現す・表すのコアイメージ

1.出現他動詞初級★★★
表記現す・現わす   ※以前は「現わす」と表記されていたが、現在は主に「現す」が用いられる。まれに「顕す・顕わす」が使われることがある。
それまでなかなか他者に認識されなかった人や動物や物が、その本来の姿や性質を(主に視覚的に)認識されるようにする。
文型
<人・動物・物>が<姿・性質>をあらわす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
それまでメディアに出ることを極度に嫌っていた作家がついに姿をあらわした
ついに報道陣の前に全貌をあらわした新型戦艦は、さながら海の城であった。
雲が切れ、山々がようやくその全容をあらわしたとき、歓声が上がった。
しばらくは紳士的に受け答えをしていたが、とうとう本性をあらわし始めた。
謎の生物が正体をあらわし、人々を驚かせた。
月がうっすらと輪郭をあらわすと、ようやく周りの様子が見えてきた。
コロケーション
<人・動物・物>が
王、作家、戦艦、謎の生物、山、月
<姿・性質>を
姿、正体、本性、全貌、全容、素顔、輪郭
<場所>に
報道陣の前、人前、画面上、目の前、メディア
<場所>から
暗がり、雲間、機内、物陰、裏手
<様態>
突然、悠然と、のっそり(と)、うっすら(と)、ついに、とうとう、やっと、ようやく、やがて、再び
非共起例
<姿>を
 人前に太った体をあらわしたくない
 人前に太った体をさらしたくない
「あらわす」は、存在を示す「姿」とともに用いることはできるが、物理的な肉体を意味する「体」とともに用いることはできない。
解説
それまでなかなか他者に認識されなかった、あるいは意図的に認識されないようにしていた人が、自らの存在や本質を、他者に認識されるようにすることを表す。一方、主体が本来そういった意図を持たないであろう動物や物の場合は、実際には「話者がそれらを見た」ということについて、それらがあたかもそのような意図を持っていたかのように話者に感じられることを表している。
誤用解説
主体は主に話者以外の人や動物や物である。そのため、主体が話者自身の場合は容認度が下がる。
 時間になったら、裏手から姿を現そう
 時間になったら、裏手から登場しよう
類義語・反義語
類義語見せる、出す
反義語隠す、くらます


2.指示他動詞初級★★★
表記表す・表わす   ※以前は「表わす」と表記されていたが、現在は主に「表す」が用いられる。
その形・音・色・数値によって、認識しにくい実態を、認識しやすくする。
文型
<形・音・色・数値>が<実態>をあらわす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
漢字の部首には、その漢字の意味があらわされているから、覚えよう。
始業をあらわすベルが鳴り響いた。
多くの国で、赤は危険や食欲をあらわすそうだ。
地図の記号「〒」は郵便局をあらわしている
図Aは当社の収益の推移をあらわしております。
このデータは、宇宙に生命体が存在する可能性をあらわすものである。
コロケーション
<形>が
「〒」、漢字の部首、「(笑)」、日の丸、そろえて置いたナイフとフォーク、能の型、言語形式
<音>が
声色、ベル、メロディ、足音、拍手、ノック
<色>が
赤、白、緑色、黒塗り、蛍光色
<数値>が
データ、グラフ、平均値、角度、確率
<実態>を
意味、開始、危険、郵便局、収益の推移、可能性
<様態>
はっきり、明らかに、それとなく、如実に、特に
非共起例
<形>が
 カメラに映っていた彼の映像は、彼がこの事件の関係者であることをあらわしていた
 カメラに映っていた彼の映像は、彼がこの事件の関係者であることを意味していた
この場合の<形>である「防犯カメラの彼の映像」は、「彼がこの事件の関係者である」という事実に導くための根拠であり、認識しにくいものを認識しやすくするためのものではないため。
<音>が
 インターフォンが来客をあらわしています
 インターフォンが来客をつげています
「インターフォンが聞こえた」とは言えないことから、「インターフォン」は音を発する機械であって、音そのものではないため。
解説
この語義は、語義1における<人・動物・物>が<形・音・色・数値>へと拡張したものである。語義1では<人・動物・物>の姿や本質が、他者に認識されるようにすることを表していたが、この語義では、意味や感情など、視覚的に認識しにくいものが他者に認識されるようになることを表している。
誤用解説
<形・音・色・数値>について説明する用法であるため、意志を表す表現にはならない。
 地図の記号「〒」は郵便局をあらわしている
 地図の記号「〒」は郵便局をあらわそう
 地図の記号「〒」は郵便局をあらわさせる
類義語・反義語
類義語示す、指す、意味する、指し示す
反義語


