引くのコアイメージ

1.対象物の牽引1他動詞初級★★★
表記ひく、引く、曳く、牽く
人があるものの一部をつかんで、自分のほうに向けて力を加える。
文型
<人>が<もの>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎がイスを手前に引いた
漁師たちが力一杯網を引いている。
合図が出たら、思い切ってロープを引いてください。
警官が犯人に向けて、ピストルの引き金を引いた
レバーを引いて、機械を作動させる。
車を止めたら、必ずサイドブレーキを引いておきましょう。
コロケーション
<もの>を
網、紐、ドア、サイドブレーキ、引き金、弓
<方向>に[へ]
手前、右、逆、真下、後ろ、平行
<手段・方法>で
自分、手、自力、みんな、両手
<人>と(一緒に)
友達、同僚、仲間、息子、先輩
<様態>
どんどん、しっかり、ゆっくり、思い切り、まっすぐ、ぐっと
非共起例
<もの>を引く
 木を引く
 木にロープをかけて引っ張る
 建物を引く
 建物を、クレーンを使って引っ張る
土に埋まっているなど、固定されていてそもそも動かすことを想定していないものについては使われにくい。
解説
語義1は、人があるものを自分のほうに動かすことを目的として、その一部をつかんで力を加えることを表す。ただし、次のように必ずしも「主体(自分)のほうに力を加えない」場合もある。この場合は「主体が意図する方向に力を加える」ということになる。
雨戸を引く
左から右へカーテンを引く
「風邪に感染する」という意味で「風邪を引く」という表現がある。これは風邪の菌を吸い込むように、体の中に持ってくることから、「引く」という動詞が使われると考えられる。
 風邪にかかる
 風邪を引く
 インフルエンザにかかる
 インフルエンザを引く
類義語・反義語
類義語引っ張る
反義語押す


2.対象物の牽引2他動詞初級★★★
表記ひく、引く、曳く、牽く
人[動物・乗り物]が後ろに位置する他の人[動物・乗り物]に力を加えて、自分の進む方向に移動させる。
文型
<人・動物・乗り物>が<人[動物・乗り物]>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
地元のお祭りで山車を引いた
機関車で貨物列車を引く
生徒たちがリヤカーを引いて、荷物を運んでいる。
この近辺では、まだ牛や馬が荷車を引いている光景を見ることができる。
小さい子供が、母親に手を引かれて幼稚園に入っていく。
浅草で、人力車を引くアルバイトをしています。
コロケーション
<人・動物・乗り物>を
犬、子供(の手)、馬、そり、荷車、リヤカー、馬車
<方向>に[へ]
後ろ、前、前方、左、右側
<手段・方法>で
一人、手、自力、全員、レッカー車
<人>と(一緒に)
子供、後輩、上司、友達、同僚
<様態>
無理矢理、強引に、黙々と、注意深く、しょっちゅう
非共起例
<乗り物>を引く
 新幹線[飛行機]を引く
 新幹線[飛行機]を運転する
基本的に、乗り物の一部をつかんで移動させる場合に用いられる。
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「引く」は、ある対象物に力を加えることによって「その対象物を主体が進む方向に移動させる」ことまで表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語牽引する、引きずる、引っ張る
反義語押す


3.楽器の演奏他動詞初級★★★
表記ひく、弾く
人が弦楽器・鍵盤楽器を鳴らす。
文型
<人>が<楽器・楽曲・作曲者>を弾く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
娘がピアノを弾いている。
オルガンでいろいろな曲を弾いてみた。
次はメンデルスゾーンの曲を弾いてほしい。
舞台の上でギターを弾きながら歌っているのは、私の甥です。
今バイオリンを習っているんですが、一生懸命練習して人前で弾けるようになりたいです。
ベートーベンやバッハを弾くのは体力が要ると言われている。
コロケーション
<楽器>を
ピアノ、ギター、バイオリン、チェロ、三味線
<楽曲・作曲者>を
前奏曲、(ショパンの)ワルツ、ショパン、モーツァルト、シューマン
<人>と(一緒に)
友人、同僚、仲間、妹、恩師、娘
<場所>で
部屋、舞台、コンサート、ライブ、音楽室、レストラン
<手段・方法>で
ピアノ、琴、一人、みんな、両手、指先
<様態>(と)
淡々と、易々と、ゆっくり、しっかり、ちゃんと、がんがん
非共起例
<楽器>を弾く
 フルート[笛]を引く
 フルート[笛]を吹く
弾ける楽器は、「弦楽器・鍵盤楽器」に限られる。
解説
この「弾く」は、弦楽器の弓を「引く」という動作によって、「音を出す」という目的を表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。なお、弓を引くという動作を伴わない鍵盤楽器の演奏の場合にも、「ひく」という動詞を拡張して用いていると考えられる。
類義語・反義語
類義語演奏する、奏でる
反義語


