ぶつかるのコアイメージ

1.ものの衝突自動詞初級★★★
表記ぶつかる
移動しているものが、別のものに勢いよく接触する。
文型
<移動物>が<もの>と[に]ぶつかる、<移動物>と<移動物>がぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ドアがなかなか開かないので、体当たりでぶつかった
肩と肩が軽くぶつかっただけで喧嘩になった。
「人ごみで、しょっちゅう人にぶつかられるんだ」「もう少し注意して歩きなよ」
2人は曲がり角で危うくぶつかりそうになった。
高速を走っていると、車のフロントガラスに虫がぶつかってくる。
事故現場を見ると、車はガードレールに正面からぶつかっていることが分かる。
コロケーション
<移動物>が
① 身体(部分): 体、頭、肩、足、膝、歯、肘、手
② 乗り物: 車、船、飛行機、自転車
③ 生物: 鳥、虫、
④ もの: ボール、石、天体
<もの>と[に]
① 身体(部分): 体、頭、肩、足、膝、歯、肘、手
② 乗り物: 車、船、飛行機、自転車
<もの>に
木、電柱、ドア、壁、窓
<場所>で
交差点、道、廊下、曲がり角、付近
<様態>
勢いよく、思い切り、不注意で、よく、わざと、いきなり、激しく、強く、軽く
非共起例
<移動物>がぶつかる
 歩いていたら、虫にぶつかった
 歩いていたら、虫がぶつかってきた
「ぶつかる」では、主体はその接触によって衝撃を受け、それによって前進を妨げられるような状況でなければならない。従って、「歩いていたら前から来た人[タクシー]にぶつかった」は可能だが、接触しても主体に衝撃を与えないようなものと接触する状況では、例えば、「人間が虫にぶつかる」ではなく、衝撃を受ける方を主体として、「虫が人間にぶつかってくる」のように表現するのが普通である。
<移動物>がぶつかる
 しゃがんで靴ひもを直していたら、太郎と[に]ぶつかった。
 しゃがんで靴ひもを直していたら、太郎ぶつかってきた
接触によって主体側が衝撃を受ける場合でも、主体が静止している場合、「ぶつかる」を使うことはできない。「ぶつかる」の主体は移動していなければならず、上記のような場合には、静止している話者ではなく、移動している「太郎」を主体とし、「太郎がぶつかってくる」のように表現する。
<移動物>がぶつかる
 飛んできたボールが右目にぶつかった
 飛んできたボールが右目にあたった
接触の衝撃が強い場合でも、接触の対象がある範囲における一点である場合、「ぶつかる」ではなく「あたる」を用いるのが一般的である。
解説
「ぶつかる」の対象である<もの>が<移動物>であるか<静止物>であるかによって、対象と共起する助詞は区別される。対象が<移動物>である場合はト格を用い、<静止物>である場合には二格を用いる。
 自転車がタクシーにぶつかった。
 自転車がタクシーとぶつかった。
 車がガードレールぶつかった。
 車がガードレールぶつかった。
これは、ト格が対象からも働きかけのある相互動作を表す際に用いられるのに対して、二格は主体からの一方向的な働きかけがある動作の対象を表す際に用いられるためである。そのため、対象が<静止物>である場合にはト格と共起することができない。
誤用解説
上記のように、「ぶつかる」は、移動している主体(同士)がその接触によって衝撃を受け、それによって前進を妨げられるような状況でなければならない。従って、その接触が主体に衝撃を与えず、移動の妨げとならないような状況では用いられない。
 混雑した交差点で、多くの人とぶつかり、足を止めなかった。
 混雑した交差点で、多くの人とぶつかりながら(も)、足を止めなかった。
多くの人とぶつかるという状況では、前進し続けることは難しいと思われるが、この場合に「足を止めなかった」(前進し続けた)と言えるのは、「ながら(も)」によって、前進を妨げられる状況に反して前進し続けたという逆説が成り立つためである。言い換えれば、「ぶつかる」ことは通常その衝撃によって前進を妨げられるという事態を引き起こすということが想定されているということである。従って、以下のように、柔らかいものと接触する状況など、主体に衝撃を与えず、主体の移動の妨げとならないような状況では用いられない。
 ふとんに足がぶつかった。
 たんすの角に足がぶつかった。
さらに、この意味での「ぶつかる」では、それが意志的行為である場合、接触する対象と共起する助詞は二格に限られる。ト格を用いる場合には、単に接触の事実を表す。
 太郎が花子ぶつかる。
 太郎が花子ぶつかっていく。(意志的接触)
 太郎が花子ぶつかる。
 太郎が花子ぶつかっていく。(意志的接触)
最後の「太郎が花子とぶつかっていく」において、対象である花子も移動している場合(つまり、相互動作の場合)でも、ト格とは共起できない。
類義語・反義語
類義語あたる、接触する、衝突する、激突する
反義語


