開くのコアイメージ

1.入り口の開放自動詞初級★★★
表記開く
物理的なもの(容器)・部屋の入り口を閉ざしているものが動く。
文型
<もの、容器、部屋の入り口を閉ざしていた要因>が開く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
入り口が開いている
「お母さん、このビンのふた、開かないよ!」
不用心にも、鍵が開きっぱなしだった。
立てつけの悪いドアだったが、男の手にかかるとあっという間に開いた
冬場なのに研究室の窓が開いたままだったらしく、部屋に入るととても寒かった。
小銭入れの口が開いていたのか、カバンの中にお金が散らばっていた。
コロケーション
<もの、容器・部屋の入り口>が開く
ドア、ふた、入り口、キャップ、口
<容器・部屋の入り口を閉ざしていた要因>が開く
鍵、かんぬき
<様態>開く
ゆっくり、徐々に、ぎーっと音を立てて
<理由>開く
風で、地震で、勝手に
解説
語義1は、「物理的なもの(容器)・部屋の入り口を閉ざしているものが動く」という意味を持ち、「かんぬきが開く」、「鍵が開く」の例が示すように、「かんぬき」「鍵」のような容器・部屋の入り口を閉ざしていたものの移動」に意味の焦点がある。
語義1では、例文(1),(2),(4),(5),(6)が示すように、通常は主語に「容器・部屋の入り口」に当たるものを取る。この一方で、例文3の
 不用心にも、部屋の鍵が開きっぱなしだった。
という文は、「容器・部屋の入り口を閉ざしていた要因の除去」という意味で用いられており、語義1の意味を拡張した事例であるといえるが、この意味を示す主語名詞は、「鍵」と「かんぬき」がほとんどである。
類義語・反義語
類義語ひらく
反義語閉まる、閉じる


2.内部にアクセス可能自動詞中級★★
表記開く
容器(部屋)の入り口を閉ざしていたものが動いた結果、内部にアクセスできるようになる。
文型
<容器・部屋>が開く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
(たくさんのビール瓶を前にして)「開いている瓶から先に飲もう」
お母さん、このジャムのビン、開かないよ
「ちょっと、冷蔵庫、開いたままじゃないの! 開けたら必ず閉めなさいって、いつも言ってるでしょ!」
昔、劇の最中に、「絶対開かない」という設定の箱が、間違って開いてしまったことがあったらしい。
とあるホテルに、呪われた開かずの間があると聞いて、取材のために訪れた記者達。そのすべてが帰らぬ人となった。
コロケーション
<容器・部屋>が開く
びん、ペットボトル、冷蔵庫、箱
非共起例
<容器の内容物>が開く
 紅茶が開いている
 紅茶のビンが開いている
通常は「<容器の内容物>が開く」というパターンは容認されないが、以下のように、「いくつかの容器について開いているかどうか述べる」などの特別な文脈がある場合は容認される。
A: 飲み物、どれが開いてる?
B: 紅茶と水が開いてて、緑茶とコーラは開いてないみたい。
解説
語義2は、「容器(部屋)の入り口を閉ざしていたものが動いた結果、内部にアクセスできるようになる」という意味を持ち、語義1の結果状態に焦点が置かれた用法であるといえる。
ただし、語義2は、他の語義と意味があいまいになりやすく、容器の中身が入っていることが話し手にも聞き手にも明らかであるなどの条件がない場合は別の語義として認識されやすい傾向がある。例えば、会話の場面で、以下のような文があったとしよう。
 ビンがあいている。
 部屋があいている。
これらの文は、ともに語義2の意味を表す文として適切であるはずであるが、特に文脈が指定されていない限り、それぞれ、下で述べる語義3(内容物の消滅)、語義5(場所・物の利用可能)の意味を表すと解釈される。特に「部屋があいている」は、ほとんどの場合、語義5の用法として使用される。
類義語・反義語
類義語
反義語閉まる、閉じる


