入れるのコアイメージ

1.ものを中へ動かす他動詞初級★★★
表記入れる
人がものを入れ物などの外から中に動かす。
文型
<人>が<入れ物など>に<もの>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
かばんに書類を入れた
冷蔵庫に買ってきた食材を入れました
車を車庫に入れるのが面倒だ。
自動販売機にコインを入れてジュースを買った。
コップに水を入れてください。
口にものを入れてしゃべるのはやめなさい。
コロケーション
<入れ物など>に
① 通常入れ物の役割を果たすもの:コップ、鍋、冷蔵庫、カバン、ポケット、車庫
② 入れ物の役割を果たし得るもの:口、血管、動脈、行間、隙間、タイヤ、銃
<もの>を
① 水、書類、鍵、持ち物、車
② 管、もう一行、弾丸、空気
<様態>
いっぱい、きれいに、たくさん、次々と、順番に
非共起例
<入れ物など>に
 読んだ本は本棚に入れなさい。
 読んだ本は本棚に片付け/戻しなさい。
 クローゼットに今日着た洋服を入れた
 クローゼットに今日着た洋服を片付けた/戻した
決まった入れ物の中に収納されているものについて、使用後に「中へ動かす」場合、「戻す/片付ける」を用いるのが自然であり、「入れる」は不自然である。たとえば「本」は通常「本棚」の中にある。これを出して読んだ後に「本棚」の中に動かす場合、「入れる」は不自然となる。
解説
「入れる」は、「人がものを入れ物などの外から中に動かす」ことを表す。類似した語に「移す」がある。「移す」の場合、「ある場所」から「別の場所」に移動することを表す。たとえば「コインを小銭入れに移した」のように用いられる。このとき「もともとあった場所」から「コイン」がなくなり「小銭入れ」の中にコインが移動したことが表現される。これに対し「入れる」を用いて「コインを小銭入れに入れた」と言う場合、「もともとあった場所」からコインがなくなることは注目されておらず、「コイン」が「小銭入れの中に収まる」ことだけが注目されている。
「人がものを入れ物などの外から中に動かす」という場合の「動かす」先は、容器とみなされるものであればよい。たとえば「車にガソリンを入れる」「コインを自動販売機に入れる」と言うことができる。厳密にはガソリンは「ガソリンタンク」に、「コイン」は「コインを収納する箱」に「入れる」わけだが、「車」「自動販売機」など「ガソリンタンク」や「コインを収納する箱」より目立つ全体を容器とみなして表現できる。
さらに「ポケットに手を入れる」というように、「容器」の中に収めるべきものではないものについて「入れる」ということもできる。本来「ポケット」は「手」を入れるためのものではない。
誤用解説
「入れる」よりも詳細な意味を持ち、かつ日常でよく用いられる基本的な語がある場合に「入れる」を用いると不自然である。たとえば、次のような場合である。
 ゴミ箱にゴミを入れた
 ゴミ箱にゴミを捨てた
 ジグソーパズルの最後のピースを入れた
 ジグソーパズルの最後のピースをはめた
 赤ちゃんをチャイルドシートに入れた
 赤ちゃんをチャイルドシートに寝かせた/座らせた
類義語・反義語
類義語移す、戻す、片付ける
反義語出す


2.ものを中へ移動させる他動詞初級★★★
表記入れる
人が状況を作ることで、ものを外から中に動かす。
文型
<人>が<動くもの>を<区切られた場所>に入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
窓を開けて部屋に風を入れた
カーテンを開けて陽の光を入れました
後ろのドアから遅れてきた参加者を会場に入れることにする。
犬がいたずらをするので、ゲージに入れた
列をなして開館を待っていた人たちを、中に入れた
雨が降ってきたので校庭にいる子供たちを軒下に入れた
コロケーション
<動くもの>を
① 自然:風、陽、光、月明かり
② 人や動物:生徒、社員、従業員、犬、猫
<区切られた場所>に
部屋、教室、会場、中、ゲージ 
非共起例
<動くもの>を
 ホームパーティーで家に呼んだ友人を「どうぞ」と部屋に入れました
 ホームパーティーで家に呼んだ友人を「どうぞ」と部屋に招き入れました
「入れる」は「人が状況を作ることで、ものを外から中に動かす」ことを表す。「人」を「動かす」場合には命令したり許可をしたりすることになる。「ホームパーティーの客人」は当然の権利として部屋の中に来るのであるから、命令や許可の対象ではない。よって「入れる」を用いると不自然である。
<区切られた場所>に
 ビルに光を入れた
 部屋に光を入れた
<区切られた場所>はその外と中を一度に認識できるようなものでなければならない。「ビル」は大きいので外と中を同時に認識することは、普通はない。したがって「ビルに光を入れる」は不自然である。ただし「ビル」の全体を見て光の入り方を設計するような場合であれば「ビルに光を入れる」ということも可能である。
解説
「語義1」がものに直接働きかけて「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義2」は状況を作り出して移動させることを表す。状況は、移動を許可する場合(例:人を部屋に入れる)や、命令する場合(例:追い立てて犬をゲージに入れる)、通路を作るなど移動できる環境を作る場合(例:カーテンを開けて外の光を部屋に入れる)などの方法で作られる。
誤用解説
 蚊を部屋に入れた
 蚊を部屋に入れてしまった。
「入れる」は意志に基づいてものを動かすことを表すので、「蚊」のように中へ動かすと不都合なものについて単に「入れる」を用いると不自然である。「入れてしまう」などとする必要がある。
類義語・反義語
類義語移動する、移動させる
反義語出す


