乗せる・載せるのコアイメージ

1.積載他動詞初級★★★
表記乗せる、載せる
人・動物が、人・動物・ものを、ものの上に置く。
文型
<人・動物>が<人・動物・もの>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
娘を膝に乗せて本を読んでやる。
「福岡から明太子が届いたよ」「炊き立てのご飯に乗せて食べたいね」
三脚に載せたカメラを構えている人もいた。
ここのラーメンは、具材がたっぷりと乗せられたピリ辛のゴマ味噌スープが人気だ。
やかんに水を入れ、コンロに乗せて火にかける。
観光客を背中に乗せた象が、のっしのっしと敷地内を歩いている。
コロケーション
<人>を
子供、赤ちゃん、娘、息子
<動物>を
犬、猫、インコ、ハムスター
<もの>を
荷物、チーズ、卵、タオル、具、鞄
<もの>に
膝、肩、荷台、脚立、網棚、テーブル、ご飯、トレー
<様態>
さらに、しっかり、むりやり、そっと、少し、たっぷり、いきなり、どんどん
非共起例
<もの>を
 トラックの荷台に灯油[ガス]を載せる
 トラックの荷台に灯油[ガス]を積む
ひとまとまりのものが別のものの上に位置することを表し、液体や気体などには(それが缶やボンベに入っていたとしても)「のせる」は用いられない。
解説
人・動物が、人・もの・動物をあるものの上に置くことを表す。なお、典型的には地面よりも高くなっているものの上にものを置くことを表す。
類義語・反義語
類義語置く、積む(荷物を積む)
反義語


2.乗車他動詞初級★★★
表記乗せる、載せる
人が、人・ものを、乗り物・動物の上・中に置く。
文型
<人>が<人・もの>を<乗り物・動物>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼はストレッチャーに乗せられて手術室に入っていった。
資源ごみを自転車に載せて近くの集積所まで捨てに行く。
近くの牧場で初めて馬に乗せてもらった。
「新生児は飛行機に乗せられますか」「生後1ヵ月未満はやめた方がいいですよ」
現在、一般人を貨物船に乗せることはありません。
「引っ越し会社のトラックって、乗せてもらえるのかな」「無理だと思うよ」
コロケーション
<人>を
人、客、乗客、彼女、家族
<もの>を
荷物、物資
<乗り物>に
① 乗り物:車、船、飛行機、ベビーカー、車椅子、ストレッチャー、台車
② 乗り物の部分:助手席、シート
<動物>に
馬、ロバ、ラクダ
<様態>
① 頻度:はじめて、いつも、よく、たまに
② 様態:そのまま、むりやり、強引に、無料で、ただで
<場所>から
家、駅、そこ、ここ、港
<場所>まで
そこ、駅、ホテル
非共起例
<乗り物>に
 子供がせがんだので、私が支えてローラースケートに乗せてやった。
 子供がせがんだので、私が支えてスケートボードに乗せてやった。
移動物であっても、足に装着するようなものの場合には「のせる」は用いられない。
解説
この意味の「のせる」は、人が人・ものをあるものの上に置くという点では語義1と同様であるが、着点となるものは運動・移動を可能にする乗り物に限定されている。また、着点は運動・移動を可能にする乗り物であるため、乗り物に対象を置くことによって対象を移動させることを表すこともできる。
 息子を東京まで乗せて、そこからは一人で新潟に向かった。
なお、以下のように物理的物体ではなく「夢」や「希望」のような抽象物を対象とすることもある。
 人類の夢と希望を載せたロケット
類義語・反義語
類義語積む(荷物を積む)
反義語おろす


3.水流・気流の利用他動詞初級★★★
表記乗せる
人が、ものを液体・気体の動きに合わせて移動させる。
文型
<人>が<もの>を<水流・気流>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今日はボートを潮に乗せて、流しながら釣りましょう。
体にたまった老廃物は、マッサージでリンパの流れに乗せてスムーズに排出してあげましょう。
彼は凧をうまく風の流れに乗せてゆっくりと大空に舞い上げた。
ルアーを潮の流れに乗せて明暗部へ流し込み、橋の下に隠れているシーバスを誘う。
風のある日はゴルフボールの弾道を高くして、風に乗せて距離を稼ぐこともできます。
人は酸素を肺から吸収して、血液に乗せて体の隅々まで運びます。
コロケーション
<水流>に
潮、潮の流れ、水の流れ、血液
<気流>に
風、気流
<様態>
うまく
非共起例
<水流>に
 に乗せてカヌーを進める。
 川の流れに乗せてカヌーを進める。
「川」自体流れのあるものであるが、「川に乗せる」とは言えず、必ず「流れ」を伴う。
解説
この意味の「のせる」は、運動・移動を可能にする乗り物にものを置くことを表す語義2と、ものを移動するものに置くという点で類似している。一方で、語義2の着点が移動のために用いられる乗り物や動物であるのに対して、語義3は動きのある液体や気体である点が異なる。
なお、この意味の「のせる」は、「<水流・気流>に乗せて運ぶ[舞い上げる]」のように、単独ではなく移動を表す他の動詞とともに用いられることが多い。


