抜くのコアイメージ

1.ものの一部の分離他動詞初級★★★
表記抜く
人が、あるものに固定しているものを、力を加えて引っ張って取る。
文型
<人>が<もの>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼らは一礼をすると、鞘から刀を抜いて構えた。
家を空けるときは、プラグを抜いて出かけましょう。
「頬が腫れているみたいだけど、どうしたの」「昨日、親知らずを抜いてきたの」
無理やり毛を抜いたら、毛穴が炎症を起こしてしまった。
庭の花に水をやったり雑草を抜いたりするのが、私の朝の日課だ。
シャンパンの栓が抜かれ、乾杯の声とともにパーティーが始まった。
stairs歯(永久歯)は抜いてしまうと二度と生えてこないので、最近はできるだけ歯を抜かない、削らない治療が増えています。
コロケーション
<もの>を
① 身体の一部:歯、毛、神経、親知らず、白髪、髪の毛
② 武器:刀、剣、銃
③ 電気:プラグ、電源、アダプタ、電池
④ 管:ケーブル、線、管、コード
⑤ 土に埋まっているもの:雑草、大根、人参
⑥ その他:針、栓、鍵、釘、ディスク
<もの>から
鉢、さや、土、コンセント
<道具>で
毛抜き、手、ピンセット、針
<様態>
ゆっくり、一気に、そっと、どんどん、無理やり、根こそぎ
解説
一般に、あるものに固定している(はまっている、刺さっている)ものを、力を加えて引っ張っり、本体から分離させる場合に「ぬく」が用いられる。
ところで、以下のような表現が可能であるのはなぜか。
 シャンパンの栓を抜く。
 シャンパンを抜く。
上記のうち二つ目の表現は、本体に固定されているもの(栓)ではなく、本体の内容物を表す表現を対象に、「ぬく」を用いている。ここでは、本体の内容物(シャンパン)を表す形式で、実際にはその部分(栓)を表しているのである。このような表現方法は、全ての飲料に対して可能なわけではない。
 シャンパン[ワイン、ビール]を抜く。
 ジュース[テキーラ]を抜く。
誤用解説
この意味での「ぬく」は、あるものの内部に固定されているものを、力を加えて取り出すことを表すため、例えば皿にクッキーが載っていて単にそれを取る場合には、「ぬく」は用いられない。ただし、同じ状況でも、皿に乗った複数のクッキーの中から「選び取る」場合には「ぬく」が用いられることもある(語義5参照)。
類義語・反義語
類義語引っ張り出す、外す、取る
反義語入れる、刺す、はめる、埋める


2.気体・液体の排出他動詞初級★★★
表記抜く
人が、容器内の気体や液体を外に出す。
文型
<人>が<気体・液体>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
万年筆は、一か月に一度インクを抜いて、ペン先をぬるま湯に浸すと良い。
使わない布団は圧縮袋に入れて、掃除機でしっかり中の空気を抜きます
浮き輪の口の部分を軽くつまむと、一気に空気を抜くことができる。
噴水の水が徐々に抜かれ、大量のコインが現れた。
風呂の水を抜かずにためておき、洗濯に利用する。
血を抜いたら足元がふらついたので、病室で休ませてもらった。
コロケーション
<気体>を
空気、ガス
<液体>を
水、血液、血、オイル、燃料、風呂の湯
<容器>から
プール、身体、タンク、田んぼ、風呂
<道具>で
ポンプ、注射、針
<様態>
一気に、少し、ちょっとずつ、ゆっくり、徐々に
解説
語義1と同様、あるものに入っているものを取り出すことを表すが、語義1とは異なり、「ぬく」の対象は、個体ではなく気体や液体といった流動体であり、容器と捉えられるものの全体に行き渡っているものである。また、語義1では、皮膚から毛を抜いたり、土から草を抜いたりするように、あるものの一点から、ものを取り出すことを表すが、語義2でも同様に、典型的には、容器と捉えられるもの全体のうちの一点(排水口、空気孔、管を入れた部分など)から、中身を外に出すことを表す。
誤用解説
容器から液体を取り出す場合であっても、行為の目的が「中身を外に出すこと」でない場合には、「ぬく」を用いることはできない。例えば以下のように、液体を飲むことが目的である場合、結果として容器内の液体が容器外に取り出されたとしても、「ぬく」を用いることはできない。
 ストローでパックのジュースを飲む
 ストローでパックのジュースを抜く
類義語・反義語
類義語出す
反義語入れる、満たす