4.関心の誘導他動詞中級★★
表記ひく、引く、惹く
人[動物・もの・こと]が(他の)人の目や心を向けさせる。
文型
<人・動物・もの・こと>が<目・心>を引く、<人>が<人・動物・もの・こと>に引かれる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
看板広告が人々の目を引いている。
彼女の才能と美貌に惹かれて結婚しました。
この作品で最も心を引かれたのは、主人公が恋人と別れる最終章のところです。
私が入社を決めたのは、この会社の理念に引かれたからです。
彼女は夢に向かって努力している彼の姿にだんだん惹かれていった。
この年になると、年金問題などに興味を引かれるようになる。
コロケーション
<目・心>を
関心、注意、同情、気、心、視線
<人・動物・もの・こと>に引かれる
名前、魅力、彼女、美しさ、野鳥、骨董品
<手段・方法>で
視線、色気、派手な衣装、甘い言葉、笑顔
<様態>
非常に、強く、一目で、ひときわ、次第に
非共起例
<目・心>を引く
 不安[心配]を引く
 不安[心配]をあおる
好ましくない感情には使われにくい。
解説
語義1はある対象物に物理的な力を加えるのに対して、この「引く」は抽象的な力を加えるという点で異なる。ただし、いずれも「主体のほうに向けて、対象物に何らかの力を加える」という点では共通している。例えば、「彼女の可愛らしい服装が、人目を引く」という例において、「可愛らしい」という属性が魅力、つまり、力となって対象物である人(の視線)に働きかけ、主体である「服装」に向けさせるということである。
類義語・反義語
類義語そそる、掻き立てる、魅了する
反義語


5.対象物の取り出し他動詞中級★★
表記ひく、引く
人があるものを全体の中から選んで、自分のほうに向けて取り出す。
文型
<人>が<もの>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この中から好きなカードを一枚引いてください。
八坂神社で彼女とおみくじを引いた
くじを引いて順番を決める。
息子におみくじを引かせたら大吉が出た。
太陽の模様が入ったカードを引いたら勝ちです。
抽選会で、友達が当たりくじを引いて喜んでいる。
コロケーション
<もの>を
くじ、花札、カード、おみくじ、お札、大吉
<ところ>から
山札、この中、抽選箱(の中)、袋(の中)、ボックス(の中)
<人>と(一緒に)
彼女、友人、恋人、仲間、娘
<様態>
慎重に、さっと、素早く、ちゃんと、さっさと
非共起例
<もの>を引く
 (教室の中から)机を一つ引く
 (教室の中から)机を一つ運び出す[取り出す]
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「引く」は、ある対象物に力を加えることによって「その対象物を主体のほうに移動させて、選び取る」ことまで表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語取り出す、選び取る
反義語


6.線の表記他動詞中級★★
表記ひく、引く
人が線(状の形)を書く。
文型
<人>が<線>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ノートに線を引いた
大事な部分は分かりやすく下線を引いておきましょう。
鉛筆で縦と横の線を引いてください。
アイラインを引く時、注意しなければならないことを教えてください。
小さい頃から図面を引いたりすることが大好きで、将来の夢は一級建築士になることです。
「罫線を引く」ボタンをオンにする方法が分からなくて困っている。
stairs中火であたためたフライパンに、薄く油をひいて、溶いた卵を少量流し入れます。
コロケーション
<線(状の形)>を
線、下線、境界線、曲線、図面、眉
<場所>に
地面、教科書、紙、地図、真ん中
<道具>で
鉛筆、定規、赤いペン、マーカー、ボールペン
<人>と(一緒に)
同僚、仲間、友達、後輩、上司
<様態>
慎重に、いっぱい、しっかり、ちゃんと、きちんと
非共起例
<線>を引く
 円を引く
 円を描く[書く]
 矢印を引く
 矢印を描く[書く]
線状の形でないものには使われにくい。
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「引く」は、ある対象物に力を加えることによって「線を描く」ということまで表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。例えば「ペンで線を引く」という例において、ペンに力を加えて、主体のほうに動かせば、軌跡が線となって残るということである。つまり、「ペンを引く」という手段で「線を描く」という目的を表す。
また、この「引く」は基本的に「人」に対して使うが、「納豆が糸を引く」「クモが糸を引く」というように無情物、動植物に対して使うこともある。この場合「何らかの力を加えることによって、線状のものを生み出す」というような意味を表しており、語義6とは類似性が認められる。
さらに、「フライパンに油を引く」「敷居に蝋を引く」のように、「伸ばして広げる」という意味で使われることがあるが、この場合も「線が広がって面になる」ということを考えれば、語義6の一種として考えることができる。
類義語・反義語
類義語描く、書く
反義語消す


