語


返るの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの(の側面)>が
しかし、ロフトの多いショートアイアンはもともと左に引っかけやすいクラブなので、右足に体重を残したまま振り抜くと手首が返りすぎたりヘッドだけが先行したりして、ボールが大きく左に飛んでしまうのです。
(内藤雄士著 『内藤雄士の500円で必ず上手くなるアイアンショット』, 2005, )
<場所>に
父も母もに還り、無人となった故郷の家を、この一本の木のために今も守り続けています。
(松谷みよ子著 『現代民話考』, 1994, 388)
<状態>に
一度原点に返って、自分が本当にやりたい職業は何か、理想としている職業は何かを問い直す必要があります。
(オーレン・ロース著;大楽祐二訳 『億万長者だけが知っている雨の日の傘の借り方』, 2003, 338)
見渡す限りに広がるポピーの絨毯は、思わず童心に返ってはしゃいでしまうほど。
(地域限定ぴあ(yokohama限定版・chiba限定版), 2004, 一般)
<様態>
この世に生きるすべてのものは、いつか土に返り、また旅が始まる。
(星野道夫写真・文 『アラスカ永遠なる生命』, 2003, 295)
<もの>が
年末調整をした結果、いつもは還付金が返ってきていた様なんですが、今回は逆に徴収されていました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 保険、税金、年金)
<本拠地>に(へ)
帰国後は彫刻も学び、郷里に帰ってから主に木版画の道を歩んだ。
(市民タイムス編 『北アルプス山麓をゆく』, 2003, 291)
電話のコードを抜いて、一人でベッドの上にうずくまるようにしてすごし、夜が明けると、荷物をまとめて、田舎に帰ることにした。
(折原一著 『耳すます部屋』, 2003, 913)
<活動・場所>から
彼氏が仕事から帰ってくるとまずビールです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<手段・方法>で
もともと名取へは夕方の新幹線でゆっくり帰るつもりだったから、時間は十分にある。
(高山路爛著 『わが愛はやまず』, 2002, 913)
<物事>が
意外にも、あっさりと答えが返ってきた。
(山崎洋子著 『花園の迷宮』, 1986, 913)
「給食のための専用の場を作って」というと、決まって「うちの保育室は狭くて、それは無理だ」と、保育者の反応が返ってきます。
辻井正著 『こんな保育室をつくりたい』, 2000, 376)
<相手>から
礼を言ってほしくてしているわけでもないが、相手から何の反応も返ってこないと、拍子抜けがしてしまう。
(河合隼雄著 『しあわせ眼鏡』, 1998, 159)
<手段・方法>で
するとほとんどが「手紙着いたよ」とすぐに電子メイルで返事が返ってきたんです。
(恩田陸著 『象と耳鳴り』, 2003, 913)
<卵・雛>が
もちろん、ひながかえった後だって、夫婦で協力しながら、手塩にかけて子供を育てていくんです。
(楠木ぽとす著 『産んではいけない!』, 2005, 599)






























久々に童心にかえったよ。
これは、払い過ぎた医療費や税金が返ってくるとウソをつき、逆に犯人の口座にお金を振り込ませるものです。
おかげで魚もだいぶかえってきてるんですよ。
帰らぬ人となる

意味
人が死ぬことを婉曲的(より丁寧)に表した表現。
用例
祖父は脳卒中で倒れ、帰らぬ人となった
コーパスからの用例
三十代で幽閉されてから二十数年を、孤独で質素な生活を送った絵島はついに病に臥し、帰らぬ人となった。(由良弥生著 『大奥よろず草紙』, 2003, 210)
我に返る

意味
意識がない、あるいは放心状態から正常な状態になる。
用例
競馬通いの生活が続いていたが、ふと我に返ったときはもう取り返しのつかない状態になっていた。
コーパスからの用例
がちゃ、とドアの開く音に物思いを打ち破られ、光奈は我に返って自己嫌悪に陥った。(岩田洋季著 『灰色のアイリス』, 2003, 913)
複合動詞 V1

返り咲く、帰り着く、帰り渡る
複合動詞 V2

呆れ返る、生き返る、裏返る、冴え返る、静まり返る、しょげ返る、立(ち)返る、連れ帰る、煮え返る、煮えくり返る、逃(げ)帰る、跳ね返る、ふんぞり返る、むせ返る、沸き返る、割れ返る
複合名詞

返り討ち、帰り掛け、帰り車、返り咲き、帰りしな、帰り支度、返り初日、帰り新参、返り血、返り忠、返り点、返り花、帰り道、返り読み、里帰り、先祖返り、宙返り、とんぼ返り、寝返り
返る(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形える
ない形かえない
~なかったかえなかった
ます形かえり
~ませんかえりま
~ましたかえりした
~ませんでしたかえりまんでした
~ときえるとき
ば形えれば
意向形かえ
て形えって
た形えった
可能形かえ
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