歩くのコアイメージ

1.足で移動自動詞初級★★★
表記歩く
人、動物などが足を動かして前に進む。
文型
<人・動物>が歩く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大勢の人が道を歩いている
向こうから友達が歩いてきたのに気づいた。
犬と町を歩くときには、人の前ではなく、左側を歩かせてください。
川の浅いところを歩いて渡った。
健康のため、毎日5キロ以上歩くことにしています。
上を向いて歩こう
コロケーション
<地点>から<地点>まで
駅、家、自宅、会社、町
<場所>を
公園、庭、街、山、海岸
<経路>を
道、歩道、夜道、廊下、線路沿い
<位置>を
(~の)前、(~の)後ろ、~の上、周り、先頭
<距離>を<時間>で
<距離>1キロ <時間>10分
<様態>で
はだし、つま先、~足取り、速足、千鳥足、大股、がに股、裸
<履物>で
靴、下駄、ハイヒール
<場所>で
プール、水中、平地
非共起例
<場所>で
 プールで歩く。?プールを歩く。×道で歩く。○道を歩く。?公園で歩く。○公園を歩く。うちの1歳になる子どもが、昨日公園で初めて歩いた。
「プールで歩く」は、「プールで泳ぐ」と同様に「場所で+動作」の構文であり、プールの中で歩く動作をすることが強調され、移動は背景化している。「道を歩く」の「道」は経路であり、経路は「を」で表される。物理的に経路はなくても、歩くことにより、軌跡が認識される場合は、「公園を歩く」のように、経路を表す「を」が使われる。同じ「公園」でも経路が認識されない場合は「で」が使われる。「昨日公園で初めて歩いた」の例では、歩くという動作が注目され、「移動」の意味は背景化し、軌跡も意識化されない。
解説
一方の足を地面や床につけたまま、他方の足を上げ、前に振りだし、あまり速くなく、前に移動する。両足とも同時に地面や床から離れて前進すると「走る」になる。両方の足を地面や床につけたまま移動すると「摺り足」になる。「歩く」は前方向への移動が普通で、無標なのに対し、横方向への移動の場合は、「横に歩く」というように方向を明示しなくてはならない。「後ろに歩く」も同様。


2.移動・旅行自動詞中級★★
表記歩く
複数の地点に寄りながら、広い範囲や長い距離を自分の足または交通手段を使って長い時間をかけて移動する。
文型
<人>が<場所>を歩く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
若い時に世界中を歩いた経験が今、生きている。
アルバイトでお金を貯めて、アフリカ各地を歩く旅に出るつもりだ。
これまでいろんな町を歩いているが、この町が一番気に入った。
各地の有名なお城を訪ねて歩きながら、その土地のおいしいものを食べるのが趣味です。
歩いて巡る温泉の旅が趣味です。
旅行が好きで、すでに50か国以上を歩いています
stairs現在の東京を出発し、東北地方、北陸地方を歩いて書いた旅行記『奥の細道』はたいへん有名です。
コロケーション
<場所>を
世界、~中、観光地
解説
主に旅行で使われる。ある範囲内にある複数の場所を訪ねながら、時間をかけて移動することを表す。観光バスで観光地を巡るなど、徒歩を伴わない場合でも使える。単に往復する場合には使えない。例えば、ある温泉が目的でその温泉まで移動し、そこに留まり、帰って来た場合には使えない。
類義語・反義語
類義語巡る
反義語


3.移動自動詞中級★★
表記歩く
次から次へと同じことを繰り返しながら移動する。
文型
<人>が~(て)歩く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
引退したら、日本全国のおいしいラーメンを食ベ歩いてみたい。
毎晩そんなに飲み歩いていたら、体を壊しますよ。
避難勧告が出たあと、消防は残っている人がいないか、一軒、一軒、見て歩いた
避難所では、市の職員が避難した人全員に水と毛布を配って歩いていた
郵便局員はバイクを使うことで、小さい路地まで入って郵便を配って歩くことができる。
車で廃品を回収して歩いて、生計を立てている。
stairs町内会の人たちと。仏像を見て歩くんですって。
コロケーション
解説
「食べ歩く」「飲み歩く」「売り歩く」「練り歩く」のように複合動詞として、あるいは「食べて歩く」「飲んで歩く」「売って歩く」「見て歩く」「配って歩く」「回収して歩く」のように「~て」とともに使われ、多くの地点を次から次へと移動して動作を繰り返すことを表す。移動の手段は必ずしも徒歩でなくてもよく、車などで移動する場合でも使えることから、この用法の「歩く」には徒歩の意味はなく、移動の意味のみを表す。なお、同じ形の「持ち歩く」「足を引きずって歩く」は語義1であり、「歩く」様態を表す。