2.空気・水流・岩盤の衝突自動詞初級★★★
表記ぶつかる
空気・水流・岩盤が、前進の妨げとなるものに接触する。
文型
<空気・水流・岩盤>が<前進の妨げとなるもの>と[に]ぶつかる、<空気・水流・岩盤>と<空気・水流・岩盤>がぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大陸プレート同士がぶつかると、山脈ができる。
海風が山岳にぶつかる場所では、雷雲が発生する。
親潮と黒潮がぶつかる三陸沖にはプランクトンが集まり、絶好の漁場となっている。
寒気と暖気がぶつかると、大気の状態が不安定になり、前線が発生する。
この辺りでは、ぶつかった海流は表層から深層へ潜っていくため、運航に注意が必要だ。
寒流と暖流がぶつかっている場所は潮目と呼ばれる。
コロケーション
<空気>が
風、空気、寒気、暖気
<水流>が
流れ、潮、黒潮、寒流、暖流
<岩盤>が
プレート
解説
この意味では、<空気・水流・岩盤>といった主体は実際に移動するものではあるが、その移動自体や対象との接触を我々が知覚することは難しい。しかしながら、例えばプレートの接触によって地盤が隆起することや、それによって地震が生じるということ、また気団の接触によって天候が大きく影響を受けることなどから、問題となる移動主体(同士)が接触した際には大きな衝撃を伴うということと、それによって主体(同士)の進行が妨げられるという知識は持っている。それにより、<空気・水流・岩盤>の接触についても、「ぶつかる」を用いることが可能になる。
類義語・反義語
類義語接触する、衝突する
反義語


3.線状のものの合流自動詞上級
表記ぶつかる
長く続くもの(道路や川)同士が、ある場所で合流する。
文型
<長く続くもの>が<長く続くもの>と[に]ぶつかる、<長く続くもの>と<長く続くもの>がぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この先で、幹線道路と幹線道路がぶつかる
県道はここで国道にぶつかり、終点となります。
大通り同士がぶつかる交差点では、事故が多い。
二つのコースがぶつかる合流地点では、メインコースを滑っている人が優先です。
二つの川がこの橋のところでぶつかっている。
地図上の点を線で結び、さらに線と線がぶつかっているところに印をつける。
stairsここをまっすぐ行くと、国道にぶつかりますよね。
コロケーション
<長く続くもの>が
道路、川、通り、線、コース
<様態>
ちょうど
<場所>で
この先、ここ、(この)地点、(~の)ポイント
解説
ある方向に長く続くものが、別の方向から長く続くものとある地点で重なり、そこから元の方向とは異なる方向に続いていく場合や、元の方向はゆるやかに維持されるがいったんその地点で停止を強いられる場合など、本来の方向への移動が止められる(または妨げられる)という状況で用いられる。なお、川は上流から下流へと流れており、実際に移動するものと捉えられるが、道路や線(あるいは、地図上で確認できる川)などはそれ自体が移動しているわけではない。しかし、これらのものがある面に続いているのを見るとき、我々はそれに沿って視線を移動させる。このことから、線状に長く続くものについて、視線の方向に沿ってそのものが移動しているかのように捉えることができる。つまり、ここでの「ぶつかる」には話者の視点が反映されており、長く続くものに沿って視点を移動させ、ある地点でその移動が停止させられるような状況で、「道路[川、線]がぶつかる」のように表現することができるのである。
誤用解説
「ぶつかる」では、主体がその接触によって衝撃を受け、それによって前進を妨げられるような状況で用いられる。従って、本流と支流の合流地点について述べる際には、より大きな川に取り込まれていく川(支流)が「ぶつかる」ということはできるが、より大きな川(本流)がより細い川に「ぶつかる」ということはできない。
 支流が本流にぶつかる地点
 本流が支流にぶつかる地点
この場合、本来の方向への前進を妨げられるのは、本流から分岐したり、本流に流れ込んだりする、より細い川を表す「支流」であり、「支流」を主体として、「支流が本流と[に]ぶつかる」のように表現する。
類義語・反義語
類義語接触する、合流する、交差する
反義語


