当てるのコアイメージ

1.物理的接触他動詞初級★★★
表記当てる
人がものを移動させて、別のものの一部に接触させる。
文型
<人>が<もの>を<ものの一部>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
馬に鞭を当てる
ボールを打者の頭に当ててしまう。
うちの子はお友達にボールを当てられて、喧嘩になった。
ドッジボールでは、内野が全員当てられたら負けです。
建物の壁にボールを当てないでください。
「塗ったばかりの壁がもう汚れてる」「近所の子がボールを当てちゃったみたい」
コロケーション
<もの>を
ボール、球、竹刀、石、むち
<ものの一部>に
① ものの一部:バット、ラケット、壁、ガラス
② 身体部分:目、顔、頭、肌、首、耳
<様態>
うまく、勢いよく、思い切り、軽く、強く、優しく、こつんと
非共起例
<もの>を<ものの一部>に
 車をガードレールにあててしまった。
 車をガードレールにぶつけてしまった。
前進を妨げられるほどの激しい衝撃を伴う接触には「ぶつける」を用いる。
解説
この意味の「あてる」は、物体を移動させて、他のものの一部に接触させることを表す。
類義語・反義語
類義語ぶつける
反義語


2.密着他動詞初級★★★
表記当てる
人が、ものや身体の一部を、別のものや身体の一部に密着させる。
文型
<人>が<もの・身体の一部>を<ものの一部・身体の一部>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
手を額に当てて熱をみる。
舌を歯茎に当てて発音する。
どうぞ、座布団をあててください。
傷口に当てているガーゼはこまめに取り替えましょう。
直線部分に定規を当てるときれいに切れますよ。
乾燥した肌にかみそりを当てると肌が傷むのでやめた方が良い。
コロケーション
<もの>を
① 医療用品:ガーゼ、氷のう、水枕
② 布の類:タオル、ハンカチ、ナプキン、おしぼり、座布団、枕
③ 刃物:刃、カミソリ、カッター、ナイフ、バリカン
④ 武器:刃物、スタンガン、銃口
⑤ その他の道具:定規、アイロン、受話器、やすり、ヘッドフォン、添え木
<身体の一部>をあてる
手、指、両手、手のひら、片手、指先
<ものの一部>に
患部、~部分、側面、~箇所
<身体の一部>に
胸、おでこ、背中、首筋、腰、耳、口
<様態>
ぴったり(と)、ぴしっと、直角に、垂直に、そっと、しっかり、優しく
解説
語義1は、物体を移動させて他のものの一部に接触させることを表すが、語義2の「あてる」は、接触させたあとの結果状態を表す。
誤用解説
この意味は、あるものを、それより大きいものの一部に密着させることを表すので、例えば「顔」の方を移動させて、静止している「手」に密着させたとしても、「手に顔をあてる」とは言いにくい。
 あてる。
 当てる。
言い換えれば、以下のように、「枕」を身体の一部である「頭」に密着させる場合には「あてる」と言えるが、布団を身体全体に密着させる場合には言えない。
 枕を頭に当てる。
 布団を体に当てる。
類義語・反義語
類義語あてがう、置く
反義語


3.物理的接触(命中)他動詞初級★★★
表記当たる、中てる
ものを移動させて狙ったもの(の一部)に接触させる。
文型
<人>が<もの>を<狙ったもの(の一部)>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ダーツを的に当てる
初心者が弓矢を的の真ん中に当てられる確率は低い。
流鏑馬(やぶさめ)は、疾走する馬上から矢を的に当てる武芸である。
手裏剣を的に中ててポイントを競うゲーム。
このゲームでは、敵機の弾を一発も当てさせなければSランクです。
銃弾を狙ったところに正確に当てるためには、練習が必要だ。
stairsあの不安定な体勢でど真ん中に当てるなんてすごいね。
コロケーション
<もの>を
矢、銃弾、弾、弾丸、ダーツ
<狙ったもの(の一部)>に
的、標的、急所、真ん中
<様態>
うまく、確実に
解説
この意味での「あてる」は、矢や銃弾などのものを、標的に接触させることを目的として放ち、狙ったとおりに対象の一部に接触させることを表す。したがって、あるものを移動させて別のものの一部に接触させることを表すという点は語義1と同様だが、接触対象であるものの一部が、狙ったもの(あるいはその一部)であるという点では語義1と異なる。