4.塁を進める自動詞上級
表記歩く
野球でフォアボールによって打者が一塁に、走者が次の塁に進む。
文型
<塁>に・へ歩く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
フォアボールで打者を歩かせてしまった。
満塁の場面でフォアボールを出し、3塁走者に歩かれて押し出しの1点を入れられた。
次は強打者だから敬遠して歩かせよう
四球で1塁に歩いた打者が、次のヒットでホームまで帰って得点した。
ピッチャーの制球が悪いから、すでに5人も歩いている
歩かせられてばかりで打たせてもらえないから大量得点に結びつかない。
コロケーション
<塁>に
1塁、2塁、3塁、ホーム
解説
野球の用語。ゆっくりと移動することを表し、普通の場合と異なり、次の塁に進むことが保証されるので、速く走って次の塁に進む必要がない。


5.経験する自動詞中級★★
表記歩く
人生など長年にわたる経験をする。
文型
<人・組織>が歩く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
これから二人でともに助け合って、同じ道を歩いて行こう。
人生の裏街道しか歩いたことのない人が急に表舞台に立たされて、戸惑っているようだ。
これまで親が決めた道を歩かされてきたが、これからは自由に生きたい。
わが社がこれまで歩いて来た10年を振り返ってみよう。
君とともに歩いた10年を懐かしく思い出す。
これからお二人で幸せな人生を歩いて行ってください。
コロケーション
<道>を歩く
(比喩)道、裏道、裏街道
<長い時間>を
人生、時代、一生
非共起例
<道>を歩く
 道、○裏道、○裏街道、×道路、×通り、×高速道路
「人生は旅である」という概念メタファーに基づく表現であるが、この場合の旅は昔ながらの歩いて旅をすることである。そのため、比喩であっても車で走る「道路」などは使われない。
解説
この語義では、「歩く」よりも「歩む」の方がよく使われる。
類義語・反義語
類義語歩む
反義語


歩くの全体解説 古語では、「あゆむ」が歩行に、「ありく」「あるく」が徒歩のほかに乗り物も含めて移動することを表した。現代語では、「歩む」は現代口語では具体的な歩行や移動には使われず、文語的な表現または比喩的意味で用いられる。語義解説でも触れたとおり、比喩の場合、「歩む」ととも「歩く」も使われるが、「歩む」の方が多く使われる。なお、名詞の形「歩み」は比喩のほかに具体的な歩行も表すことができる。「牛の遅い歩み」
























▶全例文を聞く
<地点>から<地点>まで
から歩いて10〜15分ほどです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 国内)
見せたいものがあるから、まで歩いていこう。
(国語 2, 2005, 中)
<場所>を
昼を過ぎると、食後の散歩に公園を歩く、近くの公務員や会社員で賑やかになってきた。
(藤井弘司著 『探偵手帳』, 2003, 673)
午前中はたっぷり保護区のを歩き、午後はスカイウォークに出かけた。
(山口由美著 『世にもマニアな世界旅行』, 2004, 290)
<経路>を
瀬戸橋を渡り、細いをぶらぶら歩く。
(中江克己著 『江戸の遊歩術』, 2001, 210)
日傘を差し、乳母車を押す母親が歩道を歩いていた。
(大石英司著 『新世紀日米大戦』, 1998, 913)
<位置>を
を歩いていた由花が、小走りに戻ってきて言った。
(志村一矢著 『月と貴女に花束を』, 1999, 913)
真帆は無言で二人の後ろを歩いていた。
(六道慧著 『蝶々夫人の事件簿』, 1996, 913)
<距離>を<時間>で
諏訪湖一周16キロを歩く時もある。
(石川文洋著 『てくてくカメラ紀行』, 2004, 291)
<様態>で
傘を持っていないのでコートの襟をたて早足で歩いた。
(塩山千仞著 『ワーグナー紀行』, 2004, 762)
スピーカーで名前を呼ばれた者が、重たい足どりで受付に歩いていく。
(ジョナサン・ケラーマン著;北村太郎訳 『大きな枝が折れる時』, 1989, 933)
<履物>で
下駄で歩く要領を体得できたら、草履でも雪駄でも颯爽と歩くことがかないます
(塙ちと著 『男のきもの達人ノート』, 2003, 593)
<場所>を
世界中を自分の足で歩き、この眼で見てきた私は、真実を知ることの大切さを痛感しています。
(中丸薫著 『国際テロを操る闇の権力者たち』, 2003, 319)
<道>を歩く
二人はそれぞれのを歩くことにした。
(高毛礼誠著 『あなたを忘れきれない男たち』, 1993, 913)
金融業界の裏街道を歩いてきた人物に特有のあくの強い顔をしている。
(梁石日著 『裏と表』, 2004, 913)
<長い時間>を
子どもの幸せを妻の分までも強く強く思って今後の人生を歩いていきます。
(にしたけし著 『老人と娘』, 2003, 913)






























現在の東京を出発し、東北地方、北陸地方を歩いて書いた旅行記『奥の細道』はたいへん有名です。
町内会の人たちと。仏像を見て歩くんですって。
複合動詞 V1

飲み歩く、食べ歩く、さまよい歩く、訪ね歩く、持ち歩く、巡り歩く
複合動詞 V2

歩き出す、歩き始める、歩き終える、歩き終わる、歩き切る、歩き続ける、歩きすぎる、歩き回る
複合名詞

歩きタバコ、食べ歩き、飲み歩き、伝い歩き
歩く(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
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