3.電気を取り込む他動詞初級★★★
表記入れる
人が電流を通じさせて、機器を作動させる。
文型
<人>が<電源>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
パソコンの電源を入れて、レポートを書き始めた。
夜、帰宅してすぐにエアコンのスイッチを入れた
隣の部屋はエアコンを入れているので、そちらで涼んでおいで。
テレビのスイッチを入れ、ぼんやり画面をながめていた。
電気をつけたければ、そこのスイッチを入れてください。
新しい冷蔵庫が届いたが、電源を入れたら変な音がした。
コロケーション
<電源>を
スイッチ、電源、エアコン、冷房、暖房
非共起例
<電源>を
 テレビを入れた
 テレビをつけた
 扇風機を入れて
 扇風機をつけて
「エアコン/冷房/暖房を入れた」とは言えるが、「電気」や「扇風機」などのその他の家電などの機器について「入れる」を用いると不自然である。「エアコン」の場合は、冷気や暖気が機器を通って部屋の中へ移動するイメージがあるからだと考えられる。「扇風機」の場合はその場で空気を動かしているだけであり、「テレビ」の場合はその場で作動しているだけである。いずれも外から部屋の中へ何かが移動するイメージはない。
ただし、「テレビ/扇風機の電源を入れた」ということはできる。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義3」は、「もの」の中でもとくにスイッチを中へ押し込む形で移動させるなどして、「電気」を外から中へ移動させることを表す。
「電気」が通じた結果、機器が動くことになり、「入れる」はこのことも表す。しかしこれは「冷気や暖気」を部屋の内側へ移動させるというイメージを伴う「エアコン」のような機器の場合に限られる。つまり「エアコンを入れた」が自然であるのに対し、「✖扇風機を入れた」は不自然である。
誤用解説
この「語義3」の「入れる」は「電源/スイッチを入れる」の形でよく用いられる。「ボタン」については「押す」のほうが自然である。
 (電化製品の)ボタンを入れる
 (電化製品の)ボタンを押す
類義語・反義語
類義語つける
反義語消す


4.口座へ支払う他動詞初級★★★
表記入れる
人が払うべき金銭を他の口座に支払う。
文型
<人>が<お金>を<人や組織>に入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
商品の代金としてこの口座に2000円を入れてください。
しまった!先月の家賃を入れるのを忘れている。
社会人になったんだから、家に食費を入れてもらえないかな。
先にお金を入れていただかなければ、品物の発送はできません。
口座にお金を入れ忘れ、クレジットカードの引き落としができなくなった。
運用のために貯金の一部を別の口座に入れた
コロケーション
<お金>を
家賃、食費、100万、代金
<人や組織>に
大家、家族、会社、店、口座
<量>
1000円、1万円
非共起例
<お金>を
 税金を入れた
 税金を納めた
 ユニセフに寄付を入れた
 ユニセフに寄付をした
「入れる」は、支払う先となる<人や組織>が明確な場合に使われる。「税金」や「寄付」の場合、国や寄付の取り扱い団体がお金をもらうと言えるのか曖昧であって「入れる」を用いると不自然である。ただし、とくに支払い先を明示したい場合であれば、次のように言うことはできる。
 税金を国庫に入れた
 ユニセフに寄付をしようと思って寄付金を口座に入れた
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義4」は、「もの」の中でもとくに「お金」について、「入れ物」のように捉えられる「口座」の中へ動かすことを表す。
誤用解説
 財布を忘れて買い物をしてしまった。家に帰って財布を持って入れにいった。
 財布を忘れて買い物をしてしまった。家に帰って財布を持って払いにいった。
「入れる」は銀行などの口座にお金を支払う場合に用いられる。したがって、現金を手渡しで渡す場合には、「払う」「あげる」などを用いたほうが自然である。
類義語・反義語
類義語振り込む、払う
反義語出す


5.組織に所属させる他動詞初級★★★
表記入れる
人がほかの人を組織や集団の一員にする。  
文型
<人>が<ほかの人>を<組織>に入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
息子を私立中学に入れた
子どもを塾に入れることにした。
親戚の子を籍に入れて跡継ぎにすることにした。
クラブにたくさんの部員を入れるために勧誘をしよう。
親戚の子を自分の会社に入れようと思う。
優秀な新入社員を入れるために、人事部は採用活動に全力を注いでほしい。
コロケーション
<ほかの人>を
子ども、息子、娘、新入部員、新入社員
<組織>に
私立中学、スポーツクラブ、塾、寮、籍、会社
非共起例
<組織>に
 幼馴染を家族に入れた
 幼馴染と家族になった
「家族」は、構成員全体で作るもので、結婚するなどして一人増えればその人を含めて「家族」ができあがる。しかし「入れる」はすでにしっかり形のある組織にメンバーを加えることを表すため、「家族に入れる」は不自然である。ただし、「由緒正しい旧家に息子が連れてきた見ず知らずの嫁を入れることになった」という表現ならば自然である。
<人>を
 ヘッドハンティングで新しい社長を入れた
 ヘッドハンティングで新しい社長を呼んだ
「入れる」は、人を組織に所属させることが可能な場合に用いられる。たとえば「子ども」であれば親の意志で「私立の小学校に入れる」ことができる。しかし、「ヘッドハンティングされた新しい社長」の場合、当人の意志を尊重するのが通常であって強制的に連れてくるのは難しい。したがって「入れる」を用いると不自然である。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義5」は、「もの」ではなく「人」を、抽象的な意味で「入れ物」のように捉えられる「組織」の中へ動かすことを表す。
誤用解説
 学齢に達したので、子どもを小学校に入れた
 学齢に達したので、子どもが小学校に入った
選択の余地がない場合に「入れる」を用いると不自然である。「学齢に達した子ども」が「小学校」に入学することは当然のことであって、通常、その他の選択はあり得ない。よって「入れる」を用いると不自然である。ただし、「私立小学校に入れる」であれば。「私立」か「公立」か選択の余地があるので自然である。
類義語・反義語
類義語
反義語出す


6.茶を飲めるようにする他動詞中級★★
表記入れる、淹れる、点れる   ※一般には「入れる」を用いる。「煎れる」はあまり使われない。「点(い)れる」は茶道でお茶を点(た)てる場合に用いられる。
人が湯を差すなどして茶を作り、入れ物に注いで飲めるようにする。
文型
<人>が<お茶など>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
毎朝コーヒーを入れて飲んでいる。
午後には紅茶を入れます
お茶は丁寧に入れると、味がまったく異なる。
ティーバッグでお茶を入れてもあまりおいしくない。
今、コーヒーを入れさせますから、お待ちください。
汗をかきながら事務所に着くと、事務員さんがお茶を入れてくれた。
コロケーション
<お茶など>を
お茶、コーヒー、紅茶、日本茶
<様態>
丁寧に
非共起例
<お茶など>を
 カクテルを入れるのが上手だ。
 カクテルを作るのが上手だ。
 スープを入れるのが得意だ。
 スープを作るのが得意だ。
「入れる」はお茶やコーヒーを作る場合についてしか使えない。すなわち「カクテル」や「スープ」について「入れる」と言うことはできない。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義6」は「もの」の中でもとくに「お茶など」の飲み物をコップなどに動かすことに加えて、その前段階としての準備、すなわちお湯を注ぐなどして「お茶」を作ることをも表す。このとき「入れ物」が何であるかということは問題にされていない。よって「お茶を青いコップに入れた」という場合(語義1)とは異なり、単に「お茶を入れた」と言う。
類似する表現に「入る」という動詞を用いて「お茶が入りました」がある。「お茶が作られ容器に注がれて飲む準備ができる」ことを表す。このように言うと「お茶を入れました」と言うよりも丁寧な印象を与えることができる。
誤用解説
 茶道教室に通って、毎週お茶を入れている
 茶道教室に通って、毎週お茶をたてている
「入れる」は、茶道においてお茶を作る場合には使えない。その場合は「点(た)てる」を使う。
類義語・反義語
類義語作る、点てる
反義語