4.場所による停止自動詞中級★★
表記ぶつかる
移動している人・乗り物が、意図せず、前進の妨げとなる場所に出くわす。
文型
<人・乗り物>が<場所>にぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
右折するとすぐに環七にぶつかる
当てもなく歩いていたら、行き止まりにぶつかった
そうこうしているうちに、再び旧東海道にぶつかった
そのまま進むと十字路にぶつかるので、左に曲がってください。
国道にぶつかったら、そこを右に行ってください。
歩いていればどこかの駅にぶつかるだろう。
コロケーション
<場所>に
道路、~号線、通り、~線、交差点、行き止まり
<様態>
突然、いきなり、いつのまにか、すぐに
非共起例
<場所>にぶつかる
 この道をまっすぐ進んで、大通りにぶつかろう
 この道をまっすぐ進んで、大通りに出よう
この意味での「ぶつかる」は、主体が意志を持つ人(あるいは人が運転する乗り物)であっても、意志的行為には用いられない。
解説
この意味での「ぶつかる」の主体は、語義1と同様<移動物>であるが、<人・乗り物>に限定される。また、対象(<場所>)は物理的存在ではあるが、その対象との接触は物理的な接触ではなく、従って主体への衝撃も伴わない。語義1では、「ぶつかる」は衝撃を伴う物理的な接触を表しており、それによって主体である移動物の前進が妨げられることが想定されると述べたが、語義4では、主体が接触すること自体にではなく、対象の存在によって、移動している主体が前進を妨げられることに焦点が当たっている。
誤用解説
この意味での「ぶつかる」の対象は<静止物>であるため、対象からの働きかけはなく、相互動作を表すト格とは共起できない。
 まっすぐ行くと、行き止まりぶつかる。
 まっすぐ行くと、行き止まりぶつかる。
類義語・反義語
類義語出る(国道に出る)
反義語


