挟む・挿むのコアイメージ

1.ものの挿入他動詞初級★★★
表記挟む・挿む   ※「本に栞(しおり)を挿む」のように「挿む」が使われることもある。
ものとものの間に入れる。
文型
<人>が<もの>を<もの(の間)>に挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ホットドッグにウインナーとキャベツを挟んで食べる。
降車駅が近づき、読んでいた本のページに栞(しおり)を挟んだ
古本を買ったら、購入時のレシートが挟まれていた
「この書類もファイルに挟んどいて
へそくりを本に挟んで本棚にしまったのだが、どの本に挟んだのか忘れてしまった。
座り心地を良くするために、椅子(いす)の背もたれと腰の間にクッションをはさんでいる
コロケーション
<もの>を
① 食べ物:ハム、チーズ、ソーセージ、野菜、具、クリーム
② 紙類:栞(しおり)、メモ、文書
③ その他:クッション、タオル、スペース、足
<もの>に
① もの:パン、本、ページ、手帳、パスポート、ファイル、バインダー
② 空間:~の間、隙間
<様態>
いつも、たっぷり、丁寧に、きれいに、しっかり、ずれないように
解説
語義1は、ものとものの間に何かを入れることを表す。その「もの」は切れ目があったり(例:ホットドッグ)綴じられた1つのもの(例:本、ファイル)である場合もあれば、分離した2つのもの(例:椅子(いす)の背もたれと腰)である場合がある。
誤用解説
 語義1の「挟む」は「入れる」に似ているが、「挟む」は両側に何か支えるものがあり、その間に入れることを表す。したがって、次のような場合に「挟む」は使えない。
 コーヒーに砂糖を挟む
 コーヒーに砂糖を入れる
 私はいつも折りたたみ傘をかばんに挟んでいる
 私はいつも折りたたみ傘をかばんに入れている
 また、例文のように、「挟む側」と「挟まれる側」は物理的・空間的に密接している。
類義語・反義語
類義語入れる、挿入する、差し挟む
反義語出す、取り出す、抜く


2.両側から押さえて固定他動詞初級★★★
表記挟む
両側から押さえて動かないようにする。
文型
<人・もの>が<人・もの>を挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
パンやパスタ、氷などを挟む調理器具をトングという。
ダブルクリップは挟む力が強力で、紙の枚数が多くても挟めるのが利点です。
両膝でボールを挟んだ状態で仰向けになり、膝を左右に倒すエクササイズをやった。
正確な体温を測るには体温計の先端をわきの下の中心部に当て、しっかり挟む必要があります。
犯人は両脇を警官にはさまれ、家から出てきた。
課長や係長などの中間管理職は、上司と部下の間に挟まれ、ストレスがたまりやすい。
コロケーション
<人・もの>を
タバコ、ボール、書類、体温計
<もの>で
① 道具:クリップ、ペンチ、ピンセット、洗濯ばさみ、箸、板
② 身体の一部:指、両手、両足、膝、わき
解説
語義2は何かを両側から押さえて動かないようにすることを表す。語義1(ものの挿入)の動作と語義2の動作の結果状態は似ているが、語義1では間に入れるもの(内側)のほうに動きがあるのに対し、語義2では両側のもの(外側)のほうに動きがある。語義2の類義語に「つまむ」があるが、「つまむ」は指や箸、ピンセットなど細いものの先端を使って「挟んで持つ」ことを表す。「挟む」は例文1~5のように「挟む側」と「挟まれる側」が物理的に接している場合にも、例文6のように接していない場合にも使われる(ほかの例としてオセロゲームの石や将棋の駒など)。例文6はいわゆる「板挟み」と呼ばれる状態で、板と板の間に挟まれて身動きがとれないように、二者の間で苦しむことをいう。
類義語・反義語
類義語持つ、つまむ
反義語離す