7.候補を支持する他動詞中級★★
表記入れる
人が候補を選択して支持する。
文型
<人>が<候補>に<票>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
新人候補に票を入れた
改正案に賛成票を入れようと思う。
組合員に反対票を入れさせないように圧力がかかった。
みなさまの清き一票を私に入れていただければ、これほど有難いことはございません。
対立候補に票を入れたのは誰なんだろう。
社長の投票権は社員の5倍ある。社長が改革案に5票入れれば、それで改革案は通ってしまう。
コロケーション
<候補>に
候補者、太郎、改革案、太郎のプラン
<票>を
票、一票、白票
非共起例
<票>を
 投票を入れた
 投票をした
「票を入れる」全体で「投票する」ことを表すため、「投票を入れる」は不自然である。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義7」は「投票する」ことを表す。「もの」の中でもとくに「投票用紙」について「投票箱」の中へ動かすことからさらに進んで、その目的をも表すと言える。この語義の場合、必ずしも「投票箱」を使って「投票する」必要はなく、NETで「投票する」のでもよい。また、「投票箱に」ではなく「候補に」という形、すなわち「A候補に入れる」と表現される。
この「語義7」と関連する表現に「白票を入れる」がある。この場合は投票用紙に何も書かないで投票することを表す。投票そのものをしないことを表すのではない。
誤用解説
 住民票を東京に入れた
 住民票を東京に移した
「入れる」は選挙などの投票について言う場合にしか使えない。
類義語・反義語
類義語投じる
反義語


8.中で役に立てる他動詞上級
表記入れる
人が有用なものを導入する。
文型
<人>が<場所>に<その場所で役立つ有用なものや人>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
事務所に新しいコピー機を入れた
店にこれまで取引のなかった会社の商品を入れることにした。
コンピューターに統計ソフトを入れました
毎年、お正月の前には庭師を入れる
私はスマホにスケジュール管理のアプリを入れている
コンピューターにデータを入れて分析を始めた。
コロケーション
<場所>に
事務所、工場、オフィス、家、店、スマホ
<有用なものや人>を
コピー機、裁断機、大型コンピューター、庭師、アルバイト、新刊書
<時期>
今年、来年、今年から、来年から
非共起例
<有用な人やもの>を
 寂しいのでペットを入れた
 寂しいのでペットを飼った
「ペット」は家族のようなものであるので、「有用なものとして導入する」ことを表す「入れる」を用いると不自然である。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義8」は、単なる「もの」ではなく、有用な人やものを動かしその場に置くことを表す。動かされたものは、その中で何らかの役割を果たすことになる。たとえば「コピー機を入れた」と言えば、その場に置かれて便利になるなど、役に立つことを表す。これに対し、「10人がかりで重たいコピー機を部屋に入れた」といえば、「語義1」の「外から中へ動かした」ことを意味する。
誤用解説
 うちに新しい冷蔵庫を入れた
 うちに新しい冷蔵庫を買った
「入れる」は<有用なもの>が導入されることを表す。「冷蔵庫」のようにあって当然と考えられるものを使いはじめる場合、「買う」を用いるほうが自然である。
類義語・反義語
類義語設置する、呼ぶ
反義語撤去する


9.中に加える他動詞初級★★★
表記入れる
人がものに別のものを加える。
文型
<人>が<もの>に<別のもの>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
コーヒーに砂糖を入れますか。
チャーハンの具に何を入れようか。
白米に雑穀を入れて炊いた。
次に、小麦粉に溶かしたバターを入れてかき混ぜます。
土に砂を入れて、水はけをよくする。
この空の青、少し色が強すぎるみたいだね。ところどころに薄い雲みたいに少し白を入れてみたらどう?
コロケーション
<もの>に
飲み物、ご飯、土、絵の具
<別のもの>を
砂糖、塩、具、粉、肥料、バター
<量>
一杯、少し、たくさん
非共起例
<別のもの>を
 ふりかけを入れた
 ふりかけをかけた
 畑に水を入れた
 畑に水をまいた
「入れる」は、「別のもの」を「もの」の中に位置させる場合に用いられる。
「ふりかけ」や水やりの「水」のように表面に位置させる場合には用いられない。
解説
「語義1」が「ものを外から中に動かす」ことを表すのに対し、この「語義9」は、「動かされた」ものが、結果として「入れ物」の中にもともとあるものに加えられることを表す。
誤用解説
 赤の絵の具に黄色の絵の具を入れるとオレンジ色になります。
 赤の絵の具に黄色の絵の具を混ぜるとオレンジ色になります。
「入れる」はある「もの」へ別の「もの」を加える場合に用いられる。二種類の「もの」を溶け合うように混ぜることまでは表せない。
類義語・反義語
類義語加える
反義語出す