4.調和他動詞上級
表記乗せる
人が、人・物事を別の物事の流れに沿うようにさせる。
文型
<人>が<人・物事>を<物事の流れ>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私の気持ちを歌に乗せて人々に届けたい。
社会に出るといつの間にか競争のレールに乗せられ、したくもないことをしているのです。
あの会社は、商品を通常の流通ルートに乗せないで低価格化を実現し、急成長した。
企画段階で良い製品だと思っても、生産ラインに乗せる際には何かと課題が発生するものだ。
地域の素材を商品化し、流通に乗せるには、地域住民の協力が必要だ。
子供が小さいころから塾に通わせる親たちは、子供を人生の成功コースになんとか乗せようと必死だ。
コロケーション
<物事>を
事業、経営、経済、ビジネス、会社、仕事、生活
<物事の流れ>に
軌道、ルート、レール、音楽、リズム、曲
<様態>
なんとか、しっかり、うまく、ちゃんと
解説
この意味の「のせる」は、物事を別の物事の流れに沿うようにさせるという点で、ものを水流や気流の流れに合わせて移動させることを表す語義3と類似している。ただし、その流れは水流や気流のような具体的な存在ではなく、プロセスや音楽など、抽象的な道筋を持つ物事の流れである。
誤用解説
上述のように、二格に来るのは何らかの流れを持つ物事であるため、例えば以下のように「笛の合図」に合わせる場合であっても、笛が一度だけ吹かれた場合には「のせる」とは言えない。一方笛を何度も吹くことによって音の流れ(リズム)が生み出される場合には「のせる」を用いることができる。
 笛の合図に乗せて踊り始める。(笛が一度だけ吹かれる場合)
 笛の合図に乗せて踊りを練習する。(笛が連続して吹かれリズムになっている場合)
類義語・反義語
類義語
反義語はずす(出世コースからはずす)


5.伝達他動詞上級
表記乗せる
人が、情報を電波の動きに合わせて移動させる。
文型
<人>が<情報>を<電波>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
スマートフォンの普及に伴い、音声をデータ通信網に乗せるIP電話サービスが登場した。
今日のラジオでは、ゲストと電話で話し、それを放送に乗せる予定です。
動画データをサーバーに乗せて配信する。
個人間のやり取りを公共の電波に乗せて一般公開するのはいかがなものか。
政治家の問題発言がメディアに乗せられて世論を左右する現状に、私は危機感を持っています。
一度ネットワークに乗せられた情報は、一瞬のうちに広範囲に伝わってしまう。
コロケーション
<もの>を
データ、情報、声、シーン、場面
<電波>に
電波、サーバー、メディア、ネットワーク
<様態>
すぐに、しっかり
非共起例
<情報>を
 乱闘を電波に乗せる。
 乱闘シーンを電波に乗せる。
対象はひとまとまりの情報として捉えられるものであるため、出来事が対象となる場合には例えば「乱闘」ではなく「乱闘シーン」や「乱闘の場面」のようになる。
解説
この意味の「のせる」は、情報を電波によって運ぶことを表し、人がものを液体・気体の動きに合わせて移動させることを表す語義3と、移動物によってある場所に運ぶことを表すという点で類似している。つまり、浮きなどを水の流れに合わせて移動させるように、情報を電波によって移動させることを表す。