3.内容物の消滅自動詞中級★★
表記空く
容器や場所の内容物がなくなる。
文型
<容器・場所>が空く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
研究室の仲間とお酒を飲んでいたのだが、気が付くと一升瓶が何本も空いていた
そのお皿が空いたら、次の料理をお持ちします。
田舎にいる祖父母が亡くなって、家が空いたままになっており、荒れ放題になってしまった。
この村では農家の後継ぎがいないため、多くの農地が空いている
stairsそこの空いた皿、キッチンに持ってきてくれる?
コロケーション
<容器>が空く
ビン、箱、引き出し、ロッカー
<容器とみなされる場所>が空く
皿、家、土地
解説
語義3は、「容器の内容物がなくなる」という意味を表している。内容物がなくなることで、容器内部にアクセスできる状況になると解釈される。この点で語義2(内部にアクセス可能)と似ている。一方、なくなったものが「容器(部屋)の入り口を閉ざしていたもの」でない点で、語義2と異なる。
また、コロケーションで示したように、主語の名詞は「容器」に限らず、「皿」「家」「土地」などのようなものは一種の「容器」とみなすことができ、許容される。
類義語・反義語
類義語なくなる
反義語ある、入る


4.人・物がない自動詞中級★★
表記空く
本来連続的なものに穴があったり、複数の人・物の間に他の人・物がない。
文型
<空間>が空く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
タンスと壁の間に2センチ程の隙間が空いている
長年履いた靴だが、穴が空いたから捨てよう。
先頭ランナーから距離が空いて、2番手が追走しています。
空港で、受付の前に長い行列ができていた。並ぶのは面倒だと思っていると、人と人との間隔が広く空いているところがあったので、横はいりしてしまった。
部屋の真ん中が広く空いているのが気になったので、絨毯(じゅうたん)と机を配置した。
「電車とホームの間が広く空いている箇所がありますので、ご注意ください」これは、日本で電車に乗る際に頻繁に耳にする表現ですが、朝は電車を利用する人が本当に多いので、空いた隙間に落ちないように注意してください。
コロケーション
<空間>が空く
隙間、間、穴、距離
<場所>に空く
表面、裏地、靴下、~と~の間
解説
語義4の「空く」は、「複数の人・物の間に他の人・物がない」という意味を表す。この用法で「空いている空間」は、語義2(内部にアクセス可能)と異なり、「容器・部屋」である必要はない。この用法は「空いている」というテイル形で用いられることが多く、「人・物がない」状態を表す。
類義語・反義語
類義語(空間が)広がっている
反義語狭まる、縮まる、塞がる


5.場所・物の利用可能自動詞中級★★
表記空く
ある場所や物を占めていたものがなくなり、使用可能である。
文型
<場所・物・抽象物>が空く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
通勤ラッシュの時間だったが、幸運にも席が空いていた
このデパートの駐車場はいつもいっぱいだが、今日は珍しく空いている
駅から離れたマンションなので、部屋がたくさん空いています
新しい本をたくさん買ったが、本棚が空いていない
(携帯電話の購入時に複数の電話番号から自分の番号を選ぶことができる状況で)今なら012-3456-7890が空いています
今、日本代表の背番号10は空いてるけど、次は誰が10番をつけるんだろうね。
コロケーション
<場所>が空く
駐車場、席、会議室、運動場
<物・抽象物>が空く
PC、番号、地位、ポジション、~の座(王の座、大臣の座など)
解説
語義5は、容器やある場所を占めていたものがなくなることで、その容器や場所が使用可能になるという類推が可能であることから、語義3(内容物の消滅)からの拡張であると考えられる。一般的な容器に加えて、語義5では、抽象物や地位も他の人が収まる容器に見立てられており、抽象物や地位に納まる人がいない状態を「空く」と表現する。
類義語・反義語
類義語
反義語埋まる、いる、収まる