3.気力の緩和他動詞中級★★
表記抜く
人が、気力を弱める。
文型
<人>が<気力>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ベッドに横になったら、力を抜いて楽にしてください。
試合で相手に手を抜かれていたことが分かり、無性に腹が立った。
「もう少しで頂上だね」「最後まで気を抜くなよ」
空手では、肩の力を抜くことが重要なポイントです。
逆上がりの瞬間に手の力を抜いたら、地面に落ちてしまうよ。
必死で仕事に取り組むのは良いけど、たまには息を抜くことも必要だよ。
stairs大丈夫じゃないよ!ちょっとでも気抜いたら、すぐ抜かれちゃうもん。
コロケーション
<気力>を
気、力
<身体部位(の力)>を
手、膝、腰、肩
<様態>
軽く、少し
非共起例
<力>をぬく
 もう少し視力を抜いて。
 もう少しを抜いて。
<力を抜く>という意味を表す場合は、自分で加減をコントロールできる<力>でなければならなず、<視力>や<聴力>などの、自らの意志でコントロールできない力とは共起できない。
解説
語義2の「ぬく」は、容器を満たしていた気体や液体を取り出すことを表すが、語義3の「ぬく」は、人の身体や心を満たしていた気力を取り去ることを表す。これは、気体や液体でパンパンに満たされた状態から内容物を取り出すことで容器に余裕を生じさせるということと、気力で満たされた緊張状態から気力を取り去ることで、心身に余裕を生じさせるという点が類似している。
また、この意味での「ぬく」は、「気を抜く」や「力を抜く」の他、「肩の力を抜く」や「全身の力を抜く」のように、「身体部位の力を抜く」という形でも用いられるが、より特殊な状況では、「身体部位を抜く」という形で用いられることもある。例えば、空手における動作を説明する際に、以下のように表現することがある。
 体重を掛けている方の膝を抜くことで、身体全体の重心が前に移動する。
これは、膝の力を弱める(力みを逃す)ことを表す。このような表現は、一部のスポーツや武道で用いられるもので、「ぬく」は<力を弱める>という意味でその他の身体部位と自由に共起できるわけではない。
 膝[肩、腰]を抜く。
 頭[指、尻]を抜く。
誤用解説
「身体部位の力を抜く」と「身体部位を抜く」のどちらの表現も可能な場合、両者は同じ意味を表すが、「肩の力を抜く」と「肩を抜く」は異なる意味を表す場合がある。
 空手では、肩の力を抜くことが重要なポイントです。
 空手では、を抜くことが重要なポイントです。
 勉強は大事だけど、たまには肩の力を抜いて。
 勉強は大事だけど、たまにはを抜いて。
「肩を抜く」は、力むことにより実際に肩の筋肉が緊張している状況で、その緊張を緩和することを表すが、「肩の力を抜く」の方は、身体の緊張だけではなく精神的な緊張を解いてリラックスすることを表す場合もある。この場合、「肩を抜く」を用いることはできない。つまり、身体の緊張の緩和に対しては「肩」と「肩の力」の両方を用いることができるが、精神の緊張の緩和に対しては「肩の力」のみが用いられる。
さらに、「手の力を抜く」と「手を抜く」は異なる意味を表し、両者は置き換えることができない。
 逆上がりの瞬間に手の力を抜いたら、地面に落ちてしまうよ。
 逆上がりの瞬間にを抜いたら、地面に落ちてしまうよ。
 試合で相手に手の力を抜かれていたことが分かり、無性に腹が立った。
 試合で相手にを抜かれていたことが分かり、無性に腹が立った。
「手の力を抜く」は、身体部分の手の力(握力)の緩和を表すが、「手を抜く」は、何らかの行為に関わる労力の緩和を表す。したがって、手の力を緩める状況では「手を抜く」とは言えず、逆に行為に関わる労力を減ずる場合には「手の力を抜く」とは言えない。
類義語・反義語
類義語緩める(力を緩める、気を緩める、手を緩める)
反義語込める(力を込める)、入れる(力を入れる)、引き締める(気を引き締める)


4.弛緩(和服の襟)他動詞上級
表記抜く
人が、和服の襟をゆるめて余裕を持たせる。
文型
<人>が<襟>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
襟を胸の中心でそろえて片手で抑え、もう一方の手で衣紋を多めに抜く
和装でフォーマルのときは衿を深くゆったり合わせ、衣紋を多めに抜きます
「和服をしっとり着こなすコツは何ですか」「衣紋を適度に抜くことです」
着物の襟を簡単に抜けるようになりたい。
襟が大きく抜かれた着こなしは、あまり品が良いとは言えない。
少し襟を抜こうとしたら、着崩れしてしまった。
コロケーション
<襟>を
襟、衣紋
<様態>
きれいに、少し、多めに、大胆に、ちょっと
解説
浮き輪に詰まっていた空気を外に出す(語義2)と、浮き輪に余裕が生まれることと、詰まっていた襟をゆるめて余裕を生じさせることが類似しており、そのような余裕を生じさせる行為を「ぬく」で表現することができる。
誤用解説
この意味での「ぬく」は、和服(着物)に対してのみ用いられる。
 着物の襟を抜く。
 ポロシャツの襟を抜く。
ポロシャツも、胸元のボタンを外すなどして首回りに余裕を持たせることがあるが、この場合には「ぬく」は用いられない。和服は、首回りだけでなく胸からお腹のあたりまで襟の部分が続き、しっかり固定されているので、力を加えなければ余裕を持たせることができず、このような場合にのみ、「ぬく」が用いられる。
類義語・反義語
類義語緩める
反義語詰める