4.攻撃他動詞初級★★★
表記当てる
攻撃・技を狙ったとおりの人・もの(の一部)に接触させる。
文型
<人>が<攻撃・技>を<狙ったとおりの人・もの(の一部)>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
一発でいいから、試合本番でカウンターを当ててみたい。
両者とも積極的に技を当てていき、接戦になった。
相手の攻撃をしのいでカウンターを当て、最後は左ストレートで仕留めた。
あの選手はなかなか攻撃を当てられず、イライラしているようだ。
試合に勝つためには一つでも多くのパンチやキックを当てることが重要だ。
アッパーを当てるコツは、相手に正対した位置から半身ずらすこと。
コロケーション
<攻撃・技>を
ジャブ、拳、パンチ、打撃、攻撃、蹴り
<狙ったとおりの人・もの(の一部)>に
敵、相手、顎、急所、顔面、みぞおち
<様態>
軽く、強く、うまく
非共起例
<攻撃・技>を
 寝技を当てる
 寝技を決める
攻撃・技であっても、全体の一部を狙った打撃や蹴りなどの攻撃・技でなければ「当てる」を用いることはできない。
解説
この意味での「あてる」は主体を狙ったとおりの部分に接触させるという点では語義3と同様だが、語義3の主体が矢、弾などの物理的物体であるのに対して、この意味での主体は、「カウンター」や「キック」等の技・攻撃である。また、狙ったとおりの場所に接触させることは成功と捉えられるため、この意味での「あてる」では、「カウンターをあてる」のように、接触対象を明示せずに「技を成功させる」という結果の意味まで表す場合がある。
類義語・反義語
類義語決める(技を決める)
反義語


5.的中による当選他動詞初級★★★
表記当てる
人が自分の当選場号を、賞・賞品の当選番号に一致させる。
文型
<人>が<賞・賞品>をあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
宝くじで一等を当てる
100万を当てる
福引きでテレビを当てた
宝くじで大金を当てた人に取材する。
前に並んでいた人に先に一等を当てられてしまった。
彼は5年前、当時購入した宝くじを見事に当て、仕事を辞めてしまった。
コロケーション
<賞>を
宝くじ、懸賞、スクラッチ、くじ、特賞、一等
<賞品>を
グッズ、賞品、景品、プレゼント、賞金、旅行、宿泊券
<機会>で
宝くじ、懸賞、福引き、ビンゴ
解説
この意味の「あてる」は、くじなどで自分の番号を狙ったとおりに賞や賞品に一致させることを表す。もちろん、実際には自分の番号を狙ったとおりに当選番号に一致させることはできず、「一等があたる」のように自動詞で表現するのが一般的であると思われるが、「一等をあてる」のように表現することで、(くじでかなりの枚数を買うなどの)労力、運の強さ、予想の正確さなど、主体による何らかの働きかけを含意することができる。それゆえ、意志的行為として以下のように表現することも可能である。
普段の3倍の枚数を買って[当たると話題の店で買って、毎日神棚に手を合わせて]、次こそは一等を当てよう。
誤用解説
「特賞」などは、くじなどで「外れ」を含む全体のうち、参加する人が狙う一部分であるが、以下のように「参加賞」や「皆勤賞」に対して「あてる」を用いることはできない。
 特賞を当てる。
 参加賞[皆勤賞]を当てる。
「参加賞」は、参加した人全員に該当する賞であり、狙うものでもない。また、「皆勤賞」は、学校や会社などを一日も欠席せずに登校・出勤すると貰える賞であり、全体のうちの一等や二等という部分を狙う「くじ」のようなものとは性質が異なる。このように、「賞」であっても、それを全体のうち狙った一部分としてみなすことができないものであれば、「あてる」を用いることはできない。
類義語・反義語
類義語
反義語はずす


