合うのコアイメージ

1.一体化自動詞初級★★★
表記合う
複数のものや身体部位が近づいて接触し、1つになる。
文型
<もの・身体の一部>が合う
<もの・身体の一部>と<もの・身体の一部>(と)が合う
<もの・身体の一部>が<もの・身体の一部>と合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
上唇が下唇と合う
両手がぴったりと合っています
上下のまぶたが合ったかと思ったら、すぐに眠りに落ちたようだ。
「国道と県道は、どこで合うんですか?」「ここから5キロほど進んだところですよ」
3つの小さな川がこの場所で合い、大きな流れとなるのです。
歯並びが悪いせいで、上と下の前歯が合わない
コロケーション
<もの・身体の一部>が合う
道路、川、手、唇、まぶた
<場所>で合う
場所、地点、位置、ところ、ここ
<様態>合う
ぴったり(と)、ちょうど、ちゃんと、きちんと、しっかり(と)
非共起例
<もの・身体の一部>が<もの・身体の一部>と合う
 手が壁と合う
 手が壁につく
 足が頭と合った
 足が頭についた
「手」と「壁」など、対にならない、もしくは同種ではない複数のもの同士・身体の一部同士が接触する場合には、通常「つく」を用いる。
<もの・身体の一部>が合う
 が合う。
 2つの川が合う。
 が合った。
 両手が合った。
上記の文型で用いる場合、<もの・身体の一部>を表す名詞をそれのみで用いるよりは、通常、「両」や「2つの」などの、複数であることを示す形式を付加した形で用いる方が自然である。
解説
語義1は、対になっている、もしくは同種の、複数のもの・身体部位が相互に近づいて接触し、一体化する過程を表す。ガ格名詞(句)で複数のもの・身体部位(X)を一括して表す場合、「Xが合う」という文型を用いる。また、複数のもの・身体部位(XとY)を個々に表す場合、「XとY(と)が合う」という文型、もしくは「XがYと合う」という文型を用いる。「XとY(と)が合う」ではXとYとがほぼ同等に捉えられているのに対し、「XがYと合う」においては(Yに比べ)Xにより焦点が当てられている。なお、類義語の「合わさる」は、「合う」に比べ、複数のもの・身体部位が一体化するという結果をより焦点化した動詞である。
誤用解説
ガ格名詞が「川」や「道」などの場合、合流する場所を表す際は助詞の「に」ではなく「で」を用いる。(「に」が「あるもの・人が存在する場所」を表すのに対し、「で」は「ある行為や出来事等が行われる、もしくは生じる場所」を表す。)
 3本の小さな川がここ合って、1つの大きな流れになります。
 3本の小さな川がここ合って、1つの大きな流れになります。
類義語・反義語
類義語合わさる、合流する(後者は道や川の場合のみ)
反義語離れる、分かれる


2.視覚的な一致自動詞初級★★★
表記合う
2人の間に、相互に相手の目(を含む顔)を見ているという状態が生じる。
文型
<こと>が合う
<こと>と<こと>が合う
<こと>が<こと>と合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
先生の目と生徒の目が合う
向こうの木の下に立っている女性と、ふと視線が合いました
少年と少女の目は一瞬だけ合ったが、少女がすぐに目を逸らした。
「どうしていつも佐藤君と目が合わないのかな?」「きっと、佐藤君、恥ずかしがってるんじゃないかな」
偶然彼女と視線が合って、どぎまぎしてしまいました。
娘と目線が合うように、少しだけ屈んだ。
コロケーション
<こと>が合う
目、視線、目線
<様態>合う
ちょっと、ふと、少し、ちゃんと、たまたま
非共起例
<こと>が合う
 娘との身長差が大きいので視線が合うように屈むことにした。
 娘との身長差が大きいので目線が合うように屈むことにした。
視覚による対象の把握において、通常、相手を捉える目の高さ(の一致)という側面に焦点が当てられる場合には「目線」を、目で見る方向という側面に焦点が当てられる場合には「視線」を用いる。
<様態>合う
 2人はじっと目が合った
 2人はじっと見つめ合った
「じっと」「じっくり」「じろり」など、人がどのような様態で意図的にある対象を視覚で捉えるか、ということをを表す副詞は、「合う」と共に用いることはできない。
解説
語義1が、複数の具体的な存在による接近、及び一体化を表すのに対し、語義2は抽象的な一体化を表す。すなわち語義2は、2人の人間による、視覚で捉える領域の一体化を表す。AさんとBさんという2人の存在を想定した場合に、Aさんの目と、Aさんが見ている対象(Bさんの目)を結ぶ線が、Bさんの目と、Bさんが見ている対象(Aさんの目)を結ぶ線と、空間上で交わった状態になる、ということである。したがって、AさんはBさんの目を見ていて、BさんもAさんの目を見ている、という状態を「目(視線、目線)が合う」と表すのである。なお、「目が合う」に対して、「視線が合う」及び「目線が合う」は、そのような状態の生じ方についてより限定的に表している。つまり、「視線が合う」の場合には、AさんがBさんの方向に向けて視覚を働かせ、BさんもAさんの方向に向けて視覚を働かせる、というように、「目で見る方向」が焦点化されている。これに対し、「目線が合う」の場合には、AさんとBさんの目の高さがほぼ等しいことによってお互いがお互いを視覚で捉えている状態が生じる、というように、「目の高さ(の一致)」が焦点化されている。
誤用解説
必須項において(「彼女の目」、「山本さんの目」のように)「<人>の」という形式を付加させず、「目」を単独で用いる場合、通常、「目が合う」もしくは「目と目が合う」という形で用いる。
 ふと、目が目と合った。
 ふと、目と目が合った。
 ふと、目が合った。
類義語・反義語
類義語
反義語逸れる