6.同調・参与他動詞中級★★
表記乗せる
人が、人を物事に参与させる。
文型
<人>が<人>を<言動>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
儲け話にまんまとのせられて、金をだまし取られてしまった。
私はすぐに相手のペースに乗せられてしまいます。
うまい宣伝文句に乗せられて新作映画を見に行ったが、つまらなかった。
マスコミの思惑に見事に乗せられて大騒ぎしている。
知識を持たない人間は扇動に乗せられやすいので気をつけなければならない。
私も彼の計画に乗せてもらうことにした。
stairsあの番組、のせられて買っちゃいますよね~。
コロケーション
<言動>に
① 言葉:口車、儲け話、甘い言葉
② 考え:策、計略、思惑
③ 行為:よいしょ、誘導、扇動
<様態>
まんまと、すっかり、安易に、容易に、見事に、簡単に
解説
この意味の「のせる」は、人が人を自分の言動によってある物事に参与させることを表しており、人が乗り物に人(他者)の身を置くことを表す語義2と類似している。語義2では、移動のための乗り物に他者の身を置くことを表し、その人を<乗り物>を利用してある場所へ連れていくことをも表すことができるが、この意味の「のせる」は、嘘や計画などの<言動>に、人(相手)の身を置くことで、その人をある状況へと運ぶことを表す。この<言動>が扇動やうまい話などマイナスのものであれば、それに「のせる」ことはマイナスの事態に対象である人を運ぶ(参与させる)ことにつながり、一方でその<言動>がマイナス評価を持たないものであれば、それに「のせる」ことは単にある事態に参与させることにつながる。これは、この意味の「のせる」が語義2と同様に、動きのあるものに身を置かせることを表すためである。
なお、この意味の「のせる」は受身形で用いられることが多く、また自動詞「のる」の対応する語義と比較すると、マイナスの事態に参与させる(受身形が一般的なので、<参与させられる>)ことを表す方が多い。
誤用解説
<言動>に「話」があるが、以下の「内緒話」のように話の様態を表す語とは共起せず、「うまい話」のように、計画や提案などの話の内容を表すものとのみ共起する。
 内緒話に乗せられた。
 うまい話に乗せられた。(この場合、「話」は相手の持ち掛けてきた事柄など、話の内容を表す)


7.付着他動詞中級★★
表記乗せる
人が、物を別のものの表面・内部につける。
文型
<人>が<もの>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
口紅を塗ったら仕上げにグロスをちょんちょんと乗せる
ピンクのシャドウをまぶたに乗せ、黒のアイライナーでまつ毛の間を埋める。
爪の根元にラインストーンを乗せて豪華に仕上げました。
油絵の具の上から顔料を部分的に乗せて定着させる。
陶器の表面にビーズを乗せてさらに焼く。
「チークの使い方がわからない」「顔より暗い色を頬の高い位置に楕円形に乗せるといいよ」
コロケーション
<もの>を
① 染料:インク、絵の具、塗料
② 化粧:ファンデーション、チーク、アイシャドー、グロス
③ 飾り:ラインストーン、ビーズ、石
<もの>に
唇、頬、紙、キャンバス、肌、爪
<様態>
しっかり、少し、たっぷり、うまく、軽く、ある程度、薄く
解説
この意味の「のせる」は、ものを別のものの上に置くことによって、そのものにぴったりと付着させることを表す。したがってこの意味は、あるものを別ものの上に置くことを表す語義1と原因と結果の関係にある。なお、語義1は膝やテーブルの上に対象である人やものを置くことを表すが、この意味の「のせる」はその結果として付着させることに焦点が当たっているため、ものの表面に対象が付着すれば、垂直方向で捉えた場合の「上」である必要はない。
誤用解説
この意味の「のせる」は、画びょうやテープ等を用いて物を別のものに付着させる場合には用いられない。
 壁にポスターをのせる
 壁にポスターを貼る
類義語・反義語
類義語つける(ファンデーション[ラインストーン]をつける)、塗る(ファンデーション[色]を塗る)
反義語おとす