6.判断の的中他動詞初級★★★
表記当てる
人が判断を現実と一致させる。
文型
<人>が<判断>をあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
どっちが重いか当ててごらん
彼は競馬で大穴を当てた
心で思っていることをズバズバと当てられて驚いた。
血液型を当てさせる
どのチームが優勝するか当ててみよう。
「今からどんなゲームをするんですか?」「宝の隠し場所を当てるゲームですよ」
コロケーション
<判断>を
① 予想:予想、天気予報、未来
② 人の属性:年齢、性格、出身地、行動、考え
③ ものの属性:値段、産地、意味、重さ
④ 答え:答え、正解
<様態>
ずばり、ぴたりと、ずばずば、たまたま、ばしっと、まぐれで、百発百中で、正確に、難なく、見事に、簡単に、次々
解説
この意味の「あてる」は、語義3と同様、ものを狙ったとおりの部分に接触させることを表すが、一方で、移動させるものは自ら行う〈判断〉などの抽象的存在である。
類義語・反義語
類義語
反義語はずす


7.計画の成功他動詞上級
表記当てる
人が活動・計画などで成功する。
文型
<人>が<活動・計画>であてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今度の芝居で当てる
なんとしても、新事業で当てよう
彼には、「新企画で当ててやるぞ」という意気込みが足りない。
投機で当てて大儲けをする。
「株で一発当てさせてやる」という誘いには乗ってはいけません。
事業で当てた夫が、共同経営者の裏切りで一文無しになってしまった。
コロケーション
<活動>で
映画、イベント、商売、事業、株
<計画>で
企画、アイデア
<様態>
見事に、大いに
非共起例
<活動・計画>で
 彼は投機[株]あてた。
 彼は投機[株]あてた。
この意味での<活動・計画>は、成功の機会を表し、デ格を取る。
解説
語義3では、矢などを放ってそれを狙ったとおりに的(の一部)などに接触させることを表すが、的を狙って矢などを放っても、必ずしも的に命中するわけではない。したがって、それを狙ったとおりの場所に接触させられた場合は成功と捉えられる。事業や計画などで成功することを表すこの意味においても同様に、事業や計画は、必ず期待する成果があり、その成果を得ることを期待するが、必ずしもうまくいくとは限らない。したがって、狙ったとおり(期待通り)にうまく実行できた場合は成功と捉えられ、この場合に「あてる」と表現することが可能になる。
類義語・反義語
類義語
反義語はずす


8.対戦他動詞上級
表記当てる
人(の集団)を、別の人(の集団)と対戦させる。
文型
<人(の集団)>を<人(の集団)>にあてる、
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
今度のサッカー大会では、まず1組と2組を当てよう
練習試合で全ての学校同士を当てるのは無理だ。
リーグの初戦で実力校を当てられ、かなり苦戦した。
前年度優勝校と準優勝校を初戦で当ててしまうのは問題だ。
初戦で強豪校を当てられたら、そこで終わってしまうかもしれない。
大会実行委員には、どの選手とどの選手を当てるかを決める権限はない。
コロケーション
<人(の集団)>を
選手、チーム、優勝校、実力校、強豪校
<人(の集団)>に
選手、チーム、優勝校、実力校、強豪校
<人(の集団)>と
選手、チーム、優勝校、実力校、強豪校
<試合>で
試合、大会、初戦、決勝
解説
この意味の「あてる」は、何らかの力によって、あるものをある対象に向かわせるという点で、ものを移動させて別のものの一部に接触させることを表す語義1と同様である。一方で、語義1は、ボールなどの物理的物体を別の物理的物体の一部に接触させることを表すが、この意味では、何らかの力(権限)である対象に向かわせるものは<人(の集団)>であり、対象も、複数の<人(の集団)>のうちの一部である。


