触れるのコアイメージ

1.身体部分で軽く接触他動詞初級★★★
表記触れる・ふれる
身体部分(主に手)で人やものに軽く接触する。
文型
<人>が<もの>に<身体部分>を触れる||<人>が<身体部分>で<もの>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
太郎は赤ちゃんの頬に軽く手を触れた
傷口に触れないように気をつけてコーヒーをすすった。
指先で彼女の髪にそっと触れてみた。
机の上のものに触れるなと言われている。
ドアノブに触れたとたん、静電気が走った。
熱があるのではないかと寝ている子供の額に手を触れてみた。
コロケーション
<もの>に
① 身体部分:手、ほお、髪、肩
② 他人のもの:部屋の中のもの、机の上のもの、大切な皿、大切な壺
③ 壊れやすいもの:ガラス、精密機械、美術作品
④ 接触によって何かの影響が生じる可能性のあるもの:傷口、ドアノブ、電線、割れたガラス、熱い鍋
<身体部分>を[で]
① 身体部分:手、指、指先
② 身体部分に準ずるもの:箸、フォーク、ほうきの先
<様態>
そっと、軽く、おそるおそる
非共起例
<人>が
 愛犬が舌で私のほおに触れた
 愛犬が舌で私のほおに触った
「触れる」は、弱い力で軽く接触して離れる、という制御された動作を表す。そのような制御された動作が可能なのは、<(人間以外の)生き物>ではなく<人>であるのが自然である。
<もの>に
 カレーを作ろうと思って玉ねぎに触れたら、匂いが取れなくなった。
 カレーを作ろうと思って玉ねぎに触ったら、匂いが取れなくなった。
 満員電車の中で胸に触れられたと訴えられた。
 満員電車の中で胸に触られたと訴えられた。
<もの>は接触がはばかられたり、ためらわれたりするものであるのが通常である。
解説
「触れる」は「触る」と接触することを表すという意味では同じだが、接触の仕方が異なる。「触る」よりも「触れる」のほうが、接触の力が弱く、接触面が少なく、接触時間が短い。すなわち、軽く接触してすぐに離れる動作を表す。
誤用解説
 友達の肩にポンと軽く触れた
 友達の肩をポンと軽くたたいた
「触れる」は接触に勢いがある場合には使えない。この例文の場合、「ポンと」という表現が勢いを表している。
類義語・反義語
類義語触る、接触する
反義語


2.身体部分に軽く接触他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
ものが身体部分に軽く接触する。
文型
<もの>が<身体部分>に触れる||<身体部分>が<もの>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
もがいていると、足先が海底に触れた
肌に触れる衣類は、天然素材を選びたい。
この草は、肌にふれるとかゆくなる。
傘がスーツに触れて濡れたと文句を言われた。
服のタグが触れると気持ちが悪いので切ってしまおう。
指が隣の鍵盤に触れて音がわずかに濁った。
コロケーション
<もの>が[に]
① 動かないもの:隣のキー、隣の弦、隣の鍵盤
② 人の動きで動くもの:隣の人の傘、前の人の髪
<身体部分>に[が]
手、肌、肩、指先、足先
<様態>
軽く、直接
非共起例
<もの>が
 雨粒がポツンとほおに触れた
 雨粒がポツンとほおに当たった
この場合の<もの>には、自ら動く<もの>は含まれない。
解説
「語義1」が、意識的な動作(接触)を表すのに対し、この「語義2」は何らかの動きによって自然に体の一部が何かに接触することを表す。この「語義2」の表す接触も「語義1」と同様に、接触の力が弱く、接触面が少なく、接触時間が短い。すなわち、軽く接触してすぐに離れる動きを表す。
誤用解説
 肌に触れる衣類は綿を選びたい。
 肌に触る衣類は綿を選びたい。
この「語義2」の「触れる」は、「触る」に言い換えられることが多い。むろん「触れる」と「触る」とでは接触の仕方が異なる。たとえば「肌に触れる」は「肌に触る」とは言い換えられない。「肌」に「衣類」が接触する接触の仕方は、密着ではなく、接触の力が弱く、接触面が少なく、接触時間が短いからだと考えられる。
類義語・反義語
類義語触る
反義語


