合わせるのコアイメージ

1.一体化他動詞初級★★★
表記合わせる   ※「併せる」を用いることもある
人や動物などが、複数のものや身体部位を近づけて接触させ、1つにする。
文型
<人・動物>が<もの>を合わせる
<人・動物>が<もの>と<もの>(と)を合わせる
<人・動物>が<もの>に<もの>を合わせる
<人・動物>が<もの>を<もの>に合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
日本人は、お詫びをするときやお願いをするときに手を合わせます
折り紙の端と端とをきちんと合わせないと、綺麗な折り鶴はできません。
合板とは、複数の薄い板を接着剤で合わせたもののことだ。
みぞおちの前で右手と左手を合わせ、力いっぱい押すという筋トレがあるそうだ。
「この黒い瓶に入っているのは、胡椒ですか?」「いいえ、そちらは、シェフが数種類のスパイスを合わせて作った当店オリジナルの調味料です」
丼の中には、鶏ガラの出汁に煮干しの出汁を合わせたスープが入っています。
コロケーション
<もの>を合わせる
(両)手、手のひら、調味料、出汁、端
<様態>合わせる
しっかり、ぴったり、きちんと、ちゃんと、きっちり
非共起例
<もの>と<もの>(と)を合わせる
 手と壁を合わせる
 手を壁に付ける
 足と頭とを合わせる
 足を頭に付ける
対にならない、もしくは同種ではない複数のもの同士・身体の一部同士を接触させる場合には、通常「(AをBに)付ける」を用いる。
解説
語義1では「合わせる」が、対になっている具体物、あるいは複数の同種の具体物を相互に近づけて接触させ、一体化させる過程を表す。「合わせる」の最も基本的な意味である。なお、ガ格名詞(句)で複数のもの・身体部位(X)を一括して表す場合、「<人・動物>がXを合わせる」という文型を用いる。また、複数のもの・身体部位(XとY)を個々に表す場合、「<人・動物>がXとY(と)を合わせる」という文型を用いる。いずれの場合にも、複数のもの・身体部位はほぼ同等に捉えられている。これに対して、複数のもの・身体部位(XとY)のうち、(Yに比べて)Xにより焦点が当てられ、Xを一体化させる対象物(Xが移動する先)がYであるというケースにおいては、「<人・動物>がYにXを合わせる」あるいは「<人・動物>がXをYに合わせる」という文型を用いる。
誤用解説
仏前で合掌する(顔や胸の前で両手のひらと指をぴったり接触させて、仏や菩薩などを拝む)ことを表す場合には、通常、「手を合わせる」という句を用いる。
 祖母は毎日仏壇の前で、仏様に右手と左手を合わせている
 祖母は毎日仏壇の前で、仏様に手を合わせている
類義語・反義語
類義語合わす
反義語離す、分ける