10.書き加える他動詞中級★★
表記入れる
人がスペースに言葉や記号などを加える。
文型
<人>が<スペース>に<言葉・記号・模様など>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
これは多肢選択問題です。かっこの中に記号を入れてください。
画面の枠の中にIDを入れると、購入申し込みの画面に進みます。
販売促進のグッズに小さく社名を入れた
このエクセルの表の一つのセルに一つのデータを入れてください。
グラタンにきれいな焼き目を入れるには、もう少し長く焼かないといけない。
あの人は右腕にタトゥーを入れている
コロケーション
<スペース>に
① 空欄:空欄、かっこの中、末尾、空いたところ
② デザインする余地のあるもの:パンフレット、タオル、販促グッズのすみ
③ 表面を焦がすもの:グラタン、魚
④ 身体:肩、腕、背中
<言葉・記号・模様など>を
① 言葉:生年月日、日付、名前、ナレーション、お礼のことば、修正、赤
② 記号:記号、ID、チェック
③ 絵:イラスト、さし絵、花の絵、会社のマーク、口絵
④ その他:模様、ロゴ、すかし、切れ目、ミシン目、焼き目、焦げ目、入れ墨、タトゥー
<様態>
くっきりと、大きく、小さく
非共起例
<言葉・記号・模様など>を
 校庭に人文字を入れた
 校庭に人文字を描いた
「入れる」は「スペースに書き加える」ことを表す。したがって「校庭」のように空間がただ広がっているところに「人文字」を描く場合に「入れる」を用いると不自然である。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義10」は、「言葉・記号・模様など」を「加える」ことを表す。
慣用的に「赤を入れる」という表現がある。これは「修正(するための言葉や記号)を書き加える」ことを表す。修正が主に赤ペンで書かれることによると考えられる。
誤用解説
 ファンから色紙を受け取り、サインを入れた
 ファンから色紙を受け取り、サインをした
「入れる」は「スペースに記号や言葉などを書き加える」ことを表す。したがって何も書いていない色紙にサインを書く場合に「入れる」を用いると不自然である。
「色紙」にすでに絵などが描かれている場合であれば、その余白に「サインを入れた」ということはできる。
類義語・反義語
類義語書く、描く、つける、加える
反義語消す


11.切れ目を加える他動詞上級
表記入れる
人がものに切れ目をつける。
文型
<人>が<ものなど>に<切れ目>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
いらなくなったキャッシュカードに切れ込みを入れて捨てた。
この魚は、斜めに包丁を入れて薄くそぐように切ってください。
書類にハサミを入れて捨てた。
手術がはじまり医者は患部にメスを入れた
服をつくるために買ってきた新しい布地にはさみを入れるときには、いつも緊張する。
畑にくわを入れる
stairsそれでは、ウェディングケーキにナイフを入れていただきます
コロケーション
<ものなど>に
ケーキ、魚、布、患部、腹、畑
<切れ目>を
① 切れ目を作る道具:ナイフ、はさみ、メス、包丁、くわ、くし
② 切れ目:切れ目、裂け目、切れ込み、筋
<道具>で
ナイフ、ハサミ、メス、包丁、くわ
非共起例
<道具>で
 はさみではさみを入れた
 はさみを入れた
「<切れ目>を」が「切れ目を作る道具」で表現される場合、さらに「<道具>で」を重ねて用いるのは不自然である。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義11」は、「もの」ではなく「切れ目」を加えることを表す。この場合、「メスを入れる」「ハサミを入れる」のように、「<切れ目を作る道具>を入れる」という形でも用いられる。
この場合の「入れる」は、「切れ目を加える」動作のスタート時に注目している。「布にはさみを入れた」という場合、最終的には「切れる」ことになるが、注目されているのは「切る」動作をはじめる時点である。切り離したことを表現したければ「布を切った」となる。
類似する表現に、「朝起きたときには必ず髪にくしを入れる」という表現もある。この場合、1本ずつがきれいに分かれてはいない「髪」に「裂け目を加えるかのように作用を加える」こと、すなわち「髪をとく」ことを表す。ただし「とく」のほうがよく用いられる。
また「メスを入れる」には、「腐敗した政治にメスを入れる」のような用法がある。この場合、「手術で身体にメスを入れる」かのように「問題を正すために追求する」ことを表す。
誤用解説
 シチューに使う野菜は全部、包丁を入れた
 シチューに使う野菜を全部切った
「入れる」は切り始めに注目した表現であり、切り離された結果に注目する場合に用いると不自然である。シチューに入れるために下準備をする場合、野菜が切り離されている結果に注目しているため、「入れる」よりも「切る」のほうが自然である。
類義語・反義語
類義語つける、加える
反義語消す


12.点を加える他動詞中級★★
表記入れる
人やチームが得点する。
文型
<人やチーム>が<点>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
相手チームが先に1点を入れた
あの子は、どの試合でも必ず点を入れる
対戦相手のチームは、ディフェンスがよいので点を入れるのは簡単ではない。
先に1点でも入れたほうが勝ちだ。
1点でも入れて、チームに貢献したい。
次の試合で点を入れられなければ、引退しようと思う。
コロケーション
<人やチーム>が
太郎、次郎、チーム、相手チーム
<点>を
<量>
1点、2点
<時期>
先に、後から、9回の裏で、次の回で
非共起例
<点>を
 すべてのレポートを期日までに提出した人には、点を入れます
 すべてのレポートを期日までに提出した人には、点をあげます
テストの点について「入れる」を用いることはできない。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義12」は、「もの」ではなく点を「加える」ことを表す。
誤用解説
 5点を入れた
 5点入れた
 点を入れた
 入れた
「<量>を入れる」「<量>入れる」と言うことができる。しかし「<点>を」の「を」は省けない。
<点>と<量>の両方を示し、次のように言うこともできる。
 点を2点入れた
類義語・反義語
類義語得る
反義語失う


13.力を加える他動詞中級★★
表記入れる
人が身体や取り組みに力を加える。
文型
<人>が<身体>に<力>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
このポーズをとるときには、指先に力を入れてしっかり伸ばしたほうがよい。
腰に力を入れて、姿勢をしっかり保ちなさい。
何事も本腰を入れて取り組めば、必ず何らかの成果は得られる。
身を入れて仕事をしなければ、人の役に立つことはできない。
この頃は新作の製作に力をいれている
テスト前だろう。気合を入れて勉強しろ。
コロケーション
<取り組み>に
練習、勉強、仕事、製作、準備
<身体>に
指先、腹、腰、背中
<力>を
気合、気、力、熱、本腰、身
非共起例
<力>を
 練習にがんばりを入れた
 練習をがんばった。
「がんばり」は強い<力>を出すことを意味し、「<力>を入れた」結果を表すと言える。よって「がんばり」は「<力>を入れる」の<力>として用いるのは不適切である。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義13」は、何かをするときに「力」を加えることを表す。「本腰を入れる」「身を入れる」のように慣用的な組み合わせで用いられる。
類似の慣用的な表現に「念を入れる」がある。「間違いがないようにするために気を配ることに力を加える」ことを表す。
誤用解説
この「語義13」の場合、「<力>を」として使われる語はある程度慣用的に決まっている。「一生懸命」「本気」などは使われない。
 一生懸命を入れた
 一生懸命やった
 本気を入れた
 本気でやった
類義語・反義語
類義語加える、こめる
反義語