7.数量の削減他動詞中級★★
表記ひく、引く
人が全体から数量を減らす。
文型
<人>が<(全体の)数量>から<(一部の)数量>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
10から3を引くと、7が残る。
今月は給料から生活費を引いて、全部貯金する。
海外に送金する時、高額の手数料を引かれることがある。
売上から必要経費を引いた金額が所得になります。
問題のある商品を定価から2割引いて、安く売ることにした。
人口の自然増減数とは、出生数から死亡数を引いた値のことである。
コロケーション
<(全体の)数量>から
給料、収入、定価、売上高、総所得
<(一部の)数量>を
生活費、手数料、必要経費、費用、2割
<時期>
毎月、昨年、毎年、来月から、来年から
<様態>
かなり、たくさん、少し、さらに、しっかり
解説
語義5はある対象物に物理的な力を加えるのに対して、この「引く」は抽象的な力を加える(概念上の操作)という点で異なる。ただし、いずれも「全体の中から何らかのものを取り出す」という点では共通している。
誤用解説
単なる数量の増減を表す場合には使いにくい。
 公園の木の数を2割引いた
 公園の木の数を2割減らした
類義語・反義語
類義語減らす、削る、削減する
反義語足す


8.情報の検索他動詞中級★★
表記ひく、引く
人が辞書などの書物を使って、求める情報を探し出す。
文型
<人>が<書物>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
知らない単語は辞書を引いて調べる。
辞書で「愛」という言葉を引いてみた。
最近は、紙の辞書を引いて単語を調べる学生が少なくなりました。
国語辞典で「畏敬」という語を引いてみると、「偉大なものとして、おそれ敬うこと」などと書かれている。
若者がよく使う言葉は辞書を引いても出てこないことがしばしばある。
この事典は、建築や土木などの分野の用語を引く時に役に立ちます。
stairsことばの意味がわからない時、辞書を引いて調べます。
コロケーション
<書物>を
辞書、辞典、漢和辞典、電話帳、百科事典
<言葉>を
単語、言葉、語、用語、項目
<手段・道具・方法>で
自分、自ら、自力、辞書、辞典
<人>と(一緒に)
友達、クラスメート、妹、先生、仲間
<様態>
簡単に、もう一度、何度も、ちゃんと、すぐ、一応
非共起例
<道具>で引く
 インターネットで分からない単語を引く
 インターネットで分からない単語を調べる
 辞書で分からない単語を引く[調べる]
道具が「書物」でない場合は、使われにくい。
解説
語義5はある対象物に物理的な力を加えるのに対して、この「引く」は抽象的な力を加える(概念上の操作)という点で異なる。ただし、語義5の「あるものを全体の中から選んで、取り出す」ということと、語義8の「辞書の中からある言葉(の意味)を取り出す」ということの間には、「全体の中から何らかのものを取り出す」という共通点が認められる。
類義語・反義語
類義語調べる、検索する
反義語


9.対象物の引用他動詞上級
表記ひく、引く
人がもの・こと・言葉を例としてあげる。
文型
<人>が<もの・こと・言葉>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生は具体例を引いて、分かりやすく説明してくださった。
万葉集を例に引いて説明してください。
次回の授業では近代俳句から例を引いてみたいと思います。
彼は著書の中で、世界の環境問題についていろいろな事例を引いて論じている。
吉本ばななの「キッチン」という作品から一節を引く
裁判では、膨大な資料から必要な証拠を的確に引いて検証していく必要がある。
コロケーション
<もの・こと・言葉>を(例に)
過去の例、事例、万葉集、故事、一節、証拠、歌詞
<もの・こと・言葉>から(例を)
万葉集、源氏物語、徒然草、作品、詩、小説
<様態>
何度も、もう一度、的確に、きちんと、そのまま
解説
語義5はある対象物に物理的な力を加えるのに対して、この「引く」は抽象的な力を加える(概念上の操作)という点で異なる。ただし、語義5の「あるものを全体の中から選んで、取り出す」ということと、語義9の「作品などの中からある言葉などを(概念上の操作によって)取り出す」ということの間には、「全体の中から何らかのものを取り出す」という共通点が認められる。
誤用解説
「価値・意義のあること」としてとらえられる場合に使うことが多い。従って、単なる日常的な事柄には使いにくい。
 昨日友達が言った言葉を引いて説明する。
 アリストテレスの言葉を引いて説明する。
類義語・反義語
類義語引用する
反義語