3.表現他動詞初級★★★
表記表す・表わす   ※以前は「表わす」と表記されていたが、現在は主に「表す」が用いられる。
人が、視覚的に認識できない心理的なことや何かの実態を、言動や形によって、他者に認識されるようにする。
文型
<人>が<心理・実態>をあらわす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
遺憾の意が大臣からあらわされたが、遺族団は納得しなかった。
社長は感情をなかなか表情にあらわされないので、周りはいつもビクビクしている。
この国では、夫婦間でもなかなかお互いの気持ちを言葉であらわそうとしない。
彼は社会への怒りを詩であらわしている
長さをセンチであらわしたら、どのくらいになりますか。
当社の上半期の売り上げをグラフであらわしました
stairsもっと感情を表せ!!
コロケーション
<心理>を
気持ち、感情、不快感、怒り、喜び、敬意
<実態>を
景気、推移、結果、関係、性質、距離
<手段>で
言葉、計算式、形、グラフ、外国語、態度、身振り
<場所>に
表情、顔、態度、文章、画面上
<様態>
簡単に、わかりやすく
非共起例
<実態>を
 会社の経営をグラフであらわす
 会社の経営状態をグラフであらわす
「経営」は行為であるため、そのままでは誤りとなる。「あらわす」の対象となるには、それがどのようであるのかという<実態>でなければならないため、「経営状態」であれば自然な文となる。
解説
この語義3は、語義1から拡張したものである。語義1は、人や動物や物が、他者から認識されなかった自分自身の本来の姿や性質を認識されるようにすることであったが、この語義の場合、基本的に主体は人に限られる。そして、他者から認識されにくいものとして用いられるのは、「本来の姿」や「性質」ではなく、「心理」や「何かの実態」である。
誤用解説
 彼はその表情で実験の失敗をあらわしていた
 彼はその表情で実験の失敗を伝えていた
 彼はその表情で実験の難しさをあらわしていた
類義語・反義語
類義語示す、表現する、たとえる
反義語


4.著述他動詞中級★★
表記著す、著わす   ※以前は「著わす」と表記されていたが、現在は主に「著す」が用いられる。
人が、研究結果や経験で得た知識を、書物にして示す。
文型
<人>が<書物>をあらわす
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
戦禍を生き抜いた人の協力で、ようやくこの本があらわされたのである。
今回、先生があらわされた大著が国内外で大変な評判になっているそうです。
これまでの研究成果をまとめてあらわそうと思っている。
彼はこれまでに何冊も研究書をあらわしているが、詩集は初めてだ。
児童書としてあらわした本だったが、大人にも広く読まれた。
詩人として没後も人気のある彼だったが、詩集は意外にも一冊しかあらわさなかった
コロケーション
<書物>を
本、詩集、伝記、極意、方法論、ノウハウ
<数量>
数十冊、多く、全巻、いくつか、わずかに
<期間・時期>
これまで、生前、在学中、1か月で、引退後
<形態>で
英文、随筆、別名、全十巻、旧字体
非共起例
<書物>を
 彼は去年、画集をあらわした
 彼は去年、画集をだした
この語義の<書物>は、文字によるものでなければならないため。
<書物>を
 体験記をあらわして、編集者に送った。
 体験記をかいて、編集者に送った。
この語義の<書物>は、広く多くの人に知らされるものであるため、私的に執筆された段階のものについては使えない。
解説
語義1において自分自身の本来の姿や性質だったものが、この語義4では、自分の研究結果や経験で得た知識となっている。それを書物という文字の媒体によって広く知られるようにするということである。
誤用解説
「あらわす」は、完成した書物について使うことができるため、未完成の状態については使うことができない。
 彼は今、これまでの研究成果の集大成をあらわしているところだ。
 彼は今、これまでの研究成果の集大成を執筆しているところだ。
類義語・反義語
類義語書く、執筆する、出す、出版する、上梓する、まとめる
反義語