14.要素を加える他動詞上級
表記入れる
人が判断をしたりものを作ったりするときに、それに影響し得る周辺的な要素を含める。
文型
<人>が<判断や作成>に<周辺的な要素>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
評価に主観を入れないように注意しなければならない。
クラウドファンディングの計画には社会貢献の要素を入れる必要がある。
勉強に遊びの要素を入れて楽しく学べる工夫をしている。
あの個性の強い社長がダメ出しをする可能性を考慮に入れておかないと、プレゼンはうまくいかないぞ。
環境問題を視野に入れつつ、開発を進めたつもりだったのに。
参加者は私を入れて全部で5人だ。
コロケーション
<判断や作成>に
① 判断:判断、意志決定、結論
② 判断する際に含める範囲:考慮、考え、視野
③ 作成するもの:授業、テーマパーク、イベント
④ 計算:計算、カウント、勘定
<周辺的な要素>を
① 判断するときに加えられ得る要素:希望、意見、意志、主観、疑い
② 作成するものに加えられ得る要素:社会貢献の要素、ユニバーサルデザイン、遊びの要素、学びの要素、社員育成の要素
③ 計算する際に加えられ得る要素:私、彼、希望者、休憩時間
<様態>
少し、いろいろ
非共起例
<周辺的な要素>を
 合否の決定に私情を入れてはならない。
 合否の決定に私情をはさんではならない。
「私情をはさむ」という慣用的な表現はあるが、「私情を入れる」とは言わない。間に押し込んで加えるイメージのある「はさむ」が選択されるのだと考えられる。「入れる」には無理やり加えるというニュアンスはない。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義14」はものを考えたり作り出したりする際に、周辺的な要素を含めることを表す。
誤用解説
 世の中の変化を入れて商品開発をするべきだ。
 世の中の変化を踏まえて商品開発をするべきだ。
 マーケットリサーチのデータを入れて売り出し時期を決めた。
 マーケットリサーチのデータを踏まえて売り出し時期を決めた。
「入れる」は、判断をしたりものを作ったりする場合に、通常は考慮すべき要素に含まれないような事柄を含めることを表す。「商品開発」をする場合に「世の中の変化」は考慮すべき要素であろうし、また、「売り出し時期を決める」場合の「マーケットリサーチのデータ」も同様であるので、「入れる」を用いると不自然である。
類義語・反義語
類義語含める、加える
反義語省く、除く


15.予定などを間に加える他動詞中級★★
表記入れる
時間の隙間に予定など置く。
文型
<人>が<予定など>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
会議の途中で10分の休憩を入れた
来週は火曜日に出張の予定を入れている
クリスマスイブには、高級レストランに予約を入れようと思っている。
ここでツッコミを入れてくれないと、会話が続かないよ。
今月の末ごろに、休暇を入れようと思う。
あの人は人の話を聞きながら、適当なところでうまく合いの手を入れてくれるので、話すのが楽しい。
stairs今度予約入れておくよ。
コロケーション
<予定など>を
① 予定:予定、予約、休憩、トイレ休憩、仕事
② その他:合いの手、ツッコミ、間奏
<範囲>
火曜日に、来週、会議の間に、到着までに
非共起例
<予定など>を
 夏休みに海外旅行を入れるつもりだ。
 夏休みに海外旅行をするつもりだ。
「入れる」は<時間の隙間>に予定などを置くことを表す。「海外旅行」は一般的には「夏休み」のメインイベントであって、「夏休み」の「隙間」に行くのではないと考えられる。したがって「夏休みに海外旅行を入れる」は不自然である。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義15」は、「予定」などを「時間の隙間に加える」ことを表す。
誤用解説
 話を聞きながら適当に相づちを入れた
 話を聞きながら適当に相づちを打った
「相づち」については、慣用的に「相づちを打つ」が使われる。
類義語・反義語
類義語する、加える
反義語取りやめる


16.連絡をする他動詞上級
表記入れる
人がほかの人や組織に連絡をする。
文型
<人>が<ほかの人や組織>に<連絡>を入れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
入試結果を見にいき、家族に合格の第一報を入れた
アポイントに間に合いそうにないから、先方に電話を入れておいて。
明日の集合時間の変更については、班長が同じグループの人たちに連絡を入れました
入荷が遅れるのではないかと心配で、納入業者に連絡を入れることにした。
この変更の可否については、会社にメールを入れて確認をとっておきます。
客が怒り出す前にきちんと詫びを入れておけ。
コロケーション
<ほかの人や組織>に
太郎、家族、会社、学校
<連絡>を
① 連絡:連絡、電話、メール、第一報
② 連絡の目的:詫び、苦情、注文、買い、確認
<時期>
さっそく、すぐに、ただちに
非共起例
<連絡>を
 仲間に極秘の情報を入れた
 仲間に極秘の情報を伝えた/教えた
「入れる」は「連絡をする」場合に用いられる。「連絡」である以上、その情報が届くことを相手は期待したり予期したりしている。しかし「極秘の情報」は相手にとって予想外の情報であるため、「入れる」を用いることはできない。
解説
「語義9」が「ものを加える」ことを表すのに対し、この「語義16」は、「もの」ではなく「情報」を加えることを表す。
誤用解説
 お世話になった人にお礼を入れた
 お世話になった人にお礼を言った
 先方に詫びを入れた/言った
「入れる」は、連絡をすること、すなわち相手が期待したり予期したりしている情報を伝える場合に用いられる。「お礼」は通常、言ってもらえればうれしいと思うものであって、相手が期待したり予期したりしているとみなす情報ではないので、「入れる」を用いることはできない。
類義語・反義語
類義語言う、伝える、する
反義語