8.掲載他動詞中級★★
表記載せる
人が、情報を紙面に掲載する。
文型
<人>が<情報>を<紙面>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
製品のパンフレットに使用例を載せる
この本は、新進作家5人の短編が載せられている。
「文章だけでは発表会の様子が伝わらないかな」「それなら、写真も載せよう
アンケート調査の結果は冊子の5ページ目に載せてあります。
新聞に広告を載せたら問い合わせが倍増した。
ホームページには、お客様から寄せられたご意見をそのまま載せています
コロケーション
<情報>を
写真、情報、記事、広告、画像、文章、名前、図、表、例、動画
<紙面>に
新聞、教科書、雑誌、本、地図、リスト、ページ、サイト、メニュー
<様態>
そのまま、敢えて、必ず、詳しく、大きく、小さく、いち早く
解説
この意味の「のせる」は、インク等のものを別のものに付着させることを表す語義7と原因と結果の関係にある。つまり、語義7ではインクのような物理的物体を紙などの別の物理的物体に付着させることを表すが、この意味の「のせる」では、インクを付着させた結果として、それによって情報が紙面に記載されることを表す。なお、インターネットの普及により、「ホームページに載せる」、「ネットに載せる」のように、紙面でない場合も可能になっている。
誤用解説
この意味の「のせる」の対象は、伝達内容を伴う<情報>であるため、記号や文字であってもそれが特別な情報としての意味を持たない模様のようなものであれば、「のせる」を用いることはできない。
 ノートに文字[丸印]を載せる
 ノートに文字[丸印]を書く
類義語・反義語
類義語掲載する
反義語


9.付加他動詞上級
表記乗せる
人が、ものを別のものに加える。
文型
<人>が<もの>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
高速道路は加速車線が十分にあるので、十分にスピードを乗せて合流できます。
商品の仕入値に一定のマージンを乗せて、売値を決める。
会社を買収する時は、事業価値にプラスして買収プレミアムを乗せる場合があります。
「定期保険特約付き終身保険て、難しい名前だね」「それは、終身保険に定期保険を乗せた保険のことだよ」
「こちらが新商品です。チョコレートに桃の香りを乗せてみました」
日本製品を海外で売るには、「日本製」ということにどれだけ価値を乗せられるかがポイントだ。
コロケーション
<もの>を
価値、スピード、香り、甘味
<様態>
しっかり、ちゃんと、うまく、十分(に)
解説
この意味の「のせる」は、あるものと別のものを一体にするという点で、ものを別のものにぴったりと付着させることを表す語義7と類似している。一方で、語義7では物理的物体を別の物理的物体に付着させることを表すが、この意味の「のせる」は、味や価値などの効果をあるものに加えることを表すという点で異なる。
誤用解説
「のせる」は典型的に、あるものを別のものの上に置くことを表すため、単にあるものに同種のものを加えるという場合には用いられない。
 給料に3万を乗せて支払う。
 給料にインセンティブの3万を乗せて支払う。
類義語・反義語
類義語加える(スピードを加える)、付ける(価値をつける)、足す(甘味を足す)
反義語落とす(スピードを落とす)、引く(金利を引く)


10.一致他動詞上級
表記乗せる
人が、指示標識をものに合わせる。
文型
<人>が<指示標識>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
画像の上にマウスポインタを乗せるとコメントが出てきます。
画像にカーソルを乗せるとコメントが見られます。
テキストボックスの枠線にマウスポインタを乗せてください。
ポインターが乗せられた部分は写真が表示されるようになっている。
リンクや画像などにマウスを乗せている間は、カーソルの形が変わります。
このページでは、テキスト上にマウスカーソルを乗せた時に白から黒へと表示が切り替わる。
コロケーション
<指示標識>を
カーソル、ポインター、マウス
<もの>に
リンク、画像、文字、URL、メニューボタン、アイコン
<様態>
まず、しばらく、少しの間
解説
この意味の「のせる」は、ものを別のものにぴったりと合わせるという点で、ものを別のものにぴったりと付着させることを表す語義7と類似している。一方で、語義7はファンデーションや塗料などを実際に肌や紙などに付着させることを表すが、この意味の「のせる」はパソコン等の画面上のカーソルやレーザーポインターの光を当該部分に合わせることを表すという点では異なる。なお、語義7と同様に、ものの表面に対象が合っていれば、垂直方向で捉えた場合の「上」である必要はない。
誤用解説
<指示標識>は主にパソコン等の画面上に現れるマウスカーソルやポインターであり、「レーザーポインター」のような<光>をある部分にぴったりと合わせるという場合には「のせる」ではなく「あてる」を用いる。
 注目してほしい部分にポインターを乗せる
 注目してほしい部分にポインターを当てる
類義語・反義語
類義語合わせる、置く
反義語