3.サイズの一致自動詞初級★★★
表記合う
あるもののサイズ(大きさ、幅、奥行き、高さ)が、あるものや身体の一部のサイズ(大きさ、幅、奥行き、高さ)と一致する。
文型
<もの(・身体の一部)>が[は]<もの・身体の一部>に(は)[と]合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
15.5センチの靴が娘の足にちょうど合う
「そちらの6号の指輪は、お客様のお指に合いますでしょうか?」「ううん、少しきついですね」
道端で偶然拾った鍵が我が家のドアの鍵穴にぴったり合い、その鍵が1年前に兄が紛失したものであると分かった。
祖父が描いた絵と寸法の合った額縁をようやく見つけられました。
もしサイズが合えば、私が長年愛用してきた礼服を息子に譲ろうと思っている。
電子レンジで熱したことで弁当箱の蓋が変形してしまい、きちんと合わなくなってしまいました。
stairs……確かに安くなっているけど……私に合うサイズがあるかしら?
コロケーション
<もの>が[は]合う
靴、指輪、鍵、服、蓋
<もの>に(は)[と]合う
鍵穴、絵、箱、器、蛇口
<身体の一部>に(は)[と]合う
足、指、体、体型、手
<サイズ>が合う
サイズ、寸法、大きさ、幅、高さ
<数量詞>が合う
27センチ、6号、Lサイズ、Mサイズ、Sサイズ
<様態>合う
ぴったり、最も、より、ちょうど、ちゃんと
非共起例
<様態>合う
 この指輪は彼女の指にちょっと合う。
 この指輪は彼女の指にほぼ合う。
語義3は、ものともの、もしくはものと身体の一部とのサイズの一致(合致)を表しているので、通常、一致(合致)の程度が高いことを表す副詞とは共起するが、程度が僅かであることを表す副詞とは共起しにくい。
解説
語義1は、複数のもの・身体の一部の接触・一体化に焦点が当てられていた。これに対し語義3は、2つのもの・身体の一部の物理的な接触・一体化を根拠(理由)に、その2つのもののサイズが一致(合致)していると判断する、ということに焦点が当てられている。語義3の「XがYに(は)[と]合う」という文型において、通常、Xは<もの>であり、Yは<もの>もしくは<身体の一部>である。そして、Yのサイズは、Xのサイズを判断する上での基準として機能する。例えば、「この靴は私の足に合う」という例文では、「私の足」(Y)のサイズは靴のサイズを判断する上での基準であり、複数存在する靴の中で、「私の足」のサイズに一致(合致)する靴を「この靴」(X)として言語化している。なお、「Yに」を用いる場合にはYのサイズが、Xのサイズを判断する上での基準となる、という側面により焦点が当てられる。一方、「Yと」を用いる場合には、「Yに」と比べると、やや、XとYとの物理的な接触・一体化に焦点が当てられる。
誤用解説
通常、Xは<もの>であり、Xに<身体の一部>が入ると不自然になるケースが多い。(ただし、「シンデレラの足だけが、このガラスの靴に合った」という例文のように、ある<もの>のサイズを基準として、複数の選択肢の中から、そのサイズと一致(合致)するサイズを有する<身体の一部>が存在することを表す、という文脈に限って、Xが<身体の一部>であることが許容される。)
 私の指がこの指輪に合います。
 この指輪が私の指に合います。
類義語・反義語
類義語合わさる、一致する、合致する
反義語