5.選択による分離他動詞中級★★
表記抜く
人が、複数の人・もの(全体)の中から一部を選び取る。
文型
<人>が<人・もの>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
本棚から読みたい本を抜く
手品師は、並べたトランプの中から、観客に一枚抜かせ、他の人達に見せるよう言った。
応募作品の中から秀でたものを抜いて、詩集を編む。
お気に入りのCDからアップテンポな曲を何曲か抜いて、ドライブ用CDを作った。
給料が入ったらまず貯金するお金を抜いておいて、残りのお金でやりくりします。
ライバル社に本社の優秀な人材を数人抜かれてしまった。
コロケーション
<もの>を
カード、トランプ、本
<人>を
優秀な人材
解説
語義1は、あるものに固定したものを引っ張って取り出すことを表すが、この意味の「ぬく」は、全体を成している複数のものの中から、その一部を選び取ることを表し、「一体となっているものの一部を取る」という点では語義1と類似している。
この「ぬく」は、「読みたい本を本棚から抜く」や「カードを一枚抜いてください」のように、「選んで取る」ことを表しながらも、語義1と同様の物理的行為を表す場合と、「優秀な人材を抜く」のように、物理的な力を必要としない行為を表す場合がある。しかし後者の場合にも、主体による選択と何らかの働きかけが必要であり、「全体の一部を選択して分離させる」という意味では同様である。
さらにこの「ぬく」は、より抽象的に、以下のような場合にも用いることができる。
 カメラマンが何気なく観客の一人を抜いたところ、なんと、お忍びで来ている芸能人だった。
この「ぬく」は、全体のうち一部にカメラの焦点を合わせることを表すが、この場合も、複数のもの・人のうち一部を選択し、全体から切り離して際立たせることを表している。
誤用解説
この意味の「ぬく」は、選択して取り出す(全体から分離させる)ことを表すため、単に選択するだけの場合には用いられない。
 本棚から読みたい本を抜く。(選んで本棚から取り出す)
 A社から優秀な人材を抜く。(選んでA社を辞めさせる)
 県内の学校からA校を抜く。(志望校を選び、A校に決める)
類義語・反義語
類義語選ぶ、選抜する
反義語


6.不要なものの排除他動詞中級★★
表記抜く
人が、不要なものを取り除く。
文型
<人>が<不要なもの>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
着用後の着物は、ハンガーにつるして湿気を抜きましょう
離婚の手続きをしに行ったら、すでに元夫によって籍が抜かれていた。
疲れをきちんと抜くためには、毎日の睡眠が大切です。
「なんでお肉が水に浸かっているの」「日本酒で臭みを抜いているんだよ」
二日後に控えた健康診断のために、体内から徹底的にアルコールを抜こう
「この寿司は子供達に食べさせていいのかな」「わさびが抜いてあるか確認してみて」
コロケーション
<不要なもの>を
① 色:染み、色
② データ:籍、住民票、番号
③ 飲食物(成分):あく、(わ)さび、炭水化物、カルキ、塩気、炭酸、臭み、辛味
④ その他:湿気、疲れ、死んだ駒(将棋など)
<様態>
きちんと、すっかり、しっかり
<もの>から
体内、洋服、戸籍、野菜、肉
解説
語義5の「ぬく」は、複数のものの中から一部を選び取ることを表すが、選び取るということは、その対象に価値があるから使うために選び取るという場合と、価値がないから捨てるために選び取るという場合がある。ここでの「ぬく」は後者であり、主体にとって不要であり、それを取ることによって、その結果、取り除くことを表している。
誤用解説
 結婚して親の籍を抜く。
 結婚して親の籍から自分の籍を抜く。
 結婚して親の籍から抜ける。
「ぬく」の対象は、全体の一部(集合体の一部)であるため、上記の例のように、「分離による排除」を表していても、全体の一部として捉えられるものでなければ対象にすることができず、「親の籍」(全体)に対する「自分の籍」(部分)であるので、「親の籍を抜く」とは言えない。
類義語・反義語
類義語
反義語付ける(染みを付ける)、入れる(籍を入れる)


7.不要なことの省略他動詞中級★★
表記抜く
人が、本来の手順通りのことを省く。
文型
<人>が<こと>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼は前置きを抜いていきなり本題に入った。
細かい説明を抜いて結論だけを言うようなやり方では、きちんと伝わらない。
「授業中ずっとお腹が鳴っていたけど、今日も朝食を抜いてきたの?」「ダイエット中なの」
食事を抜けば体重が減るというのは間違いです。
健康的なダイエットには、朝と昼はしっかり食べて、夕食を抜くのが良いらしい。
「お寺を見た後に土産屋に寄ると、宿に着くのが遅くなりますね」「この際、土産屋は抜いてしまいましょう」
コロケーション
<こと>を
① 習慣:朝食、食事、夕飯、えさ、飯、風呂
② プロセス:手順、工程、旅程
③ 話:あいさつ、前置き、前提、説明
<様態>
思い切って、うっかり、わざと
<頻度>
時々、たまに、よく
解説
ここでの「ぬく」は、本来の(決まった)習慣やプロセスの一部を取り除くことを表し、固定したものを取り出すという点で語義1と同様である。さらに、取り除かれる<こと>は、主体によって相対的に不要と判断されるものであり、この点では語義6との関連が認められる。
誤用解説
全体の流れの中で決まった(固定した)ことを全体から取り除くことを表すため、毎日の習慣やあらかじめ決めていたプロセス(手順、旅程、工程など)のうち一部を取り除く(やめる)場合にしか用いられない。そのため、(決められていたことではないことを)単にやらないという場合には用いられない。
 予定していた人気キャラクターとの写真だけど、並んでいるから、ここでの撮影は抜いてしまおう。
 ここで人気キャラクターに会えたのはラッキーだけど、並んでいるから、ここでの撮影は抜いてしまおう。
類義語・反義語
類義語省く、省略する
反義語