2.統合他動詞初級★★★
表記合わせる   ※「併せる」を用いることもある
人が、複数の数量や物事を1つにまとめる。
文型
<人>が<数量・こと>と<数量・こと>(と)を合わせる
<人>が<数量・こと>に<数量・こと>を合わせる
<人>が<数量・こと>を<数量・こと>に合わせる
<人>が<こと>を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
1と9を合わせると、10です。
私の住んでいる島の人口は、2つの町を合わせても6000人弱だ。
「住民税とは、どんな税金ですか?」「都道府県民税と市町村民税を合わせた呼び方ですよ」
この授業では、定期試験の点数に、小テストの合計点と平常点とを合わせ、最終的な成績を決定する。
2人の異なる案を合わせた妥協案を提示すべきか、どちらか一方の案を採用すべきか、なかなか決められずにいる。
自宅のリフォームを検討していますが、中古物件の購入も合わせて検討したいと思っています。
コロケーション
<数量>と<数量>(と)を合わせる
9、500円、30人、4000個、70点
<こと>と<こと>(と)を合わせる
税(金)、成績、町、案、情報
<様態>合わせる
さらに、まず、やはり、きちんと、全て
非共起例
<こと>を合わせる
 5000円を合わせる。
 5000円と10000円を合わせる。
 両村を合わせた人口は2000人だ。
 これまでの業績を合わせて考慮する。
助詞「と」を用いない「<人>が<こと>を合わせる」という文型の場合、<こと>は、複数の物事を一括して表す名詞(句)に限定される。(この文型では、数量詞はヲ格名詞にはならない。)
解説
語義2は語義1と、複数の事物を一体化させるという点で共通している。但し、語義1では一体化(接触させ、1つにすること)の対象が具体物であるのに対し、語義2では一体化(1つにまとめること)の対象は、数量、あるいは(組織、情報、案、思考内容などの)物事であるという違いがある。なお、複数の数量、物事(XとY)を個々に表す場合、「<人>がXとY(と)を合わせる」、「<人>がYにXを合わせる」、「<人>がXをYに合わせる」という文型を用いる。一方、複数の物事(X)を一括して表す場合、「<人>がXを合わせる」という文型を用いる。
類義語・反義語
類義語合わす、統合する、合計する、合算する
反義語分ける


3.視覚的一致他動詞初級★★★
表記合わせる
ある2人が、相互に相手の目(を含む顔)を見ているという状態を生じさせる。
文型
<人・動物>が<人・動物>と<こと>を合わせる
<人・動物>が<人・動物>に<こと>を合わせる
<人・動物>と<人・動物>(と)が<こと>を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生が生徒と目を合わせる
「どんなに彼のことが憎くたって、社内で顔を合わせれば、さすがに挨拶くらいはするよ」「鈴木さん、大人だね」
照れているからなのか、2人はなかなか視線を合わせようとしませんでした。
父親は少しだけ屈んで、娘に目線を合わせました
少年と少女は、一瞬だけ互いに目を合わせたものの、すぐに逸らしてしまった。
「どうして佐藤君、いつも私と目を合わせて話してくれないんだろう?」「きっと、智子のこと、意識してるんだよ」
stairsあんまり顔合わせたくないんだ。
コロケーション
<こと>を合わせる
目、目線、視線、顔、目と目
<様態>合わせる
しっかり、常に、いつも、きちんと、(お)互いに
非共起例
<こと>を合わせる
 娘との身長差が大きいので、屈んで視線を合わせた。
 娘との身長差が大きいので、屈んで目線を合わせた。
視覚による対象の把握において、通常、相手を捉える目の高さ(の一致)という側面に焦点が当てられる場合には「目線」を、目で見る方向という側面に焦点が当てられる場合には「視線」を用いる。
解説
語義1が、人や動物が複数の具体物を接触させ、一体化させることを表すのに対し、語義2は抽象的な一体化を表す。すなわち語義2は、2人の人間による、視覚で捉える領域の一体化を表す。AさんとBさんという2人の存在を想定した場合、相互の意志に基づき、Aさんの目と、Aさんが見ている対象(Bさんの目)を結ぶ線が、Bさんの目と、Bさんが見ている対象(Aさんの目)を結ぶ線と、空間上で交わった状態になる、ということである。したがって、AさんはBさんの目を見ていて、BさんもAさんの目を見ている、という状態を「目(視線、目線、顔)を合わせる」と表すのである。(このため、「目」と「顔」の基本的な意味は身体部位としての<もの>だが、語義3においては<こと>を表すことになる。)なお、「目を合わせる」に対して、「視線を合わせる」及び「目線を合わせる」は、そのような状態の生じ方についてより限定的に表している。つまり、「視線を合わせる」の場合には、AさんがBさんの方向に向けて視覚を働かせ、BさんもAさんの方向に向けて視覚を働かせる、というように、「目で見る方向」が焦点化されている。これに対し、「目線を合わせる」の場合には、AさんとBさんの目の高さがほぼ等しくすることによってお互いがお互いを視覚で捉える、というように、「目の高さ(の一致)」が焦点化されている。また、「顔を合わせる」の場合には、(単に相互に相手の顔を見るというだけではなく)2人(以上)の人が会うというより広い意味で用いられる。ところで、「XがYと目(目線、視線)を合わせる」という場合、YはXにとっての相互行為の相手であることを表す。一方、「XがYに目(目線、視線)を合わせる」という場合、YはXが視覚で捉える対象であることを表す。(但し、ヲ格名詞が「顔」の場合、Yはニ格名詞にはならず、ヲ格名詞として用いられる。)
誤用解説
「<こと>を合わせる」に関して、<こと>を「目と目」という形式で表し、(視覚で捉える)相互行為としての特徴をより焦点化することができる。この場合、通常、「目と目を合わせる」という形で用いられ、「目を目と合わせる」という形では用いられない。
 2人は目を目と合わせた。
 2人は目と目を合わせた。
類義語・反義語
類義語合わす
反義語逸らす