3.ものの接触自動詞中級★★
表記触れる・ふれる
もの同士が軽く接触する。
文型
<もの・身体部分>と<もの・身体部分>(と)が触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ナイフとフォークが触れてカチャッと音をたてた。
落ちた紙を拾おうと思って同時に手を出し、指先と指先が触れた
手と手が触れて、ドキッとした。
何かのはずみで二人の肩と肩が触れた
対峙していた二人が突然刀を抜き、その先と先が触れて火花が散った。
狭いので、少し動くとすぐにテーブルの下で膝と膝が触れてしまう。
stairs試合では、まず、お互いの竹刀の先が触れない位置で構えます。
コロケーション
<もの>と<もの>
ナイフとフォーク、箸と箸、端と端、袖と袖
<身体部分>と<身体部分>
手と手、肩と肩、指と指、足先と足先、膝と膝
<様態>
互いに
非共起例
<もの>と<もの>(と)が
 ボールとネットが触れた
 ボールがネットに触れた
<もの>と<もの>とが接触する場合であっても、どちらか一方の動きによって接触が起こる場合には、この「語義3」の文型は使えない。
<もの>と<もの>(と)が
 高速道路で車と車が触れて、事故が起きた。
 高速道路で車と車が接触して、事故が起きた。
 ランナーとランナーが触れて、一人が転倒した。
 ランナーとランナーが接触して、一人が転倒した。
この「語義3」は、<もの同士が軽く接触する>場合に使われるのであって、接触の結果、「事故」「転倒」など重大な出来事が起こる場合には使えない。
解説
この「語義3」は、接触する複数のものの間でどれが接触の主体であるとも言えず、また接触する複数のもののうち、どれに注目しているとも言えない場合である。「触れあう」に言い換えることができる場合が多い。これに対し、「語義1」と「語義2」の場合、主として接触を引きおこすものが、格助詞「が」で表される。
誤用解説
  狭いので、少し動くとすぐにテーブルの下で膝と膝が触れあってしまう。
 狭いので、少し動くとすぐにテーブルの下で膝と膝が触れてしまう。
この「語義3」の「触れる」は「触れあう」に言い換え可能な場合が多いが、この例の場合には言い換えることができない。「触れあう」は、接触を回避したい場合には使いにくいからである。この例における膝と膝との接触は、積極的に回避したいのに回避できない場合である。
類義語・反義語
類義語触る、触れあう
反義語


4.ものが気体に接触他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
ものや身体部分(表面)が気体と接触する(その結果、何らかの反応が起こる)。
文型
<もの・身体部分>が<気体>に触れる||<気体>が<もの・身体部分>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
食品が空気に触れないように、ラップをかけたほうがよい。
この花は、冷たい空気に触れないように管理してください。
青色リトマス紙が空気に触れると赤くなる。
リンゴが空気に触れると変色する。
冷たい外気が肌に触れて湿疹が出た。
銅が空気に触れると酸化する。
コロケーション
<もの・身体部分>が[に]
① 食品:りんご、果物、肉、魚、加工品
② 物質:鉄、銅、アルミ
③ 身体部分(身体の表面):肌
<気体>に[が]
空気、大気、外気、夜気、酸性の気体
<様態>
急に
非共起例
<気体>に
 山で毒ガスに触れて、呼吸困難になった。
 山で毒ガスを吸って、呼吸困難になった。
「触れる」は<軽く接触>することを表すのであって、体内に気体を取り込む場合には使えない。
解説
「語義2」が動きをともなって自然に何かが接触することを表すのに対し、この「語義3」は、接触する<もの・身体部分>と<気体>のどちらかに動きがあるというよりも、両者の接触を妨げているものが取り除かれることで動かない<もの・身体部分>が<気体>に接触することを表す。接触の結果、何らかの変化が起こることが多い。
誤用解説
 ラッピングを取ると、新しい機器が空気に触れました
 ラッピングを取ると、新しい機器が空気に触れて急に曇った。
 リンゴが空気に触れた
 リンゴが空気に触れて色が変わりました。
接触の結果どのような変化が生じたのか、変色・変質などの事実が文脈で示されているほうが自然な文となる。
類義語・反義語
類義語接触する
反義語