8.窃盗他動詞上級
表記抜く
人が、あるものの中に入っている貴重品を取り去る。
文型
<人>が<価値のあるもの>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
親の財布から勝手にお金を抜いた
あの会社では、従業員が倉庫から少しずつ商品を抜いて転売していたらしい。
車上荒らしはカバンから財布だけ抜いていった。
この港では、積み荷を抜かれる事件が頻発している。
PCからデータが抜かれていたことに気付かなかった。
海外旅行に行くときは、リュックから財布やカメラを抜かれないように十分注意してください。
コロケーション
<価値のあるもの>を
財布、データ、お金
<もの>から
財布、カバン、パソコン、携帯
<様態>
勝手に、こっそり、黙って、ごっそり、いつの間にか
解説
この意味での「ぬく」は、主体にとって価値があるものを選び取るという点では語義5と同様である。ただし、単に「価値がある物を選び取る」ことを表すのではなく、「(選び取って)盗む」という後続する行為を表している。
誤用解説
ただし、この「ぬく」は、単に複数のものから選んで盗むことを表すのではない。「ぬく」は容器の中に入っているものやある物体の内部に固定したものなど、一体と捉えられるものからその一部を取り出すことを表すため、以下のように、容器の内容物あるいはあるものに固定した一部と捉えられないものを取り去る場合には用いられない。
 鞄に入っていた財布を抜かれた。
 机に置いてあった財布を抜かれた。
類義語・反義語
類義語取る、盗む
反義語


9.貫通(空洞を生じさせる)他動詞初級★★★
表記抜く、貫く
人・ものが、力を加えてものの一部を貫通させる。
文型
<人・もの>が<もの>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
工作で使うためにペットボトルの底を抜く
クッキー生地を均一に延ばしたら、ハート形に抜く
古い体育館でドリブルをしていたら、ボールが床を抜いてしまった。
私の地元では、山を抜いて隣県に通じるトンネルを作る計画が持ち上がっている。
玄関は、天井が抜かれたことにより、圧迫感を感じさせない造りになっています。
リビングとダイニングの間の壁を抜いただけで、部屋がかなり広くなったように感じる。
コロケーション
<もの>を
壁、クッキー、生地、床、天井
<結果状態>
~形に、まるく、大きく
<道具>で
型、ドリル、ブルドーザー、工具
解説
語義1の「ぬく」は、あるものに固定しているものに力を加えて手前に引っ張って取り出すことを表すが、語義9の「ぬく」は反対に、あるもの自体に力を加えてそのものを貫通させ、それによってそのものの向こう側に通じる経路を生み出すことを表す。
 ところで、先に挙げた例文は全て、「壁」や「クッキー(生地)」など、貫通させるものが対象(ヲ格)になっているが、以下のように、ものを貫通させたことで分離した一部を対象にすることも可能である。
 星形に抜いた人参をシチューに入れる。
この例では、型で貫通させた人参本体(星形の空洞ができた本体)ではなく、本体から分離した部分(星形の人参)に注目し、それが対象になっている。
誤用解説
主体が力を加えることで対象を貫通させることを表すため、ものが貫通し、向こう側に通じる経路(空洞)が生じたとしても、それが外部からの働きかけのない自然な変化である場合には用いることができない。
 長年履いていた靴の底を抜く
 長年履いていた靴の底が抜ける