11.加重(身体部位)他動詞初級★★★
表記乗せる
人・動物が、身体部位をものに置く。
文型
<人・動物>が<身体部位>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
目をつぶり、背もたれに頭を乗せて休む。
犬に手を差し出して「お手」と言うと、前足を乗せてくる。
猫がソファの肘置きに顎を乗せて寝ている。
自転車のペダルに片足を乗せた状態で信号を待つ。
日本では、膝を折ってその上にお尻を乗せる姿勢を「正座」といいます。
正座から立ち上がるときは、両手を膝の上に乗せた状態で、腰を浮かせて両足のかかとを同時に上げてつま先を立てるようにします。
コロケーション
<身体部位>を
頭、足、尻、手
<もの>に
テーブル、肩、ペダル、座席
<様態>
軽く、そっと、しばらく、すぐに
非共起例
<身体部位>を
 うつ伏せになって枕にを乗せる。
 うつ伏せになって枕にを乗せる。
身体部位であればどの部分でも良いのではなく、二格で表される着点に接してそのものに重力を掛けることのできる部位のみに用いられる。
解説
この意味の「のせる」は、ものを別のものの上に置くという点で語義1と類似している。一方で、語義1では、対象は主体とは別の存在である人、動物、ものであるが、この意味の「のせる」の対象は主体の一部である身体部位である点で異なる。
類義語・反義語
類義語あずける(頭をあずける)
反義語


12.加重(重量)他動詞上級
表記乗せる
人が、重量をものにかける。
文型
<人>が<重量>を<もの>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
自転車でスピードを出すときは、少し前傾姿勢になってハンドルに上半身の体重を乗せます
釣りの上手い人はロッド全体にルアーの重みを乗せて投げる。
「雪道は歩きづらいね」「歩幅を小さくしてかかとに体重を乗せすぎないようにするといいよ」
片手で圧迫しても止血しないときは、両手で体重を乗せながら圧迫止血します。
股関節の治療には、正しい歩行で関節に適度に荷重を乗せることが大切です。
消火器を使うときは、地面においてレバーに体重を乗せるようにして押すと楽です。
stairs全体の重みを乗せて押すのがマッサージのコツなんだよ。
コロケーション
<重量>を
体重、重心、重み
<もの>に
軸足、かかと、シート、前輪
<様態>
しっかり、軽く、ちゃんと
解説
この意味の「のせる」は、あるものにものの重量をかけることを表しており、この意味は語義11と原因と結果の関係にある。つまり、あるものの上に身体の一部を置く(語義11)ことによって、そのものに重量を加える(語義12)ことを表す。なお、基本的には人が身体の一部やものを別のものの上に置くことで、そのものに体重をかけることを表すが、例文に示したように、別のものではなく身体全体の中である部分に体重をかけること(「かかとに体重を乗せる」)や、さらに二つのものの位置は関係なく重量をかけること(「ロッドにルアーの重みを乗せる」)を表すこともできる。
誤用解説
語義解説で述べたように、典型的には下に位置するものに重量をかける状況で用いられるが、例文中の「ロッド全体にルアーの重みを乗せる」では、実際にロッド(竿)の上にルアーを置いて、ルアーの重みをロッドにかけるのではない。したがって下にあるものに上に来るものの重量をかけるという状況以外でも用いられるように思われる。しかし、以下の例では「のせる」とは言えない。
 手に、かばんの重みをのせる。(手にかばんを提げた状態でそのカバンの重みを手に感じている、という状況)
これは、重量を感じる人の手の向きが関与していると考えられる。手に提げたかばんの重みを感じる場合、手は垂直軸の下方から重みを感じるが、ロッドの場合にはロッドを持つ手は水平方向に位置しており、竿を振ってルアーを飛ばす際のルアーの重みは、ロッドを振りかぶった時には後方から、振り下ろす時には前方に、ルアーによって竿が引っ張られることによって感じるが、かばんを手のひらに乗せた時と同様に、竿を持つ手に上から重量がかかるかのように感じられるのである。このような状況でのみ、上に位置するものの重量がその下にあるものにかかるという状況でなくても、「のせる」を用いることができる。
類義語・反義語
類義語かける
反義語