5.集団による停止自動詞中級★★
表記ぶつかる
移動している人・乗り物が、意図せず、前進の妨げとなる集団に出くわす。
文型
<人・乗り物>が<集団>にぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
出勤中、交通渋滞にぶつかる
ラッシュにぶつかったら確実に遅刻だ。
渋滞にぶつからないように、早めに家を出よう。
ちょうど夕方のラッシュにぶつかってしまった。
「遅かったね」「デモにぶつかっちゃったんだよ」
ほぼ毎日ラッシュにぶつかっているので、家を出る時間をずらしてみた。
stairs渋滞にぶつかっちゃって……。
コロケーション
<集団>に
帰宅ラッシュ、通勤ラッシュ、渋滞、デモ隊
<様態>
ちょうど、不運にも
非共起例
<集団>にぶつかる
 帰宅中、職務質問にぶつかってしまった。
 帰宅中、飲酒検問にぶつかってしまった。
この意味での「ぶつかる」の対象は「壁」のように捉えられる、人・乗り物の<集団>である。複数人の警察官が並び、複数台の車が停止させられている「飲酒検問」は、そこに存在するだけで主体の移動を妨げる「壁」のようなものとして捉えることが可能であり、「検問にぶつかってしまった」のように表現することができる。一方で、「職務質問」は、主体の前進を妨げる「壁」のような集団として捉えられず、「ぶつかる」とは言いにくい。
解説
この意味での「ぶつかる」の主体は、語義4と同様<人・乗り物>に限定されており、また、対象は物理的存在ではあるが、その対象との接触は物理的な接触ではなく、従って主体の身体(本体)への直接的な衝撃も伴わない。また、この意味での「ぶつかる」は、主体が接触すること自体にではなく、移動している主体の前進が妨げられることに焦点が当たっているという点も語義4と同様である。一方、語義4の対象が前進を妨げる<場所>であるのに対して、この意味での対象は、前進の妨げとなる<集団>である。この<集団>は、特定の人の集合や乗り物(特に車)の集合であり、何らかの働きかけを直接主体に行ってくるのではなく、そこに存在するだけで主体の移動を妨げる「壁」のようなものとして捉えられる。
誤用解説
上記のように、対象となる<集団>は、それ自体が主体に働きかけを行うものではなく、そこに存在するだけで主体の移動を妨げる「壁」(<静止物>)のようなものである。従って、相互動作を表すト格と共起することはできない。
 夕方のラッシュぶつかった。
 夕方のラッシュぶつかった。
類義語・反義語
類義語遭う、遭遇する、出くわす
反義語


6.障害による停滞自動詞上級
表記ぶつかる
物事の進行中、意図せず、好ましくない状況に出くわす。
文型
<人(の計画)>が<好ましくない状況>にぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
大学受験は、人生において最初にぶつかる壁だ。
思いがけないトラブルにぶつかってしまった。
困難にぶつかっても、簡単に諦めるな。
早い段階で壁にぶつからせることで、子供たちの成長を期待する。
日本経済は今、長期的な問題にぶつかっている。
この本は、今人生の壁にぶつかっている人に向けて書きました。
コロケーション
<人(の計画)>が
計画、プロジェクト
<好ましくない状況>に
壁、問題、困難、疑問、障害、課題、悩み、限界
<様態>
今、最初に、思いがけず、すぐに
解説
この意味での「ぶつかる」の対象は、物事の進行の妨げとなる、<好ましくない状況>である。語義1は、移動(前進)するものが対象に激しく接触することを表しており、その衝撃により前進を妨げられることを含意しているが、この意味での「ぶつかる」では、物理的な行為としての前進ではなく、人の精神的成長や計画の進行などの抽象的行為を表している。また、語義4、5と同様、対象との接触自体にではなく、対象との接触により、物事の進行が妨げられることに焦点が当たっている。
誤用解説
この意味では、対象(<好ましくない状況>)の方からの働きかけがないため、相互動作を表すト格と共起することはできない。
 受験という壁ぶつかる。
 受験という壁ぶつかる。
類義語・反義語
類義語突き当たる、ぶち当たる、出くわす
反義語