10.突破他動詞上級
表記抜く
人・ものが、進行を遮るものの範囲内を通って向こう側へ出る。
文型
<人>が<場所>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
打球は一二塁間を抜いた
信長は数を頼りに一気に城を抜いた
キーパーにとって、股を抜かれるゴールは特に屈辱だろう。
あの国の堅塁を抜くのは至難の業である。
彼は、三遊間を抜くヒットを放った。
ドリブルでディフェンスを抜くために、遅くまで練習した。
コロケーション
<場所>を
股、城、ディフェンス、堅塁、頭上、三遊間、脇
<様態>
ドリブルで、一気に、軽々(と)
解説
語義9の「ぬく」は、壁やクッキー生地などに力を加えて貫通させることを表すが、語義10の「ぬく」は進行を遮って立ちはだかるものの範囲内にある経路(隙間など)を通ってその向こう側に出ることを表す。つまり、語義9は対象の内部に経路が生まれることを表す一方で、語義10はその経路を通って向こう側にでることに注目した表現である。
 また、「城を抜く」は、城を守る敵を倒して敵陣を突破し、城を陥落させる(征服する)ことまでを表す。
誤用解説
語義9の「ぬく」は、主体が力を加えてものを貫通させることを表し、そこから派生した語義10の「ぬく」も、経路を通って向こう側に出る際に主体がある程度の力を要する場合に用いられる。つまり、この意味での「ぬく」が用いられるのは、遮るものの間に何とか隙間を見つけて(経路を見つけて)向こう側に出たり、遮るものを倒して(経路を作って)向こう側に出たりする場合であり、初めから十分な経路が存在し、向こう側に出るために特に何らかの力を必要としない以下のような場合には、「ぬく」は用いられない。
 車で山を抜く
 車で山を抜ける


11.追い越し(物理的移動)他動詞初級★★★
表記抜く
人・乗り物・動物が、前にいる人・乗り物・動物に追いつき、さらにその先に出る。
文型
<人・乗り物・動物>が<人・乗り物・動物>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
その馬は最終コーナーで先頭の馬を一気に抜いてトップに躍り出た。
応援しているランナーがゴール手前で抜かれてしまい、残念だった。
ここは快速列車が普通列車を抜くポイントなので、車両が並ぶ姿を撮影することができます。
スクーターが信号待ちの車を次々抜いていくのを見て、ヒヤッとした。
高速をこわごわ走っていたら、後ろの車にどんどん抜かれてしまった。
急いでいたので運転手に前の車を抜かせた
stairsううん。去年はゴール直前で抜かれて2位だったの。
コロケーション
<人>を
前の人、先頭の走者、選手、群れ、ライバル
<乗り物>を
自転車、前の車、普通列車
<動物>を
<場所>で
~地点、カーブ、~の手前、コーナー
<様態>
ついに、次々(に)、さっそうと、一気に
解説
語義11の「ぬく」は、前を移動している、自らの進行を遮る他の人・乗り物・動物よりも前に出ることを表し、これは、進行方向に存在するものの範囲内を通ってその向こう側に出ることを表す語義10と、「進行を遮るものの向こう側(進行方向の先)へ出る」という点で類似している。また、語義10と語義11は、その対象である進行を遮るものが静止しているものか同じ方向に前進しているものかと言う点で異なるが、語義11の「同じ方向に前進しているもの」も、主体にとっては進行を(物理的あるいは精神的に)妨げる可能性のあるものであり、共通している。
誤用解説
この意味での「ぬく」は、進行を遮るものに追いつき、その先に出ることを表し、「先(向こう側)に出る」ことに焦点が当たるため、起点を表す「から」や、経路を表す表現とは共起しない。
 先頭集団抜く。
 先頭集団から抜く。
 先頭集団の中を抜く。
類義語・反義語
類義語追い抜く、追い越す
反義語


12.追い越し(技能・成果)他動詞中級★★
表記抜く
人・組織(の技能・成果)が、他の人・組織(の技能・成果)を越える。
文型
<人・組織(の技能・成果)>が<人・組織(の技能・成果)>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今回の選挙の投票率は、前回の投票率を大きく抜いた
あの国の持ち家率は先進国の水準をついに抜き、70%になるそうだ。
1年生が先輩たちをあっさり抜いてレギュラーになった。
彼女は入社3年目にもかかわらず、営業成績で上司をも抜き、部内で表彰された。
彼の実力はチームの中でも群を抜いている。
本店の売り上げは、あっという間に新店に抜かれた
コロケーション
<人・組織>を
師匠、上司、群、ライバル、他国、他社
<人・組織の技能>を
能力、技、技術
<人・組織の成果>を
票、記録、売上、利益、高値
<様態>
ついに、なんとか、あっさり、軽く、大きく、とっくに
解説
語義11の対象が主体の進行を遮る可能性のあるものであるのに対し、語義12の対象は必ずしも主体の進行を遮るものではないが、語義12の「ぬく」は、人・組織(の技能・成果)が、他の人・組織(の技能・成果)に勝ることを表し、これは、前を移動している、自らの進行を遮る他の人・乗り物・動物よりも前に出ることを表す語義11と、両者(主体と対象)の進行方向の「先へ出る」という点で類似している。なお、語義12の進行方向とは、語義11のような物理的な進行の方向ではなく、何らかの行為に伴う成果や技能の進展(増加、上達)の方向という抽象的なものである。さらに、語義11は「主体のスピードが対象のスピードに勝る」ことを含意しており、語義12の「主体の技能や成果が対象の技能や成果に勝る」ことは、「ある点において勝る」という点でも語義11と類似している。
また、例文に挙げた「群を抜く」は慣用的な表現であるが、この場合の「群」は「群衆(の技能・成果)」を表し、ある点においてその他多くの人々よりもその技能や成果が優れていることを表す。
誤用解説
「ぬく」対象は、自らコントロールできる成果や技能であり、視力などのコントロールできない力については、「ぬく」とは言いにくい。
 私の営業力は彼の営業力を抜いている。
 私の視力は彼の視力を抜いている。