9.光などの影響(を与える)他動詞中級★★
表記当てる
光・気体・高[低]温などをものに接触させて影響を与える。
文型
<光・気体・高[低]温>を<もの>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
一週間に一度は鉢植えを外に出して、日光を当てる
ドライヤーを当てて髪を乾かす 。
首に超音波を当て、甲状腺の状態を調べる。
様々な種類の液体を容器に入れ、ブラックライトを横から当てて、紫外線の進み方を観察した。
パーマを当てているのに、きれいなウェーブが出ない。
反射板に暗い所で光を当ててみると、きらきらと光る。
コロケーション
<光>を
光、スポット(ライト)、レーザー、ライト、照明、日、放射線、X線、焦点
<気体>を
風、蒸気、スチーム、熱風、冷風、扇風機、冷気、湯気
<高[低]温>を
温灸、火、ガスバーナー、霜
<もの>に
鉢植え、顔、髪、お腹、葉
<様態>
しばらく、十分に、すこし、直接
<角度>から
上、下、正面、裏側、真上
解説
ものを別のものに接触させてそのものに影響を与えるように、光や風などをものに接触させて、そのものに光や風などの影響を与えることを表す。また、以下の例のように、光、風、熱などを発生させるものを用いて、それによって生み出される光、風、熱を表す場合もある。
ゲートで金属探知機を当てられた。(金属探知機が発する光)
パーマを当てる。(パーマの機械によって生じる熱)
さらに、光をものに接触させるとそのものが良く見えるようになる。このことから、以下のように「光(の類)を当てる」という表現で、そのものをよく見る(そのものに注目する)という比喩的意味を表すことができる。
今月号は、今話題の俳優たちにスポットライト[光]を当てよう。
今度の会議では予算問題に焦点[フォーカス]が当てられる。
誤用解説
この意味の「あてる」は、一点(より広い範囲の一部)に接触する光や熱などの影響を、あるものに与えることを表すため、例えば、暗い場所でその一部をよく見るために、その部分に「ライトを当てる」とは言えるが、部屋全体を見渡すために、部屋に「ライトを当てる」とは言えない。
 暗くなってきたから、ライトを当てよう
 暗くなってきたから、ライトをつけよう


10.光などの影響(を受けさせる)他動詞中級★★
表記当てる
ものを光・気体・高[低]温などに接触させて影響を受けさせる。
文型
<もの>を<光・気体・高[低]温>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
洗濯物を日に当てよう
手を温風に当てて乾かす 。
猫草は半日陽に当てただけで驚くほど成長する。
「最近観葉植物の様子がおかしいんだ」「直射日光には当ててないよね?」
ほうれん草や小松菜は、霜に少し当てたほうが甘味が増して美味しい。
生クリームは氷水に当てたまま泡立てます。
コロケーション
<もの>を
洗濯物、植物、白菜、顔、葉、患部
<光>に
光、レーザー、ライト、照明、日、放射線、X線
<気体>に
風、蒸気、スチーム、冷風、冷気、外気
<高[低]温>に
火、氷水、霜、寒さ
<様態>
しばらく、十分に、すこし、直接
解説
この意味の「あてる」は、ものが別のものに接触した際に何らかの影響を与えることから、あるものを光や気体などが接触する場所に移動させて、その影響を受けさせるようにすることを表す。
また、以下の例のように、光、風、熱などを発生させるものを用いて、それによって生み出される光、風、熱を表す場合もある。
乾いていない服をヒーターに当てておこう。(ヒーターの熱あるいは温風)
1時間くらい扇風機に当てておけば乾くだろう。(扇風機の風)
誤用解説
この意味の「あてる」は、一点(より広い範囲の一部)に接触する光や熱などの影響を、あるものに受けさせることを表すため、例えば、単にヒーターによって暖められた室内に洗濯物を置いて乾かすような状況では、「洗濯物をヒーターに当てる」とは言えない。「洗濯物をヒーターに当てる」と言う場合には、部屋全体の中でヒーターの熱あるいは温風が接触する範囲に洗濯物が置かれていなければならない。
類義語・反義語
類義語さらす
反義語


