現れる・表れるのコアイメージ

1.出現自動詞初級★★★
表記現れる
人や動物や物体が、他者から(主に視覚的に)認識できる空間内に入る。
文型
<人・動物・物体>があらわれる。
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
次の日容疑者が現場にあらわれていることが防犯カメラで確認された。
敵兵があらわれたら、すぐに知らせろ。
トンネルを抜けると目の前に大きな湖があらわれる
困ったときは、どこからともなくヒーローがあらわれて、助けてくれる。
今さらもう、どんな化け物があらわれようと、怖くない。
一時期、彼の名前がどのメディアにもあらわれなくなったことがある。
コロケーション
<人>が
大統領、敵、ヒーロー、司会者、幽霊、容疑者
<動物>が
黒猫、化け物、蛍、くじら、牛の群れ
<物体>が
湖、名前、エラーメッセージ、太陽、蜃気楼、UFO
<様態>
ひょっこり(と)、突然、いきなり、音もなく、ふらっと、突如、徐々に
<場所・位置>から
背後、森の中、戸口、真上、ほら穴、海中、壁
<場所>に
目の前、画面、写真、舞台、新聞紙上、政界、パーティー
非共起例
<動物>が
 6月に入り、蚊があらわれるようになった。
 6月に入り、蚊が出るようになった。
主体は個体として認識できる、ある程度の大きさや特徴が必要なため。
解説
この語義の<空間>とは、人が認識できる範囲である。そして、もともとその範囲外にある人や動物や物体が、その空間範囲内に入ってきて、主に視覚により、その存在が認識されるようになることを示す。なお、<空間>が「この世界全体」を指している場合の<人や動物や物体>というのは、それまでは想像上あるいは未知の存在だったということになる。
誤用解説
認識範囲外から範囲内への移入の場合に使われるため、駅に入線する電車のように、すでに目で見えている物の移動の場合は使えない。
 まもなく2番線に電車があらわれます
 まもなく2番線に電車がまいります
 トンネルから電車があらわれるのを待ち構えていた。
類義語・反義語
類義語出る、出現する、来る
反義語消える


2.表出自動詞初級★★★
表記現れる、表れる
(物の内部にあって)見えなかった物体や形態が、表面に出てきて、見えるようになる。
文型
<物体>があらわれる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
年をとると、誰でもあちこちにしみがあらわれるものだ。
今回の揺れで、古代の遺跡の一部があらわれた
特殊な光を当てると、暗号があらわれるようになっています。
目の下にくまがあらわれているよ。
デネブ、アルタイル、ベガを結ぶと、夏の大三角形があらわれます
海上に三角波があらわれたら、すぐに避難したほうがいい。
コロケーション
<物体>が
地層、遺跡、岩礁、砂州、波、気泡
<形態>が
暗号、模様、しみ、星座、くま、古傷
<表面>に
顔面、海面、水面、地表、紙面、壁面、服
<内部>から
水中、地中
<様態>
徐々に、ようやく、次第に、一気に
非共起例
<物体>が
 顔ににきびがあらわれた
 顔ににきびができた
「にきび」は顔面に隆起し、形成したものを指し、もともと皮膚内に存在していたわけではないため。
解説
この語義は、1の<空間>が<物の表面>である場合である。そして、その表面(表層)に近づくにつれて見えるようになるのは、もともとその物体の内部に存在していた(と解釈される)物や形態である。
誤用解説
この用法の<物体・形態>は、外部から何かが付着した結果によるものである場合は誤用となる。
 コーヒーをこぼしたところにしみがあらわれた
 コーヒーをこぼしたところがしみになった
 年をとると、誰でもあちこちにしみがあらわれるものだ。
類義語・反義語
類義語浮き出る、浮かび上がる
反義語消える、沈む、埋まる