4.サイズの一致他動詞初級★★★
表記合わせる
人が、あるもののサイズ(大きさ、幅、奥行き、高さなど)や形状を、あるものや身体(の一部)のサイズ(大きさ、幅、奥行き、高さなど)や形状と一致させる。
文型
<人>が<もの>を<もの・身体の一部>に合わせる
<人>が<もの>と<もの・身体の一部>(と)を合わせる
<人>が<もの>を<こと>に合わせる
<人>が<もの>と<こと>(と)を合わせる
<人>が<こと>を<もの(・身体の一部)>に合わせる
<人>が<こと>と<もの(・身体の一部)>(と)を合わせる
<人>が<こと>を<こと>に合わせる
<人>が<こと>と<こと>(と)を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
父は、植木鉢のサイズを苗木の大きさに合わせました
「ウェディングベールは、ウェディングドレスのサイズだけでなく、式場の広さにも合わせなければならないんですよ」「そうなんですか、知りませんでした」
補聴器は、一人一人の耳の大きさや形に合わせて作られる。
海外旅行に行く際は、旅先のプラグ形状に合わせた電源変換プラグを持って行きましょう。
祖母が、私の体に合わせた着物を仕立ててくれた。
左右の足の大きさが微妙に違う場合、靴を選ぶ時には、大きい方の足のサイズに合わせましょう
コロケーション
<もの>を合わせる
服、帽子、靴、指輪、補聴器
<もの・身体の一部>に合わせる
体、頭、足、指、部屋
<こと>を合わせる
サイズ、大きさ、高さ、形、形状
<こと>に合わせる
サイズ、大きさ、広さ、形、形状
<様態>合わせる
必ず、しっかり、ぴったり、なるべく、きちんと
非共起例
<様態>合わせる
 ご自宅の窓のサイズに少し合わせてカーテンをお作りします。
 ご自宅の窓のサイズにちょっとだけ合わせたカーテンをお作りします。
 ご自宅の窓のサイズにきちんと合わせてカーテンをお作りします。
 ご自宅の窓のサイズにぴったり合わせたカーテンをお作りします。
語義4では「合わせる」が、ものや身体(の一部)のサイズ・形状を一致させることを表している。したがって、通常、一致(合致)の程度が高いことを表す副詞とは共起するが、程度が僅かであることを表す副詞とは共起しにくい。
解説
語義1は、複数のもの・身体の一部を接触させ、一体化させることに焦点が当てられている。これに対し語義4は、2つのもの・身体の一部のサイズ、形状を一致(合致)させる、ということに焦点が当てられている。(サイズ、形状が一致すれば、必然的に、2つのもの・身体の一部が物理的に接触し、一体化した状態になる。)なお、語義4において、「<人>がXをYに合わせる」という文型を用いる場合には、Y(のサイズ・形状)はXのサイズ・形状(との一致)を判断する上での基準として機能する。
誤用解説
「<人>がXをYに合わせる」という文型において、通常、Xは(複数の中から選択可能な)「もの(のサイズ)」であり、(選択不可能な)「身体(の一部)」が入ると不自然になる。
 足(の大きさ)を靴に合わせる。
 靴を足(の大きさ)に合わせる。
類義語・反義語
類義語合わす、一致させる、合致させる
反義語