11.人への不都合な影響他動詞上級
表記あてる
人が、人にとって不都合なものから害を受ける。
文型
<人>が<人にとって不都合なもの>にあてられる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
人が毒気にあてられる
新婚の2人にあてられてしまった。
彼女ののろけ話には、毎度あてられっぱなしだ。
周りの乗客は新婚カップルにあてられっぱなしだった。
夜の繁華街の毒気にあてられて、早々にホテルに戻ることにした。
クリスマスの時期になるとまわりの雰囲気にあてられるから、なんだか焦ってしまう。
コロケーション
<人にとって不都合なもの>に
毒気、新婚カップル、雰囲気
解説
「あてる」は、語義9のように、光や気体をものに接触させてそのものに何らかの影響を与えるという意味を表すことがあるが、この意味の「あたる」も、接触の結果であるものへの影響を表すという点は同様である。一方で、この意味での影響は不都合な影響に限られ、またその影響を受けるものは「人」であり、不都合な影響を被る「人」を主体にして、受身で用いられる。
誤用解説
「あたる」も「あてる」も接触による影響(特に、人への不都合な影響)を表すことができるという点では同様だが、「あたる」は「牡蠣があたる」のように、身体への不都合な影響を表すのに対し、「あてる」は精神的な影響を表し、身体に不都合な影響を与える「牡蠣」などとは共起しない。
 牡蠣にあてられて、お腹を壊した。
 新婚さんにあてられて、参ってしまった。


12.仕事の分配他動詞上級
表記当てる
人が、特定の人に活動・課題・任務を割り振る。
文型
<人>が<人>に<活動・課題・任務>をあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
講読の時間では毎回学生にあてて訳させる。
授業中、先生にあてられたが答えられなかった。
次の問題は誰に当てようかな。
田中君に端役を当てるのは申し訳ない。
授業で当てられて答えられないと、とても恥ずかしい。
この授業では毎回全員に問題を当てるつもりなので、きちんと予習してきてください。
コロケーション
<活動>を
仕事、作業
<課題>を
問題、宿題
<任務>を
当番、役
<様態>
順番に、まんべんなく
非共起例
<活動・課題・任務>を
 今いる人の中で数名に掃除を当てます。
理由
解説
この意味の「あてる」は、ものを移動させて別のものの一部に接触させる(語義1)ように、仕事や課題を、複数の人のうち特定の人(広い範囲の一部)に割り振ることを表す。
誤用解説
この意味は、主体が、仕事や課題を複数の候補者のうちの特定の人に割り振ることを表すが、それを行う主体は、そうする権限を持つ人でなければならない。
 患者は、新人看護師に302号室の担当を当てることにした。
 婦長は、新人看護師に302号室の担当を当てることにした。


13.使用他動詞上級
表記充てる
人が、もの(の一部)を特定の用途に使用する。
文型
<人>が<もの>を<用途>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
ボーナスをローンの返済に充てる
店を改築して、二階を住居に充てたい
生活費に充てるべき年金が借金返済にまわってしまう。
この冊子の1ページ目は趣旨説明に充てられている。
売り上げの一部は、震災の義援金に充てさせていただきます。
残った時間をすべて作業に充てなければ、準備が間に合わない。
stairs売り上げの一部は、震災の義援金にあてさせていただきます。
コロケーション
<もの>を
ボーナス、財源、全額、収益、経費、時間、休暇、期間
<用途>に
資金、返済、支払、経費、支援、事業、勉強、学費、復興、保障、開発、生活費
解説
この意味の「あてる」は、あるものを移動させて別のものの一部に接触させる(語義1)ように、あるものを、様々な用途の中で、そのうちの一つ(一部)のために使用することを表す。
誤用解説
 二階の一室を寝室にあてる。
 二階の一室を睡眠にあてる。
「二階の一室」を「睡眠」という行為のために使用することはできるが、「<もの>を<用途>にあてる」と言う場合、<もの>が空間を表す語であれば、その<用途>にも空間を表す語が入る。ただし、本来はある行為を表す語であっても、例えば「その行為をする時間」や「その行為をするお金」など、その行為に関わる別の意味を表すことができる場合には、以下のように「<時間>を<行為(のための時間)>にあてる」や「<お金>を<行為(のためのお金)>にあてる」ということが可能である。
 昼食後の一時間を昼寝にあてる。
 ボーナスをローン返済にあてる。