13.空洞の形成他動詞上級
表記抜く、貫く
人が、ものの内部を突き通してある形を作る。
文型
<人>が<もの>に<形>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
金型を使って板に直径5センチの穴を抜く
天井に大きく円を抜き、天窓を作った。
型を抜いた残りの人参は、細かく刻んで炊き込みご飯の具にしましょう。
生地に花形を抜いた後は、再利用するためにもう一度寝かせます。
窓穴を抜いたらヤスリで仕上げましょう。
工作物に穴をあけて銅線を通し、放電させながら前後左右に移動させると、さまざまな型を抜くことができます。
コロケーション
<形>を
穴、型、窓穴
<もの>に
壁、板、生地、人参
<様態>
大きく、小さく
解説
語義9は、あるもの(壁、クッキー生地など)に力を加えて一部を貫通させて経路を生み出すことを表し、壁やクッキー生地などが対象となりヲ格を取る。それに対して語義13では、突き通した結果あるものに残った形(円、穴など)に焦点が当たり、ヲ格を取る。
誤用解説
この意味での「ぬく」は、貫通させた結果残った形を表すため、正面から見て穴(空洞)ができていてもその穴が向こう側に通じていない場合には、「ぬく」は用いられない。
 ここに窓穴を抜こう。
 ここに鍵穴を抜こう。


14.空白の形成他動詞上級
表記抜く
人が、ものの一部を残して他の部分に色や柄を付ける。
文型
<人>が<もの>を<様態>ぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
写真に文字を白く抜いて入れる。
生地の地色を丸く抜いて、ドット柄にする。
パソコンで写真の背景を花柄に抜いて、そこにメッセージを入れていこう。
「これは話題の藍染作家さんの作品ですって」「紫紺の地に白く抜いた紋が映える、素敵な作品ね」
「白抜き」とは、文字内部を白く抜いた文字修飾機能の一種です。
フォトショップというソフトでは、背景を白く抜く加工も簡単にできる。
コロケーション
<もの>を
生地、文字、背景
<様態>
白く、丸く、大きく、~柄に、~形に
<手段>で
パソコン、ソフト、アプリケーション
解説
語義9は、あるものに力を加えて貫通させて経路を生み出すことを表すが、その経路の部分は向こう側を見通せる「空洞」になる。一方で、語義14では、実際にものの一部を貫通させて空洞を生み出すわけではなく、ある部分を残して周りだけ染めることによってその部分が空白のままになることを表す。この空白のまま残っている部分が、全体の一部を貫通させてできた空洞に類似しているため、そのような空白を残すことを「ぬく」で表現することが可能になる。
誤用解説
前述のように、色や柄の入っていない部分を作る、つまり空白を残すことを「ぬく」で表すので、色付けされておらず、何も描かれていないことを表す「白く」とともに用いられることが多い。また、「白く」とともに用いられない場合、例えば「背景をハートに抜く」というような場合にも、形はハートであるがその部分は当然空白のままである。したがって、「ぬく」部分はどのような形でも良いが、色に関しては白以外の色とともには用いられない。
 背景を白く抜いた。
 背景を黄色く抜いた。


15.唐突な暴露他動詞上級
表記抜く
人・組織が、他の人・組織に先駆けて価値のある情報を暴いて明るみに出す。
文型
<人・組織>が<価値のある情報>をぬく
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
当初、この大スクープを抜く予定だったのは別の朝刊紙だった。
週刊誌の売り上げは下降しており、記者たちは特ダネを抜こうと必死だ。
過去にどれほどの特ダネを抜こうが、一度の誤報で記者生命を絶たれることもある。
他紙にまんまと特ダネを抜かれ、編集長に大目玉を食らった。
大物芸能人の破局スクープをライバル週刊誌に抜かれてしまった。
いくらフリーのライターであっても、懇意にしてもらっている雑誌以外でスクープを抜いたらひんしゅくを買う。
コロケーション
<人・組織>が
新聞社、記者、出版社、週刊誌
<価値のある情報>を
スクープ、特ダネ
解説
メディアで価値のある情報を他の人や他社に先駆けて報道することを「スクープ(特ダネ)を抜く」と言うが、これは、「スクープ(特ダネ)をすっぱ抜く」と言う方が一般的である。「すっぱ抜く」の「すっぱ(素っ破)」は戦国時代の忍びの者(忍者)を表し、「すっぱ抜く」の連用名詞形である「すっぱ抜き」には、<刃物を不意に抜くこと>という意味がある。この、(相手の不意を突いて)刃物を抜く(語義1)ことと、相手を出し抜いて貴重な情報を明るみに出すことの間には、敵の不意を突いてもの(刀、情報)を取り出すことで敵に衝撃を与える、という類似性が認められる。したがって、この意味での「ぬく」は語義1から派生した意味であると考えられる。
誤用解説
この意味での「ぬく」は、「スクープ」や「特ダネ」といった、<価値のある情報>をヲ格に取り、その内容を表す「熱愛」、「離婚」、「汚職」などの<こと>を取ることはできない。一方、「すっぱ抜く」にはそのような制限はない。
 A社が、アイドルの熱愛スクープ抜いた
 A社が、アイドルの熱愛スクープすっぱ抜いた
 A社が、アイドルの熱愛抜いた
 A社が、アイドルの熱愛すっぱ抜いた
類義語・反義語
類義語すっぱ抜く
反義語