5.基準との一致他動詞初級★★★
表記合わせる
人が、ある物事や物を、基準となる物事(状況、状態、実態)や物と一致させる。
文型
<人>が<こと・もの>を<こと・もの>に[と]合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
鈴木さんが、時計をラジオの時報に合わせた
市民病院は、患者のニーズに合わせ、病棟を増築することを決めました。
「兄に譲ってもらったのは、ピントを自動で被写体に合わせられないカメラなんです」「何だかレトロで、いいじゃないですか」
斎藤さんは、スピーカーから流れてくる音楽に合わせて有酸素運動をしているようです。
プランターでアオジソを育てるときは、生長に合わせた間引きが必要だ。
薬は、体質と症状に合わせなければ、健康に対して悪影響を及ぼしかねないものなのです。
コロケーション
<こと・もの>を合わせる
時計、ピント、薬、サービス、運動
<こと・もの>に[と]合わせる
被写体、時報、環境、ニーズ、レベル、症状
<様態>合わせる
必ず、まず、常に、なるべく、きちんと
非共起例
<様態>合わせる
 ピントを被写体にちょっと合わせる。
 症状に少し合わせた薬を処方してもらう。
 ピントを被写体にしっかり合わせる。
 症状にきちんと合わせた薬を処方してもらう。
語義5では通常、一致(合致)の程度が高いことを表す副詞とは共起するが、程度が僅かであることを表す副詞とは共起しにくい。
解説
語義5は語義4と、人がある事物(X)を異なる事物(Y)と一致させるという点で共通している。但し、語義4と異なり、語義5においてはXをYと一致させる上での物理的な接触、一体化は必要としない。なお、語義5ではYは、一致させる対象となるXに対して何らかの点で基準となる事物である。具体的に、例えば「ピントを被写体に合わせる」という場合には、Yは(基準となる)具体物である。また「時計を時報に合わせる」という場合には、Yは正しい情報を表す事柄である。さらに、「薬を症状に合わせて処方する」、「消費者のニーズに合わせた商品開発をする」など、Yが何らかの状況、状態、実態を表す事柄である場合もある。
類義語・反義語
類義語合わす、一致させる、合致させる
反義語ずらす