5.ものの存在の認識他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
身体部分の接触によって得られた感触から、ものの存在を認識する。
文型
<身体部分>が<もの>に触れる||<もの>が<身体部分>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
気を失ってはいるが、脈が触れているので大丈夫だ。
体を起こしたとき、手が何かに触れた
首のあたりをさわっているとしこりに触れた
カバンに手を入れると何か柔らかいものに触れた
暗闇を歩いていると、首筋にひんやりとしたものが触れた
シャベルの先が何か金属のようなものに触れてコツンと音がした。
コロケーション
<身体部分>が[に]
① 身体部分:手、指先、足先、つま先
② 身体部分の延長:箸の先、シャベルの先、フォークの先
<もの>に[が]
脈、鼓動、ぼこぼこしたもの、熱いもの、柔らかいもの
<様態>
突然、急に
非共起例
<もの>に
 カバンの中に手を入れると美しい本に触れた
 カバンの中に手を入れると美しい本があった
この場合の「触れる」は「触覚」によってものの存在を認識することを表す。美醜は「触覚」ではわからない。「美しい本」が「カバンの中」にあることを前もって知っており、それに軽く接触したという意味ならば「触れる」も使える。その場合は「語義1」と解釈される。
解説
「語義2」が身体部分の軽い接触を表すのに対し、この「語義5」は軽い接触の結果、接触したものの存在を認識することを表す。
類義語・反義語
類義語触る
反義語


6.存在が目に入る他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
容易に人に見られることのないものが、見る人の意図とは関係なく目に入る。
文型
<もの・こと>が<視線>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
人目に触れないように隠れた。
誰の目に触れるかわからないから、用心しろ。
このような広告は人目に触れやすい。
これは一般の人に目に触れてはならないデータだ。
来客の目に触れる場所にかざっておこう。
アリバイ作りのために、わざと人目にふれるよう、会社の前の喫茶店で人と会った。
コロケーション
<もの>が
① 多くの人に見てもらいたいが努力をしなければ(多くの人には)見てもらえないもの:広告、絵、作品
② 人に見られると困るもの:手紙、文書、秘密、大切なもの
<こと>が
秘密の行動、逃亡、密会、内緒で昔の友達に会っていたこと
<視線>に
目、人目、他人の目、皆の目
<様態>
偶然、何気なく
非共起例
<もの>が
 カンニングが先生の目に触れないように気をつけろ。
 カンニングが先生に見つからないように気をつけろ。
この場合の「触れる」が使われるのは、見る側には見ようとする意図はなく、偶然目に入る場合である。テスト監督の先生は、カンニングがあればそれを見つけるために監督をしている。カンニングがあればそれを見つける努力をしているのだから、偶然目に入るわけではない。
<視線>に
 広告会社の努力によって我が社の広告が<人の目>に触れた
 広告会社の努力によって我が社の広告が<多くの人の目>に触れた
「触れる」対象は、容易に人に見られることのないものでなければならない。「広告」は、数人に見てもらうことはたやすくても、多くの人に見てもらうのは容易ではない。したがって、「我が社の広告」が容易に人に見られることのないものであることを示すには、<視線>は<人の目>ではなく<多くの人の目>としなければならない。
解説
「語義5」が<身体部分>が軽く接触することによって何らかの存在を認識することを表すのに対し、この「語義6」は、<視線>が軽く接触すること(目に入ること)によって何らかの出来事があることを認識することを表す。
類義語・反義語
類義語見られる
反義語


7.ことばが心に届く他動詞上級
表記触れる・ふれる
ことばや行為が届きにくい人に届き、心を動かす。
文型
<ことば・行為>が<(容易には働きかけられない心>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
被災者の心に触れることばを残した。
それは、先生のことばが頑なな生徒の心に触れた瞬間だった。
何を言っても彼の心にはまったく触れることができなかった。
心に触れることばに出会ったら、忘れないように書き留めておこう。
医師は患者の心に触れる治療をする必要がある。
傷ついた心にやさしく触れる心遣いが有りがたかった。
stairs課長のスピーチに感動してさ、「琴線に触れる」って言うつもりで、つい「逆鱗に触れる」って言っちゃったんだ。
コロケーション
<(容易には働くかけられない)心>に
心、疲れた心、傷ついた心、頑なな心
<様態>
そっと、やさしく
非共起例
<心>に
 すばらしい舞台が観客の心に触れた
 すばらしい舞台が観客の心に響いた
<心>は、容易には働きかけられない<心>でなければならない。劇場のように人が感動を求めて来る場において、<心>が動いたとしても「触れる」は使えない。
解説
「語義2」が<身体部分>が<もの>に軽く接触することを表すのに対し、この「語義7」は<人の心>に働きかける(抽象的な意味で軽く接触する)、その結果<人の心>を動かすことを表す。
類義語・反義語
類義語届く、響く
反義語