抜くの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>を
昔の歯医者は、虫歯が進行するとを抜きました。
(宮野たかよし著 『歯科技工士が書いた入れ歯至急相談室』, 2002, 497)
彼の合図で衛兵たちがを抜いた。
(ロイス・マクマスター・ビジョルド著;梶元靖子訳 『スピリット・リング』, 2001, 933)
その度、LANケーブルを一度抜いて、また差し込むと直ります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器)
彼は水桶をとり井戸端で水を汲み、台所の水溜めを満し、庭を掃き雑草を抜く。
(津本陽著 『椿と花水木』, 1994, 913)
<もの>から
目のまえで、一人の若い男が湾曲した短剣をから抜き、それを自分の胸先に構えたのだ。
(今福竜太ほか編 『旅のはざま』, 1996, 908)
電気ポットなどの電気製品を長時間使わない時には、コンセントからプラグを抜いて、主電源をこまめに切るようにしましょう。
(広報南アルプス, 2008, 山梨県)
<道具>で
どうしても気になるなら、女性用カミソリでそったり、ちょっといたいのをがまんすれば、毛ぬきでぬく方法もあります。
(高柳美知子著 『性ってなに?』, 2003, 367)
<気体>を
タレとお肉を袋に入れて、空気を抜いてしっかりしめます。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<液体>を
風呂のを抜かずにためておくと、生活用水として利用できます。
(広報南アルプス, 2008, 山梨県)
鶏ガラは水につけ、水を流しながら水がきれいになるまでさらして、を抜く。
(NHK社会情報番組編;小野清彦監修 『「プロが教える」きほんの洋食』, 2002, )
<道具>で
深海魚も同じで、浮き袋の空気が膨張して目玉が飛び出したりしますが、注射針などで空気を抜けば元に戻ります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 数学、サイエンス)
<気力>を
が、少しでもを抜くとあっさり負けてしまう。
(料理の鉄人制作チーム編 『料理の鉄人・完全レシピ集』, 1995, 596)
<身体部位(の力)>を
手を挙げる時に肩の力を抜き、肘を垂下させる。
(梁薇著 『太極拳への誘い』, 2004, 789)
<襟>を
純子は、浴衣と丹前のをぬいて着ているマツの色っぽさに、息を飲んだ。
(田中雅美著 『死神村の三百歳探偵団』, 1987, 913)
<様態>
一般的に、フォーマルのときは衿を深くゆったり合わせ、衣紋を多めに抜きます。
( 『帯の常識と帯結び』, 2003, 593)
<もの>を
B氏はそれを残りのカードの中にいれて二、三回きり、一枚のカードをぬいた。
(週刊朝日風俗リサーチ特別局編著 『デキゴトロジー』, 1993, 304)
<不要なもの>を
家庭で衣服についた油性のしみを抜くのに石油エーテルや石油ベンジンを使うことがある.
(伊東広ほか著 『化学物質の小事典』, 2000, )
知人が引越したきり住民票を抜いたまま新しい住居に移動していませんがこのまま放置してしまうとどうなるのでしょうか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 公共施設、役所)
じゃが芋は皮をむいて4つに切り、水に漬けてアクを抜く。
(クロワッサン, 2002, 一般)
鮭のアラは熱湯に通して臭みをぬき、野菜もゆがいておくのがコツ。
(文化庁編著 『お雑煮100選』, 2005, 596)
<こと>を
また、朝食を抜いたり、ダイエット目的で偏食をする人も増えています。
(畑山幸司著;郷龍一編著 『コラーゲンで身体をリセット』, 2004, 498)
<価値のあるもの>を
聞いてくれよぉ、おやじったらさぁ、俺が財布からを抜こうとしたら、怒ったんだぜぇ。
(錦岡龍司著 『1Kのセレブ』, 2005, 914)
<もの>から
弟の場合、親の財布からお金を抜いたのがバレ、問いただしてみると上級生からせびられていた様です。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 子育て、出産)
<様態>
内職とは隠語で内引き、つまり内緒で店の金を抜くことを指す。
(平山夢明著 『東京伝説』, 2005, 913)
<もの>を
2部屋と階段、廊下のを抜き広々とした台所とリビングにした。
(クロワッサン, 2002, 一般)
<道具>で
まず、キットハウスの壁をドリルでブチ抜き、風呂場とトイレのためのスペースを在来工法により増築。
( 『自分でつくるキットハウス』, 2005, )
<場所>を
戦巧者の清洲小守護代、坂井大膳の挑発に正面から応じ、松葉、深田両城を抜き、清洲城をはだか城としてしまった信長勢の戦力は、尾張の諸豪族に衝撃を与えた。
(津本陽著 『下天は夢か』, 1989, 913)
<人>を
だが、小林祐輔がまたもスタートからの1周だけで3台を抜いて3番手に、そして3周目の130Rで大西を抜いてトップに浮上する。
(AUTO SPORT, 2005, 機械)
<乗り物>を
ステアリングを左右に振って、先行するを抜いていく。
(馳星周著 『虚の王』, 2000, 913)
<場所>で
130Rでまずは安達を抜き、90度コーナーで甲野も抜いてトップに立つ。
(AUTO SPORT, 2005, 機械)
<人・組織>を
1982年に小型電池の生産量で初めてアメリカを抜いて以来、中国は電池生産大国となっている。
(エコノミスト, 2003, 経済/経営)
<人・組織の成果>を
2日間の動員数で『シュリ』の記録を抜き、歴代第一位に。
(おとなぴあ, 2001, 一般)
<様態>
あの数年前の順天堂の選手が作った区間記録を軽々と抜くほどだもの。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<形>を
2mmの厚さにしたパイ生地の上に直径10cmのセルクルでをぬき、円形にのばす(両端はあまりのばさないようにする)。
(北嶋愛著;Kitajima Ai Cooking Salon編 『Mariage』, 2002, 596)
<もの>を
表面に溶き卵をぬり、切り落とした生地を葉の形で抜いてふちに飾る。
(石澤清美著 『手づくりスウィーツ』, 2002, 596)






