4.基準との一致自動詞初級★★★
表記合う
ある物事が、基準となる(正しい、もしくは確かな)物事や物と一致する。
文型
<こと>が<こと・もの>に[と]合う
<こと>が合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
このカメラは、自動でピントが被写体に合う
試しにかけてみて、焦点が遠くにも近くにもしっかり合えば、この老眼鏡を購入することにしよう。
「先生、私の解答は合っていますか?」「うん、合ってはいるけど、答えを導く過程にやや問題があるな」
その日の全取引の計算が1円でも合わないうちは、銀行員は誰一人として帰宅できない。
こちらの商品は電波時計ですので、ご自分で時報と合わせる必要はございません。いわば、時報にぴったり合った状態が常に保たれているんです。
証人による陳述書の内容は、全て事実と合っている
コロケーション
<こと>が合う
ピント、計算、答え、時計、内容
<こと・もの>に[と]合う
答え、事実、時報、予算、被写体
<様態>合う
ぴったり、ちょうど、ちゃんと、ばっちり、しっかり
非共起例
<様態>合う
 このカメラは、ピントが被写体に少し合う。
 この計算は少し合っている。
 このカメラは、ピントが被写体にぴったり合う。
 この計算はちゃんと合っている。
語義4は、ある物事が基準となる物事と一致(合致)することを表す。したがって、通常、一致(合致)の程度が高いことを表す副詞とは共起するが、程度が僅かであることを表す副詞とは共起しにくい。
解説
語義3は、「XがYに[と]合う」という文型において、XとY(いずれも<もの>)との物理的な接触、一体化を根拠として、XのサイズがYのサイズと一致していることを表すものであった。これに対し語義4では、「XがYに[と]合う」という文型において、X(<こと>)が、ある基準(<Y>)と一致していることを表す。すなわち語義4では、二者の物理的な接触、一体化は含意されず、語義3において含意されていた「基準との一致」という側面が前景化しているといえる。なお、語義4において、「Yに」という形で表される場合には「Y」が基準であるということにより焦点が当てられている。一方、「Yと」という形で表される場合には、Xと(基準である)「Y」とを照らし合わせる、という側面に焦点が当てられる。
誤用解説
語義1や語義3のように、「合う」が複数のものの(物理的な)一体化を含意する場合には類義語としての「合わさる」と置き換え可能であるが、語義4のように一体化を含意しない場合には置き換え不可能である。
 計算が合わさる
 計算が合う。
類義語・反義語
類義語一致する、合致する
反義語ずれる、間違う