10.施設・設備の設置他動詞上級
表記ひく、引く
人[団体・組織]が水や電気など、線状の施設・設備を通じさせる。
文型
<人[団体・組織]>が<施設・設備>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この地区は裏山から生活用水を引いています。
新しい事務室に専用の電話回線を引いた
この村にも、やっと水道が引かれるようになった。
携帯電話の普及により、家に固定電話を引くことが少なくなってきた。
新しい家を建てる予定ですが、都市ガスを引くか、オール電化にするかで迷っています。
昨年この町で大きな金脈が見つかったため、急きょ貨物を輸送できる線路を引くことになった。
stairsおまけに、家には温泉を引いて、ヒノキの湯船に浸かるのが理想なんだって。
コロケーション
<施設・設備>を
ガス、水道、水、電気、電話、バス路線
<場所>に
地元、家、部屋、村、町、会社
<組織・団体>と(一緒に)
隣国、協力会社、東京都、名古屋市、町、村
<時期>
10年前に、昨年、来月、再来年、5年後に
<様態>
急いで、急きょ、直ちに、ちゃんと、しっかり
非共起例
<施設・設備>を引く
 コンビニ[公民館]を引く
 コンビニ[公民館]を設置する
 電話[水道・ガス]を引く
 電話[水道・ガス]を設置する
線状の経路を作ることによって設置するものに限られる。
解説
語義5は「あるものを全体の中から取り出す」ということを表すが、この「引く」は「施設・設備を設置する」という点で異なる。ただし、語義5の「あるものを全体の中から選んで、取り出す」ということと、語義10の「元となるところから、線状の経路を作ることによってあるものを通じさせる」ということの間には、「あるところから何らかのものを取り出す」という共通点が認められる。
類義語・反義語
類義語設置する、作る
反義語


11.血統・系統の受け継ぎ他動詞上級
表記ひく、引く
人[動物・団体・組織・もの]が血統・系統を受け継ぐ。
文型
<人・動物・団体・組織・もの>が<血統・系統>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼はフランス貴族の血を引いている。
うちの犬は狩猟犬の血を引いていて、動きが俊敏だ。
この地区で発掘された土器は、弥生時代の系譜を引くものが多い。
この劇団は、イギリス演劇の伝統を引いている。
彼は名門音楽一家の血筋を引いた、いわばサラブレッドのような人物です。
医者の父親の血を引いているだけあって、頭が非常に良い。
コロケーション
<血統・系統>を
血、血筋、系統、血統、伝統、系譜
<様態>
しっかり、ちゃんと、そのまま、間違いなく、確かに
解説
語義10は「施設・設備を設置する」ということを表すのに対して、この「引く」は「血統・系統を受け継ぐ」ということを表す。ただし、「元となるところから、何らかのものを受け継ぐ」という点では共通している。つまり、「川から水を引く」「親の血を引く」という例からも分かるように、どちらも「源を同じくするものを受け継ぐ」という共通点が認められる。
誤用解説
基本的に「血筋、系統、伝統」のような語と結びつく。
 父からは目の色を、母からは綺麗な顔立ちを引いている
 父からは目の色を、母からは綺麗な顔立ちを受け継いでいる
類義語・反義語
類義語受け継ぐ、引き継ぐ
反義語