14.該当他動詞上級
表記当てる
ものを特定のものに該当させる。
文型
<もの>を<もの>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
この犬の名前には、北京の地名があてられた
イギリスには「英吉利」という漢字があてられている。
ある単語に適切な訳語を当てるというのはとても難しい作業だ。
外来語に対してどのような語を当てているか調べてみましょう。
新しい概念に既存の日本語を当ててしまうと、ずれが生じる場合がある。
新しい用語にはどのような訳をあてられるおつもりですか。
コロケーション
<もの>を
漢字、文字、用語、日本語、和名、訳
<もの>に
単語、外来語、概念、名前
解説
この意味の「あてる」は、ものを別のものの一部に接触させる(語義1)ように、あるものを、様々な可能性の中で、そのうちの一つ(一部)に該当させることを表す。
誤用解説
この意味での「あてる」は意志的行為を表すため、「新しい単語に訳語を当てる」や「有給休暇を祝日に当てる」のように、意図的に二つのものを該当させることができる場合にのみ用いられる。それゆえ、以下のように意図的に該当させることのできない場合には「あてる」を用いることはできず、そのような場合には「あたる」を用いる。
 玉越先生を、島村先生の叔父にあてる
 玉越先生は、島村先生の叔父にあたる


15.届け先の指定他動詞上級
表記宛てる
人が、郵便物などを特定の人・場所に差し向ける。
文型
<郵便物など>を<人・場所>にあてる
文法
受身尊敬使役意思継続結果・完了
例文
息子に宛てた小包は、もう届いたかしら。
先生に宛てた手紙が戻ってきてしまった。
二人以上に宛てている場合は、それぞれの名前の下に敬称を付けます。
小学生が政府に宛てて書いたメッセージが紹介されました。
このメッセージは特定の誰かに宛てたものではない。
ここにある書類は、大阪支店に宛てられた書類のコピーです。
stairs二人以上にあてている場合は、それぞれの名前の下に敬称を付けるってね。
コロケーション
<もの>を
手紙、メッセージ、荷物、言葉、メール
<人>に
両親、家族、子供、先生
<場所>に
支店、本社、住所
解説
「あてる」は、「物を移動させて狙った部分に接触させる」という意味を表す(語義2)ことがあるが、この意味では、「ある部分を狙ってものを移動させる」という原因の意味を表している。なお、この場合の「ある部分」は特定の人・場所であり、移動させる「もの」は郵便物などである。
誤用解説
意図した人や場所に差し向ける<もの>は、典型的には手紙や荷物などの郵便物であるが、その手紙や荷物の内容物(「花束」や「言葉」)も可能である。ただし、「車」や「旅行」など、一般に郵送できないものには「宛てる」を用いることはできない。
 花束[ギフト、言葉]を恋人に宛てて贈る。
 車[旅行]を恋人に宛てて贈る。


