温めるのコアイメージ

1.身体を適温に他動詞中級★★
表記温める、暖める   ※「温める」のほうがよく用いられる。
人や動物が身体や身体の一部の温度を上げて適温にする。
文型
<人・動物>が<身体・身体の一部>を温める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ウォーミングアップをして身体を温めた
ストーブにあたり、冷えた指先を温めることにした。
スズメが陽だまりで小さな体を温めていた。
腰痛のときは、カイロで患部を温めれば楽になるよ。
この子はこのままでは凍死してしまう。毛布でくるんで温めよう
女の子は寒い寒いとふるえながら、はあっと息を吐いて手を温めた
コロケーション
<人・動物>が
太郎、花子、サル、鳥、猫
<身体・身体の一部>を
① 身体:体、全身
② 身体の一部(外部):足、手、腰、指先、のど
③ 体の一部(内部):筋肉、腸
<手段>で
① 暖房器具:ストーブ、カイロ、火、こたつ、湯たんぽ
② 場所:露天風呂、陽だまり
③ 食べ物:熱いコーヒー、温かな食べ物
④ その他:湿布、毛布、息
<様態>
じっくり、しっかり、ゆっくり、体の芯から、内側から
<程度>
少し、ちょっと、さらに
非共起例
<手段>で
 熱があるので氷で温めた
 熱があるので氷で冷やした
「温める」は、人が人間の体やその一部の温度が低い場合、その温度を上げることによって適温にする場合に使われる。したがって、温度を下げて適温にする場合に用いることはできない。
解説
「温める」の「語義1」は、「人や動物が身体や身体の一部の温度を上げて適温にする」ことを表す。高い状態から適温にする場合には「冷やす」が使われる。
誤用解説
 こたつで長い時間、身体を温めていたら、低温やけどをした。
 こたつに長い時間入っていたら、低温やけどをした。
「温める」は、適温にする場合に用いられる。「低温やけど」のように望ましくない結果が生じれば、その温度は適温とは言えない。したがって「温める」を用いることはできない。
類義語・反義語
類義語温かくする、熱する
反義語冷ます、冷やす


2.ものを適温に他動詞中級★★
表記温める、暖める   ※「温める」のほうがよく用いられる。ただし、空間の温度を適温にする場合には「暖める」もよく使われる。
人がものの温度を上げて適温にする。
文型
<人>が<もの>を温める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
目玉焼きを作ろうと思ってフライパンを温めた
カフェオレを作るからちょっと待って。今、電子レンジでミルクを温めている
今日は寒さのせいか、車の調子が悪い。エンジンを温めてから動いたほうがよさそうだ。
今夜は食事を作る時間がない。レトルトカレーを温めよう
風呂に入る前に浴室を暖めると、ヒートショックを防げる。
風邪を引いているんだから、ストーブをつけて部屋を温め、はやく寝たほうがいい。
コロケーション
<もの>を
① 食品:牛乳、ごはん、食事、料理、カレー
② 調理器具や容器:オーブン、フライパン、急須、鍋、カップ
③ 調理油:油、ごま油、バター
④ 場所:室内、部屋、床、地面、廊下、車内
<手段>で
① 器具:レンジ、オーブン、エアコン
② 温かいもの:弱火、とろ火、中火、ぬるま湯、熱湯
<様態>
ゆっくり、さっと、徐々に
<程度>
少し、ちょっと、しっかり
非共起例
<もの>を
 そろそろ入ろうかと、風呂を温めた
 そろそろ入ろうかと、風呂を沸かした
 お湯を温めてお茶を入れた。
 お湯を沸かしてお茶を入れた。
「風呂に入る」「お茶を飲む」などの目的のために「水」の温度を上げて適温にする場合があるが、この場合「温める」ではなく「沸かす」を用いる。
解説
「語義1」が「人や動物が身体や身体の一部の温度を上げて適温にする」ことを表すのに対し、この「語義2」は、「身体や身体の一部」ではなく「もの」の温度を上げて適温にすることを表す。
適温がどのような温度であるかは、温度を上げる目的によって異なる。たとえばケーキを焼くためのオーブンの温度であれば200度程度、人が過ごす部屋の室温であれば20度程度、「氷を温めて溶かそう」という場合であれば、0度以上となる。
「温める」行為は一般に「人」が行うが、やや文章語という印象はあるものの「太陽が外気を温めた」のように言うこともできる。
誤用解説
 熱くて飲めないお茶を、しばらく置いて温めた
 熱くて飲めないお茶を、しばらく置いて冷ました
「温める」はものの温度が低い場合、その温度を上げることによって適温にする場合に使われる。
類義語・反義語
類義語熱する、沸かす、加熱する、暖房する
反義語冷ます、冷やす