6.期間や時間の一致他動詞中級★★
表記合わせる
人が、複数の人の間で、ある物事を行う上で必要となる期間や時間を一致させる。
文型
<人>が<こと>を<人・こと>と[に]合わせる
<人>が<こと>を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
社長は、何とか社員全員の予定を合わせました
中山さんのスケジュールを他のメンバーのスケジュールと合わせられれば、合宿の日付が確定できます。
この国では、道路を横断するときは、地元の人とタイミングを合わせなければならない。
「今年の夏休みこそは、みんなで旅行に行きたいよね」「そうだね。今年こそ、みんなの休みをうまく合わせられるといいんだけど」
3人は、時間を合わせては集まり、とにかくよく話し合って、プレゼンの準備を進めた。
「いつ映画を見に行こうか?」「私たちの中で、田中君がいちばん忙しいんだし、田中君に合わせるよ」
stairs俺たちも急ぎの仕事だけ片づけたら、時間合わせて行くから。
コロケーション
<こと>を合わせる
予定、スケジュール、タイミング、休み、時間、日程
<人>と[に]合わせる
みんな、メンバー、家族、友達、彼女
<こと>と[に]合わせる
予定、スケジュール、タイミング、休み、時間、日程
<様態>合わせる
ぴったり、なるべく、きちんと、これから、なんとか
非共起例
<こと>と[に]合わせる
 私の休みを、休みと合わせる。
 私の休みを、彼女の休みと合わせる。
「<こと>と[に]」を用いる場合、「<こと>」については「予定、スケジュール、タイミング、休み」などの名詞を通常、単独では用いず、「彼女の休み」、「家族の予定」のように、「<人>の<こと>」という形で用いる。
解説
語義6は語義5と、人が複数の物事(XとY)を一致させるという点で共通している。但し、語義5では、Xを、ある基準となる物事や物(Y)と一致させるということを表すのに対し、語義6では、Xを、基準となる物事や物と一致させるということを表しているわけではない。複数人の予定、タイミング、日程などを相互に照らし合わせることで、共通点を見出す、ということを表している。なお、「X」が「私の休み」、「中山さんのスケジュール」のように、ある1人の<こと>を表す場合、「Yと[に]」という形式を伴う。一方、「Yと[に]」という形式を伴わない場合(「<人>がXを合わせる」という文型の場合)には、「X」は「社員の休み」、「メンバー全員のスケジュール」のように、相互に照らし合わされる複数人の<こと>を表す。
類義語・反義語
類義語合わす、一致させる、合致させる
反義語ずらす


7.精神・思考上の一致他動詞中級★★
表記合わせる
人が、異なる人(々)と、精神状態(物事への取り組み方や姿勢)、思考内容、発話内容を一致させる。
文型
<人>が<人>と[に]<こと>を合わせる
<人>と<人>(と)が<こと>を合わせる
<人>が<こと>を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
運動会の親子競技で、父と娘が力を合わせた
被災地の復興のためには、皆が心を合わせなければなりません。
「社員一同、力を合わせ、この難局を乗り切らなければならないんだ」「はい、私も社長のおっしゃる通りだと思います」
営業職に就いている兄は、どんなお客さんとも話を合わせられるように、日頃からあらゆるトピックに関して情報収集をしています。
餅つきでは、搗き手と返し手がしっかり息を合わせることが大切です。
個性も大切なので、多数派と無理に意見を合わせなくても良いのではないだろうか。
コロケーション
<こと>を合わせる
力、心、話、息、意見
<人>と[に]合わせる
父、皆、(お)客(さん)、相手、多数派
<様態>合わせる
しっかり、共に、いつも、これから、なんとか
非共起例
<こと>を合わせる
 を合わせる
 性格を合わせる
 を合わせる
 意見を合わせる
「合わせる」に対応する自動詞「合う」に関しては、「気が合う」、「性格が合う」などの表現によって、感情、心理的な特性の一致を表せる。しかし、これらの感情、心理的な特性(特に人間性、人格など)は、個々人の属性であり、複数の人の間で(意志的に)一致させることはできない。
解説
語義7は語義5と、人が複数の物事を一致させるという点で共通している。ただし、語義5では、ある物事(や物)を、基準となる物事や物と一致させることを表す。これに対し、語義7では、複数の人の、それぞれの精神状態、思考内容、発話内容を照らし合わせることで、あるいは調整することで、複数の人同士によって共有、共感できる点を見出すということを表す。なお、語義5では、一致する物事や物(時計、ピント、薬、サービスなど)には、より明確で客観的な基準が存在する。一方、語義7では、一致する対象は「心、力、意見、話」のように、精神状態(物事への取り組み方や姿勢)、思考内容、発話内容である。つまり、語義5のように明確で客観的な基準が存在するわけではなく、個人による程度差のあるものである。したがって、一致する対象は、語義7では語義5に比べてやや客観性が低い(やや主観性が高い)存在であるといえる。
類義語・反義語
類義語合わす、一致させる、合致させる
反義語