3.表現自動詞初級★★★
表記表れる
人の心理的・本質的なことが、その人の言動や創造物によって、他者に認識されるようになる。
文型
<言動・創造物>に<心理的・本質的なこと>があらわれる。
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この作品のところどころに作者の心情があらわれている
社長の足音には、その日の機嫌があらわれているから、気をつけよう。
妻の無言には、拒絶の意思がはっきりとあらわれていた
髪型や服装にはその人の個性があらわれていると言えるだろう。
どんなに丁寧に接していても、ちょっとしたしぐさに本心はあらわれるものだ。
人のよさがあらわれている祖母の笑顔には、いつも癒される。
コロケーション
<言動>に
表情、声色、しぐさ、ジェスチャー、足音、笑顔
<創造物>に
作品、筆跡、絵、詩、演奏
<心理的なこと>が
心情、機嫌、意思、本心、哀しみ、状態
<本質的なこと>が
信念、知性、ポリシー、性格、個性、癖、これまでの苦労
<様態>
はっきり(と)、ところどころ(に)、要所要所(に)、顕著に、如実に
非共起例
<本質的なこと>が
 表情に知識があらわれている
 表情に知性があらわれている
「知識」は「知識を得る」「専門知識が必要だ」というように、人の本質を示す語ではないため。
解説
この語義は、2の<物の内部にあって見えなかった物>が、人の内面的なこと、すなわち<人の心理的・本質的なこと>へと拡張された用法である。それが<言動>や<創造物>という、目に見える形によって、他者に認識されることを表す。
誤用解説
この語義は、対象の状態を表すため、文末では通常、テイルの形で用いられる。
 この作品のところどころに作者の心情があらわれる
 この作品のところどころに作者の心情があらわれている
類義語・反義語
類義語出る、にじむ、ひそむ
反義語


4.兆し自動詞初級★★★
表記表れる、現れる、顕れる   ※まれに「効果が顕れる」「症状が顕れる」と使われる。
ある物事の状態に、何らかの変化が認められるようになる。
文型
<物事>に<変化>があらわれる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
回復の兆しがあらわれなかったら、新薬を投与しよう。
少しずつダイエットの効果があらわれているようだ。
24時間以内に変化があらわれれば、実験は成功だ。
彼女には貧血の症状があらわれている
今回の決定によって、これまでの両国間の関係に影響があらわれるだろう。
まもなく麻酔の効き目があらわれるはずです。
stairsあら!2週間で効果が現れる
コロケーション
<物事>に
経済状況、株価、データ、体調、関係、顔
<変化>が
兆し、効果、変化、症状、影響、効き目、焦りの色、疲労
<様態>
次第に、だんだん、急に、じわりじわりと、知らぬ間に
<時期>
最近、ここにきて、ここ数日、昨夜から、先週から
非共起例
<変化>が
 ダイエットして、体重の減量があらわれた
 ダイエットして、効果があらわれた
ここで言う<変化>とは、変化そのものや変化によって生じることであり、量や程度の変動ではないため。
解説
3の<本質的なこと>という特徴が、この語義では、ある物事の内面的な状態として解釈されている。そして、3では<言動・創造物>という目に見える形によって認識されるように、この語義でも、外面上の動きから、何らかの状態変化を認識するということを示している。
誤用解説
それまでまったく認められなかった変化が認められる場合に用いられるため、すでにある程度認められていたことの程度の変化の場合には使わない。
 昨日から続く風邪の症状があらわれた
 昨日から続く風邪の症状がひどくなった
類義語・反義語
類義語生じる、浮かぶ、見える
反義語消える


5.登場自動詞初級★★★
表記現れる
ある優れた人や新種の生物や物の存在が、人々に知られるようになる。
文型
<偉人・新種の生物や物>があらわれる。
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
12世紀後半、モンゴル高原にあらわれたチンギス・ハンが瞬く間に世界帝国の礎を築き上げた。
あの混乱期に、信長があらわれなかったら、戦国時代はまだ続いていただろう。
大型新人があらわれたと、各紙がこぞって書き立てた。
紀元前15世紀ごろ、製鉄技術を持ったヒッタイトがあらわれ、メソポタミアを征服した。
約700万年前、森を出て、二足歩行する類人猿があらわれた
初期のスマートフォンがあらわれたのは今世紀初頭だ。
コロケーション
<偉人>が
チンギス・ハン、信長、大型新人、ヒッタイト
<新種の生物>が
二足歩行する類人猿、哺乳類、羽毛恐竜、裸子植物、新型ウィルス
<新種の物>が
スマートフォン、新型兵器、A.I.ロボット、流通貨幣
<様態>
彗星のごとく、突如として、いよいよ、ついに
非共起例
<新種の物>が
 20世紀初頭、飛行機があらわれた
 20世紀初頭、動力を搭載した重航空機があらわれた
「飛行機」は一般的な言い方であり、<新種の物>であることが感じられないため。
解説
この語義は語義1から拡張したものであり、「ある優れた人」が、「他者から認識できる空間」、すなわち「歴史」や「社会」の中で目立つ存在になることを表す。なお、<人>とは、ある優れた才能を備えた個人を指す場合もあるが、集団を指す場合もある。また、語義1の<人・動物・物体>は何らかの移動の結果(あるいはそのように捉えられる動き)だったが、この語義にはそのような移動性は関与していない。
誤用解説
この語義のテイルの文は、結果状態ではなく、過去における経歴を表す。
 昨年鳴り物入りで登場した大型新人は、今もあらわれている
 12世紀後半、モンゴルにチンギス・ハンがあらわれている
類義語・反義語
類義語登場する
反義語消える、滅ぶ