3.不注意による事故他動詞中級★★
表記挟む
不注意により、身体の一部をもの(とものの間)に入れてしまう。
文型
<人>が<もの>を挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
「指、どうしたの?」「昨日、ドアに挟んじゃって。腫(は)れてすごく痛いんだ」
(電車の扉に貼ってあるステッカー)「とびらが開くとき、手を戸袋にはさまないようご注意下さい」
作動中の機械に手を挟み、指を切断する事故が起きた。
赤ちゃんや子どもが柵に頭を挟み、抜けなくなってしまうことがある。
動物を捕まえる罠(わな)に誤って足を挟んでしまった
東京では、電車のドアや戸袋に体の一部や荷物を挟み、電車が遅れることがよくある。
コロケーション
<もの>を
① 身体の一部:手、指、頭、首、足、尻尾(しっぽ)
② 衣類・装身具:スカート、ネクタイ、ネックレス
③ 荷物:かばん、スマホ
<様態>
うっかり、誤って
解説
語義3は不注意により身体の一部や衣類、荷物などをもの(とものの間)に入れてしまうことを表す。語義3はほかの語義と異なり、非意図的な行為である。この語義では多くの場合、痛みやケガを伴うことから、例文1、5のように「~てしまう」(後悔・残念)で表されることが多い(例文1は「挟んでしまって」→「挟んじゃって」)。
類義語・反義語
類義語入れる
反義語抜く


4.ものごとの挿入他動詞中級★★
表記挟む・挿む   ※「休憩を挿む」のように「挿む」が使われることもある。
ものごとの間に別のものごとを入れる。
文型
<人>が<ものごと>を挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
パソコン作業をする時は、1時間おきに休憩を挟みましょう
杉山先生は学生が飽きないように、ゲームやクイズをはさみながら授業をする。
ラジオのトーク番組では、途中に音楽やCMが挟まれることが多い。
日本の伝統芸能である「能楽」では、「能」と「能」の間に「狂言」を挟んで上演される。
仕事に私情を挟んではいけない
MRI画像には腫瘍(しゅよう)がはっきり写っており、診断結果に疑いを挟む余地はなかった。
stairsでも、ゲームなら休憩挟まずに何時間でも集中してやってるじゃない?
コロケーション
<ものごと>を
休憩(時間)、休み、土日、正月、夏休み、昼食、説明、私情、感情、疑問、疑い
<時間>に
途中、~の間
解説
語義4は、ものごとの間に別のものごとを入れることを表す。語義1(ものの挿入)では挿入するものが具体物であるのに対し、語義4では挿入するものがものごとや目に見えない感情などであり、抽象度が高くなっている。
類義語・反義語
類義語入れる、挿入する
反義語抜く


5.口出し・異なる意見他動詞上級
表記挟む・挿む   ※「口を挿む」のように「挿む」が使われることもある。
他人が話している最中に割り込んで発言したり、異なる意見を述べる。
文型
<人>が<こと>を挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生は私の拙い発表を言葉一つ挟まずに最後まで聞いてくださった。
話している最中に横から口を挟まれるとイラッとする。
山口さんが突拍子(とっぴょうし)もないことを言うので、思わず口をはさんだ
彼は息継ぐ間もなく自分の意見をまくし立て、誰にも口を挟ませなかった
この件について異論をはさむ人はいないでしょう。
皆の意見が一致し、決まりかけていることに異議を挟むのは難しい。
コロケーション
<こと>を
言葉、口、異論、異議
様態
思わず、すかさず、突然、ときどき
解説
語義5は、他人が話している最中に割り込んで発言したり、異なる意見を述べることを表す。これは語義4(ものごとの挿入)から派生した語義と考えられる。「口を挟む」の「口」とは「言葉」の意味であり、慣用句化した表現である。
誤用解説
 会話で相手の話に調子を合わせて言う「ええ、うん、そうですか、なるほど」などの相槌(あいづち)は「挟む」ではなく「打つ」を使う。
 日本人は会話の途中によく相槌を挟む
 日本人は会話の途中によく相槌を打つ
 また、歌や踊りの調子に合わせて入れる手拍子や掛け声、会話で相手の話の合間に入れる言葉や掛け声などの「合いの手」は「入れる」を使う。
 (集会で)登壇者の訴えに聴衆たちは「そうだ、そうだ!」という合いの手を挟んだ
 (集会で)登壇者の訴えに聴衆たちは「そうだ、そうだ!」という合いの手を打った
 (集会で)登壇者の訴えに聴衆たちは「そうだ、そうだ!」という合いの手を入れた
類義語・反義語
類義語(口を)出す、(異論・異議・疑義を)唱える、差し挟む
反義語