7.日程・場所の衝突自動詞上級
表記ぶつかる
二つの物事が同じ時間または同じ場所で一緒になり、一方の物事の進行の妨げとなる。
文型
<こと(の日程・場所)>が<こと(の日程・場所)>に[と]ぶつかる、<こと(の日程・場所)>と<こと(の日程・場所)>がぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
小学校と中学校の運動会がぶつかった
祭日が日曜日とぶつかる場合は、翌月曜日が休日になる。
私の出張と妻の出産予定日がぶつかりそうだ。
旅行中、地下鉄ストにぶつかり、旅程が大幅に狂ってしまった。
旅行の出発日が、ちょうど祝日にぶつかっているので、早めに家を出よう。
「二階の会議室は使えるの?」「それが、別の会議とぶつかってしまったようで、別の部屋を用意しているところです」
stairs今回はちょうど大学のセンター試験とぶつかっちゃってさ。
コロケーション
<こと>が
会議、誕生日、予定、運動会
<時>が
祝日、祭日、時期
<こと>に[と]
会議、誕生日、予定、運動会
<時>に[と]
~曜日、祝日、祭日、時期
<様態>
ちょうど、不運にも、残念ながら
解説
この意味での「ぶつかる」は、二つのこと(の日程)が重なって好ましくない状況になることを表す。これは、予定している(進行中の)ことが、別のことと日程や場所において重なり、それによって予定が妨げられるためであると考えられる。
誤用解説
この意味での「ぶつかる」では、二つのこと(の日程)が重なり、それが話者にとって好ましくない事態であることを含意するため、単にあること(の日程)が別のこと(の日程)に重なる事態を表す際には、「あたる」を用いる。
 今年のクリスマスイヴは土曜日にあたるので、家族と過ごそう
 今年のクリスマスイヴは土曜日にぶつかるので、家族と過ごそう
 今年のクリスマスイヴは土曜日にぶつかるので、家族と過ごせない
「ぶつかる」のように表現した場合、それが話者にとって好ましくない(例えば、土曜日は別の用件があり都合が悪い)状況であることを含意してしまうため、話者にとって望ましい「家族と過ごす」ことを実現する文脈では用いることができない。
類義語・反義語
類義語あたる、かぶる、かち合う
反義語


8.人の対立自動詞中級★★
表記ぶつかる
異なる考え・感情を持った人・組織が、激しく対立する。
文型
<人・組織>が<人・組織>とぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
些細なことで母とぶつかった
大人になって、家族とぶつかることが少なくなってきた。
進路をめぐって父親とぶつかっても、考えを変えるつもりはない。
会議では、異なる主張を持つ者同士をぶつからせ、より良いアイデアを引き出します。
子供の頃は、周りの友達とぶつかりながら、人間関係を学んでゆきます。
医療現場の問題をめぐって、何度も医師会とぶつかっています。
コロケーション
<人>と
親、父親、母親、相手、友達、メンバー
<組織>と
会社、政府、委員会
<様態>
正面から、激しく、真っ向から、まともに、最初に、思いがけず
<こと>で[をめぐって]
進路、仕事、問題、~の件
解説
この意味での「ぶつかる」は、語義1と同様に激しい衝突を表すが、語義1とは異なり、物理的な衝突ではなく、抽象的な衝突(思考や感情の不一致による、人や組織の対立)を表している。
誤用解説
この意味での「ぶつかる」は、主体と対象からの双方向の働きかけがあるため、二格ではなく、相互動作を表すト格を用いる。
 今朝も母ぶつかってしまった。
 今朝も母ぶつかってしまった。
類義語・反義語
類義語衝突する、対立する、争う
反義語


9.考え・感情・能力の対立自動詞上級
表記ぶつかる
異なる考え・感情・能力が、激しく対立する。
文型
<考え・感情・能力>が<考え・感情・能力>とぶつかる、<複数の考え・感情・能力>がぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
消費税問題で与野党の主張が真っ向からぶつかった
演者のエネルギーが互いにぶつかって、素晴らしい舞台になった。
人と親密になればなるほど、率直な感情がぶつかることが増える。
与野党は存分に意見をぶつからせた
二国間会議では、さまざまな利害や思惑がぶつかり、それほど進展が見られなかった。
警察の見解が検察の見解と激しくぶつかっている。
コロケーション
<考え>が
意見、主張、価値観、思想、考え方、意志、思惑、利害、国益、アイデア
<感情>が
思い、気持ち、感情、プライド、情熱
<能力>が
力、能力、技術、エネルギー
<様態>
正面から、激しく、真っ向から、まともに、最初に
解説
この意味での「ぶつかる」は、物理的な衝突ではなく、抽象的な衝突(思考や感情の不一致)を表すという点で語義8と同様である。一方で、語義8の主体は人や組織だが、ここでは人や組織の持つ思考・感情・能力などが主体となる。
誤用解説
この意味での「ぶつかる」は、主体と対象からの双方向の働きかけがあるため、主体からの一方向の動作の対象を表す二格ではなく、相互動作を表すト格を用いる。
 私の主張がみんなの主張ぶつかった。
 私の主張がみんなの主張ぶつかった。
類義語・反義語
類義語衝突する、対立する
反義語