17.要求を認める他動詞上級
表記入れる、容れる   ※「容れる」がよく用いられる。
人がほかの人の希望や要求を認める。
文型
<人>が<ほかの人の希望や要求>を容れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
犯人の要求を容れて、身代金を払うことにした。
君の希望を容れて特別に休暇をあげることにするが、できる限り早く仕事に戻ってほしい。
会社は今、存亡の危機だ。社会貢献を求める世間の声を容れる余裕はない。
改革の提言が容れられることはないまま時が流れた。
無実を訴える主張が容れられ、勝訴した。
結婚式をする気持ちはなかったが、親の強い希望を容れ、式をあげることにした。
stairs嫁の希望は容れてもらえなかったのね。。。
コロケーション
<ほかの人の希望や要求>を
① 希望や要求:希望、要求、希み、要望
② 聞き入れてほしい意見:意見、考え、提案、主張
<様態>
全面的に、完全に
非共起例
<人の要求>を
 上司の指示を容れて東京に出張した。
 上司の指示に従って東京に出張した。
「容れる」は「希望や要求を認める」ことを表す。「上司の指示」は一種の「要求」であるかもしれないが、認めるか認めないか選択の余地はない。よって「容れる」を用いることはできない。
解説
「語義1」が「ものを外側から内側へ動かす」ことを表すのに対し、この「語義17」は、「もの」ではなく「要求」などを「認める」ことを表す。
誤用解説
「容れる」は「<人>を容れる」ではなく、「<人の意見>を容れる」の形で用いられる。
 部下を容れて、改革を行った。
 部下の意見を容れて、改革を行った。
ただし、固くやや古い文体の中で「<人>を容れる」という言い方がされることもある。たとえば「弱者を容れることのない社会は不健全だ」などと言うことができる。「多様性を容れない単一の価値に基づく社会は過去のものとなるだろう」のように、「<状況>を容れる」という表現も可能である。
類義語・反義語
類義語認める
反義語拒否する、拒絶する


入れるの全体解説 「入れる」は「ものを入れ物などの外側から内側に動かす(語義1)」(例:コップに水を入れる)を基本的な意味とする。この「語義1」は人が「もの」に直接働きかけて「動かす」ことを表すが、状況を作りだすことで「動かす」ことを表すのが「状況を作ることで、ものを外側から内側に動かす(語義2)」(例:部屋に風を入れる)である。
「語義1」からは、大きく次の2つの方向へ意味が広がる。「動かす対象となるもの」の相違によって意味が広がる方向(「語義2」から「語義5」)と、「動かす」前や「動かした」結果に注目することによって広がる方向(「語義6」から「語義で9」)である。
1つめの意味の広がり、すなわち動かす「もの」の相違による意味の広がりのうち、「もの」の中でもとくに「電気」を外側から内側へ動かす(つまり電気が流れ込むようにする)ことを表すのが「電流を通じさせて、機器を作動させる(語義5)」(例:テレビのスイッチを入れる)であり、金銭の移動を表すのが「人が払うべき金銭をほかの口座に支払う(語義4)」(例:家賃を入れる)である。空間的な移動ではなく、組織の内側への移動を表すのが「人が人を組織や集団の一員にする(語義5)」(例:子供を私立に入れる)である。
2つ目の広がり、すなわち「ものを外から中へ動かす」前後の動きや状態に焦点を当てた表現のうち、「動かす」前の状態に注目したのが、「湯を差して茶を作り、入れ物に注いで飲めるようにする(語義6)(例:お茶を入れる)であり、カップなどに「茶」を注ぐ前の準備も含んだ意味を表す。「動かす」目的に注目したのが「誰かに投票する(語義7)」(例:太郎に票を入れた)である。誰を支持するか、という目的に焦点が当てられている。「動かした」後に注目したのが「有用なものを導入する。(語義8)」(例:新しい機器を入れる)である。単なる移動ではなく移動の後その場にとどまって何らかの機能を担うことを意味する。さらに「語義9」は、「動かした」結果、「入れ物」に「もの」が加わることに注目した表現である。「ものに別のものを加える(語義9)」(例:コーヒーに砂糖を入れる)。
この「語義9」からは多方面に意味が広がる。「語義10」「語義11」は、「もの」を「加える」のではなく、文字や絵などを書いたり描いたりして「加える」ことを表す。「所定の位置に言葉や記号などを加える(語義10)」(例:空欄に記号を入れる)。「語義11」は「文字や絵」ではなく「切れ目」を「加える」ことを表す。「ものに切れ目をつける(語義11)」(例:紙に切れ込みを入れる)。
「語義12」から「語義14」は空間に存在するものではなく抽象的なものを「加える」場合である。「点」を「加える」のが「人やチームが得点する(語義12)」(例:相手チームが点を入れた)、「力」を「加える」のが「人が身体や心に力を加える(語義13)」(例:気合を入れて勉強する)、何らかの要素を「加える」のが「人が何かをしたり作ったりするときに、ある要素を加える(語義14)」(例:評価に主観を入れる)である。
「加える」先の場所に「間」のイメージがあるのが「語義15」「語義16」である。「時間の隙間に予定などを置く(語義15)」(例:10分の休憩を入れる)であり、「時間の隙間」が問題にされている。これに対し「連絡をする(語義16)」(例:先方に電話を入れる)の場合、「連絡」は、期待されていたり予期されたりしている、すなわちスロットのように空いているところに情報を「加える」ことを表す。
「語義17」は「語義1」とは異なり、「もの」ではなく「要求」を「認める」こと(抽象的な意味で内側に取り込むこと)ことを表す。「他の人の要求を認める(語義17)」(例:希望を入れて配置転換を行った)である。
