現れる・表れるの全体解説 各語義の解説を参照。
























▶全例文を聞く
<人>が
その時、四人の前に,が一人現れた。
(シドニィ・シェルダン著;天馬竜行,紀泰隆訳 『時間の砂』, 1990, 933)
ほんの一瞬、ハーウッドの亡霊が現われたかと思ってぞっとした。
(スティーヴ・ハミルトン著;越前敏弥訳 『狩りの風よ吹け』, 2002, 933)
<動物>が
そのとき、恐ろしい大きなが、すぐそばに現れました。
(浦山明俊著 『絵本とは違いすぎる原典アンデルセン童話』, 1999, 949)
引越し先の部屋になんととかげが現れました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅)
<物体>が
考える間もなく、眼前のカーブから対向車が現れた。
(ノーラ・ロバーツ他著;中川礼子他訳 『四つの愛の物語』, 2003, 933)
その後10分もしないうちに・・・空にはたくさんのが現れました
(Yahoo!ブログ, 2008, 芸術、アート)
<様態>
やがて,白鳥の娘たちがつぎつぎとあらわれる。
(志鳥栄八郎著 『志鳥栄八郎のオーケストラ名曲大全』, 1994, 760)
そこに,いきなりマイロンが現われた。
(ハーラン・コーベン著;中津悠訳 『沈黙のメッセージ』, 1997, 933)
<場所・位置>から
お寺と接する塀のからレオがあらわれる。
(中山可穂著 『白い薔薇の淵まで』, 2001, 913)
木陰からあらわれた三人の男のなかで、中央の男は覆面をしている。
(宮城谷昌光著 『孟嘗君』, 1998, 913)
<場所>に
もう二度とここには現れないでください。
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!オークション)
遅れてホテルに現れた近藤を見て、全員が笑った。
(群像, 2003, 文学/芸術)
<物体>が
力をこめて引張ると、太いが地中から現われて来た。
(赤川次郎著 『その女の名は魔女』, 2004, 913)
払暁の霧がながれて、徐々に山腹があらわれてきた。
(南原幹雄著 『御三家の反逆』, 2004, 913)
<形態>が
四角の海苔のが巻き簀の上に現れている。
(大本幸子著 『おたずね申す、日本一』, 1998, 596)
木を輪切りにすると、何重にも重なった輪の模様が現れる。
(データバンク21編 『本当はどうなのか!?「常識・通説」の大疑問』, 2003, 049)
<表面>に
癌細胞の表面に現われた水泡状の突起物が、砲丸のような丸い小胞を形成し始めた。
(門田泰明著 『愛憎のメス』, 1994, 913)
<内部>から
海水から現れた砂州にきっとアザラシがいるはずだから
(沖島博美文・写真;一志敦子絵 『北ドイツ=海の街の物語』, 2001, 293)
<様態>
ぼくは、彼女の厚い化粧にも拘らず、その目の周りに蒼黒いくまがくっきりと現われているのに初めて気がついたものだった。
(庄司薫著 『ぼくの大好きな青髭』, 1977, 913)
<言動>に
性格の優しさがに現れているような顔立ちだ。
(江上剛著 『統治崩壊』, 2004, 913)
行動に現れる道徳だけが、人生に美と品位をもたらします。
(アインシュタイン述;ジェリー・メイヤー,ジョン・P.ホームズ編;ディスカヴァー21編集部訳 『アインシュタイン150の言葉』, 1997, 289)
<創造物>に
それは、子ども本来の天真爛漫な姿が、その一つひとつのに鮮やかにあらわれているからです。
(三上敏夫著 『子どもと詩』, 1987, 375)
<心理的なこと>が
長峰の表情に動揺があらわれた。
(天童荒太著 『幻世の祈り』, 2004, 913)
<本質的なこと>が
代々裕福で、育ちのよさが優雅な顔立ちに表われている年老いた婦人会のお嬢さんたち。
(ジョナサン・ケラーマン著;北村太郎訳 『大きな枝が折れる時』, 1989, 933)
あれは、彼女の純なきれいながそのまま外に現われたものだな。
(辻邦生著 『時の扉』, 1986, 913)
<様態>
食べ方には、その人となりがはっきりと現れます。
(上月マリア著 『礼儀と作法』, 2003, 385)
<物事>に
私は精神的に弱く、ショックなことや辛いことがあると体調にすぐ現れます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, メンタルヘルス)
<変化>が
投資の効果が二十年余りたって現れてきたということだろう。
(中村靖彦著 『遺伝子組み換え食品を検証する』, 1999, 498)
そのため、痛み、熱、腫れといったいろいろな症状が現れてきます。
(井上肇監修;高山美治著 『ひざの痛みをとる・治す』, 2000, 494)
<様態>
一度うまくいけば、あとは弾みがついて次々に変化が表れるはずだ。
(堀田力監修;ハリー・E.チェンバーズ著;真喜志順子訳 『あの上司はなぜあなたに干渉したがるのか?』, 2005, 336)
戦乱の影響は生活面にも次第に色濃く現れ始めた。
(萬濃誠三著 『海鳴り』, 2001, 916)
<時期>
実際に薬を使用してみると、この子の場合には翌日から効果が表れました。
(楠本伸枝ほか編著 『ADHDの子育て・医療・教育』, 2002, 378)
<偉人>が
二度と再びヒトラーが現われないようにするためなのだ。
(インターカルチャー研究所ほか著 『世界民族・宗教のすべて』, 1997, 316)
芸能界では、スター・アカデミーのおかげで若い新人が次々と現れる。
(テッド・スタンガー著;藤野優哉訳 『なんだこりゃ!フランス人』, 2004, 302)
<新種の生物>が
考古学があつかう昔とは,人類が地球上にあらわれてから現代までの,すべての年代にわたります。
(新しい社会 歴史, 2005, 中)
<新種の物>が
鉄道があらわれて乗合馬車にとって代わった。
(ジャワーハルラール・ネルー著;大山聰訳 『父が子に語る世界歴史』, 2002, 209)






