10.人・ことへの挑戦自動詞上級
表記ぶつかる
人が、人・ことに、勢いよく立ち向かう。
文型
<人>が<人・こと>にぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
どんなに大変なことでも、逃げないで正面からぶつかろう
今度の相手はまともにぶつかっても勝てる相手ではない。
先輩はいつも稽古で、「遠慮なくぶつかってこい」と言ってくれた。
本気で相手チームにぶつからせるために、監督は私達にいつも以上に厳しい言葉を掛けてきた。
勇気をもって困難にぶつかっているなら、今後道は開けるはずだ。
父は、僕が進学しないことに反対していたが、本音でぶつかっていったら分かってくれた。
コロケーション
<人>に
相手、相手チーム、敵、強敵、親
<こと>に
困難、壁、難題、問題
<様態>
まともに、真剣に、正面から、全力で、本気で、本音で、積極的に
非共起例
<人・こと>にぶつかる
 今度の練習試合では、積極的に格下の[弱小]チームにぶつかっていこう。
 今度の練習試合では、積極的に格上の[強豪]チームにぶつかっていこう。
語義1でも述べたように、「ぶつかる」は本来、移動主体が対象に勢いよく接触することを表し、その接触は衝撃を伴い、それによって前進を妨げられることを含意する。ここでの「ぶつかる」でも、主体は対象との接触(対立)によって何らかの衝撃を伴うことが含意される。主体(話者)にとって、「格上のチーム」との対戦では敗戦もありえ、それによって戦績のプラス方向への進行(つまり、「勝ち」が増えること)が妨げられる可能性があるが、「格下のチーム」との対戦ではそれほどの勢いや意気込みは必要とされず、敗戦の可能性も低いため心理的な衝撃も予想されず、また戦績のプラス方向への進行が妨げられる可能性も低い。従って、「格下のチームにぶつかっていく」とは言いにくい。
解説
この意味では、主体が意志的にその対象に向かっていくことに焦点が当たっており、その対象からの働きかけは想定されていなくても良い。従って、人や組織との対立を表す語義8の「ぶつかる」では、「親とぶつかる」のように対象にト格を用いるのに対して、この意味での対象には「親にぶつかる」のように二格を用いる。また、この意味での「ぶつかる」は意志的行為であり、「ていく」とともに用いられることが多い。
誤用解説
この意味での「ぶつかる」は、意志的行為であるため、単に接触の事実を表す際に用いるト格と共起することはできない。
 相手チーム[困難]ぶつかっていく。
 相手チーム[困難]ぶつかっていく。
なお、「相手チームとぶつかる」という表現は可能であるが、この場合、語義8の意味で、単に人や組織との対立の事実を表す。
類義語・反義語
類義語立ち向かう、取り組む、向き合う
反義語


11.波動の衝突自動詞上級
表記ぶつかる
波動が、ものに衝突する。
文型
<波動>が<もの>と[に]ぶつかる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
固い素材に音がぶつかると、音質が変化します。
この物質に光の波動がぶつかると、一般の物質のように光が反射することはない。
岩にぶつかった波が砕け、大きなしぶきが上がった。
電子レンジ内部では、食品の水分子に電磁波がぶつかっています。
電子レンジでは、水の分子同士をぶつからせ、熱を発生させる。
コロケーション
<波動>が
波動、波、音、音波、分子、電子、粒子
解説
この意味での「ぶつかる」の主体は、空気中や水面などのある空間を一定のパターンで伝播する(広がる)、波動的な性質を持つものである。これらの主体は物理的存在ではあるが、語義1とは異なり、明確な境界を持つ個々の「もの」として捉えることが難しく、「もの」の特殊な例であると考えられる。しかしながらこの場合にも、伝播(移動)によって対象と接触し、それによって本来のパターンでの移動を妨げられる(例えば、光であれば屈折し、音であれば音質が変化し、波であれば一定のパターンが消失する)。このことから、これらの主体についても「ぶつかる」と表現することが可能になる。
類義語・反義語
類義語接触する、衝突する
反義語


ぶつかるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<移動物>が
扉にがぶつかり、ガタンと音がした。
(和久峻三著 『ロシアンルーレットの女』, 1994, 913)
がぶつかるのを回避したり、衝撃を軽減したりする技術です。
(片山修著 『日本にしかできない技術がある』, 2004, 509)
すばらしいまでのジャストタイミングでふぶきの頭にボールがぶつかった。
(斎藤ゆうすけ著 『アーケードゲーマーふぶき』, 2002, 913)
<もの>と[に]
バイクに乗っていて、スピードを出しすぎていて、とぶつかりました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 法律、消費者問題)
<もの>に
赤い車が、にほとんどぶつかりそうになった状態で、停車している。
(天童荒太著 『永遠の仔』, 1999, 913)
<場所>で
見通しの悪い交差点で相手方が前方不注意と一時停止ミスで旦那の車の横っ面にぶつかってきたそうです。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 法律、消費者問題)
<様態>
頭と頭が、ゴツンとぶつかった。
(日本児童文学者協会編;佐藤由惟,大塚洋一郎画 『コンピューター室の怪談』, 1997, )
<空気>が
すると、暖かい空気と冷たい空気がぶつかるうえに、水分が多くなるため、雲が発達して、大雨が降りやすくなります。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 天気、天文、宇宙)
シベリアから来る季節風が日高山脈にぶつかって、そこでたっぷりと雪を降らせ、乾いた風となって、十勝野に吹き降りて来るからだ。
(徳永瑞子ほか著 『プサマカシ』, 1991, 916)
<水流>が
橋桁に流れがぶつかり、飛沫を上げているのが見えた。
(柏田道夫著 『水に映る』, 2002, 913)
ムラはずれのがけの上に立って、信濃川の水流が断崖にぶつかって渦巻く壮大な景観をながめていたとき、かたわらに立つ一本の名木に目がとまりました。
(市報とおかまち「だんだん」, 2008, 新潟県)
<岩盤>が
図1のように,日本は4枚ものプレートがぶつかる世界でもまれな地域にあり,海溝やトラフでは,プレートが別のプレートの下に沈み込んでいる。
(新詳地理B 最新版, 2006, 高)
<長く続くもの>が
窓から見下ろして左手、西六丁目の通りが道庁敷地にぶつかったところに南門があった。
(佐々木譲著 『うたう警官』, 2004, 913)
<場所>に
店を出て、まっすぐにすすむと、通りにぶつかった。
(太田蘭三著 『逃げた名画』, 1989, 913)
ブルルンと勢いよく飛び出したが、1kmも走らないうちにT字路にぶつかってしまった。
(モーターサイクリスト, 2001, 機械)
続いて、そのデコボコのアスファルト道路を三キロほど走ったあたりで国道六七号線にぶつかり、そこを左折。
(オグ・マンディーノ著;坂本貢一訳 『十二番目の天使』, 2001, 933)
<集団>に
毎日市原市の内房CCまで車で通勤しているが、朝は早くに出て一時間半で走れるものの、夕方のラッシュにぶつかれば三時間かかる時もある。
(夏樹静子著 『訃報は午後二時に届く』, 2004, 913)
<好ましくない状況>に
新しい事件は起きなかったが、事件の捜査もにぶつかっていた。
(西村京太郎著 『伊豆の海に消えた女』, 2000, 913)
弟は生来真面目で、困難にぶつかっても黙々と一生懸命自らの力で解決していくタイプだった。
(渡部昇一,渡部玄一著 『音楽のある知的生活』, 2002, 760)
<様態>