当てるの全体解説 各語義の解説をご覧ください。
























▶全例文を聞く
<もの>を
室内で5対5のミニゲームをやる場合には、正に壁にボールを当てて自分は敵選手の後ろに回るというプレーができます。
(松木安太郎監修;デーヴ・スミス,ピート・エドワーズ,アダム・ワード著;赤星里栄訳 『サッカー上達マニュアル』, 2001, 783)
<もの>を
医師は平田の胸に聴診器を当てている。
(宮部みゆき著 『蒲生邸事件』, 1996, 913)
目にハンカチを当てたまま、順子の父親は深く深く頭を下げた。
(青木和雄,吉富多美作 『ハッピーバースデー』, 2005, 913)
<身体の一部>をあてる
先生がナツ子さんの額にを当てると、ヒヤッと冷たい。
(山口和子著 『わが愛しきお年寄りたち』, 1990, 916)
ヨハンはを唇に当てて考えこんでいる。
(恩田陸著 『麦の海に沈む果実』, 2004, 913)
<ものの一部>に
慎重に腕を引き伸ばして患部に副木を当て、真新しい包帯で巻いていく。
(神山裕右著 『サスツルギの亡霊』, 2005, 913)
<身体の一部>に
美姫が悲鳴をあげて両手をに当てた。
(大藪春彦著 『暴力租界』, 1997, 913)
<もの>を
を的に当てるのではなく、矢が的に当たっていくのである。
(Yahoo!ブログ, 2008, 芸術、アート)
<攻撃・技>を
一度下がった直後、前に踏み込みながら、左ジャブを当てた瞬間、渾身の右ストレートが炸裂した。
(高賛侑著 『統一コリアのチャンピオン』, 2001, 788)
<狙ったとおりの人・もの(の一部)>に
どんなに強くブン殴ったって、急所に当てなきゃ効かねーの!」
(青田竜幸著 『悪魔が最後にやってくる!!』, 2004, 913)
<賞>を
確実に馬券を当てるためには、多点数買いもいたしかたないのです。
(互當穴ノ守著 『馬単・3連単連続的中至高の超万馬券強奪マニュアル』, 2004, 788)
余談になりますが、私の義理の姉が、2番違いで1千万円の宝くじを当てそこねたことがあります。
(江藤邦彦著 『数学のことがわかる事典』, 1995, 410)
<機会>で
あるとき、民営化したNTTの株を抽選で当て、びくびくしながら購入し、三日目に売ったら六〇万円が儲かった。
(山下惣一,大野和興著 『百姓が時代を創る』, 2004, 610)
今まで懸賞で当てた中で一番高価な物は何ですか?
(Yahoo!知恵袋, 2005, ギャンブル)
<判断>を
丹子は男の年齢をわりに当てることができる。
(田辺聖子著 『薔薇の雨』, 1989, 913)
答えを当てるまでの、質問の回数が少ない方が勝ち。
( 『遊びの本』, 1997, )
<様態>
カーレンベルグはその足音の特徴で、誰だか百発百中で当てた。
(柘植久慶著 『スーツケース一杯の恐怖』, 1999, 913)
<活動>で
ところが、もともと企業体質が脆弱で、蓄積の薄い弱電業界は、一社がある製品で当てると、残りの他社は一斉にそのヒット製品に殺到した。
(清水一行著 『機密文書』, 1999, 913)
<光>を
をプリズムに当てると虹の6色になる。
(本多清著 『314』, 2004, 147)
ライトを当てられるとカモシカはゴソゴソと動きはじめる。
(千葉彬司著 『北アルプス動物物語』, 1993, 482)
<気体>を
ドライヤーの温風を当ててノリが溶けてきたところでゆーっくりとはがす。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 音楽)
ゴシゴシこすらなければならないような汚れが、シュワーッと蒸気を当てるだけで落ちていくさまは気持ちいいもの。
(佐光紀子著 『重曹・酢・石けんでナチュラルおそうじ』, 2004, )
<高[低]温>を
乾かし気味にしてを当てなければ、0℃近くでも越冬します。
(原由紀子著 『気軽に楽しむミニ盆栽』, 2004, 627)
<光>に
室内に置く場合も様子を見て、ときどきに当ててください。
(花時間, 2002, レジャー/趣味)
<気体>に
靴を裏返して底も乾かし、3〜4時間、に当てます。
( 『最強のお掃除テキスト』, 2000, 597)
外気に当てることで、皮膚や粘膜を鍛えます。
(川上義監修 『目で見るパパとママの小児科入門』, 2002, 598)
<高[低]温>に
温めた苺のピューレを加えて混ぜ、氷水に当ててさまし、黒こしょうで香りづけして冷蔵庫で冷やす。
(中島眞介著 『名門ホテルのパティスリー』, 2004, )
気温に注意し、霜に当てないよう10月も中旬になったらそろそろ室内に取り込んでやります。
(皆川清彦著 『よくわかる観葉植物』, 1991, 627)
<もの>を
それまでの時間を私のインタビューに充ててくれたのだ。
(赤井邦彦著 『走れ、俺たちのF1』, 2005, 788)
一般的な定年退職の年齢65歳までに完済するようにプランニングしておけば、退職金を老後資金にあてられる。
(江藤厚明監修 『はじめてのマイホームプラン』, 2001, 365)
<用途>に
ボーナスをローン返済にあてすぎると貯金ができず、この時期につらい思いをすることに。
(江藤厚明監修 『はじめてのマイホームプラン』, 2001, 365)
<もの>を
日本風に漢字をあてるとしたら、間違いなく四つの門と書いて「四門」だろう。
(篠原美季著 『背信の罪深きアリア』, 2003, 913)
<もの>を
ヨナは愛情溢れる手紙をアンデルセンに宛てて何通も書いているが、子供の年齢も過ぎた十七歳になった時でも、アンデルセンの呼称を堅苦しい「de」に変えることを嫌い、それまでの「du」を用いて手紙を書きつづけた。
(アリソン・プリンス著;立原えりか監修;黒田俊也監訳;小林淳子,籠宮史子,坂田和代,島田智紀訳 『ハンス・クリスチャン・アンデルセン哀しき道化』, 2005, 949)
<人>に
彼女はこのように遠くの国々を訪れた際には、見聞したことを旅行記のように記し、家族に宛てて回覧されるべく書き送っていた。
(高橋裕子著 『津田梅子の社会史』, 2002, 289)
<場所>に
まず中央アジア(トルキスタン)旅行の旅券を発行してもらうよう、サンクト・ペテルブルグの日本領事館に宛てて七月三日、次のように打電した。
(金子民雄著 『中央アジアに入った日本人』, 1992, 292)






