12.対象物への衝突他動詞中級★★
表記ひく、引く、轢く
人[乗り物]が人や動物を車輪で踏みつけて通る。
文型
<人[乗り物]>が<人・動物>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
バスが通行人を引いた
長野の山奥をドライブ中に、カモシカを引きそうになった。
昨日実家で飼っていた犬がトラックに引かれて死んでしまいました。
赤信号を無視した乗用車が通学途中の児童5人を引いて、そのまま逃げた。
昨夜、急行列車がホームから線路に落ちた女子大生を引く事故が発生した。
飲酒運転は、人を引こうと思って運転しているのと同じだ。
コロケーション
<乗り物>が引く
車、自転車、トラック、貨物列車、乗用車
<人・動物>を引く
子供、通行人、歩行者、愛犬、鹿
<手段・道具・方法>で引く
車、自転車、バイク、原付、乗用車
<場所>で引く
都内、市内、国道、交差点、山道
<時期>引く
3年前、先週、一昨日、昨夜、つい先日
<様態>引く
無惨にも、次々(と)、わざと、不幸にも、気付かず(に)、止まれきれず(に)
解説
語義2は「主体の後ろに位置する対象物を主体の進む方向に移動させる」ということを表すのに対して、この「引く」は「対象物を車輪で踏みつけて通る」ということを表す。ただし、「ある対象物に何らかの力を加えることによって、(結果的に)主体の進む方向に移動させる」という点では共通している。
誤用解説
この「引く」は、「対象物を車輪で踏みつける」ような状況でなければ使いにくい。
 サファリパークで、自転車が大人の象を引いてしまった。
 サファリパークで、自転車が大人の象とぶつかってしまった。
 自転車が猫を引いてしまった。
類義語・反義語
類義語ぶつける、衝突させる
反義語


13.対象物の粉砕他動詞中級★★
表記ひく、挽く
人が粒状の穀類や肉を粉状になるまで細かくする。
文型
<人>が<穀類・肉>を挽く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
家内がキッチンでコーヒー豆を挽いている。
石臼を使ってお茶を挽いてみた。
まず、そばの実を挽いて粉にしてください。
今日はステーキ肉を挽いて、ハンバーグを作ってみよう。
この店では、購入したその場でコーヒー豆を挽いてくれるので、香り豊かな美味しいコーヒーを味わうことができる。
この豆腐工場では、大豆を挽くところから豆腐作りの体験ができる。
コロケーション
<穀類・肉>を
お茶、豆、大豆、麦[蕎麦]の実、牛肉
<手段・道具・方法>で
臼、石臼、ミキサー、機械、自力、みんな
<人>と(一緒に)
友達、母、仲間、妹、同僚
<時期>
昨日、昨夜、半日前に、10分前に、ついさっき
<様態>
丁寧に、丹念に、上手に、ゆっくり、しっかり
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「挽く」は、ある対象物に力を加えること(臼を回すなど)によって「その対象物を砕き、粉状にする」ことまで表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。
誤用解説
「臼を挽く」とは言うが、「機械を挽く」とは言わない。
 臼を挽く
 臼で豆を挽く
 機械を挽く
 機械で豆を挽く
類義語・反義語
類義語砕く、すり潰す
反義語


14.対象物の切断他動詞上級
表記ひく、引く
人がのこぎりや包丁などの刃物で木材・魚肉を切ったり削ったりする。
文型
<人>が(<刃物>で)<木材・魚肉>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
父がのこぎりで板を引いている。
包丁を引いて、鯛を切る。
友達と協力して大きなのこぎりを引いて、板を切った。
木版画の細かい模様は、彫刻刀を引いて彫る。
木製の椅子や食卓テーブル、食器棚などは丹精を込めて手カンナを引いて作ったものである。
この包丁は野菜や果物だけではなく、肉や魚を引いて切るのにも使える。
コロケーション
<木材・魚肉>を
板、大木、木材、魚、肉
<刃物>を
刃、包丁、刀、のこぎり、カンナ
<手段・道具・方法>で
カンナ、のこぎり、包丁、みんな、一人
<人>と(一緒に)
友達、仲間、後輩、先輩、父
<様態>
ゆっくり、素早く、丁寧に、丹念に、注意深く
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「引く」は、かんなやのこぎりに力を加えること(ひくという動作)によって、「切断する」という目的を表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。
誤用解説
単にものを切断する場合は使いにくい。のこぎりのように、刃の部分を前後に動かしながら(引いたり押したりしながら)切断する場合に用いられる。
 包丁でキュウリを引く
 包丁でキュウリを切る
 のこぎりで板を引く
類義語・反義語
類義語切る、切断する
反義語