8.話題にする他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
話の中である物事を話題の一つとしてとりあげる。
文型
<人>が<もの・こと>に[について]触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この本は現代詩についても触れている
会見では誰もその話題に触れようとはしなかった。
地球温暖化については、第5章で触れる
先にも触れましたように、それでは解決にはならないのです。
社長は新規事業について触れ、新たな計画が進行していると述べた。
今度の授業では、宇宙開発の現状だけではなく、新たな展開についても触れます
stairsだからもう、この話題には触れないでね。
コロケーション
<もの・こと>に[について]
~の問題、~点、~の話題、~の件、~こと
<様態>
簡単に
<時>
先に、前に、かつて、これから、後で
<部分>で
次節で、本書で、冒頭で、~のところで、訳注で
<手段>で
記事で、会見で、手紙で、ブログで
解説
「語義1」がものに軽く接触することを表すのに対し、この「語義8」は、なにかのついでに話が及ぶ(抽象的な意味で話題に軽く接触する)ことを表す。この場合の接触対象である「話題」などは、十分には話さない(抽象的な意味で十分には接触しない/軽く接触する)ものである。
誤用解説
 地球温暖化問題については本書の後半で主要なテーマとして触れる
 地球温暖化問題については本書の後半で主要なテーマとして述べる
 今度の授業では、地球温暖化問題に触れる
 今度の授業では、地球温暖化問題を取り上げる
 スマホの販売員は、契約内容に触れてくれた。
 スマホの販売員は、契約内容を説明してくれた。
主要なテーマや主要な話題について述べる場合、「触れる」は使えない。
類義語・反義語
類義語述べる、話す、言及する
反義語


9.重要なことに言及他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
重要なことについて、その全体像が推測可能な程度に述べる。
文型
<人・ことば>が<重要なこと>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
部長の発言は事件の重要な点に触れるものだった。
問題の核心に直接触れないように、周辺から探っていった。
この小説は人間の本質に触れている
あれこれ説明はしてくれるが、肝心な点には触れてくれない。
本題に触れる前に、時間がなくなってしまった。
社長の前でその問題に触れてはいけない。
コロケーション
<重要なこと>に
核心、根幹、本質、肝心な点、要点
<様態>
まさに、ついに、少し
非共起例
<様態>
 事件の核心に十分に触れた
 事件の核心に少し触れた
「触れる」は、「核心」など<重要なこと>についてその全体像が推測可能な程度に述べることを表すのであって、<十分に>伝えることを表すことはできない。
解説
「語義8」が、話題として取り上げることを表すのに対し、この「語義9」は、要点の全体像を伝えるのではないが、全体像が推測可能な程度に言及することを表す。この場合の伝える内容(ことばで接触する対象)となる「核心」などは、全体をはっきりと伝えるのが難しいもの(抽象的な意味で、十分に接触することが難しいもの)である。
誤用解説
 授業の終わりに先生は、今日の要点/ポイントに触れた
 授業の終わりに先生は、今日の要点/ポイントについて述べた
この場合の「触れる」は、全体像が推測可能な程度に言及することを表すのであって、授業の終わりに要点をまとめて提示するような場合については使えない。
類義語・反義語
類義語かかわる、関係する
反義語


10.伝達他動詞上級
表記触れる・ふれる
重要な伝達内容を一人ひとりに伝達する。
文型
<人・組織>が<(多くの人に伝えるのが難しい)伝達内容>を<(多くの)人>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は危険が迫っていることを皆に触れて歩いた。
部下が上司の不正をあちこちの部署で触れて回っている。
早めに避難するように市の広報車が触れて回っていますよ。
隣の奥さんがよくないうわさをご近所に触れて歩いている。
口止めしたことを触れて歩かれて嫌な思いをした。
じっとしているのはよくない。手分けしてこのことを皆に触れて回ろう。
コロケーション
<人・組織>が
役所、近所の人
<(多くの人に伝えるのが難しい)伝達内容>を
危険が迫っていること、うわさ、秘密、機密
<(多くの)人>に
近所の人に、社内の人に、市民に、皆に、一人ひとりに、あちこちに
非共起例
<(多くの)人>に
 事件のことを上司に触れた
 事件のことを上司に伝えた/知らせた
この「語義10」は、多くの人に伝達するのが難しいものを伝達する場合に使われる。
解説
「語義9」が<重要なことに言及する>ことを表すのに対し、この「語義10」は<重要なことを一人ひとりに伝達する>ことを表す。
誤用解説
 市の広報車が早く避難するように触れている
 市の広報車が早く避難するように住民に触れて回っている。
この「語義10」の「触れる」は、「触れて歩く」「触れて回る」の形で用いられ、「触れる」単独では使われない。
類義語・反義語
類義語知らせる、伝える、報告する
反義語