歯(永久歯)は抜いてしまうと二度と生えてこないので、最近はできるだけ歯を抜かない、削らない治療が増えています。
大丈夫じゃないよ!ちょっとでも気抜いたら、すぐ抜かれちゃうもん。
ううん。去年はゴール直前で抜かれて2位だったの。
足を抜く

意味
好ましくない関係を断ち切る
用例
一度政治の世界に足を踏み入れれば、なかなか足を抜けなくなる
コーパスからの用例
反面馴れて心地よい乞食生活はややもすれば、この社会から足をぬくことをひきとめていた。 (西川一三著 『秘境西域八年の潜行抄』, 2001, 292)
生き馬の目を抜く

意味
(生きた馬の目を引っこ抜くほど)すばしっこく、油断も隙もない
用例
華やかに見える芸能界だが、水面下では生き馬の目を抜く激しい競争を生き延びなければならない。
コーパスからの用例
しかし、生き馬の目を抜くと言われる投資の世界では、結果が数字ではっきりと出てきます。 (久保知行著 『わかりやすい企業年金』, 2004, 366)
魂を抜かれる

意味
呆けた状態になる
用例
彼が魂を抜かれたという美しい風景を、私も一度は見てみたい。
コーパスからの用例
捜査員は、玄関の前に魂を抜かれたような顔で立っていた少年から事情を聞き始めた。 (佐瀬稔著 『金属バット殺人事件』, 1998, 913)
度肝を抜く

意味
非常に驚かせる
用例
そのバンドは、観客の度肝を抜くパフォーマンスで世界に名をはせた。
コーパスからの用例
早足で追った二人は、新たに生じた光景に、度肝を抜かれた。 (伊達将範著 『Daddyface冬海の人魚』, 2001, 913)
毒気を抜かれる

意味
相手の対応によって、意気をそがれる
用例
よほど今回の件がこたえたのか、彼はすっかり毒気を抜かれたようだ。
コーパスからの用例
とぼけた答えに、女王はやや毒気を抜かれた態で頷いた。 (吉田直著 『トリニティ・ブラッド』, 2003, 913)
抜き差しならない

意味
刀を鞘から抜いたり鞘に差したりできない状態にあるように、動きが取れない
用例
借金が膨らみ、抜き差しならない状況になってしまってから後悔しても遅い。
コーパスからの用例
はじめは単なる付き合いだろう、と気にもとめなかった留喜が、ようやく小さな不安を抱くようになった頃には、すでに事は抜き差しならない事態になっていたのだった。(河治和香著 『秋の金魚』, 2005, 913)
複合動詞 V1

抜き取る、抜き去る、抜き出る、抜き出す
複合動詞 V2

やりぬく、頑張りぬく、走りぬく、すっぱ抜く、選り抜く、勝ち抜く、見抜く、追い抜く、生き抜く、鍛え抜く、戦い抜く、考え抜く、苦しみ抜く、打ち抜く、出し抜く、切り抜く、引き抜く、困り抜く
複合名詞

ごぼう抜き、選り抜き、勝ち抜き戦、毛抜き、栓抜き、しみ抜き、手抜き、型抜き、生え抜き、骨抜き、抜き刷り、抜き書き、抜き打ち
抜く(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形ぬく
ない形ぬかない
~なかったぬかかった
ます形ぬき
~ませんぬきま
~ましたぬきした
~ませんでしたぬきまんでした
~ときぬくとき ぬく
ば形
意向形
て形ぬいて
た形ぬいた
可能形ぬける
受身形ぬかれる
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