▶全例文を聞く
<入れ物など>に
僕はその小さなコンパスをポケットに入れる。
(村上春樹著 『海辺のカフカ』, 2005, 913)
河合は、肉の最後の一切れをに入れた。
(赤川次郎著 『親しき仲にも殺意あり』, 1990, 913)
<もの>を
記入した用紙を専用の封筒に入れてポストに投函してください。
(浜北区版広報はままつ, 2008, 静岡県)
ドクターが、ぬるめたを体内に注射で入れてくれた。
(出久根達郎著 『犬と歩けば』, 2001, 914)
<様態>
口の広い鍋に水をたっぷり入れて強火にかける。
(dancyu, 2001, 家庭/生活)
<動くもの>を
彼女はを部屋に入れ、私たちが座ったとき、彼女は泣き出した。
(W.J.カールJr.編;吉田信夫訳 『恵みにあふれて』, 2001, 197)
窓を開け放し、南から吹き上げてくるを入れた。
(高樹のぶ子著 『サザンスコール』, 1994, 913)
<区切られた場所>に
犬と猫を一緒の部屋に入れても大丈夫ですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!知恵袋)
<電源>を
母の部屋へ入り、壁の蛍光灯のスイッチを入れる。
(谺健二著 『赫い月照』, 2003, 913)
今日は、1日じゅう寒くて、久しぶりに暖房を入れました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 季節)
<お金>を
そのうち男は生活費をきちんと家庭に入れなくなり、外泊するようになった。
(青木みつお著 『光を求めて』, 2005, 369)
<人や組織>に
だが、会社にお金はないから、給料はそのまま会社に貸す形で口座に入れる。
(芦崎治著 『逃げない人を、人は助ける』, 2004, 673)
<量>
とりあえず、お前名義の口座に二億入れておく」
(安東能明著 『強奪箱根駅伝』, 2003, 913)
<ほかの人>を
やっぱりこんな学校にを入れるんじゃなかった!
(飯野陽子,いずみ吉紘脚本;古沢保ノヴェライズ 『ヤンキー母校に帰る』, 2004, 913)
<組織>に
修道女たちはどうしてもわたしを大学に入れようとしているらしい。
(B.M.ギル著;吉野美耶子訳 『悪い種子が芽ばえる時』, 1987, 933)
同族は会社に絶対に入れない
(松田修一著 『会社のしくみ』, 1998, 335)
<お茶など>を
りえが、カウンターに入ってコーヒーを入れる支度を始めた。
(志茂田景樹著 『アイドルと三冠王の裏側』, 1992, 913)
娘はそこで一度テーブルのそばを離れ、お茶を淹れてもどってきた。
(橘香いくの著 『迷宮の記憶』, 2005, 913)
<票>を
―決定の一票を最後に入れたのは、先生だった」
(赤川次郎著 『三毛猫ホームズの歌劇場』, 1986, 913)
<場所>に
パソコンに曲のデータを入れるにはどうすればいいのでしょうか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
<有用なものや人>
前のウィルスソフトをアンインストールしてから、新しいソフトを入れて下さい。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
機械を入れると、機械でできるものになってしまう気がして」、製作は機械を使わず、すべて手作業。
(和樂, 2003, 一般)
<もの>に
1.クリームチーズに砂糖を入れて、よくねりあわせます。
(大久保洋子監修;寺嶋則子料理 『ママといっしょにワクワククッキング』, 2001, )
<別のもの>を
お湯が沸騰したら、を入れてマカロニを茹でる。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<量>
あんかけにはお酢を少々入れることをお忘れなく
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<スペース>に
空欄には名前を入れてください。
(田中浩史著 『ナースのための実践会話術』, 2004, 492)
<言葉・記号・模様など>を
14 中央の空いている部分にイラストを入れ、何の告知なのかすぐにわかるようにしましょう。
(山本和信著 『パソコンでこれならできる絵てがみ・ポスター・絵本まで』, 2004, 727)
メールの文末に署名を入れている人は多いと思う。
(PC fan, 2003, 電気機/電子)
<ものなど>に
このケーキに3回ナイフを入れて8つに分けなさい。
(Crown English Series Ⅱ, 2006, 高)
患者さんが薬や注射で治るものなら、にメスを入れたくないと思うのは当然です。
(隅越幸男著 『痔に悩む方へ』, 1996, 494)
<切れ目>を
1 さばは骨を抜き、包丁で皮に2〜3本切れ目を入れる。
(NHK科学番組部編;並木和子監修 『NHKためしてガッテン血液サラサラ健康レシピ』, 2001, 498)
火が通りやすいように身に斜めに包丁を入れて、中華鍋で揚げます。
(渡辺一枝著 『やさい・くだもの・さかな』, 1988, 596)
<道具>で
肉は包丁で身の部分に切り込みを入れておくと時間短縮で揚がります
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
ハサミで切れ込みを入れておいて、両手で力まかせに引き裂く。
(梅宮アンナ著 『「みにくいあひるの子」だった私』, 2001, 779)
<人やチーム>が
息子が1点を入れました。
(前園真聖著 『ドリブル』, 1996, 783)
<点>を
後半も、二十五分、三十分と過ぎていくが、フランスはどうしてもを入れることができない。
(沢木耕太郎著 『杯』, 2004, 783)
<時期>
八回に打者14人の猛攻で9点を入れ6点差をひっくり返した。
(サンデー毎日, 2003, 一般)
<取り組み>に
ねえちゃんの趣味は、買い物で、しかもバーゲンに異様な熱を入れている。
(伏本和代著 『ラクになる』, 2002, 913)
曠吉はお涼のことも千恋のことも忘れたつもりで、仕事に身を入れた。
(本の旅人, 2004, 総記/マスコミ)
<身体>に
に力を入れて、その場で踏ん張った。
(榎田尤利著 『無作法な紳士』, 2005, 913)
<力>を
会長室を出ると、吉井が気合いを入れるようにユウジの肩を叩いた。
(小松江里子原作・脚本;豊田美加ノベライズ 『To heart』, 1999, 913)
我が社としても本腰を入れて事業計画を立てて行くつもりだ」
(谷崎泉著 『恋をしよう』, 2002, 913)
<判断や作成>に
偉大な解釈家たちは常に全体を視野に入れています。
(エトヴィン・フィッシャー著;佐野利勝訳 『音楽観想』, 1999, 760)
しおの流れを計算に入れると、船は岩礁の西北西にあることになる」
(八重野充弘著 『宝さがし冒険ブック』, 1996, )
<周辺的な要素>を
1事実に関する記述は明確に,主観を入れない。
(政治・経済, 2006, 高)
<予定など>を
労働時間中に休憩を入れずに働くことは、結果的に仕事の効率を下げることにつながりかねません。
(河野順一著 『給与計算をするならこの1冊』, 2004, 336)
診察の予約を入れてから、クリニックを訪れました。
(蓮村奮著 『ファンタスティック・アーユルヴェーダ』, 2002, 498)
<範囲>
金曜日にデートや遊びの予定を入れている人は、木曜日までに仕事を片づける。
(浅野裕子著 『20代で女を磨く本』, 2003, 159)
<ほかの人や組織>に
電話好きの友は夜になるとこちらの仕事場に連絡を入れる。
(本橋信宏著 『依存したがる人々』, 2001, 493)
<連絡>を
夕方、家に電話を入れると、美奈子は電話口で泣き出した。
(植松文江著 『十四年十回のがん手術を生き抜いて』, 2004, 916)
市立幼稚園に苦情を入れても、市に苦情を入れても、全く改善されません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 幼児教育、幼稚園、保育園)
<時期>
通子はすぐに今度は実家に電話を入れた。
(連城三紀彦著 『隠れ菊』, 1996, 913)
<ほかの人の希望や要求>を
村尾達郎としては、景子の希望を入れるしかなかった。
(豊田行二著 『野望候補者』, 2002, 913)






