3.構想を大切に他動詞上級
表記温める、暖める   ※「温める」を用いるのが一般的である。
人が、時間をかけ、構想などを公にするにふさわしいものにしようとする。
文型
<人>が<構想>を温める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
思いついたアイデアを温めるのもよいが、それに固執するのはよくない。
社長は、新規の分野に参入する構想を温めていたが、不況により断念した。
太郎は、会社に勤めながら、起業する計画を温めていた
叔母は長年温めた夢を実現し、小さな店を開いた。
その計画は太郎によって大切に温められ、数年後、世間を驚かせることになった。
大きな賞を受賞の後に小説を書くのをやめた作家が、昨年、実に10年もの間温めていた作品を発表した。
stairs長年温めてきた夢を、ついに実現することになりました。
コロケーション
<構想>を
構想、プラン、計画、企画、夢
<様態>
大切に、大事に
非共起例
<構想>を
 彼は明日のプレゼンの構想を温めている
 彼は明日のプレゼンの準備をしている
「語義3」の「温める」は「時間をかけ、構想などを公にするにふさわしいものにしようとする」ことを表す。「明日のプレゼン」の場合、公に発表する日は目前であり、すでに「時間をかける」ことはできない。したがって「温める」と言うことはできない。
解説
「語義2」が「ものの温度を上げて適温にする」ことを表すのに対し、この「語義3」は、構想などにエネルギーを注いで検討することで温度ではなく質を上げ、公にするにふさわしいものとしようとすることを表す。
誤用解説
 彼は周囲の人に積極的に相談してプランを温めている
 彼は周囲の人に積極的に相談してプランを練っている
「温める」は、「考えなどを公にするにふさわしいものにする」ために大切に検討することを表す。「周囲の人に積極的に相談」をすれば、公にしているようなものである。したがって「温める」と言うことはできない。
類義語・反義語
類義語大切にする、練る
反義語捨てる


4.過去を大切に他動詞上級
表記温める、暖める   ※「温める」を用いるのが一般的である。
人が過去に築いた人間関係や記憶をときに思い出して大切にする。
文型
<人>が<過去の人間関係や記憶>を温める
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
同窓会に出かけ、中学校時代の先生や友人との旧交を温めた
学生時代に出会った二人は、それぞれ別の道を歩みながらも友情をあたためてきた。
長い間途絶えていた隣村との関係を取り戻し、友好を温めるための祭りが行われた。
久々に皆で集まって、旧交を温めよう
年に数回行われるイベントでは、会員同士の親交を温めます
毎年この場所を訪れては、過ぎし日の思い出をひとり温めている
コロケーション
<過去に築いた人間関係や記憶>を
① 過去に築いた人間関係:旧交、交流、親交、友好、友情
② 記憶:思い出、日々
<様態>
大切に、大事に
非共起例
<過去に築いた人間関係や記憶>を
 学生時代、彼とはよく意見が対立した。今も対立を温めている
 学生時代、彼とはよく意見が対立した。今も対立を深めている
「温める」は、関係を大切にすることを表す。「対立」は一般に好ましくない関係である。したがって「対立を温める」と言うことはできない。
<過去に築いた人間関係や記憶>を
 あの会社とは、昔から取引を温めている
 あの会社とは、昔から取引を続けている
 隣国との連携を温めている
 隣国との連携を密にしている
「語義4」は、「過去に築いた人間関係や記憶」について言うのであって、継続的な関係について言うのではない。したがって、継続している「取引」や「隣国との連携」について「温める」と言うことはできない。
解説
「語義2」は「ものの温度を上げて適温にする」ことを表すのに対し、「語義4」は「もの」ではなく「過去の人間関係や記憶」について、「温度を上げて適温にする」のではなく、「ときに思い出すなどして活性化する」ことを表す。
「親交を温める」という表現は誤りであると見る向きもあるが、用例はよく見られる。
誤用解説
 テニス部に入部して、友情を温めることにした。
 テニス部に入部して、友人を作ることにした。
「語義4」は、過去の関係などを大切にすることを言うのであって、新たに作られる関係を大切にする場合には使えない。
類義語・反義語
類義語大切にする、大事にする
反義語ないがしろにする、忘れる


温めるの全体解説 「温める」は、「人や動物が身体や身体の一部の温度を上げて適温にする(語義1)」(例:ストーブで手を温める)ことを基本的な意味とする。「人や動物の身体」ではなく、「もの」について、その「温度を上げて適温にする」ことを表すのが「人がものの温度を上げて適温にする(語義2)」(例:オーブンを温める)である。「語義1」で言う「適温」は、生命を保ったり運動したりするのにふさわしい体温であるが、「語義2」で言う「適温」は、「オーブン」の適温、室内の適温の場合のように、状況によって異なる。
また、「もの」ではなく「構想など」について、「温度を上げる」のではなく「質を上げ」、「適温にするのではなく」「発表するのにふさわしいものにしようとする」ことを表すのが「語義3」、すなわち「人が、時間をかけ、構想などを公にするにふさわしいものにしようとする」(例:新しい小説の構想を温める)である。
さらに、「過去」について、まるで温度をあげるかのように、思い出すなどして活性化し、消えないようにすることを表すのが「語義4」、すなわち「人が過去に築いた人間関係や記憶をときに思い出して大切にする」(例:旧交を温める)である。
「温める」は、日常的な話しことばにおいて、「あっためる」と言うこともある。
