6.暇な状態自動詞上級
表記空く
ある人に予定や仕事が入っておらず、他のことに時間を利用することができる。
文型
<人・時間>が空く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
手が空いている人いませんか?
お手伝いしたいのはやまやまですが、あいにくその日は体が空いていません
授業と授業の間で時間が空いています
明日の夕方、もし時間が空いていらっしゃいましたら、ご参加ください。
(アルバイト先などでシフトを埋めている際に)「山崎君、今度の金曜日空いてない?」「すみません。予定が入っているので、ちょっと…」
stairsねえ、啓介、今月末って空いてる
コロケーション
<人・身体部位>が空く
人の名前(「この時間なら田中君が空いています」など)、手、身体
<時間>が空く
明日、金曜日、時間
<時間>まで空く
3時、夕方
<時間>から空く
3時、夕方
非共起例
<人・身体部位>が空く
 足が空く
 手が空く
人が作業をしている際に、足は主として働いている身体部位とみなされていないため、「足が空く」は容認されない。
<人・身体部位>が空く
 手が空いていらっしゃいましたら、ご参加いただけませんか?
 身体が空いていらっしゃいましたら、ご参加いただけませんか?
解説
語義6も語義5(場所・物の利用可能)と同様に、語義3(内容物の消滅)からの拡張であると考えられる。これは、容器やある場所を占めていたものがなくなることで、その容器や場所が使用可能になるという点と、ある人に予定や仕事がないため、他のことに時間を利用できるという点に平行性があるためである。なお、例文4は「お時間・ご都合がよろしければご参加ください」という方が一般的である。
類義語・反義語
類義語
反義語埋まる


7.開幕自動詞上級
表記開く
物事が始まる。
文型
<幕>が開く
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
オリンピックを契機に新しい時代の幕が開いた
新卒生の就職活動の幕が開いた
他国との技術競争の幕はとっくの昔に開いているというのに、日本の若者はいつまでたっても気づかない。
明日をも知れぬ不況の幕が開き、人々は路頭に迷った。
コロケーション
<幕>が開く
<イベント>の<幕>が開く
戦い、ペナントレース、シーズン、就職活動
非共起例
<抽象的な物事>が開く
 受験シーズンが開いた
 受験シーズンの幕が開いた
「幕が開いた」は決まった言い方。語義7は、直接イベントを表す名詞を主語に取ることはできず、「~の幕が開いた」という言い方をする。関連する表現として「開幕する」がある。「開幕する」は、「受験シーズンが開幕した」のように、イベントを主語に取ることができる点に注意が必要である。
解説
語義7は、語義1(入り口の開放)からの拡張である。語義7は必ず「~の幕が開く」という形で用いられ、「~」の部分にイベントが入る。
類義語・反義語
類義語始まる、入る
反義語終わる


開くの全体解説 開くは、「あく」以外に「ひらく」という読み方も持っている。「ひらく」は自他同形の動詞であるため、開く(あく)は、以下のような対応を持つ。

自動詞       他動詞
開く(あく)    開ける(あける)
開く(ひらく)   開く(ひらく)
ただし、「開く(あく)」と「開く(ひらく)」は、同じ自動詞で用いられる場合でも、同じ意味を持つわけではない。

語義1(入り口の開放)
 ドアが開いて(あいて)いる。
 ドアが開いて(ひらいて)いる。

語義2(内部にアクセス可能)
 箱が開いて(あいて)いる。
 箱が開いて(ひらいて)いる。

語義3(内容物の消滅)
 皿が空いている。
 皿が開いて(ひらいて)いる。

語義4(人・物がない)
 隙間が開いて(あいて)いる。
 隙間が開いて(ひらいて)いる。

語義5(場所・物の利用可能)
 駐車場が空いている。
 駐車場が開いて(ひらいて)いる。

語義6(暇な状態)
 時間が空いている。
 時間が開いて(ひらいて)いる。

語義7(開幕)
 幕が開いて(あいて)いる。
 幕が開いて(ひらいて)いる。

上の例文が示しているように、「あく」が「空く」と表記される用法では「開く(ひらく)」は用いられない。また、「開く(ひらく)」は語義2の用法で用いられにくい傾向があることから、「容器の入り口を閉ざしているものの動き」に意味の焦点があるようである。