13.超過他動詞上級
表記乗せる
人が、数値で表されるものを基準に到達させる。
文型
<人>が<数値で表されるもの>を<基準>にのせる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ぼろぼろだった売上をなんとか72億円台に乗せる
3年後には売上を10億円の大台に乗せようと頑張っている。
新しい商品は宣伝費などにすごくお金がかかり、採算ラインに乗せるのは難しそうだ。
今年の試験は合格基準が高めだったので不安もあったが、なんとか合格ラインに乗せられた
男子体操個人総合で銀メダルだった選手は、「ようやく90点台に乗せられて嬉しい」とコメントした。
有料電子新聞は二か月足らずで二万人の読者を確保し、その二か月後には十万人の大台に乗せた
stairs田村選手は210点台に乗せて現在1位。
コロケーション
<数値で表されるもの>を
売り上げ、体重、点数、年収、収入
<基準>に
大台、~人台、~点台、合格ライン、採算ライン
<様態>
なんとか、ようやく、ついに
非共起例
<基準>に
 模試で最低ラインにのせた。
 模試で合格ラインにのせた。
この意味の「のせる」の<基準>は、現状よりも多い基準や上の基準に限られ、例えば体重であれば増加、点数であればより大きい点数、商品の生産であればより多い量を表す。これは、「のせる」が本来ものをあるものの上に置くことを表すためであり、より低い方向への移動(推移)を表すことはできないのである。
解説
この意味の「のせる」は、数値で表されるものを何らかの基準に到達させることを表す。これは、人があるものを別のものの上に置くことを表す語義1と、ものを別のものの上に移動させるという点で類似している。したがって、上で述べたように、この意味の「のせる」の<基準>は、現状よりも多い数量の基準に限られる。