▶全例文を聞く
<人・動物>が
そのが手を暖める暖房がなかった。
(鈴木健二著 『自分学のすすめ』, 1982, 159)
<身体・身体の一部>を
お茶にはリラックス作用や、を温める作用があります。
(レタスクラブ, 2003, 一般)
おなかが冷えているときは、腹巻きをしたり、おなかをカイロで温めるのも有効です。
(帯津良一総監修 『自分で治す大百科』, 2003, 598)
<手段>で
真子はかじかんだ手を缶コーヒーで温めながら、白い息を吐き出す。
(TBS編;百瀬しのぶ,大獄典子ノベライズ 『悪いオンナ』, 2000, 913)
熱いお風呂で体を温めてから寝酒を飲みに行きました。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<様態>
首まわりはしっかり温めるのがあったかファッションの基本です。
( 『「冷え」解消でグングンやせる元気になる!』, 2003, )
岩盤浴は、サウナと違いじわじわと体の芯まで温め、老廃物を汗と一緒に排出します。
(広報わたり, 2008, 宮城県)
<程度>
夕飯はおでんを煮て更に体を暖めた。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<もの>を
牛乳をあたためて飲むと、冷たいままのものよりも消化がよくなります。
(大久保洋子監修;寺嶋則子料理 『ママといっしょにワクワククッキング』, 2001, )
オイルヒーターは快適に部屋を暖めてくれるのはいいが、先月の電気料金がこれまでの倍以上になっていて驚く。
(Yahoo!ブログ, 2008, 家庭)
<手段>で
昼は前日の残りを電子レンジで温める。
(京極高宣ほか編著 『ケアワーク入門』, 1992, 369)
ベーコンを加えて炒め、カリッとしたらかぼちゃを加えてさっと混ぜ、弱火でそのまま温めておく。
(オレンジページ, 2003, 一般)
<様態>
冷たいものはゆっくり口で暖めながら飲んだり食べた方が良いです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 一般教養)
<程度>
カット野菜をレンジで少し温めて、フライパンで炒めて、塩、ソースで味付けて玉子を絡めた。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
ひじきの煮物は鍋に入れ、火にかけて軽く温める。
( 『簡単!おいしい!煮もの上手』, 2005, 596)
<構想>を
信長は本城を安土に置き、岐阜から移転する構想をあたためはじめていた。
(津本陽著 『下天は夢か』, 1989, 913)
このお母さんは、「早く子どもが独立してくれたら、もう少しやりたいことの手を広げられる」と、十年くらい先のを温めているようであった。
(斎藤茂太著 『女性なら誰でも「母親」になれるのか』, 2004, 367)
<様態>
恋愛に対して立派な考えを持ってるのだから、それを大切に温めておこうね。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
<過去に築いた人間関係や記憶>を
メンバーには、久しぶりにお会いする方も多く、旧交を温める。
(Yahoo!ブログ, 2008, 政界と政治活動)
かつての同僚がこちらで再会し、地上という生存競争の荒波の中で培った友情を温め合うという風景はけっしてこの二人にかぎったことではありません。
(G.V.オーエン著;近藤千雄訳 『ベールの彼方の生活』, 2004, 147)
<様態>
あまり焦らないで、じっくりと親交を温めていくつもりでつきあうことが、A型とうまくいく最大のポイントです。
(能見俊賢監修 『血液型「行動学」研究室』, 2004, )






























長年温めてきた夢を、ついに実現することになりました。
卵を温める。

意味
鳥が卵をかえすために、腹の下などに抱いて温める。
用例
軒の下にツバメが巣を作り、卵を温めている
コーパスからの用例
動物には珍しく“一夫一妻”を頑固に守るアホウドリは、オス、メス交代で卵を温め、一年近くもかけて子どもを育てます。
懐を暖める

意味
金銭的に豊かにする。
用例
あの塾の先生は、自分の懐を温めるために、裏口入学のあっせんをしているといううわさだ。
コーパスからの用例
政府の対策の中身で、直接に国民の懐を温める対策は二兆円の特別減税だけであります。(国会会議録1998)
席を暖める暇/間がない。

意味
一か所にとどまっている時間もないほど忙しい。
用例
昨日は店にたくさんの客が来て混雑し、席を暖める暇もなかった。
コーパスからの用例
庶務の部員が日がな一日デスクに向かってソロバンをはじいているのに対して、技術部のスタッフたちは毎朝出社すると、席をあたためる間もなく工場に飛び出し、油やインクにまみれながら工員たちと一緒になって機械の点検にかけずりまわる(杉山隆男著『メディアの興亡』1989)
心を温める

意味
出来事や行動が、心を和やかにする。
用例
例文
コーパスからの用例
コーパス用例
ベンチを温める。

意味
試合に出場せず長い間、待機場所のベンチにいる。
用例
姉と私は同じバスケ部にいました。姉はチームの花形選手でしたが、私はいつもベンチを温めていました
温める(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形あたた
ない形あたたない
~なかったあたたなかった
ます形あたため
~ませんあたためま
~ましたあたためした
~ませんでしたあたためまんでした
~ときあたたるとき
ば形あたたれば
意向形あたため
て形あためて
た形あためた
可能形あたためら
受身形あたためら
使役形あたためさ
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