5.期間や時間の一致自動詞中級★★
表記合う
複数の人の間で、ある物事を行う上で必要となる期間や時間が一致する。
文型
<(1人の)こと>が<人・こと>と[に]合う
<(複数の人の)こと>が合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
何とか社員全員の予定が合った
清水さんの予定が他のメンバーと合えば、合宿の日付が確定します。
ちょうどタイミングが合い、美しいオーロラを見ることができた。
「今年の夏休みこそは、みんなで旅行に行きたいよね」「そうだね。今年こそ、みんなの休みがうまく合うといいんだけど」
ここのところ夫は残業続き、娘たちは連日のバイトで、なかなか家族の食事の時間が合わない
委員の予定が合おう合うまいが、もう委員会の日程を変更することは絶対にできません。
stairs彼女、忙しくてね、普段はなかなか予定が合わないのよ。
コロケーション
<こと>が合う
スケジュール、日程、予定、タイミング、休み
<人>と[に]合う
みんな、メンバー、家族、友達、彼女
<こと>と[に]合う
スケジュール、日程、予定、タイミング、休み
<様態>合う
ぴったり、ちょうど、ちゃんと、きっと、たまたま
非共起例
<こと>と[に]合う
 私の休みが休みと合う。
 私の休みが彼女の休みと合う。
「<こと>と[に]」を用いる場合、「<こと>」については「スケジュール、日程、予定、タイミング、休み」などの名詞を単独では用いず、「彼女の休み」、「家族の予定」のように、「<人>の<こと>」という形で用いる。
解説
語義5は、複数の物事の一致を表し、いずれも「XがYと[に]合う」という文型で用いられるという点で、語義4と共通している。但し語義4では、Xがある基準となる物事や物と一致しているということを表すのに対し、語義5では、Xと、基準となる物事や物との一致ということを表しているわけではない。1人1人の予定、タイミング、日程などを相互に照らし合わせることで、共通点が見出される、という状態を表している。なお、「X」が「私の休み」、「清水さんの予定」のように、ある1人の<こと>を表す場合、「Yと[に]」という形式を伴うが、「X」が「メンバー全員の休み」、「社員の予定」のように、複数人の<こと>を表す場合には、通常、「Yと[に]」という形式を伴わない。
誤用解説
「XがYと[に]合う」という文型の必須項「X」は、単に「予定、スケジュール、タイミング」という名詞のみで用いることができるほか、「みんなの予定」、「メンバーのスケジュール」、「2人のタイミング」のように、「<人>のX」という名詞句で用いることもできる。この際の「<人>のXが」を、「<人>がXが」という形にする場合には容認されるが、「Xが<人>が」という語順にすると容認されない。
 みんなの予定が合えば、旅行に行きたい。
 みんなが予定が合えば、旅行に行きたい。
 予定がみんなが合えば、旅行に行きたい。
類義語・反義語
類義語一致する、合致する
反義語ずれる


6.思考上の一致自動詞中級★★
表記合う
複数の人や組織の間で、思考の対象となる事柄が一致する。
文型
<(複数の)人・組織>は[が・の]<こと>が合う
<人・組織>と<人・組織>(と)は[が・の]<こと>が合う
<人・組織>は[が]<人・組織>と<こと>が合う
<人・組織>の<こと>と<人・組織>の<こと>(と)が[は]合う
<人・組織>の<こと>が[は]<人・組織>の<こと>と[に]合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
彼らはいつも意見が合います
佐々木君と河合君が、考え方が合うとはとても思えない。
私たち2人の考えが合ったとしても、他のメンバーもそれに賛同してくれなければ意味がない。
2つの町は、財政や福祉に関する方針が合わず、合併を断念することにしたそうです。
「横山氏と青山氏は、会談を重ねる中で、政治に対する理念が実に合うということに気付いたらしいですよ」「じゃあ、新党結成も、さらには政界再編も、夢ではないかもしれないね」
企業と派遣スタッフ、双方の意思が合えば雇用関係が成立する。
コロケーション
<(複数の)人>は[が・の]合う
私たち、我々、2人、メンバー、師弟
<こと>が合う
意見、考え方、考え、方針、理念
<組織>は[が・の]合う
2社、両社、国連、政府、自治体
<組織>と<組織>(と)は[が・の]合う
会社、企業、国、学校、市
<様態>合う
ぴったり、とても、本当に、最も、きっと
非共起例
<人>は[が・の]<こと>が合う
 は意見が合う。
 彼らは意見が合う。
語義6における前述の3つの文型のうちの1つ目の文型(必須項が2つである文型)で使用する際には、<人>は、「彼ら、我々、3人」などのように、複数の人を表す形式である。
解説
語義6は語義4と、複数の物事の一致を表すという点では共通している。ただし、語義4では、ある物事が、基準となる物事や物と一致していることを表すのに対し、語義6では、複数の人の、それぞれの思考内容を照らし合わせることで、そこからその複数の人同士によって共有、共感できる点が見出されるということを表す。なお、語義4では、一致する物事(「ピント、計算、答え」など)には、より明確で客観的な基準が存在する。一方、語義6では、一致する対象は「意見、考え、方針」のように、思考内容である。つまり、語義4のように明確な単一の基準が存在するわけではなく、個人による程度差のあるものである。したがって、一致する対象は、語義6では語義4に比べてやや客観性が低い(やや主観性が高い)存在であるといえる。
誤用解説
<こと>を表す同一の形式を、それ単独で、助詞「と」によって並列させて用いることはできない。
 考えと考えが合う。
 (私たちの)考えが合う。
 私の考えと彼女の考えが合う。
類義語・反義語
類義語一致する、合致する
反義語分かれる、ずれる