11.貴重な体験他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
容易に理解することができない何かを知るための体験をする。
文型
<人>が<こと>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
日本の文化に触れる体験旅行を計画した。
大自然に触れよう
外国の文化と歴史に触れる旅に出た。
歴史小説の世界に触れたのは小学生の頃だった。
工場を見学して職人の技に触れることができた。
伝統工芸の美しさに触れることができた。
stairs日本に行く機会があったら、都会だけではなく、田舎の空気にも触れてみてはどうでしょうか。
コロケーション
<こと>に
① 文化、歴史、芸術、自然、技術
② レベルの高さ、すばらしさ、天才の孤独、崇高な精神、人格
非共起例
<こと>に
 インタビューで、田中選手に触れることができました。
 インタビューで、田中選手のすばらしさに触れることができました。
インタビューを通して「田中選手」がすばらしい選手であることを知ったとしても、この「語義11」の意味で、<人>に触れるとは言えない。
解説
「語義1」が、<もの>に軽く接触することを表すのに対し、この「語義11」は<容易に理解することができないすばらしいもの>を知る体験(抽象的な意味で軽く接触すること)を表す。
誤用解説
 修学旅行で金沢に行き、職人の技を理解することができた。
 修学旅行で金沢に行き、職人の技に触れることができた。
この場合の「触れる」はあくまでも「体験」して少し知ることを表すのであって、深い理解に至ることを表すのではない。「修学旅行」で見学をした程度で何かを知ったことを表す場合、「理解する」よりも「触れる」のほうが適切である。
類義語・反義語
類義語出会う、体験する、理解する
反義語


12.心を少し理解他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
容易に知ることのできない人の心を少し理解する。
文型
<人>が<心>にふれる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この町の人の心に触れたような気がした。
今度の旅は人情の機微にふれる旅だった。
入院先の病院で看護師さんのあたたかさに触れた
娘さんを思う親心に触れて、心温まる思いがした。
今度の事件で上司の優しさに触れた思いがした。
友達を思いやる心情に触れ、感動した。
コロケーション
<心>に
心、機微、人の心のすばらしさ、あたたかさ、他人を思いやる心情、情けの深さ
<様態>
少しばかり
解説
「語義11」が<容易に理解することができないもの>について体験することを表すのに対し、この「語義12」は<人の心>という<容易に知ることができない深い世界を持つもの>を知る体験をすることを表す。
誤用解説
 彼の残酷さに触れた
 彼の残酷さを知った
<人の心>は<容易に知ることができない><すばらしい心>でなければならない。
「冷酷さに触れる」、「残酷さに触れる」という文は理解可能かもしれないが、用例はほぼないと言ってよい。
類義語・反義語
類義語感じる、理解する
反義語