8.確認他動詞中級★★
表記合わせる
人が、ある物事が、基準となる(正しい、もしくは確かな)物事と一致するかどうかを、両者を照らし合わせて確認する。
文型
<人>が<こと>を<こと>と合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
石川さんは、自分の答えを友達の答えと合わせた
「洋子さん、模試が終わってから答えを模範解答と合わせてみたら、なんと全問正解だったんだって」「さすが洋子さんだね」
前回の試験では、模範解答と合わせた結果、3割しか正解していなかった。
田中先生は、学生から提出された訳文を、原文と合わせて細かくチェックされたそうです。
今回改めて、定番と言われていた翻訳を原文と合わせてみたところ、その翻訳には実に多くのミスがあるということが明らかになった。
この訳本を、ぜひ、原典と合わせながら読み進めてみてください。
コロケーション
<こと>を合わせる
答え、回答、翻訳、訳、訳本
<こと>と合わせる
答え、模範解答、正答、原文、原典
<様態>合わせる
まず、しっかり、初めて、これから、すぐ(に)
解説
語義5では「合わせる」が、ある事物Xを、基準となる事物Yに一致させることを表す。これに対し、語義8では、XをYに一致させることではなく、XがY(基準としての、正しい、あるいは確かな物事)と一致するかどうかを、両者を照らし合わせて確認することを表す。(つまり、語義8では、XとYとの一致は、確認の際に期待される状態であるといえる。)
誤用解説
通常、語義8では照らし合わせる対象の物事(X)と基準となる物事(Y)をヲ格とト格で表し、ニ格は用いない。
 兄は自分の答えを友達の答え合わせた。
 横井さんは訳本を原典合わせてみることにした。
 兄は自分の答えを友達の答え合わせた。
 横井さんは訳本を原典合わせてみることにした。
類義語・反義語
類義語照らし合わせる、照合する、チェックする
反義語


9.調和他動詞中級★★
表記合わせる
人が、あるものや物事の性質を、異なるものや物事の性質と調和させる。
文型
<人>が<もの・こと>を<もの・こと>に[と]合わせる
<人>が<もの・こと>と<もの・こと>(と)を合わせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
父は、ネクタイをスーツに合わせました
常々、カーテンをこの部屋の雰囲気に合わせたいと思っています。
「ブラウスの色、そのスカートの色に合わせた方がいいんじゃない?」「やっぱり、この組み合わせ、違和感あるよね」
メインとなる食材の色とワインの色を合わせてみましょう
当店では、お客様一人一人のイメージに合わせたカクテルを提供致します。
「アルバイトをするにあたって、髪形や服装に関する規定はございますか?」「この店の雰囲気に合わせてさえくれれば、髪形も服装も自由だよ」
コロケーション
<もの・こと>を合わせる
ネクタイ、カーテン、色、服装、髪型
<もの・こと>と[に]合わせる
スーツ、洋服、色、雰囲気、イメージ
<様態>合わせる
しっかり、いつも、きちんと、できるだけ、もっと
解説
語義9は語義4と、「合わせる」が、「複数の事物をある点において一致させる」ということを表す上では共通している。しかし、「ある点」が語義4では「サイズ(大きさ、幅、奥行き、高さなど)や形状」であるのに対して、語義9では「性質」であり、抽象度が高い。また、語義4では「サイズや形状を一致させる」ことに焦点が当てられるのに対し、語義9では「性質を調和させる(矛盾や衝突がなく、釣り合いが取れている状態にする)」こと、すなわち「対象に対するプラスの評価を生み出すこと」に焦点が当てられる。
誤用解説
「XをYに合わせる」という文型や、「Yに合わせたX」という形式において、「イメージ」、「雰囲気」などの語は、通常、(調和させる際の基準となる)Yとして表されやすい。
 店の雰囲気を、店員の髪型や服装に合わせる。
 店員の髪型や服装を、店の雰囲気に合わせる。
 カクテルに合わせたお客様のイメージ
 お客様のイメージに合わせたカクテル
類義語・反義語
類義語合わす、調和させる
反義語


合わせるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>を合わせる
二人は墓石の前でを合わせて合掌した。
(佐伯泰英著 『朱印!』, 2002, 913)
半解凍してだしとしょうゆ各少々で煮、練りごま、三温糖、しょうゆを合わせた衣で和えます。
(幕内秀夫著;検見崎聡美料理 『粗食のすすめお弁当レシピ』, 2001, 596)
<様態>合わせる
ドレッシング材料をよく合わせておく。
( 『いきなり!黄金伝説。超節約レシピ50』, 2000, 596)
<数量>と<数量>(と)を合わせる
738は,700と30と8をあわせた数です。
(新編 新しい算数 2上, 2006, 小)
<こと>と<こと>(と)を合わせる
簿記では,現金,預金,建物,債権,商品などを積極財産,借入金,その他の債務を消極財産とし,両者を合わせて単に財産ということがある。
(前林和寿ほか著 『簿記の基礎』, 2003, 336)
<こと>を合わせる
私は視線を合わせず、机の上の木目をじっと見つめて待った。
(文學界, 2001, 文学/芸術)
入学式の朝にふたりはバスの中でをあわせていたんだそうだ。
(榎木洋子著 『Step out』, 1996, 913)
<様態>合わせる
スカウトの方と初めて顔を合わせるのはいつ頃なんですか?
(斉藤直隆編著 『プロ野球選手という生き方』, 2004, 783)
<もの>を合わせる
「どうしてクツを自分の足に合わせてみなかったんだ」と訊かれると、男は、「だって、メモの方が確かじゃないか」
(中嶋秀隆,ケン・ジョーカー編著訳 『ピガサス101』, 2005, 913)
<もの・身体の一部>に合わせる
雪駄を買うときこそ、に合わせて鼻緒をすげてくれる履き物専門店に行くべき。
(塙ちと著 『男のきもの達人ノート』, 2003, 593)
<こと>を合わせる
新しいGパンを買おうと思うんですが、太ももが太く、太ももにサイズを合わせるとふくらはぎが余ります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, ファッション)
<こと>に合わせる
タイトル部分の入力が終わったら、描いた画像のサイズに合わせて描画キャンバスのサイズを変更します。
(仲田玲子著 『Word 2002お仕事帖』, 2002, )
<こと・もの>を合わせる
その後,対物レンズを遠ざけながらピントを合わせる。
(理科基礎 自然のすがた・科学の見かた, 2006, 高)
ウィンドウの大きさを変更するには、ウィンドウの枠の部分にマウスカーソルを合わせます。
(諫山研一,藤本裕之,三谷森著 『KNOPPIXではじめるLinux入門』, 2003, 007)
<こと・もの>に[と]合わせる
何を食べるかは、自分の生活ペースに合わせて、あなたが選んで構いません。
(アンナ・セルビー著;佐藤志緒訳 『水の美容健康法』, 2003, 498)
<こと>を合わせる
動いている球をよく見てタイミングを合わせ、正確なスイングで打ち返せるようにする。
(仲沢伸一著 『上達する!バッティング』, 2003, 783)
<こと>と[に]合わせる
決まった時間での勤務ではありませんので、一定の期間内でご自身と訪問先の都合に合わせて調整していただけます。
(広報なごや 守山区版, 2008, 愛知県)
<こと>を合わせる
町内でを合わせ、公園や道路をきれいにしましょう。
(広報あきた, 2008, 秋田県)
<人>と[に]合わせる
その場になったらぼくに話を合わせて、きみはただにこにこしててくれればいいよ。
(ノーラ・ロバーツ著;芹澤恵訳 『盗まれた恋心』, 2004, 933)
<もの・こと>を合わせる
ベッドと床の濃淡にピンクのカーテンを合わせ、全体を同系色の柔らかいトーンでまとめます。
(渋川育由,高橋ユミ著 『インテリア配色事典』, 1991, 757)
<もの・こと>と[に]合わせる
今日では、ファッション、マスコミ、ITの業界で、スーツにTシャツを合わせた人に出会うことは珍しくない。
(シャルロット・ブリュネル文 『Tシャツ・ブック』, 2003, 589)






