7.感情・心理面の一致自動詞中級★★
表記合う
複数の人の間で、感情や心理的な特性が一致する。
文型
<(複数の)人>は[が・の]<こと>が合う
<人>と<人>(と)は[が・の]<こと>が合う
<人>は[が]<人>と<こと>が合う
<人>の<こと>と<人>の<こと>(と)が[は]合う
<人>の<こと>が[は]<人>の<こと>と[に]合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
私たちはとても気が合います
共著者である石川さんと伊藤さんは、実に感性が合うようだ。
「年の離れた男性との結婚って、どう思う?」「2人の相性が合っているのなら、年の差なんて関係ないと思うよ」
夫とファッションや食の好みがなかなか合わず、それがしばしば喧嘩の原因になってしまいます。
職場では、性格の合わない同僚ともうまく付き合っていかなければならない。
あの人とは、育ってきた環境、立場、境遇、何もかもが違うのに、なぜかすごく波長が合うのです。
stairs気の合わない上司に、昼休みまで付き合わされるのはごめんだわ。
コロケーション
<(複数の)人>は[が・の]合う
私たち、我々、2人、メンバー、兄弟
<こと>が合う
気、感性、相性、性格、好み、趣味
<様態>合う
よく、ぴったり、とても、本当に、きっと
非共起例
<人>の<こと>と<人>の<こと>(と)が[は]合う・<人>の<こと>が[は]<人>の<こと>と[に]合う
 清水さんの気と山本さんの気が合う。
 清水さんの気が山本さんの気と合う。
 清水さんと山本さんは気が合う。
「気が合う」や「相性が合う」は、この形で複数の人の間での心理的な特性の一致を表す。したがって、語義7における<こと>を表す名詞の中でも、「気」や「相性」は、1つの文の中で重複させて用いることはできない。
解説
語義7は語義6と、複数の人の間でのある事柄の一致を表す点で共通しており、使用される文型も共通している。しかし、語義6では一致する事柄が「思考内容」であるのに対し、語義7では「感情や心理的な特性」である。「感情や心理的な特性」は「思考内容」に比べて主観性の高いものである。(「思考内容」は音声や文字によって言語化することが可能であるが、「感情や心理的な特性」は正確かつ詳細に言語化することが難しい、という違いがある。)
誤用解説
<こと>を表す同一の形式を、それ単独で、助詞「と」によって並列させて用いることはできない。
 好みと好みが合う。
 (私たちの)好みが合う。
 私の好みと彼女の好みが合う。
類義語・反義語
類義語一致する
反義語


8.調和自動詞中級★★
表記合う
あるものや人や物事の性質が、あるものや人や物事の性質と調和する。
文型
<もの・人・物事>が[は]<もの・人・物事>に(は)[と]合う
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ネクタイがスーツとよく合います
きっと井上君には、都会よりも田舎での生活が合っているのではないでしょうか。
新発売のビタミン剤は、どうも私の体質に合わないようだ。
和食より洋食の方が、若者の口に合うと思う。
「アルバイトをするにあたって、髪形や服装に関する規定はございますか?」「この店の雰囲気に合えば、髪形も服装も自由ですよ」
我が社が開発した繊維は、地球環境に合ったエコ素材です。
コロケーション
<もの・人・物事>が[は]合う
靴、食べ物、彼女、環境、生活
<もの・人・物事>に(は)[と]合う
服、口、若者、体質、雰囲気
<様態>合う
よく、ぴったり、本当に、なかなか、意外と
非共起例
<もの・人・物事>が[は]合う
 若者の口が洋食に合う。
 洋食が若者の口に合う。
語義8の「XがYに[と]合う」という文型において、第1に焦点が当てられる存在がX、Xと照らし合わせて調和しているかどうかを判断する対象(基準)がYである。したがって、焦点の当て方によって、XとYに入る名詞(句)は置き換え可能である場合が多い。ただし、「口に合う」に関しては、この形で「飲食物が自身の好みと一致する」ことを表す。したがって、「XがYに[と]合う」という文型の中で、「口」を「X」として用いることはできない。
解説
語義8は語義3と、「複数の存在がある点において一致している」ということを表す上では共通しており、用いられる文型(「Xが[は]Yに(は)[と]合う」)も共通している。しかし、「ある点」が語義3では「サイズ(大きさ、幅、奥行き、高さ)」であるのに対して、語義8では「性質」であり、抽象度が高い。(通常、この「性質」は言語化されない。)また、語義3では「サイズが一致しているという判断」に焦点が当てられるのに対し、語義8では「性質が調和している(矛盾や衝突がなく、釣り合いが取れている)という判断」、すなわち対象に対するプラスの評価に焦点が当てられる。語義3に比べ、語義8は判断の内容がより主観的なものである。さらに、語義3では複数の存在の「物理的な接触」を根拠として、「サイズが一致しているという判断」を行うのに対し、語義8では対象となる存在のある状態、様子に対する、視覚や触覚などの五感による把握に基づいて「性質が調和しているという判断」を行う、という違いもある。
誤用解説
語義8において「よく」という副詞を用いる場合は、通常「よく」を「合う」の直前に置く。
 よく田舎の生活が合う。
 よくネクタイがスーツに合う。
 田舎の生活がよく合う。
 ネクタイがスーツによく合う。
類義語・反義語
類義語調和する
反義語