15.対象物の後退他動詞中級★★
表記ひく、引く
人[団体・組織]が出ている人[体の部分・もの]を後退させる。
文型
<人[団体・組織]>が<人[体の部分・もの]>を引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
右足を引いてください。
米国はアジアから兵を引いた
前から来た自転車を避けようと、体を引いた
写真を撮るとき、「軽くあごを引いてください」と言われた。
相手がサーブを打つときは、ラケットを後ろに引いて構える。
腰を引いて重心を後ろにして、ひざを伸ばしながら立ち上がりましょう。
コロケーション
<人・体の部分・もの>を
兵、足、あご、腰、体、ラケット
<方向>に[へ]
後ろ、手前、横、斜め、下方
<様態>
反射的に、素早く、無理矢理、ゆっくり、思い切り
非共起例
<もの>を引く
 お皿を引く
 お皿を下げる
解説
語義1は単に対象物をつかんで主体のほうに向けて力を加えることを表しているが、この「引く」は、出ているものを主体のほうへ動かすことによって、「出ているものを後退させる」という目的を表している。つまり、語義1とは手段と目的の関係にあると考えられる。
また、この「引く」は次のように抽象的な事柄に対して使うこともある。
(1)一歩引いて考える。
(2)言い出したら、後には引けない
(3)彼の寒いギャグに、みんな引いてしまった。
以上の例はそれぞれ「物事を考える時の積極的な態度を後退させる」「(相手への)積極的な態度を後退させる」「ギャグを楽しもうという積極的な気持ちを後退させる」というようにとらえることができ、語義15の本来の意味とは類似性が認められる。
類義語・反義語
類義語引っ込める、後退させる
反義語


16.関係の断絶他動詞上級
表記ひく、引く、退く
人[団体・組織]が関わりのあった人・事柄との関係を絶ち、(そこから)しりぞく。
文型
<人[団体・組織]>が<事柄>を(から<身・手を>)引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
昨年、事業から完全に手を引きました
彼は現役を引いて、もう3年になる。
音楽業界からは身を引くことにしました。
あの女優は今度の公演を最後に、舞台を引くことになった。
君はこの事件から、もう手を引きなさい
あの政治家は今回の不祥事により、政界から引かざるを得なくなった。
コロケーション
<事柄>を(から<身・手>を)
事業、会社、業界、政界、舞台
<時期>
5年前に、昨年、すでに、来年、5年後に
<様態>
完全に、潔く、仕方なく、無理矢理、簡単に
非共起例
<組織>から引く
 その学生は大学から身を引いた
 その学生は大学を卒業した
解説
語義15は「出ているものを後退させる」ということを表しているが、この「引く」は、後退させることによって、「やめる」「関係を絶つ」という目的を表している。つまり、語義15とは手段と目的の関係にあると考えられる。
類義語・反義語
類義語しりぞく、引退する
反義語


17.状態の復元自動詞上級
表記ひく、引く、退く
出ているものが元の状態にもどる。
文型
<生理現象・自然現象>が引く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
喉の痛みはだいぶ引いてきました。
今日は、夜7時頃から潮が引き始める
熱は引いたんですが、咳がなかなか止まりません。
目の手術をしてもう1週間も経つのに、一向に腫れが引かない
ジョギングをした後、キンキンに冷やしたタオルを首に巻いたら、すぐに汗が引いてきた。
津波の水が引いた跡は、まるで戦後の焼け野原のようだった。
stairs薬を飲んだら、熱はすぐに引いたので楽になりました。
コロケーション
<生理現象・自然現象>が
熱、痛み、汗、腫れ、水、潮
<様態>
だいぶ、急に、ゆっくり、やっと、なかなか(否定)、一向に(否定)
非共起例
<自然現象>が引く
 雨[雪]が引いた
 雨[雪]が止んだ
解説
語義15は「対象物に物理的な力を加えることによって、後退させる」のに対して、この「引く」は「何らかの作用によって、もとの状態に戻る」という点で異なる。ただし、いずれも「何らかの力が加わり、出ていたものがなくなる」という点では共通している。
類義語・反義語
類義語なくなる、消える、止む
反義語出る