現す・表すの全体解説 各語義の解説を参照。
























▶全例文を聞く
<人・動物・物>が
光の中から一人のが姿を現す。
(ろくごまるに著 『名誉を越えた闘い』, 2001, 913)
高く鬱蒼と茂った樹木が何十本もあり、その樹木の向こうに石のお城が上半身を現している。
(酒井治信著 『六十五歳アイルランド留学物語』, 2003, 377)
<姿・性質>を
白煙の立ちこめる中から、三四郎が無事な姿を現した。
(城戸礼著 『爆裂スパーク刑事』, 1994, 913)
この時、戦艦安宅丸は、日本丸とともに、オランダ植民地ケープタウンを経由、遥ばる地球の裏側のロンドン、テームズ河にその勇姿を現していた。
(荒巻義雄著 『猿飛佐助』, 1992, 913)
<場所>に
待ちかまえていたように、黒岩が大きな身体を戸口に現わした。
(萩原葉子著 『木馬館』, 1991, 913)
小佐野が公の場に姿を現すのは一年ぶりである。
(立花隆著 『ロッキード裁判とその時代』, 1994, 326)
<場所>から
悪い予感はもののみごとに的中して、数ブロック前方のビルの背後からゴジラが姿を現した。
(ディーン・デブリン,ローランド・エメリッヒ脚本;スティーヴン・モルスタッドノベライズ;石田享訳 『ゴジラ』, 1998, 933)
そのとき、店とは反対側の狭い路地から二人の子どもが姿を現した。
(グエン・チー・フアン著;加藤栄訳 『ツバメ飛ぶ』, 2002, 929)
<様態>
一行が角を曲がって庭の門を入ったとき,とつぜん、ハンニバルが姿を現わした。
(アガサ・クリスティー著;中村能三訳 『運命の裏木戸』, 2004, 933)
地震の二週間後、市電は大通りに再び姿を現わし、魚市場が再開された。
(P.ハッドフィールド著;赤井照久訳 『東京は60秒で崩壊する!』, 1991, 369)
<形>が
現在完了形が表すのは過去のある時点から現在までの時間です。
(勝見つとむ著;クリストファ・バーナード監修 『超・英文法使い分けマニュアル』, 2004, 835)
グラフの直線の傾きが台車の加速度を表すことから,aがFに比例していることを確かめてみよう。
(高等学校 物理Ⅰ, 2006, 高)
<数値>が
また、国防費の規模がそのまま、防衛力の規模を適正に表しているとは言い難い。
(防衛白書, 1997, )
<実態>を
コンピュータの内部は0か1かの2種類の状態であることから、コンピュータではを2進数で表す。
(日向俊二著 『独りで習うC』, 2005, 007)
このように、式は婚姻の正当性を表すものであり、人々は、なるべく昔通りの伝統的な式を挙げようとする。
(曽士才ほか編 『中国』, 1995, 302)
<様態>
これら二つの事実は,まさしく、条件の異なった別様の要素連関を表わしているのである。
(大森荘蔵ほか編 『新・岩波講座哲学』, 1986, 108)
<心理>を
大事なのは,お祝いをくれた相手に対する感謝の気持ちを表すこと。
(辞典編集部編 『冠婚葬祭実用辞典』, 2001, 385)
<実態>を
こうした状況は、国連と地域的機関の緊張関係を表すものであったと言えよう。
(安藤仁介,中村道,位田隆一編 『21世紀の国際機構』, 2004, 329)
<手段>で
ある集団の傾向を知るために,集団の資料を整理し,で表してみよう。
(数学基礎, 2006, 高)
<場所>に
ハリーはなるべく感情をに表さないように努力した。
(J.K.ローリング作;松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』, 2002, 933)
<様態>
その時の心境を,そのまま言葉で表すのは不可能だ、とメスナーは言う。
(龍村仁著 『地球をつつむ風のように』, 2001, 049)
<書物>を
本書を著すには多くの大学医学部の医学者・医師から話を聞いている。
(保阪正康著 『大学医学部の危機』, 2002, 490)
<数量>
最も有名なムスリム錬金術師ジャービル・ブン・ハイヤーンは、ヘルメス哲学について多く著わし、アリストテレス自然哲学には異を唱えていた。
(D.F.ラックほか著;高山宏ほか訳 『東方の知』, 1987, 220)
<形態>で
内村鑑三は『代表的日本人』ほかの著書を、新渡戸稲造は『武士道』を、それぞれ英文で著わしています。
(鹿野政直著 『近代日本思想案内』, 1999, 121)






























もっと感情を表せ!!
名は体を現す

意味
ある人や物の性質は、それに付けられた名前のとおりである。
用例
「宵待草」とは、「名は体を表す」という言葉どおり、日が暮れるのを待っていたかのように咲く花である。
コーパスからの用例
両親が愛情を込めて名付けた名前だった。名は体を表す。「雅子」と名付けられた女の子は、やがてプリンセスとなり、「優雅」で「雅」な道を歩むことになる。(江森敬治著『雅子さま』,2001,288)
馬脚を現す

意味
それまで内に秘めていた邪な考えや企みが、何らかのきっかけで他者に知られるようになる。
用例
彼はそれまでスキャンダルもなく、好感度が高かった政治家だが、新聞記者の追及によって馬脚を現すことになった。
コーパスからの用例
国家の所有物が没収されるのは仕方がないとしても、「被害者」である筈の人民の財産まで何故奪ったのだ。連合国は東京裁判の判決を真面目に下したのではないと馬脚を現した、証拠ではないか。(小坂一平著『大東亜戦争、日本は悪くない』,2003,210)
頭角を現す

意味
ある人が才能を発揮し、ほかの人々よりも優位な存在になる。
用例
あの男は瞬く間に頭角をあらわし、人々の信頼を勝ち取った。
コーパスからの用例
武辺を志したからには織田信長家中の将となって頭角をあらわす―それがまず藤吉郎の願いだった。(遠藤周作著『決戦の時』,1994,9)
複合動詞 V1

あらわし始める、あらわしかける、あらわし続ける
複合動詞 V2

言いあらわす、書きあらわす、描きあらわす、聞きあらわす、作りあらわす、呼びあらわす、織りあらわす
複合名詞

あらわし方、あらわしよう
現す・表す(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形あら
ない形あらわない
~なかったあらわなかった
ます形あらわし
~ませんあらわしま
~ましたあらわしした
~ませんでしたあらわしまんでした
~ときあらすとき
ば形あらせば
意向形あらわ
て形あらして
た形あらした
可能形あらわ
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