合うの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<こと>が合う
一瞬、闇の中で目とが合った。
(折原一著 『異人たちの館』, 1993, 913)
すれ違いざまに視線が合う。
(垣根涼介著 『君たちに明日はない』, 2005, 913)
<様態>合う
ふと、少年と目が合った。
(水無月さらら著 『少年アリスの憂鬱』, 2001, 913)
<もの>が[は]合う
作業靴が合わなくて足の指の爪が変色してしまいました。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<身体の一部>に(は)[と]合う
「一人一人のに、どういう靴が合うか、相談にのってくれます」
(赤川次郎著 『死なないで』, 2004, 913)
身長が一九〇センチもあるから、特注でもしない限り身体に合う服が手に入らないのだ。
(群像, 2003, 文学/芸術)
<サイズ>が合う
口金や、ガラス球のサイズが合うものを探しましょう。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 家電、AV機器)
<こと>が合う
そのため、コントラストの低い空や海が画面の中心になる構図ではピントが合わないことも多い
(YOMIURI PC, 2004, 電気機/電子)
料金箱にたまる金額は一〇〇ドル前後、計算が合わないときは運転手の責任となる。
(ゲイ・タリーズ著;沢田博訳 『名もなき人々の街』, 1994, 302)
<こと・もの>に[と]合う
答えが合っていれば,○,まちがっていたら×をつけます」
(新井紀子著 『ハッピーになれる算数』, 2005, 411)
事実が仮説と合わなければ―その説は捨てることです
(藤竹暁著 『都市は他人の秘密を消費する』, 2004, 361)
<こと>が合う
何度も放映していたが飲みに行ったり寝ていたりしてタイミングが合わなかった。
(Yahoo!ブログ, 2008, 映画)
なぜなら、子供たちの多くは塾や習い事などで、お互いのスケジュールが合わないからです。
(女性セブン, 2004, 一般)
<こと>が合う
子供を産んでから主人と意見が合わなくなりました。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 子育て、出産)
<(複数の)人>は[が・の]合う
その斎藤と、多田は不思議に気が合った。
(沢木耕太郎著 『有名であれ無名であれ』, 2002, 281)
<こと>が合う
最初から性格が合わなかったような気がします。
(Yahoo!知恵袋, 2005, メンタルヘルス)
お互い音楽の趣味が合うので喜んでたんですけど、それからまったく連絡がありません。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み)
<様態>合う
私の好みにピッタリ合うお酒だった
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
<もの・人・物事>に(は)[と]合う
海外にスーツやドレスを持っていくのは面倒だし、グアムの雰囲気に合わないから。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 冠婚葬祭)






























……確かに安くなっているけど……私に合うサイズがあるかしら?
彼女、忙しくてね、普段はなかなか予定が合わないのよ。
気の合わない上司に、昼休みまで付き合わされるのはごめんだわ。
算盤が合う