引くの全体解説 各語義の解説を参照。
























▶全例文を聞く
<もの>を
フィリップは気を取り直し、手押しポンプのレバーを引いた。
(森詠著 『戦場特派員』, 1996, 913)
気配を察した春申が、手綱を引き馬を止めた。
楡周平著 『青狼記』, 2003, 913)
<方向>に[へ]
ドアの鍵が開く音がし、ゴードンはドアを手前に引いて開ける。
(マイクル・コナリー,オットー・ペンズラー編;古沢嘉通他訳 『ベスト・アメリカン・ミステリジュークボックス・キング』, 2005, 933)
<様態>
と同時に、一人がエンジン始動用の引き綱をぐいと引いた。
(フレデリック・フォーサイス著;篠原慎訳 『悪魔の選択』, 1979, 933)
<人・動物・乗り物>を
小川を跳び、あぜ道をかけ、泥田に近づくと用心して馬を降り、を曳きながらあぜ道を通った。
(司馬遼太郎著 『城塞』, 2002, 913)
女三人でリヤカーを引き、廃材のトタンや畳を集めた。
(朝日新聞東京総局著 『中央線の詩』, 2005, 291)
<楽器>を
ピアノを弾き始めたのは、小学校に入る直前だった。
(杉田望著 『アカハラ』, 2003, 913)
<楽曲・作曲者>を
ショパンを弾くときには、過度な感情移入は避けたほうがいいでしょう。
(久元祐子著 『作曲家別演奏法』, 2005, 763)
<場所>で
たとえば、ぼくがステージでAマイナーのコードを弾いているとしよう。
(キース・ジャレット著;山下邦彦訳;ティモシー・ヒル,山下邦彦編 『インナービューズ』, 2001, 764)
<手段・方法>で
二歳のときには、姉がよく弾いている曲をギターで弾いただけでなく、和音をつくり出したりした。
(多湖輝著 『頭の体操』, 1977, 031)
<目・心>を
私はちょっと興味を惹かれて、一行の様子を眺めた。
(犬養智子著 『パパは96歳』, 1995, 367)
<人・動物・もの・こと>に引かれる
そして彼女の美しさに惹かれた竹下旭と恋人関係に陥る。
(吉村達也著 『スイッチ』, 2004, 913)
恐れとともに、ブライアナは夫が危険を愛し、遠い土地や異国の風景に負けないほどその魅力に惹きつけられているのを知った。
(ベサニー・キャンベル作;矢部真理訳 『愛をつないで』, 2003, 933)
<様態>
浅黒く、彫りの深い顔立ちの男で、極端な鷲鼻がひときわ目を引く。
(小川勝己著 『彼岸の奴隷』, 2004, 913)
<もの>を
わたしははずれのくじを引いてしまった。
(サンドラ・ブラウン著;吉澤康子訳 『指先に語らせないで』, 2003, 933)
<ところ>から
浅見は三枚のカードの中からジョーカーを引くような楽しみで、電話を待った。
(内田康夫著 『白鳥殺人事件』, 1989, 913)
<線(状の形)>を
さらに1cm内側にを引き、そこからカットする。
(NHK出版編 『紙で作る!』, 2005, )
<場所>に
あたしは知らず知らずのうちに、地面に引かれてある白い線を越えていた。
(安田均原案;加藤ヒロノリ著 『ホーリィの手記』, 2002, 913)
<道具>で
思いつくと、ぱっと起きて鉛筆で図を引きます。
(宇野千代著;藤森武撮影 『きもの日和』, 2003, 593)
<(全体の)数量>から
健康保険、年金、失業保険など、合わせると給料から約18%引かれています。
(根岸康雄著 『万国「家計簿」博覧会』, 2004, 365)
<(一部の)数量>を
ただし、年金から保険料を引かれている場合は、年金受給者本人の所得控除となるため、その親族が社会保険料控除として申告することはできません。
(広報ところざわ, 2008, 埼玉県)
<書物>を
文章を書いていて、漢字が思い出せずよく辞書を引く。
(テレビ東京「医食同源」編 『痴呆・ボケ』, 2004, 493)
<言葉>を
「街路」という言葉を辞書で引くと、「市街の道路」と出ていました。
(鈴木敏ほか著 『街路のはなし』, 1988, 514)
<もの・こと・言葉>を(例に)
しかしその詳細に立ち入るまえに、進化のを一つ引きましょう。
(渡辺慧著 『時間の歴史』, 1987, 421)
<もの・こと・言葉>から(例を)
ここで、エリオットの精神とヴィジョンを固く捉えたと確信をもって言える箇所をシモンズから引いてみよう―
(山形和美著 『メドゥーサからムーサへ』, 2004, 902)
<施設・設備>を
島には、海水から塩分を除いて飲料水に使えるようにする脱塩所が作られたが、現在は海底にパイプを通して陸から水道を引いているので、水に不自由はない。
(津村節子著 『幸福村』, 1989, 913)
別府のアパートの共同風呂は、大家さんの家の風呂を使わせてもらうのだが、あの辺りの家はどこも自宅に温泉を引いてあるので毎日、温泉に浸かっていた。
<場所>に
このに電線を引こうという計画がきているが、今はいらないよ
(加藤憲一著 『NGO辺境からの挑戦』, 2001, 319)
<血統・系統>を
クロは柴のを引く雑種ですが、全身が真っ黒です。
(藤原緋沙子著 『冬萌え』, 2005, 913)
ヒンズー教の伝統を引く仏教では、神々は宇宙の力を示しているが、彼らは世界苦から逃れられない。
(アーキタイプ・シンボル研究文庫,ベヴァリー・ムーン編;橋本槙矩ほか訳 『元型と象徴の事典』, 1995, 161)
<人・体の部分・もの>を
中条はを引くようにしてうなずいた。
(清水一行著 『惨劇』, 1997, 913)
息を吐きながらを引くようにして、体を前に倒します。
(浅野次義,西村正剛著 『Dr.浅野の生活習慣病に克つ10分運動』, 2002, 493)
<事柄>を(から<身・手>を)
しかし、あのひとも遠からずいっさいの事業から手を引くつもりのようです。
(松井今朝子著 『銀座開化事件帖』, 2005, 913)
<生理現象・自然現象>が
が引いたら海辺で遊び、満ちてきたら家に帰り、仕事をする。
(小澤典代著 『人がつなぐ暮らし、手が伝える大切なこと』, 2004, 590)
関節が腫れたときは安静にし2日間休んで腫れが引くのを待つ(図3‐6)。
(齋藤敏之編著 『実戦・解剖学』, 2004, 491)






