13.操作・演奏体験他動詞上級
表記触れる・ふれる
操作・演奏するには習得の必要がある機械・楽器などについて、体験的に少し操作・演奏してみる。
文型
<人>が<機械・楽器など>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
パソコンに触れたことのない人でも大丈夫。
小学校では楽器に触れる機会を作りましょう。
当教室でピアノに触れてみませんか。
ろくろに触れたことがなくても、すぐにできるようになります。
旋盤に触れたことのない方にも、丁寧に指導いたします。
焼き物教室の体験に行けば、粘土に触れることができますよ。
コロケーション
<機械・楽器>に
① 楽器:楽器、ピアノ、バイオリン、ギター
② 機械・道具:パソコン、織物の機械(織機)、編み機、旋盤、ろくろ
③ 素材:粘土
<様態>
少し、はじめて、何回か
非共起例
<機械・楽器など>に
 毛筆に触れたことがなくても大丈夫です。
 毛筆を持ったことがなくても大丈夫です。
<機械・楽器など>は、手で軽く接触することで操作・演奏が可能なものでなければならない。「筆」は手で保持して動かすものであって、この条件を満たさない。
<機械・楽器など>に
 フルートに触れたことがなくても大丈夫です。
 フルートを吹いたことがなくても大丈夫です。
<楽器・機械など>は、基本的に手で接触をして演奏・操作するものでなければならない。「フルート」は主として息によって演奏するというイメージがあるために不自然になる。
解説
「語義1」が<もの>に<軽く接触する>ことを表すのに対し、この「語義13」は接触することで操作、演奏などを行い体験することを表す。
誤用解説
 友達の家に遊びに行って、バイオリンに触れました
 友達の家に遊びに行って、バイオリンに触らせてもらいました
この「語義13」の「触れる」は体験を表すが、体験とは上達を目指してやってみるということであり、ただバイオリンを弾いてみる場合に「触れる」とは言えない。
 毎日にパソコンに触れる仕事をしている。
 毎日仕事でパソコンにさわる仕事をしている。
 毎日植木に触れる仕事をしている。
 毎日植木に触る仕事をしている。
この「語義13」の「触れる」は、体験を表す。仕事でパソコンを操作するのは体験ではない。
類義語・反義語
類義語操作する、演奏する
反義語


14.規則・怒りに抵触他動詞中級★★
表記触れる・ふれる
規則に反するようなこと/怒らせるようなことをする。
文型
<人・組織・活動>が<規則・怒り>に触れる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その行為は法に触れる
部長が法に触れるようなまねをするとは思えない。
法律に触れない限り、何をやってもかまわないと言う人がいる。
上司の怒りに触れて左遷された。
弁護士に大丈夫だと言われていた取引が、実は法に触れていた。
貯金を勝手に使い果たしたことが妻の怒りに触れて離婚された。
コロケーション
<規則・怒り>に
① 規則:法、法律、法令
② 怒り、勘気
非共起例
<規則>に
 校則に触れた
 校則に違反した
この「語義14」における<規則>は、違反する(抽象的な意味で接触する)と大きな問題を引き起こすものでなければならない。「校則」は違反してもさほど大きな(社会的)問題を引き起こすわけではない。
<怒り>に
 上司の激怒に触れた
 上司に激怒された。
 上司の腹立ちに触れた
 父親の機嫌に触れた
 父親の機嫌を損ねた
<怒り>として使える語は「怒り」「勘気」などに限られている。
解説
「語義1」がものに軽く接触することを表すのに対し、この「語義14」は違反する(抽象的な意味で接触する)と大きな問題を引き起こすものに軽く接触することを表す。
誤用解説
 彼は人を殺し、法に触れた
 彼は人を殺し、法を犯した
「触れる」は、ぎりぎりのところで<規則>を犯す(抽象的な意味で軽く接触する)ことを言うのであって、明らかに違反している場合には使えない。
類義語・反義語
類義語抵触する
反義語


触れるの全体解説 「触れる」は、身体部分(主に手)で何かに接触することを表す。接触動作を表すという意味では「触る」と同じだが、接触の仕方が異なる。「触れる」のほうが接触の力は弱く、接触面は少なく、接触時間は短い。 
