6.位置関係他動詞中級★★
表記挟む
あるものの両側に何かが位置する。
文型
<人・もの・場所>が<人・もの・場所>を挟む
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
二人の男が小さなテーブルを挟んで小声で話し合っている。
容疑者はアクリル板を挟んで弁護士と面会した。
道路を挟んで2つの五つ星ホテルが建っている。
新幹線の普通車では、通路を挟んで3列シートと2列シートが並んでいる。
(朝鮮半島)38度の軍事境界線を挟んで南北2キロずつ非武装地帯が設けられている。
その村は山と川に挟まれている
コロケーション
<人・もの・場所>を
テーブル、机、カウンター、道路、道、通り、廊下、海、谷、国境、境界
解説
語義6は、あるものの両側に何かが位置することを表す。例文6は村の片側に山があり、その反対側に川があることを表している。あるものの両側ではなく周囲に何かがある場合は「囲む」を使う(例:その村は山に囲まれている)。


挟む・挿むの全体解説 各語義の解説を参照。
























▶全例文を聞く
<もの>を
今回は、パン3枚でたっぷりのをはさむクラブハウスサンドイッチをご紹介します。
(オレンジページ, 2001, 一般)
連絡を乞うメモをドアの隙間に挟んで、その日は帰った。
(中山可穂著 『白い薔薇の淵まで』, 2001, 913)
<もの>に
雑誌に載ってた彼の写真を、幼かったペチカは切り抜き,ノートにはさんでいたもんさ。
(いしいしんじ著 『トリツカレ男』, 2001, 913)
<様態>
よく焼き込んだパイに、甘めに仕上げたかぼちゃクリームをたっぷり挟む。
( 『ベーカリーパティスリーブック』, 2005, )
<人・もの>を
看護婦の持ってきてくれた体温計を腋の下にはさむ。
(秋吉好編 『行路100』, 2001, 918)
<もの>で
コードをクルクルっと直径5cmくらいの円にしてまとめてから、まとめたコードをクリップではさみます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家電、AV機器)
<もの>を
開店前の準備中に店のドアに思い切りを挟んでしまい、みるみるうちに出血と腫れが。。
(Yahoo!ブログ, 2008, 日本)
<様態>
すわっていた木と、ぶったおれてきた木の間に、オオカミのしっぽががっちりはさまれてしまったのです。
(筒井敬介作;瀬川康男絵 『かちかち山のすぐそばで』, 1991, )
<ものごと>を
ママは毎日朝11時には出勤,休憩を挟みつつ深夜まで店に立つ。
(ケンドーコバヤシ編 『ケンドーコバヤシの関西たまラングルメブック』, 2005, )
そこから「全体の規律を守るため、たとえ目をかけているものであっても私情を挟まず厳しく罰する」という意味になりました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 言葉、語学)
<時間>に
フォンテンブロー会議は途中に休会をはさみ、三ヵ月にわたって延々と続けられたが、何ら見るべき成果をあげられなかった。
(小沼新著 『ベトナム民族解放運動史』, 1988, 223)
<こと>を
そのときずっと口をつぐんでいた小室が、腕を組んだまま言葉をはさんだ。
(清水一行著 『派閥渦紋』, 1994, 913)
茶が大きな日本文化の一つであることに異論をはさむ人はいないはずだ。
(塩田丸男著 『ニッポンの食遺産』, 2004, 383)
様態
あなたが説明にお困りの様子だったのでつい口を挟んでしまいました。
(京極夏彦著 『百器徒然袋-雨』, 2005, 913)
<人・もの・場所>を
道路をはさんで向こう側の通りに目を移すと、斜め向かいに花を売る店がありました。
(谷口直子著 『星居山の星の子たち』, 2002, )






























でも、ゲームなら休憩挟まずに何時間でも集中してやってるじゃない?
小耳に挟む

意味
聞くつもりはなかったが、噂話などを偶然聞く。ちょっと聞く。
用例
懇親会で小耳に挟んだのだが、小池さんは来年、会社を辞めて起業するそうだ。
コーパスからの用例
一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。(国語 2, 2005, 中)
複合動詞 V1

挟み上げる、挟み入れる、挟み切る、挟み込む、挟み出す、挟み付ける
複合動詞 V2

差し挟む
複合名詞

挟み揚げ、挟み撃ち、挟み将棋、板挟み
挟む・挿む(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形
ない形はさない
~なかったはさなかった
ます形はさみ
~ませんはさみま
~ましたはさみした
~ませんでしたはさみまんでした
~ときむとき
ば形めば
意向形はさ
て形んで
た形んだ
可能形はさ
受身形はさま
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