しかしEinsteinはただちに一つの困難にぶつかってしまった。
日本物理学会編 『現代の宇宙像』, 1991, 440)
<時>に[と]
ロスのリンダ・リー劇場、私がアメリカにいたとき、『羅生門』封切のにちょうどぶつかったので、その劇場に駆けつけて観客の日本人二世たちに聞いてみた。
(淀川長治著 『淀川長治ぼくの映画百物語』, 1999, 778)
<人>と
思春期にと真正面からぶつかった経験がない子どもは、『いい子』のまま思春期を終えてしまい、不自然に自立させられてしまう。
(小国綾子著 『薬がやめられない』, 1999, 368)
<様態>
ラリーは父を愛していたが、父が誰かに正面からぶつかる人柄ではないのも知っていた。
(ベサニー・キャンベル作;矢部真理訳 『愛をつないで』, 2003, 933)
<こと>で[をめぐって]
毎日の小さなことではぶつかっても、お互いに気を遣い合ってきたふたり。
(LEE(リー), 2002, 一般)
<考え>が
入社後、上司と意見がぶつかった場合あなたはどうしますか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, 就職、転職)
<感情>が
現実を受け入れたくないという気持ちと、これは現実なんだという気持ちがぶつかって、頭蓋骨にヒビが入りそうなほどの痛みに襲われました
(三井京子著 『116人のレイプ体験』, 2002, 367)
<様態>
これなど、米軍を「解放軍」とみる立場とは、真向からぶつかるものの考えかたですが、あの南海の島に散った数万の貴い生命のことを思うとき、一度検討してみるべき問題ではないかと思います。
(高沢皓司著 『さらば「よど号」!』, 1996, 309)
<様態>
「たいへんでしょうが、逃げないで正面からぶつかって下さい」
(小杉健治著 『それぞれの断崖』, 2001, 913)
でも、そこをごまかさず、真剣に生活の倦怠期にぶつかって乗りこえていって下さい。
(瀬戸内寂聴著 『寂庵だより』, 1990, 914)
<波動>が
岩場にがぶつかることにより、岩にいる貝やカニが水中に落ち、それをねらって、魚が集まってきている。
(中田悟著 『磯釣り』, 1998, )
少年の話をきいていると、やまびこはがぶつかって反響するものだなどという、科学的説明なんか、真実味がないような気がしてくるからふしぎだ。
( 『長崎源之助全集』, 1986, )






























ここをまっすぐ行くと、国道にぶつかりますよね。
渋滞にぶつかっちゃって……。
今回はちょうど大学のセンター試験とぶつかっちゃってさ。
視線がぶつかる

意味
突然目が合う
用例
不意に二人の視線がぶつかり、互いに顔を赤らめた。
コーパスからの用例
捨てゼリフを吐いて出勤していったときの殺伐とした感情が、いまも持続していることがひしひしと伝わってきた。僕はなるたけ視線がぶつからないようにして、「こんな時間に呼び出してごめん」といった口上を途切れがちに述べた。 途中で麻子の携帯電話が鳴った。(鱧余夢紋著 『メガネをかけた犬』, 2004, 913)
複合動詞 V1

ぶつかり合う
複合動詞 V2

ぶつかり稽古
ぶつかる(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
アクセント型平板型
辞書形ぶつかる
ない形ぶつからない
~なかったぶつからかった
ます形ぶつかり
~ませんぶつかりま
~ましたぶつかりした
~ませんでしたぶつかりまんでした
~ときぶつかるとき ぶつかる
ば形ぶつか
意向形ぶつか
て形ぶつかって
た形ぶつかった
可能形ぶつかれる
受身形ぶつかられる
使役形ぶつからせる
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