あんまり顔合わせたくないんだ。
俺たちも急ぎの仕事だけ片づけたら、時間合わせて行くから。
口裏を合わせる

意味
ある人が異なる人(々)と、あらかじめ相談して話の内容が食い違わないようにする。
用例
メンバー全員が、まるで口裏を合わせたかのように、山本さんを擁護した。
コーパスからの用例
船長は、船が難破して積荷が海に没したようによそおうため、ボートに荷を積みかえて海岸にはこび、船底の弁をあけて船を沈めた、荷は船長たちによって換金され、乗組員たちは分配にあずかり、一同、口裏をあわせたのでその行為は発覚せずに終った。 (吉村昭著 『海の祭礼』, 2004, 913)
合わせる顔がない

意味
ある人が、本人に関する過去の何らかの出来事に関して面目なく思い、別の人の前に出られないような気持ちである。
用例
あんなにひどいことを言ってしまって、もう、彼女に合わせる顔がありません。
コーパスからの用例
仇をうってやらねば、地獄であれらと合わせる顔がないような気がする。 (司馬遼太郎著 『ペルシャの幻術師』, 2001, 913)
辻褄を合わせる

意味
人が、ある物事に関して、筋道や理屈が通るようにする。
用例
必ず、決算報告の日までに収支の辻褄を合わせなさい
コーパスからの用例
補助金を削る分を税源移譲でつじつまを合わせる、その種の技術論に矮小化されている三位一体改革論に惑わされてはならない。(佐々木信夫著 『地方は変われるか』, 2004, 318)
複合動詞 V1

合わせ持つ、合わせ出す、合わせ始める、合わせ続ける、合わせかける
複合動詞 V2

編み合わせる、有り合わせる、居合わせる、行き合わせる、打ち合わせる、生まれ合わせる、埋め合わせる、思い合わせる、掛け合わせる、考え合わせる、組み合わせる、繰り合わせる、誘い合わせる、示し合わせる、突き合わせる、継ぎ合わせる、繋ぎ合わせる、照らし合わせる、問い合わせる、綴じ合わせる、泊まり合わせる、取り合わせる、睨み合わせる、縫い合わせる、練り合わせる、乗り合わせる、張り合わせる、引き合わせる、混ぜ合わせる、待ち合わせる、見合わせる、結び合わせる、巡り合わせる、持ち合わせる、行き合わせる、
複合名詞

打ち合わせ、色合わせ、埋め合わせ、音合わせ、貝合わせ、顔合わせ、掛け合わせ、口裏合わせ、組み合わせ、繰り合わせ、誘い合わせ、示し合わせ、炊き合わせ、食べ合わせ、手合わせ、突き合わせ、継ぎ合わせ、繋ぎ合わせ、照らし合わせ、問い合わせ、取り合わせ、睨み合わせ、縫い合わせ、練り合わせ、乗り合わせ、鉢合わせ、張り合わせ、引き合わせ、混ぜ合わせ、待ち合わせ、見合わせ、向かい合わせ、結び合わせ、巡り合わせ、面合わせ、持ち合わせ、読み合わせ、行き合わせ、合わせ糸、合わせ鏡、合わせ薬、合わせ酢、合わせ味噌
合わせる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形あわ
ない形あわない
~なかったあわなかった
ます形あわせ
~ませんあわせま
~ましたあわせした
~ませんでしたあわせまんでした
~ときあわるとき
ば形あわれば
意向形あわせ
て形せて
た形せた
可能形あわせらる (あわせる)
受身形あわせら
使役形あわせさ
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