あの不安定な体勢でど真ん中に当てるなんてすごいね。
売り上げの一部は、震災の義援金にあてさせていただきます。
二人以上にあてている場合は、それぞれの名前の下に敬称を付けるってね。
一山当てる

意味
鉱山で鉱脈を掘り当てて大儲けするように、何らかの活動で思いがけない大きな利益を得る
用例
株で一山当てて、優雅に暮らしたい。
コーパスからの用例
ある者は遊び感覚で賭け、ある者は一山当てるために賭ける。(ノーラ・ロバーツ著;平江まゆみ,矢吹由梨子訳 『マクレガー家の物語』, 2001, 933)
胸に手を当てる

意味
真剣になって思い出したり考えたりする
用例
「君がなんで怒っているのかわからない」「自分の胸に手を当ててみなさいよ」
コーパスからの用例
ところで一方、皆さん自身がキレそうになったことは、ないだろうか。 私自身は胸に手を当てるまでもなく、大いにある。 キレるのを若者とばかり決めつけるわけにはいかない。 (中西進著 『日本人の忘れもの』, 2004, 049)
目も当てられない

意味
見られないくらいひどい状態である
用例
彼女と旅行中にレンタカーで事故を起こすなんて、目も当てられないね。
コーパスからの用例
依然として雨は降りつづいているが、すでにかなり明るくなっているので、前を行く者を見失う心配はない。 これが夜襲だったら目も当てられなかったろう。 (田中光二著 『連合艦隊大激闘』, 1995, 913)
複合動詞 V1

当てはめる、当て付ける
複合動詞 V2

掘り当てる、探り当てる、探し当てる、言い当てる、押し当てる、打ち当てる、捜し当てる、嗅ぎ当てる、指し当てる、引き当てる、吹き当てる、振り当てる、割り当てる
複合名詞

割り当て、さや当て、腰当て、脛当て、つぎ当て、膝当て、肘当て、耳当て、胸当て、目当て、当てこすり、当て馬、当て字、当てずっぽう、
当てる(2グループ)の活用 ▶活用を聞く
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