意味
計算の結果が正しいものとなる
用例
何度やっても算盤が合わないので、銀行員は全員、帰宅できない。
意味
採算が取れる
用例
こんな商売、算盤が合わないからすぐにでもやめてしまいたい。
コーパスからの用例
ようするに、結果日本の人件費は経営者にとってそろばんが合わないって、こと! しかし、堂々と人減らしの為のロボットを作ると、才能と努力と工夫と知恵のない社員が不安になるだろ。(Yahoo!知恵袋, 2005, 企業と経営)
肌が合う

意味
複数の人同士の気性が一致する
用例
どうも彼とは肌が合わないのです。
コーパスからの用例
しかし政元は、義視にはよそよそしかった。肌が合わぬというか、義視父子を毛嫌いしていた。するとなんの因縁か、義視は、翌年の正月七日、兄の一周忌の当日、まるで兄の亡霊に招かれたごとく、五十三歳で急死した。(邦光史郎著 『時の旅人』, 1994, 913)
馬が合う

意味
複数の人同士の考え方や感覚が一致する
用例
山田君とはとても馬が合うので、中学生の頃から今も変わらず、何かにつけて一緒に行動している。
コーパスからの用例
冬柴は、山崎とは、山崎が橋本内閣時代に政調会長をしていたころのつきあいで、酒を酌み交わすばかりか、十一回もいっしょに海外に出かけた。 同じ昭和十一年生まれということもあって非常にウマが合った。さらに、山崎はつきあえばつきあうほど、味が出てくる。(大下英治著 『郵政大乱!小泉魔術』, 2005, 312)
割に合う

意味
努力に見合うだけの見返りがある
用例
こんな時給では割に合わないし、違うアルバイトを探したい。
コーパスからの用例
また、せっかく新居を用意してあげて、文句の一つもいわれたら割に合いませんし、息子さんたちが自分たちで住む家は自分たちで探させたらどうですか? (猪俣淳著 『アパート大家さんになった12人のフツーの人々』, 2005, 673)
息が合う

意味
複数の人同士の気持ちがぴったりと一致する
用例
最初から最後まで皆の息が合い、我がチームは優勝することができた。
コーパスからの用例
二人が結婚したのはずいぶん急でしたが、足並みは揃っていました。夫婦として最後までまっとうすることはできませんでしたが、同じ目標(幸せで健康な子供を育てること)を目指していた間は息がぴったり合っていたのです。悲しいことに、二人はプライドが高いところも同じでした。(シェリー・アモテンスティーン著;月谷真紀訳 『恋人と別れたくないあなたへ』, 2004, 152)
そりが合わない

意味
複数の人同士の仲が何となくしっくりとしていない
用例
あの2人はどうもそりが合わないようで、喧嘩ばかりしている。
コーパスからの用例
「ああ、そう云われれば、警察は明慧寺の僧侶の相関関係がどうしても摑み難くって、難儀していたんですよ。何で同じ宗派で反りが合わないのか、どうして違う宗派の者が同じ対象を悪し様に云うのか。同じと云っても同じじゃない訳ですね。(京極夏彦著 『鉄鼠の檻』, 2001, 913)
複合動詞 V1

合い始める、合い続ける、合い過ぎる
複合動詞 V2

行き合う、請け合う、打ち合う、押し合う、落ち合う、折り合う、関わり合う、掛け合う、語り合う、絡み合う、斬り合う、混み合う、指し合う、知り合う、攻め合う、競り合う、抱き合う、通じ合う、付き合う、釣り合う、溶け合う、取り合う、殴り合う、握り合う、にらみ合う、張り合う、引き合う、触れ合う、ぶつかり合う、混ざり合う、混じり合う、向かい合う、向き合う、巡り合う、揉み合う、やり合う、行き合う、譲り合う、寄せ合う、寄り合う、論じ合う、分かち合う、分かり合う、分け合う、渡り合う、似合う、隣り合う、見合う、噛み合う、
複合名詞

合い鍵、合い挽き、合い言葉、合い縁、合い見積もり、(お)似合い、打ち合い、請け合い、掛け合い、兼ね合い、付き合い、釣り合い、折り合い、言い合い、引き合い、触れ合い、乗り合い、張り合い、掴み合い、睨み合い、馴れ合い、出来合い、奪い合い、譲り合い、不似合い、揉み合い、助け合い、探り合い、人付き合い、取っ組み合い、知り合い、引き合い、連れ合い
合う(1グループ)の活用 ▶活用を聞く
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