あら!2週間で効果が現れる
隠すより現る

意味
隠そうとするから、かえって目立って、周りに知られてしまう。なお、「現る(あらわる)」は「あらわれる」の文語形である。
用例
芸能人はよく帽子を目深にかぶってサングラスしたり、マスクをしたりするけど、隠すよりあらわるで、そうすると余計に目立つよね。
コーパスからの用例
誰がそんな告げ口を。庄助、おまえか。庄助 わしゃ知らんぞ。なーに、隠すより現るるじゃ。そもそもおまえが悪いんじゃ。(五木寛之著『蓮如』,1995,9 文学)
思い内にあれば色外に現る

意味
心に思っていることは、自然に言葉や行動、表情に出て来るものだ。なお、「現る(あらわる)」は「あらわれる」の文語形である。
用例
ほんとうは私が作った料理、好きじゃないんでしょ。顔に出てるわよ。「思い内にあれば色外に現る」だね。
コーパスからの用例
いかほど其外面を飾るといへども、思うちにあれば色外に現る。(坪内逍遥『当世書生気質』,1885)
穂に現れる

意味
秘めていた恋情や才能などが人目につくようになる。
用例
彼への気持ちをひた隠しにしたつもりだったけれど、どうやら穂に現れていたようで、とっくに周りに気づかれていた。
コーパスからの用例
何かに就けて此才気が穂に露(現)はれるから(尾崎紅葉著『多情多恨』,1896)
複合動詞 V1

あらわれ出る、あらわれ来る、あらわれ出す、あらわれ始める、あらわれかける
複合動詞 V2

立ちあらわれる、踊りあらわれる、浮かびあらわれる
複合名詞

あらわれ方
現れる・表れる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型起伏型
辞書形あらわ
ない形あらわない
~なかったあらわなかった
ます形あらわれ
~ませんあらわれま
~ましたあらわれした
~ませんでしたあらわれまんでした
~ときあらわるとき
ば形あらわれば
意向形あらわれ
て形あられて
た形あられた
可能形
受身形あらわれら
使役形あらわれさ
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