▶全例文を聞く
<もの>に
ノブに触れる前に、浅川は用意しておいたゴム手袋を取り出して両手にはめた。
(鈴木光司著 『リング』, 1993, 913)
<身体部分>を[で]
女は男の顔にを触れた。
(ミステリー文学資料館編 『ペン先の殺意』, 2005, 913)
ついで、医者はで患者のからだに触れる。
(奈良信雄著 『名医があかす「病気のたどり方」事典』, 1998, 491)
<様態>
アルシアは彼の頬にそっと手を触れた。
(ノーラ・ロバーツ作;松村和紀子,安倍杏子訳 『真夜中のヒーロー』, 2003, 933)
<気体>に[が]
ぬるめの湯で、透明な湯が空気に触れると茶色になる。
(週刊現代, 2001, 一般)
<身体部分>が[に]
ベンチについていたに、なにかが触れた。
(小説現代, 2004, 文学/芸術)
<視線>に
家族は引き籠もった彼を世間の目に触れないようにここへと隔離したのだという。
(平山夢明著 『東京伝説』, 2004, 913)
<(容易には働くかけられない)心>に
医師のする仕事というのは、人のに触れ、体に触れるものだ
(日野原重明著 『生きかたの選択』, 2002, 490)
<もの・こと>に[について]
あれ、村上さん選の六作は、みんな、どこか子育てとか教育の問題に触れてますね。
(鈴木繁編著 『漫画鏡』, 1998, 726)
それが分かると面倒なことになるので、なるべくその話題に触れないように。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<様態>
ではここに至る経緯を簡単に触れてみたい。
(松平圭一著 『イギリス式庭園文化』, 2001, 629)
<部分>で
本書では、それらの問題について触れるだけの余裕がなかった。
(木村泉著 『ワープロ作文技術』, 1993, 816)
<重要なこと>に
浅見はようやく核心に触れる話題を持ち出した。
(内田康夫著 『怪談の道』, 2005, 913)
<(多くの)人>に
そのうえ、いかにも兄貴らしい態度でジョージの好きな女の子の名前を聞き出し、次の日に学校中に触れて回ったりする。
(スティーヴン・キング著;矢野浩三郎他訳 『ミルクマン』, 1988, 933)
<こと>に
日本の文化に触れて自分のルーツを確認する。
(柳沢小実著 『12ヶ月のスクラップブック』, 2005, 590)
ただ、走ることの楽しさに少しだけ触れることができたような気はする。
(吉川なよ子著 『風はアゲンスト』, 1999, 783)
<心>に
彼の、とても素直で素朴なに触れて、私も今まで考えられなかったくらい、純粋な気持ちになることができました。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<機械・楽器>に
今日はちょっとピアノに触れる機会がありました。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<規則・怒り>に
しかし、バックアップとして個人で利用する場合は、著作権法には触れない。
( 『CD-R/RWトラブルすっきり解決200事例』, 2001, 548)






























試合では、まず、お互いの竹刀の先が触れない位置で構えます。
課長のスピーチに感動してさ、「琴線に触れる」って言うつもりで、つい「逆鱗に触れる」って言っちゃったんだ。
だからもう、この話題には触れないでね。
日本に行く機会があったら、都会だけではなく、田舎の空気にも触れてみてはどうでしょうか。
逆鱗に触れる

意味
目上の人など、怒らせると怖い人をひどく怒らせる。
用例
よかれと思って打ち合わせの場で契約をしたところ、上司の逆鱗に触れた。これで次回の人事異動で左遷されることになるだろう。
コーパスからの用例
「なんだと」 数江が怒りの叫びをあげた。総馬の一言は数江の逆鱗にふれた。「無礼なことを申すな」数江が太刀をぬいた。(上田秀人著『波濤剣』2003)
琴線に触れる

意味
すばらしいものに接する機会を与えることで、感動させる。
用例
この歌は、すべての人の心の琴線に触れるすばらしい歌です。
コーパスからの用例
子供の教科書を読むと、子供の琴線にふれるような文章はみあたらないのだ。子供は色彩のある雑誌を買いたがるのも無理からぬ事と思える。美しいものは美しいのだ。(林芙美子著『「文芸春秋」にみる昭和史』1988)
折に触れ(て)

意味
機会がある度に
用例
隣町に住む叔母の家を折に触れては訪ねていたのですが、このところ忙しくなり、足が遠のいています。
コーパスからの用例
この問は、私が美術大学に入学した十九歳の頃から折に触れて、自分自身に問い続けていることでもある。そしてそれは常に、いま在る、私の存在に対する質問でもあるのだ。(田窪恭治著『表現の現場』2003)
触れなば落ち(な)ん

意味
触ったらすぐに落ちそうな様子。転じて、少し誘えばすぐに言うとおりになりそうな、はかなげであやうい(女性の)様子。
用例
色白でほっそりとしたその女性は、触れなばおちなんという風情を漂わせていた。
コーパスからの用例
いまのいままで触れなば落ちなん風情をしていた紀久子が、冬本の名前を口にする都度、現実的な表情に戻ってゆく。自分はこの、女の激しい感情の交代にどう対応していったらいいのか? (森村誠一著『新幹線殺人事件』2004)
複合動詞 V1

触れ回る、触れ歩く、触れあう
複合動詞 V2

前触れ、触れあい、触れこみ
触れる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形ふれる
ない形ふれない
~なかったふれかった
ます形ふれ
~ませんふれま
~ましたふれした
~ませんでしたふれまんでした
~ときふれるとき ふれる
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