乗せる・載せるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<人>を
「六十歳になるまでに初孫を抱きたい」という願いは少々遅れてかなったが、佳乃ちゃんをひざに乗せ、幸せに満たされている。
(伊藤弘毅著 『玄米発酵食品で赤ちゃんができた』, 2004, 495)
<動物>を
よしのは、裏の隠居部屋でを膝に乗せてのんびりと日向ぼっこをしていた。
(森村誠一著 『人間の証明』, 1977, 913)
<もの>を
グラタンを作るときいつもとろけるチーズを乗せていますが粉チーズをかけて焼いた場合どんな感じになるのですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 料理、グルメ、レシピ)
<もの>に
そしてオカメインコをに乗せたまま、帳場で、上野から谷中根津界隈の英字オリジナルタウンマップをくれた。
(田中良成著 『超貧乏旅』, 1996, 291)
<人>を
青く塗られた市バスは、すでに満員に近いを乗せて、エンジンの音をさせていた。
(畑山博著 『神よりも尊き者たち』, 1990, 913)
<もの>を
軽い朝食をし、自転車に荷物を乗せると、屋敷の方々が寂しそうに見詰めている。
(野村興一著 『ヤング・カップル江戸へ行く』, 2003, 913)
<乗り物>に
女は公園の外れの駐車場に停めてあったに私を乗せた。
(水木楊著 『ジールス国脱出記』, 1990, 913)
彼らは慎重にマイセン陶器の入った木箱をトラックの運転台に運びあげ、保存のいいアンティーク家具を荷台に乗せた。
(ロルフ・ヴィルヘルム・ブレードニヒ編;池田香代子,真田健司訳 『悪魔のほくろ』, 1992, 388)
<動物>に
新婦はに乗せられて新郎のもとまで運ばれた。
(林穣二著 『北欧に魅せられて』, 2003, 289)
<場所>から
ハミルトンとイヴォンヌがペギーに会えるよう、ホテルから大急ぎでタクシーに乗せて連れていくつもりだった。
(ポール・アレクサンダー著;田中啓史訳 『サリンジャーを追いかけて』, 2003, 930)
<場所>まで
この自転車は車のトランクに入れて、お前と一緒にまで乗せていくことにするよ。
(オグ・マンディーノ著;坂本貢一訳 『十二番目の天使』, 2001, 933)
<気流>に
白い綿に種子をつけて、種に羽がついたようにに乗せて飛ばすわけです。
(Yahoo!ブログ, 2008, 住まい)
<物事>を
気力も体力も十分ですから、余裕で仕事を軌道に乗せることができるでしょう。
(小野十傳著 『「風角宝典」占い』, 2005, 148)
<物事の流れ>に
しかしなんとか国内でも販売ルートに乗せようとさまざまなキャンペーンを行ったのがこの年だという。
(家庭総合研究会編 『昭和家庭史年表』, 1990, 210)
<様態>
メインの店はダイアンに任せて、僕は新しい店を何とか軌道に乗せようと時間を費やした。
(レスリー・A.ヤークス,チャールズ・R.デッカー著;有賀裕子訳 『ビーンズ!』, 2004, 673)
<もの>を
八田は他局より遅れて59年に開局した毎日放送と手を組み、うめだ花月の舞台を電波に乗せた。
(ダカーポ, 2003, 一般)
<電波>に
横にある箱がトランスミッターで、そこから映像を電波に乗せて送っている。
(日本推理作家協会編 『ザ・ベストミステリーズ』, 2000, 913)
<言動>に
「ず〜っと愛し続けるよ」との甘い言葉に乗せられて結婚。
(女性セブン, 2002, 一般)
年齢にふさわしくないほど慎重な家康だが、うまうまとこの信玄のに乗せられた。
(津本陽著 『信長と信玄』, 2001, 914)
<様態>
なんか、私からすると、うまく口車に乗せられて、なんか無駄金使っちゃったなって気がするんだけど。
(青田吉弘著 『情報化社会対話集』, 2002, 007)
彼女の誘いに、うっかり乗せられ、香港に潜入したら最後、彼女ら一族の餌食にされるのは、火を見るよりも明らかである。
(和久峻三著 『死のハイテクビル・パニック』, 1989, 913)
<情報>を
今になってみると、本の袖に著者の写真を載せるのを拒んだことが心底よかったと思われた。
(ローリー・キング著;佐々田雅子訳 『奥津城』, 2001, 933)
『タイム』と『ピープル』誌は彼女と子供たちの特集記事を載せた。
(シドニィ・シェルダン著;天馬竜行訳 『神の吹かす風』, 1996, 933)
<紙面>に
注文に応じたものを書かなければ、出版社はまずその作品を雑誌に載せてはくれない。
(丸茂ジュン著 『耽美小説の書き方』, 1997, 901)
この詩は「少女と木の実」と題を改め、大正十五年冨山房発行の女学校用国語教科書に載せられた。
(阪田寛夫著 『ノンキが来た』, 1989, 913)
<もの>を
バイオ技術を駆使して土壌浄化や植林、環境リサイクルなどを進め、建設や土木、エンジニアリングなどの主力事業に付加価値を“乗せる”ことが大事なんです
(経済界, 2002, 経済/経営)
<身体部位>を
マリアはうなずいて席につき、テーブルに両手を乗せて長く細い指を組みあわせた。
(高橋義夫著 『北緯50度に消ゆ』, 1990, 913)
<もの>に
それがさ、椅子に座ってひざに手を乗せて、悔しそうに泣くんだ。
(矢作俊彦著 『ロング・グッドバイ』, 2004, 913)
<重量>を
ボールを打ったら素早く体重を左足に乗せていこう
(内藤雄士著 『内藤雄士の500円で必ず上手くなるアイアンショット』, 2005, )
<もの>に
軸足に体重を乗せた姿勢を保ちつつ、非軸足の足先を前に出したり引っ込めたりを繰り返す。
(松尾知之,宮崎光次,斎藤健治著 『少年野球体づくり虎の巻』, 2003, 783)
<様態>
ポイントは、ボードを真っすぐに走らせることと、蹴った後に重心を前足に完全に乗せることのふたつ。
( 『スノーボードクリニック』, 1999, 784)
<基準>に
終値では4営業日ぶりに45ドル台に乗せた。
(Yahoo!ブログ, 2008, 金融と投資)
九五九年、彼が創業した会社―のちにゼロックスの名で知られるようになる―は、はじめての光学複写機を生産ラインに乗せた。
(ビル・ゲイツ著;西和彦訳 『ビル・ゲイツ未来を語る』, 1996, 007)






























あの番組、のせられて買っちゃいますよね~。
全体の重みを乗せて押すのがマッサージのコツなんだよ。
田村選手は210点台に乗せて現在1位。
俎上に載せる

意味
食材を調理するためにまな板に乗せるように、ある物事や人物を検討するために議論の対象として取り上げることを表す。「俎上」とはまな板のこと。
用例
議会は、医療と介護の連携を深める施策を俎上に載せる考えだ。
コーパスからの用例
蘭学仲間を芝居の役柄にあてはめて笑うのだが、江漢も欠席裁判で俎上にのせられた。(新人物往来社編 『教科書が教えない歴史有名人の晩年』, 2005, 281)
複合名詞

上乗せ
乗せる・載せる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
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ます形のせ
~ませんのせま
~ましたのせした
~ませんでしたのせまんでした
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た形のせた
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