中火であたためたフライパンに、薄く油をひいて、溶いた卵を少量流し入れます。
ことばの意味がわからない時、辞書を引いて調べます。
おまけに、家には温泉を引いて、ヒノキの湯船に浸かるのが理想なんだって。
薬を飲んだら、熱はすぐに引いたので楽になりました。
後を引く

意味
物事の影響が終わらないまま続く。
用例
ゆずのさわやかな風味が後を引く
コーパスからの用例
また、お酒をたくさん飲んだときはお茶を多めにいただくと酔いがあとをひかないという効果もあります。(千宗室著『なんて美しい女性だろう!』,1981,159)
気が引ける

意味
やましさを感じ、消極的な気持ちになる。
用例
嫁の実家を担保に、住宅ローンを組むのはちょっと気がひける
コーパスからの用例
映画の試写会の葉書が当たりました。試写会に行ったことがないので、少し気が引けます。(Yahoo!知恵袋, 2005, 労働問題、働き方)
引く手あまた(引く手数多)

意味
誘ってくれるところが多く、非常に高い評価を受けていること。
用例
あのプロ野球選手は、引退後も引く手あまたの状態が続いている。
コーパスからの用例
しかし学業成績優秀の貴君だから、他社にても引く手あまたと存じます。(伍東和郎著 『はがき実用文例』,1992,816)
貧乏くじを引く

意味
損な役回りがあたる。
用例
学校のPTAで貧乏くじを引いてしまって、役員を任された。
コーパスからの用例
NHKのアナログハイビジョンの事はよく分りませんが、この手のビッグプロジェクトには必ず、後始末と云うか、尻拭いと言うか、最後の最後に貧乏籤を引く人がどうしても必要です。(Yahoo!知恵袋,2005,政治、社会問題)
幕を引く

意味
ある物事を終わりにする。
用例
2014年サッカーワールドカップ大会は、ドイツの優勝で幕を引いた
コーパスからの用例
1867年(慶応3)10月14日、徳川慶喜は大政奉還を行い、自ら徳川幕府の幕を引いた。(原遥平著 『徳川慶喜をめぐる歴史散歩』,1998,291)
複合動詞 V1

引き合う、引き上げる、引き当てる、引き合わせる、引き受ける、引き起こす、引き落とす、引き下ろす、引き返す、引き込む、引きこもる、引き下がる、引き裂く、引き下げる、引き絞る、引き締まる、引き締める、引きずる、引き倒す、引き出す、引き立つ、引き立てる、引き継ぐ、引きつける、引き留める、引き取る、引き抜く、引き延ばす、引き離す、引き払う、引き回す、引き戻す、引き寄せる、引っかかる、引っ掻く、引っかける、引っ込む、引っ込める、ひったくる、ひっつく、ひっぱたく、引っ張る
複合動詞 V2

差し引く、つま弾く、手ぐすね引く
複合名詞

引き網、引き際、引き算、引き出物、ひき逃げ、ひき肉、置(き)引き、駆(け)引き、くじ引(き)、線引(き)、手引(き)、天引(き)、取(り)引(き)、値引(き)、忌引、万引、割引、水引
引く(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形ひく
ない形ひかない
~なかったひかかった
ます形ひき
~ませんひきま
~ましたひきした
~ませんでしたひきまんでした
~ときひくとき ひく
ば形
意向形
て形ひいて
た形ひいた
可能形ひける
受身形ひかれる
使役形ひかせる
閉じる