反対に、「開く(ひらく)」で用いられて、「開く(あく)」で用いられない例としては以下のものがある。
 花が開いた(あいた)。
 花が開いた(ひらいた)。
 腕が開いた(あいた)状態で寝ている。
 腕が開いた(ひらいた)状態で寝ている。
 (スポーツの練習中に)身体が開いて(あいて)いるよ。
 (スポーツの練習中に)身体が開いて(ひらいて)いるよ。

他の自他同形動詞には次のようなものがある。
「開く(ひらく)」、「吹く」、「閉じる」、「授かる」、「去る」、「巻く」、「増す」、「伴う」、「伏せる」、「振り返る」、「振舞う」、「構える」、「叫ぶ」、「笑う」
























▶全例文を聞く
<もの、容器・部屋の入り口>が開く
電車のドアが左右に開いた。
(リドリー・ピアスン著;中山善之訳 『謀略の機影』, 1993, 933)
足踏みをしながら、が開くのを待ちわびている。
(オール讀物, 2003, 文学/芸術)
<容器・部屋の入り口を閉ざしていた要因>が開く
マンションの部屋まで来ると、が開いている。
(山下勝利著 『いまさら、初恋』, 1990, 913)
<様態>開く
突き当たりの部屋の扉がゆっくりと開いた。
( 『オバケヤシキ』, 2005, 913)
<容器・部屋>が開く
キッチン・テーブルの上には、シリアルのが開いたままになってたの。
(サンドラ・ブラウン著;秋月しのぶ訳 『復讐のとき愛は始まる』, 2004, 933)
<容器>が空く
と言って、日比野は、彼女のグラスが空いているのを見て、ボトルを手にした。
(和久峻三著 『不在証明は女たちのゲーム』, 1999, 913)
<空間>が開く
煙草で焦がした黒いが開いている。
(新宮正春著 『作兵衛の管槍』, 1996, 913)
<場所>が空く
カウンター席が一つ空いていたのでどうにか座れた。
(Yahoo!ブログ, 2008, グルメ、ドリンク)
<時間>が空く
その夜は珍しく時間が空いたので、ホテルを訪れた宮原立太郎氏と街中に出掛けた。
(小桧山六郎著;福島民友新聞社編 『素顔の野口英世』, 2005, 289)
<幕>が開く
オペラ通を自認する友人によると、この席では、が開いてから、空席にそっと移動するという裏技を用いるのだそうだ。
(須貝典子,片野優著 『ウィーン「小さな街物語」』, 2005, 293)
<イベント>の<幕>が
午後8時30分、注目の試合の幕が開いた。
(週刊現代, 2004, 一般)






























そこの空いた皿、キッチンに持ってきてくれる?
ねえ、啓介、今月末って空いてる
開いた口がふさがらない

意味
呆れて物が言えない様子。
用例
友達の部屋があまりにも汚かったので、開いた口がふさがらないとはこのことかと思った。
コーパスからの用例
四畳ぐらいの部屋に七人ものフィリピン人がゴロゴロしている。 さすがの俺もあいた口もふさがらなかった。(松広茂著 『横浜本牧・英語亭』, 1987, 916)
複合名詞

空き時間、空き巣、空きスペース、空き地、空き部屋、空き家
開く(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形あく
ない形あかない
~なかったあかかった
ます形あき
~ませんあきま
~ましたあきした
~ませんでしたあきまんでした
~ときあくとき/あく
ば形
意向形
て形あいて
た形あいた
可能形
受身形
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