それでは、ウェディングケーキにナイフを入れていただきます
今度予約入れておくよ。
嫁の希望は容れてもらえなかったのね。。。
手に入れる

意味
所有するようになる。
用例
宝くじに当たり大金を手に入れた
コーパスからの用例
美貌を利用してなにもかも手に入れてきたはずなのに、気がつけばその美貌ゆえに、戦争という大きな欲望の渦の中に放り込まれていた。
手を入れる

意味
修正をするなどしてよりよいものにする。
用例
廃墟のような家に手を入れ、住めるようにした。
コーパスからの用例
あらゆる文章は手を入れて必ずしもよくなるとはいえないが、小説に限っていえば、一度書いたものを、削ったり加筆したりすることで文章が締まってくる。
頭に入れる

意味
思いだせるように記憶にとどめる。
用例
手順を頭に入れてから作業にとりかかる。
コーパスからの用例
名を呼ぶためには、相手の名前と顔をしっかり頭に入れておくことが必要だ。(斎藤茂太著『1分間でやる気を出す200のヒント』2001)
耳に入れる

意味
情報などを知らせる。
用例
この件は、いちおう上司の耳に入れておいたほうがよさそうだ。
コーパスからの用例
「やらねえか?」 茉屋は、箕助に煙草を勧めた。「いえ、結構で。それより、お耳に入れたいことが」(多田容子著『柳影』2003)
意味
偶然聞いて知る。
用例
この間の会議で耳に入れた話だけど、今度大規模な人事異動があるらしい。
コーパスからの用例
その場に居合わせた二人の部下にはここだけの話にして他言をしないようにと言い渡したが、二、三日経てば社内じゅうに拡まってしまうだろう。この話を耳に入れた皆はなんと噂するだろうか。(江波戸哲夫著『左遷!』1990)
蹴りを入れる

意味
勢いをつけて強く蹴る
用例
生意気だと先輩から蹴りを入れられ、全治1週間の怪我をした。
コーパスからの用例
ふりむいて腹に一発、蹴りを入れる。女とはいえ渾身のそれに、雄大はうずくまった。(橘もも著『夏は、夜。』2004)
焼きを入れる

意味
主に刀を作るために金属などを熱して冷ますなどして強くしたり、焼き跡をつけたりする。
用例
焼きを入れることで強い刀ができます。
コーパスからの用例
三十六は,Ni‐Cr‐Mo鋼とCr‐Mo鋼の遷移温度が組織の混合比率によってどう変わるかをみたものであるが,良く焼きを入れて百%マルテンサイトにした場合のほうが,不完全焼入れによるパーライト,ベイナイト,マルテンサイトの混合した組織のときよりも,焼戻後の靭性は高い。(深川宗光/石毛健吾著『入門・金属材料の組織と性質』2004)
意味
制裁を加えるなどして気持ちを引き締めさせる。「根性を{入れる}」とも言う。いずれもかなり乱暴な表現である。
用例
あいつ、後輩のくせに生意気だな。焼きを入れてやろう。
コーパスからの用例
半田には、警察で鍛えられ、焼きを入れられたもう一人の人格がいる。そいつが耳のそばで〈このままではすますものか〉と罵声を上げ続けていた。
茶々を入れる

意味
ひやかしたり関係のないことを言ったりして邪魔をする。
用例
まじめに話しているんだから、茶々を入れないで。
コーパスからの用例
「ギョクをつまみにシャリを少なめに…」は通なのか? 寿司屋のつけ台に陣取って、「ガリをくれアガリをくれ、ギョクをつまみにシャリを少なめに」といかにも通ぶった注文をつけている客を見ることがある。そして帰り際には「オアイソ!」のひとこと。こんな光景を見ると、おいおい、客がお愛想をいってどうするんだ、と少しばかり茶々を入れたくなる。(小林充著『築地のしきたり』2003)
嘴(くちばし)を入れる

意味
自分とは直接関係のないことに口出しをする。
用例
あの人は何にでもくちばしを入れてくるのでうっとうしい。
コーパスからの用例
「おかみさんはお元気かね。金右衛門が夜逃げをして、大事な働き手をなくしたので、おかみさんなどが動転しているという噂だが…よそのことに嘴を入れるようだが、京助の学業がおろそかになると困るのでね」(多岐川恭著『江戸妖花帖』1993)
間髪を入れず

意味
少しの時間も置かないで
用例
後輩にちょっと注意をしたら、間髪を入れず、倍くらい言い返された。
コーパスからの用例
ピカッと稲妻が光る。こんどは間髪を入れずにドーンと落雷の音が響いた。(吉村達也『「伊豆の瞳」殺人事件』1994)
目の中に入れても痛くない

意味
主に家族や親類の親しい小さな子を非常に愛らしく感じる。
用例
先月、孫が生まれた。目の中に入れても痛くない。
コーパスからの用例
普通、孫は目の中に入れても痛くないほどかわいいといいますが、Mさんはそうではありませんでした。(鈴木健夫著『痴呆症はここまで良くなる』1995)
複合動詞 V1

入れ上げる、入れ込む、入れ替える、入れ替わる、入れなおす、入れ違う、入れ間違う、入れ忘れる
複合動詞 V2

踏み入れる、乗り入れる、書き入れる、差し入れる、迎え入れる、招き入れる、呼び入れる、蹴り入れる、投げ入れる、運び入れる、注ぎ入れる、借り入れる、買い入れる、取り入れる、組み入れる、聞き入れる、受け入れる、申し入れる
複合名詞

入れ物、入れ墨、入れたて、入れ子、入れ替え、入れ違い、入れ忘れ
入れる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板
辞書形いれる
ない形いれない
~なかったいれかった
ます形いれ
~ませんいれま
~ましたいれした
~ませんでしたいれまんでした
~ときいれるとき/いれる
ば形いれ
意向形いれ
て形いれて
た形いれた
可能形いれられる
受身形いれられる
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